説明

多層重合体粒子

【課題】 フィルムに含有させたときに優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを両立させうる多層重合体粒子、これを含有するメタクリル樹脂組成物、及び該メタクリル樹脂組成物からなるフィルムを提供する。
【解決手段】
多層重合体粒子であって、該粒子の中心部から外表面方向に、以下の弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)をこの順に含む多層重合体粒子。
弾性重合体層(A):アクリル酸アルキル50〜99.9重量部(以下、部)、所定の単官能単量体0〜49.9部、及び所定の多官能単量体0.1〜10部が重合してなり、かつ多官能単量体の重量部が内側から連続的に増加しながら重合してなる重合体層。
硬質重合体層(B):メタクリル酸アルキル50〜100部、所定の単官能単量体0〜50部、及び所定の多官能単量体0〜3部が重合してなる重合体層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルム用の耐衝撃性改良剤などに有用な(メタ)アクリル系の多層重合体粒子、該多層重合体粒子とメタクリル樹脂とを含有するメタクリル樹脂組成物、並びに該組成物からなり、自動車の内装用資材、家電製品の外装用資材、建築用資材(エクステリア)等に有用なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系の多層重合体は、フィルム用の耐衝撃性改良剤等として使用されており、例えば、特許文献1〜5には、アクリル系弾性重合体層と、メタクリル酸アルキル、及びこれより少量のアクリル酸ブチル又はアクリル酸メチルが重合してなる硬質重合体層とを備え、前記アクリル系弾性重合体層の外側に密着して前記硬質重合体層が形成されてなる2層の重合体層を含有する多層重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−13318号公報
【特許文献2】特開平3−39350号公報
【特許文献3】特開2003−73520号公報
【特許文献4】特開2004−137299号公報
【特許文献5】特開2009−24112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の多層重合体をメタクリル樹脂に配合したフィルム状のメタクリル樹脂組成物においては、耐応力白化性と伸び性の両方の物性を兼ね備えることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、フィルムに含有させたときに優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)とを両立させうる多層重合体粒子、これを含有するメタクリル樹脂組成物、及び前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)多層重合体粒子であって、該粒子の中心部から外表面方向に、以下の弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)をこの順に含む多層重合体粒子。
弾性重合体層(A):アクリル酸アルキル50〜99.9重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜49.9重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0.1〜10重量部が重合してなり、かつ多官能単量体の重量部が内側から連続的に増加しながら重合してなる重合体層。
硬質重合体層(B):メタクリル酸アルキル50〜100重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜50重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0〜3重量部が重合してなる重合体層。
(2)弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)が30〜95重量部である前記(1)に記載の多層重合体粒子。
(3)前記(1)または(2)に記載の多層重合体粒子1〜99重量部と、メタクリル樹脂(C)99〜1重量部とを含有するメタクリル樹脂組成物。
(4)メタクリル樹脂(C)は、メタクリル酸アルキル70〜100重量部、及びこれと共重合可能な単量体0〜30重量部が重合してなる前記(3)に記載のメタクリル樹脂組成物。
(5)前記(3)または(4)に記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層重合体粒子によれば、この多層重合体をメタクリル樹脂組成物に含有させてフィルム化すると、優れた耐応力白化性と伸び性(引張強度)の両方の物性を兼ね備えたフィルムを提供することができ、例えば、自動車の内装用資材、家電製品の外装用資材、建築用資材(エクステリア)等に好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】各単量体成分を重合反応器に供給するパワーフィード法の態様の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の多層重合体粒子は、該粒子の中心部から外表面方向に、弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)をこの順に含むものである。
ここでいう弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキル50〜99.9重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜49.9重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0.1〜10重量部が重合してなり、かつ多官能単量体の重量部が多層重合体粒子の内側から連続的に増加しながら重合してなる重合体層であり、硬質重合体層(B)は、メタクリル酸アルキル50〜100重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜50重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0〜3重量部が重合してなる重合体層である。
【0011】
前記弾性重合体層(A)は、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量部の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0.1〜10重量部の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体を0〜49.9重量部の範囲で含有してもよい単量体成分(ここで、単量体成分の総量は100重量部である)が重合してなり、かつ多官能単量体の重量部が多層重合体粒子の内側から連続的に増加しながら重合してなる。アクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは55〜80重量部であるのがよく、前記多官能単量体の含有量は、好ましくは0.2〜8重量部であるのがよい。また、前記単官能単量体は、任意で含有させうる成分であり、その含有量は、好ましくは、20〜45重量部であるのがよい。弾性重合体層(A)を構成する単量体成分における前記多官能単量体の含有量が0.1重量部未満であると、フィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性を得られなくなり、一方、10重量%以上であると、フィルムに含有させたときに充分な伸び性が得られなくなる。
【0012】
弾性重合体層(A)を得るためのアクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8のアルキル基を有するものを用いることができる。中でも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのように炭素数が4〜8のアルキル基を有するものが好ましい。なお、これらアクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0013】
弾性重合体層(A)を得るためのラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体は、いわゆる架橋剤として機能する。
該多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが特に好ましい。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
弾性重合体層(A)を得るためのラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物;等が挙げられる。なお、これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
弾性重合体層(A)は、多官能単量体の重量部が連続的に増加しながら重合してなる。
これは該重合体層の内側(多層重合体粒子の中心側)から外側(多層重合体粒子の外表面側)に向け、多官能単量体の重量部が連続的に増加しながら重合してなる部位である。具体例としては、該重合体層の内側から外側に向け、多官能単量体単位を0重量部から5.0重量部へと連続的に増加させたものであるが、これに限定されるものではない。
【0016】
前記硬質重合体層(B)は、メタクリル酸アルキルを50〜100重量部の範囲で含有し、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を0〜3重量部の範囲で含有してもよく、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜50重量部の範囲で含有してもよい単量体成分(ここで、単量体成分の総量は100重量%である)が重合してなる。メタクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは60〜98重量部であるのがよい。また、前記多官能単量体は、任意で含有させうる成分であるが、含有量が3重量部を超えると、フィルムに含有させたときに充分な伸び性が得られなくなるおそれがあるため、その含有量は、好ましくは1重量部以下であるのがよい。また、前記単官能単量体は、任意で含有させうる成分であり、その含有量は、好ましくは2〜40重量部であるのがよい。
【0017】
硬質重合体層(B)を得るためのメタクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8程度のアルキル基を有するものが用いられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらメタクリル酸アルキルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
硬質重合体層(B)を得るためのラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体は、いわゆる架橋剤として機能する。該多官能単量体としては、具体的には、前述した弾性重合体(A)を得るための多官能単量体と同様のものを例示することができる。例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、グリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、多塩基酸のポリアルケニルエステルが特に好ましい。なお、これら多官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0019】
硬質重合体層(B)を得るためのラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。これら単官能単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0020】
本発明の多層重合体粒子において、弾性重合体層(A)、硬質重合体層(B)の重量割合(各層を構成する単量体成分の重量比)は、本発明の効果を奏する範囲で適宜選択されうるが、例えば、弾性重合体層(A)は、弾性重合体層(A)と硬質重合体層(B)との合計100重量部に対して30〜95重量部であることが好ましく、より好ましくは40〜80重量部であるのがよい。弾性重合体層(A)の合計量が、前記割合よりも少ないと、得られる多層重合体粒子をフィルムに含有させたときに充分な耐応力白化性や伸び性を得られないおそれがあり、一方、前記割合よりも多いと、フィルム内での多層重合体の均一分散性が低下するおそれがある。
【0021】
次に、本発明の多層重合体粒子の製造方法について説明する。本発明の多層重合体粒子は、乳化重合法により、該多層重合体粒子を含むラテックスとして製造することができ、さらに、その後の精製操作を経ることにより、粒子状の多層重合体を粉体として得ることができる。ここでは、弾性重合体層(A)と硬質重合体層(B)を備える2層からなる多層重合体粒子の製造方法を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0022】
まず、弾性重合体層(A)を製造する方法について説明する。
窒素等の不活性ガス雰囲気下に、乳化剤や重合開始剤等を含む水系媒体中にアクリル酸アルキル、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体、及び必要に応じてラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体(例えばメタクリル酸アルキル、スチレン等)を供給することでそれらを重合させる。ここで、多官能単量体はその重量部を連続的に増加させながら供給される。
かかる供給方法としては、多官能単量体を供給速度を変えながら別の供給経路からそれぞれ供給する方法のほか、いわゆるパワーフィード法と称される方法等が挙げられる。
ここでいうパワーフィード法とは、図1に示すように、まず始めにアクリル酸アルキル、前記単官能単量体を入れた容器2Aと、アクリル酸アルキル、前記単官能単量体、前記多官能単量体、を入れた容器2Bと、容器2Aから重合反応器1に単量体成分を移送するライン3A及びポンプ4Aと、容器2Bから容器2Aに単量体成分を移送するライン3B及びポンプ4Bとを用意する。次いで、容器2Aにいれてあるアクリル酸アルキル、単官能単量体をライン3Aを通じポンプ4Aにより重合反応器1に移送すると共に、容器2Bに入れてあるアクリル酸アルキル、単官能単量体、多官能単量体をライン3Bを通じポンプ4Bにより容器2Aに移送する。ここで、容器2Aに入っているアクリル酸アルキル、単官能単量体と、容器2Bより移送されてくるアクリル酸アルキル、単官能単量体、多官能単量体とが、容器2A内にて混合される。なお、この際、容器2A内を攪拌することにより、均一に混合させることができる。引き続き、容器2A内に入っているアクリル酸アルキル、単官能単量体、多官能単量体の混合液をライン3Aを通じポンプ4Aにより重合反応器1に移送すると共に、容器2Bに入れてあるアクリル酸アルキル、単官能単量体、多官能単量体をライン3Bを通じポンプ4Bにより容器2Aに移送する。かかる操作を繰り返すことにより、容器2A内の混合液中の多官能単量体重量部が徐々に高くなり、それに伴い重合反応器1に移送される多官能単量体重量部も徐々に高くなるため、多官能単量体の重量部を連続的に増加しながらそれらを重合させることが可能となる。なお、容器2Aおよび容器2Bに単官能単量体を入れた場合のパワーフィード法について説明したが、これに限定されず、例えば、単官能単量体を容器2Aおよび容器2Bのどちらか一方のみに入れて重合させてもよいし、どちらにも入れずに重合させてもよい。
【0023】
次に弾性重合体層(A)の外側に硬質重合体層(B)を形成するには、例えば、前記重合体粒子を含むラテックスに、硬質重合体層(B)(外層)を構成する原料であるメタクリル酸アルキル、必要に応じてラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体及び/またはラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を添加してこれらを重合させる。これにより、弾性重合体層(A)の外側に密接して硬質重合体層(B)が形成され、2層構成の重合体粒子を含むラテックスを得ることができる。
なお、硬質重合体層(B)の外側に、さらに硬質重合体層を形成させる場合には、前記2層構成の重合体粒子を含むラテックスに、さらに該硬質重合体層を構成する原料となる単量体を添加して重合させればよい。
【0024】
前記水系媒体としては、例えば、水や、水及び水混和性溶剤の混合溶媒等が挙げられる。水系媒体は、多層重合体粒子の原料となる各単量体の総量100重量部に対して50〜300重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。
【0025】
前記乳化剤としては、特に限定されないが、例えばアニオン系の乳化剤等が挙げられ、該アニオン系の乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の直鎖または分岐したアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。乳化剤は、多層重合体粒子の原料となる各単量体の総量100重量部に対して0.01〜5重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。
【0026】
前記重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物等が挙げられる。重合開始剤は、多層重合体粒子の原料となる各単量体の総量100重量部に対して0.01〜1重量部程度の割合となるように、一括、分割または連続して添加するのが好ましい。また、必要に応じて、炭酸ナトリウム等のpH調整剤を用いてもよい。重合温度としては、通常、60〜90℃程度である。
【0027】
弾性重合体層(A)と硬質重合体層(B)の分子量を制御するために、公知の連鎖移動剤を使用することができる。
かかる連鎖移動剤として、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタンなどのアルキル基または置換アルキル基を有する第一、第二級および第三級メルカプタン、フェニルメルカプタンなどの芳香族メルカプタン、チオグリコール酸とそのエステルおよびエチレングリコールなどが挙げられる。
【0028】
また、乳化剤の添加量や前記各単量体の使用量等を調節することによって、多層重合体粒子の粒子径を調整することができる。該粒子径は、重量平均粒子径で、30〜200nmで、好ましくは50〜150nm、更に好ましくは60〜120nmである。30nm未満では、該粒子を含むフィルム状のメタクリル樹脂組成物において十分な伸び性を得ることができないことがある。一方、200nmを超えると、該粒子を含むフィルム状のメタクリル樹脂組成物において十分な耐応力白化性や透明性を得ることができないことがある。
なお、本発明の多層重合体粒子において、中心部が弾性重合体層(A)である場合の中心部の弾性重合体層(A)の径は、特に限定されないが、重量平均粒子径で、10〜120nmであることが好ましい。
【0029】
かくして本発明の多層重合体粒子を含むラテックスを得ることができる。このラテックスから多層重合体粒子を回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、塩析や酸析、凍結などで凝固させた後、ろ過し、次いで洗浄する方法や、スプレー乾燥処理により回収する方法が挙げられる。
なお、多層重合体粒子の粒子径や各層の粒子径は、各層を構成する単量体成分の量や、その際に用いる乳化剤の使用量等を調節することによって調整することができる。
【0030】
本発明の多層重合体粒子は、単独でフィルム状に成形して使用することもできるが、後述する本発明のフィルムのように、メタクリル樹脂と混合したメタクリル樹脂組成物をフィルム状に成形して使用されるのが好ましい。
【0031】
〔メタクリル樹脂組成物〕
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上述した本発明の多層重合体粒子とメタクリル樹脂(C)とを含むものである。このとき、両者の含有割合は、通常、多層重合体粒子:メタクリル樹脂(C)(重量比)=1:99〜99:1である。好ましくは、多層重合体粒子:メタクリル樹脂(C)(重量比)=20:80〜80:20であるのがよい。
【0032】
前記メタクリル樹脂(C)は、メタクリル酸アルキルを70重量%以上100重量%以下の範囲で含有し、該メタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体を30重量%以下の範囲で含有してもよい単量体成分が重合してなる(共)重合体であるのが好ましい。
ここでいうメタクリル酸アルキルとしては、通常、炭素数が1〜8程度のアルキル基を有するものが用いられ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
また、ここでいうメタクリル酸アルキルと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル;スチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。なお、得ようとするメタクリル樹脂組成物に透明性が求められる場合、多層重合体粒子とメタクリル樹脂の屈折率が実質的に同じになるように、多層重合体粒子を構成する各単量体の種類を考慮して選択するのが好ましい。
メタクリル樹脂(C)は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の従来公知の方法により前記単量体成分を重合することで得られる。
【0033】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記多層重合体粒子と前記メタクリル樹脂(C)とを混合し、必要に応じて成形等の加工を施すことにより、得ることができる。
多層重合体粒子とメタクリル樹脂(C)との混合には、例えば、混練機、単軸押出機や二軸押出機で溶融混練する方法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0034】
本発明のメタクリル樹脂組成物には、必要に応じて、膠着防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、染料等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。中でも、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させるうえで好ましく用いられる。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、メタクリル樹脂組成物に添加剤を含有させる際には、多層重合体粒子の重合の際に添加してもよいし、多層重合体粒子とメタクリル樹脂との混合時や、その後の加工時に添加してもよい。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
また、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤の具体例としては、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、メタクリル樹脂組成物の全量に対して、通常0.1重量%以上であり、好ましくは0.3重量%以上、2重量%以下であるのがよい。
【0036】
〔フィルム〕
本発明のフィルムは、上述した本発明のメタクリル樹脂組成物からなる。
かかる本発明のフィルムは、例えば、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法等のフィルム化方法によって作製することができる。中でも、前記メタクリル樹脂組成物を、例えばTダイから溶融押出して得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点からは、前記メタクリル樹脂組成物を溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。
【0037】
本発明のフィルムは、着色されていてもよい。
着色法としては、例えば、前記メタクリル樹脂組成物自体に顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂組成物自体を着色する方法や、染料が分散した液中にメタクリル樹脂組成物からなるフィルムを浸漬して着色させる染色法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
また、本発明のフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの少なくとも一方の面に、絵柄などの印刷を施したり、着色層を設けたりして形成された意匠層を設けたものであってもよい。このような意匠層は、深みのある外観を与えるうえで、内装壁材を構成する基材と接する側に施されているのが好ましい。
【0038】
本発明のフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に、メタクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂からなる層(以下「熱可塑性樹脂層」と称する)が少なくとも1層積層されたものであってもよい。このとき、前述したように、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に印刷や着色などの意匠層を設けた場合には、意匠層を設けた側の面に熱可塑性樹脂層を積層するのがよい。なお、熱可塑性樹脂層は、1層であってもよいし2層以上であってもよい。また、熱可塑性樹脂層が2層以上である場合には、その一部の層を意匠層とするのがよい。
前記熱可塑性樹脂層を形成するメタクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂以外の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に、ABS樹脂が好ましい。
【0039】
前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムに熱可塑性樹脂層を積層する際の積層一体成形法は、特に制限されるものではなく、例えば、前記メタクリル樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを、予めそれぞれ別個にフィルム状に成形しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション)、予め成形した一方の樹脂フィルムを、Tダイから溶融押出しされたもう一方の樹脂とラミネートする方法などが挙げられる。なお、これらの方法を採用するにあたり、必要に応じて、フィルム状に成形した前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムは、熱可塑性樹脂層が貼合される側の面に、コロナ処理などが施されていてもよいし、接着層が設けられていてもよい。
また、前記他の熱可塑性樹脂を予めフィルム状に成形する際には、例えば、他の熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂等の如きメタクリル樹脂組成物と相溶性の高い樹脂である場合には、成形されたフィルムは、前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムと直接積層すればよく、ポリオレフィン樹脂等の如きメタクリル樹脂組成物と非相溶な樹脂である場合には、成形されたフィルムは、ドライラミネート等の手法により接着剤を介して前記メタクリル樹脂組成物からなるフィルムと積層すればよい。
【0040】
例えば、無色透明であるメタクリル樹脂組成物からなるフィルムの片面に、着色された熱可塑性樹脂層を積層してなる本発明のフィルムは、着色面(熱可塑性樹脂層側)に内装壁材の基材が貼合成形されるようにすれば、深み感のある着色状態を呈する優れた加飾部材となる。
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、通常0.03〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.15mmである。
かかる本発明のフィルムは、例えば、自動車の内装用資材、家電製品の外装用資材、建築用資材(エクステリア)等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
【0042】
(実施例1)
〔多層重合体粒子の製造〕
まず5Lのガラス製反応器1に、下記単量体原料(ア)を入れた容器2Aと、下記単量体原料(イ)を入れた容器2Bと、容器2Aから重合反応器1に単量体成分を移送するライン3A及びポンプ4Aと、容器2Bから容器2Aに単量体成分を移送するライン3B及びポンプ4Bとを用意した。次に、重合反応器に下記水系媒体原料(ウ)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。
その後、容器2Aに入れた単量体原料(ア)と、容器2Bに入れた単量体原料(イ)の総量を100部として、容器2Aから重合反応器に単量体成分を0.29部/分の速度でライン3Aを通じてポンプ4Aにより移送すると共に、容器2Bから容器2Aに単量体成分を0.14部/分の速度でライン3Bを通じてポンプ4Bにより移送し、計60分で各単量体成分を供給した。
引き続き、攪拌しながら同温度で45分間熟成し、粒子の中心から外側に向かって、メタクリル酸アリル比率が高い重合組成へと連続的に変化している弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度で、下記追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質重合体層(B)の原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質重合体層(B)を備えた2層重合体粒子を含むラテックスを得た。なお、弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックス、及び、得られた2層重合体粒子を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体粒子の重量平均粒子径を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ58nm、82nmであった。
【0043】
<弾性重合体層(A)の単量体原料(ア)>
アクリル酸ブチル 5.22部
メタクリル酸メチル 2.26部
スチレン 1.09部
<弾性重合体層(A)の単量体原料(イ)>
アクリル酸ブチル 5.22部
メタクリル酸メチル 2.26部
スチレン 1.09部
メタクリル酸アリル 0.27部
<水系媒体原料(ウ)>
イオン交換水 64.8部
炭酸ナトリウム 0.04部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.013部
<追加開始剤原料(エ)>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.013部
<硬質重合体層(B)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 15.65部
アクリル酸メチル 1.74部
【0044】
次に、得られた2層重合体粒子を含むラテックスを、−20℃で24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させ、得られた融解物を濾過することにより、2層重合体粒子を単離した。次いで、単離した2層重合体粒子に、20重量倍のイオン交換水の中に投入して攪拌した後、濾過することにより洗浄する操作を、合計5回繰返して施し、その後、60℃に設定した真空乾燥機で乾燥して、本発明の多層重合体粒子であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0045】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
メタクリル酸メチル95%とアクリル酸メチル5%とからなる単量体成分をバルク重合することにより得られたペレット状のメタクリル樹脂を50部と、上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子50部とを、スーパーミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを、20mmΦの一軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて溶融させ、設定温度260℃のT型ダイを介して押し出し、2本のポリシングロールに両面が完全に接するようにして冷却することにより、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張破断時の伸びを以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0046】
<応力白化性の評価>
得られたフィルム(厚さ80μm)をサンプルとし、これを、突き上げ試験機(LLOYD INSTRUMENTS LTD.製「LF−Plus Universal Test Machine」)のサンプルホルダーに、15mmΦの穴の空いた二枚のステンレス板で挟み込んだ状態で水平に固定した。そして、23℃の雰囲気下、先端が半球状である10mmΦのダートを、1200mm/分の速度で、ステンレス板の穴の中央部のフィルム面から下方へ5mm突き下ろした。このとき、半球状に変形したフィルムの応力白化した状態を目視で観察し、以下の基準で5段階のレベルに判定した。なお、この試験は5回行い、5回の判定レベルの平均値を求めた。
レベル0:全く白化が認められない。
レベル1:極薄く白化が認められる。(ほとんど白化していない。)
レベル2:薄い白化が認められる。(僅かに白化している。)
レベル3:白化が認められる。
レベル4:著しく白化が認められる。
【0047】
<引張破断時の伸びの評価>
得られたフィルム(厚さ80μm)から幅10mmの短冊状のサンプルを切り出し、これを用いて、万能材料試験機(INSTRON社製「1122RF55型」)にて、チャック間隔を90mmにセットし、引張りスピードを50mm/分として、23℃で、引張破断時の伸び(%)を測定した。この数値が高いほど、伸び性に優れていると言える。
【0048】
(実施例2)
まず5Lのガラス製反応器1に、下記単量体原料(ア)を入れた容器2Aと、下記単量体原料(イ)を入れた容器2Bと、容器2Aから重合反応器1に単量体成分を移送するライン3A及びポンプ4Aと、容器2Bから容器2Aに単量体成分を移送するライン3B及びポンプ4Bとを用意した。次に、重合反応器に下記水系媒体原料(ウ)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。
その後、容器2Aから重合反応器に単量体成分を0.26部/分の速度でライン3Aを通じてポンプ4Aにより移送すると共に、容器2Bから容器2Aに単量体成分を0.13部/分の速度でライン3Bを通じてポンプ4Bにより移送し、計87分で各単量体成分を供給した。
引き続き、攪拌しながら同温度で45分間熟成し、粒子の中心から外側に向かって、メタクリル酸アリル比率が高い重合組成へと連続的に変化している弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度で、下記追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質重合体層(B)の原料(オ)を45分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質重合体層(B)を備えた2層重合体粒子を含むラテックスを得た。なお、弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックス、及び、得られた2層重合体粒子を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体粒子の重量平均粒子径を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ73nm、92nmであった。
【0049】
<弾性重合体層(A)の単量体原料(ア)>
アクリル酸ブチル 6.80部
メタクリル酸メチル 2.82部
スチレン 1.42部
<弾性重合体層(A)の単量体原料(イ)>
アクリル酸ブチル 6.80部
メタクリル酸メチル 2.82部
スチレン 1.42部
メタクリル酸アリル 0.57部
<水系媒体原料(ウ)>
イオン交換水 64.8部
炭酸ナトリウム 0.04部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.14部
過硫酸カリウム 0.012部
<追加開始剤原料(エ)>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.11部
過硫酸カリウム 0.012部
<硬質重合体層(B)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 10.99部
アクリル酸メチル 1.22部
【0050】
次に、得られた2層重合体粒子を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体粒子であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0051】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張破断時の伸びの評価を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0052】
(比較例1)
まず5Lのガラス製反応器1に、重合反応器に下記水系媒体原料(ウ)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。
その後、重合反応器に下記弾性重合体層(A)の単量体原料[(ア)+(イ)]成分を0.29部/分の速度で計60分で供給した。
引き続き、攪拌しながら同温度で45分間熟成し、メタクリル酸アリル比率が粒子内で均一である弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度で、下記追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質重合体層(B)の下記原料(オ)を60分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質重合体層(B)を備えた2層重合体粒子を含むラテックスを得た。なお、弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックス、及び、得られた2層重合体粒子を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体粒子の重量平均粒子径を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ56nm、83nmであった。
【0053】
<弾性重合体層(A)の単量体原料(ア)+(イ)>
アクリル酸ブチル 10.44部
メタクリル酸メチル 4.52部
スチレン 2.18部
メタクリル酸アリル 0.27部
<水系媒体原料(ウ)>
イオン交換水 64.8部
炭酸ナトリウム 0.04部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.013部
<追加開始剤原料(エ)>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.16部
過硫酸カリウム 0.013部
<硬質重合体層(B)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 15.65部
アクリル酸メチル 1.74部
【0054】
次に、得られた2層重合体粒子を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体粒子であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0055】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張破断時の伸びの評価を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0056】
(比較例2)
まず5Lのガラス製反応器1に、重合反応器に下記水系媒体原料(ウ)の全量を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃に昇温した。
その後、重合反応器に下記弾性重合体層(A)の下記単量体原料[(ア)+(イ)]成分を0.29部/分の速度で計87分で供給した。
引き続き、攪拌しながら同温度で45分間熟成し、メタクリル酸アリル比率が粒子内で均一である弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックスを得た。次いで、得られたラテックスに、同温度で、下記追加開始剤原料(エ)を添加して攪拌した後、同温度で、下記硬質重合体層(B)の原料(オ)を45分間かけて連続的に添加し、引き続き攪拌しながら同温度で45分間熟成することにより、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質重合体層(B)を備えた2層重合体粒子を含むラテックスを得た。なお、弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックス、及び、得られた2層重合体粒子を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体粒子の重量平均粒子径を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ70nm、90nmであった。
【0057】
<弾性重合体層(A)の単量体原料(ア)+(イ)>
アクリル酸ブチル 13.60部
メタクリル酸メチル 5.64部
スチレン 2.84部
メタクリル酸アリル 0.57部
<水系媒体原料(ウ)>
イオン交換水 64.8部
炭酸ナトリウム 0.04部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.14部
過硫酸カリウム 0.012部
<追加開始剤原料(エ)>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.11部
過硫酸カリウム 0.012部
<硬質重合体層(B)の原料(オ)>
メタクリル酸メチル 10.99部
アクリル酸メチル 1.22部
【0058】
次に、得られた2層重合体粒子を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体粒子であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0059】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張破断時の伸びの評価を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0060】
(比較例3)
容器2Bに弾性重合体層(A)の単量体原料(ア)、容器2Aに弾性重合体層(A)の単量体原料(イ)を入れた以外は、実施例1と同様の操作を行い、弾性重合体層(A)を内層とし、その外側に密接して外層となる硬質重合体層(B)を備えた2層重合体粒子を含むラテックスを得た。なお、弾性重合体層(A)のみからなる重合体粒子を含むラテックス、及び、得られた2層重合体粒子を含むラテックスについて、各ラテックスに含まれる重合体粒子の重量平均粒子径を、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて測定したところ、それぞれ71nm、91nmであった。
【0061】
次に、得られた2層重合体粒子を含むラテックスから、実施例1と同様の操作により、2層重合体粒子を単離し、実施例1と同様にして洗浄、乾燥して、本発明の多層重合体粒子であるパウダー状の2層重合体粒子を得た。
【0062】
〔メタクリル樹脂組成物の製造及びフィルムの製造〕
上記で得られたパウダー状の2層重合体粒子を用いたこと以外、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物のペレットを得た。
次に、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作により、メタクリル樹脂組成物からなる厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの応力白化性及び引張破断時の伸びの評価を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0063】
【表1】

【符号の説明】
【0064】
1 重合反応器
2A、2B 容器
3A、3B ライン
4A、4B ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層重合体粒子であって、該粒子の中心部から外表面方向に、以下の弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)をこの順に含む多層重合体粒子。
弾性重合体層(A):アクリル酸アルキル50〜99.9重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜49.9重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0.1〜10重量部が重合してなり、かつ多官能単量体の重量部が内側から連続的に増加しながら重合してなる重合体層。
硬質重合体層(B):メタクリル酸アルキル50〜100重量部、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体0〜50重量部、及びラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体0〜3重量部が重合してなる重合体層。
【請求項2】
弾性重合体層(A)及び硬質重合体層(B)の合計100重量部に対し、弾性重合体層(A)が30〜95重量部である請求項1に記載の多層重合体粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多層重合体粒子1〜99重量部と、メタクリル樹脂(C)99〜1重量部とを含有するメタクリル樹脂組成物。
【請求項4】
前記メタクリル樹脂(C)は、メタクリル酸アルキル70〜100重量部、及びこれと共重合可能な単量体0〜30重量部が重合してなる請求項3に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載のメタクリル樹脂組成物からなるフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−153291(P2011−153291A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277363(P2010−277363)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】