説明

多芯プラスチック光ファイバ素線、ライトガイド、それを用いた光源装置、及びライトガイドの製造方法

【課題】単芯プラスチック光ファイバ素線の束を、傷つけることなく、容易に取り出して分岐させることができる多芯プラスチック光ファイバ素線、ライトガイド、及びそれを用いた光源装置を提供すること。
【解決手段】透明樹脂からなる芯繊維(122)と、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層(124)と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線(12)を6本以上10000本以下と、前記エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を溶解しない特定溶媒に対して溶解する樹脂からなり、前記単芯プラスチック光ファイバ素線(12)の束を束ねる海部(14)と、を含む多芯プラスチック光ファイバ素線(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯プラスチック光ファイバ素線、ライトガイド、それを用いた光源装置、及びライトガイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバは、透明樹脂からなる芯繊維の周囲を、該透明樹脂より低屈折率の樹脂からなる鞘層で囲んだ構造を有し、芯と鞘層の境界で光を反射させることにより芯内で光信号を伝送する媒体である。プラスチック光ファイバは石英ガラス光ファイバに比較して柔軟性に優れており、接続時の芯あわせが容易な直径の大きいものを利用できる。
【0003】
単芯プラスチック光ファイバは、伝送する光量を大きくするために芯繊維の直径を大きくすると、曲げによる光損失の発生が大きくなる。これに対して、多芯プラスチック光ファイバは、個々の芯繊維の直径を小さくして上記光損失の発生を抑制した上で、個々の芯繊維にて伝送された光をあわせることで合計光量を大きくすることができるという利点を有する。このため、近年、多芯プラスチック光ファイバは種々の用途で採用されるようになってきた。
【0004】
しかし、芯繊維を鞘層で囲んでなる多芯プラスチック光ファイバ裸線をそのままで使用することは少ない。物理的又は化学的な損傷を防止する観点から、鞘層の外側に保護層又は海部を有する多芯プラスチック光ファイバ素線として使用されることが多い。この光ファイバ裸線及び光ファイバ素線は、通常、複合紡糸法によって一体成形できる。
【0005】
また、物理的又は化学的な損傷からより確実に保護するために、多芯プラスチック光ファイバ裸線又は多芯プラスチック光ファイバ素線の外側に熱可塑性樹脂からなる被覆樹脂層を被覆形成することにより、プラスチック光ファイバケーブルとして使用されることも多い。
【0006】
例えば、高開口数で、耐熱性に優れた多芯プラスチック光ファイバとしては、芯繊維がポリメチルメタクリレート系樹脂からなり、鞘層がビニリデンフロライドとヘキサフロロプロペンとテトラフロロエチレンの共重合体からなるプラスチック光ファイバ素線が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、多芯プラスチック光ファイバ素線の用途として、内視鏡及び光センサとして医療分野や、監視カメラ及び光センサとして計測分野で使用されるイメージ光ファイバや、その先端部に超小型カメラを取り付けたケーブルや、センシング用光ファイバ等の線状物の先端部の先方を照明するためのライトガイドが知られている。このようなライトガイドの応用例としては、赤、緑、青のLEDと3本の光ファイバからなる内視鏡の光源装置が知られている(特許文献2参照)。
【0008】
ライトガイドを製造する際には、多芯プラスチック光ファイバ端面を縦に分割する光学部品の製造方法が知られているので(特許文献3参照)、赤、緑、青のLED(発光ダイオード)素子を、縦に3分割された多芯プラスチック光ファイバに接続する方法が考えられる。また、赤、緑、青のLEDが所定の配列で形成されたLED素子アレイを、単芯プラスチック光ファイバ素線の束に接続させる方法等により、ライトガイドを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−237513号公報
【特許文献2】特開平5−146403号公報
【特許文献3】特開平9−269426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、多芯ファイバを縦に分割すると、分割によって切断され用をなさなくなる芯線が発生する。また、LED素子アレイを単芯プラスチック光ファイバの束に接続するのは煩雑である。多芯プラスチック光ファイバは、多数の単芯プラスチック光ファイバを海部によって束ねている構造のため、その海部の一部を剥がして単芯プラスチック光ファイバの束を取り出す必要がある。しかし、従来では、多芯プラスチック光ファイバの海部を剥がすことが困難であった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、単芯プラスチック光ファイバ素線の束を、傷つけることなく、容易に取り出して分岐させることができる多芯プラスチック光ファイバ素線、ライトガイド及びそれを用いた光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、透明樹脂からなる芯繊維と、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本以上10000本以下と、前記共重合体を溶解しない特定溶媒に対し溶解する樹脂からなり、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を束ねる海部とを含む多芯プラスチック光ファイバ素線とすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
透明樹脂からなる芯繊維と、
反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、
を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本以上10000本以下と、
前記共重合体を溶解しない特定溶媒に対し溶解する樹脂からなり、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を束ねる海部と、
を含む多芯プラスチック光ファイバ素線。
〔2〕
前記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体が、カーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体である〔1〕の多芯プラスチック光ファイバ素線。
〔3〕
透明樹脂からなる芯繊維と、
反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、
を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本以上10000本以下と、
前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束の一方の端部を束ねる海部と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイド。
〔4〕
〔1〕又は〔2〕の多芯プラスチック光ファイバ素線の一方の端部の海部を、前記特定溶媒に溶解させて除去することにより、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を露出させる工程と、
前記露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束の一部を切断する工程と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイドの製造方法。
〔5〕
〔1〕又は〔2〕の多芯プラスチック光ファイバ素線の端部以外の海部を、前記特定溶媒に溶解させて除去することにより、多芯プラスチック光ファイバ素線の束を露出させる工程と、
前記露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を切断することにより、2体のライトガイドを得る工程と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイドの製造方法。
〔6〕
〔3〕のライトガイドの前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束、又は〔4〕若しくは〔5〕に記載の製造方法により得られるライトガイドの前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束と、
前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束に接続された発光ダイオード(LED)と、
を備える光源装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の一態様の断面図である。
【図2】本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の別の態様の断面図である。
【図3】本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の更に別の態様の断面図である。
【図4】本実施形態のライトガイドの製造方法の一例を説明するための概念図である。
【図5】本実施形態のライトガイドの製造方法の別の一例を説明するための概念図である。
【図6】本実施形態の光源装置の一態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0016】
<多芯プラスチック光ファイバ素線>
図1は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の一態様の断面図である。多芯プラスチック光ファイバ素線10は、透明樹脂からなる芯繊維122と、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維122を被覆する鞘層124と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線12を7本と、前記単芯プラスチック光ファイバ素線12の束を束ねる海部14と、を含む。
【0017】
多芯プラスチック光ファイバ素線の直径は、特に限定されないが、250〜3000μmが好ましく、500〜1500μmがより好ましい。多芯プラスチック光ファイバ素線の直径が250μm以上であれば、十分な光量を得ることができる。また、多芯プラスチック光ファイバ素線の直径が3000μm以下であれば、曲げに対する柔軟性を維持することができる。
【0018】
多芯プラスチック光ファイバ素線に束ねられる単芯プラスチック光ファイバ素線の数は、6本〜10000本であればよく、18〜1000本であることが好ましい。単芯プラスチック光ファイバ素線の本数が6本以上であれば、曲げた時の光量損失を抑制できる。また、単芯プラスチック光ファイバ素線の本数が10000本以下であれば、鞘層の断面積に対する芯繊維の断面積の割合を高く保つことができるため、通過する光量を大きくすることができる。
【0019】
図2は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の別の一態様の断面図である。図2に示すように、多芯プラスチック光ファイバケーブルの中心に中空部26を設けてもよい。多芯プラスチック光ファイバ素線20は、透明樹脂からなる芯繊維222と、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維222を被覆する鞘層224と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線22を6本と、海部24と、を含み、断面視した略中心に中空部26が形成された構造である。かかる構造とすることで、イメージファイバ等の線状物を中空部26から挿入することができ、多芯プラスチック光ファイバ素線20の長手方向に上記線状物を通すことができる。
【0020】
図3は、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の更に別の一態様の断面図である。図3に示すように、複数層からなる鞘層とすることもできる。多芯プラスチック光ファイバ素線30は、透明樹脂からなる芯繊維322と、前記芯繊維322を被覆する、前記透明樹脂よりも屈折率が低い第一の鞘層324と、前記第一の鞘層324を被覆する、前記透明樹脂よりも屈折率が低い第二の鞘層326と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線32を7本と、海部34と、を含む。鞘層が複数層である場合、2層に限定されず、3層以上であってもよい。
【0021】
ここで、外側の鞘層である第二の鞘層326の屈折率が、内側の鞘層である第一の鞘層324の屈折率より低いことが好ましい。かかる屈折率とすることで、多芯プラスチック光ファイバ素線の曲げによる光損失を低減できる。同様に、鞘層が3層以上である場合、外側の鞘層の屈折率が、内側の鞘層の屈折率よりも低いことが好ましい。
【0022】
図3のように複数層の鞘層により芯繊維を被覆する場合、少なくともいずれかの鞘層が上記の反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含むものであればよい。本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線を用いて後述するライトガイドを製造する際に、海樹脂を溶解除去するために用いる特定溶媒に対して優れた耐性を有するという観点から、少なくとも最外層の鞘層(即ち、海部と接する鞘層)が上記の反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含むことが好ましい。
【0023】
<芯繊維>
芯繊維を構成する透明樹脂(以下、「芯樹脂」ともいう。)としては、プラスチック光ファイバ素線の芯樹脂として公知のものを使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられるが、それらの中でも、透明性の観点から、ポリメチルメタクリレート系樹脂が好ましい。
【0024】
ポリメチルメタクリレート系樹脂としては、メチルメタクリレートの単独重合体、又はメチルメタクリレート成分を50質量%以上含んだ共重合体が好ましい。ポリメチルメタクリレート系樹脂は、メチルメタクリレートと、メチルメタクリレートと共重合可能な成分と、を含む共重合体であってもよい。メチルメタクリレート成分と共重合可能な成分としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類、イソプロピルマレイミドのようなマレイミド類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等が挙げられ、これらの中から1種以上を適宜選択して共重合させることができる。
【0025】
ポリメチルメタクリレート系樹脂の分子量は、メルトフロー(成形しやすさ)の観点から、重量平均分子量として8万〜20万が好ましく、10万〜12万がより好ましい。
【0026】
芯繊維の直径は、特に限定されないが、5〜500μmが好ましく、10〜250μmがより好ましい。芯の直径が5μm以上であれば通過する光量を大きくすることができる。また、芯の直径が500μm以下であれば、曲げによる透過光量の低下を少なくできる。
【0027】
<鞘層>
鞘層を構成する透明樹脂(以下、「鞘樹脂」ともいう。)としては、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む樹脂を使用する。ここで、「反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体」とは、エチレンとテトラフルオロエチレンと共重合可能な単量体との共重合体であって、主鎖あるいは側鎖に反応性官能基を導入して変性させたものをいう。反応性官能基を導入することで、芯繊維及び海部との接着性を向上させることができる。
【0028】
反応性官能基としては、例えば、カーボネート基(カルボニルジオキシ基)、エステル基、ハロホルミル基、カルボキシル基等が挙げられ、それらの中でも、カーボネート基(カルボニルジオキシ基)が好ましい。カーボネート基を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(カーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体)は、その重合時に重合開始剤としてパーオキシカーボネートを用いることで、カーボネート基を容易に導入できることや、幅広い樹脂と優れた接着性を有すること等の利点を有する。
【0029】
カーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体として、市販品を用いることもできる。例えば、ダイキン工業社製の「ネオフロンEFEP RP5000」及び「ネオフロンEFEP RP4020」等が挙げられる。
【0030】
反応性官能基の導入は、公知の方法によって行うことができるが、重合開始剤として共重合体に導入することが好ましい。得られる共重合体100質量部に対して、重合開始剤0.05〜20質量部であることが好ましい。
【0031】
エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体における、エチレン/テトラフルオロエチレンのモル比は、特に限定されないが、成形性と耐薬品性のバランスの観点から、70/30〜30/70であることが好ましい。
【0032】
さらに、テトラフルオロエチレン及びエチレン以外に、これらと共重合可能な他の単量体を共重合させた多元共重合体であってもよい。共重合可能な他の単量体としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のオレフィン等が挙げられる。エチレン/テトラフルオロエチレン/共重合可能な他の単量体のモル比は、特に限定されないが、成形性と耐薬品性のバランスの観点から、(10〜80)/(20〜80)/(0〜40)であることが好ましい。
【0033】
より好ましい反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体としては、テトラフルオロエチレン62〜80モル%、エチレン20〜38モル%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体;テトラフルオロエチレン20〜80モル%、エチレン10〜80モル%、ヘキサフルオロプロピレン0〜30モル%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜10モル%からなる単量体成分から得られるポリマー鎖を有するカルボニルジオキシ基含有共重合体が挙げられる。これらの反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れるために好ましい。
【0034】
上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体の融点は、150〜200℃の範囲にあることが好ましい。融点がかかる温度範囲であることにより、芯樹脂として好ましく用いられるポリメチルメタクリレート系樹脂の熱分解が許容できる300℃以下の温度で紡糸できるため好ましい。融点の測定は、示差走査熱量測定によって行うことができる。例えば、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計「EXSTAR DSC6200」を用いて、サンプルを昇温速度20℃/分で昇温させることで、測定できる。
【0035】
上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体のメルトフローインデックス(230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件)は、5g/10分〜100g/10分の範囲にあることが好ましく、5g/10分〜40g/10分の範囲にあることがより好ましい。メルトフローインデックス値を5g/10分以上とすることで、多芯プラスチック光ファイバ素線の各芯繊維を万遍なく被覆できる。また、メルトフローインデックス値を100g/10分以下とすることで鞘層に高い強度を付与できるため、芯繊維を強固に支持できる。
【0036】
上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体の屈折率は、ナトリウムD線により20℃で測定した屈折率1.37〜1.41の範囲であることが好ましい。芯樹脂と鞘樹脂の屈折率の差が小さいほど、より高周波数の信号を伝搬させることができるが、光ファイバ素線の曲げに対して脆弱となる傾向がある。一方、屈折率の差が大きいほど、光ファイバ素線の曲げに対して強くすることができるが、高周波数の信号を伝搬させ難くなる傾向がある。かかる観点から、鞘樹脂の屈折率を上記範囲とすることが好ましい。
【0037】
上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体の23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)は、60〜80の範囲にあることが好ましい。ショアD硬度を上記範囲とすることで、裸線の表面がべとつかないため取り扱い易い。ショアD硬度60〜80の硬さでも、鞘樹脂である反応性官能基を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体に反応性官能基を導入することで芯繊維との接着性が生じているため、その結果、上記ショア硬度である硬い鞘層であっても、芯繊維から容易に剥離し難く、かつ芯繊維が鞘層から飛び出したりすることを防止できる。
【0038】
本実施形態の効果の範囲内であれば、鞘樹脂は、上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体以外に、他の樹脂や通常用いられる添加剤等を含んでいてもよい。鞘樹脂における上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。かかる含有量とすることにより、本実施形態の効果をより優れたものにできる。
【0039】
鞘層の厚さは、特に限定されないが、1〜15μmが好ましい。厚さが1μm以上であれば、機械強度や耐薬品性に優れる。また、厚さが15μm以下であれば、芯繊維の断面積を広く確保できる。
【0040】
<海部>
海部を構成する樹脂(以下「海樹脂」ともいう。)としては、前記鞘樹脂(反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む樹脂)を溶解しない特定溶媒に対し溶解する樹脂であればよく、その種類は特に限定されない。海樹脂としては、例えば、芯樹脂と鞘樹脂とともに溶融させて複合紡糸することが可能な熱可塑性樹脂等が挙げられる。例えば、芯樹脂がポリメチルメタクリレート系樹脂である場合、複合紡糸温度の上限である250℃以下で複合紡糸できればよいので、得られる多芯光ファイバ素線の機械強度等を考慮して種々の材料から選択できる。
【0041】
海部は、特定溶媒に対し溶解する樹脂からなり、かつ反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体は、前記特定溶媒に対し溶解しないものである。かかる特定溶媒を用いることで海部のみを除去し、単芯プラスチック光ファイバ素線の束を傷つけることなく露出させることができる。鞘樹脂と海樹脂について、このような組み合わせとすることで、より細径の単芯プラスチック光ファイバ素線であっても傷つけることなく容易に露出させることができる。例えば、引っ張ると切れてしまう程度の細径の単芯プラスチック光ファイバ素線であっても、傷つけることなく容易に露出させることができる。単芯プラスチック光ファイバ素線の直径が細径であっても、多芯プラスチック光ファイバ素線に含まれる単芯プラスチック光ファイバ素線を傷つけることなく容易に露出させることができる。
【0042】
ここで、特定溶媒に対し溶解するとは、少なくとも当該溶媒を用いることで当該樹脂を溶媒中に溶解できればよく、具体的には、海樹脂を多芯プラスチック光ファイバ素線から取り除くことができればよく、その溶媒の使用量は限定されない。
【0043】
後述のように、海樹脂を溶解除去してライトガイドを製造するために、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線を使用する場合、前記特定溶媒としてフッ化水素、塩酸、硫酸、硝酸、過酸化水素、水酸化アンモニウム等の無機系薬品、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルアミン、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン、イソオクタン等の有機薬品を用い、海樹脂としてビニリデンフロライド系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0044】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の製造は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、公知の複合紡糸ダイにより紡糸する方法が挙げられる。複合紡糸ダイ出口のストランドを、機械的強度を付与するため、通常、110〜150℃程度の温度で1.3〜5倍に延伸させる。その後、歪みをとるため同様の温度で熱処理して、多芯プラスチック光ファイバ素線とする。
【0045】
この多芯プラスチック光ファイバ素線を、クロスヘッドダイにより熱溶融させた熱可塑性樹脂で被覆することによって被覆層を形成してプラスチック光ファイバケーブルとしてもよい。被覆層を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ナイロン、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロペン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、ナイロン樹脂が好ましく、ナイロン12及びナイロン11がより好ましい。
【0046】
<ライトガイド>
また、透明樹脂からなる芯繊維と、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本〜10000本と、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の一方の端部を束ねる海部と、を含むライトガイドとすることもできる。鞘層として、上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を用いることで、芯繊維と海部の接着性に優れるため、海部により単芯プラスチック光ファイバ素線の束をしっかりと固定することができる。
【0047】
本実施形態のライトガイドの構造は、特に限定されず、その形状や目的等を考慮して適宜に選択できる。例えば、ライトガイドにおける単芯プラスチック光ファイバ素線の分岐数や大きさ等は限定されず、使用する光学装置の目的等を考慮して適宜に選択できる。
【0048】
本実施形態のライトガイドにおいて、多芯プラスチック光ファイバ側の直径は、250〜3000μmであることが好ましく、500〜1500μmであることがより好ましい。上記直径とすることで、小径のライトガイドとすることができる。
【0049】
次に、本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線を用いたライトガイドの製造方法について説明する。図4は、本実施形態のライトガイドの製造方法の一例を説明するための概念図である。以下、図4を参照しながら説明する。
【0050】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線40の一方の端部402の海部を、上記の特定溶媒に溶解させて除去することにより、単芯プラスチック光ファイバ素線の束54を露出させる工程を行う(符号(A1),(A2)参照)。これにより、多芯プラスチック光ファイバ素線部52から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線の束54を備えるライトガイド50を得ることができる。
【0051】
ここで用いる多芯プラスチック光ファイバ素線の海部は上記特定溶媒に対し溶解性を示すが、鞘層は上記特定溶媒に対し溶解性を示さないものである。そのため、特定溶媒によって海部のみを溶解除去でき、単芯プラスチック光ファイバ素線の束を傷つけることなく、容易に露出させることができる。
【0052】
さらに、露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束の一部を切断する工程を行う。多芯プラスチック光ファイバの少なくとも一方の端部の海部を溶解除去する場合、露出した単芯プラスチック光ファイバの末端の芯繊維が上記特定溶媒により侵食されてしまうことがある。このような場合、単芯プラスチック光ファイバの当該端部を切断することで、単芯プラスチック光ファイバの端部処理を行うことができる。例えば、図4では、単芯プラスチック光ファイバ素線の束54の末端を矢印Xに沿って切断することで、端部処理を行うことができる。本実施形態のライトガイドの製造方法は、必要に応じてその他の工程も別途行うこともできる。
【0053】
より具体的には、以下の方法によってライトガイドを製造できる。
まず、海樹脂が特定溶媒により溶解除去可能であり、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体が該特定溶媒に溶解しないように、海樹脂と反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を選択した多芯プラスチック光ファイバ素線を複合紡糸法によって紡糸する。
【0054】
次に、多芯プラスチック光ファイバ素線の一部を上記特定溶媒に浸漬することにより、海部を溶解除去する。このとき、芯繊維と鞘層とからなる単芯プラスチック光ファイバが互いに離れ離れになればよいので、海部を完全に溶解除去することは必ずしも必要ではない。
【0055】
図5は、本実施形態のライトガイドの製造方法の別の一例を説明するための概念図である。本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線の端部以外の海部を、上記特定溶媒に溶解させて除去することにより、単芯プラスチック光ファイバ素線の束を露出させる工程と、前記露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を切断することにより、2体のライトガイドを得る工程と、を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイドの製造方法とすることもできる。
【0056】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線60の略中央部602の海部を、上記特定溶媒に溶解させて除去する(符号(B1),(B2)参照)。これにより、多芯プラスチック光ファイバ素線部62,62の間に、単芯プラスチック光ファイバ素線の束64が露出した状態となる。続いて、単芯プラスチック光ファイバ素線の束64の略中央を矢印Yに沿って切断することにより、2体のライトガイド70,70を得ることができる(符号(B3)参照)。この製造方法では、一度に2体のライドガイドを得ることができ、ライトガイドの単芯プラスチック光ファイバ素線の端部処理が不要であるという利点を有する。
【0057】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線は、特定溶媒に対する鞘樹脂と海樹脂の溶解度の差を利用して、海樹脂を除去できる。特に、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む鞘層は、種々の溶媒に対する耐性が高いので、幅広い種類の海樹脂と組み合わせて使用できる。例えば、複数層からなる鞘層を用いる多芯プラスチック光ファイバ素線の場合、全ての鞘層が上記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含むことが好ましいが、少なくとも1つの鞘層が反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含むものであってもよい。この場合、海樹脂と鞘樹脂と(特に最外層の鞘樹脂)の組みあわせを適宜に選択することで、同様の効果を得ることも可能である。
【0058】
上述したライトガイドの製造方法においては、鞘樹脂として、反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体以外の樹脂、例えば、エチレン性フッ素樹脂を使用することも可能である。ここでエチレン性フッ素樹脂とは、全部または一部の水素原子がフッ素原子で置換されたエチレン性モノマー(塩素等のフッ素以外のハロゲン原子を含んでいてもよい。以下、「含フッ素モノマー」ともいう。)の重合体、または該含フッ素モノマーと共重合可能な単量体との共重合体をいい、主鎖あるいは側鎖に反応性官能基、例えばカーボネート基(カルボニルジオキシ基)、エステル基、ハロホルミル基、カルボキシル基などを導入して、変性したものであってもよい。鞘樹脂として該エチレン性フッ素樹脂を使用する場合は、使用可能な海樹脂の種類はより限定されるが、海樹脂としてより耐溶剤性の低いポリメチルメタクリレート系樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0059】
<光源装置>
さらに、本実施形態のライトガイドの単芯プラスチック光ファイバ素線の束と、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の前記束に接続されたLED(発光ダイオード)と、を備える光源装置とすることもできる。
【0060】
図6は、本実施形態の光源装置の概念図である。光源装置80は、多芯プラスチック光ファイバ素線部82から分岐した複数本の単芯プラスチック光ファイバ素線を3組に束ねた単芯プラスチック光ファイバ素線の束84,84,84を有し、該単芯プラスチック光ファイバ素線の束84にはLED86が夫々接続されている。この光源装置80では、3つのLED86,86,86を、赤、緑、青の3色のLEDとすることができる。
【0061】
本実施形態の光源装置では、ライトガイドとLEDとの接続方法や構造については特に限定されず、使用する目的や条件等に応じて適宜選択できる。例えば、赤、緑、青のLEDが所定の配列で形成されたLED素子アレイを、単芯プラスチック光ファイバの束に接続した構造であってもよい。
【0062】
本実施形態の多芯プラスチック光ファイバ素線では、単芯プラスチック光ファイバ素線が細径であっても、これを傷つけることなく、多芯プラスチック光ファイバ素線から容易に取り出して分岐させることができる。そのため、LEDと接続する単芯プラスチック光ファイバ素線を細径にすることができる。その結果、光学装置として小型化が可能となる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
<実施例1>
芯樹脂として、ナトリウムD線により20℃で測定した屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、メルトフローインデックスが230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、1.5g/10分であるものを用いた。
【0065】
鞘樹脂として、屈折率が1.385、メルトフローインデックスが7.5g/10分、融点が195℃のカーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂(ダイキン工業社製、商品名「ネオフロンEFEP RP5000」)を用いた。
【0066】
海樹脂として、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる共重合体であって、230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、メルトフローインデックスが40g/10分、屈折率が1.40の樹脂を用いた。
【0067】
これらの芯樹脂、鞘樹脂及び海樹脂を用いて、複合紡糸により、1本のファイバ中の芯数が37である多芯プラスチック光ファイバ素線(芯繊維の直径136μm、鞘層の厚さ3μm、素線の直径1000μm)を得た。
【0068】
得られた多芯プラスチック光ファイバ素線2mを剃刀で切り取り、650nmのLED光付の光パワーメーター(ハクトロニクス社製、オプティカルパワーメーター「PHOTOM205」)で、光パワーをモニターしながら、中央の50cmをジメチルホルムアミド(DMF)に1時間浸漬した。光パワーは変化しないまま海樹脂は溶解し、DMFに浸漬した多芯プラスチック光ファイバ素線の中央においては、芯繊維と鞘層からなる37本の単芯プラスチック光ファイバがばらばらの状態となった。DMFを除去して乾燥させた後、このばらばらの部分の中央を剃刀で2分し、一端から75cmまでが37芯プラスチック光ファイバ素線であり、他端から25cmまでが37本の単芯プラスチック光ファイバ素線であるライトガイドを2つ得た。
【0069】
得られたライトガイドについて、露出した37本の単芯プラスチック光ファイバ素線を12本、12本、13本の3束に纏めて、それぞれの束に、赤、緑、青のLEDを接続し、図6に示す光源装置とした。赤色LEDに接続した単芯プラスチック光ファイバ素線の束、緑色LEDに接続した単芯プラスチック光ファイバ素線の束、青色LEDに接続した単芯プラスチック光ファイバ素線の束に各光を入射させたところ、37芯プラスチック光ファイバ素線側の端面から12本の赤色光、12本の緑色光、13本の青色光が出力された。
【0070】
<比較例1>
芯樹脂として、実施例1と同一の芯樹脂である、ナトリウムD線により20℃で測定した屈折率が1.492のポリメチルメタクリレート樹脂であって、メルトフローインデックスが230℃、荷重3.8kg、オリフィスの直径2mm、長さ8mmの条件で、1.5g/10分であるものを用いた。
【0071】
鞘樹脂として、屈折率が1.36、メルトフローインデックスが8g/10分のビニリデンフロライド57モル%、テトロフロロエチレン32モル%、ヘキサフロロプロペン11モル%からなる共重合体を用いた。
【0072】
海樹脂として、実施例1と同一の海樹脂である、ビニリデンフロライド80モル%とテトラフロロエチレン20モル%からなる共重合体を用いた。
【0073】
これらの芯樹脂、鞘樹脂及び海樹脂を用いて、実施例1と同様にして、1本のファイバ中の芯数が37である多芯プラスチック光ファイバ素線(芯繊維の直径136μm、鞘層の厚さ3μm、素線の直径1000μm)を得た。
【0074】
得られた多芯プラスチック光ファイバ素線2mを剃刀で切り取り、650nmのLED光付の光パワーメーター(ハクトロニクス社製、オプティカルパワーメーター「PHOTOM205」)で、光パワーをモニターしながら、中央の50cmをジメチルホルムアミド(DMF)に1時間浸漬した。海樹脂が溶解するとともに鞘樹脂及び芯樹脂もダメージを受けていることを目視にて確認した。また、多芯プラスチック光ファイバの一方の端部から光を入れ、他方の端部から取り出した光パワーは、−13.5dBmから−21.2dBmに低下し、光ファイバとして機能していたのは37本中1本だけであった。
【0075】
以上より、本実施形態に係る多芯プラスチック光ファイバ素線は、単芯プラスチック光ファイバ素線を傷つけることなく、容易に取り出して分岐させることができ、ライトガイドとして好適に使用できることが確認された。また、本実施形態に係るライトガイドを用いた光学装置では、伝送損失が少ないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の多芯プラスチック光ファイバ素線は、ライトガイドや装飾,車載用配線、移動体配線、FA機器配線、パーソナルコンピュータ配線の光信号伝送や、光電センサ等に使用できる。また、本発明のライトガイドは、内視鏡や光センサとしての医療分野、あるいは監視カメラや光センサとしての計測分野で使用されるイメージ光ファイバや先端部に超小型カメラを取り付けたケーブル或いはセンシング用光ファイバ等の線状物として好適に使用できる。さらに、本発明の光源装置は、上記装置をはじめとする各種照明や各種センシング光源として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0077】
10,20,30,40,60 多芯プラスチック光ファイバ素線
12,22,32 単芯プラスチック光ファイバ素線
122,222,322 芯繊維
124,224,324,326 鞘層
14,24,34 海部
26 中空部
50,70 ライトガイド
80 光源装置
52,62,82 多芯プラスチック光ファイバ素線部
54,64,84 単芯プラスチック光ファイバ素線の束
86 発光ダイオード(LED)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂からなる芯繊維と、
反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、
を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本以上10000本以下と、
前記共重合体を溶解しない特定溶媒に対し溶解する樹脂からなり、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を束ねる海部と、
を含む多芯プラスチック光ファイバ素線。
【請求項2】
前記反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体が、カーボネート変性エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体である請求項1に記載の多芯プラスチック光ファイバ素線。
【請求項3】
透明樹脂からなる芯繊維と、
反応性官能基末端を有するエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体を含む、前記透明樹脂よりも屈折率が低い樹脂からなり、前記芯繊維を被覆する鞘層と、
を含む単芯プラスチック光ファイバ素線6本以上10000本以下と、
前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束の一方の端部を束ねる海部と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイド。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の多芯プラスチック光ファイバ素線の一方の端部の海部を、前記特定溶媒に溶解させて除去することにより、前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を露出させる工程と、
前記露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束の一部を切断する工程と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイドの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の多芯プラスチック光ファイバ素線の端部以外の海部を、前記特定溶媒に溶解させて除去することにより、多芯プラスチック光ファイバ素線の束を露出させる工程と、
前記露出した前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束を切断することにより、2体のライトガイドを得る工程と、
を含む、多芯プラスチック光ファイバ素線から分岐した複数の単芯プラスチック光ファイバ素線を備えるライトガイドの製造方法。
【請求項6】
請求項3記載のライトガイドの前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束、又は請求項4若しくは5に記載の製造方法により得られるライトガイドの前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束と、
前記単芯プラスチック光ファイバ素線の束に接続された発光ダイオード(LED)と、
を備える光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22504(P2011−22504A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169354(P2009−169354)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】