多層配線基板及びその製造方法ならびに半導体装置
【課題】数千もしくはそれ以上の高密度多I/O数のリラウトに対してチャネル問題が大幅に緩和され、かつ放熱特性に優れた多層配線基板を提供する。
【解決手段】少なくとも1層の配線層2が、該配線層2に形成された複数の配線部12の間を、該配線層4を備えた絶縁層3の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤ5により電気的に接続されており、配線層12の少なくとも一部の配線部12が、絶縁層3を貫通して形成された導体部7を介して、多層配線基板10のベースボード1の配線層4に接続されているように、構成する。
【解決手段】少なくとも1層の配線層2が、該配線層2に形成された複数の配線部12の間を、該配線層4を備えた絶縁層3の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤ5により電気的に接続されており、配線層12の少なくとも一部の配線部12が、絶縁層3を貫通して形成された導体部7を介して、多層配線基板10のベースボード1の配線層4に接続されているように、構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関し、さらに詳しく述べると、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を示すとともに、放熱の問題を解消することのできる多層配線基板と、その製造方法に関する。本発明はまた、かかる多層配線基板を使用した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近における半導体装置の微細化及び高機能化に伴い、半導体装置に搭載される半導体素子(以下、「半導体チップ」ともいう)の電極端子数が増大している。これに対応するため、従来、半導体チップの電極端子形成面にエリアアレイ状に電極端子を形成した後、フリップチップ接続によって配線基板に半導体チップを搭載する方法が採用されている。フリップチップ接続によると、半導体素子の電極端子に形成したバンプを配線基板の外部接続端子(バンプ)に接合することによって、電極端子と外部接続端子とを電気的に接続することができる。また、配線パターンの微細化に対応するため、複数層の配線基板を積層して使用する方法、いわゆる「ビルトアップ法」も採用されている。
【0003】
上記のような構成をもった配線基板はすでに周知のところであり、例えば特許文献1には、シート状に形成された絶縁樹脂と、その絶縁樹脂上の所定の位置に形成された電極と、導電ワイヤの表面に絶縁性材料が被覆された構成とされており、電極間を電気的に接続するとともに、一部が絶縁樹脂から露出された被覆ワイヤと、絶縁材料上に露出した被覆ワイヤを封止するよう、絶縁樹脂上に形成された導電性樹脂と、を有することを特徴とする配線基板が記載されている。具体的に説明すると、かかる配線基板を備えた半導体装置は、例えば、図11に示すような構成を有することができる。半導体装置100は、配線基板110と、それに搭載された半導体素子112と、はんだボール114とを有している。配線基板110は、バンプ接合パッド116、外部接続用パッド117、導電性樹脂122及び絶縁樹脂120より構成されている。また、半導体素子112は、複数のバンプ115を有している。半導体素子112は、配線基板110のバンプ接合パッド116にフリップチップ技術で接続され、半導体素子112と配線基板110の間には、接続時のストレスの発生を抑制するため、アンダーフィル材119が埋め込まれている。また、バンプ接合パッド116と外部接続用パッド117の間には、被覆ワイヤ118がワイヤボンディングされている。はんだボール114は、ボード130を搭載するためのものである。
【0004】
上記のような構成の半導体装置において、半導体素子112において発生した熱の処理に問題がある。すなわち、半導体素子112の直上にはボード130が取り付けられるので、半導体素子112を安定に動作させるため、発生した熱を効果的に放出させることが必要である。この目的のため、通常は、ここでは図示しないが、図11に示した配線基板110の裏側(半導体素子112の搭載面とは反対側の面)に例えばアルミニウム製の放熱フィンを取り付けることで、放熱フィンから外部に熱を放出することができる。しかしながら、配線基板が多層配線基板である場合、多層配線基板の裏側もはんだバンプを介して電子部品を搭載するように構成されているので、放熱フィンを取り付けることができない。よって、多層配線基板において放熱の問題を解消できることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2000−323516(特許請求の範囲、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層配線基板において、高密度な相互接続のために使用されるパッドアレイに対し、最上部の配線層でリラウトされない内側のパッド部分は、その下方の配線層に垂直ヴィアで接続され、その配線層でリラウトされないパッド部分はさらにその下方の配線層に垂直ヴィアで接続される構成を採用している。このような構成を採用した場合、最上層でリラウトされないパッドは、下層に垂直ヴィアで接続され近隣パッドと相対位置関係を保つため、チャネル制限が大きかった。
【0007】
本発明の目的は、したがって、数千もしくはそれ以上の高密度多I/O数のリラウトに対してチャネル問題が大幅に緩和された多層配線基板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を示すとともに、放熱の問題を解消することのできる多層配線基板を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の目的は、かかる多層配線基板を単純化されかつ短縮されたプロセスで、高い信頼性及び歩留まりをもって製造できる方法や、かかる多層配線基板を使用した半導体装置を提供することにある。
【0010】
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その1つの面において、1個もしくはそれ以上の半導体素子を所定の位置に搭載するためのものであって、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする多層配線基板にある。
【0012】
また、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による多層配線基板を製造するに当たって、下記の工程:
前記配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
前記金属箔の、後段の工程において前記配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、前記配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
前記金属箔の上に、前記金属箔及び前記導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
前記有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、前記多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に前記金属箔の半硬化状態の前記有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
前記金属箔の、前記ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
前記開口部において露出した前記有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、前記ベースボードの前記配線部に達した貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔を導体により充填して、前記金属箔と前記ベースボードの前記配線部とを接続する導体部を形成する工程、及び
前記金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
を含んでなることを特徴とする多層配線基板の製造方法にある。
【0013】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置であって、前記多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする半導体装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、多くの利点を得ることができる。特に本発明では、多層配線基板において問題とされてきた、数千もしくはそれ以上の高密度多I/O数のリラウトに対してのチャネル問題を、放熱問題と同時に解決することができる。また、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を同時に実現することができる。
【0015】
具体的に説明すると、従来の手法では高密度な配線パターンにおいてパッドの引き出しをパッド間の配線に依存してきたが、これでは配線長が長くなり、インピーダンスの上昇を避けることができなかった。これに対して、本発明では、パッド引き出し配線を導体ワイヤで行い、しかもその導体ワイヤを湾曲して立体的に配置することで、導体ワイヤの配線パターンを上方から観察したとき、配線パターンをほぼ直線的となるように構成することができ、よって、配線長の短縮によりインダクタンスの低下を達成することができる。
【0016】
また、従来の手法では、高密度な相互接続に使用されるパッドアレイに対し、最上層でリラウトされない内側パッドは下層に垂直ヴィアで接続され、そこでリラウトされないパッド部分はさらに下層に垂直ヴィア接続され、全パッドがリラウトされるまで層を積層することが必要であった。これに対して、本発明では、パッド間の配線を導体ワイヤで行うことで垂直ヴィア接続を解消することができ、よって、インピーダンスの不連続点を減らし、反射や挿入損を低減することができる。また、多数の接続部を介した接続を行うことや細々した接続を設けることも不要であるので、接続の信頼性を大幅に向上させ、歩留まりを高めることができる。
【0017】
また、本発明の配線基板によれば、半導体素子が配線基板とマザーボードとの間に設けられる構成ではなく、半導体素子搭載面と反対側の面とマザーボードとを接続することが可能となるため、半導体素子に既存のヒートスプレッダ等の放熱部材を設けることができる。
【0018】
さらに、導体ワイヤを導体金属の単線から構成することに代えて同軸構造を有するように構成した場合、クロストークの発生を回避もしくは低く抑えることができる。また、同軸構造を有する導体ワイヤを全面的に導体で被覆することにより、低EMI(電磁障害)を実現することができる。
【0019】
さらにまた、多層配線基板で導体ワイヤの封止に使用する有機絶縁材料として、熱伝導性に優れた絶縁材料や熱伝導性に優れた粒子を分散させた粒子分散型絶縁材料を使用することで、半導体装置の放熱性を改善することができる。
【0020】
その他の効果としては、例えば、導体ワイヤの表面を絶縁層で被覆するとき、その絶縁層の膜厚を制御したり、絶縁層に使用する絶縁材料の比誘電率を変更したりすることにより、インピーダンスの整合に由来した低反射、低挿入損失を達成することができる、ということを挙げることができる。また、配線表面が平滑であるので、高周波におけるロスの減少を達成することができる。また、配線密度に対して配線断面積を大きくしたこと(矩形の断面をもった配線から円形の断面をもった導体ワイヤに変更したことによる)により、低導体損失を達成することができる。また、構造が簡単であるので、多層配線基板や半導体装置を簡略化された手法で短時間に低コストで製造することができ、装置のデザインの変更があっても、柔軟に対応することができる。また、多層配線基板には半導体素子が作り込まれていないが、半導体素子の接続端子や外部接続端子が露出した状態にあるので、半導体装置の製造業者の多様化された要求に応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明による多層配線基板及びその製造方法ならびに半導体装置は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は、下記の形態によって限定されるものではない。
【0022】
本発明は、その1つの面において、多層配線基板にある。本発明による多層配線基板は、例えば図1に示される構成を有することができる。多層配線基板10は、上面に配線層4を有するベースボード1と、ベースボード1の上に積層された絶縁層3を有しており、絶縁層3の表面に配線層2が形成されている。配線層2は、金属箔のパターニングによって形成されたものであり、半導体素子を搭載するための接続端子22及び外部接続端子として機能する配線部12を有している。半導体素子用接続端子22は、相互に接触したように図示されているが、実際には個々に分離されている。接続端子22に搭載される半導体素子は、特に限定されるものではなく、したがって、各種の半導体チップ、例えば、ICチップ、LSIチップ、その他を包含することができる。また、このような半導体チップの搭載には、常用の技法、例えば、フリップチップマウント、チップマウントなどを利用することができる。搭載される半導体素子は、1個であってもよく、2個以上であってもよく、また、複数個の半導体素子が搭載される場合、それらの半導体素子は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベースボード1は、半導体素子搭載面とは反対側の面にバンプ24、例えばはんだバンプを設けている。本発明によれば、マザーボード等と接続する面と反対側の面に半導体素子を接続することにより、ヒートスプレッダ等の放熱システムを設けることが可能となる。
【0023】
配線部12及び接続端子22は、上記したように、金属箔の選択的なエッチングによって形成された配線層2に形成されたものである。配線層2の形成に使用される金属箔は、特に限定されるものではないが、ニッケル箔、コバルト箔、銅箔などを挙げることができ、好ましくは、銅箔である。
【0024】
配線層2は、そのままで使用してもよいが、通常、本発明で配線部12及び半導体素子用接続端子22と呼ぶ外部接続端子(接続パッド)をその上に形成した状態で使用される。接続パッドは、単層の形で形成してもよく、2層もしくはそれ以上の多層構造をもった複合パッドの形で形成してもよい。複合パッドは、例えば、低融点金属のめっきにより第1のパッドを形成し、引き続いてその低融点金属よりも高融点の金属のめっきにより第2のパッドを形成することで形成することができる。低融点金属は、好ましくは、合金の形で用いられる。適当な低融点合金は、例えば、錫−鉛(SnPb)合金、錫−銀(SnAg)合金、錫−銅−銀(SnCuAg)合金などである。さらに、上述のようにして複合パッド型の端子を形成する場合、第1のパッドの形成を、それによって得られるパッドの領域が第2のパッドの領域よりも大きくなるような条件の下で行うことが好ましい。なお、かかる外部接続端子のサイズを一般的に説明すると、例えば円形の端子の場合、直径は、約100〜200μmであり、また、厚さは、約5〜30μmである。また、これらの外部接続端子は、必要に応じて、配線基板の分野で一般的に行われているように、接続の信頼性を高めることなどのために、はんだバンプやランド、その他の手段をその表面に有していてもよい。
【0025】
配線層2は、通常、金属箔の選択的なエッチングによって有利に形成することができるが、本発明に従うと多層配線基板をいろいろな手法によって形成することができるため、多層配線基板の形成工程に依存して、別の方法で配線層2を形成してもよい。例えば配線層2は、金属箔のエッチングにより形成することに代えて、導体金属の電解めっきによって形成してもよい。例えば、配線層を形成予定の領域以外をレジストでマスクしておいて、例えば金、パラジウム、コバルト、ニッケルなどの導体金属を所定の膜厚で電解めっきすることによって、配線層2を形成することができる。
【0026】
配線部12及び接続端子22は、それぞれ、いろいろなパターンで、好ましくはエリアアレイ状のパターンで、絶縁層3に配置することができる。図3及び図4は、それぞれ、配線部12及び接続端子22をエリアアレイ状に配置した例を示したものである。図3の配置例の場合、エリアAが半導体素子用接続端子22の集まりであり、それに隣接したエリアBに配線部(外部接続端子)12が集まっている。また、図4の配置例の場合、エリアII及びIIIが半導体素子用接続端子22の集まりであり、それに隣接したエリアI及びIVに配線部(外部接続端子)12が集まっている。なお、これらの配置例から理解されるように、本発明の多層配線基板の場合、導体ワイヤ5の配線パターンを上方から観察したとき、それぞれの配線パターンは、直線もしくはほぼ直線である。このように配線長を最短化することによって低インダクタンス化を図れることは、前記した通りである。
【0027】
多層配線基板10の絶縁層3は、任意の絶縁材料から形成することができ、好ましくは、有機絶縁材料から塗布、ポッティング等の手法で形成することができる。適当な有機絶縁材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。なお、本発明の絶縁層の内部には導体ワイヤが埋封されていることが必須であるが、このようなワイヤ埋封構造は、好ましいことに、多層配線基板の製造と切り離して特別の工程で形成するのではなくて、多層配線基板の製造の途中の任意の段階で形成することができる。
【0028】
絶縁層の形成に用いられる有機絶縁材料は、そのままで使用してもよいが、放熱性を改良するため、高熱伝導性の材料の粒子が分散せしめられた粒子分散型有機絶縁材料の形で使用してもよい。粒子分散型有機絶縁材料は、上記した有機絶縁材料からなるバインダ樹脂と、そのバインダ樹脂中に分散せしめられた高熱伝導性の材料の粒子、粉末等のフィラーとからなることが好ましい。適当なフィラーは、例えば、金、銀、銅、ニッケルあるいはその合金などである。また、フィラーの形状及びサイズは、任意に変更することかできが、好ましくは球形である。
【0029】
本発明の多層配線基板では、その配線層に形成された複数の配線部の間が導体ワイヤによって電気的に接続されている。例えは図1を参照してこれを説明すると、絶縁層3上の配線層2に形成された半導体素子用接続端子22が同じく配線層2に形成された外部接続端子12に導体ワイヤ5を介して電気的に接続されている。導体ワイヤ5は、図示される通り、湾曲して立体的に配置されている。但し、接続端子(配線部)22及び12ならびに導体ワイヤ5は、導体ワイヤ5が絶縁層3の内部に配置されているので、両者が同一平面上に存在していない。また、絶縁層3内の導体ワイヤ5の配置パターンは、それを多層配線基板10の上方から観察したとき、湾曲していない。すなわち、図3及び図4に示すように、配線部(接続パッド)22及び12間をつなぐ配線パターンはほぼ直線的である。なお、図3及び図4より、本発明に従えば、配線部をエリアアレイ状に配置してフリップチップ接続するとき、複数個の配線部をマトリックス化し、相互に接続することが可能である。なお、図では導体ワイヤ5が半導体素子用接続端子22から外部接続端子12に接続されているが、必要に応じて、半導体素子用接続端子22どうし、あるいは外部接続端子12どうしを導体ワイヤ5で接続してもよい。
【0030】
本発明の実施において、導体ワイヤは、半導体装置の分野においてボンディングワイヤとして一般的に使用されているものを有利に使用することができる。しかし、本発明で使用されるボンディングワイヤは、それが絶縁層内に封じ込められる必要があるので、それに耐え得るものでなければならない。導体ワイヤは、任意の導電性材料(導体)、好ましくは導体金属から形成することができる。適当な導体金属は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などである。
【0031】
本発明の実施において、導体ワイヤは、特にクロストークの発生を回避するために、その表面が絶縁層を介して金属層で覆われており、導体ワイヤをコアとする同軸構造を有していることが好ましい。すなわち、図7(C)の線分D−Dに沿った断面図である図7(D)に示すように、導体ワイヤは、導体ワイヤ5と、それを順次被覆した、絶縁層14及び金属層15とからなる同軸構造を有しているのが有利である。この同軸構造の導体ワイヤのコアは、上記した通り、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などの導体金属から有利に構成することができる。また、かかる導体ワイヤを被覆する絶縁層は、好ましくは、絶縁性の樹脂のコーティング、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などのコーティングである。また、アルミニウムワイヤの場合は、酸化被膜も有効である。樹脂コーティングは、例えば、静電塗装、スプレーコーティング、ディップコーティングなどによって形成することができる。なお、導体ワイヤを絶縁層で被覆することに代えて、すでに絶縁被覆が表面に形成されている市販の導体ワイヤを使用してもよい。最上層の金属層は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などの導体金属から形成することができる。特に、導体金属として銅を有利に使用することができる。銅の層は、例えば、無電解銅めっきもしくは電解銅めっきによって好適に形成することができる。金属層は、好ましくはグランド電位に電気的に接続される。
【0032】
導体ワイヤは、その構成や材料などにいろいろなサイズを有することができる。例えば、導体ワイヤ直径もしくは、同軸構造の場合、導体ワイヤのコアの直径は、通常、約20〜40μmである。また、コアを被覆する絶縁層の厚さは、もしも予め周囲に絶縁層を被覆した導体ワイヤを用い、そのまゝワイヤボンディングを行う場合には、通常、約2〜8μmである。また、未被覆の導体ワイヤを用いてワイヤボンディングを行った後にその導体ワイヤの周囲に絶縁層を被覆する場合には、通常、10〜50μmである。この絶縁層の厚さは、絶縁層に用いる材料と、インピーダンス整合の要求によって、変動するであろう。なお、本発明の多層配線基板では、導体ワイヤを取り囲む導電性樹脂とのかねあいでこの絶縁層の材質(比誘電率)や厚さを調整することによって、得られる多層配線基板にキャパシタンスを持たせることも可能である。必要に応じて、絶縁層を被覆して形成される金属層も、絶縁層と同様に、所望とする効果などに応じて広い範囲で膜厚を変更することができ、通常、約5〜30μmである。
【0033】
再び図7(D)を参照すると、同軸構造を有する導体ワイヤにおいて、導体ワイヤ5の外径D1に対する金属層15の内径D0の比は、約1:3〜6の範囲であることが好ましい。このように構成することによって、クロストークの発生の回避に加えて、インピーダンスの整合をより効果的に行うことができる。
【0034】
本発明の多層配線基板10では、さらに、配線層2に形成された配線部(外部接続端子)12が、その配線層2を保有する絶縁層3を貫通して形成された導体部7を介して、配線層4に電気的に接続されている。配線層4は、多層配線基板10のベースボード1の配線層4に形成された配線部13である。
【0035】
ベースボード1は、多層配線基板において常用のベースボードであることができ、特に限定されるものではない。ベースボード1は、例えば、セラミック材料、プラスチック材料などの無機系絶縁材料から形成されている。ベースボード1の内部には、図示しないが、配線等が組み込まれており、その表面には、図1に示したように、配線部13が形成されている。配線部13は、ベースボード1の電極、配線、外部接続端子などである。配線部13は、すでに説明した配線部12と同様な構成を有し、かつ同様な手法で形成することができる。また、図示しないが、ベースボード1の裏面には外部接続端子等が形成されており、また、外部接続端子には、外部の部品等との接続のため、はんだバンプなどが取り付けられている。図では、簡略化して、バンプ24が示されている。
【0036】
本発明の多層配線基板10では、配線層2の配線部12をベースボード1の配線部13に接続するため、絶縁層3を貫通して形成された導体部7が用いられる。導体部7は、本発明の実施において、いろいろな形態で形成することができる。例えば、導体部7は、絶縁層3を貫通する貫通孔を形成した後、その貫通孔を導体めっきにより充填して、配線部12と配線部13とを接続する導体部7を形成することができる。別法によれば、導体部7を導体めっきにより形成することに代えて、それに対応する形状及び寸法を有する導体金属の柱(ポスト)を多層配線基板10を形成する任意の段階で配置することによって、導体部7を形成することができる。
【0037】
例えば導体めっきにより導体部を形成する場合、一般的には、絶縁層を貫通する貫通孔に導体めっきを施すことによって実施することができる。具体的には、例えば、絶縁層の表面全体にレジストを被覆した後、導体部を形成すべき部分からレジストを除去する。次いで、レジストとその下地の絶縁層を覆うように、導体部を形成するための導体材料、例えば金、パラジウム、コバルト、ニッケルなどを所定の厚さで電解めっきする。マスクとして使用したレジストを除去すると、目的とする導体部を得ることができる。
【0038】
金属柱によって導体部を形成する場合、一般的には、配線層を形成するための金属箔の上に導体ワイヤを配置した後、その金属箔の予め定められた位置に、導体金属からなる柱(いわば、金属柱)をポスト状に設けることによって形成することができる。ここで言う金属柱は、円柱、角柱などであるが、場合によっては太い導体ワイヤであってもよい、この方法で、金属柱の形成は、いろいろな技法に従って行うことができる。例えば、金属柱を埋め込むか、さもなければ金属柱を形成するのに適当な導体金属を充填もしくはめっきすることによって、金属柱を形成することができる。かかる金属柱の形成は、さらに詳細には、特開平8−78581号公報、特開平9−331133号公報、特開平9−331134号公報、特開平10−41435号公報などに記載の方法を使用して行うことができる。
【0039】
図8及び図9は、本発明による多層配線基板の別の好ましい形態を説明したものである。例えば図8に示した多層配線基板10は、図1を参照して上記した導体部7を、図示のように導体金属のコア(本例では、銅ボール)17から構成した相違点を除いて、図1の金属配線基板10と同様な構成を有することができる。図示の多層配線基板10では、例えば、絶縁層に形成された貫通孔に銅ボールを充填した後、それをはんだ18で固定することによって導体部を形成することができる。このように構成することによって、例えば、接続位置のセルフアライニング(はんだの濡れでボールが適切な位置に動く)や、応力緩和、めっき工程の不要化、などといった利点を得ることができる。
【0040】
また、図9に示した多層配線基板10は、絶縁層3とベースボード1の配線層4との間に、もう1つの絶縁層6をさらに配置した形態を示している。本例では、上記のようにして導体部を金属柱27から形成するとともに、マザーボード1上の配線部13に低融点金属などの接続パッド28などを介して金属柱27を接続することができる。この多層配線基板10において、もう1つの絶縁層6は、好ましくは、接着剤、さらに好ましくは絶縁性の接着剤、例えばポリイミド系の接着剤などから構成することができる。このように構成することによって、例えば、接着剤のキュア(硬化)と導体接続とを同時に行える、めっき工程が不要となる、などといった利点を得ることができる。なお、図では金属柱27をそのままの形で使用したが、これに代えてその他の接続手段を使用してもよい。例えば、金などの金属製のワイヤでボールを作製し、その一部を除去してボール状の金属柱を形成することができる。
【0041】
本発明の多層配線基板は、チップ部品等をさらに備えていてもよい。例えば、多層配線基板10は、図10に示すように、配線層2を備えた絶縁層3に、その配線層2の配線部12と電気的に接続されたチップ部品30をさらに有することができる。チップ部品30は、キャパシタ、レジスタ、インダクタなどであるけれども、これらの部品に限定されるものではない。また、これらのチップ部品に代えて、その他の機能性部品が組み込まれていてもよい。また、図示のように、絶縁層3に形成された凹部(キャビティ)にチップ部品30を埋め込むことによって、得られる多層配線基板10の小型化、コンパクト化を達成することができる。この場合、例えばレジスト等の絶縁性の樹脂をポッティングなどにより凹部に埋め込んで、凹部内のチップ部品30を樹脂封止してもよい。
【0042】
本発明は、そのもう1つの面において、多層配線基板の製造方法にある。本発明の多層配線基板は、いろいろな手法に従って製造することができる。有利には、本発明の多層配線基板は、例えば、下記の工程:
配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
金属箔の、後段の工程において配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
金属箔の上に、金属箔及び導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に金属箔の半硬化状態の有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
得られた積層体において、前記金属箔の、ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
形成された開口部において、露出した有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、ベースボードの配線部に達した貫通孔を形成する工程、
形成された貫通孔を導体により充填して、金属箔とベースボードの配線部とを接続する導体部を形成する工程、そして
金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
によって製造することができる。
【0043】
図5及び図6は、本発明の多層配線基板を製造する好ましい1方法を順を追って示したものである。最初に、図5(A)に示すように、配線層を形成するための金属箔2を用意する。金属箔2は、前記したように、銅箔やその他の導体金属から形成することができる。金属箔2は、後段の工程における位置合わせ作業を精確かつ迅速に行うため、アライメントマークを予め形成しておくことが推奨される。
【0044】
次いで、図5(B)に示すようにワイヤボンディングを行う。ワイヤボンディング作業は、金属箔2の、後段の工程において配線層の配線部を形成する部位に、例えば金ワイヤのような導体ワイヤを配置して、配線部形成部位どうしを電気的に接続する。接続手段として、一般的なワイヤボンディング技術を用いることができる。導体ワイヤは、例えば、20μmの直径を有することができる。導体ワイヤは、好ましくは、同軸構造を有する導体ワイヤの形で使用することができる。
【0045】
導体ワイヤを同軸構造を有する導体ワイヤの形で使用する場合、好ましくは、図7に示すようにして導体ワイヤを形成することができる。最初に、図7(A)に示すように、金属箔2に導体ワイヤ5の一端を接続する。次いで、図7(B)に示すように、接続した導体ワイヤ5の表面と、導体ワイヤ5と配線部形成部位とが接続された領域を絶縁材料で被覆して絶縁層5を形成し、さらにその後、図7(C)に示すように、絶縁層5を金属材料で被覆して金属層15を形成する。金属層15は、例えば、無電解めっき法又は金属化合物熱分解法で形成することができる。また、金属層15は、グランド電位に電気的に接続することが好ましい。このようにして、図7(D)、すなわち、図7(C)の線分D−Dに沿った断面図に示すように、導体ワイヤ5をコアとする同軸構造をもった導体ワイヤを形成することができる。
【0046】
ワイヤボンディングの完了後、得られた導体ワイヤを流動性の有機絶縁材料で被覆するのが一般的な順序である。しかしながら、本発明の実施においては、製造プロセスに応じて他の工程を先行させることもできる。例えば、導体部をめっきによって形成する代わりに、導体部として機能する金属柱を使用する場合、ワイヤボンディング工程に続けて、金属柱を金属箔上に立設してもよい。
【0047】
引き続いて、図5(C)に示すように、金属箔2の上に、金属箔2及び導体ワイヤ5を全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布し、硬化させる。有機絶縁材料は、例えば、3液性エポキシ系樹脂をポッティングによって塗布し、例えば50〜100℃の温度を維持することによって硬化させることができる。これにより得られる樹脂層は、まだ半硬化の状態である。
【0048】
有機絶縁材料が半硬化の状態にあるとき、図5(D)に示すように、有機絶縁材料の層3を反転させて下向きとし、金属箔2を上向きとした後、別に用意しておいた多層配線基板のベースボード1に位置合わせし、積層する。ベースボード1には、その表面に配線部(パターン化された配線層)13がすでに形成されている。この積層の結果、ベースボード1の配線層保有表面に金属箔2を保持した半硬化状態の有機樹脂材料の層3を対面させることができる。
【0049】
ベースボード1と有機樹脂材料の層3を積層させた後、得られた積層体において、金属箔2の、ベースボード1の配線層保有表面の配線部13に対応する部位(図6(E)に参照番号7で示される点線部分のうち、金属箔2の部分を指す)に開口部を形成する。この開口部は、例えば、金属箔2の上にエッチングレジスト層を形成した後、金属箔2のうちベースボード1の配線部13に対応する部位をエッチングにより選択的に除去することによって容易に形成することができる。開口部の形成後、エッチングレジスト層をマスクとして、その開口部において露出した有機樹脂材料の層3を選択的にエッチングする。エッチングをベースボード1の配線部13のところで停止させると、金属箔2からベースボード1の配線部13に達した貫通孔を形成することができる。
【0050】
貫通孔の形成後、図6(E)に示すように、形成された貫通孔を導体めっきにより充填して、金属箔2とベースボード1の配線部13とを接続する導体部7を形成する。導体部7の形成は、導体金属のめっきによって、例えば、金属箔2の全面に無電解銅めっき及び電解銅めっきを順次実施することによって達成することができる。かかる導体金属のめっきによって、貫通孔とその上の金属箔の開口部を導体金属で充填することができる。めっきの完了後、最上層に残留していたエッチングレジスト層を除去する。
【0051】
最後に、図6(F)に示すように、金属箔2を所望とする配線パターンに応じて選択的にパターニングして配線パターン2を形成し、さらにその上に半導体素子用接続端子22及び外部接続端子12を形成する。ベースボード1の下面にはバンプ24を形成する。最表面にソルダレジスト層(図示せず)を形成すると、図1に示しかつ先に説明したような多層配線基板10を完成させることができる。
【0052】
上記のような多層配線基板の製造方法は、先にも述べたように、本発明の範囲内でいろいろに変更することができる。例えば、ワイヤボンディング工程の完了後に3液性のエポキシ系樹脂を形成し、硬化させた後、所定の部位に貫通孔を形成してもよい。貫通孔の形成後、その貫通部分にめっきにより例えば銅のような導体金属を充填し、引き続いて配線部付きのベースボードをアライメント積層する。
【0053】
また、多層配線基板の製造方法において、半硬化状態の有機絶縁材料の層を形成する工程と、多層配線基板のベースボードに金属箔を積層する工程との間に、半硬化状態の有機絶縁材料の層を完全に硬化させた後にもう1つの絶縁層を形成する工程をさらに含んでもよい。この方法の場合、もう1つの絶縁層は、好ましくは接着剤層である。このように構成することによって、例えば、ワイヤを内含する状態の層を硬化させることにより、安定中間材として扱うことができる、などといった利点を得ることができる。
【0054】
さらに、配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程の前もしくはその後に、金属箔にチップ部品やその他の部品を接続する工程をさらに有していてもよい。この方法において、チップ部品やその他の部品を接続する前、その接続部分の周縁に絶縁材料の溜まりを予め形成していてもよい。
【0055】
さらにもう1つの面において、本発明は、本発明の多層配線基板を備えた半導体装置にある。本発明の半導体装置は、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置である。この半導体装置において、多層配線基板は、先に説明したような本発明の多層配線基板である。また、この半導体装置において、配線層を備えた絶縁層は、配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品などをさらに有していてもよい。
【0056】
図2は、本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した断面図である。図示の半導体装置50は、図1に示したような多層配線基板10の上に、半導体チップ20を搭載した例である。半導体チップ20は、半導体チップ接続端子22上に形成されたバンプ23を介して多層配線基板10と電気的に接続されている。半導体素子搭載面と同一の面には外部接続端子12が設けられているが、これには外部装置を接続することができる。この場合、使用する半導体チップは、発熱の小さい半導体素子であることが好ましく、また、積層される外部装置は、放熱のための機構を備えていることが好ましい。絶縁層3は、その熱伝導性を高めるため、絶縁樹脂中に金属粉末(フィラー)が分散せしめられている。また、半導体チップ20のバンプ23の部分は、アンダーフィル材で封止されていてもよい。また、ベースボード1にはバンプ24が設けられている。それぞれのバンプ24は、例えば、はんだバンプ(SnAg)からなる。
【0057】
半導体装置50において、半導体チップ接続端子22と外部接続端子12の導体ワイヤ5を介した電気的接続において、導体ワイヤ5は、先に図7を参照して説明したように、同軸構造を有していてもよい。また、導体ワイヤ5は、図示しないが、その最上層の金属層をグランド電位に接続してもよい。
【実施例】
【0058】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものでない。
【0059】
アライメントマークを形成した銅箔(サイズ:約15cm角)を用意した。この銅箔のマット面の所定の複数の2点間を直径20μmの金ワイヤで接続した。次いで、銅箔及び金ワイヤを全面的に被覆するように、3液性エポキシ系樹脂をポッティングにより供給し、金ワイヤが十分に被った樹脂層(厚さ:銅箔上で約30μm)を形成した。樹脂層を50〜100℃の温度で保持することで硬化させた。次いで、硬化された樹脂層の所定に位置にCO2レーザーで直径約80μmの貫通孔を形成した。引き続いて、樹脂層の全面に無電解銅めっき及び電解銅めっきを施し、貫通孔に銅を充填した。めっきの完了後、銅箔付きの樹脂層が得られた。
【0060】
別に、表面に配線パターンを有するベースボード(試作品;サイズ:約20cm角、厚さ:約260μm)を用意した。このベースボードの上に、先に工程で作製した銅箔付きの樹脂層をその銅箔を上にしてアライメント接続し、ボンディングシートを介して接合した。次いで、銅箔部にエッチングレジストを塗布し、次いで、銅箔を所定配線パターンにエッチングした。エッチングの完了後、最表面にソルダレジストを厚さ約20μmで塗布して多層配線基板が完成した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による多層配線基板の好ましい1形態を示した断面図である。
【図2】本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した断面図である。
【図3】本発明による多層配線基板において配線長短縮による低インピーダンス化を実現できた理由を示した模式図である。
【図4】本発明による多層配線基板において配線長短縮による低インピーダンス化を実現できた理由を示した模式図である。
【図5】図1に示した多層配線基板を製造する1手法(その1)を順を追って示した断面図である。
【図6】図1に示した多層配線基板を製造する1手法(その2)を順を追って示した断面図である。
【図7】本発明の多層配線基板において使用し得る同軸構造をもった導体ワイヤを製造する1手法を順を追って示した断面図である。
【図8】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図9】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図10】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図11】従来の半導体装置の一例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ベースボード
2 配線層
3 絶縁層
4 配線層
5 導体ワイヤ
6 絶縁層
7 導体部
10 多層配線基板
14 絶縁層
15 金属層
20 半導体素子
30 チップ部品
50 半導体装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関し、さらに詳しく述べると、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を示すとともに、放熱の問題を解消することのできる多層配線基板と、その製造方法に関する。本発明はまた、かかる多層配線基板を使用した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近における半導体装置の微細化及び高機能化に伴い、半導体装置に搭載される半導体素子(以下、「半導体チップ」ともいう)の電極端子数が増大している。これに対応するため、従来、半導体チップの電極端子形成面にエリアアレイ状に電極端子を形成した後、フリップチップ接続によって配線基板に半導体チップを搭載する方法が採用されている。フリップチップ接続によると、半導体素子の電極端子に形成したバンプを配線基板の外部接続端子(バンプ)に接合することによって、電極端子と外部接続端子とを電気的に接続することができる。また、配線パターンの微細化に対応するため、複数層の配線基板を積層して使用する方法、いわゆる「ビルトアップ法」も採用されている。
【0003】
上記のような構成をもった配線基板はすでに周知のところであり、例えば特許文献1には、シート状に形成された絶縁樹脂と、その絶縁樹脂上の所定の位置に形成された電極と、導電ワイヤの表面に絶縁性材料が被覆された構成とされており、電極間を電気的に接続するとともに、一部が絶縁樹脂から露出された被覆ワイヤと、絶縁材料上に露出した被覆ワイヤを封止するよう、絶縁樹脂上に形成された導電性樹脂と、を有することを特徴とする配線基板が記載されている。具体的に説明すると、かかる配線基板を備えた半導体装置は、例えば、図11に示すような構成を有することができる。半導体装置100は、配線基板110と、それに搭載された半導体素子112と、はんだボール114とを有している。配線基板110は、バンプ接合パッド116、外部接続用パッド117、導電性樹脂122及び絶縁樹脂120より構成されている。また、半導体素子112は、複数のバンプ115を有している。半導体素子112は、配線基板110のバンプ接合パッド116にフリップチップ技術で接続され、半導体素子112と配線基板110の間には、接続時のストレスの発生を抑制するため、アンダーフィル材119が埋め込まれている。また、バンプ接合パッド116と外部接続用パッド117の間には、被覆ワイヤ118がワイヤボンディングされている。はんだボール114は、ボード130を搭載するためのものである。
【0004】
上記のような構成の半導体装置において、半導体素子112において発生した熱の処理に問題がある。すなわち、半導体素子112の直上にはボード130が取り付けられるので、半導体素子112を安定に動作させるため、発生した熱を効果的に放出させることが必要である。この目的のため、通常は、ここでは図示しないが、図11に示した配線基板110の裏側(半導体素子112の搭載面とは反対側の面)に例えばアルミニウム製の放熱フィンを取り付けることで、放熱フィンから外部に熱を放出することができる。しかしながら、配線基板が多層配線基板である場合、多層配線基板の裏側もはんだバンプを介して電子部品を搭載するように構成されているので、放熱フィンを取り付けることができない。よって、多層配線基板において放熱の問題を解消できることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2000−323516(特許請求の範囲、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層配線基板において、高密度な相互接続のために使用されるパッドアレイに対し、最上部の配線層でリラウトされない内側のパッド部分は、その下方の配線層に垂直ヴィアで接続され、その配線層でリラウトされないパッド部分はさらにその下方の配線層に垂直ヴィアで接続される構成を採用している。このような構成を採用した場合、最上層でリラウトされないパッドは、下層に垂直ヴィアで接続され近隣パッドと相対位置関係を保つため、チャネル制限が大きかった。
【0007】
本発明の目的は、したがって、数千もしくはそれ以上の高密度多I/O数のリラウトに対してチャネル問題が大幅に緩和された多層配線基板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を示すとともに、放熱の問題を解消することのできる多層配線基板を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の目的は、かかる多層配線基板を単純化されかつ短縮されたプロセスで、高い信頼性及び歩留まりをもって製造できる方法や、かかる多層配線基板を使用した半導体装置を提供することにある。
【0010】
本発明のこれらの目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その1つの面において、1個もしくはそれ以上の半導体素子を所定の位置に搭載するためのものであって、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする多層配線基板にある。
【0012】
また、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による多層配線基板を製造するに当たって、下記の工程:
前記配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
前記金属箔の、後段の工程において前記配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、前記配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
前記金属箔の上に、前記金属箔及び前記導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
前記有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、前記多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に前記金属箔の半硬化状態の前記有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
前記金属箔の、前記ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
前記開口部において露出した前記有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、前記ベースボードの前記配線部に達した貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔を導体により充填して、前記金属箔と前記ベースボードの前記配線部とを接続する導体部を形成する工程、及び
前記金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
を含んでなることを特徴とする多層配線基板の製造方法にある。
【0013】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置であって、前記多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする半導体装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、多くの利点を得ることができる。特に本発明では、多層配線基板において問題とされてきた、数千もしくはそれ以上の高密度多I/O数のリラウトに対してのチャネル問題を、放熱問題と同時に解決することができる。また、低インダクタンス、インピーダンス整合性、低クロストーク等に代表される優れた電気的特性を同時に実現することができる。
【0015】
具体的に説明すると、従来の手法では高密度な配線パターンにおいてパッドの引き出しをパッド間の配線に依存してきたが、これでは配線長が長くなり、インピーダンスの上昇を避けることができなかった。これに対して、本発明では、パッド引き出し配線を導体ワイヤで行い、しかもその導体ワイヤを湾曲して立体的に配置することで、導体ワイヤの配線パターンを上方から観察したとき、配線パターンをほぼ直線的となるように構成することができ、よって、配線長の短縮によりインダクタンスの低下を達成することができる。
【0016】
また、従来の手法では、高密度な相互接続に使用されるパッドアレイに対し、最上層でリラウトされない内側パッドは下層に垂直ヴィアで接続され、そこでリラウトされないパッド部分はさらに下層に垂直ヴィア接続され、全パッドがリラウトされるまで層を積層することが必要であった。これに対して、本発明では、パッド間の配線を導体ワイヤで行うことで垂直ヴィア接続を解消することができ、よって、インピーダンスの不連続点を減らし、反射や挿入損を低減することができる。また、多数の接続部を介した接続を行うことや細々した接続を設けることも不要であるので、接続の信頼性を大幅に向上させ、歩留まりを高めることができる。
【0017】
また、本発明の配線基板によれば、半導体素子が配線基板とマザーボードとの間に設けられる構成ではなく、半導体素子搭載面と反対側の面とマザーボードとを接続することが可能となるため、半導体素子に既存のヒートスプレッダ等の放熱部材を設けることができる。
【0018】
さらに、導体ワイヤを導体金属の単線から構成することに代えて同軸構造を有するように構成した場合、クロストークの発生を回避もしくは低く抑えることができる。また、同軸構造を有する導体ワイヤを全面的に導体で被覆することにより、低EMI(電磁障害)を実現することができる。
【0019】
さらにまた、多層配線基板で導体ワイヤの封止に使用する有機絶縁材料として、熱伝導性に優れた絶縁材料や熱伝導性に優れた粒子を分散させた粒子分散型絶縁材料を使用することで、半導体装置の放熱性を改善することができる。
【0020】
その他の効果としては、例えば、導体ワイヤの表面を絶縁層で被覆するとき、その絶縁層の膜厚を制御したり、絶縁層に使用する絶縁材料の比誘電率を変更したりすることにより、インピーダンスの整合に由来した低反射、低挿入損失を達成することができる、ということを挙げることができる。また、配線表面が平滑であるので、高周波におけるロスの減少を達成することができる。また、配線密度に対して配線断面積を大きくしたこと(矩形の断面をもった配線から円形の断面をもった導体ワイヤに変更したことによる)により、低導体損失を達成することができる。また、構造が簡単であるので、多層配線基板や半導体装置を簡略化された手法で短時間に低コストで製造することができ、装置のデザインの変更があっても、柔軟に対応することができる。また、多層配線基板には半導体素子が作り込まれていないが、半導体素子の接続端子や外部接続端子が露出した状態にあるので、半導体装置の製造業者の多様化された要求に応えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明による多層配線基板及びその製造方法ならびに半導体装置は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は、下記の形態によって限定されるものではない。
【0022】
本発明は、その1つの面において、多層配線基板にある。本発明による多層配線基板は、例えば図1に示される構成を有することができる。多層配線基板10は、上面に配線層4を有するベースボード1と、ベースボード1の上に積層された絶縁層3を有しており、絶縁層3の表面に配線層2が形成されている。配線層2は、金属箔のパターニングによって形成されたものであり、半導体素子を搭載するための接続端子22及び外部接続端子として機能する配線部12を有している。半導体素子用接続端子22は、相互に接触したように図示されているが、実際には個々に分離されている。接続端子22に搭載される半導体素子は、特に限定されるものではなく、したがって、各種の半導体チップ、例えば、ICチップ、LSIチップ、その他を包含することができる。また、このような半導体チップの搭載には、常用の技法、例えば、フリップチップマウント、チップマウントなどを利用することができる。搭載される半導体素子は、1個であってもよく、2個以上であってもよく、また、複数個の半導体素子が搭載される場合、それらの半導体素子は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベースボード1は、半導体素子搭載面とは反対側の面にバンプ24、例えばはんだバンプを設けている。本発明によれば、マザーボード等と接続する面と反対側の面に半導体素子を接続することにより、ヒートスプレッダ等の放熱システムを設けることが可能となる。
【0023】
配線部12及び接続端子22は、上記したように、金属箔の選択的なエッチングによって形成された配線層2に形成されたものである。配線層2の形成に使用される金属箔は、特に限定されるものではないが、ニッケル箔、コバルト箔、銅箔などを挙げることができ、好ましくは、銅箔である。
【0024】
配線層2は、そのままで使用してもよいが、通常、本発明で配線部12及び半導体素子用接続端子22と呼ぶ外部接続端子(接続パッド)をその上に形成した状態で使用される。接続パッドは、単層の形で形成してもよく、2層もしくはそれ以上の多層構造をもった複合パッドの形で形成してもよい。複合パッドは、例えば、低融点金属のめっきにより第1のパッドを形成し、引き続いてその低融点金属よりも高融点の金属のめっきにより第2のパッドを形成することで形成することができる。低融点金属は、好ましくは、合金の形で用いられる。適当な低融点合金は、例えば、錫−鉛(SnPb)合金、錫−銀(SnAg)合金、錫−銅−銀(SnCuAg)合金などである。さらに、上述のようにして複合パッド型の端子を形成する場合、第1のパッドの形成を、それによって得られるパッドの領域が第2のパッドの領域よりも大きくなるような条件の下で行うことが好ましい。なお、かかる外部接続端子のサイズを一般的に説明すると、例えば円形の端子の場合、直径は、約100〜200μmであり、また、厚さは、約5〜30μmである。また、これらの外部接続端子は、必要に応じて、配線基板の分野で一般的に行われているように、接続の信頼性を高めることなどのために、はんだバンプやランド、その他の手段をその表面に有していてもよい。
【0025】
配線層2は、通常、金属箔の選択的なエッチングによって有利に形成することができるが、本発明に従うと多層配線基板をいろいろな手法によって形成することができるため、多層配線基板の形成工程に依存して、別の方法で配線層2を形成してもよい。例えば配線層2は、金属箔のエッチングにより形成することに代えて、導体金属の電解めっきによって形成してもよい。例えば、配線層を形成予定の領域以外をレジストでマスクしておいて、例えば金、パラジウム、コバルト、ニッケルなどの導体金属を所定の膜厚で電解めっきすることによって、配線層2を形成することができる。
【0026】
配線部12及び接続端子22は、それぞれ、いろいろなパターンで、好ましくはエリアアレイ状のパターンで、絶縁層3に配置することができる。図3及び図4は、それぞれ、配線部12及び接続端子22をエリアアレイ状に配置した例を示したものである。図3の配置例の場合、エリアAが半導体素子用接続端子22の集まりであり、それに隣接したエリアBに配線部(外部接続端子)12が集まっている。また、図4の配置例の場合、エリアII及びIIIが半導体素子用接続端子22の集まりであり、それに隣接したエリアI及びIVに配線部(外部接続端子)12が集まっている。なお、これらの配置例から理解されるように、本発明の多層配線基板の場合、導体ワイヤ5の配線パターンを上方から観察したとき、それぞれの配線パターンは、直線もしくはほぼ直線である。このように配線長を最短化することによって低インダクタンス化を図れることは、前記した通りである。
【0027】
多層配線基板10の絶縁層3は、任意の絶縁材料から形成することができ、好ましくは、有機絶縁材料から塗布、ポッティング等の手法で形成することができる。適当な有機絶縁材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。なお、本発明の絶縁層の内部には導体ワイヤが埋封されていることが必須であるが、このようなワイヤ埋封構造は、好ましいことに、多層配線基板の製造と切り離して特別の工程で形成するのではなくて、多層配線基板の製造の途中の任意の段階で形成することができる。
【0028】
絶縁層の形成に用いられる有機絶縁材料は、そのままで使用してもよいが、放熱性を改良するため、高熱伝導性の材料の粒子が分散せしめられた粒子分散型有機絶縁材料の形で使用してもよい。粒子分散型有機絶縁材料は、上記した有機絶縁材料からなるバインダ樹脂と、そのバインダ樹脂中に分散せしめられた高熱伝導性の材料の粒子、粉末等のフィラーとからなることが好ましい。適当なフィラーは、例えば、金、銀、銅、ニッケルあるいはその合金などである。また、フィラーの形状及びサイズは、任意に変更することかできが、好ましくは球形である。
【0029】
本発明の多層配線基板では、その配線層に形成された複数の配線部の間が導体ワイヤによって電気的に接続されている。例えは図1を参照してこれを説明すると、絶縁層3上の配線層2に形成された半導体素子用接続端子22が同じく配線層2に形成された外部接続端子12に導体ワイヤ5を介して電気的に接続されている。導体ワイヤ5は、図示される通り、湾曲して立体的に配置されている。但し、接続端子(配線部)22及び12ならびに導体ワイヤ5は、導体ワイヤ5が絶縁層3の内部に配置されているので、両者が同一平面上に存在していない。また、絶縁層3内の導体ワイヤ5の配置パターンは、それを多層配線基板10の上方から観察したとき、湾曲していない。すなわち、図3及び図4に示すように、配線部(接続パッド)22及び12間をつなぐ配線パターンはほぼ直線的である。なお、図3及び図4より、本発明に従えば、配線部をエリアアレイ状に配置してフリップチップ接続するとき、複数個の配線部をマトリックス化し、相互に接続することが可能である。なお、図では導体ワイヤ5が半導体素子用接続端子22から外部接続端子12に接続されているが、必要に応じて、半導体素子用接続端子22どうし、あるいは外部接続端子12どうしを導体ワイヤ5で接続してもよい。
【0030】
本発明の実施において、導体ワイヤは、半導体装置の分野においてボンディングワイヤとして一般的に使用されているものを有利に使用することができる。しかし、本発明で使用されるボンディングワイヤは、それが絶縁層内に封じ込められる必要があるので、それに耐え得るものでなければならない。導体ワイヤは、任意の導電性材料(導体)、好ましくは導体金属から形成することができる。適当な導体金属は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などである。
【0031】
本発明の実施において、導体ワイヤは、特にクロストークの発生を回避するために、その表面が絶縁層を介して金属層で覆われており、導体ワイヤをコアとする同軸構造を有していることが好ましい。すなわち、図7(C)の線分D−Dに沿った断面図である図7(D)に示すように、導体ワイヤは、導体ワイヤ5と、それを順次被覆した、絶縁層14及び金属層15とからなる同軸構造を有しているのが有利である。この同軸構造の導体ワイヤのコアは、上記した通り、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などの導体金属から有利に構成することができる。また、かかる導体ワイヤを被覆する絶縁層は、好ましくは、絶縁性の樹脂のコーティング、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などのコーティングである。また、アルミニウムワイヤの場合は、酸化被膜も有効である。樹脂コーティングは、例えば、静電塗装、スプレーコーティング、ディップコーティングなどによって形成することができる。なお、導体ワイヤを絶縁層で被覆することに代えて、すでに絶縁被覆が表面に形成されている市販の導体ワイヤを使用してもよい。最上層の金属層は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムあるいはその合金などの導体金属から形成することができる。特に、導体金属として銅を有利に使用することができる。銅の層は、例えば、無電解銅めっきもしくは電解銅めっきによって好適に形成することができる。金属層は、好ましくはグランド電位に電気的に接続される。
【0032】
導体ワイヤは、その構成や材料などにいろいろなサイズを有することができる。例えば、導体ワイヤ直径もしくは、同軸構造の場合、導体ワイヤのコアの直径は、通常、約20〜40μmである。また、コアを被覆する絶縁層の厚さは、もしも予め周囲に絶縁層を被覆した導体ワイヤを用い、そのまゝワイヤボンディングを行う場合には、通常、約2〜8μmである。また、未被覆の導体ワイヤを用いてワイヤボンディングを行った後にその導体ワイヤの周囲に絶縁層を被覆する場合には、通常、10〜50μmである。この絶縁層の厚さは、絶縁層に用いる材料と、インピーダンス整合の要求によって、変動するであろう。なお、本発明の多層配線基板では、導体ワイヤを取り囲む導電性樹脂とのかねあいでこの絶縁層の材質(比誘電率)や厚さを調整することによって、得られる多層配線基板にキャパシタンスを持たせることも可能である。必要に応じて、絶縁層を被覆して形成される金属層も、絶縁層と同様に、所望とする効果などに応じて広い範囲で膜厚を変更することができ、通常、約5〜30μmである。
【0033】
再び図7(D)を参照すると、同軸構造を有する導体ワイヤにおいて、導体ワイヤ5の外径D1に対する金属層15の内径D0の比は、約1:3〜6の範囲であることが好ましい。このように構成することによって、クロストークの発生の回避に加えて、インピーダンスの整合をより効果的に行うことができる。
【0034】
本発明の多層配線基板10では、さらに、配線層2に形成された配線部(外部接続端子)12が、その配線層2を保有する絶縁層3を貫通して形成された導体部7を介して、配線層4に電気的に接続されている。配線層4は、多層配線基板10のベースボード1の配線層4に形成された配線部13である。
【0035】
ベースボード1は、多層配線基板において常用のベースボードであることができ、特に限定されるものではない。ベースボード1は、例えば、セラミック材料、プラスチック材料などの無機系絶縁材料から形成されている。ベースボード1の内部には、図示しないが、配線等が組み込まれており、その表面には、図1に示したように、配線部13が形成されている。配線部13は、ベースボード1の電極、配線、外部接続端子などである。配線部13は、すでに説明した配線部12と同様な構成を有し、かつ同様な手法で形成することができる。また、図示しないが、ベースボード1の裏面には外部接続端子等が形成されており、また、外部接続端子には、外部の部品等との接続のため、はんだバンプなどが取り付けられている。図では、簡略化して、バンプ24が示されている。
【0036】
本発明の多層配線基板10では、配線層2の配線部12をベースボード1の配線部13に接続するため、絶縁層3を貫通して形成された導体部7が用いられる。導体部7は、本発明の実施において、いろいろな形態で形成することができる。例えば、導体部7は、絶縁層3を貫通する貫通孔を形成した後、その貫通孔を導体めっきにより充填して、配線部12と配線部13とを接続する導体部7を形成することができる。別法によれば、導体部7を導体めっきにより形成することに代えて、それに対応する形状及び寸法を有する導体金属の柱(ポスト)を多層配線基板10を形成する任意の段階で配置することによって、導体部7を形成することができる。
【0037】
例えば導体めっきにより導体部を形成する場合、一般的には、絶縁層を貫通する貫通孔に導体めっきを施すことによって実施することができる。具体的には、例えば、絶縁層の表面全体にレジストを被覆した後、導体部を形成すべき部分からレジストを除去する。次いで、レジストとその下地の絶縁層を覆うように、導体部を形成するための導体材料、例えば金、パラジウム、コバルト、ニッケルなどを所定の厚さで電解めっきする。マスクとして使用したレジストを除去すると、目的とする導体部を得ることができる。
【0038】
金属柱によって導体部を形成する場合、一般的には、配線層を形成するための金属箔の上に導体ワイヤを配置した後、その金属箔の予め定められた位置に、導体金属からなる柱(いわば、金属柱)をポスト状に設けることによって形成することができる。ここで言う金属柱は、円柱、角柱などであるが、場合によっては太い導体ワイヤであってもよい、この方法で、金属柱の形成は、いろいろな技法に従って行うことができる。例えば、金属柱を埋め込むか、さもなければ金属柱を形成するのに適当な導体金属を充填もしくはめっきすることによって、金属柱を形成することができる。かかる金属柱の形成は、さらに詳細には、特開平8−78581号公報、特開平9−331133号公報、特開平9−331134号公報、特開平10−41435号公報などに記載の方法を使用して行うことができる。
【0039】
図8及び図9は、本発明による多層配線基板の別の好ましい形態を説明したものである。例えば図8に示した多層配線基板10は、図1を参照して上記した導体部7を、図示のように導体金属のコア(本例では、銅ボール)17から構成した相違点を除いて、図1の金属配線基板10と同様な構成を有することができる。図示の多層配線基板10では、例えば、絶縁層に形成された貫通孔に銅ボールを充填した後、それをはんだ18で固定することによって導体部を形成することができる。このように構成することによって、例えば、接続位置のセルフアライニング(はんだの濡れでボールが適切な位置に動く)や、応力緩和、めっき工程の不要化、などといった利点を得ることができる。
【0040】
また、図9に示した多層配線基板10は、絶縁層3とベースボード1の配線層4との間に、もう1つの絶縁層6をさらに配置した形態を示している。本例では、上記のようにして導体部を金属柱27から形成するとともに、マザーボード1上の配線部13に低融点金属などの接続パッド28などを介して金属柱27を接続することができる。この多層配線基板10において、もう1つの絶縁層6は、好ましくは、接着剤、さらに好ましくは絶縁性の接着剤、例えばポリイミド系の接着剤などから構成することができる。このように構成することによって、例えば、接着剤のキュア(硬化)と導体接続とを同時に行える、めっき工程が不要となる、などといった利点を得ることができる。なお、図では金属柱27をそのままの形で使用したが、これに代えてその他の接続手段を使用してもよい。例えば、金などの金属製のワイヤでボールを作製し、その一部を除去してボール状の金属柱を形成することができる。
【0041】
本発明の多層配線基板は、チップ部品等をさらに備えていてもよい。例えば、多層配線基板10は、図10に示すように、配線層2を備えた絶縁層3に、その配線層2の配線部12と電気的に接続されたチップ部品30をさらに有することができる。チップ部品30は、キャパシタ、レジスタ、インダクタなどであるけれども、これらの部品に限定されるものではない。また、これらのチップ部品に代えて、その他の機能性部品が組み込まれていてもよい。また、図示のように、絶縁層3に形成された凹部(キャビティ)にチップ部品30を埋め込むことによって、得られる多層配線基板10の小型化、コンパクト化を達成することができる。この場合、例えばレジスト等の絶縁性の樹脂をポッティングなどにより凹部に埋め込んで、凹部内のチップ部品30を樹脂封止してもよい。
【0042】
本発明は、そのもう1つの面において、多層配線基板の製造方法にある。本発明の多層配線基板は、いろいろな手法に従って製造することができる。有利には、本発明の多層配線基板は、例えば、下記の工程:
配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
金属箔の、後段の工程において配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
金属箔の上に、金属箔及び導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に金属箔の半硬化状態の有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
得られた積層体において、前記金属箔の、ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
形成された開口部において、露出した有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、ベースボードの配線部に達した貫通孔を形成する工程、
形成された貫通孔を導体により充填して、金属箔とベースボードの配線部とを接続する導体部を形成する工程、そして
金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
によって製造することができる。
【0043】
図5及び図6は、本発明の多層配線基板を製造する好ましい1方法を順を追って示したものである。最初に、図5(A)に示すように、配線層を形成するための金属箔2を用意する。金属箔2は、前記したように、銅箔やその他の導体金属から形成することができる。金属箔2は、後段の工程における位置合わせ作業を精確かつ迅速に行うため、アライメントマークを予め形成しておくことが推奨される。
【0044】
次いで、図5(B)に示すようにワイヤボンディングを行う。ワイヤボンディング作業は、金属箔2の、後段の工程において配線層の配線部を形成する部位に、例えば金ワイヤのような導体ワイヤを配置して、配線部形成部位どうしを電気的に接続する。接続手段として、一般的なワイヤボンディング技術を用いることができる。導体ワイヤは、例えば、20μmの直径を有することができる。導体ワイヤは、好ましくは、同軸構造を有する導体ワイヤの形で使用することができる。
【0045】
導体ワイヤを同軸構造を有する導体ワイヤの形で使用する場合、好ましくは、図7に示すようにして導体ワイヤを形成することができる。最初に、図7(A)に示すように、金属箔2に導体ワイヤ5の一端を接続する。次いで、図7(B)に示すように、接続した導体ワイヤ5の表面と、導体ワイヤ5と配線部形成部位とが接続された領域を絶縁材料で被覆して絶縁層5を形成し、さらにその後、図7(C)に示すように、絶縁層5を金属材料で被覆して金属層15を形成する。金属層15は、例えば、無電解めっき法又は金属化合物熱分解法で形成することができる。また、金属層15は、グランド電位に電気的に接続することが好ましい。このようにして、図7(D)、すなわち、図7(C)の線分D−Dに沿った断面図に示すように、導体ワイヤ5をコアとする同軸構造をもった導体ワイヤを形成することができる。
【0046】
ワイヤボンディングの完了後、得られた導体ワイヤを流動性の有機絶縁材料で被覆するのが一般的な順序である。しかしながら、本発明の実施においては、製造プロセスに応じて他の工程を先行させることもできる。例えば、導体部をめっきによって形成する代わりに、導体部として機能する金属柱を使用する場合、ワイヤボンディング工程に続けて、金属柱を金属箔上に立設してもよい。
【0047】
引き続いて、図5(C)に示すように、金属箔2の上に、金属箔2及び導体ワイヤ5を全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布し、硬化させる。有機絶縁材料は、例えば、3液性エポキシ系樹脂をポッティングによって塗布し、例えば50〜100℃の温度を維持することによって硬化させることができる。これにより得られる樹脂層は、まだ半硬化の状態である。
【0048】
有機絶縁材料が半硬化の状態にあるとき、図5(D)に示すように、有機絶縁材料の層3を反転させて下向きとし、金属箔2を上向きとした後、別に用意しておいた多層配線基板のベースボード1に位置合わせし、積層する。ベースボード1には、その表面に配線部(パターン化された配線層)13がすでに形成されている。この積層の結果、ベースボード1の配線層保有表面に金属箔2を保持した半硬化状態の有機樹脂材料の層3を対面させることができる。
【0049】
ベースボード1と有機樹脂材料の層3を積層させた後、得られた積層体において、金属箔2の、ベースボード1の配線層保有表面の配線部13に対応する部位(図6(E)に参照番号7で示される点線部分のうち、金属箔2の部分を指す)に開口部を形成する。この開口部は、例えば、金属箔2の上にエッチングレジスト層を形成した後、金属箔2のうちベースボード1の配線部13に対応する部位をエッチングにより選択的に除去することによって容易に形成することができる。開口部の形成後、エッチングレジスト層をマスクとして、その開口部において露出した有機樹脂材料の層3を選択的にエッチングする。エッチングをベースボード1の配線部13のところで停止させると、金属箔2からベースボード1の配線部13に達した貫通孔を形成することができる。
【0050】
貫通孔の形成後、図6(E)に示すように、形成された貫通孔を導体めっきにより充填して、金属箔2とベースボード1の配線部13とを接続する導体部7を形成する。導体部7の形成は、導体金属のめっきによって、例えば、金属箔2の全面に無電解銅めっき及び電解銅めっきを順次実施することによって達成することができる。かかる導体金属のめっきによって、貫通孔とその上の金属箔の開口部を導体金属で充填することができる。めっきの完了後、最上層に残留していたエッチングレジスト層を除去する。
【0051】
最後に、図6(F)に示すように、金属箔2を所望とする配線パターンに応じて選択的にパターニングして配線パターン2を形成し、さらにその上に半導体素子用接続端子22及び外部接続端子12を形成する。ベースボード1の下面にはバンプ24を形成する。最表面にソルダレジスト層(図示せず)を形成すると、図1に示しかつ先に説明したような多層配線基板10を完成させることができる。
【0052】
上記のような多層配線基板の製造方法は、先にも述べたように、本発明の範囲内でいろいろに変更することができる。例えば、ワイヤボンディング工程の完了後に3液性のエポキシ系樹脂を形成し、硬化させた後、所定の部位に貫通孔を形成してもよい。貫通孔の形成後、その貫通部分にめっきにより例えば銅のような導体金属を充填し、引き続いて配線部付きのベースボードをアライメント積層する。
【0053】
また、多層配線基板の製造方法において、半硬化状態の有機絶縁材料の層を形成する工程と、多層配線基板のベースボードに金属箔を積層する工程との間に、半硬化状態の有機絶縁材料の層を完全に硬化させた後にもう1つの絶縁層を形成する工程をさらに含んでもよい。この方法の場合、もう1つの絶縁層は、好ましくは接着剤層である。このように構成することによって、例えば、ワイヤを内含する状態の層を硬化させることにより、安定中間材として扱うことができる、などといった利点を得ることができる。
【0054】
さらに、配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程の前もしくはその後に、金属箔にチップ部品やその他の部品を接続する工程をさらに有していてもよい。この方法において、チップ部品やその他の部品を接続する前、その接続部分の周縁に絶縁材料の溜まりを予め形成していてもよい。
【0055】
さらにもう1つの面において、本発明は、本発明の多層配線基板を備えた半導体装置にある。本発明の半導体装置は、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置である。この半導体装置において、多層配線基板は、先に説明したような本発明の多層配線基板である。また、この半導体装置において、配線層を備えた絶縁層は、配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品などをさらに有していてもよい。
【0056】
図2は、本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した断面図である。図示の半導体装置50は、図1に示したような多層配線基板10の上に、半導体チップ20を搭載した例である。半導体チップ20は、半導体チップ接続端子22上に形成されたバンプ23を介して多層配線基板10と電気的に接続されている。半導体素子搭載面と同一の面には外部接続端子12が設けられているが、これには外部装置を接続することができる。この場合、使用する半導体チップは、発熱の小さい半導体素子であることが好ましく、また、積層される外部装置は、放熱のための機構を備えていることが好ましい。絶縁層3は、その熱伝導性を高めるため、絶縁樹脂中に金属粉末(フィラー)が分散せしめられている。また、半導体チップ20のバンプ23の部分は、アンダーフィル材で封止されていてもよい。また、ベースボード1にはバンプ24が設けられている。それぞれのバンプ24は、例えば、はんだバンプ(SnAg)からなる。
【0057】
半導体装置50において、半導体チップ接続端子22と外部接続端子12の導体ワイヤ5を介した電気的接続において、導体ワイヤ5は、先に図7を参照して説明したように、同軸構造を有していてもよい。また、導体ワイヤ5は、図示しないが、その最上層の金属層をグランド電位に接続してもよい。
【実施例】
【0058】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものでない。
【0059】
アライメントマークを形成した銅箔(サイズ:約15cm角)を用意した。この銅箔のマット面の所定の複数の2点間を直径20μmの金ワイヤで接続した。次いで、銅箔及び金ワイヤを全面的に被覆するように、3液性エポキシ系樹脂をポッティングにより供給し、金ワイヤが十分に被った樹脂層(厚さ:銅箔上で約30μm)を形成した。樹脂層を50〜100℃の温度で保持することで硬化させた。次いで、硬化された樹脂層の所定に位置にCO2レーザーで直径約80μmの貫通孔を形成した。引き続いて、樹脂層の全面に無電解銅めっき及び電解銅めっきを施し、貫通孔に銅を充填した。めっきの完了後、銅箔付きの樹脂層が得られた。
【0060】
別に、表面に配線パターンを有するベースボード(試作品;サイズ:約20cm角、厚さ:約260μm)を用意した。このベースボードの上に、先に工程で作製した銅箔付きの樹脂層をその銅箔を上にしてアライメント接続し、ボンディングシートを介して接合した。次いで、銅箔部にエッチングレジストを塗布し、次いで、銅箔を所定配線パターンにエッチングした。エッチングの完了後、最表面にソルダレジストを厚さ約20μmで塗布して多層配線基板が完成した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による多層配線基板の好ましい1形態を示した断面図である。
【図2】本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した断面図である。
【図3】本発明による多層配線基板において配線長短縮による低インピーダンス化を実現できた理由を示した模式図である。
【図4】本発明による多層配線基板において配線長短縮による低インピーダンス化を実現できた理由を示した模式図である。
【図5】図1に示した多層配線基板を製造する1手法(その1)を順を追って示した断面図である。
【図6】図1に示した多層配線基板を製造する1手法(その2)を順を追って示した断面図である。
【図7】本発明の多層配線基板において使用し得る同軸構造をもった導体ワイヤを製造する1手法を順を追って示した断面図である。
【図8】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図9】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図10】本発明による多層配線基板のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図11】従来の半導体装置の一例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ベースボード
2 配線層
3 絶縁層
4 配線層
5 導体ワイヤ
6 絶縁層
7 導体部
10 多層配線基板
14 絶縁層
15 金属層
20 半導体素子
30 チップ部品
50 半導体装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個もしくはそれ以上の半導体素子を所定の位置に搭載するためのものであって、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記絶縁層と前記ベースボードの配線層との間に、もう1つの絶縁層をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記導体ワイヤは、その表面が絶縁層を介して金属層で覆われており、導体ワイヤをコアとする同軸構造を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記配線層を備えた絶縁層が、前記配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品をさらに有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記チップ部品は、キャパシタ、レジスタ又はインダクタであることを特徴とする請求項4に記載の多層配線基板。
【請求項6】
請求項1に記載の多層配線基板を製造するに当たって、下記の工程:
前記配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
前記金属箔の、後段の工程において前記配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、前記配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
前記金属箔の上に、前記金属箔及び前記導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
前記有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、前記多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に前記金属箔の半硬化状態の前記有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
前記金属箔の、前記ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
前記開口部において露出した前記有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、前記ベースボードの前記配線部に達した貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔を導体により充填して、前記金属箔と前記ベースボードの前記配線部とを接続する導体部を形成する工程、そして
前記金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
を含んでなることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程において、前記導体ワイヤの表面及び該導体ワイヤと前記配線部形成部位とが接続された領域を絶縁材料で被覆して絶縁層を形成し、さらにその絶縁層を金属材料で被覆して金属層を形成し、前記導体ワイヤをコアとする同軸構造を形成することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記導体ワイヤをコアとする同軸構造を形成する工程において、前記金属層を無電解めっき法又は金属化合物熱分解法で形成することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程と、前記多層配線基板のベースボードに前記金属箔を積層する工程との間に、前記半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を完全に硬化させた後にもう1つの絶縁層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程の前もしくはその後に、前記金属箔にチップ部品を接続する工程をさらに有していることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置であって、前記多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする半導体装置。
【請求項12】
前記配線層を備えた絶縁層が、前記配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品をさらに有していることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項1】
1個もしくはそれ以上の半導体素子を所定の位置に搭載するためのものであって、2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記絶縁層と前記ベースボードの配線層との間に、もう1つの絶縁層をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記導体ワイヤは、その表面が絶縁層を介して金属層で覆われており、導体ワイヤをコアとする同軸構造を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記配線層を備えた絶縁層が、前記配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品をさらに有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記チップ部品は、キャパシタ、レジスタ又はインダクタであることを特徴とする請求項4に記載の多層配線基板。
【請求項6】
請求項1に記載の多層配線基板を製造するに当たって、下記の工程:
前記配線層を形成するための金属箔を用意する工程、
前記金属箔の、後段の工程において前記配線層の配線部を形成する部位に、導体ワイヤを湾曲して立体的に配置して、前記配線部形成部位どうしを電気的に接続する工程、
前記金属箔の上に、前記金属箔及び前記導体ワイヤを全面的に覆うのに十分な厚さで、流動性の有機絶縁材料を塗布する工程、
前記有機絶縁材料を途中まで硬化させて、半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程、
別に用意しておいた多層配線基板のベースボードに前記金属箔を、前記多層配線基板のベースボードの配線層保有表面に前記金属箔の半硬化状態の前記有機樹脂材料の層を対面させる形で、位置合わせし、積層する工程、
前記金属箔の、前記ベースボードの配線層保有表面の前記配線層の配線部に対応する部位に開口部を形成する工程、
前記開口部において露出した前記有機樹脂材料の層を前記金属箔をマスクとして選択的にエッチングして、前記ベースボードの前記配線部に達した貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔を導体により充填して、前記金属箔と前記ベースボードの前記配線部とを接続する導体部を形成する工程、そして
前記金属箔をパターニングして配線部を形成する工程
を含んでなることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程において、前記導体ワイヤの表面及び該導体ワイヤと前記配線部形成部位とが接続された領域を絶縁材料で被覆して絶縁層を形成し、さらにその絶縁層を金属材料で被覆して金属層を形成し、前記導体ワイヤをコアとする同軸構造を形成することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記導体ワイヤをコアとする同軸構造を形成する工程において、前記金属層を無電解めっき法又は金属化合物熱分解法で形成することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を形成する工程と、前記多層配線基板のベースボードに前記金属箔を積層する工程との間に、前記半硬化状態の前記有機絶縁材料の層を完全に硬化させた後にもう1つの絶縁層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記配線部形成部位どうしを導体ワイヤを介して電気的に接続する工程の前もしくはその後に、前記金属箔にチップ部品を接続する工程をさらに有していることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
2層以上の配線層を内部に有する多層配線基板と、該多層配線基板の所定の位置に搭載された1個もしくはそれ以上の半導体素子とを備えた半導体装置であって、前記多層配線基板において、
少なくとも1層の配線層は、該配線層に形成された複数の配線部の間を、該配線層を備えた絶縁層の内部に湾曲して立体的に配置された導体ワイヤにより電気的に接続されており、
前記配線層の少なくとも一部の配線部が、前記絶縁層を貫通して形成された導体部を介して、多層配線基板のベースボードの配線層に接続されていること
を特徴とする半導体装置。
【請求項12】
前記配線層を備えた絶縁層が、前記配線層の配線部と電気的に接続されたチップ部品をさらに有していることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−64966(P2009−64966A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231692(P2007−231692)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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