説明

多層光ディスクの記録方法、多層光ディスク記録装置、及び多層光ディスク

【課題】
2層以上の多層記録ディスクに対応し、透過率を含め、層間隔のばらつきや、傷、ほこりなどがあっても、記録レーザパラメータを正しく決定できる試し書き回路、及び光ディスク装置を提供することにある。
【解決手段】
各層毎にディスク品質を確かめるディスク品質チェック回路により、m層目(mは、2以上の整数)のディスク品質が、一定の基準を満たす場合は、試し書きにおいて、m層目の最適なレーザパラメータを算出し、このパラメータを使い、データ部に記録する。m層目のディスク品質が、一定の基準を満たさず、ばらつきが大きい場合は、試し書きで求めた複数のm層目のレーザパラメータと、試し書き前にm層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号と、記録前のm層目のデータ領域における光検出器からの検出信号とに基づいて、m層目のデータ部各所のディスク品質に応じたレーザパラメータを算出し、レーザ駆動回路を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層光ディスク上にデジタルデータを記録する方法、特に多層光ディスクに記録するときに用いるレーザパラメータを求める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2層光ディスクにおいて、2層目の記録層に記録しようとする場合、ピックアップに近い方の1層目が、未記録域、記録域で透過率に差があると、2層目の再生信号振幅が変動するという問題点があった。ピックアップから遠い層は、ピックアップに近い層を透過したレーザ光で記録や再生を行うため、ピックアップに近い層の記録域、未記録域で透過率に差があると、ピックアップから遠い層の記録再生振幅が変動し、影響を受ける。そのため、ピックアップに近い層の透過率に応じて、記録パワーを制御し、透過率を考慮した試し書きが提案されている。
【0003】
特開2001−148133号公報(特許文献1)は、記録層が少なくとも2層以上ある光ディスクからの反射光を検出して、発光パワー値と反射光より、記録層までの透過率を演算で求まった透過率に応じてパワーを制御するものである。
【0004】
特開2003−22532号公報(特許文献2)は、透過率の最も高い記録状態、または透過率が最も低い記録状態で、試し書きを行って、記録パワーを決定するものである。
透過率の最小値を求めて、その最小値から記録パワーを算出している。または、透過率の最大値を求めて、その最大値から記録パワーを算出している。
【0005】
一方、非特許文献1では、書き換え型2層BDディスク(BD−RE)において、透過率変化を小さくできる記録材料を採用し、記録域と未記録域での透過率変化が極めて少ないディスクを開発し、1層目の高透過率設計と、記録、未記録域で透過率変化を少なくするバランス設計により、1層目の記録状態の影響を受けないで、2層目を記録再生することが可能となったことが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−148133号公報 (図3) 松下
【特許文献2】特開2003−22532号公報(図11、[0058])コロムビア
【非特許文献1】Matsushita Technical Journal Vol.50 No.5 Oct 2004 (p.55〜p.58)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層光ディスクの各記録層に、記録を行おうとした場合に、次のような課題がある。
【0008】
(1)文献1に記載されているように、バランス設計された書き換え型2層ディスクでは、1層目の記録状態の影響を受けないで、2層目を記録再生できるので、特許文献1、2のような方法は必要ない。しかし、3層以上のディスクでは、透過率が上げにくく、記録膜やスペーサー層、カバー層を高精度にしないと、再生信号品質が劣化するという問題点があった。各層の間隔精度あわせが2層以上に厳しくなる。また、ディスク仕様は、ディスク製造メーカ各社により異なり、また各層毎の厚さが異なる場合がある。そのため、ディスク品質を各層毎にチェックしてから、記録する必要がある。
【0009】
また、多層のディスクは、光ピックアップに近い1層目と、上位層からの影響を受け易い最下位層目では、再生信号品質が異なることが予想されるが、特許文献1では透過率にのみ着目して、記録パワーを変化させているという課題があった。
【0010】
(2)傷やほこりがディスク表面についていた場合に、各層の影響が異なることが予想されるが、特許文献1,2には傷についての処理については記載されていない。
【0011】
(3)特許文献2には、透過率の最も高い記録状態、または透過率が最も低い記録状態で、試し書きを行うが、片側だけの数値のみを使って求めた「最適な記録パラメータ」は、一方に対する最適値であるため、他方に対しては有効でなく、正しい補完計算を行うことができないという課題があった。また、特許文献2には、下位層に焦点を合わせたときに、上位層の光スポット径を考慮していないため、正確なレーザパラメータを算出できないという課題があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、2層以上の多層光ディスクへの記録に対応し、透過率を含め、層間隔のばらつきや、傷、ほこりなどがあっても、記録用レーザパラメータを正しく決定できる試し書き回路、及び光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、その一例として所定層の品質に応じてレーザパラメータを設定することで達成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多層光ディスクへの記録に対応し、透過率を含め、層間隔のばらつきや、傷、ほこりなどがあっても、ディスク品質に見合ったレーザ記録パラメータを正確に決定でき、多層光ディスクにデータを記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施の形態1である光ディスク装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の光ディスク装置のブロック図である。図1において、光ディスク装置100は、レーザ駆動回路11、光ヘッド(PU)12、I/V変換回路13、再生回路14、復調回路15、ATAPIインターフェイス16、CPU17、変調回路18、試し書き回路19、第m層ディスク品質チェック回路191、第m(m:2以上の整数)層データ部ライトシーケンス切り替え回路20、メモリ21、ホストコンピュータ(ホスト)200を有する構成となっている。さらに、メモリ21は、試し書きで得られた、第m層の上部層の影響を示す戻り光量の各層毎の情報を有する光検出情報211、及び試し書きで得られた、第m層の最適レーザパラメータ212を有している。
【0018】
光ディスク10は、スピンドルモータ(図示せず)に保持されて回転しており、光ヘッド12は、情報の記録および再生を行うレーザ光を発光する半導体レーザと、半導体レーザからの光をディスク面上に光スポットとして形成する光学系と、光ディスク10からの反射光を用いて情報の再生および自動焦点およびトラック追跡などの光点制御を行うための光検出器121とから構成され、光ディスク10上に情報の記録を行い、また光ディスク10上の情報の再生を行う。光ディスク装置は、パーソナルコンピュータ(ホスト200)に接続されており、ホスト200からの命令や情報データをマイコン等から構成される制御回路(CPU17)を通して情報の記録、再生およびシーク動作を実行する。
【0019】
再生処理は、ホスト200から、CPU17に対して再生開始指示を行うことにより実施される。再生信号は、第m層目に焦点を合わせた、光ヘッド12からの信号を受け、ディスク上のデータを抽出するための再生回路14、復調回路15を経て再生され、ATAPI16を介してホスト200に再生データが出力される。再生時、光ヘッド12のレーザは、低出力のDCパワーを発光する。
【0020】
次に試し書きについて説明する。試し書きとは、前記通常記録処理に先立ち行われ、データ部への記録の前に、ディスクの試し書き処理領域PCA(Power Calibration Area)部において、レーザ光に関する最適なパラメータ(パワー、パルス幅、パルス遅延幅等)を求める。試し書き処理は、ホスト200から、CPU17に対して試し書き記録開始指示を行うことにより実施される。変調回路18、レーザ駆動回路11により、所定のパターンをレーザパラメータを変更し、光ディスク10のPCA部に記録した後に、再生回路14を介し、試し書き回路19により、NRZIパターンに対するクロックジッタ、再生波形のアシンメトリからパワーを補正するためのベータ等を観測し、最適なレーザパラメータを選択または算出する。試し書きは、光ヘッドに近い方の第1層目から行う。現状の多層ディスク構成では、下位層への記録は、上位層の影響が大きいためである。
通常記録処理は、ホスト200から、CPU17対して記録開始指示を行うことにより実施される。BDディスクの場合は、シーケンシャルライトまたはランダムなアドレスへのライトも可能である。まず、レーザに近い第1層目に、記録する場合について説明する。第1層目に書き込む場合は、単層ディスクと同様に、ホスト200から、ATAPI16を介して入力された記録用のデータは、変調回路18、レーザ駆動回路11を経て、記録処理の前の試し書き処理によって得られた好適なレーザパワーやパルス幅を記憶した、メモリ21の第1層目のレーザパラメータ情報212にて、光ヘッド12により、光ディスク10のユーザデータ部に記録信号NRZIパターンのマーク、スペースに応じた波形を書き込む。記録時は、光ヘッド12のレーザは、第1層目に焦点を合わせて、レーザ光を高出力でパルス発光し、円板上に情報を記録する。
【0021】
第2層目以降の書き込みは、試し書き回路19内のディスク品質チェック回路191にて各層毎のディスク品質を確かめる。ディスク品質とは、光検出器121で検出された検出再生信号の変動(ばらつき)のことをいう。図10は、試し書き部の戻り光(検出信号)とレーザパラメータの関係を示す図である。通常、第m層の未記録域に記録しようとした場合、ディスク品質が良好であれば、第m層に焦点をあわせたとき、検出再生信号の変動は一定幅に収まる(図10(1))。そのため、図10(2)に示すように、レーザパラメータは、一義的に決まる。例として、パワーに関するレーザパラメータ値を示す。しかし、上位層や下位層の影響、スペーサばらつき、傷やほこり、上位層が記録、未記録による透過率の変動等の影響を受けることにより、検出再生信号が変動する(図10(3))。この変動幅が、ある閾値よりも小さければ品質良好、ある閾値より大きければ品質が悪いと判断する。なお、本方法以外のディスク品質を判断する方法であっても良い。本実施例では、ディスク品質が悪い場合は、試し書き部の検出再生信号の変動幅に応じたレーザパラメータを算出し、データ部の検出再生信号変動に応じて、レーザパラメータの値に幅をもたせる。例えば、次の順序で、試し書きを行う。
【0022】
(a)検出再生信号が設定値以内の場所(Typ)で、試し書きを行い、最適レーザパラメータを抽出する。...試し書き1
(b)検出再生信号が最大値(max)付近で、試し書きを行い、パラメータを求める。...試し書き2
(c)検出再生信号が最小値(min)付近で、試し書きを行い、パラメータを求める。...試し書き3
試し書き2,3については、試し書き時間短縮のために、試し書き1で求めたパラメータの一部を変更するようにしても良い。
【0023】
また、ばらつきのある検出信号とレーザパラメータが、一義的に決定できるような方法であれば、上記方法以外の求め方でも良い。
【0024】
図10(5)にレーザパラメータと検出信号(戻り光)の関係を示す。レーザパラメータとして、レーザパワーを例として示した。本実施例では、戻り光とレーザパラメータの最大値(max)、最小値(min)、中心値(Typ)の対応を求め、他は補間したが、ばらつきの大きい場合は、信頼性を高めるため、さらに複数試し書きを行ってもよい。
【0025】
試し書きにより、第m層の品質が良好であれば、データ部に記録する場合、メモリ21の第m層目の試し書きレーザーパラメータ情報212を使って、第1層目と同様な記録を行う。
【0026】
一方、ディスク品質が悪く、ばらつきが閾値以上の場合は、試し書きしようとする第m層に焦点を合わせ、記録範囲の再生信号を観測し、メモリにPCA部第m層の記録前の光検出情報213を記録する。また、ばらつき係数σなど、ばらつきを補正できる係数を記憶させても良い。
【0027】
次に、試し書きによって、第m層のレーザパラメータ情報を求め、試し書き前の光検出信号変動幅に応じて、レーザパラメータ値を複数算出し、第m層のレーザパラメータ情報212としてメモリに記憶させる。例えば、第m層の光検出信号変動最大値のときのレーザパラメータ値と、光検出信号変動最小値のときのレーザパラメータ値を記憶させる。
【0028】
次に、データ部への記録前に、記録しようとする第m層に焦点を合わせ、上位層の影響を観測するため、記録範囲の再生信号を観測し、メモリにデータ部第m層の記録前の光検出情報211として記録する。試し書き部の記録前の光検出情報と、データ部の記録前の光検出情報とを比較し、比較結果に対応した第m層のレーザパラメータ情報212を使い、データ部への記録を行う。図10(5)に示すように、試し書きで求めた記録前の検出信号(戻り光)と、レーザパラメータの関係より、データ部への記録前の検出信号が、(A)とするとそれに対応したレーザパラメータ値(B)を選択する。
【0029】
データ部記録範囲の観測方法は、ランニングOPCのように、レーザパワー等を微調整、記録をしながら、観測しても良いし、ある一定域をリードして、そのリード値をメモリ211に蓄え、計算し、その計算値を使って、レーザパラメータを変更して、一定域毎に記録することを繰り返しても良い。メモリに蓄える情報は、大きく変化したポイントの数値だけでも良いし、一定期間毎の数値でも良い。第m層のディスク品質によるライトシーケンス切り替えは、切り替え回路20により行う。なお、第1層目についても、ディスク品質チェックを行ってから、ディスク品質に応じて、試し書きを行い、ディスク品質に応じた記録処理を行っても良い。
【0030】
図2に、本発明の実施の形態1である光ディスク装置の試し書き方法と記録方法のフローチャートを示す。まず、第1層目の試し書きから始めるため、第1層目のPCA領域にピックの位置を合わせ、合焦させる(201,202)。次に、第1層ディスク品質チェックを行う。ディスク品質チェックとして、第1層の試し書き予定範囲の光検出信号を取得し、信号値にばらつきがないかを調べる。この信号値のばらつきにより、第1層目のディスクの品質を判断する(203)。ディスク品質が良好な場合は、レーザパラメータを求めるために試し書きを実行した後に、試し書き領域の再生信号を読みより、所定の計算を行い、最適な第1層のレーザパラメータを求める(204,205、206)。第1層目は、光ヘッドに一番近い層のため、ディスク品質はその他の層よりは概ね良好であるが、傷や埃のチェック、保存状態のチェック等を行うことができる。
【0031】
ディスク品質が所定より悪い場合は、レーザパワーに幅を持たせるようにし、複数のレーザパラメータを抽出する(2041)。例えば、ディスク品質チェックにより、再生信号にばらつきがあるため、再生信号のばらつきに応じたレーザパワー値から、最大値、最小値を算出する。第2層目以降も、同様にディスク品質チェックを行ってから、試し書きを行う(207)。第2層目は、上位層である1層目の影響を強く受けるため、第1層目よりもディスク品質が劣化しやすい。最下位層まで、同様なディスク品質チェックを行ってから、試し書きを行う(208)。
【0032】
次に、データ部への記録処理について説明する。データ領域に記録する命令がCPUから出力された後(209)、第m層のディスク品質が良好かどうかを確かめる(210)。この判断は、試し書きで求めた第m層のディスク品質チェックで、良否を決める。この結果を元に、以下で説明するデータ部の記録シーケンスを変更する。
【0033】
第1層目の品質が良好な場合は、単層ディスクと同様な処理を行い、試し書きで求めた最適レーザパラメータを選択する(217)。この選択された最適レーザパラメータを用い、ライトエリアに記録する(213)。第m層において、ディスク品質が所定値よりも悪いと判断された場合には、データ部記録予定位置の光検出器の検出信号取得する(211)。第m層にて、ディフェクトを検出した場合には、特別な処理を行う(2111)。これについては、後述する。データ部検出信号と試し書き部検出信号から、試し書きによって求められたレーザパラメータを選択する(212)。または、最大値、最小値のレーザパラメータから補完計算により、データ部記録位置各所のディスク品質に応じたレーザパラメータを算出し、それぞれの記録位置に応じた最適レーザパラメータで記録する(214)。ランニングOPCでも良いし、メモリに記録予定位置の検出信号値を格納し、この値を使って算出しても良い。
【0034】
ディフェクトを検出した場合の特別な処理(2111)について、説明する。第m層において、ある所定の閾値よりも戻り光量が少ない場合は、傷やディフェクトと判断する。戻り光のパーセンテージ量により、この位置の上部層に傷があることが分かるため、3層目で傷があると判断した場合は、上部層の同じ位置のアドレスについて、ディフェクト登録を行う。図5に、1層目に傷があるの光スポットの模式図を示す。(1)は3層目に焦点を合わせたときの図、(2)は2層目に焦点を合わせたときの図である。傷により、3層目の検出光がわずかに隠れる程度(入射光、反射光により、光検出器には2つ傷が検出される)であるが、2層に焦点を合わせたときは、2層目の検出光が隠れ、記録再生は困難である。そのため、最下位層にて、ディフェクト検出した場合は、上位層の同じ位置のものは、ディフェクトと判断できるため、ディフェクトとして、ディスクのディフェクトを登録しておく領域にディフェクトが存在するアドレスを記録する。これにより、上位層に記録しようとしたときに、あらかじめディフェクト位置がわかっているため、あらかじめこの位置をはずして記録再生を行うことができ、無駄を省くことができる。なお、ここでは説明の簡略化のため、光検出器を1つで説明したが、光検出器を複数使った場合でも、同様である。
【0035】
また、図5(1)のように、3層目に記録する場合、ディフェクトが1層めにあると、戻り光量が少なくなる。3層目の光検出信号に応じて、通常より、記録パワーを高くし、3層めに記録することができる。戻り光量によって、上位層スポットに何%ディフェクト領域があるのかを知ることができる。第m層の記録前の戻り光量と、第m層の試し書きにより求めた複数のレーザパラメータより、記録パワーを求めることができる。
【0036】
次に、多層光ディスクの光スポットを考慮した試し書き範囲について説明する。
【0037】
図3に、3層光ディスク各層の光スポットの模式図を示す。図3(1)は、光スポットの断面図であり、各記録層の間にはスペーサと呼ばれる中間層が挿入されている。スペーサは、各記録層を分離、独立してアクセスできるようにする役割を持つ。また、スペーサ以外にも、記録層を構成する反射膜、誘電体膜、界面膜等を有し、ディスク性能をアップするために、層間隔や構成は各社で異なり、層間隔の製造ばらつきが、ディスク性能、及び品質に大きく影響する。レーザドライバから、レーザを照射し、偏向ビームスプリッタ、回折格子、レンズを介して、ディスクに合焦点させる。光検出器は、反射光を検出する。
【0038】
光検出器は、回折格子に対応した複数個の検出窓を持つ。図3(5)は、3層目に焦点を合わせたときのディスク面での1層目から3層目までの光スポットを模式的に表した透視図である。図3(6)は、光検出器面での光スポットを模式的に表したものである。図3(4)は、3層目に焦点を合わせたときの1層目の光スポット、図3(3)は、3層目に焦点を合わせたときの2層目の光スポット、図3(2)は、3層目に焦点を合わせたときの3層目の光スポットを示す。図3(7)は、回折格子により、迷光を除去し、3層目のスポットのみを出力した図を示す。
【0039】
図示していないが、1層目、2層目の層間クロストークによる干渉縞も現れる。干渉量は、層間隔により光の波長(BD:405nm)の周期で変動する。光検出器は、焦点を合わせた層と上部層の光スポットを加算した光を検出する(図3(6))。加算された光は、m層と隣接層の影響が大きく、それ以外の層の光は、大きく広がり検出器への影響は少なくなる。また、回折格子により、光量は少ないが、合焦層以外の迷光を除去した光を検出する(図3(7))。検出された光は、演算し、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、再生RF信号に使用する。
なお、特開2005−135459号公報[0023]に示すように、2層ディスクの場合、2層めに焦点を合わせたときの1層目のスポット径は、トラックピッチ0.32μmとすると、約100トラック分幅に相当する。3層ディスクの層間隔が2層ディスクの1/2とすると、3層目に焦点を合わせると、2層目のスポット径は約50トラック分に相当する。
【0040】
図4に、3層光ディスクを上部(透視図)から見たときの図を示す。PCA領域とユーザデータ領域が存在する。PCA領域は、試し書きに使用する領域である。ユーザデータ領域は、通常記録時にデータを記録する領域である。3層目に記録する際の各層のスポット、2層目に記録する際の各層のスポット、1層目に記録する際の各層のスポットを示す。3層目に記録する場合は、2層目のスポットの影響が大きいため、3層目のPCA領域は、2層目のスポット径よりも大きい範囲のトラック幅とする。また、2層目に記録する場合は、1層目のスポットの影響が大きいため、2層目のPCA領域は、1層目のスポット径よりも大きい範囲のトラック幅とする。第m層に記録する場合は、隣接層(m−1)層目の光スポット径範囲以上の試し書き領域が必要となる。そのため、1層めの試し書き領域は、2層目よりも小さくできる。m層目の試し書きほど大きな領域が必要となる。
【0041】
以上のように、試し書きでディスク品質をチェックしてから、第m層のライトシーケンスを変更するため、最適なレーザパラメータで記録を行うことができる。また、最下位層で検出した傷等があった場合に、上位層の同じ位置を傷と判断できるので、上位層に記録する場合に無駄な時間を費やすことなく、記録可能である。また、試し書きのトラック幅を記録する層の上部隣接層の光スポット径分のトラック以上に設定することで、PCA領域を効率的に使用することができる。
【実施例2】
【0042】
レーザ光源に近い層の記録域、未記録域で、透過率が大きく異なるディスクの場合に、レーザ光源から遠い層に記録する試し書き方法を、以下に説明する。
【0043】
図6にフローチャートを示す。実施の形態1と異なる点は、レーザ光源に近い層の記録域、未記録域で透過率が大きく異なるディスクへの対応である。第m層のディスク品質チェック203において、第m層の記録域、未記録域でチェック2031を行い、記録域、未記録域で大きな差がある場合は、特別な試し書きを行い、レーザパラメータを求める。
【0044】
現状の2層ディスクでは、レーザ光源に近い層の記録域、未記録域での透過率差によって、レーザ光源から遠い層への書き込みに影響がないようにバランス設計されている。3層以上の多層ディスクでも、同様に透過率差がバランス設計されていることが好ましいが、2層ディスクよりも各層の厚さが薄くなるため、精度が必要である。ディスク製造ばらつき等を考えると、3層以上のディスクでは透過率差は2層ディスクよりも現れやすい。そのため、透過率に大きな差があるディスクを使用する場合は、上位層の記録、未記録状態を確認してから、下位層に記録することが好ましい。
【0045】
本実施例では、レーザ光源に近い層の記録域、未記録域で大きな透過率差がある第m層のレーザパラメータを求める際は、上位層が全て記録、全て未記録の2通り(最大値、最小値)の最適レーザパラメータを求める。
【0046】
第m層の記録域、未記録域で試し書き2031についての詳細を説明する。記録レーザ光の焦点を第3層目に合わせたときの、光スポットが1層目の記録、未記録領域を横切ったときの模式図を図7に示す。3層めに、1層めと同じ面積領域に記録しようとすると、境界付近の領域で、スポットが1層め記録済み層から外れる。記録域、未記録域で透過率が異なる場合には、光スポットが上位層では広がるために、記録、未記録の境界領域を考慮する必要がある。
【0047】
図8に、3層ディスクの記録域、未記録域の透過率が異なるディスクの各層毎のPCA領域を示す。
(a)は、試し書き前の光ディスクを上部から見た図である。複数の周毎に、各層毎の試し書き用PCA領域をもつ。本例では、リング状に周毎に分けたが、ディスクの周方向に分割しても良い。また、外周、内周といった複数の場所に、各層の試し書き領域を設けても良い。複数の場所に、試し書き領域を設けることにより、ディスク品質チェックの信頼性を高めることができる。
(b)は、1層目の試し書き後に、最適パワーでランダムデータ等を記録した部分を示したものである。1層目を示す。1層目の試し書きにより求めたレーザパラメータを使い、2層、3層目のPCA領域上部の1層目に、ランダムデータ等の記録を行っている。
(c)は、2層目の試し書き後に、最適パワーで記録した部分を示したものである。2層目を示す。2層目の試し書きにより求めたレーザパラメータを使い、3層目のPCA領域上部の2層目に、ランダムデータ等の記録を行っている。
(d)は、1層目試し書き前の、1層目試し書き用PCA領域(断面図)である。
この領域において、1層目における試し書きを行い、1層目の記録レーザパラメータ(1Write)を求める。1層目の試し書きにより、求めたレーザパラメータを使い、2層、3層目上部のPCA領域の1層目に記録する。2層目に合焦し、Readする。2層目に記録するまえに、1層目の記録、未記録の影響を知るために、それぞれの光量(2ARead、2BRead)を観測するためである。
(e)は、2層目試し書き前の、2層目試し書き用PCA領域(断面図)である。
【0048】
この領域において、2層目試し書きを行い、2層目の記録レーザパラメータ(2種類 2AWrite,2BWrite)を求める。2層目の試し書きにより、求めたレーザパラメータを使い、 3層目のPCA領域上部の2層目に記録する。次に、3層目に合焦し、Readする。3層目に記録するまえに、1、2層目の記録、未記録の影響を知るために、それぞれの光量(3ARead,3BRead)を観測する。
(f)は、3層目試し書き前の、3層目試し書き用PCA領域(断面図)である。この領域において、3層目試し書きを行い、3層目の記録レーザパラメータ(2種類 3AWrite,3BWrite)を求める。
次に、3層目の試し書き方法と、試し書きを使って求めた最適レーザパラメータ2種類(最大値と最小値)を使って、データ部への記録を行う過程を示す。
図9(a)に、ディスク各層の試し書き部の記録、未記録状態を示す。1層目、及び2層目の記録部は、1層目と2層目の試し書きによって既に求められた最適レーザパラメータを使い、記録されている。未記録の場合は透過率が低くなるディスク(有機色素系)で説明する。
図9(b)に、光スポットの模式図を示す。第3層目に焦点を合わせて、第3層の記録予定位置(未記録域)をリードする。
図9(c)に、第3層の未記録域をリードし、光検出器にて検出された光量を示す。
光スポットが、上位層の記録域、未記録域の境界付近を横切る場合は、検出光量に差がでる。
3層めの(A)(B)(C)(D)位置にWriteする場合、Read光量が大の場合は、Write光量が小になるようにレーザパワーを変更する。
図9(d)に、レーザのライト光量(パワー)を示す。試し書きで求めた上位層が全て記録済みと上位層が全て未記録のRead値と最適レーザパラメータは、既知であるため、間の最適レーザパラメータは、Read値から算出する。
図9(e)に、第3層目に記録後の、ディスク各層の試し書き部の記録、未記録状態を示す。
図9(f)に、第3層目に記録後の、光スポットの模式図を示す。
図9(g)に、第3層目をリードし、光検出器にて検出された光量を示す。
以上のように、記録域、未記録域の透過率が大きく異なっても、ディスクの品質に合わせた最適なレーザパラメータを使うことができる。
【0049】
以上、発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1である光ディスク装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1である光ディスク装置の試し書き方法と記録方法を示すフローチャートである。
【図3】3層光ディスク各層の光スポットを模式的に示す図である。
【図4】3層光ディスクを上部(透視図)から見たときを示す図(ユーザデータ領域と各層のPCA領域)である。
【図5】1層目に傷があるの光スポットの模式図を示す。(1)は、3層目に焦点を合わせたとき(2)2層目に焦点を合わせたときの図である。
【図6】本発明の実施の形態2である光ディスク装置の試し書き方法と記録方法を示すフローチャートである。
【図7】記録レーザ光の焦点を第3層目に合わせたときの、光スポットが1層目の記録、未記録領域を横切ったときの模式図を示す。
【図8】3層ディスクの記録、未記録の透過率が異なるディスクの各層毎のPCA領域を示す図である。
【図9】3層目の試し書き方法と、試し書きを使って求めた最適レーザパラメータ2種類(最大値と最小値)を使って、データ部への記録を行う過程を示す図である。
【図10】試し書き部の戻り光(検出信号)とレーザパラメータの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
100…光ディスク装置、11…レーザ駆動回路、12…光ヘッド(PU)、13…I/V変換回路、14…再生回路、15…復調回路、16…ATAPIインタフェース(ATA)、17…CPU、18…変調回路、19…試し書き回路、20…第m(m:2以上の整数)層データ部ライトシーケンス切り替え回路、21…メモリ、200…ホストコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層光ディスクに情報を記録する記録方法であって、
所定の層において試書きを行い、該試書きされた情報を再生して記録品質が所定以上である場合にはレーザパラメータを調整し、該試書きされた情報を再生して記録品質が所定以下である場合にはレーザパラメータの調整に移行せず再び試書きを行い、レーザパラメータを調整し、
前記調整されたレーザパラメータにて記録を行う、
記録方法。
【請求項2】
請求項1の記録方法であって、
前記試書きされた情報を再生して記録品質が所定以下である場合には、少なくとも3領域にて試書きを行い、該試書きの結果を用いてレーザパラメータの調整を行う、
記録方法。
【請求項3】
請求項1記載の記録方法であって、
前記試書きされた情報の記録品質を評価する条件は、該試書きをする層よりレーザ光源に近い層の記録・未記録状態に応じて異なる、
記録方法。
【請求項4】
レーザ光照射によって、情報が記録される情報記録層をm層(mは、2以上の整数)積層した多層光ディスクに、デジタルデータを記録する多層光ディスクへの記録方法において、
各層毎のディスク品質を確かめるディスク品質チェックステップと、
前記ディスク品質チェックステップにより、m層目のディスク品質が、一定の基準を満たす場合は、m層目の最適なレーザパラメータを算出する第一の試し書きステップと、
前記ディスク品質チェックステップにより、m層目のディスク品質が、一定の基準を満たさず、ばらつきが大きい場合は、ばらつきに応じて、m層目のレーザパラメータを複数算出する第二の試し書きステップと、
前記ディスク品質チェックステップにより、一定の基準を満たす場合は、前記第一の試し書きステップで求めたm層目の最適パラメータを使い、レーザ光を制御し、m層目のデータ領域に記録する第一の記録ステップと、
前記ディスク品質チェック回路により、一定の基準を満たさない場合は、前記第二の試し書きステップで求めたm層目の複数のレーザパラメータと、
試し書き前に、m層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号と、
データ領域への記録前に、m層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号とに基づいて、
m層目のデータ領域各所のディスク品質に応じたレーザパラメータを算出し、
算出したレーザパラメータでレーザ光を制御する第二の記録ステップを有することを特徴とする多層光ディスクへの記録方法。
【請求項5】
レーザ光照射によって、情報が記録される情報記録層をm層(mは、2以上の整数)積層した多層光ディスクに、デジタルデータを記録し再生する光ディスク装置において、
前記光ディスク装置は、
各層毎のレーザの記録条件を定めるための試し書き回路とを有し、
前記試し書き回路は、各層毎のディスク品質を確かめるディスク品質チェック回路を有し、
前記ディスク品質チェック回路により、m層目のディスク品質が、一定の基準を満たす場合は、m層目の最適なレーザパラメータを算出し、
前記ディスク品質チェック回路により、m層目のディスク品質が、一定の基準を満たさず、ばらつきが大きい場合は、
ばらつきに応じて、m層目のレーザパラメータを複数算出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記光ディスク装置は、
レーザ光を各層毎の情報記録層に選択的に合焦させる光学系と、
レーザ光をm層目に合焦して照射したとき、m層目の情報記録層からの反射光を検出する光検出器と、
前記記録条件によりレーザを発光させるレーザ駆動回路を有し、
前記多層光ディスクは、
各層毎に、前記試し書きを行うための試し書き領域と、
各層毎に、ユーザ用のデータを記録するデータ領域とを有し、
前記ディスク品質チェック回路により、一定の基準を満たす場合は、
前記試し書き回路で求めたm層目の最適パラメータを使い、前記レーザ駆動回路を制御し、m層目のデータ領域に記録し、
前記ディスク品質チェック回路により、一定の基準を満たさない場合は、
前記試し書き回路で求めたm層目の複数のレーザパラメータと、
試し書き前に、m層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号と、
データ領域への記録前に、m層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号とに基づいて、
m層目のデータ領域各所のディスク品質に応じたレーザパラメータを算出し、
算出したレーザパラメータで前記レーザ駆動回路を制御することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
レーザ光照射によって、情報が記録される情報記録層をm層(mは、2以上の整数)積層した多層光ディスクに、デジタルデータを記録し再生する光ディスク装置において、
前記光ディスク装置は、
レーザの記録条件を定めるための、試し書き回路を有し、
前記多層光ディスクは、
各層毎に、試し書きを行うための試し書き領域と、
各層毎に、ユーザ用のデータを記録するユーザデータ領域とを有し、
前記多層光ディスクが、未記録域、記録域で、透過率が異なる特徴をもつ場合、
m層目での試し書きは、レーザ光に近い方を1層目とすると、
m層の上部層(1層目から(m−1)層目)が最も透過率の高い記録状態と、
上部層が最も透過率の低い記録状態の2つの試し書き領域において別々に行い、
2種類の最適レーザパラメータを求めることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記光ディスク装置は、
レーザ光を各層毎の情報記録層に選択的に合焦させる光学系と、
レーザ光をm層目に合焦して照射したとき、m層の情報記録層からの反射光を検出する光検出器と、
前記記録条件によりレーザを発光させるレーザ駆動回路を有し、
m層目での試し書きは、
上部層が最も透過率の高い記録状態と、上部層が最も透過率の低い記録状態の2つの試し書き領域において、試し書き前にm層目に合焦させたときの、光検出器からのそれぞれの検出信号と、
前 記試し書き回路で求めたm層目の2種類の最適レーザパラメータと、
データ領域への記録前に、m層目に合焦させたときの光検出器からの検出信号とに基づいて、
m層目のデータ領域各所のディスク品質に応じたレーザパラメータを算出し、
算出したレーザパラメータで前記レーザ駆動回路を制御することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
レーザ光照射によって、情報が記録される情報記録層をm層(mは、2以上の整数)積層した多層光ディスクは、
レーザの記録条件を定める試し書きを行うための、m層毎の試し書き領域を有し、
レーザ光に近い方を1層目とすると、
m層目の試し書き領域のトラック方向の幅は、m層目にレーザ光が合焦したときの隣接層である(m−1)層の光スポット径よりも、大きい領域であることを特徴とする光ディスク。
【請求項10】
レーザ光照射によって、情報が記録される情報記録層をm層(mは、2以上の整数)積層した多層光ディスクに、デジタルデータを記録し再生する光ディスク装置において、
前記光ディスク装置は、
レーザ光を、層毎の情報記録層に選択的に合焦させる光学系と、
レーザ光を、m層目に合焦して照射したとき、m層目の情報記録層からの反射光を検出する光検出器と、
前記多層光ディスクは、m層毎のディフェクト登録を行うディフェクト登録領域を有し、
レーザ光に近い方の層を1層めとすると、
前記光検出器により、m層目でディフェクトと判断された場合は、その上部層の同じ位置は、全てディフェクトと判断し、
前記ディスクのディフェクト登録領域に、1〜m層までの同じ位置をディフェクト登録することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−152998(P2010−152998A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331856(P2008−331856)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】