説明

多連プッシュスイッチ

【課題】複数のプッシュスイッチを多連に並べて機器に組み付ける際の作業工数の削減や作業性の向上等を図るのに好適な多連プッシュスイッチを提供する。
【解決手段】一つのスイッチケース2に、縦又は横一列に並んで形成された複数のスイッチ本体収容室3A、3Bが設けられるとともに、この複数のスイッチ本体収容室に対応する並び方で、スイッチ本体収容室から前記スイッチケースの外部へ突出するように配置された複数の押圧子5A、5Bが設けられ、さらに、前記押圧子を介するプッシュ操作によりスイッチオン又はオフの状態となるスイッチ本体6A、6Bが前記各スイッチ本体収容室3A、3Bのそれぞれに一つずつ収容されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDやCD等の光学式読取装置その他の機器に組み込み使用される多連プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学式読取装置では、光学式読取装置内でデータを読み取る際に用いられるレーザの人体に対する影響を考慮し、安全補償などの観点から、DVD等の光学式記録媒体がトレイにセットされて装置内の所定位置に配置されたことを確実に検知するために、そのトレイ検知点に、例えば特許文献1に示されている構造のプッシュスイッチを一列に2つ並べて組み付けるようにしている。
【0003】
上記のような2連のプッシュスイッチを採用した光学式読取装置においては、光学式記録媒体をセットしたトレイが前記トレイ検知点に搬送されてくると、2連のプッシュスイッチの各押圧子がトレイで押圧され、これにより、2連のプッシュスイッチがそれぞれスイッチオンの状態となり、その2つのオン信号から当該トレイが所定位置に配置されたことが検知される。いずれか一方のプッシュスイッチが故障しても、正常に作動する他方のプッシュスイッチからのオン信号により、トレイが所定位置に配置されたことを検知することができるため、トレイが所定位置に配置されていない状態でレーザ光源が作動しレーザが照射されるといった不具合を確実に防止することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されている従来構造のプッシュスイッチによると、これを例えば前述した光学式読取装置のように2連のプッシュスイッチとして機器に組み付けるとしたならば、一つずつ物理的に独立した2つのプッシュスイッチを正確に一列に並べて位置決めして組み付けなければならず、その組み付け作業が難しくなるとともに、またプッシュスイッチの組付け工数自体が単純計算で2倍となり、機器全体の製造コストの増加を招く等の問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−50174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数のプッシュスイッチを多連に並べて機器に組み付ける際の作業工数の削減や作業性の向上等を図るのに好適な多連プッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、縦又は横一列に並んで形成された複数のスイッチ本体収容室を有する一つのスイッチケースと、前記複数のスイッチ本体収容室に対応する並び方で配置されるとともに、それぞれの前記スイッチ本体収容室から前記スイッチケースの外部へ突出するように配置された複数の押圧子と、前記各スイッチ本体収容室のそれぞれに一つずつ収容されるとともに、前記押圧子を介するプッシュ操作によりオン又はオフの状態となる複数のスイッチ本体とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
前記スイッチ本体の具体的な構造については各種考えられる。この種のスイッチ本体としては、例えば、前記スイッチ本体は、前記押圧子を一端部に一体に形成してなるプッシュレバー部と、前記プッシュレバー部の他端部を回転可能に支持する支持手段と、前記スイッチ本体収容室の底面に設けた一対の固定接点と、前記プッシュレバー部に一体に設けたホルダ部に装着されて前記押圧子と前記一対の固定接点との間に配置されるU字形接点ばね片とを備え、前記U字形接点ばね片は、U字形に屈曲した板ばねからなり、その板ばねの屈曲部が前記ホルダ部のU字形凹部に挿入装着されることで前記ホルダ部に装着されるとともに、その板ばねの一端部が前記押圧子の下部に当接し、その板ばねの他端部が上下2枚の接点板に分かれて、上側の接点板が下側の接点板の前方に突き出た形状に形成されてなり、前記上側の接点板は、前記一方の固定接点に常時当接し、前記下側の接点板は、前記押圧子を介するプッシュ操作により前記プッシュレバー部と一緒に下方に回転移動して、前記他方の固定接点に当接し、前記下側の接点板が前記他方の固定接点に当接したときに、前記U字形接点ばね片を介して前記一対の固定接点間が導通することで、前記スイッチ本体がスイッチオンの状態となるようにしてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、プッシュスイッチの構成として、一つのスイッチケースに、縦又は横一列に並んで形成された複数のスイッチ本体収容室が設けられるとともに、この複数のスイッチ本体収容室に対応する並び方で、スイッチ本体収容室から前記スイッチケースの外部へ突出するように配置された複数の押圧子が設けられ、さらに、前記押圧子を介するプッシュ操作によりスイッチオン又はオフの状態となるスイッチ本体が前記各スイッチ本体収容室のそれぞれに一つずつ収容される構成を採用した。このため、一つのスイッチケースを機器に位置決めして取り付けるだけの一の簡単な作業で、複数のプッシュスイッチを多連に並べて当該機器に一度に組み付けることができ、機器への組み付け作業工数の削減や組み付け作業性の向上等を図れ、よって、この種のプッシュスイッチを多連で組み込む機器自体の製造コストを低減することができるという作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明を適用した2連プッシュスイッチの説明図、図2(a)は図1(b)中のA−A線断面図、図2(b)は同図(a)中のB−B線断面図、図3は図1の2連プッシュスイッチを構成する押圧子、プッシュレバー部およびホルダ部の一体成形品の説明図、図4は図1の2連プッシュスイッチを構成するU字形接点ばね片の説明図である。
【0012】
図1の2連プッシュスイッチ1は、図2のように一つのスイッチケース2内に2つのスイッチ本体収容室3A、3Bを有している。これら2つのスイッチ本体収容室3A、3Bは、図上、横一列に並んで一体成形され、それぞれが独立した個別の室となっている。
【0013】
スイッチケース2の上部はスイッチ本体収容室3A、3Bと連通する開口部4A、4Bが設けられており、この開口部4A、4Bを介してスイッチ本体収容室3A、3Bからスイッチケース2の外部へ2つの押圧子5A、5Bが突出するように配置されており、これら2つの押圧子5A、5Bはスイッチ本体収容室3A、3Bに対応する並び方(図1の例では横一列)に配置されている。
【0014】
各スイッチ本体収容室3A、3Bには、それぞれに一つずつスイッチ本体6A、6Bが収容されている。スイッチ本体6Aは、上記押圧子5Aを一端部に一体に形成してなるプッシュレバー部7と、このプッシュレバー部7の他端部を回転可能に支持する支持手段8と、上記スイッチ本体収容室3Aの底面に設けた一対の固定接点9−1、9−2と、上記プッシュレバー部7に一体に設けたホルダ部10に装着されて押圧子5Aと一対の固定接点9−1、9−2との間に配置されるU字形接点ばね片11とを備えている。
【0015】
前記プッシュレバー部7は、スイッチ本体収容室3Aの開口部4Aからスイッチ本体収容室3A内に少し入った位置に略水平に配置される。このようなプッシュレバー部7の略水平姿勢は、押圧子5Aを介してプッシュレバー部7に下向きの力(トルク)が何も作用しないときの姿勢であり、押圧子5Aに下向きの力が作用すると、このプッシュレバー部7は、その支持手段8による支持点(後述の支持軸8a、8a)を中心として、下方に所定の角度で回転移動する。
【0016】
図3にも示したように、プッシュレバー部7に設けられているホルダ部10は、押圧子5Aをプッシュレバー部7に形成した面とは反対の面(プッシュレバー部7の下面)に一体に成形されるとともに、U字形接点ばね片11を装着するための凹部12を有し、この凹部12は、プッシュレバー部7が略水平姿勢のときに、横向きのU字形状となるように構成されている。
【0017】
プッシュレバー部7を支持する前記支持手段8は、プッシュレバー部7の両側に突出形成された左右の支持軸8a、8aを、スイッチ本体収容室3Aの両壁面に形成された左右の軸受部8b、8bで支持する両端支持構造になっている。
【0018】
前記一対の固定接点9−1、9−2は、プッシュレバー部7の回転接線方向に沿って一列に並んで設けられている。スイッチケース2の下面にはこの一対の固定接点9−1、9−2に対応する外部端子13−1、13−2が設けられており、前記一対の固定接点9−1、9−2はそれぞれ対応する前記外部端子13−1、13−2に電気的に接続されている。
【0019】
図4にも示したように、前記U字形接点ばね片11はU字形に屈曲した板ばね11aからなり、その板ばね11aの屈曲部11bをホルダ部10のU字形凹部12に挿入することで、U字形接点ばね片11はホルダ部10に装着される。
【0020】
また、U字形接点ばね片11を構成する板ばね11aの一端部11cは、押圧子5Aの下部に当接するように構成され、同板ばね11aの他端部11dは、上下2枚の接点板14−1、14−2に分かれて、上側の接点板14−1が下側の接点板14−2の前方に突き出た形状となっている。
【0021】
そして、上記のような上下2枚の接点板14−1、14−2のうち、上側の接点板14−1は、一方の固定接点9−1に常時当接するように構成され、また、下側の接点板14−2は、押圧子5Aを介するプッシュ操作によりプッシュレバー部7と一緒に下方に回転移動して、他方の固定接点9−2に当接するように構成されている。
【0022】
また、上記のように板ばね11aの屈曲部11bをホルダ部10のU字形凹部12に挿入するとき、板ばね11aの両端部11c、11dは、互いに近づく方向(内方)に圧縮した状態とされ、この状態でホルダ部10のU字形凹部12に挿入し嵌着される。このとき、その圧縮による板ばね11aの反発力(復元力)は、下側の接点板14−2と板ばね11aの一端部11cに蓄積された状態で残存する。
【0023】
ところで、図1、図2は押圧子5Aを介してプッシュレバー部7に何も力が作用していない状態を示している。この状態から押圧子5Aを介してプッシュレバー部7に図2中下向きの力が作用すると、プッシュレバー部7が支持軸8a、8aを中心として同図中下向きに回転移動する。このとき、上側の接点板14−1は上記力で一方の固定接点9−1に押え付けられて弾性変形しながら該固定接点9−1上を摺動し、これと同時に、下側の接点板14−2は他方の固定接点9−2に近づいて当接する。このため、U字形接点ばね片11を介して一対の固定接点9−1、9−2間が導通し、このスイッチ本体6Aはスイッチオンの状態となる。
【0024】
上記のように作用している力がなくなると、その力で押え付けられて弾性変形していた上側の接点板14−1が弾性変形前の元の状態に復元しようとし、その復元力でプッシュレバー部7が支持軸8a、8aを中心として図2中上向きに回転移動して図2のような略水平の状態に戻るとともに、下側の接点板14−2が他方の固定接点9−2から離れることで、固定接点9−1、9−2間が遮断され、このスイッチ本体6Aはスイッチオフの状態となる。
【0025】
図1中左側のスイッチ本体収容室3Bに収容されているスイッチ本体4Bは、前記スイッチ本体4Aと同一構造であるため、それと同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0026】
上記構成の2連プッシュスイッチ1は、例えば、図5のようにDVD等の光学式記録媒体の光学式読取装置20に使用される。光学式読取装置20は、トレイ21にセットされた光学式記録媒体22にレーザ(図示省略)を照射してデータを読み取るが、レーザの人体に与える影響を考慮し、安全補償などの観点から、同光学式読取装置20では、レーザ照射前に、トレイ21が所定の位置に配置されたことを確実に検知するために、その検知点に2連プッシュスイッチ1を組み付けている。
【0027】
上記のように組み付けられた2連プッシュスイッチ1が正常に作動できる状態にあるときは、光学式記録媒体22をセットしたトレイ21が光学式読取装置20内の所定位置まで引き込まれて所定位置に配置されると、そのトレイ21の前方に設置されている2連プッシュスイッチ1の押圧子5A、5Bがトレイ21で押圧され、これにより2連プッシュスイッチ1のスイッチ本体6A、6bが双方ともスイッチオンの状態となり、このオン信号からトレイ21が所定位置にセットされたことが検出される。もし仮に、いずれか一方のスイッチ本体6A、6Bが故障したときには、正常に作動する他方のスイッチ本体からのオン信号でトレイ21が所定位置に配置されたことを検出することができる。
【0028】
本実施形態の2連プッシュスイッチ1によると、これを上記のような光学式読取装置20に組み付ける際に、一つのスイッチケース2を光学式読取装置20内の前記検知点に位置決めして取り付けるだけの一の簡単な作業で、複数のプッシュスイッチを多連に並べて一度に組み付けることができ、光学式読取装置への組み付け作業工数の削減や組み付け作業性の向上等を図れ、光学式読取装置20自体の製造コストを低減することができるという作用効果を奏する。
【0029】
尚、上記実施形態は本発明を2連のプッシュスイッチとして適用した例であるが、本発明は2連以上の多連のプッシュスイッチに適用することができる。また、本発明を構成するスイッチ本体の具体的構成については、上記実施形態以外の構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明を適用した2連プッシュスイッチの説明図であり、(a)は2連プッシュスイッチの正面図、(b)は2連プッシュスイッチの右側面図である。
【図2】図2(a)は図1(b)中のA−A線断面図、図2(b)は同図(a)中のB−B線断面図である。
【図3】図3は図1の2連プッシュスイッチを構成する押圧子、プッシュレバー部およびホルダ部の一体成形品の説明図であり、(a)は一体成形品の正面図、(b)はその右側面図、(c)はその左側面図、(d)は(a)中のA−A線断面図、(e)は(b)中のB−B線断面図、(f)は一体成形品の上面図である。
【図4】図4は図1の2連プッシュスイッチを構成するU字形接点ばね片の説明図であり、(a)はU字形接点ばね片の正面図、(b)はその側面図、(c)はその上面図である。
【図5】図4は2連プッシュスイッチの使用例の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 2連プッシュスイッチ
2 スイッチケース
3A、3B スイッチ本体収容室
4A、4B 開口部
5A、5B 押圧子
6A、6B スイッチ本体
7 プッシュレバー部
8 支持手段
8a 支持軸
8b 軸受部
9−1、9−2 固定接点
10 ホルダ部
11 U字形接点ばね片
11a 板ばね
11b 板ばねの屈曲部
11c 板ばねの一端部
11d 板ばねの他端部
12 U字形凹部
13−1、13−2 外部端子
14−1 上側の接点板
14−2 下側の接点板
20 光学式読取装置
21 トレイ
22 光学式記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦又は横一列に並んで形成された複数のスイッチ本体収容室を有する一つのスイッチケースと、
前記複数のスイッチ本体収容室に対応する並び方で配置されるとともに、それぞれの前記スイッチ本体収容室から前記スイッチケースの外部へ突出するように配置された複数の押圧子と、
前記各スイッチ本体収容室のそれぞれに一つずつ収容されるとともに、前記押圧子を介するプッシュ操作によりスイッチオン又はオフの状態となる複数のスイッチ本体と、
を備えてなることを特徴とする多連プッシュスイッチ。
【請求項2】
前記スイッチ本体は、
前記押圧子を一端部に一体に形成してなるプッシュレバー部と、
前記プッシュレバー部の他端部を回転可能に支持する支持手段と、
前記スイッチ本体収容室の底面に設けた一対の固定接点と、
前記プッシュレバー部に一体に設けたホルダ部に装着されて前記押圧子と前記一対の固定接点との間に配置されるU字形接点ばね片とを備え、
前記U字形接点ばね片は、
U字形に屈曲した板ばねからなり、その板ばねの屈曲部が前記ホルダ部のU字形凹部に挿入装着されることで前記ホルダ部に装着されるとともに、その板ばねの一端部が前記押圧子の下部に当接し、その板ばねの他端部が上下2枚の接点板に分かれて、上側の接点板が下側の接点板の前方に突き出た形状に形成されてなり、
前記上側の接点板は、
前記一方の固定接点に常時当接し、
前記下側の接点板は、
前記押圧子を介するプッシュ操作により前記プッシュレバー部と一緒に下方に回転移動して、前記他方の固定接点に当接し、
前記下側の接点板が前記他方の固定接点に当接したときに、前記U字形接点ばね片を介して前記一対の固定接点間が導通することで、前記スイッチ本体がスイッチオンの状態となること
を特徴とする請求項1に記載の多連プッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−134176(P2007−134176A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326574(P2005−326574)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000114145)ミック電子工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】