説明

多層配線板の孔あけ加工装置

【課題】導体で形成された配線パターンが積層されてなる多層配線板において、前記多層配線板に精度孔あけ加工を行う。
【解決手段】多層配線板の微小領域に交番磁場を印加し計測対象パターン2で誘起された起電力の電圧値を検出する計測部5と、多層配線板1に孔あけ加工を行う孔あけ加工部6と、孔あけ加工部6を制御する制御部Contを備え、制御部Contが電圧値及び位置データより取得した多層配線板1の位置情報をもとに、孔あけ位置を決定し、孔あけ加工部6を駆動して多層配線板1に孔あけ加工を行う多層配線板の孔あけ加工装置A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層に積層された多層配線板に精度良く孔をあけることができる多層配線板の孔あけ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、導体で形成された配線パターンを備えた配線板では、前記配線パターンが微細化され、スルーホールのランド径が小径化されてきている。前記配線パターンと絶縁層とが交互に積層された多層配線板についても、同様に、配線パターンの微細化、スルーホールやバイアホールのランド径の小径化がなされている。
【0003】
図14は多層配線板のスルーホールを拡大した図である。図14に示すように、スルーホール孔17は、異なる層の配線パターンに形成されたスルーホールランド16L、16Mを貫通している。スルーホール16L、16Mは設計上中心位置が上下に重なるように形成されるものであるが、実際のスルーホールランド16L、16Mは加工上の誤差、多層配線板の変形等によってずれてしまうことが多い。
【0004】
例えば、スルーホールランド16L、16Mの外径が0.2mm、スルーホール孔17の外径が0.1mmであるものを考える。仮に、スルーホールランド16L、16Mの中心が0.03mmずれたとすると、スルーホール孔17はスルーホールランド16L、16Mの両方を貫通しなくてはならず、スルーホールランド16L、16Mが重なった部分の中心より、一方のスルーホールランドに0.035mmずれてしまうと、他方のスルーホールランドを貫通できなくなりスルーホール欠損となってしまう。多数のスルーホールランドを貫通するスルーホールを形成するには、さらに条件が厳しくなるので、なるべく、各層のスルーホールランドの相対位置、すなわち、配線パターンの相対位置のずれを小さくする必要がある。
【0005】
スルーホール孔17を正確に形成するには、複数の層に形成された配線パターンのスルーホールランドの位置を正確に知る必要がある。従来は、配線板を積層するとき基準となる孔であるガイド孔を形成しておき、前記ガイド孔にガイドピンを挿入して多層配線板と工作機械との位置決めを行い、設計上の各層の配線パターンの位置情報をもとに孔あけ加工を行っていた。
【0006】
配線パターンは作製する途中でずれ、ひずみ等の誤差が発生する。また、多層配線板も製造過程で、変形、ずれが発生し、設計上の位置情報をもとに孔あけ加工を行う位置を決めると、スルーホール(スルーホール孔)がスルーホールランドを貫通しないスルーホール欠損が発生する場合がある。
【0007】
そこで、X線画像処理方式のポザ孔加工機を用いて、内層コアに外層材となる絶縁層と導体層とを貼り付けた状態で、X線透視によって内層パターン上に形成されたガイド中心を狙って基準となるガイド孔を形成する。このガイド孔にドリル装置の位置決め用のピンを挿入してドリル装置の位置決めをし、スルーホール孔/バイアホール孔用の位置決め用の孔を形成する。これにより、内部の配線パターンを透視して行うので、誤差を小さくすることができる。
【0008】
さらに、特開昭62−241699号公報に記載の発明では、配線板に形成された配線パターンに高周波数の電磁波を照射し、前記配線パターンで発生する渦電流を検出することで、前記配線パターンの位置を検出する方法が提案されている。また、同公報には配線パターンに高周波数の電磁波を照射し、導体である配線パターンからの発熱をサーマルイメージ法にて画像化して配線パターンの位置を割り出す方法も提案されている。
【特許文献1】特開昭62−241699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、X線画像処理方式のポザ孔加工機を用いるものであっても、ガイド孔にピンを挿入してドリル装置の位置決めを行うので、ガイドパターンの中心を狙ってガイド孔を開ける加工には常に一定の誤差が生じてしまう。また、ピンを挿入する構造上、ガイド孔がピンよりも大きくなくてはならず、その隙間によって位置決めの精度が低下する。さらに、ガイド孔はピンを抜き差しすることで孔の形状が変形してしまい位置決めの精度が低下する。
【0010】
さらに、多層配線板をX線透視によって内層の配線パターンの位置を確認する方法の場合、前面に金属層が形成されている配線板の場合、内層に配置されたガイドパターンを透視する際のX線透視画像のコントラストが出にくく、精度良く高速で加工することが困難である。また、X線透視画像では多層の配線パターンのすべてを透視する透視画像が得られるため、実用に足る透視画像を得ることが困難な場合が多い。
【0011】
さらに、特開昭62−241699号公報に記載の方法は、多層配線板の表面或いは内部の層が電磁波を遮断する導体で覆われている場合には採用することが不可能である。また、電磁波は照射面積を小さくすることが難しいので、微細な部分の形状、位置を正確に測定するために必要な解像度を得ることが難しい。さらに、電磁波が照射されることで配線パターンより発生する渦電流や熱を検出する場合、検出された渦電流や熱がどの層の配線パターンで発生しているのか特定するのが困難であり、異なる層の配線パターンの相互位置のずれを正確に計測するのは困難である。
【0012】
そこで本発明は、導体で形成された配線パターンが積層されてなる多層配線板において、複数の層を貫通する孔を精度良く空けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、内層又は表層の少なくとも一層に計測対象パターンが形成された多層配線板の微小領域に交番磁場を印加する磁気ヘッドと、前記交番磁場が前記計測対象パターンを横切るときに、前記計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値を検出する検出電極と、前記検出電極により検出された電圧値及び前記電圧値が計測された位置での前記交番磁場の位置データが少なくとも記録される情報記録部と、前記情報記録部に記録された前記電圧値と前記位置データとを演算処理し、前記多層配線板の位置情報を取得する演算処理部と、前記多層配線板の複数の層を貫通する孔であるスルーホール用或いはバイアホール用の孔を形成する孔あけ加工を行う孔あけ加工部と、少なくとも、前記磁気ヘッド、前記演算処理部及び前記孔あけ加工部を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記多層配線板の位置情報をもとに、孔あけ加工を行う孔あけ位置を決定し、前記孔あけ加工部を駆動して前記孔あけ位置に孔あけ加工を行う。
【0014】
この構成によると、交番磁場を印加し、計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値から、多層配線板の位置情報を取得するので、従来の機械的手法やX線透視を用いた方法に比べて簡単かつ容易に高精度な多層配線板の位置情報を取得することができ、その位置情報をもとに孔あけ加工を行うので精度の高い孔を成形することが可能である。そして、その孔あけ位置をもとに孔あけ加工を行うので、位置決めの手間を省くことができ、短時間に高精度な孔あけ加工を行うが可能である。
【0015】
上記構成において、前記検出電極は同一の層に配置されている複数の計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値をそれぞれ独立した電圧値として検出してもよい。この構成によると、複数の位置での計測結果を用いるので、多層配線板の位置情報の精度を上げることができ、孔の位置精度を上げることができる。
【0016】
上記構成において、前記検出電極は異なるの層に配置されている複数の計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値をそれぞれ独立した電圧値として検出し、前記演算処理部は複数の層に形成されている既設の配線パターンの位置情報をそれぞれ独立して取得し、前記制御部は前記多層配線板の位置情報及び前記複数の層に形成されている既設の配線パターンの位置情報をもとに孔あけ位置を取得してもよい。
【0017】
この構成によると、実際に形成されている既設の配線パターンの位置情報をもとに、孔あけ位置を決定するので、孔あけ加工にて形成される孔がいくつかの層に形成されている既設の配線パターンの所定の位置を貫通しない、いわゆる、スルーホール欠損のような欠陥が発生するのを抑制することが可能である。
【0018】
上記構成において、前記磁気ヘッド及び前記検出電極を、それぞれ、前記計測対象パターンの数にあわせた個数備えていてもよい。この構成によると、短時間で複数の前記計測対象パターンに交番磁場を印加し、電圧値及び位置データを得ることができる。これにより、複数の位置での電圧値及び位置データを用いるので高精度な多層配線板の位置情報を得ることができ、精度良く孔あけ加工を行うことが可能である。
【0019】
上記構成において、前記磁気ヘッドを、前記多層配線板の主面に沿って1軸方向または2軸方向に移動させる磁気ヘッド駆動部をさらに備えていてもよい。
【0020】
上記構成において、前記多層配線板が載置される載置面を有するテーブルを備え、前記テーブルを、前記載置テーブルの前記載置面に沿って1軸方向または2軸方向に移動させるテーブル駆動部を備えていてもよい。
【0021】
上記構成において、前記制御部は前記テーブルが所定の位置に移動された後に、前記磁気ヘッドより前記交番磁場の印加を開始してもよい。
【0022】
上記構成において、前記テーブルは前記多層配線板を保持するためのクランプ部を備えており、前記検出電極が前記クランプ部に含まれていてもよい。この構成によると、前記多層配線板を前記テーブルに載置し前記クランプで固定することで、検出電極を前記計測対象パターンの一部に接続させることができる。これにより、前記検出電極を前記計測対象パターンの一部に接続させるための位置決めを省略することができるので、多層配線板の位置情報を迅速に取得することができる。また、前記検出電極が前記多層配線板を固定するクランプに備えられているので、前記検出電極と前記計測対象パターンとの接触が不十分で、正確な電圧値が検出できない不具合が発生するのを抑制することが可能である。
【0023】
上記構成において、前記テーブルは往復動するものであり、前記制御部は前記テーブルが一方に向かって移動するときに、前記磁気ヘッドより交番磁場を前記多層配線板に印加させ、前記情報記録部に前記検出電極にて検出された電圧値と前記電圧値が検出された位置での前記交番磁場の位置データを前記情報記録部に記録し、前記演算処理部にて前記多層配線板の位置情報を取得し、前記テーブルが他方に向かって摺動するときに前記孔あけ部を駆動させて孔あけ加工を行ってもよい。
【0024】
この構成によると、前記テーブルが移動するときに前記多層配線板の位置情報の取得及び孔あけ加工を行うので、工程を減らすことができ、孔あけ加工にかかる時間を短縮することが可能である。
【0025】
上記構成において、前記制御部は、前記テーブルが他方に向かって摺動されるときに、前記磁気ヘッドより交番磁場を印加させるとともに、前記検出電極にて検出される電圧値と、前記電圧値が検出された位置での前記交番磁場の位置データとを前記情報記録部に記録させ、前記演算処理部にて前記多層配線板の位置情報を取得し、前記位置情報を用いて孔あけ位置を補正するようにしてもよい。この構成によると、孔あけ位置を補正するので、精度良く孔あけ加工を行うことが可能である。
【0026】
上記構成において、前記孔あけ加工部は回転ドリルを備えているもの、或いは、孔あけ用のレーザ光を照射するレーザ光照射部を備えているものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、導体で形成された配線パターンが積層されてなる多層配線板において、複数の層を貫通する孔を精度良く空けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、位置を計測される配線パターンを備えた多層配線板について説明する。図1は多層配線板の断面図であり、図2は図1に示す多層配線板の平面図である。
【0029】
図1に示す多層配線板1は、ガラスエポキシ、ポリイミドフィルム等の絶縁性を有する材料で形成された中心基板11の両面に配線パターン12が形成されている。そして、両面の配線パターン12の外面側に絶縁層13が形成されており、絶縁層13の外側には配線パターンを作製する前の導体膜14が配置されている。また、図1に示すように、多層配線板1には中心基板11の両面に形成された配線パターン12同士を接続するためのバイアホール15が形成されている。
【0030】
多層配線板1の積層は次のようにして行われる。配線パターン12の上に、導体膜14(例えば銅箔)が積層された絶縁層13(ガラス繊維強化の半硬化樹脂フィルム)を熱プレスで加圧接着する。そして、導体膜14の表面にフォトレジスト層を形成し(例えば感光性を有するドライフィルムの貼り付け)、フォトレジスト層を新設する配線パターンの形状に合わせて露光、現像し、さらにエッチングにて不要な導体膜を取り除き、配線パターンを形成する。これを繰り返すことで多層化する。この積層工程や使用する材料は従来の方法と同じものでかまわない。さらに、通常の多層配線板1を製造するときと同様に、スルーホール孔或いはバイアホール孔加工、パネルめっき処理等を行う。
【0031】
図2に示すように、多層配線板1は矩形状を有しており、その四隅に位置計測に用いられる計測対象パターン2が形成されている。計測対象パターン2は各層の配線パターンと同じ層に設けられている。計測対象パターン2は、多層配線板1の長手方向に伸びる第1パターン21と、多層配線板1の短手方向に伸びる第2パターン22と、第1パターン21及び第2パターン22とを接続するリード23と、リード23と接続された計測ランド24とを備えている。
【0032】
そして、多層配線板1は計測ランド24の上部の絶縁層13及び導体膜14が取り除かれており、計測ランド24が外部に露出している。本実施形態の多層配線板1において計測対象配線パターン2は、機器に組み込まれて配線として機能する配線パターンとは別に形成されており、最終的に、多層配線板1製造時の最終工程で切除される領域に形成されているものである。なお、本実施形態では、導体膜14が形成された絶縁層13に予め貫通孔を形成しておき、中心基板11の両面に貼り付けることで、計測ランド24が外部に露出する。また、これに限定されるものではなく、導体膜14と絶縁層13を積層した後に、ざぐり加工等で計測ランド24を露出させるようにしてもよい。
【0033】
表層又は内層に形成された測定対象パターンの位置を計測する原理について図面を参照して説明する。図3は多層配線板に交番磁場を印加している状態の断面図と、そのときの電圧値と位置データとの関係を示すグラフである。なお、図3に示す配線パターンは計測対象パターン2であり、ここでは、第2パターン22である。
【0034】
交番磁場を計測対象パターン2に印加し、誘起された起電力の電圧値を計測し、その電圧値と電圧値を計測したときの交番磁場の位置データとを検出し、その電圧値及び位置データとを用いて位置情報を取得する。まず、交番磁場が計測対象パターン2を横切るように移動される。このとき、交番磁場は計測対象パターン2を挟む(図3では上下に挟む)ように印加されている。交番磁場が移動し計測対象パターン2を横切るときに起電力が誘起される。
【0035】
交番磁場の位置と誘起された電圧値は図3の上のグラフのような関係になっている。すなわち、交番磁場が計測対象パターン2の一方の縁に差し掛かったときに起電力が誘起され、起電力の電圧は上昇し所定の電圧値(V1)まで増加する。そして、計測対象パターン2に照射されている間は略一定の電圧値(V1)が計測され続け、交番磁場が他方の縁から計測対象パターン2の外側に移動するときに、起電力の電圧値が減少しやがて0になる。
【0036】
図3の上のグラフに示すように、交番磁場の磁束分布等の条件により、電圧値は、徐々に大きくなり、途中で急に増加(減少)し、徐々に所定の値(V1又は0)になるような変化をする。この状態では、計測対象パターン2のエッジの位置を正確に取得するのは困難である。また、実際の測定では、計測対象パターン2の近傍に配置されている配線パターンや導体膜14の影響を受ける場合がある。そこで、計測された電圧値と位置データ(交番磁場の移動した長さ等のデータ)をノイズ処理、微分処理等の演算処理することで、図3の下のグラフに示すような、計測対象パターン2の縁でより鋭く変化する電圧値の関係を示す関数を得ることができる。この電圧値の変化と位置データとの関を用いることで計測対象パターン2の位置情報を正確に取得することができる。すなわち、電圧値がステップ状に増加しているところから、ステップ状に減少しているところの間が、計測対象パターン2が形成されている位置であると検出することができる。
【0037】
なお、図3において、位置計測される計測対象のパターンとして、第2パターン22の位置を計測するものを例に説明しているが、第1パターン21の位置を計測する場合も、交番磁場の移動方向を変更することで同様に行うことができる。
【0038】
次に本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置について説明する。図4は本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置のブロック図であり、図5は図4に示す多層配線板の孔あけ加工装置の概略斜視図である。なお、図4において、横方向をX軸方向、紙面奥方向をY軸方向と定義しており、多層配線板1は長辺がX軸方向に伸びるように配置されている状態で説明する。
【0039】
図4に示すように、多層配線板の孔あけ加工装置Aは、フレーム3と、フレーム3に摺動自在に支持され、多層配線板1を載置するテーブル4と、フレーム3に支持され、測定対象パターン2の位置を計測する計測部5と、多層配線板1に孔あけ加工を施す孔あけ部6と、テーブル4及び計測部5の後述する磁気ヘッド50の駆動を制御する駆動制御部7と、テーブル4及び計測部5から出力された情報を記録する情報記録部8と、情報記録部8に記録されている情報をもとに多層配線板の位置情報を取得する演算処理部9と、孔あけ加工部6、駆動制御部7、情報記録部8及び演算処理部9を制御する制御部Contとを備えている。
【0040】
テーブル4には図示を省略した位置決め部が備えられており、多層配線板1を位置決めすることができる。位置決め部としては、多層配線板1の外部が当接することでなされるものや、ピンの係合で位置決めするピンガイド方式のもの等、従来良く知られたものを採用することが可能である。そして、テーブル4は上部に載置された多層配線板1がずれないように基板保持機構も備えている。基板保持機構としては、従来良く知られているもののうち、交番磁界に影響のない方法(たとえば、テーブルと基板との間の気圧を外部の気圧より下げ、基板を吸着する方法)を採用することができる。
【0041】
テーブル4は摺動可能にフレーム3に支持されているものである。テーブル4はテーブル駆動部41にて駆動され多層配線板1を計測部5に接近/離反させる。テーブル駆動部41はテーブル4を移動させるだけでなく、テーブル4の移動量を計測することができる。テーブル駆動部41はそれには限定されないが、電動モータ、歯車等の駆動機構を備えている。
【0042】
計測部5は、計測対象パターン2に磁気を印加する磁気ヘッド51と、計測対象パターン2の計測ランド24と接触させて計測対象パターン2で誘起された電圧を検出する検出電極52と、磁気ヘッド51及び検出電極52をX軸方向及びY軸方向に移動させるとともに、その移動量を計測する計測駆動部53とを備えている。計測駆動部53は電動モータ、歯車等の駆動機構を備えている。
【0043】
磁気ヘッド51より交番磁場が発生されており、交番磁場は多層配線板1に印加されている。なお、磁気ヘッド51から印加される磁場は交番磁場に限定されるものではなく、たとえば磁気パルスのような磁束強度が急激に変化するものを採用することができる。計測対象パターン2で誘起される起電力の電圧値が急激に変化するものを採用することが可能である。
【0044】
孔あけ加工部6はテーブル4にて運ばれてきた多層配線板1に孔あけ加工を行うことができる位置に配置されている。孔あけ加工部6はレーザ光を出謝するレーザ光源61と、レーザ光を多層配線板1の所定の位置に照射させるレーザ光照射部62とを備えている。多層配線板1の孔あけ加工を行う位置にレーザ光を照射させることで、多層配線板1に孔あけ加工を行うことができる。
【0045】
駆動制御部7はテーブル駆動部41及び計測駆動部53に駆動信号を送り、テーブル駆動部41及び計測駆動部53を動作させるものである。駆動制御部7は制御部Contからの制御信号をもとに、駆動信号を出力する。
【0046】
情報記録部8はテーブル駆動部41、計測電極52及び計測駆動部53と接続されている。テーブル駆動部41よりテーブル4の移動量が、計測電極52で計測された電圧値が、計測駆動部53より磁気ヘッド51の移動量がそれぞれ入力され、それらの情報を記録しておくものである。情報記録部8としてはそれには限定されないが、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリー等の半導体メモリ装置や、ハードディスク装置のような読み出し、記録を自在に行うことができるものが好ましく、ここではRAMを含むものである。
【0047】
演算処理部9は、情報記録部8に記録されている電圧値と位置データを演算処理する処理部である。制御部Contは、多層配線板の孔あけ加工装置Aの動作を制御するためのものであり、CPUやマイコンを含み、計測部5、孔あけ加工部6、駆動制御部7、情報記録部8及び演算処理部9の動作を制御するものである。なお、駆動制御部7及び演算処理部9はそれぞれ、独立したハードウェアで提供されるものであってもよく、制御部Contで起動されるソフトウェアとして提供されるものであってもよい。
【0048】
次に、多層配線板の孔あけ加工装置Aを用いて多層配線板の孔あけ加工を行う手順について説明する。まず、テーブル4の上に孔あけ加工する多層配線板1が載置される。多層配線板1はテーブル4上の適切な位置に位置決めされ、テーブル4の上部にずれないように保持される。制御部Contは、テーブル駆動部41にテーブル4を駆動するための駆動信号を送り、テーブル駆動部41を駆動させてテーブル4を移動させる。テーブル4は多層配線板1の四隅に形成された測定対象パターン2のうちのひとつが計測部5の計測可能範囲と重なる位置に移動される。
【0049】
ここで、多層配線板1のテーブル4に対する適切な位置とは、テーブル4が移動したときに、多層配線板1に備えられた測定対象パターン2の少なくとも第1パターン21及び第2パターン22が、計測部5の計測範囲内に配置される程度の精度でよい。また、多層配線板1が位置決めされ、移動された後に、計測対象パターン2の計測ランド24に検出電極52を接触させることができる。
【0050】
テーブル4が移動され、計測対象パターン2が計測部5の計測範囲に移動した後、制御部Contはテーブル駆動部41に指示を送りテーブル4の移動を停止する。そして、制御部Contは計測駆動部53に指示を出し、計測部5の検出電極52を移動させて、検出電極52と計測ランド24とを接触させる。
【0051】
この時点で、計測部5は計測対象パターン2の位置の計測を開始することができる状態にあり、制御部Contは、計測開始前に、0点調整を行う。ここで、0点調整とは、検出電極52で検出された電圧を0に補正するとともに、テーブル4及び磁気ヘッド51の移動量をリセットして0にすることである。
【0052】
そして、制御部Contは計測部5に指示を出し磁気ヘッド51より交番磁場を発生させるとともに、計測駆動部53に駆動信号を送り、交番磁場が計測対象パターン2の第2パターン22に移動するように(図4、中X軸方向)磁気ヘッド51を移動させる。計測開始時より計測駆動部53から磁気ヘッド51の移動量が出力されており、この移動量を交番磁場の位置データとして情報記録部7に記録されている。これと同時に検出電極52で検出された電圧値が位置データとともに情報記録部7に記録される。
【0053】
制御部Contは検出電極52に記録された起電力の電圧値を確認しており、電圧値が急激に上昇し、安定した後、その後急激に下降し、0になった時点で、交番電極が第2パターン22の位置計測を終了させる。そして、制御部Contは磁気ヘッド51に指示を送り交番磁場の発生を停止させ、計測駆動部53に指示を出し、磁気ヘッド51を0点まで移動させる。
【0054】
位置計測はここで終了し、制御部Contは情報記録部8から記録された位置データ及び電圧値を読み出し、演算処理部9にノイズ処理、微分処理等の演算処理を実行させ、多層配線板1の位置情報を取得する。なお、多層配線板1の位置情報としては、ここでは、0点調整したときの、0点を基準とする数値データであるが、それには限定されない。例えば、多層配線板の孔あけ加工装置Aで定義された数値データであってもよく、テーブル4に対するX軸方向、Y軸方向及びテーブル4の上面に垂直な軸周りの回転方向のずれ量であってもよい。多層配線板の孔あけ加工装置Aが孔あけ加工を行うときのすうち制御に用いることができるデータを広く採用することができる。
【0055】
そして、制御部Contは多層配線板1の位置情報より、多層配線板1のへの孔あけ加工位置を決定する。制御部Contは孔あけ加工部6に駆動信号を送る。このとき、制御部Contは、孔あけ位置のデータも同時にレーザ駆動部6に送る。駆動信号を受信した孔あけ加工部6はレーザ光源61及びレーザ光照射部62を起動させ、レーザ光をテーブル4に保持された多層配線板1の孔あけ位置に照射し、孔をあける。この孔は、ベリー度ビア用或いはスルーホール用の孔である。
【0056】
なお、制御部Contは磁気ヘッド51を0点に復帰させた後、再度交番磁場を発生させ、磁気ヘッド51を第1パターン21に向かう方向(Y軸方向)に移動させ、第1パターン21での電圧値と位置データとを取得してもよい。第1パターン21での電圧値及び位置データの取得方法は第2パターン22で取得する場合と同じ手順で行われるので、詳細は省略する。このように、直交する方向に伸びる第1パターン21及び第2パターン22を計測したデータを演算処理し、計測対象パターン2の位置情報を取得することで、どちらか一方で計測したデータを用いる場合に比べて計測対象パターン2の位置情報の精度を上げることができ、多層配線板1の位置情報の精度も上げることができる。
【0057】
また、1箇所の計測対象パターン2の位置情報の取得が終了した後、テーブル4を移動させて、多層配線板1の四隅の他の場所に形成されている計測対象パターン2の位置情報を取得するようにしてもよい。複数の計測対象パターン2の位置情報をもとに、多層配線板1の位置情報を取得することができるので、多層配線板1の位置情報の精度を上げることが可能である。また、複数の計測対象パターン2の位置情報より、相対的な距離、角度を取得することができる。この相対的な距離や角度を取得することで多層配線板1の変形やずれの情報も取得することが可能である。この、変形やずれ情報をもとに、孔あけ位置の補正を行った後、孔あけ加工部6を駆動して孔あけ加工を行うものとしてもよい。なお、孔あけ加工部6はレーザ光を用いるものを例にしているが、ドリル等の機械的な道具を用いて孔あけを行う構造としてもよい。
【0058】
本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の斜視図であり、図6に示す多層配線板の孔あけ加工装置Bは、計測部5bが複数個備えられている以外は、多層配線板の孔あけ加工装置Aと同じ構造を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。
【0059】
図6に示すように複数の計測部5bは多層配線板1に形成されている複数個の計測対象パターン2のそれぞれを同時に計測することができる位置に配置されている。図6に示すように、多層配線板の孔あけ加工装置Bにおいて計測部5bは多層配線板1を挟むように2個ずつ対向して配置されている。計測部5bは多層配線板1に接近/離反するように移動可能な部材である。
【0060】
多層配線板1はテーブル4にクランプ42にて固定されている。クランプ42には図示を省略しているが、計測対象パターン2で誘起される起電力の電圧値を検出する検出電極が備えられている。よって、クランプ42は検出電極が計測対象パターン2の計測ランドと接触させ、多層配線板1をテーブル4に固定している。
【0061】
多層配線板の孔あけ加工装置Bを用いて多層配線板1の孔あけ加工を行う手順を説明する。計測部5bは通常テーブル4の移動の邪魔にならないように、テーブル4から離れて待機している。テーブル4に固定された多層配線板1が孔あけ加工される位置までテーブル4が移動される。そして、計測部5bがテーブル4に保持されている多層配線板1の計測対象パターン2と近接する位置に移動される。
【0062】
計測部5bは磁気ヘッドで交番磁場を発生させ、磁気ヘッドを交番磁場が測定対象パターン2を横切るように移動させる。位置データ及び電圧値の計測ついては上述の方法と同じであり、詳細は省略する。計測部5bは位置データ及び電圧値の計測が終了した後、退避位置に移動する。そして、複数の計測対象パターン2に交番磁場を印加して計測された電圧値及び位置データを用いて多層配線板1の位置情報を取得する。この多層配線板1の位置情報をもとに、孔あけ位置を決定し、孔あけ加工部6を駆動させて、多層配線板1に孔あけ加工を施す。
【0063】
このように、同時に複数の計測対象パターン2を計測することで、1つの計測対象パターン2を計測するものと同程度の計測時間で、より高い精度の多層配線板1の位置情報を取得することができる。またクランプ42に備えられた検出電極を用いるので、計測部5bの形状を簡略化することができる。
【0064】
本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図7は本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の斜視図である。図7に示す多層配線板の孔あけ加工装置Cは計測部5cの個数が異なる以外は、多層配線板の孔あけ加工装置Bと同じ構造を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。
【0065】
図7に示すように多層配線板の孔あけ加工装置Cはテーブル4の摺動方向と直交する方向に配列され、互いに対向して配置された一対の計測部5cを備えている。計測部5cは交番磁場を発生する磁気ヘッドを備えている。計測部5bはテーブル4が移動するときに、交番磁場が多層配線板1に形成されている計測対象パターン2を横切ることができる位置に配置されている。
【0066】
多層配線板1はテーブル4にクランプ42にて固定されている。クランプ42には図示を省略しているが、計測対象パターン2で誘起される起電力の電圧値を検出する検出電極が備えられている。よって、クランプ42は検出電極が計測対象パターン2の計測ランドと接触させ、多層配線板1をテーブル4に固定している。
【0067】
多層配線板の孔あけ加工装置Cを用いて多層配線板1の孔あけ加工を行う手順を説明する。多層配線板1がテーブル4にクランプ42にて取り付けられた後、テーブル4は多層配線板1の孔あけ加工が行われる場所まで移動される。
【0068】
計測部5bより交番磁場が印加されており、テーブル4が移動するときに多層配線板1に形成された計測対象パターン2を横切る。このとき計測対象パターン2で起電力が誘起され、クランプ42に備えられている検出電極にて電圧値が検出される。なお、このときの位置データはテーブル4の移動量が利用されるものであり、テーブル駆動部41からの位置データが検出された電圧値とともに情報記録部7に記録される。
【0069】
多層配線板1には四隅に計測対象パターン2が形成されている。テーブル4の移動が完了すると、四隅に配置された計測対象パターン2のすべてに交番磁場を印加し電圧値、位置データを検出している。この各計測対象パターン2での電圧値及び位置データを演算処理部9にて演算処理して、多層配線板1の位置情報及び変形、ずれ等の形状情報を取得する。
【0070】
多層配線板1の位置情報及び形状情報をもとに、多層配線板1に孔あけ加工を行う孔あけ位置を形成する。そして、テーブル4を多層配線板1の加工を行う加工位置に移動されたときの反対側に移動させるとともに、孔あけ加工部6は孔あけ位置をもとに、孔あけ加工を行う。これにより、計測部5cの数を減らし、計測部5c自体を移動させる移動機構を減らすことができる。また、テーブル4を移動させつつ孔あけ加工を行うので、孔あけ加工タクトタイムも短くすることができる。
【0071】
図8は多層配線板の例の斜視図である。図8に示す多層配線板1bは四隅、各辺の中央及び多層配線板1bの中央に計測対象パターン2が形成されている。この多層配線板1bの位置情報を取得するために、中央の計測対象パターン2に交番磁場を印加するために多層配線板の孔あけ加工装置Cは対向した計測部5cの中間に計測部5cを備えているものを用いる。
【0072】
このように、計測対象パターン2を中間部にも取り付けることで、多層配線板1bの全体的な変形、ずれを計測できるのみならず、局所的な変形、ずれを計測できるので、孔あけ精度を上げることができる。
【0073】
本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の他の例について図面を参照して説明する。図9は本発明にかかる多層配線板の孔の孔あけ加工装置の斜視図であり、図10は図9に示す多層配線板の孔あけ加工装置で孔あけ加工が施される多層配線板の斜視図である。図9に示す多層配線板の孔あけ加工装置Dでは、テーブル4の移動方向と交差する方向に移動しつつ電圧値及び位置データを計測する移動式計測部5dを備えている。それ以外の部分は多層配線板の孔あけ加工装置Cと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。
【0074】
図10に示すように、多層配線板1dには、周囲を囲むように配置されているとともに、最終的に製品として切り取られる部分の間にも配置されたはしご状の計測対象パターン2dを備えている。
【0075】
多層配線板1dの孔あけ加工を行う場所までテーブル4を移動させつつ、多層配線板1dの位置情報を取得する手順は、上述した多層配線板の孔あけ加工装置Cと同じである。すなわち、交番磁場を印加しつつ、テーブル4を移動させることで、交番磁場が計測対象パターン2dを横切り、電圧値及び位置データを検出する。テーブル4の移動が完了すると、計測対象パターン2dでの電圧値及び位置データを演算処理部9にて演算処理して、多層配線板1dの位置情報及び変形、ずれ等の形状情報を取得する。
【0076】
多層配線板1dの位置情報及び形状情報をもとに、多層配線板1dの孔あけ位置を形成する。そして、テーブル4を多層配線板1dを孔あけ加工位置に移動させたときと反対側に移動させるとともに、孔あけ加工部6は孔あけ位置の位置情報をもとに多層配線板1dにレーザ光を照射さて孔あけ加工を行う。
【0077】
テーブル4が所定量移動し、テーブル4の移動方向と交差する方向に形成された計測対象パターン2dと移動式計測部5dとが重なったところで、テーブル4を停止し、移動式計測部5dを駆動して、電圧値及び位置データを検出する。その電圧値及び位置データを用いてその場での多層配線板1dの位置情報及び変形、ずれ等の形状情報を取得し、その位置情報及び形状情報をもとに孔あけ位置を補正する。補正された孔あけ位置を孔あけ位置の6に送り、孔あけ加工部6は補正された孔あけ位置をもとに孔あけ加工を行う。
【0078】
このように孔あけ加工を行うことで、多層配線板1dの位置情報、形状情報を精度良くリアルタイムで得ることができるので、より設計形状との誤差の少ないスルーホール孔及び(又は)バイアホール孔が形成された多層配線板1dを製造することが可能である。
【0079】
本発明にかかる多層配線板孔あけ加工装置の他の例について図面を参照して説明する。図11は本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の他の例の磁気ヘッド及びテーブルの図である。図11に示す多層配線孔あけ加工装置Eでは、テーブル及び磁気ヘッド以外の部分は多層配線板の孔あけ加工装置Aと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。
【0080】
図11に示すように、多層配線板の孔あけ加工装置Eは多層配線板1が載置されるテーブル3eと、交番磁場を印可するための計測部5eとを備えている。テーブル3eは高透磁性材料で作成されている。そして、計測部5eはテーブル3eの多層配線板1が載置された側に配置された2つの磁極部511e、512eを有している。磁極部511e、512eとは連結部513eで連結されている。
【0081】
磁極部511e、512eはテーブル3eと対向している。磁極部511e、512eから交番磁場が発生すると、磁極部511e、テーブル3e、磁極部512e及び連結部513eで磁気回路が形成される。これにより、磁極部511e又は磁極部512eから出た磁力線は多層配線板1を貫通してテーブル3eを通り、再び多層配線板1を貫通して、出たのとは異なる磁極部に戻る。これにより、計測部5eは交番磁場を多層配線板1の計測対象パターン2に印加させることができる。
【0082】
磁極部511eの先端を細く絞り、磁極部512eの先端を広く形成されている。磁極部511eより出る交番磁場は、磁束幅が小さく、磁束密度が高くなる。一方で、磁極部512eより出る交番磁場は、磁束幅が大きく、磁束密度が小さくなる。磁極部511eを計測側の磁極とすることで、磁極部511eより出る交番磁場によって計測対象パターン2で誘導電圧を効果的に誘起させることができる。また、磁極部512eより出る交番磁場では計測対象パターン2で誘導電圧を誘起できにくい。これにより、計測対象パターン2の位置データ及び電圧値を精度よく検出することができ、計測対象パターン2の位置を精度良く計測することができる。
【0083】
この構成によると、磁極部511e、512eの両方がテーブル3e(多層配線板1)の一方の面に配置されるので、テーブル3eに切り欠きや凹み等の磁極部とテーブルとが接触するのを防ぐための構造を形成しなくても良く、それだけ、簡単な構成とすることができる。
【0084】
上記実施の例において、検出電極53は多層配線板1の計測ランド24を予め露出させておき、その、計測ランド24に直接接触させるものが示されているが、これに限定されるものではない。たとえば、検出電極の先端が鋭利な針状に形成されており、多層配線板1の表面より突き刺すことで、計測対象パターン2の計測ランド24に接触させる用にしてもよい。この構成によると、多層配線板1の計測ランド24を予め露出させなくても良く、それだけ、手間を省くことが可能である。また、検出電極の代わりにコイルを用いて、非接触で起電力を検出するようにしてもよい。
【0085】
上述した本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置では、複数の層の計測対象パターン2で誘起された誘導電圧をそれぞれ独立して計測することも可能である。図12は複数層の計測対象パターンを計測したときの概略図である。このときの距離データ及び電圧値とを演算処理することで、異なる層に配置された計測対象パターン2u、2dの両方の位置を精度良く計測することが可能である。
【0086】
各層の計測対象パターンの位置情報をもとに、各層に形成されている計測対象パターン12の位置情報をそれぞれ個別に精度良く取得することができる。図13はスルーホール孔の例の断面図である。図13に示すような、配線パターンが複数の層で重なっているような多層配線板1の場合であっても、各層の配線パターンの位置情報も独立して取得することができる。各層の配線パターン12に形成されたスルーホールランド16(ここでは、スルーホールランド16L、16M、16N)の位置情報を取得することができる。この各層のスルーホールランド16L、16M、16Nの位置情報をもとに、すべてのスルーホールランド16L、16M、16Nを貫通する孔あけ位置を取得し、孔あけ加工部6で孔あけを行うことで、すべてのスルーホールランド16(16L、16M、16N)を貫通するスルーホール孔17を形成することができる。これにより、スルーホール欠損等の各層の配線パターンのずれにより不具合の発生を高度に抑制することができる。
【0087】
上述した実施形態の多層配線板の孔あけ加工装置を用いることで、以下のような効果を得ることができる。
(1)交番磁場を印加することにより配線パターンで誘起される電圧値を検出して多層配線板の位置情報を取得するので、ガイド孔、ガイドピン等を用いた位置決めのように、機械的な手法を取ることによる大きな誤差が発生しにくい。
(2)機械的手法をとらないので、位置情報を繰り返し計測しても、精度が低下しにくい。例えば、ガイド孔にガイドピンを抜き差ししたりすることでガイド孔が拡開され、位置決め精度が低下する等の不具合が起こりにくい。
(3)多層配線板の各層の計測対象パターンの位置情報を精度良く取得することができるので、従来の方法では困難であった最内層以外の層に形成された計測対象パターンの位置情報を基準として、多層配線板の孔あけ加工を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】多層配線基板の断面図である。
【図2】図1に示す多層配線板の平面図である。
【図3】多層配線板に交番磁場を印加している状態の断面図と、そのときの電圧値と位置データとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置のブロック図である。
【図5】図4に示す多層配線板の孔あけ加工装置で用いられた計測部の概略斜視図である。
【図6】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の他の例の斜視図である。
【図7】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置のさらに他の例の斜視図である。
【図8】多層配線板の他の例の斜視図である。
【図9】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置のさらに他の例の斜視図である。
【図10】図9に示す多層配線板の孔あけ加工装置で孔あけ加工が施される多層配線板の斜視図である。
【図11】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置の他の例の磁気ヘッド及びテーブルの図である。
【図12】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置で複数層に配置された計測対象パターンの位置情報を取得した状態を示す図である。
【図13】本発明にかかる多層配線板の孔あけ加工装置で複数層に形成された配線パターンの位置情報をもとに孔あけ加工を行ったときの断面図である。
【図14】スルーホールランドとスルーホールの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
A 配線パターン露光装置
1 多層配線板
11 中心基板
12 配線パターン
13 絶縁層
14 導体層
15 バイアホール
2 計測対象パターン
21 第1パターン
22 第2パターン
23 リード
24 計測ランド
3 フレーム
4 テーブル
5 計測部
50 磁気ヘッド
51 磁極部
52 検出電極
53 磁気ヘッド駆動部
6 孔あけ加工部
61 レーザ光源
62 レーザ照射部
7 駆動制御部
8 情報記録部
9 演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層又は表層の少なくとも一層に計測対象パターンが形成された多層配線板の微小領域に交番磁場を印加する磁気ヘッドと、
前記交番磁場が前記計測対象パターンを横切るときに、前記計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値を検出する検出電極と、
前記検出電極により検出された電圧値及び前記電圧値が計測された位置での前記交番磁場の位置データが少なくとも記録される情報記録部と、
前記情報記録部に記録された前記電圧値と前記位置データとを演算処理し、前記多層配線板の位置情報を取得する演算処理部と、
前記多層配線板の複数の層を貫通する孔であるスルーホール用又はバイアホール用の孔を形成する孔あけ加工を行う孔あけ加工部と、
少くとも、前記磁気ヘッド、前記演算処理部及び前記孔あけ加工部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は前記多層配線板の位置情報をもとに、孔あけ加工を行う孔あけ位置を決定し、前記孔あけ加工部を駆動して前記孔あけ位置に孔あけ加工を行うことを特徴とする多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項2】
前記検出電極は同一の層に配置されている複数の計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値をそれぞれ独立した電圧値として検出する請求項1に記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項3】
前記検出電極は異なるの層に配置されている複数の計測対象パターンで誘起された起電力の電圧値をそれぞれ独立した電圧値として検出し、
前記演算処理部は複数の層に形成されている既設の配線パターンの位置情報をそれぞれ独立して取得し、
前記制御部は前記多層配線板の位置情報及び前記複数の層に形成されている既設の配線パターンの位置情報をもとに孔あけ位置を取得する請求項1又は請求項2に記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項4】
前記磁気ヘッド及び前記検出電極を、それぞれ、前記計測対象パターンの数にあわせた個数備えている請求項1から請求項3のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項5】
前記磁気ヘッドを、前記多層配線板の主面に沿って1軸方向または2軸方向に移動させる磁気ヘッド駆動部をさらに備えている請求項1から請求項4のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項6】
前記多層配線板が載置される載置面を有するテーブルを備え、
前記テーブルを、前記載置テーブルの前記載置面に沿って1軸方向または2軸方向に移動させるテーブル駆動部を備えている請求項1から請求項5のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項7】
前記制御部は前記テーブルが所定の位置に移動された後に、前記磁気ヘッドより前記交番磁場の印加を開始する請求項6のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項8】
前記テーブルは前記多層配線板を保持するためのクランプ部を備えており、
前記検出電極が前記クランプ部に含まれる請求項6又は請求項7に記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項9】
前記テーブルは往復動するものであり、
前記制御部は前記テーブルが一方に向かって移動するときに、前記磁気ヘッドより交番磁場を前記多層配線板に印加させ、前記情報記録部に前記検出電極にて検出された電圧値と前記電圧値が検出された位置での前記交番磁場の位置データを前記情報記録部に記録し、前記演算処理部にて前記多層配線板の位置情報を取得し、
前記テーブルが他方に向かって摺動するときに前記孔あけ部を駆動させて孔あけ加工を行う請求項8に記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記テーブルが他方に向かって摺動されるときに、前記磁気ヘッドより交番磁場を印加させるとともに、前記検出電極にて検出される電圧値と、前記電圧値が検出された位置での前記交番磁場の位置データとを前記情報記録部に記録させ、前記演算処理部にて前記多層配線板の位置情報を取得し、前記位置情報を用いて孔あけ位置を補正する請求項9に記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項11】
前記孔あけ加工部は回転ドリルを備えている請求項1から請求項10のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。
【請求項12】
前記孔あけ加工部は孔あけ用のレーザ光を照射するレーザ光照射部を備えている請求項1から請求項10のいずれかに記載の多層配線板の孔あけ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−62393(P2010−62393A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227609(P2008−227609)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】