説明

多軸駆動装置

【課題】1つのモータで複数の出力軸を駆動するにあたり、構成を簡素化した機械式クラッチを採用することにより、軽量化や省スペース化、設計の自由度の向上を図る。
【解決手段】第2のダイヤル(操作部材)35を回転させるとカム(セレクタ部材)41が回転し、カム41の外周部の凹部42に出力軸22の先端のピン24が入り、出力軸22に設けた出力ギヤ(出力部材)21が第2入力ギヤ(入力部材)14に係合し、モータ10の回転が出力軸22に選択的に伝達される。カム41側と第2のダイヤル35側の各回転軸30aをフレーム70に対し非同軸状態で離間させて支持し、第2のダイヤル35の回転操作を回転軸30aに巻回した伝達ベルト(伝達部材)を介してカム41に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用電動シート等に適用されて好適な1つのモータで複数の出力軸を駆動する多軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにあっては、全体の前後方向のスライドや座面高さの上下動、あるいはシートバック(背もたれ)のリクライニング等、複数箇所の位置を調節可能として、乗員の体形や姿勢に適合できるようにした形式のものが多い。これらの可動部位の調節は手動でなされるものであったが、より便利なものとして、モータ駆動により調節する電動シートが提供されている。
【0003】
複数の可動部位をそれぞれ独立して駆動するには、可動部位に連結した各出力軸ごとにモータを1つ1つ連結させる構成が考えられるが、これではモータの数が多くなる。そこで、1つのモータで複数の出力軸を駆動すれば効率的であり、そのために、複数の可動部位に連結した各出力軸に、クラッチを介してモータの動力が伝達されるようにし、クラッチを断接して各可動部位を選択的に駆動するものが知られている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−97528号公報
【特許文献2】特開平6−87363号公報
【特許文献3】特開昭64−30850号公報
【特許文献4】特開平6−156123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献のうち、特許文献1,2に記載された電磁クラッチを用いた駆動装置では、電磁クラッチのコストのために経済性の面で不利である。この点、特許文献3,4に記載される駆動装置は、クラッチが機械式であるためコストの低減には寄与するが、出力軸の選択機構の軽量化と省スペース化に配慮されたものではなかった。
【0006】
よって本発明は、1つのモータで複数の出力軸を駆動するにあたり、構成を簡素化した機械式クラッチを採用することにより軽量化や省スペース化を図ることができるとともに、設計の自由度が高まる多軸駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多軸駆動装置は、モータの回転軸に接続された入力部材と、出力軸を有し、前記入力部材に対して係脱自在に設けられ、係合したときに該入力部材の回転が伝達される複数の出力部材と、この出力部材を前記入力部材側に付勢する付勢部材と、複数の前記出力部材に対向して配設され、手動式の操作部材により回転作動させられるとともに、その回転作動によって前記出力部材を前記入力部材に選択的に係合させるセレクタ部材とを備え、前記セレクタ部材と前記操作部材との間に、操作部材の作動をセレクタ部材に伝達する伝達部材が介在されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成の多軸駆動装置では、操作部材によりセレクタ部材を作動させると、セレクタ部材の作用によって複数の出力部材が選択的に入力部材に係合し、入力部材の回転を出力部材に伝達することができる。本発明では、モータの動力を複数の出力部材に分岐する機構や作動させる出力部材の選択を、セレクタ部材の周りに出力部材を配置したコンパクトな構成で達成しているので、軽量化や省スペース化を図ることができる。
【0009】
また、セレクタ部材から離れた任意の位置に操作部材を配し、伝達部材を介して操作部材の作動をセレクタ部材に伝達する構成とすることにより、セレクタ部材の位置に拘束されない位置に操作部材を配置して操作部材によりセレクタ部材を操作することができる。したがって設計の自由度が高まる。
【0010】
また、本発明では、上記出力部材は傘歯車を備え、上記入力部材は、傘歯車と軸線どうしを交叉させて噛み合う傘歯車を備えている形態を含む。
【0011】
また、入力部材は、1つのギヤによって構成することもできるが、前記出力部材ごとに設けられている形態であってもよく、その場合の入力部材は、モータの回転軸に接続された第1入力ギヤと、この第1入力ギヤの外周側に設けられた複数の第2入力ギヤとを備え、第2入力ギヤは、第1入力ギヤの外周部と噛み合う第1歯車部と、出力部材と係脱自在に噛み合う第2歯車部とを備えた形態とすることができる。このような形態では、第2歯車部に任意の方向から出力部材を係合させることができるので、以下に説明するように設計の自由度が増す。
【0012】
すなわち、出力部材は、第2入力ギヤの軸線を中心とする円に沿って位置が任意に設定可能に設けられていることが望ましく、第2入力ギヤは、第1入力ギヤの軸線を中心とする円に沿って位置が任意に設定可能に設けられていることが望ましい。このような態様では、出力部材が接続される部材の位置などに合わせて出力部材の位置および角度を適宜変更できる。
【0013】
次に、本発明では、上記出力部材には、所定の可動機構が備える可動部位が接続され、上記操作部材には、上記モータを作動させるスイッチがスライド自在に設けられ、該スイッチは、一の方向へスライドさせることでモータを正転させ、逆方向へスライドさせることでモータを逆転させ、スイッチのスライド方向は、可動部位の可動方向に一致している構成を採用することができる。ここで、可動機構としては車両用シートが適用可能であり、その場合には、該車両用シートが有する可動部位の調節機構に、出力部材が接続される。このような態様では、操作感覚と実際の動作が一致するため、使い勝手が良いという利点がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータの動力を複数の出力部材に分岐する機構や作動させる出力部材の選択をコンパクトな構成で達成しているので、軽量化や省スペース化を図ることができるといった効果を奏する。また、セレクタ部材から離れた任意の位置に操作部材を配し、伝達部材を介して操作部材の回転をセレクタ部材に伝達する構成とすることにより、セレクタ部材の位置に拘束されない位置に操作部材を配置して操作部材によりセレクタ部材を操作することができる。したがって設計の自由度が高まるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に近似する第1基本形態に係る多軸駆動装置の図3におけるI−I線一部破砕正面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】第1基本形態の多軸駆動装置の使用例を示す側面図である。
【図5】第2基本形態に係る多軸駆動装置の一部破砕正面図である。
【図6】図5のVI矢視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る多軸駆動装置の一部破砕正面図である。
【図8】図7のXIII−XIII矢視断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る多軸駆動装置の要部を示す斜視図である。
【図10】他の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[1]本発明に近似する第1基本形態:図1〜図4
(1)第1基本形態の構成
はじめに、図1〜図4を参照して本発明に近似する第1基本形態の多軸駆動装置を説明する。この多軸駆動装置は、例えば車両用電動シートの、シート座面の高さを調節する機構、シート背もたれ部の角度を調節するリクライニング機構、およびシートの前後位置を調節する機構の3つの可動機構に対し、正逆回転する1つのモータ10の動力を選択的に分岐させてこれら可動機構を作動させるものとして好適である。
【0017】
モータ10は、図1に示すように、モータ軸(モータの回転軸)11が突出する側の一端部で円板状をなすメインフレーム1に固定されている。モータ軸11の先端には、第1入力ギヤ12が固定されている。モータ10の周囲には、3つの軸受13がモータ10を中心として同心状に配置され、軸受13には、第2入力ギヤ(入力部材)14の軸15が回転自在に支持されている。第2入力ギヤ14は、第1入力ギヤ12と噛み合う平歯車部(第1歯車部)14aと、この平歯車部14aから間隔をあけて配置された傘歯車部(第2歯車部)14bとからなっている。3つの第2入力ギヤ14は、それらの回転中心が二等辺三角形の頂点に位置するように配置されている。
【0018】
メインフレーム1には、矩形板状のサブフレーム2が取り付けられている。サブフレーム2の端部は、半円状に切り取られ、その部分が軸受13の側面に嵌められている。サブフレーム2を軸受13回りに回転させることにより、所望の位置に位置決めして固定することができる。サブフレーム2の一面には、軸受ブロック3が取り付けられ、軸受ブロック3には、出力ギヤ(出力部材)21の出力軸22が回転自在に支持されている。出力ギヤ21は、第2入力ギヤ14の傘歯車部14bと噛み合い可能な傘歯車であり、コイルバネ(付勢部材)23によって先端側(傘歯車部14b側)へ付勢されている。また、出力ギヤ21の先端面の中央には、先端側へ突出するピン24が一体的に形成されている。ピン24の先端は半球状に形成されている。
【0019】
図1および図3において符号30は円板状のダイヤル(操作部材)である。ダイヤル30は、中心にモータ軸11と同軸的に延びる回転軸31を有しており、この回転軸31はフレーム4に回転自在に支持されている。そして、回転軸31の端部には、カム(セレクタ部材)41が固定されている。
【0020】
カム41は円板状をなし、その外周部には略台形状の凹部42が形成されている。図2に示すように、いずれか一つの出力ギヤ21のピン24がコイルバネ23によって先端側へ突出させられて凹部42に嵌り、出力ギヤ21は第2入力ギヤ14の傘歯車部14bと噛み合っている。これにより、モータ10の回転は第1、第2入力ギヤ12,14から出力ギヤ21を介して出力軸22に伝わる。
【0021】
一方、他の2つの出力ギヤ21のピン24は、カム41の外周面(カム面)に当接し、出力ギヤ21は第2入力ギヤ14の傘歯車部14bから離れている。図1〜図3では、二等辺三角形の頂角をなす位置の出力ギヤ21のピン24が凹部42に嵌っている。この状態で、他の2つの出力ギヤ21のピン24とカム41の外周面との接点と、第1入力ギヤ12の中心とを直線で結んだときに、その直線から所定角度θ(この形態では45°)傾斜した箇所に他の2つの凹部42の中心が位置している。
【0022】
したがって、図2に示す状態からカム41を時計方向に45°回転させると、カム41の上側の凹部42に出力ギヤ21のピン24が嵌り、他の2つの出力ギヤ21のピン24は、カム41の外周面に乗り上げる。逆に、図2に示す状態からカム41を反時計方向に45°回転させると、カム41の下側の凹部42に出力ギヤ21のピン24が嵌り、他の2つの出力ギヤ21のピン24は、カム41の外周面に乗り上げる。このように、カム41を45°回転させることにより、いずれか一つの出力ギヤ21を第2入力ギヤ14の傘歯車部14bと噛み合わせることができる。
【0023】
カム41の回転はダイヤル30を回転させることで行い、ピン24が凹部42に嵌ることにより、操作時のクリック感を得ることができるとともに、ダイヤル30を出力ギヤ21の接続位置に確実に位置付けることができるようになっている。
【0024】
上記ダイヤル30の表面には、上記モータ10のON/OFF、およびモータ10の回転方向を選択するための直方体状のスイッチ50が取り付けられている。このスイッチ50は、その長手方向の両側(図3でC−D方向)にスライドし、かつ、図示しない付勢部材によりスライド範囲の中間点で停止するように規制されている。スイッチ50はダイヤル30の中心点を通って延在しており、一端部はダイヤル30よりも外側に出た状態となっている。そしてその突出端が、指示部51として構成されている。
【0025】
図3に示すように、二等辺三角形の頂角をなす位置の出力ギヤ21のピン24が凹部42に嵌っている状態で、スイッチ50は、指示部51がそのピン24の中心線に対して反時計方向に45°傾斜するようにダイヤル30に取り付けられている。
【0026】
このスイッチ50では、長手方向に移動しない停止状態の中立点ではモータ10はOFFとされる。そして、例えばC方向にスライドさせるとモータ10が正転し、D方向にスライドさせるとモータ10が逆転するというように、モータ10が運転される。
【0027】
(2)第1基本形態の適用例および動作
以上が第1基本形態の多軸駆動装置の構成であり、続いて、図4を参照して多軸駆動装置を車両用電動シートに適用した例を説明する。
【0028】
まず、当該多軸駆動装置を、シートクッションの側面であって、該シートクッションに着座する乗員がダイヤル30を操作可能な箇所に、モータ軸11が車体の左右方向に延び、かつ、3つの第2入力ギヤ14のうち二等辺三角形の頂角をなす位置の第2入力ギヤ14が車両の進行方向に位置し、他の第2入力ギヤ14が後方で上下に並ぶ状態に取り付ける。ここで、前側のものを前側第2入力ギヤ14A、下側のものを下側第2入力ギヤ14B、上側のものを上側第2入力ギヤ14Cとする。また、出力ギヤ21については、前側のものを前側出力ギヤ21A、下側のものを下側出力ギヤ21B、上側のものを上側出力ギヤ21Cとする。
【0029】
各出力ギヤ21A〜21Cの出力軸22には、それぞれ図示せぬトルクケーブルが接続される。トルクケーブルは、各出力軸22の回転を、シート背もたれ部の角度を調節するリクライニング機構、シートの前後位置調節機構、シート座面高さ調節機構にそれぞれ伝達して、これら機構を作動させるものである。この場合、トルクケーブルを介して、前側出力ギヤ21Aの出力軸22はリクライニング機構に、下側出力ギヤ21Bの出力軸22はシート座面高さ調節機構に、上側出力ギヤ21Cの出力軸22はシートの前後位置調節機構に、それぞれ接続される。以下、各機構を多軸駆動装置で作動させる方法を説明する。
【0030】
(2−1)シートの前後位置調節機構
前後位置調節機構を作動させてシートの前後位置を調節するには、ダイヤル30を回転させて図4(a)に示すようにスイッチ50の指示部51を前方に向ける。すると、カム41の凹部42が上側第2入力ギヤ14Cに臨む位置まで移動し、凹部42に上側出力ギヤ21Cのピン24が嵌って上側第2入力ギヤ14Cに上側出力ギヤ21Cが噛み合う。一方、前側および下側出力ギヤ21A,21Bにおいては、ピン24がカム41の外周面と接触することにより、前側および下側第2入力ギヤ14A,14Bと離間している。
【0031】
この状態から、スイッチ50を前方(C方向)にスライドさせるとシート全体が前方に移動し、スイッチ50を後方(D方向)にスライドさせるとシート全体が後方に移動するように、モータ10が回転する。スイッチ50を適宜に前後に動かすことにより、シートの前後位置を所望の位置に調節することができる。
【0032】
(2−2)リクライニング機構
リクライニング機構でシートの背もたれ角度を調節するには、ダイヤル30を回転させて図4(b)に示すようにスイッチ50の指示部51を前方、かつ斜め下方45°に向ける。すると、カム41の凹部42が前側第2入力ギヤ14Aに臨む位置まで移動し、凹部42に前側出力ギヤ21Aのピン24が嵌って前側第2入力ギヤ14Aに前側出力ギヤ21Aが噛み合う。一方、下側および上側出力ギヤ21B,21Cにおいては、ピン24がカム41の外周面と接触することにより、下側および上側第2入力ギヤ14B,14Cと離間している。
【0033】
この状態から、スイッチ50を斜め前方(C方向)にスライドさせるとシートの背もたれが前方に傾き、スイッチ50を斜め後方(D方向)にスライドさせると背もたれが後方に傾くように、モータ10が回転する。スイッチ50を適宜に上下させることにより、背もたれを所望角度に調節することができる。
【0034】
(2−3)シートの座面高さ調節機構
座面高さ機構を作動させてシート座面の高さを調節するには、ダイヤル30を回転させて図4(c)に示すようにスイッチ50の指示部51を下方に向ける。すると、カム41の凹部42が下側第2入力ギヤ14Bに臨む位置まで移動し、凹部42に下側出力ギヤ21Bのピン24が嵌って下側第2入力ギヤ14Bに下側出力ギヤ21Bが噛み合う。一方、前側および上側出力ギヤ21A,21Cにおいては、ピン24がカム41の外周面と接触することにより、前側および上側第2入力ギヤ14A,14Cと離間している。
【0035】
この状態から、スイッチ50を下方(C方向)にスライドさせるとシート座面が下がり、スイッチ50を上方(D方向)にスライドさせるとシート座面が上がるように、モータ10が回転する。スイッチ50を適宜に上下に動かすことにより、シート座面を所望の高さに調節することができる。
【0036】
(3)作用効果
上記第1基本形態の多軸駆動装置によれば、モータ10の動力を複数の出力軸22に分岐させる機構は、第2入力ギヤ14に、各出力軸22と一体の出力ギヤ21を噛み合わせる構成である。また、出力軸22の選択は、ダイヤル30を回転させて、接続させたい出力ギヤ21を第2入力ギヤ14側へ移動させることによりなされる。
【0037】
すなわち、モータ10の動力を複数の出力ギヤ21に分岐する機構や作動させる出力ギヤ21の選択を、カム41の周りに出力ギヤ21を配置したコンパクトな構成で達成しているので、軽量化や省スペース化を図ることができる。
【0038】
特に、上記第1基本形態にあっては、カム41を回転させるという1つの動作で出力ギヤ21が第2入力ギヤ14と噛み合うとともに、出力ギヤ21のピン24が凹部42に嵌るときにクリック感が得られるので、操作性および操作感覚に優れている。
【0039】
また、出力ギヤ21は、第2入力ギヤ14の周囲に沿って位置が任意に設定可能であり、第2入力ギヤ14および出力ギヤ21は、第1入力ギヤ12の周囲に沿って位置が任意に設定可能である。これにより、出力軸22が接続される部材の位置などに合わせて出力軸22の位置および角度を適宜変更できる。
【0040】
また、図4に示したように、シートに取り付けた状態でのスイッチ50の位置や操作方向が、調節する可動機構(リクライニング機構、シートの前後位置調節機構、シート座面高さ調節機構)の可動方向に一致しているため、操作感覚と実際の動作が一致して使い勝手が良い。
【0041】
[2]第2基本形態
図5および図6は、第2基本形態を示している。この第2基本形態は、上記第1基本形態の構成において、モータ10の回転軸が第1入力ギヤ12の回転軸に直交する状態に設置されている。
【0042】
モータ10のモータ軸11の先端には、図6に示すように、傘歯車を構成する第3入力ギヤ11aが固定されている。一方、第1入力ギヤ12の中心には入力軸16が固定されており、この入力軸16の先端には、第3入力ギヤ11aと噛み合う傘歯車を構成する第4入力ギヤ16aが固定されている。
【0043】
この第2基本形態では、モータ10が回転すると、モータ軸11の回転が第3入力ギヤ11aから第4入力ギヤ16aに伝わって第1入力ギヤ12が回転し、第1入力ギヤ12と噛み合う第2入力ギヤ14が回転する。そして、ダイヤル30を回転させ、カム41の凹部に出力ギヤ21のピン24が嵌って出力ギヤ21が第2入力ギヤ14に噛み合うと、出力ギヤ21に固定されている出力軸22が回転する。
【0044】
[3]一実施形態
図7および図8は、本発明の一実施形態を示している。この一実施形態は、上記第1基本形態の構成において、ダイヤル30(この一実施形態では第1のダイヤル30と称する)の回転操作を別のダイヤル(第2のダイヤル)35で行って出力ギヤ21の接続の切り替えを行う構成となっている。
【0045】
第1のダイヤル30はフレーム70の一面側(図7で右側)に、回転軸30aを介して回転自在に支持されている。そして第2のダイヤル35は、図8に示すように第1のダイヤル30の周囲の同軸ではない位置において、フレーム70の他面側(図6で左側)に回転軸35aを介して回転自在に支持されている。この第2のダイヤル35には、上記スイッチ50と同様のスイッチ50Aが取り付けられている。フレーム70は、上記第1基本形態のように本装置を可動式の車両用シートに適用する場合には、シートフレーム等のフレームとされる。
【0046】
図8に示すように、第2のダイヤル35の回転軸35aはフレーム70を貫通して一面側に突出しており、この第2のダイヤル35の回転軸35aと第1のダイヤル30の回転軸30aに、伝達ベルト(伝達部材)80が巻回されている。第2のダイヤル35を回転させると、その回転が伝達ベルト80を介して第1のダイヤル30に伝わり、これによって第1のダイヤル30が回転して出力ギヤ21の接続の切り替えが行われる。
【0047】
この一実施形態によれば、第1のダイヤル30から離れた任意の位置に第2のダイヤル35を配して各ダイヤル30,35を伝達ベルト80で連結することにより、カム41による駆動させる出力軸22の選択を、カム41およびダイヤル30の配設位置に拘束されない位置で行うことができる。したがって設計の自由度が高まる。なお、第2のダイヤル35の回転を第2のダイヤル30に伝える手段としては、伝達ベルト80の他に、1つのギヤ、あるいは複数のギヤが噛み合うギヤ列を採用してもよい。
【0048】
]本発明に含まれる他の態様
本発明は前記一実施形態には限定されず、例えば、第2入力ギヤ14と出力ギヤ21のように歯が噛み合う構成の代わりに、摩擦面どうしの接合による構成などを採用することができる。また、操作部材としてはダイヤル30、35に限られず、レバー等、一端部を回動操作する形式のものであってもよい。
【0049】
また、図4に示したシートの可動部位との連動の構成は一例であり、ダイヤル30の回転によって作動させる出力ギヤ21の位置や角度を任意に設定することができる。また、出力軸の数も任意であり、例えばシート座面の高さ調節を、シートクッションの前後2箇所に分けて行う構成とし、これに合わせて出力軸を計4つ具備する構成にも適用可能である。
【0050】
前記一実施形態では、第2入力ギヤ14に出力ギヤ21を噛み合わせる構成としたが、第1入力ギヤ12を傘歯車として構成して第1入力ギヤ12に噛み合わせるように構成することもできる。
【0051】
他の実施形態
以下、さらに本発明に係る他の実施形態を、図9および図10を参照して説明する。この実施形態では、モータ200が作動して回転する図示せぬモータ軸(回転軸)に固定された平歯車である入力ギヤ(入力部材)201の回転が、複数の出力軸(出力部材)210に、各出力軸210ごとに設けられたクラッチ機構220を介して伝達され、カム部材(セレクタ部材)270によって回転させる出力軸210が選択される構成としている。
【0052】
出力軸210は、先端が曲面状に形成された軸部211の途中に歯面を先端側に向けた傘歯車212が一体的、かつ同軸的に形成されたものである。出力軸210は、先端をカム部材270に向けられ、傘歯車212に係合する圧縮ばね(付勢部材)213によりカム部材270の方向に進出して当接するように付勢されている。クラッチ機構220は、上記入力ギヤの周囲に配され、入力ギヤに噛み合って回転するよう設けられた平歯車203と一体に回転する傘歯車221と、この傘歯車221に噛み合うことが可能な出力軸210の傘歯車212によって構成される。
【0053】
この実施形態のカム部材270は円板状で、外周面270aの任意の位置に複数の凹部273が形成されている。図示せぬダイヤル(操作部材)が固定されるダイヤル軸271はカム部材270の回転中心とはオフセットされており、カム部材270とダイヤル軸271とは互いに噛み合う一対の平歯車(伝達部材)272a,272bで接続され、ダイヤルを回転させるとギヤ272a,272bを介してカム部材270が回転するようになっている。
【0054】
出力軸210は、カム部材270の外周面270aに対向して配設されており、軸部211の先端がカム部材270の外周面270aに当接している時には圧縮ばね213の力に抗して退行し、この時にはクラッチ機構220は切断状態となる。
【0055】
そして、上記ダイヤルを適宜に回転させてカム部材270を回転させると、カム部材270の凹部273に出力軸210の軸部211の先端が嵌合し、出力軸210がカム部材270側に進出する。このように軸部211の先端が凹部273に嵌合した出力軸210はクラッチ機構220が接続状態となってモータ200の動力が伝わり、回転する。
【0056】
この実施形態では、ダイヤルを出力軸210の間に配置することができない場合にも出力軸210の作動切り替えを行うことができ、レイアウトの自由度が向上するといった利点がある。また、平歯車272a,272bのギヤ比を変更することにより、クラッチ機構220を断接させるダイヤルの操作角度を調節することができる。
【符号の説明】
【0057】
10,200…モータ
11…モータ軸(モータの回転軸)
12…第1入力ギヤ(平歯車)
14…第2入力ギヤ(入力部材)
14a…平歯車部(第1歯車部)
14b…傘歯車部(第2歯車部)
21…出力ギヤ(出力部材)
22…出力軸
23…コイルバネ(付勢部材)
35…第2のダイヤル(操作部材)
41…カム(セレクタ部材)
50…スイッチ
61…出力ギヤ(出力部材)
80…伝達ベルト(伝達部材)
201…入力ギヤ(入力部材)
210…出力軸(出力部材)
213…圧縮ばね(付勢部材)
270…カム部材(セレクタ部材)
272a,272b…平歯車(伝達部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に接続された入力部材と、
出力軸を有し、前記入力部材に対して係脱自在に設けられ、係合したときに該入力部材の回転が伝達される複数の出力部材と、
この出力部材を前記入力部材側に付勢する付勢部材と、
複数の前記出力部材に対向して配設され、手動式の操作部材により回転作動させられるとともに、その回転作動によって前記出力部材を前記入力部材に選択的に係合させるセレクタ部材と、
を備え
前記セレクタ部材と前記操作部材との間に、操作部材の作動をセレクタ部材に伝達する伝達部材が介在されていること
を特徴とする多軸駆動装置。
【請求項2】
前記出力部材は傘歯車を備え、前記入力部材は、前記傘歯車と軸線どうしを交叉させて噛み合う傘歯車を備えていることを特徴とする請求項に記載の多軸駆動装置。
【請求項3】
前記入力部材は前記出力部材ごとに設けられ、前記モータの前記回転軸に接続された第1入力ギヤと、この第1入力ギヤの外周側に設けられた複数の第2入力ギヤとを備え、前記第2入力ギヤは、前記第1入力ギヤの外周部と噛み合う第1歯車部と、前記出力部材と係脱自在に噛み合う第2歯車部とを備えたことを特徴とする請求項に記載の多軸駆動装置。
【請求項4】
前記出力部材は、前記第2入力ギヤの軸線を中心とする円に沿って位置が任意に設定可能に設けられていることを特徴とする請求項に記載の多軸駆動装置。
【請求項5】
前記第2入力ギヤは、前記第1入力ギヤの軸線を中心とする円に沿って位置が任意に設定可能に設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の多軸駆動装置。
【請求項6】
前記出力部材には、所定の可動機構が備える可動部位が接続され、
前記操作部材には、前記モータを作動させるスイッチがスライド自在に設けられ、該スイッチは、一の方向へスライドさせることで前記モータを正転させ、逆方向へスライドさせることで前記モータを逆転させ、前記スイッチのスライド方向は、前記可動部位の可動方向に一致していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多軸駆動装置。
【請求項7】
前記可動機構が車両用シートであり、該車両用シートが有する可動部位の調節機構に、前記出力部材が接続されていることを特徴とする請求項に記載の多軸駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−102879(P2012−102879A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262336(P2011−262336)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2011−506512(P2011−506512)の分割
【原出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】