説明

多方向入力装置

【課題】操作部材を互いに直交する2方向へ揺動操作したときの検出タイミングを等しくすることができる多方向入力装置を提供する。
【解決手段】操作ノブ2とホルダ6および駆動体7等からなる操作部材を下カバー5上に互いに直交するX方向およびY方向へ揺動可能に支持し、Y方向に長い開口15aを有する第1スライダ15とX方向に長い開口16aを有する第2スライダ16とをそれぞれの開口15a,16aが直交するように積層配置する。そして駆動体7から突出する係合突部12を両開口15a,16aに挿通させ、この係合突部12がX方向へ揺動したときにその駆動力を受ける第1スライダ15の第1の当接部15dと、係合突部12がY方向へ揺動したときにその駆動力を受ける第2スライダ16の第2の当接部16dとを、いずれも操作部材の揺動支点Pから略等しい高さ位置に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を互いに直交する2方向へ選択的に揺動操作することによって入力が可能な多方向入力装置に係り、特に、操作部材の揺動操作を積層配置された上下2段のスライダで直線運動に変換するようにした多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、開口を有する2つのスライダをそれぞれの開口が直交するように積層配置し、これらスライダの開口に挿通した操作部材を平面上で平行移動させることにより、2つのスライダを互いに直交するX方向およびY方向へそれぞれ平行移動させるようにした多方向入力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14はかかる従来の多方向入力装置を模式的に示す平面図、図15は図14のA−A線に沿う断面図、図16は図14のB−B線に沿う断面図であり、この多方向入力装置は、上下に積層配置された第1および第2スライダ100,101と、これらスライダ100,101を駆動する操作部材102と、両スライダ100,101の移動を検出する一対の検出手段(図示せず)とを備えている。上段側の第1スライダ100はY方向を長辺とする開口100aを有しており、この第1スライダ100はX方向へ移動可能にガイドされている。下段側の第2スライダ101はX方向を長辺とする開口101aを有しており、この第2スライダ101はY方向へ移動可能にガイドされている。すなわち、第1および第2スライダ100,101はそれぞれの開口100a,101aが互いに直交するように積層配置されており、これら開口100a,101aに操作部材102が挿通されている。この操作部材102は支持部材103上に平行移動可能に載置されており、両スライダ100,101と支持部材103との間に可変抵抗器等からなる検出手段がそれぞれ設けられている。
【0004】
このように概略構成された多方向入力装置において、図15に示すように、操作部材102をX方向へ平行移動させると、その駆動力がY方向に長い開口100aの長辺側内壁面で受けられて第1スライダ100に伝達されるため、第1スライダ100が操作部材102と共にX方向へ平行移動し、第1スライダ100の移動が一方の検出手段によって検出される。この場合、操作部材102は第2スライダ101のX方向に長い開口101a内をX方向へ移動するため、第2スライダ101は操作部材102からの駆動力を受けることなく停止したままである。また、図16に示すように、操作部材102をY方向へ平行移動させると、その駆動力がX方向に長い開口101aの長辺側内壁面で受けられて第2スライダ101に伝達されるため、第2スライダ101が操作部材102と共にY方向へ平行移動し、第2スライダ101の移動が他方の検出手段によって検出される。この場合、操作部材102は第1スライダ100のY方向に長い開口100a内をY方向へ移動するため、第1スライダ100は操作部材102からの駆動力を受けることなく停止したままである。
【特許文献1】特開平5−324184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の多方向入力装置のように、上下に積層配置された第1および第2スライダ100,101が操作部材102の平行移動によって駆動されるものにおいては、操作部材102のX方向およびY方向の移動量に対して上段側の第1スライダ100と下段側の第2スライダ101が同じように駆動されるため、第1および第2スライダ100,101によって動作される両検出手段の検出タイミングがずれるという問題は発生しない。
【0006】
しかしながら、車載用電気機器等の分野では操作部材を揺動操作するタイプの多方向入力装置も要望されており、このように操作部材102を支持部材103上に揺動可能に支持した場合、両検出手段の検出タイミングに差が出るという問題が発生する。これを図17および図18に基づいて説明すると、図17に示すように、操作部材102をX方向へ揺動操作させたとき、その駆動力は上段側の第1スライダ100に形成された開口100aの長辺側内壁面の上端当接部100bで受けられるが、図18に示すように、操作部材102をY方向へ揺動操作させたとき、その駆動力は下段側の第2スライダ101に形成された開口101aの長辺側内壁面の上端当接部101bで受けられ、上端当接部100b,101bの操作部材102の揺動支点Pからの高さが第1スライダ100と第2スライダ101とで大きく異なることになる。その結果、操作部材102の単位揺動角度当たりの第1および第2スライダ100,101のスライド移動量が同じにならず、操作部材102をX方向およびY方向へそれぞれ同じ角度だけ揺動操作したにも拘わらず、揺動支点Pから遠い方の第1スライダ100が揺動支点Pに近い方の第2スライダ101よりも大きく移動してしまい、第1および第2スライダ100,101の移動を検出する両検出手段の検出タイミングに差が出ることになる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作部材を互いに直交する2方向へ揺動操作したときの検出タイミングを等しくすることができる多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、支持部材上に互いに直交するX方向およびY方向へ揺動可能に支持された操作部材と、Y方向に長い開口を有してX方向へ移動可能にガイドされた第1スライダと、X方向に長い開口を有してY方向へ移動可能にガイドされた第2スライダと、これら第1および第2の移動を検出する第1および第2の検出手段とを備え、前記第1スライダと前記第2スライダとをそれぞれの前記開口が平面的に重なるように積層配置すると共に、これら両開口に前記操作部材を挿通させた多方向入力装置であって、前記第1スライダは前記開口の内壁面に前記操作部材のX方向の揺動操作力を受ける第1の当接部を有しており、前記第2スライダは前記開口の内壁面に前記操作部材のY方向の揺動操作力を受ける第2の当接部を有しており、これら第1および第2の当接部が前記操作部材の揺動支点から略等しい高さ位置に設定されている構成とした。
【0009】
このように構成された多方向入力装置によれば、操作部材を互いに直交するX方向およびY方向へ揺動操作したときの単位揺動角度当たりの第1スライダと第2スライダの移動量が同じになるため、両スライダの移動量を検出する第1および第2の検出手段の検出タイミングを等しくすることができる。
【0010】
上記の構成において、第1スライダと第2スライダはそれぞれ開口を包囲するように連続する枠状部を有しており、この枠状部の長辺側と短辺側を厚み方向に段違いに形成すると共に、第1および第2の当接部を枠状部の長辺側の内壁面に設定することが好ましい。この場合において、第1スライダと第2スライダとが互いに天地を逆にした同一形状の樹脂成型品からなり、これら樹脂成型品に枠状部の長辺側から外側へ突出する腕部を形成し、この腕部によって第1および第2の検出手段が動作されるようにすると、共通の樹脂成型品を第1スライダおよび第2スライダとして用いることでコストの低減化が図れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多方向入力装置では、操作部材のX方向の揺動操作力を受ける第1スライダの当接部とY方向の揺動操作力を受ける第2スライダの当接部とが揺動支点から略等しい高さ位置に設定されており、操作部材をX方向およびY方向へ揺動操作したときの単位揺動角度当たりの第1スライダと第2スライダの移動量が同じになるため、両スライダの移動量を検出する第1および第2の検出手段の検出タイミングを等しくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は実施形態例に係るコントロールユニットの斜視図、図2は図1から操作ノブと上カバーを取り除いた斜視図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は図2のIV−IV線に沿う断面図、図5は該コントロールユニットの分解斜視図、図6は該コントロールユニットに備えられる多方向入力装置の一部を上カバーの下方から見た斜視図、図7は該多方向入力装置の要部を示す分解斜視図、図8〜図10は該多方向入力装置の動作説明図である。
【0013】
本実施形態例に係るコントロールユニットは空調装置や音響装置やナビゲーションシステム等の車載用電気機器を1台で集中的に制御するものであり、このコントロールユニットは、車内のセンターコンソール等に取り付けられる筐体1と、この筐体1から突出する操作ノブ2とを備えている。筐体1は、上下を開口した中空構造のケース3と、ケース3の上部開口端を蓋閉する上カバー4と、ケース3の下部開口端を蓋閉する下カバー5によって構成されており、これらは全て合成樹脂で成形されている。
【0014】
ケース3の内部に下面を閉塞した円筒状のホルダ6が配置されており、このホルダ6の上部開放端に駆動体7がねじ8を用いて一体化されている。なお、本実施形態例では、ホルダ6の内部に図示せぬ駆動モータ等を収納可能とするために別体の駆動体7を用いているが、このような収納空間を必要としない場合はホルダ6と駆動体7を一体成形品で構成しても良い。図3と図4に示すように、ホルダ6の下面中央に突起6aが形成されており、この突起6aは下カバー5に形成されたすり鉢状の凹部5aに挿入されている。すなわち、ホルダ6は突起6aと凹部5aの係合部分を揺動支点Pとして下カバー5上に揺動可能に支持されている。ホルダ6の上部外周面には一対の駆動受け6bが形成されており、これら駆動受け6bにそれぞれスプリング9を介して駆動棒10が挿入されている。各駆動棒10の上端は上カバー4の内底面に固着したカム部材11の底面に圧接されており、図示せぬが、カム部材11の底面には中央の最深部から外側へ向かって漸次浅くなるすり鉢状のカム面が形成されている。
【0015】
駆動体7には平面視十字状の係合突部12が突設されており、この係合突部12の4つの外壁面には凸部12aが突設されている。係合突部12は上カバー4に穿設された平面視十字状の貫通孔4aを挿通して外部へ突出しており、上カバー4上に配置された操作ノブ2が中継部材13を介して係合突部12に連結されている。すなわち、操作ノブ2と駆動体7およびホルダ6は操作者によって揺動操作される操作部材を構成しており、係合突部12と貫通孔4aの十字形状によって操作部材の揺動方向は互いに直交する2方向(X方向およびY方向)へ規制されている。
【0016】
図6に示すように、上カバー4の内底面には貫通孔4aを包囲するように4つのガイド部材14が設けられており、これらガイド部材14は貫通孔4aを原点とするX−Y軸上に配置されている。各ガイド部材14は二股状に形成されており、X軸上で対向する2つのガイド部材14によって第1スライダ15がX方向へ移動可能に支持され、Y軸上で対向する残り2つのガイド部材14によって第2スライダ16がY方向へ移動可能に支持されている。図7に示すように、第1スライダ15は、Y方向に長い開口15aを包囲する枠状部15bと、枠状部15bの相対向する長辺中央から外側へ延びる一対の腕部15cとを有しており、これら腕部15cが対応するガイド部材14にスライド可能に挟持されている。枠状部15bはY方向へ延びる両長辺に対してX方向へ延びる両短辺が厚み相当分だけ上方に位置する段違い形状に形成されており、下方に位置する両長辺の内壁面が係合突部12からの駆動力を受ける第1の当接部15dとなっている。第2スライダ16は、X方向に長い開口16aを包囲する枠状部16bと、枠状部16bの相対向する長辺中央から外側へ延びる一対の腕部16cとを有しており、これら腕部16cが対応するガイド部材14にスライド可能に挟持されている。枠状部16bはX方向へ延びる両長辺に対してY方向へ延びる両短辺が厚み相当分だけ下方に位置する段違い形状に形成されており、上方に位置する両長辺の内壁面が係合突部12からの駆動力を受ける第2の当接部16dとなっている。
【0017】
これら第1スライダ15と第2スライダ16は合成樹脂を用いて成形された同一形状の共通部品であるが、使用に際しては天地を逆にした状態でガイド部材14に組み込まれ、第1スライダ15の枠体部15bと第2スライダ16の枠体部15bとが平面的にオーバーラップするように積層配置されている。このように同一形状の第1スライダ15と第2スライダ16を天地逆にして積層配置することにより、第1スライダ15の第1の当接部15dと第2スライダ16の第2の当接部16dとが同一平面上に位置することになり、第1スライダ15の枠体部15bに形成された開口15aと第2スライダ16の枠体部16bに形成された開口16aとが互いに直交した状態でオーバーラップされる。
【0018】
図3と図4に示すように、駆動体7の係合突部12は第1および第2スライダ15,16の開口15a,16aに挿通されており、係合突部12からの駆動力が開口15a,16aの長辺側内壁面(第1および第2の当接部15d,16d)で受けられることにより、両スライダ15,16は操作部材(操作ノブ2と駆動体7およびホルダ6)の揺動操作に伴ってX方向またはY方向へ選択的にスライド移動するようになっている。ここで、第1スライダ15が係合突部12からの駆動力を受けてX方向へスライド移動するとき、第2スライダ16はその開口16a内を係合突部12が相対移動するだけで移動せず、第2スライダ16が係合突部12からの駆動力を受けてY方向へ移動するとき、第1スライダ15はその開口15a内を係合突部12が相対移動するだけで移動しない。また、前述したように、第1の当接部15dと第2の当接部16dとが同一平面上に位置するようになっているため、第1の当接部15dを含む平面から揺動支点Pに至る垂線の長さH(図3参照)と第2の当接部16dを含む平面から揺動支点Pに至る垂線の長さH(図4参照)とは等しく設定され、換言すると、第1および第2の当接部15d,16dが操作部材の揺動支点Pから等しい高さ位置に設定されることになる。
【0019】
また、上カバー4の内底面には各ガイド部材14を包囲するように枠状のプリント基板17が固定されており、このプリント基板17の裏面(下面)には4個のフォトインタラプタ18が実装されている。このフォトインタラプタ18は発光素子と受光素子(いずれも図示せず)が凹部18aを介して対向する光検出素子であり、各フォトインタラプタ18も貫通孔4aを原点とするX−Y軸上に配置されている。図8に示すように、第1スライダ15と第2スライダ16がX方向およびY方向の中立位置にあるとき、各腕部15c,16cの先端はそれぞれフォトインタラプタ18の凹部18a入口の不感帯内に侵入しており、各フォトインタラプタ18の発光素子と受光素子間の光路は遮断されている。なお、第1スライダ15の両腕部15cとX軸上に配置された2つのフォトインタラプタ18とによって第1スライダ15の移動量を検出する第1の検出手段が構成され、第2スライダ16の両腕部16cとY軸上に配置された2つのフォトインタラプタ18とによって第21スライダ16の移動量を検出する第2の検出手段が構成されている。
【0020】
次に、このように構成されたコントロールユニットに備えられる多方向入力装置の動作について説明する。
【0021】
図1と図3および図4は操作ノブ2に外力が作用していない非操作状態を示しており、操作部材の構成部品である操作体2と駆動体7およびホルダ6は鉛直方向を向いている。この非操作状態においては、駆動棒10の上端はスプリング9の弾発力を受けてカム部材11のカム面中央(最深部)に圧接されており、ホルダ6に一体化された駆動体7の係合突部12は上カバー4に穿設された貫通孔4aの中心に位置している。また、図8に示すように、係合突部12がそれぞれ開口15a,16aの長手方向中央に位置することにより、第1スライダ15と第2スライダ16はXおよびY方向の中立位置にあり、各各腕部15c,16cの先端はそれぞれフォトインタラプタ18の凹部18a入口の不感帯内に侵入している。したがって、フォトインタラプタ18の発光素子と受光素子間の光路は遮断されておらず、全てのフォトインタラプタ18からハイレベルの信号が出力される。
【0022】
かかる非操作状態から操作者が操作ノブ2をX方向またはY方向へ揺動操作すると、ホルダ6が下カバー5上の揺動支点Pを支点として同方向へ揺動するため、駆動棒10の上端がカム部材11のカム面を中央の最深部から外側へ摺動する。その際、ホルダ6と一体の係合突部12は貫通孔4aの中心からX方向またはY方向へ揺動し、1つの凸部12aが貫通孔4aの外縁凹部に侵入して凹凸係合した時点で、係合突部12のそれ以上の揺動動作が規制される。また、このように操作ノブ2の揺動操作に連動して係合突部12が貫通孔4a内をX方向またはY方向へ移動すると、それに伴って第1スライダ15または第2スライダ16がガイド部材14にガイドされながらスライド移動し、各フォトインタラプタ18の1つが選択的にオン動作する。
【0023】
いま、係合突部12の揺動方向をX方向に沿う左右両側でX1,X2とし、Y方向に沿う前後両側でY1,Y2としたとき、係合突部12が図8に示す中立位置からX2方向(右側)へ揺動すると、係合突部12はX方向に長い開口16aを相対移動するだけであるため、図9に示すように、第2スライダ16は係合突部12からの外力(揺動方向の駆動力)を受けることなく停止したままであるが、第1スライダ15は係合突部12からの外力をX2方向側の第1の当接部15dで受けてX2方向へスライド移動する。この場合、第1スライダ15はその腕部15cがガイド部材14にガイドされながらX2方向へ移動し、それに伴って腕部15cの先端がX2方向に位置するフォトインタラプタ18の凹部18a内を移動する。そして、係合突部12がX2方向の末端位置まで揺動した時点で、該フォトインタラプタ18の発光素子と受光素子間の光路が腕部15cの先端によって遮断されるため、このフォトインタラプタ18からローレベルの信号が出力される。このとき、第2スライダ16は係合突部12からの外力を受けることなく停止したままであるため、Y1−Y2方向とX1方向に位置する残り3個のフォトインタラプタ18から出力される信号はハイレベルのままである。係合突部12が中立位置からX1方向(左側)へ揺動する場合も同様であり、この場合、第1スライダ15が係合突部12からの外力をX1方向側の第1の当接部15dで受けてX1方向へスライド移動することにより、X1方向に位置するフォトインタラプタ18からローレベルの信号が出力され、残り3個のフォトインタラプタ18から出力される信号はハイレベルのままとなる。
【0024】
一方、係合突部12が図8に示す中立位置からY1方向(前側)へ揺動すると、係合突部12はY方向に長い開口15aを相対移動するだけであるため、図10に示すように、第1スライダ15は係合突部12からの外力を受けることなく停止したままであるが、第2スライダ16は係合突部12からの外力をY1方向側の第2の当接部16dで受けてY1方向へスライド移動する。この場合、第2スライダ16はその腕部16cがガイド部材14にガイドされながらY1方向へ移動し、それに伴って腕部16cの先端がY1方向に位置するフォトインタラプタ18の凹部18a内を移動する。そして、係合突部12がY1方向の末端位置まで揺動した時点で、該フォトインタラプタ18の発光素子と受光素子間の光路が腕部16cの先端によって遮断されるため、このフォトインタラプタ18からローレベルの信号が出力される。このとき、第1スライダ15は係合突部12からの外力を受けることなく停止したままであるため、X1−X2方向とY2方向に位置する残り3個のフォトインタラプタ18から出力される信号はハイレベルのままである。係合突部12が中立位置からY2方向(後側)へ移動する場合も同様であり、この場合、第2スライダ16が係合突部12からの外力をY2方向側の第2の当接部16dで受けてY2方向へスライド移動することにより、Y2方向に位置するフォトインタラプタ18からローレベルの信号が出力され、残り3個のフォトインタラプタ18から出力される信号はハイレベルのままとなる。
【0025】
このように操作ノブ2を互いに直交するXおよびY方向のいずれか一方向へ選択的に揺動操作すると、その操作方向に位置するフォトインタラプタ18の出力信号のみがハイレベルからローレベルへと変化するため、4個のフォトインタラプタ18から出力される信号に基づいて操作ノブ2の操作方向を認識することができる。その際、第1および第2の当接部15d,16dが係合突部12(操作部材)の揺動支点Pから等しい高さ位置に設定されているため、操作ノブ2をX(X1−X2)方向およびY(Y1−Y2)方向へ揺動操作したときの単位揺動角度当たりの第1スライダ15と第2スライダ16の移動量が同じになり、4個のフォトインタラプタ18の動作タイミングにずれが生じることはない。なお、操作ノブ2に対する揺動操作力を除去すると、スプリング9の弾発力を受けて駆動棒10の上端がカム部材11のカム面中央へ戻るため、操作ノブ2とホルダ6および駆動体7を含む操作部材は鉛直姿勢となり、係合突部12や第1および第2スライダ15,16が中立位置に自動復帰する。
【0026】
このように本実施形態例に係る多方向入力装置は、操作部材を構成する係合突部12がX方向へ揺動したときにその駆動力を受ける第1スライダ15の第1の当接部15dと、係合突部12がY方向へ揺動したときにその駆動力を受ける第2スライダ16の第2の当接部16dとが、いずれも操作部材の揺動支点Pから略等しい高さ位置に設定されており、操作部材をX方向およびY方向へ揺動操作したときの単位揺動角度当たりの第1スライダ15と第2スライダ16の移動量が同じになるため、両スライダ15,16の移動量を検出する4個のフォトインタラプタ18の検出タイミングを等しくすることができる。また、第1スライダ15と第2スライダ16を同一形状の樹脂成型品となし、これら第1および第2スライダ15,16を互いに天地逆にした状態でガイド部材14に組み込むようにしたので、部品を共通化してコストダウンが図られている。
【0027】
図11は第1および第2スライダの変形例を示す斜視図、図12は図11のA−A線に沿う断面図、図13は図11のB−B線に沿う断面図であり、図1〜図10に対応する部分には同一符号を付してある。
【0028】
これらの図に示すように、第1および第2の当接部15d,16dが操作部材の揺動支点Pから略等しい高さ位置に設定されていれば、枠状部15b,16bや腕部15c,16c等を含む第1および第2スライダ15,16の全体形状は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態例に係るコントロールユニットの斜視図である。
【図2】図1から操作ノブと上カバーを取り除いた斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】該コントロールユニットの分解斜視図である。
【図6】該コントロールユニットに備えられる多方向入力装置の一部を上カバーの下方から見た斜視図である。
【図7】該多方向入力装置の要部を示す分解斜視図である。
【図8】該多方向入力装置の動作説明図である。
【図9】該多方向入力装置の動作説明図である。
【図10】該多方向入力装置の動作説明図である。
【図11】第1および第2スライダの変形例を示す斜視図である。
【図12】図12のA−A線に沿う断面図である。
【図13】図12のB−B線に沿う断面図である。
【図14】従来例に係る多方向入力装置を模式的に示す平面図である。
【図15】図14のA−A線に沿う断面図である。
【図16】図14のB−B線に沿う断面図である。
【図17】従来技術の問題点を示す説明図である。
【図18】従来技術の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
2 操作ノブ
3 ケース
4 上カバー
4a 貫通孔
5 下カバー(支持部材)
5a 凹部
6 ホルダ
6a 突起6a
7 駆動体
12 係合突部
14 ガイド部材
15 第1スライダ
15a 開口
15b 枠状部
15c 腕部
15d 第1の当接部
16 第2スライダ
16a 開口
16b 枠状部
16c 腕部
16d 第2の当接部
17 プリント基板
18 フォトインタラプタ
18a 凹部
P 揺動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材上に互いに直交するX方向およびY方向へ揺動可能に支持された操作部材と、Y方向に長い開口を有してX方向へ移動可能にガイドされた第1スライダと、X方向に長い開口を有してY方向へ移動可能にガイドされた第2スライダと、これら第1および第2の移動を検出する第1および第2の検出手段とを備え、前記第1スライダと前記第2スライダとをそれぞれの前記開口が平面的に重なるように積層配置すると共に、これら両開口に前記操作部材を挿通させた多方向入力装置であって、
前記第1スライダは前記開口の内壁面に前記操作部材のX方向の揺動操作力を受ける第1の当接部を有しており、前記第2スライダは前記開口の内壁面に前記操作部材のY方向の揺動操作力を受ける第2の当接部を有しており、これら第1および第2の当接部が前記操作部材の揺動支点から略等しい高さ位置に設定されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1スライダと前記第2スライダはそれぞれ前記開口を包囲するように連続する枠状部を有しており、この枠状部の長辺側と短辺側を厚み方向に段違いに形成すると共に、前記第1および第2の当接部を前記枠状部の長辺側の内壁面に設定したことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記第1スライダと前記第2スライダとが互いに天地を逆にした同一形状の樹脂成型品からなり、これら樹脂成型品に前記枠状部の長辺側から外側へ突出する腕部を形成し、この腕部によって前記第1および第2の検出手段が動作されるようにしたことを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−265671(P2007−265671A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86097(P2006−86097)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】