説明

多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法

【課題】 多種廃棄物燃料を、安定した流動性のもと流動層内の温度を従来よりも低くして、流動層内にて発生し後流に飛散するチャー、および特に比重の小さい燃料を完全燃焼させて、高い燃焼効率を実現させる。
【解決手段】 流動層内の空気比を0.2〜0.6の範囲に設定すると共に、排ガス再循環を行い総空気流量に対する排ガス再循環流量の比率を50〜80%の範囲に設定し、流動層温度を600〜800℃に制御し、さらに空気比0.3〜0.4の範囲に設定した2次空気を、炉壁垂直方向に対し30〜60°の角度にてフリーボードより供給し、空気比0.4〜0.9の範囲に設定した3次空気を、2次空気と同様の角度にて2次空気よりも後流のフリーボードより供給することで、流動層内にて発生し後流に飛散するチャーおよび特に比重の小さい燃料を、還元雰囲気にてガス化し、酸化雰囲気にて完全燃焼させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多岐にわたる廃棄物燃料を流動層にて燃焼させる際の燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を燃焼させる燃焼装置として、流動層ボイラが多く作られ、燃料である廃棄物を流動層内で1.0前後の空気比にて、層温度800〜900℃で燃焼させてきた。
【0003】
ところで、多岐にわたる廃棄物燃料を燃焼すると、800℃未満で燃焼灰が溶融し、流動媒体が凝集(アグロメレーション)し、流動不良が発生し、運転が困難になることがあった。そこで層温度を低下させる目的で、流動層内の空気比を0.5以下として運転を行った場合、流動層内に燃料の燃え残りであるチャーが多く発生し、フリーボードに飛散したチャーは滞留時間が短いために十分な燃焼に至らず、ボイラ出口での燃え残りが多く、燃焼効率が低下することがあった。また、軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等比重の小さい廃棄物燃料は、流動層燃焼におけるガス流速からの浮力を受け、流動層内に落下せずそのほとんどが飛散しフリーボードにて燃焼するため、炉内に僅かな時間しか停留せず、燃え残りが多くなり、フリーボード部での酸化燃焼のためにNOxが多く発生することがあった。そのため、流動層ボイラの燃料には適さなかった。
【特許文献1】特開昭54−16731号公報
【特許文献2】特開平6−323510号公報
【特許文献3】特開平2001−296001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、多岐にわたる廃棄物燃料を流動層内の空気比を低く設定して流動層燃焼するにおいて、安定した流動性のもと流動層内の温度を従来よりも低くして、流動層内にて発生し後流に飛散するチャーを、完全燃焼させて高い燃焼効率を実現させ、また、これまで燃料として不向きであった比重の小さい廃棄物燃料を燃焼炉出口に至るまでに完全燃焼させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の1つは、形状、比重、発熱量等の異なる廃棄物燃料を、単一の燃焼炉で且つ同時に流動層燃焼するにおいて、流動層内の空気比を0.2〜0.6の範囲に設定すると共に、排ガス再循環を行い総空気流量に対する排ガス再循環流量の比率を50〜80%の範囲に設定し、流動層の流動性を確保した上で、流動層温度を600〜900℃に制御し、流動層出口からフリーボードにかけての領域を還元雰囲気として廃棄物燃料をガス化させることを特徴とするものである。
【0006】
上記の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法において、流動層内の空気比を0.2〜0.6の範囲に設定する理由は、流動層内に燃料の未燃分が蓄積しない限界である、流動層内の空気比0.2を下限とし、流動層温度を800℃以下にするための限界である、空気比0.6を上限として運転するためである。また、総空気流量に対する排ガス再循環流量の比率を50〜80%の範囲に設定する理由は、流動層内の空気流量が最も少ない状態である流動層内の空気比0.2の時、流動層の空塔速度と流動化開始速度の比を、安定した流動性が得られる2以上を確保できる50%を下限値とし、流動層温度が最も高くなる流動層内の空気比0.6の時、層温度800℃以下を確保できる80%を上限値とし運転するためである。さらに、流動層温度を600〜800℃に制御する理由は、多岐にわたる廃棄物燃料の燃焼可能な下限温度が600℃であり、高アルカリ成分を含む燃料を燃焼させた灰の融点の多くが800℃であり、流動媒体の凝集(アグロメレーション)を回避するためである。さらにまた、流動層出口からフリーボードにかけての領域を還元雰囲気とする理由は、廃棄物燃料をガス化させることにより流動層内に発生するチャーをできるだけ低減させるためであり、流動層出口のガス量を増大させ流動層からの持去り熱量を上げ、層温度を低下させるためである。
【0007】
本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の他の1つは、前記の流動層燃焼方法において、空気比0.3〜0.4の範囲に設定した2次空気を、炉壁垂直方向に対し30〜60°の角度にてフリーボードより供給して炉内を還元雰囲気の旋回流とし、長い滞留時間の中でチャーをガス化させ、さらに空気比0.4〜0.9の範囲に設定した3次空気を、2次空気と同様の角度にて2次空気よりも後流のフリーボードより供給して炉内を酸化雰囲気の強化された旋回流として、流動層内にて発生し後流に飛散する燃料未燃分であるチャーを、炉出口に至るまでに完全燃焼させることを特徴とするものである。
【0008】
この流動層燃焼方法において、2次空気および3次空気を炉壁垂直方向に対し30〜60°の角度にて炉内に供給する理由は、炉内を旋回流とするためである。また、2次空気の空気比を0.3〜0.4の範囲に設定する理由は、3次空気供給までの領域を、還元雰囲気に維持しつづけるためであり、かつ急激な温度上昇を抑制するためである。さらに、3次空気の空気比を0.4〜0.9の範囲に設定する理由は、炉内に供給した空気比の合計を1.0〜1.4にし、炉出口に至るまでに完全燃焼させるためである。
【0009】
本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法のさらに他の1つは、前記の流動層燃焼方法により、通常の層内燃焼が可能な比重の大きな燃料に加え、軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等、特に比重の小さい廃棄物燃料を通常の炉容積のまま炉出口に至るまでに完全燃焼させ、かつ排ガス中NOxの発生を抑制することを特徴とするものである。
【0010】
この流動層燃焼方法においては、通常の層内燃焼が可能な比重の大きな燃料に加え、特に比重の小さい廃棄物燃料を燃焼すると、比重の小さい燃料は、長い滞留時間のもと、流動層出口から2次空気供給までのフリーボードにかけての還元雰囲気にてガス化し、3次空気供給から炉出口にかけての酸化雰囲気にて完全燃焼するため、ボイラ燃料として用いることができる。さらに、フリーボードでの急激な温度上昇を防ぐことができるため、NOxの発生量が少なく、低公害のボイラを実現できる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明でわかるように本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の1つは、形状、比重、発熱量等の異なる廃棄物燃料を、単一の燃焼炉で且つ同時に流動層燃焼するにおいて、流動層内の空気比を、流動層内に燃料の未燃分が蓄積しない限界である空気比0.2を下限とし、流動層温度を800℃以下にするための限界である、空気比0.6を上限として設定すると共に、排ガス再循環を行って総空気量に対する排ガス再循環流量の比率を、流動層内の空気流量が最も少ない状態である流動層内の空気比が0.2の時、流動層の空塔速度と流動化開始速度の比を、安定した流動性が得られる2以上を確保できる50%を下限値とし、流動層温度が最も高くなる流動層内の空気比0.6の時、層温度800℃以下を確保できる80%を上限値として設定して運転することで、流動層内の流動性を十分に確保しながら、流動層温度を600〜800℃に制御するので、流動媒体が凝集(アグロメレーション)せず、流動層出口からフリーボードまでの領域を還元雰囲気にし、円滑且つ安定した運転が実現する。
【0012】
本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の他の1つは、前記の流動層燃焼方法において、空気比0.3〜0.4に設定した2次空気を、炉壁垂直方向に対し30〜60°の角度にてフリーボードより供給して炉内を還元雰囲気の旋回流とし、長い滞留時間の中でチャーをガス化させ、さらに、空気比0.4〜0.9に設定した3次空気を、2次空気と同様の角度にて2次空気よりも後流のフリーボードより供給して炉内を酸化雰囲気の強化させた旋回流として、流動層内にて発生し後流に飛散する燃料未燃分であるチャーを、炉出口に至るまでに完全燃焼させるので、燃焼効率の高い運転が実現する。
【0013】
本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法のさらに他の1つは、前記の流動層燃焼方法により、通常の層内燃焼が可能な比重の大きな燃料に加え、軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等、特に比重の小さい廃棄物燃料を燃焼することにより、飛散した比重の小さい燃料は長い滞留時間のもと、流動層出口から2次空気供給までのフリーボードにかけての還元雰囲気にてガス化し、3次空気供給から炉出口にかけての酸化雰囲気にて完全燃焼させることができる。従って、従来、流動層の燃料には適さなかった比重の小さい廃棄物燃料も有用な燃料として燃焼することができ、かつフリーボードにおける還元雰囲気にてNOx発生が抑制できるので、低公害のボイラを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
形状、比重、発熱量等の異なる廃棄物燃料を、単一の燃焼炉で且つ同時に流動層燃焼するにおいて、流動層内の空気比を0.2〜0.6、好適には0.3〜0.5の範囲に設定すると共に、排ガス再循環を行い、総空気流量に対する排ガス再循環流量の比率を50〜80%、好適には30〜60%の範囲に設定して運転し、フリーボード部に設けた2次空気供給口と、さらに後流の3次空気供給口を、炉壁垂直方向に対し30〜60°、好適には45°の角度に設定することにより、流動層内の流動性を十分に確保できて、流動媒体の凝集(アグロメレーション)は発生せず、炉出口までに長い滞留時間を確保でき、かつ流動層出口から3次空気供給までの還元雰囲気にてチャーおよび比重の小さい燃料をガス化させ、さらに3次空気供給から炉出口までの酸化雰囲気にて完全燃焼することにより、高い燃焼効率を得ることができた。
【実施例1】
【0015】
本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の実施例について説明する。その前にその流動層燃焼方法を実施するための流動層燃焼装置を図1の系統図によって説明すると、1は燃焼炉、2はこの燃焼炉1の流動層、3はその上部のフリーボードで、4は流動層2の風箱、5は燃焼炉1への燃料供給機である。フリーボード3からの排ガスライン6は途中にサイクロン7、集塵器8、誘引排風機9が順次設けられて、排ガス放散煙突10にて接続されている。11は風箱4への1次空気送風機、12はフリーボード3への2次および3次空気送風機で、フリーボード3に設けた2次空気供給口13と3次空気供給口14に送風している。15は排ガスライン6の集塵器8の後流から風箱4にかけて設けられた排ガス再循環ラインで、この排ガス再循環ライン15に排ガス送風機16が設けられている。
【0016】
次に上記のように構成された流動層燃焼装置を用いる多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の1つについて説明する。図1に示す燃焼炉1内の流動層2に燃料供給機5により形状、比重、発熱量等の異なる廃棄物燃料の混合物を供給し、流動層燃焼するにおいて、流動層2内の空気比(層内空気比)を燃焼完結性の限界である空気比0.2を下限として運転する。即ち、層内空気比が小さい程、流動層2内に供給される酸素量が少なく、燃焼反応する燃料の割合が低くなり、燃料はガス化およびチャーになるが、層内空気比を下げ過ぎると、チャーが流動層2内に多く蓄積する。そのため、層内空気比の下限を上記原因が発生しない0.2で運転する。しかし、層内空気比0.2で運転すると、流動層2内に供給する空気量が少ないため、流動層2内の空塔速度(U)と流動化開始速度(Umf)の比U/Umfは流動安定化に最低限必要な2を下回ってしまう。そこで排ガス再循環ライン15を通して排ガス送風機16により風箱4に排ガスを押し込んで再循環を行い、O2濃度が2〜6%と空気に比べ不活性な排ガスを流動層2内に投入することにより、流動層2内に供給する酸素量はそのままにガス量のみ上げることで、流動層2内の空塔速度(U)を増加させて空塔速度(U)と流動化開始速度(Umf)の比U/Umfを2以上に確保する。ここで、総空気量に対する排ガス再循環流量の比率(GR比率)は、空気比が0.2の時、U/Umfの下限2をもたらす50%を下限値とし、この範囲内に設定される。
【0017】
上記の多種廃棄物燃料混合物の流動層燃焼において、流動層2内の空気比(層内空気比)を0.2から増加させていくと、流動層2の温度は増加する。従って、流動層温度の上限800℃となる流動層2内の空気比が0.6、排ガス再循環流量の比率(GR比率)が80%であり、この値が層内空気比およびGR比率の上限となる。
【0018】
上記の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法における流動層2内の空気比(層内空気比)ごとのGR比率と流動層温度、U/Umfの運転範囲は、下記の表1に示す通りである。
【0019】
【表1】

【0020】
上記のようにして多種廃棄物燃料混合物を流動層燃焼することにより、流動媒体の凝集(アグロメレーション)が発生せず、安定した流動性のもと、流動層出口からフリーボードに至るまでの領域を還元雰囲気とした運転ができる。
【実施例2】
【0021】
多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法の他の1つについて説明する。図1に示す燃焼炉1内の流動層2に燃料供給機5により多種の廃棄物燃料の混合物を供給し、前述の流動層燃焼するにおいて、フリーボード3の炉壁垂直方向に対し図2に示すように45°の角度にて2次空気供給口13を、さらに後流に図3に示すように同角度にて3次空気供給口14を設け、炉内のガス流れを旋回流とし、滞留時間を長くすることで、流動層2内にて発生したチャーを、還元雰囲気17である流動層出口から3次空気供給までの領域にてガス化し、酸化雰囲気18である3次空気供給口14から炉出口までの領域にて完全燃焼させる。
【実施例3】
【0022】
多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法のさらに他の1つについて説明する。図1に示す燃焼炉1内の流動層2に燃料供給機5により軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等、特に比重の小さい廃棄物燃料の混合物を供給し、流動層燃焼するにおいて、前述の運転を行うことにより、これまでボイラ燃料として不向きであった比重の小さい軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等の廃棄物燃料混合物は、フリーボード3から燃焼炉出口に至るまでに、即ち排ガスライン6に入るまでに完全燃焼させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
あらゆる産業廃棄物の流動層燃焼に利用でき、自治体における地域発電の実用化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法を実施するための流動層燃焼装置の系統図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図1のB−B線矢視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 燃焼炉
2 流動層
3 フリーボード
4 風箱
5 燃料供給機
6 排ガスライン
7 サイクロン
8 集塵器
9 誘引排風機
10 排ガス放散煙突
11 1次空気送風機
12 2次および3次空気送風機
13 2次空気供給口
14 3次空気供給口
15 排ガス再循環ライン
16 排ガス送風機
17 還元雰囲気
18 酸化雰囲気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状、比重、発熱量等の異なる廃棄物燃料を、単一の燃焼炉で且つ同時に流動層燃焼するにおいて、流動層内の空気比を0.2〜0.6の範囲に設定すると共に、排ガス再循環を行い総空気量に対する排ガス再循環流量の比率を50〜80%の範囲に設定し、流動層の流動性を確保した上で、流動層温度を600〜900℃に制御し、流動層出口からフリーボードにかけての領域を還元雰囲気として廃棄物燃料をガス化させることを特徴とする多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法。
【請求項2】
請求項1記載の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法において、空気比を0.3〜0.4の範囲に設定した2次空気を、炉壁垂直方向に対し30〜60°の角度にてフリーボードより供給して炉内を還元雰囲気の旋回流とし、長い滞留時間の中でチャーをガス化させ、さらに空気比0.4〜0.9の範囲に設定した3次空気を、2次空気と同様の角度にて2次空気よりも後流のフリーボードより供給して炉内を酸化雰囲気の強化された旋回流として、流動層内にて発生し後流に飛散する燃料未燃分であるチャーを、炉出口に至るまでに完全燃焼させることを特徴とする多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法により、通常の層内燃焼が可能な比重の大きな燃料に加え、軟質のフラフ状廃プラスチック、古紙等、特に比重の小さい廃棄物燃料を、通常の炉容積採用のまま、炉出口に至るまでに完全燃焼させ、かつ排ガス中NOxの発生を抑制することを特徴とする多種廃棄物燃料焚き流動層燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−170565(P2006−170565A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366189(P2004−366189)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】