説明

多材質射出成形機および多材質射出成形機の制御方法

【課題】回動型をサーボモータにより移動可能な多材質射出成形機を提供する。
【解決手段】本発明の多材質射出成形機は、固定型10、可動型9、及び、固定型10と可動型9との間で回動する回動型11からなる金型を用いて多材質成形品を成形する射出成形機であって、前記固定型10に当接して溶融材料を射出する第1射出装置2と、前記可動型9に当接して溶融材料を射出する第2射出装置30と、サーボモータおよびボールネジによる回動型11の移動手段13と、前記回動型11を介して前記固定型10と前記可動型9を圧締する圧締手段4とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型、可動型、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型からなる金型を用いて多材質成形品を成形する射出成形機およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の技術分野における特許文献としては特許文献1がある。特許文献1は、ベッドに固設した支持体に水平軸又は鉛直軸を中心として回転自在に軸支され、かつ両側面に金型を保持する回転盤と、同回転盤の両側に対向して配設され、型開閉シリンダによって前記回転盤の金型に対して進退し、かつ前記回転盤に対向する面に一次金型又は二次金型を有する可動盤と、同可動盤の1つに固定され先端にねじ又は平行溝を有する複数のタイバーと、同タイバーのねじ又は平行溝と噛合できる割りナットと、同割りナットを開閉する開閉装置と、前記1つの可動盤に対向する他の可動盤に設けられた型締シリンダと、前記一次金型及び二次金型に対応する射出装置よりなり、前記タイバーは前記支持体に設けた孔を摺動自在に貫通し、更に型閉じ時には前記型締シリンダのラムの軸心部に設けた孔も貫通して外側に突出し、前記割りナットと噛合できるように構成した。
【0003】
しかしながら、特許文献1の射出成形機は、回転盤は移動せずその両側の可動盤が射出装置とともに移動する構成であり、極めて複雑であって、汎用の射出成形機とは全く異なるものである。したがって、一材質の成形品用の汎用射出成形機を改造して多材質射出成形機とすることは不可能であった。
【0004】
また、可動盤は、回転盤に対してベッドを介して接近・離隔移動し、可動盤と回転盤とはベッドを介して間接的に支持されるので、可動盤と回転盤との間の平行度は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−254906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、回動型をサーボモータにより移動可能な多材質射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固定型、可動型、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型からなる金型を用いて多材質成形品を成形する射出成形機であって、
前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、サーボモータおよびボールネジによる回動型の移動手段と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧締する圧締手段とからなることを特徴とする多材質射出成形機に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多材質射出成形機によれば、前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、サーボモータおよびボールネジによる回動型の移動手段と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧締する圧締手段を備えるので、サーボモータにより回動型を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の多材質射出成形機の正面図である。
【図2】図2は、本発明の多材質射出成形機の平面図である。
【図3】図3は、図1におけるA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の多材質射出成形機の正面図である。図2は、本発明の多材質射出成形機の平面図である。図3は、図1におけるA−A矢視断面図である。
【0011】
本発明の多材質射出成形機は、可動盤7、タイバ5、固定盤8、エジェクタ手段26、型開閉手段31、圧締手段4、係合手段6、可動型9、固定型10、回動型11及び回動型支持装置3からなる型締装置1と、固定型10に当接する第1射出装置2と、可動型9に当接する第2射出装置30とから構成される。
【0012】
可動盤7は、可動型9を取付け、回動型支持装置3に取付けられた回動型11に対して、型開閉手段31により、接近離隔移動する。固定盤8は、固定型10と回動型支持装置3を取付け、回動型11を固定型10に対して、移動手段13により、接近離隔移動させる。移動手段13は、シリンダ27とシリンダ27に往復動自在に嵌挿されたピストン29とからなる。なお移動手段13は、サーボモータやボールネジ等から構成されたものでもよい。
【0013】
型開閉手段31と移動手段13により、可動型9及び回動型11並びに回動型11及び固定型10が当接して型合わせされたとき、係合手段6はタイバ5と固定盤8とを係合させる。そして、四の圧締手段4により回動型11を介して可動型9と固定型10を圧締する。圧締手段4は、タイバ5を牽引する油圧シリンダ装置であり、四の圧締装置4をそれぞれ個別のサーボ弁で制御することにより、可動型9を回動型11に対して移動速度と圧締力を平行に制御することができる。なお、圧締手段4は、可動盤7に設けられているが、固定盤に設けるように構成することもできる。また、係合手段6は、固定盤8に設けられているが、可動盤に設けるように構成することもできる。
【0014】
回動型支持装置3は、固定盤8の上端面に固着した上ホルダ14と、上ホルダ14に固着した移動手段13と、移動手段13の進退するロッド28に固着した上移動部材16と、上移動部材16を上ホルダ14の内側面で案内させるリニアガイド32と、上移動部材16の下面中央部で回動自在に軸支される上軸20と、上軸20の下面に固着した上盤18と、固定盤8の下端面に固着した下ホルダ15と、下ホルダ15に固着した移動手段13と、移動手段13の進退するロッド28に固着した下移動部材17と、下移動部材17を下ホルダ15の上面で案内させるリニアガイド33と、下移動部材17の上面中央部で回動自在に軸支される下軸21と、下軸21の上面に固着した下盤19と、下軸21を回動させる回動手段12とからなる。回動手段12は、下軸21の下端部に固着したピニオン23と、ピニオン23に歯合するラック24と、ラック24を往復駆動し下移動部材17の側面に固着したシリンダ手段25とからなる。なお、回動手段12は、シリンダ手段25とラック24に代えて、ピニオン23を電気又は油圧のモータで回動又は回転させるようにしてもよい。
【0015】
上盤18及び下盤19は、回動型11が容易に進入可能な距離を隔てて対向しており、型合わせ時における型開閉方向の一方の端部はL字状に対向面側に屈曲している。該L字状部は、回動型11を上盤18及び下盤19の間へストッパ34に当接するまで挿入する際の案内ともなる。そして、上盤18及び下盤19の他方の端部には回動型11を上盤18及び下盤19に着脱させるクランプ手段22が設けられている。クランプ手段22は、回動型11の上下端部を前記L字状部に押圧させる爪と、爪の支点を上盤18及び下盤19の端面に軸支するピンと、爪の他端に揺動自在に取付けられ上盤18及び下盤19の上下面に固着されたシリンダ手段とからなる。上盤18及び下盤19に固着された回動型11は、シリンダ手段25により進退するラック24に歯合するピニオン23の回動に伴い、180度の回動を繰り返すことができる。
【0016】
次に、本発明の多材質射出成形機による射出成形について説明する。第1射出装置2及び第2射出装置30は、それぞれ、互いに異なる色又は材質の材料が可塑化されて溶融材料として射出に備えて貯留されている。
【0017】
圧締手段4により圧締された固定型10と回動型11とで形成される第1キャビティへ第1射出装置2から溶融材料が射出されるとともに、圧締手段4により圧締された可動型9と回動型11とで形成される第2キャビティへ第2射出装置30から溶融材料が射出される。両キャビティへ射出充填された溶融材料が冷却又は加熱されて固化又は硬化した後、係合手段6のタイバ5との係合を解除し、型開閉手段31で可動型9を回動型11から離隔させるとともに、移動手段13によって回動型11を固定型10から離隔させる。第1キャビティで成形された成形品はキャビティから離型されて取出される。
【0018】
回動型11を180度回動させる。このとき第2キャビティで成形された中間成形品は、回動型11に付着したまま第1キャビティへ持ち込まれる。そして、回動型11を介して固定型10と可動型9を再度圧締し、射出する。このとき、第1キャビティでは、中間成形品に重ねて第1射出装置2の溶融材料が射出されて最終製品である成形品が成形される。なお、中間成形品を第1キャビティで成形し、成形品を第2キャビティで成形することも可能である。
【0019】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。例えば、本実施の形態では、回動型支持装置の回動する軸は垂直である場合について説明したが、回動型支持装置の回動する軸を水平になるように設けてもよい。そのようにすれば、金型の上方が開放され、金型の着脱が容易となる。
【符号の説明】
【0020】
1 型締装置
2 第1射出装置
3 回動型支持装置
4 圧締手段
5 タイバ
6 係合手段
7 可動盤
8 固定盤
9 可動型
10 固定型
11 回動型
12 回動手段
13 移動手段
14 上ホルダ
15 下ホルダ
16 上移動部材
17 下移動部材
18 上盤
19 下盤
20 上軸
21 下軸
22 クランプ手段
23 ピニオン
24 ラック
25 シリンダ手段
26 エジェクタ装置
27 シリンダ
28 ロッド
29 ピストン
30 第2射出装置
31 型開閉手段
32,33 リニアガイド
34 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型、可動型、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型からなる金型を用いて多材質成形品を成形する射出成形機であって、
前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、サーボモータおよびボールネジによる回動型の移動手段と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧締する圧締手段とからなることを特徴とする多材質射出成形機。
【請求項2】
前記移動手段は、回動型を固定型に対して接近離隔移動させることを特徴とする請求項1に記載の多材質射出成形機。
【請求項3】
前記圧締手段は、移動速度と圧締力を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多材質射出成形機。
【請求項4】
固定型、可動型、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型からなる金型を用いて多材質成形品を成形する射出成形機の制御方法であって、
前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、サーボモータおよびボールネジによる回動型の移動手段と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧締する圧締手段とが設けられ、サーボモータにより回動型を固定金型から離隔させることを特徴とする多材質射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149106(P2009−149106A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89023(P2009−89023)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願2004−364563(P2004−364563)の分割
【原出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】