多重デバイスの並列構成のための質量分析計多重デバイスインターフェース
1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスへインターフェースするために質量分析において使用される多重デバイスインターフェース。該多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットに印加される電位に依存して、入力ロッドセットまたは出力ロッドセットのどちらかとして構成される3つ以上の多重極ロッドセットを含む。入力ロッドセットとして構成される多重極ロッドセットは、1つ以上のイオン源に連結されることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該イオンを出力多重極ロッドセットとして構成された少なくとも1つの多重極ロッドセットへ伝達する。該出力多重極ロッドセットは、下流側デバイスに連結され、生成されたイオンを該デバイスへ伝達できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、質量分析計デバイス用の多重デバイスインターフェースに関する。より詳細には、本発明は、質量分析用にいくつかのデバイスを並列構成でともにインターフェースするための多重デバイスインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
既存の質量分析計は、通常、一度に1つのイオン源からのイオンを解析する。例外としては、イオントラップの使用、または内蔵の電子衝撃イオン化源である第2のイオン源を使用するときを含む。多重イオン源を3Dイオントラップに連結する1つの方法は、非特許文献1に記載されているとおり、イオントラップのリング電極内の穴を通して第2イオン源からイオンを噴射させる方法を含む。別の方法は、回転四重極を使う方法を含む。この方法は、3Dイオントラップに限定されず、さまざまな解析装置に対して使用できる。たとえば、一つの例として、非特許文献2に記載されているとおり、3つのイオン源が回転四重極を介してイオントラップに連結されている。しかし、Badmanらによって教示された構成においては、3つのイオン源からイオンをイオントラップに同時に供給できない。限定された場合においては、2次元イオントラップ(または直線状トラップ)を使って2つのイオン源からイオンを受け入れることができ、かつイオン源を同時に動作させることができる場合がある(非特許文献3)。
【0003】
多重入力イオン源に対する別の方法は、非特許文献4に記載されている。Krutchinskyらは、高速で切換可能なMALDIおよびエレクトロスプレーイオン源を備えた質量分析計について述べている。しかし、この計器は、MALDI源であるべきイオン源の1つを必要とする。さらに、該MALDI源は、特別に設計されたMALDI源でなければならない。結論として、2つのイオン源は並列よりもむしろ直列に配列されているので、この計器とともには多重イオン源を同時に使用できない。
【0004】
都合の悪いことには、大部分の既存のイオン源に対しては、1つのイオン源から別のイオン源に変更するとき、たとえば、ESIイオン源とoMALDIイオン源との間で変更するときなどにおいては、手動インターフェースが必要である。手動インターフェースには、普通、真空チャンバーの少なくとも一部を通気する工程が含まれ、その結果、機械を運転状態に戻す前に顕著なポンプ停止時間が生じることになる。
【非特許文献1】Stephenson,J.L and McLuckey,S.A.(1997),Int.J.Mass Spectrom.Ion Processes,162,pp.89−106
【非特許文献2】Badman,E.R.;Chrisman,P.A.and McLuckey,S.A.,2002,Anal.Chem.,74,pp.6237−6243
【非特許文献3】Coon J.J.,Syka,J.E.P.,Schwartz,J.C.,Shabanowitz,J.,and Hunt,D.F.,2004,Int.J.Mass Spectrom.,236,pp.33−42
【非特許文献4】Krutchinsky,A.N.;Zhang,W.and Chait,B.T.,2000,”Rapidly Switchable MALDI and Electrospray Quadrupole−Time−of−Flight Mass Spectrometry for Protein Identification”,J.Am.Soc.Mass Spectrometry,V.11,pp.493−504
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用するための多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットに印加された電位に依存して入力ロッドセットか出力ロッドセットのいずれかとして構成された3つ以上の多重極ロッドセットを含む。入力ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、入口部分は、1つ以上のイオン源の中の1つに連結され、該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、および該生成されたイオンを出口部分へ伝達できる。出力多重極ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、該出口ロッドセットの入口部分は、入力ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットの少なくとも1つの出口部分に隣接し、生成されたイオンを受け入れて出力多重極ロッドセットの出力部分へ伝達する。出力多重極ロッドセットの出口部分は、下流側デバイスに連結可能である。多重極ロッドセットの少なくとも2つは入力ロッドセットとして構成される、または多重極ロッドセットの少なくとも2つは出力ロッドセットとして構成される。
【0006】
多重デバイスインターフェースは、入力ロッドセットとして構成された多重極の出口部分を出力ロッドセットとして構成された多重極の入口部分に連結する遷移領域をさらに含むことができる。
【0007】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、一般的な2次元構造を有することができ、多重極ロッドセットは、該平面のどちらかのディメンジョンに沿って配置される。
【0008】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有し、および多重デバイスインターフェースは、該遷移領域の上方および下方に設置された上部および下部阻止電極をさらに含み、使用において、阻止電位を上部および下部阻止電極に印加してイオンを結合領域から逃がさないようにする。使用中、阻止電位は、0.2〜10ボルトDC内になるように選択できる。
【0009】
場合によっては、隣接する多重極ロッドセット内の隣接するロッドは、多軸ロッドによって形成でき、このような構成において、該多軸ロッドは、2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐ接合部分とを含む。
【0010】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、不使用入力ロッドセットの入口部分に隣接する阻止電極、またはあらゆる不使用出力ロッドセットの出口部分に隣接する阻止電極をさらに含むことができ、このような構成において、使用中、電位を阻止電極に印加してあらゆる生成されたイオンを不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする。使用において、阻止電位は、1〜50ボルトDC以内になるように選択できる。
【0011】
場合によっては、ガス源は、1つ以上のイオン源の中のいずれにも連結されていない入力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの入口部分に連結可能であり、または該ガス源は、下流側デバイスに連結されていない出力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの出口部分に連結され、このような構成において、使用において、ガス源は、阻止ガス流を形成してあらゆる生成されたイオンを不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする。
【0012】
場合によっては、多重デバイスは、4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、ダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0013】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットのそれぞれ内に上部および下部のロッドを形成するために、概して十字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、該上部および下部の多軸ロッドの十字形状によって画定された各4半分内で、かつ該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドとを含み、このような構成において、各中間レベル多軸ロッドは、2つのロッド部分と、該2つのロッド部分をつなぐための1つの結合部分とを含む。
【0014】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、3つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、ダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0015】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットのそれぞれ内に上部および下部のロッドを形成するために、概してT字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、該上部および下部の多軸ロッドのT字形状によって画定された各4半分内で、かつ該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、各中間レベル多軸ロッドが2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐための結合部分とを含む該中間レベル多軸ロッドと、該中間レベル多軸ロッドと反対側で該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された中間レベル直線ロッドであって、2つの該多重極ロッドセットの一部である該中間レベル直線ロッドとを含む。
【0016】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、3次元構造の3つの面のいずれかに沿って配置されている多重極ロッドセットを備えた該3次元構造を有する。
【0017】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、6つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0018】
そのような場合には、互いに隣接する多重極ロッドセット内の隣接するロッドは、概してL字形状を有する多軸によって形成でき、このような構成において、多軸ロッドは、2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐための結合部分とを含む。
【0019】
場合によっては、使用中、多重デバイスインターフェース内部の圧力は、1mTorr〜3Torrの範囲内であるとよい。
【0020】
場合によっては、使用中、多重デバイスインターフェース内部の圧力は、1mTorr〜1Torrの範囲内であるとよい。
【0021】
場合によっては、多重極ロッドセットは四重極ロッドセットおよび隣接する六重極ロッドセットを含む。
【0022】
場合によっては、多重極ロッドセットは隣接する六重極ロッドセットを含む。
【0023】
1つ以上のイオン源のそれぞれは、エレクトロスプレーイオン化イオン源、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、電子衝撃イオン源、または化学イオン化イオン源を含むことができる。
【0024】
結合部分を含む好ましい実施形態に対して、結合部分は曲率半径を有する湾曲部を含むことができる。
【0025】
別の態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、2つ以上のイオン源を下流側デバイスにインターフェースするために質量分析において使用される多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、入口部分および出口部分を有する2つ以上の入力経路であって、各入力経路の入口部分は複数のイオン源の中の1つに連結され、該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、該生成されたイオンを出口部分へ伝達する該2つ以上の入力経路と、生成されたイオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域であって、入力ロッドセットのそれぞれの出口部分に隣接して配置される該結合領域と、入口部分および出口部分を有する出力経路であって、出口経路の入口部分は結合領域に隣接して結合イオンを受け入れ、および該結合イオンを出力経路の出口部分へ伝達し、および出力経路の出口部分は下流側デバイスに連結可能である該出力経路とを含む。
【0026】
さらなる態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために質量分析において使用される多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、3つ以上の経路および遷移領域を含む。複数のけいろは、入力経路か出力経路か不使用経路かのいずれかとして構成される。入力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは遷移領域に連結されて別々の経路を形成する。出力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは遷移領域に連結されかつ下流側デバイスの中の1つに連結されできる。使用中、入力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは、異なるイオン源にれんけつされて該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、および該生成されたイオンを遷移領域に導き、そしてそこで、生成されたイオンは出力経路として構成されかつ下流側デバイスの中の1つに連結可能である複数の経路の中の1つに伝達される。
【0027】
本発明をより良く理解するために、および如何に効果的に実行できるかをより明確に示すために、単なる例として、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態を示す添付の図面をここで参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図を単純明快にするために、図に示した部品を必ずしも縮尺どおりに描いていないことは言うまでもない。たとえば、いくつかの部品の寸法をはっきり分かるように他の部品に対して誇張する場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の部品を示すために図面の中で参照番号を繰り返す場合がある。さらに、本発明の完璧な理解を与えるために多数の具体的で明確な詳細を述べる。しかし、当業者には明らかなとおり、本発明は、これらの特定の詳細なしに実施が可能である。別の例において、本発明を不明瞭にしないために、良く知られた方法、手順、および部品については詳細に説明していない。場合によっては、さまざまな部品に対する寸法および公差を提供するつもりである。しかし、これは、本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ本発明の好ましい実施形態を機能させるために詳細を提供するものである。
【0029】
全体として、本発明は、質量分析解析のための多重デバイスの構成を可能にしかつ同時動作を可能にする多重デバイスインターフェースを提供するものである。一態様において、本発明のさまざまな好ましい実施形態は、いくつかの異なったイオン源から入力サンプルを受け入れ、および複数の入力サンプルを下流側デバイス、たとえば、質量分析計などへ供給できる多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、さまざまなイオン源が同時に動作できるように構成できる。多重デバイスインターフェースは、さまざまなイオン源の間での切換のために手動操作を必要としないで機能できる。したがって、質量分析解析工程が、イオン源の変更またはさまざまな解析サンプルのさまざまなイオン源への詰め込みのために停止される必要がないので、本発明の多重デバイスインターフェースによって、全解析時間は低減される。むしろ、さまざまな解析サンプルを最初にさまざまなイオン源の中に詰め込むことができ、次に、質量分析解析工程を開始すると同時に、別のイオン源を順次または並行式に動かすことができる。別の態様において、本発明のさまざまな好ましい実施形態では、1つ以上のイオン源から入力サンプルを受け入れ、該入力サンプルを2つ以上の下流側デバイスに並行または順次に供給できる。
【0030】
ここで図1を参照すると、そこには、イオン源12、イオン集束デバイス14、質量分析装置16、および検出器18を含む、従来の質量分析計システム10の典型的な実施形態のブロック線図が示されている。当業者には一般に公知のとおり、質量分析計システム10には、さまざまなポンプおよび電源装置(不図示)が使用される。
【0031】
イオン源12は、解析を必要とする追跡物体からの分析物イオンを供給する。エレクトロスプレーイオン源、MALDIイオン源など多様なデバイスをイオン源12として使用できる。一般に四重極イオンガイドであるイオン集束部材デバイス14は、イオン源12から分析物イオンを受け入れ、集束し、および該イオンを質量分析装置16へ導く。四重極イオンガイドは、次の下流側デバイスへ分析物イオンを導くために適切な大きさおよび周波数(一般に1MHz)を有するRF電圧がかけられている4つの細長い導体ロッドを含む。RF場は、イオンの径方向閉じ込めを行う電位井戸を形成する。イオン集束デバイス14は、高圧(たとえば、mTorr領域)で動作でき、衝突冷却および減圧などの他のタスクを実行できる。六重極イオンガイド、八重極イオンガイド、またはスタックリングなどといったイオンガイドのための他の構成も使うことができる。
【0032】
本明細書で扱う好ましい実施形態のそれぞれにおいて、イオン集束ガイド14は、より一般には、分析物イオンを処理する「イオン調整デバイス」であると考えてもよい。たとえば、イオン調整デバイスは、関心のある分析物イオンからフラグメントイオンを生成する衝突室とこれらのフラグメントイオンを集束し、下流側質量分析装置16へ送るイオンガイドとの両方の結合体を含んでもよい。
【0033】
質量分析装置16は、さまざまな質量対電荷比を有するイオンを選択する質量フィルタであってもよい。このフィルタは、関心のある質量範囲に依存して質量分析装置16に印加されるDCまたはRF電圧のパラメータを変更することによって実現される。あるいは、質量分析装置16は、直線状四重極質量分析装置、直線状または反射TOF質量分析装置、磁気領域解析装置などといったあらゆる適切な質量分析装置であるとよい。つぎに、選択されたイオンは、検出および測定のために検出器18へ送られる。検出器としては、当業者には公知のとおり、さまざまなデバイスが使われてよい。
【0034】
質量分析計に使用され、従って、RFおよびDC両方の電圧が印加される四重極には、厳密な長さおよび機械加工要求基準が必要である。たとえば、これらのロッドは、20cm以上の長さ、0.5マイクロメートルより良い粗さ公差、および2.5マイクロメートルより良い真直度公差を有する金属化セラミック製である。しかし、通常RF電圧のみ印加されるイオンガイドとして動作する四重極は、ゆるい機械加工要求基準を有し、2.4cmという短さであってもよい。
【0035】
図1に示した従来の好ましい実施形態は、別のイオン源を連結する必要があるとき、質量分析計システム10全体を遮断しなければならないので、最良の構成ではない単一イオン源12に連結されている。ここで図2を参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース102を有する質量分析計システム100の典型的な好ましい実施形態のブロック線図が示されている。質量分析計システム100は、いくつかのイオン源12a〜12nおよびイオン集束デバイス14a〜14nが多重デバイスインターフェース102に連結されていることを除けば、質量分析計システム100と類似である。さらに、多重デバイスインターフェース102は、イオン集束デバイス15に連結されている。システム100の残りの部分は、システム10と類似である。これらの部品のそれぞれは、当業者には公知である技術によって互いに連結されている。たとえば、これらのデバイスのいくつかは、互いにボルト締めされてもよい。多重デバイスインターフェース102では、複数イオン源12a〜12nの同時動作が可能であり、およびさまざまなイオン源が全体としてインターフェース圧力などといった類似の環境下で動作するという前提で、同時に使えるイオン源の種類は限定されない。イオン集束デバイス14a〜14nおよび15は、いくつかの好ましい実施形態においては、多重デバイスインターフェース102がイオン集束も行えるので、オプションである。たとえば、多重極を多重デバイスインターフェース102に使う場合、次に多重極の長さは、十分なイオン冷却および集束を行うに十分な長さになるように選択するとよい。ロッドセットの長さは、動作圧力と生成されたイオンの初期エネルギー(典型的な設計方法は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,963,736号に記載されている)とに依存する。
【0036】
ここで図3aおよび3bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース200の好ましい一つの典型的な実施形態の概略の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース200は、3つの入力ロッドセット202、204、および206と、1つの出力ロッドセット208とを含む。入力および出力ロッドセットを入力および出力多重極ロッドセットと呼んでもよい。概して言えば、入力ロッドセットを入口通路であると考え、出力ロッドセットを出口通路であると考えてもよい。多重デバイスインターフェース200は、ロッドセット202、204、206、および208が、概してxまたはy方向に配置されているので、若干平面すなわち2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース200は、平面の形状または何か他の適切な形状であってもよい、組になった電極210および212を含み、分析物イオンを多重デバイスインターフェース200から逃がさないようにしている(図3aは、インターフェース200の構造を示すために電極210を示していない)。出力ロッドセット208は、この例ではイオン集束デバイス14である下流側デバイスに連結されている。多重デバイスインターフェース200は、ハウジング(不図示)の内部に密閉されている。
【0037】
多重デバイスインターフェース200の各ロッドセットは、概して正方形形状の四重極構造を有する。この構造は、ロッドセット206を眺めることによって図3b内で見ることができる。互いに隣接しているロッドセットの間に間隙を残すことは可能である。しかし、一実施例において、隣接するロッドには、同一電位が印加されていて、そのため、隣接するロッドは、図3aに示すとおり、互いに接触してもよい。
【0038】
別の実施例において、複数の長手軸(この例においては、2軸)を有する多軸ロッドを使って、隣接する組になったロッドセット202、204、206、および208のために2つの四重極ロッドを設けてもよい。用語多軸は、多軸ロッドが2つのロッド部分および1つの結合部分を有することを指す。結合部分は2つのロッド部分を互いに連結する。各ロッド部分は実質的には直線状であり、ロッド部分の長手軸は互いに対して同一線上にない。この特定の例において、多軸ロッドは、一般的な2次元構造を備えたL字形状を有する。L字形状ロッドの結合部分は、約90度の湾曲部を有してよい。あるいは、該湾曲部は、滑らかな曲率半径を含むとよい(図3c参照)。湾曲度はシミュレーションすなわち実験を通して決定するとよい。湾曲度は、結合領域210内の入力ロッドセット202、204、および206の出口付近の電磁場と、出力ロッドセット208の入口付近の電磁場との間に滑らかな遷移を与えるために選択されることが望ましい。
【0039】
この典型的な好ましい実施形態においては、3つのイオン源12a〜12cを入力ロッドセット202〜06の入口領域に連結できる。図3a内の矢印は、イオンの流れ方向を示す。動作中、イオン源12a〜12cは、イオンを生成し、適切なRF電位が入力ロッドセット202〜206に印加され、分析物イオンは各入力ロッドセット202〜206の入口領域から出口領域へ導かれる。次に分析物イオンは、さまざまなイオン源12a〜2cからの分析物イオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域214へ導かれる。次に結合領域214内の結合イオンは、出力ロッドセット208の入口部分から出口部分へ、それから隣接する下流側デバイスへと移動する。
【0040】
所定のロッドセットの軸線に沿ったイオンの動きは、ガス流、イオン拡散、軸線に沿ってかけられた電場、または空間電荷に起因している可能性がある。軸方向場は、ロッドセットの外側に配置された電極から浸透した場によって、または参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,111,250号に記載のさまざまな手段によって生成できる。イオンを移動させるこれらの方法を使うことにより、確実にイオンを入力および出力ロッドセットを通して希望する方向へ効果的かつ迅速に移動させることができる。
【0041】
全体として、イオンの流れは、各ロッドセットの入口および出口における電場および/またはガス流によって制御される。イオンは、RF場によって生成される実効電位によっても径方向に閉じ込められる。ロッドセット202〜208に印加するRF電位の大きさおよび周波数は、各イオン源12a〜12cによって生成された分析物イオンの性質に依存して選択が可能である。RF電位は、「−」および「+」符号によってロッドがRF電源装置の特定の端子に連結されていることを示した図3aおよび3bに示したとおり、所定のロッドセット内の組になった隣接するロッドに印加される。それに加えて、所定のロッドセットの入口または出口においては、生成されたイオンが移動する方向も画定する数ボルトまたは数十ボルトの電圧降下がある。たとえば、ロッドセット202からのイオンは、いくらかロッドセット206の出口領域に入る可能性があるが、これらのイオンは、ロッドセット206の入口領域から出ることはない。その代わり、これらの「方向の定まらない」イオンの移動方向は、一般に反転し、該方向の定まらないイオンは、一般にイオン拡散および電圧降下によって最後には結合領域214の方へ移動することになる。さらに、別の場合においては、入力ロッドセット204の入口において、エレクトロスプレーイオン源などの大気圧イオン源があるとよく、該大気圧イオン源は、ロッドセット204と208との共通軸線に沿ってガスの弱い流れを形成し、イオンを入力ロッドセット202および/または206からロッドセット208の出口領域に向かう方向に導く効果がある。約1mTorrより大きい圧力の維持、または方向性流れの生成のいずれかのために、ガス流を意図的に導入してもよい。ポンプを配置する場所は、当業者には公知であろう。
【0042】
入力ロッドセット202〜206および出力ロッドセット208が互いに出会う結合領域には間隙があり、および該領域ではRF場がより弱いので、分析物イオンを該結合領域214から逃がさないようにするために組になった阻止電極すなわち阻止プレート210および212が追加されている。阻止電極210および212は、ロッドセット202〜208の上部および下部ロッドそれぞれの上面および下面から約1〜50mm、より好ましくは約1〜10mmだけ垂直方向に間隔を置いて配置されるとよい。
【0043】
イオン源が入力ロッドセット202〜206の中の1つに連結されていない場合、阻止プレートまたは他の形式の電極の使用も可能である。たとえば、イオン源を入力ロッドセット202に連結しない場合、次に、他のイオン源からのイオンを不使用入力ロッドセット202の入口から逃がさないようにするために追加の電極すなわち阻止プレート(不図示)を入力ロッドセット202の入口に極めて接近して配置し、および該阻止プレートに適切な電位を印加するとよい。阻止電極は、不使用入力ロッドセットの入口の内側に挿入したロッドまたはプレートによって構築してもよい。ロッドまたはプレートは、不使用入力ロッドセットのロッド間に垂直または水平に、または十字に配置してもよい。分析物イオンを衝突冷却させることを想定した場合、場合によっては、1VDCで十分に不使用入力ロッドセットの入口を阻止できる。しかし、大きい電圧、たとえば、5〜50VDCを阻止プレートに印加してもよい。あるいは、不使用入力ロッドセットに対してガス流を単独または阻止電極との組合せのいずれかで使用して、イオンを多重デバイスインターフェース102から逃がさないようにしてもよい。
【0044】
不使用入力ロッドセットの入口において電極に印加した阻止電位は、結合領域を通り抜けるイオンの動きに影響を与えるほど入力ロッドセットの中に十分深く浸透しない。このため、不使用入力ロッドセットの入口において約1〜20Vまたはさらに50VDCの広範囲の電圧を阻止電極に印加できる。他方では、阻止プレート210および212からの電位が結合領域214の中に浸透し、およびその影響が大きすぎる場合は、結合領域214を通り抜けるイオン運動を阻止する電位障壁を生成するとよい。したがって、阻止プレート210および212に印加する電圧範囲は一般に比較的小さく、すなわち0.2〜5V、そして、結合領域214の大きさと、阻止プレートがどれだけ結合領域214の上部および下部に近いかとに依存する場合においては多分10VDCまでになる。
【0045】
ここで図3cを参照すると、そこには多重デバイスインターフェース250の典型的な実施例の等角図が示されている。多重デバイスインターフェース250は、阻止プレート252、支持部材254〜260、および連結ポート262を含む。他の連結ポート(不図示)もさまざまなイオン源に連結するために含まれている。多重デバイスインターフェース250は、多重デバイスインターフェース250の内部構造を見ることができるように、図3c内には示さなかったハウジングも含む。連結ポート262は、多重デバイスインターフェース250を下流側デバイスに連結するために使われる。支持部材254〜260は、多重デバイスインターフェース250用のハウジングを取り付けるために使用される。部材262は、下流側デバイスの一部を示す。
【0046】
この典型的な実施例において、一般的な2次元L字形状を有する多軸ロッドは、2つの隣接するロッドセットに対して1つのロッドを形成するために使用される。参照ラベルは、概してロッドセット202〜208に属するロッドを示す。各多軸ロッドは、結合部分を有する(簡潔にするために、結合部分の中の1つ266だけを示す)。各多軸ロッドのロッド部分は、ロッドを所定位置に保持するために支持部材254〜260の内部にある対応する溝またはブラケットに係合するフランジ(不図示)を備えているとよい。たとえば、フランジ264は、ロッドセット204のロッドの中の1つにラベルが付けられている。あるいは、フランジはロッド上に設けられなくてもよく、支持部材254〜260の内側部分がロッドの外側表面を収容できる溝形状を有してもよい。いくつかのロッドは、イオン源に対する特定配向を物理的に収容できる先細りになった部分を有してもよい。
【0047】
本発明者らは、多軸ロッドの結合部分268の鋭い端部すなわち湾曲部を除去すると、入力ロッドセット202〜206の出口付近、出力ロッドセット208の入力付近、および結合領域214において電場力線が「滑らかに」保たれる効果があり、したがって、これらの領域において「滑らかな」イオン運動が保持されることを発見した。したがって、多軸ロッドは、一般に結合部分に曲率半径を採用するとよい。他方、大き過ぎる曲率半径を採用することは、大きくなりすぎる可能性がある間隙を結合領域214内に作り出す可能性があり、および各イオンロッドセット202〜208の軸線近くにイオンを保持する径方向電位井戸を弱める可能性があるので、好ましくない場合がある。
【0048】
ここで図4aおよび4bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース300の別の典型的な好ましい実施形態の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース300は、概してx、y、またはz方向に配置されているロッドセットを備えた概して3次元構造を有する。多重デバイスインターフェース300は、5入力ロッドセット302〜310、1出力ロッドセット312、および結合領域314を含む。したがって、多重デバイスインターフェース300は、最高5つの異なるイオン源12a〜12eを連結できる。多重デバイスインターフェース300には各x−y−z方向に沿って入力ロッドセットがあるので、多重デバイスインターフェース200に対して存在したような間隙は結合領域314の上方/下方にまったくなく、およびしたがってこの領域を覆うどんな電極プレートもまったく不要である。しかも、多重デバイスインターフェース300の構造は、各ロッドセットが概して正方形形状の四重極構造を有する点で多重デバイスインターフェース200の構造と若干似ている。他の点では、多重デバイスインターフェース300は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。たとえば、阻止電極(不図示)は、やはり各不使用入力ロッドセットに必要である。さらに、隣接するロッドセットのロッド間に90度の角度を採用するよりもむしろ、望ましくは多重デバイスインターフェース250(図3c参照)に対してなされたように曲率半径を使う方がよい。
【0049】
さらに、隣接するロッドセットのロッドは互いに連結されるとよい。たとえば、ロッドセット302〜310に対して、ロッド302b、304a、および308bは、互いに連結されるとよい。この連結を実現するためには、4つの直線ロッド部分および単一結合部分を備えた多軸ロッドを使用するとよい。
【0050】
ここで図5aおよび5bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース400の別の典型的な好ましい実施形態の概略のそれぞれ上面および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース400は、概してxまたはy方向に配置されているロッドセットを備えた概して2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース400は、3入力ロッドセット402〜406、1出力ロッドセット408、および結合領域410を含む。したがって、多重デバイスインターフェース400は、最大3つの異なるイオン源12a〜12cに連結できる。多重デバイスインターフェース400の各ロッドセットは、概してダイヤモンド形状の四重極構造も有する(この構造は、図5bの入力ロッドセット406の端部断面を観察することによって見ることができる)。
【0051】
一実施例において、多重デバイスインターフェース400は、概してL字形状である多軸ロッド412〜418と、概してX字形状すなわち十字形状である多軸ロッド420および422で作るとよい。多軸ロッド420および422は、それぞれ最上部および最下部ロッドである。多軸ロッド412〜418は、多軸ロッド420と422との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド420および422によって画定された4つの四半分内に配置されている。ロッド412〜418は、中間レベルロッドと呼んでもよい。前と同じように、多軸ロッド412〜422のそれぞれの結合部分の湾曲部は、多重源インターフェース250(図3c参照)内で使用したような曲率半径を有するとよい。
【0052】
多重デバイスインターフェース400は、十字形状の多軸ロッド420および422を使用しているために、結合領域410の上方または下方に間隙を有していない。したがって、この領域内には、イオンを多重デバイスインターフェース400から逃がさないようにするためにどんな阻止電極も不要である。しかし、阻止電極は、不使用である入力ロッドセットがもしあればやはり必要になる。他の点では、多重デバイスインターフェース400は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。
【0053】
ここで図6aおよび6bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース500の別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース500は、概してxまたはy方向に配置されているロッドセットを備えた概して2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース500は、2入力ロッドセット502および504、1出力ロッドセット506、および結合領域508を含む。したがって、多重デバイスインターフェース500は、最大2つの異なるイオン源12a〜12bに連結できる。多重デバイスインターフェース500も、概してダイヤモンド形状の四重極構造を有する。しかし、一実施例において、多重デバイスインターフェース500は、概してL字形状を有する2つの多軸ロッド510および512と、概してT字形状を有する2つの多軸ロッド514および516と、直線ロッド518とで作るとよい。多軸ロッド514および516は、それぞれ最上部および最下部のロッドである。多軸ロッド510および512は、多軸ロッド514と516との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド514と516の一方の側に配置される一方、直線ロッド518は、多軸ロッド514と516との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド510および512と反対方向で多軸ロッド514および516の他方の側に配置されている。ロッド510、512、および518は、中間レベルロッドと呼んでもよい。多重デバイスインターフェース500は、多軸ロッド514および516も使用しているために、結合領域508の上方または下方に間隙を有していない。したがって、この領域内には、イオンを多重源インターフェース500から逃がさないようにするためにどんな阻止電極も不要である。他の点では、多重デバイスインターフェース500は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。前と同じように、多軸ロッド510〜516の結合部分に90度の角度を有するよりもむしろ、多重デバイスインターフェース250(図3c参照)に対してなされたように曲率半径を採用することが望ましい。さらに阻止電極およびまたはガス流は、もしあれば不使用入力ロッドセットに対して必要である。
【0054】
場合によっては、解析のために分析物イオンを複数の下流側デバイスへ供給することが必要になる場合がある。この場合、2つ以上の多重極ロッドセットを出力ロッドセットとして構成する。ここで図7を参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース602を有する質量分析計システム600の典型的な好ましい実施形態のブロック線図が示されている。多重デバイスインターフェース602は、イオン集束デバイス14a〜14nを介してイオン源12a〜12nに連結されている。多重デバイスインターフェース602はまた、イオン集束デバイス15a〜15nを介して質量分析装置16a〜16n(または質量分析解析装置として使用する他の適切な下流側部材)にも連結されている。検出器18a〜18nは、使用する質量分析装置16a〜16nのタイプに依存して採用してもよい。なお、集束デバイス14aから4nがオプションであるようにイオン集束デバイス15a〜15nもオプションであるが、それは、多重デバイスインターフェース602のロッドセットがイオン集束を備えている場合があるからである。なお、図7に示した概略構成は、さらに変更が可能である。たとえば、多重デバイスインターフェース602に連結した複数連鎖の下流側部材および1つのイオン源のみであってもよい。単一入力の場合、多重デバイスインターフェース602の結合領域は、結合領域よりもむしろ遷移領域としての役割を果し、そこにおいて、生成されたイオンは、複数連鎖の下流側部材へ送られる。所定のロッドセットは、該ロッドセットを連結したデバイス(すなわち、イオン源または下流側部材)と該所定のロッドセットに印加した電位の値とに依存して、入力ロッドセットまたは出力ロッドセットとして構成するとよい。
【0055】
より効果的な構成として、前述の多重デバイスインターフェースのさまざまな好ましい実施形態を使えば、1つ以上の入力源を1つ以上の下流側デバイスに連結できる。この連結は、出力ロッドセットが適切に下流側デバイスに物理的に確実に連結されるように該出力ロッドセットをできる限り物理的に調節する必要がある以外には、該インターフェースにどんな大幅な変更もする必要なしに、行うことができる。所定のロッドセットに印加した電位によって、他のロッドセットに印加した電位との相関から、所定のロッドセットが入力ロッドセットとして構成されるか、出力ロッドセットとして構成されるかが決定付けられる。複数の出口は、複数の入力源に取り付けたインターフェースのさまざまな好ましい実施形態について説明した方法に若干似た方法で適切な電界を印加することによってゲート制御ができる。
【0056】
いくつかの出力が存在できるとはいえ、各出力が同時に機能する必要はない。多重デバイスインターフェース602の1つの可能な応用例としては、1つ以上のイオン源が2つの異なる質量分析装置にイオンを供給するという場合があってもよい。この応用例は、一方の質量分析装置が単一MS解析装置により適しているのに対して他方の質量分析装置がMS/MS解析により適している場合、特に適用可能である。
【0057】
多重デバイスインターフェースのさまざまな典型的な好ましい実施形態は、さまざまな方法に変更が可能である。たとえば、ロッドセットに対して四重極のみ使用するよりも、六重極または八重極を使用することもできる。たとえば、四重極を六重極または八重極に連結してもよく、六重極を六重極に連結してもよい。これらの構成の典型的な好ましい実施形態をいくつか以下に説明する。全体として、N四重極を2N多重極に連結できる多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態がいくつかあるとよい。
【0058】
ここで図8aおよび8bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース500の構成に対応する多重デバイスインターフェース700の別の好ましい実施形態の端面図および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース700は、ロッドセット702、704、および706を含む。ロッドセット704は、四重極ロッドセットで構築されており、ロッドセット702および706は、六重極ロッドセットで構築されている。参照番号708は、概して多重デバイスインターフェース700の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース700は、直線ロッド710、712、および714と多軸ロッド716、718、720、および722で作るとよく、そしてそこで、多軸ロッド716および720は概してT字形状を有し、および多軸ロッド718および722は、概してL字形状を有する。適切なRF電位を例示の極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。さらに、これらの図に示したとおり類似の方法で、1つの四重極をあらゆる2N多重極に取り付けるとよい。
【0059】
ここで図9aおよび9bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース200の構成に対応する多重デバイスインターフェース800の別の好ましい実施形態の前面および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース800は、ロッドセット802、804、806、および808を含む。参照番号810は、概して多重デバイスインターフェース800の中央にある結合領域の位置を示す。ロッドセット802および806は、四重極ロッドセットで構築し、ロッドセット804および808は、六重極ロッドセットで構築している。一実施例において、多重デバイスインターフェース800は、多軸ロッド812〜824で作るとよく、そしてそこで、多軸ロッド812〜818は概してT字形状を有し、および多軸ロッド820〜824は、概してL字形状を有する(L字形状の多軸ロッドの1つは、図9および9b内に見えない)。適切なRF電位を例示の極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。さらに、これらの図に示したとおり類似の方法で、2つの四重極を八重極に取り付けるとよい。一般に、3つ以上の四重極は、2N多重極に取り付けでき、そしてそこでN>4である。
【0060】
ここで図10aおよび10bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース200の構成に対応する多重デバイスインターフェース900の別の好ましい実施形態の前面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース900は、六重極を介して構築したロッドセット902、904、906、および908を含む。参照番号910は、概して多重デバイスインターフェース900の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース900は、概してL字形状を有する(3つのL字形状の多軸ロッドは、図10aおよび10b内に見えない)多軸ロッド912〜928で作るとよい。適切なRF電位を例示のような極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。
【0061】
ここで図11を参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース300の構成に対応する多重デバイスインターフェース1000の別の好ましい実施形態の上面図が示されている。多重デバイスインターフェース1000は、ロッドセット1002、1004、1006、および1008、ならびにロッドセット1008と直接的に直線状に並んでいて見えない別のロッドセットを含む。参照番号1010は、概して多重デバイスインターフェース1000の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース1000は、概してL字形状を有する多軸ロッド1012〜1022で作るとよい(多軸ロッド1012〜1022のセットと直接的に直線状に並びかつそのセットの鏡像であり、したがって、図11aおよび11bでは見えない)。前と同じように、適切なRF電位を例示のような極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導き、および1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。
【0062】
明らかなように、さまざまな好ましい実施形態において説明した結合領域は、より一般的には、1つ以上の入力ロッドセットからの生成されたイオンが1つ以上の出力ロッドセットへ移動する遷移領域と呼んでもよい。さらに、出力ロッドセットとして構成し、下流側デバイスに連結していないあらゆる多重極ロッドセットに対して阻止電極および/またはガス流を使用するとよいことは明らかである。
【0063】
本明細書において開示した多重デバイスインターフェースのさまざまな好ましい実施形態の物理的配向は、イオン源12a〜12nの同時動作を可能にするが、それは、結合領域214へ向かう入力ロッドセット202〜206のそれぞれの経路をふさぐ物理的部材がまったくないからである。
【0064】
さらに、各入力ロッドセットの入口部分は、取り付けるイオン源に依存するいくつかの特別な物理的構造を含むとよい。たとえば、イオン開口部、スキマーコーンなどは、所定のイオン源に含まれてよく、所定のイオン源に連結する入力ロッドセットの入口部分は、イオン源の物理的配向に依存して再構築するとよい。たとえば、図3cに示す最も左の入力ロッドセットは、円錐形のスキマー内部に装着できるように形成した先細りになったロッドを有する。しかし、入力ロッドセットの入口領域がスキマーコーンなどといった物理的部材を含むとよい別の事例があってもよい。所定のロッドセットの出口領域がいくつかの特別な物理的構造を含むとよいいくつかの事例があってもよい。たとえば、出力ロッドセット208の出口領域が、オリフィスプレートを含んでもよいが、それは、この出力ロッドセット208が、通常、真空状態の下で動作する質量分析装置に直接連結されてもよいからである。オリフィスプレート内の開口部の大きさは、たとえば、直径1〜3mmであるとよい。
【0065】
さらに、別の好ましい実施形態において、異なるロッドセットに対して異なるロッド厚さを形成することがより効果的である事例があってもよい。出力ロッドセットは、いくつかのイオン源からイオンを受け入れるので、さまざまな大きさのロッドならびにさまざまな動作電圧を有してもよい。
【0066】
本明細書で説明した本発明の多重デバイスインターフェースのそれぞれの動作圧力は、各入力ロッドセット内の分析物イオンの衝突冷却にある程度は依存する。本発明者らは、動作圧力の下限は約1mTorrである一方、上限は3Torrほどの高さであってもよいことを発見した。しかし、1Torrの上限がより好ましい。より好ましい圧力範囲は、5〜100mTorrである。この圧力範囲は、さまざまなイオン源によって供給される分析物イオンのタイプとは無関係である。しかし、圧力範囲の低端部は冷却イオンの要求基準によって規定される一方、圧力範囲の高端部は生成されたイオンのRF閉じ込めの要求基準によって規定される。下限圧力は、生成されたイオンをほとんど熱エネルギーの状態に至らせるために選ばれ、それによって、生成されたイオンは、結合領域へおよび次に出力ロッドセットの中へと必要な方向転換をなすことができる。この方向転換は、一定量のガスが多重デバイスインターフェース内に存在することを必要とする衝突冷却を通して行われる。たとえば、1mTorrより小さい圧力を選択すると、生成されたイオンの衝突冷却をもたらすためには、ロッドセットの長さは、1メートルより長くすべきであることが要求されることになると思われ、これは場合によっては極めて実用的でない可能性がある。さらに、2〜3Torrより大きい圧力を選択すると、結果的に、生成されたイオンに対して十分な閉じ込めをもたらさないRF場が生じる可能性がある。
【0067】
本発明の多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態のそれぞれは、1mTorrより高い圧力で機能できるイオン源とともに使用するとよい。このイオン源には、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源などといったすべてのタイプの大気圧(AP)イオン化源、すべてのタイプのエレクトロスプレーイオン源が含まれる。イオン源には、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、および電子衝撃および化学イオン化源も含まれてよい。
【0068】
本発明の多重デバイスインターフェースのそれぞれの場合、ロッドセットに印加するRF電圧の大きさおよび周波数は、伝達されるべきイオン質量対電荷比の範囲に依存する。たとえば、RF四重極において、当業者には一般に知られているとおり、低質量カットオフは、印加するRF電圧の振幅に比例する。好ましい各実施形態の場合、DCオフセット電圧を各ロッドセットのロッドに印加し、イオンをイオン源から結合領域に引き付け、イオンを出力ロッドセットの方へ向ける。通常、ほんの数ボルトDCのオフセット電圧が必要である。オフセット電圧の極性は、生成されたイオンが正であるか負であるかに依存して選択する。
【0069】
本発明の多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態のそれぞれの場合、ロッドセットの各ロッドの直径は、約2mm〜2cmに変更が可能である。各ロッドセットのロッドのために正しく直径を選択する方法は、当業者には明白であろう。
【0070】
本発明の多重デバイスインターフェースは、上記の圧力範囲で動作する多重極またはスタックリングイオンガイドを通常利用するあらゆるタイプの質量分析計に適用できる。該質量分析計には、四重極型、三連四重極型、直線状イオントラップ型、軸注入または直交注入を備えた飛行時間型質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、およびそれらのさまざまなタンデム結合型が含まれる。
【0071】
ここで図12を参照すると、そこには、2つのエレクトロスプレーイオン源を、図3aおよび3bに示す構造を有する多重デバイスインターフェースに連結しかつ同時に動作させたときに記録した質量スペクトルの線分が示されている。蛋白質ミオグロビンの溶液をイオン源の中の1つに加える一方、ペプチドALILTLVSをキャリブラントとして使用して別のイオン源に供給した。その成果物は、本発明の多重デバイスインターフェースが、一方のイオン源によって分析物を供給でき、かつ他方のイオン源によってキャリブラントを同時に供給できる複数イオン源の同時動作を可能にすることを示している。したがって、分析物スペクトルは、より良好な質量精度を求めて同時に較正ができる。図12内のピーク付近の数字は、それぞれ電荷および質量を示す。
【0072】
ここで図13を参照すると、そこには、エレクトロスプレーおよびMALDIイオン源を、図3aおよび3bに示す構造を有する多重デバイスインターフェースに連結しかつ同時に動作させたときに記録した質量スペクトルの線分が示されている。MALDI源は7mTorrの高い圧力で動作し、およびエレクトロスプレーイオン化源は大気圧で動作した。較正溶液は、下流側質量分析装置(すなわち、ロッドセット204に連結されている)と直線状に連結したエレクトロスプレーイオン源の中に入れた。4つのペプチドの混合物は、下流側質量分析装置(すなわち、ロッドセット206に連結されている)の軸線と直交する入力ロッドセットに配置されたMALDI源のプレート上に置いた。第3入力(すなわち、ロッドセット202)は阻止電極に印加した正電位によってふさいだ。図13内のピーク付近の数字は、所与のピークの質量対電荷比(m/z)を示す。
【0073】
添付の特許請求の範囲において画定している本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書において説明しかつ図示した好ましい実施形態にさまざまな変更をなすことが可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、従来の質量分析計システムの典型的な実施形態のブロック線図である。
【図2】図2は、本発明による多重デバイスインターフェースを有する質量分析計システムの典型的な好ましい実施形態のブロック線図である。
【図3a】図3aは、図2の多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図3b】図3bは、図3aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図3c】図3cは、図3aの多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施例の等角図である。
【図4a】図4aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図4b】図4bは、図4aの多重デバイスインターフェースの側面図である。
【図5a】図5aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図5b】図5bは、図5aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図6a】図6aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図6b】図6bは、図6aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図7】図7は、本発明による複数の出力を形成するために別の方式で構成された多重デバイスインターフェースを有する質量分析計システムの別の典型的な好ましい実施形態のブロック線図である。
【図8a】図8aは、1つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の端面図である。
【図8b】図8bは、1つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図9a】図9aは、2つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の正面図である。
【図9b】図9bは、2つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図10a】図10aは、4つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の正面図である。
【図10b】図10bは、4つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図11】図11は、2つの六重極ロッドセットおよび3つの四重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの別の好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図12】図12は、2つのエレクトロスプレーイオン源を図3aおよび図3bに示した構成を有する多重デバイスインターフェースに連結し、同時に動作させたときに記録された質量スペクトルの線分である。
【図13】図13は、エレクトロスプレーおよびMALDIイオン源を図3aおよび図3bに示した構成を有する多重デバイスインターフェースに連結し、同時に動作させたときに記録された質量スペクトルの線分である。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、質量分析計デバイス用の多重デバイスインターフェースに関する。より詳細には、本発明は、質量分析用にいくつかのデバイスを並列構成でともにインターフェースするための多重デバイスインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
既存の質量分析計は、通常、一度に1つのイオン源からのイオンを解析する。例外としては、イオントラップの使用、または内蔵の電子衝撃イオン化源である第2のイオン源を使用するときを含む。多重イオン源を3Dイオントラップに連結する1つの方法は、非特許文献1に記載されているとおり、イオントラップのリング電極内の穴を通して第2イオン源からイオンを噴射させる方法を含む。別の方法は、回転四重極を使う方法を含む。この方法は、3Dイオントラップに限定されず、さまざまな解析装置に対して使用できる。たとえば、一つの例として、非特許文献2に記載されているとおり、3つのイオン源が回転四重極を介してイオントラップに連結されている。しかし、Badmanらによって教示された構成においては、3つのイオン源からイオンをイオントラップに同時に供給できない。限定された場合においては、2次元イオントラップ(または直線状トラップ)を使って2つのイオン源からイオンを受け入れることができ、かつイオン源を同時に動作させることができる場合がある(非特許文献3)。
【0003】
多重入力イオン源に対する別の方法は、非特許文献4に記載されている。Krutchinskyらは、高速で切換可能なMALDIおよびエレクトロスプレーイオン源を備えた質量分析計について述べている。しかし、この計器は、MALDI源であるべきイオン源の1つを必要とする。さらに、該MALDI源は、特別に設計されたMALDI源でなければならない。結論として、2つのイオン源は並列よりもむしろ直列に配列されているので、この計器とともには多重イオン源を同時に使用できない。
【0004】
都合の悪いことには、大部分の既存のイオン源に対しては、1つのイオン源から別のイオン源に変更するとき、たとえば、ESIイオン源とoMALDIイオン源との間で変更するときなどにおいては、手動インターフェースが必要である。手動インターフェースには、普通、真空チャンバーの少なくとも一部を通気する工程が含まれ、その結果、機械を運転状態に戻す前に顕著なポンプ停止時間が生じることになる。
【非特許文献1】Stephenson,J.L and McLuckey,S.A.(1997),Int.J.Mass Spectrom.Ion Processes,162,pp.89−106
【非特許文献2】Badman,E.R.;Chrisman,P.A.and McLuckey,S.A.,2002,Anal.Chem.,74,pp.6237−6243
【非特許文献3】Coon J.J.,Syka,J.E.P.,Schwartz,J.C.,Shabanowitz,J.,and Hunt,D.F.,2004,Int.J.Mass Spectrom.,236,pp.33−42
【非特許文献4】Krutchinsky,A.N.;Zhang,W.and Chait,B.T.,2000,”Rapidly Switchable MALDI and Electrospray Quadrupole−Time−of−Flight Mass Spectrometry for Protein Identification”,J.Am.Soc.Mass Spectrometry,V.11,pp.493−504
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用するための多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットに印加された電位に依存して入力ロッドセットか出力ロッドセットのいずれかとして構成された3つ以上の多重極ロッドセットを含む。入力ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、入口部分は、1つ以上のイオン源の中の1つに連結され、該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、および該生成されたイオンを出口部分へ伝達できる。出力多重極ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、該出口ロッドセットの入口部分は、入力ロッドセットとして構成されている多重極ロッドセットの少なくとも1つの出口部分に隣接し、生成されたイオンを受け入れて出力多重極ロッドセットの出力部分へ伝達する。出力多重極ロッドセットの出口部分は、下流側デバイスに連結可能である。多重極ロッドセットの少なくとも2つは入力ロッドセットとして構成される、または多重極ロッドセットの少なくとも2つは出力ロッドセットとして構成される。
【0006】
多重デバイスインターフェースは、入力ロッドセットとして構成された多重極の出口部分を出力ロッドセットとして構成された多重極の入口部分に連結する遷移領域をさらに含むことができる。
【0007】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、一般的な2次元構造を有することができ、多重極ロッドセットは、該平面のどちらかのディメンジョンに沿って配置される。
【0008】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有し、および多重デバイスインターフェースは、該遷移領域の上方および下方に設置された上部および下部阻止電極をさらに含み、使用において、阻止電位を上部および下部阻止電極に印加してイオンを結合領域から逃がさないようにする。使用中、阻止電位は、0.2〜10ボルトDC内になるように選択できる。
【0009】
場合によっては、隣接する多重極ロッドセット内の隣接するロッドは、多軸ロッドによって形成でき、このような構成において、該多軸ロッドは、2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐ接合部分とを含む。
【0010】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、不使用入力ロッドセットの入口部分に隣接する阻止電極、またはあらゆる不使用出力ロッドセットの出口部分に隣接する阻止電極をさらに含むことができ、このような構成において、使用中、電位を阻止電極に印加してあらゆる生成されたイオンを不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする。使用において、阻止電位は、1〜50ボルトDC以内になるように選択できる。
【0011】
場合によっては、ガス源は、1つ以上のイオン源の中のいずれにも連結されていない入力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの入口部分に連結可能であり、または該ガス源は、下流側デバイスに連結されていない出力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの出口部分に連結され、このような構成において、使用において、ガス源は、阻止ガス流を形成してあらゆる生成されたイオンを不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする。
【0012】
場合によっては、多重デバイスは、4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、ダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0013】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットのそれぞれ内に上部および下部のロッドを形成するために、概して十字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、該上部および下部の多軸ロッドの十字形状によって画定された各4半分内で、かつ該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドとを含み、このような構成において、各中間レベル多軸ロッドは、2つのロッド部分と、該2つのロッド部分をつなぐための1つの結合部分とを含む。
【0014】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、3つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、ダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0015】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、多重極ロッドセットのそれぞれ内に上部および下部のロッドを形成するために、概してT字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、該上部および下部の多軸ロッドのT字形状によって画定された各4半分内で、かつ該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、各中間レベル多軸ロッドが2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐための結合部分とを含む該中間レベル多軸ロッドと、該中間レベル多軸ロッドと反対側で該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された中間レベル直線ロッドであって、2つの該多重極ロッドセットの一部である該中間レベル直線ロッドとを含む。
【0016】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、3次元構造の3つの面のいずれかに沿って配置されている多重極ロッドセットを備えた該3次元構造を有する。
【0017】
場合によっては、多重デバイスインターフェースは、6つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは、正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有する。
【0018】
そのような場合には、互いに隣接する多重極ロッドセット内の隣接するロッドは、概してL字形状を有する多軸によって形成でき、このような構成において、多軸ロッドは、2つのロッド部分と該2つのロッド部分をつなぐための結合部分とを含む。
【0019】
場合によっては、使用中、多重デバイスインターフェース内部の圧力は、1mTorr〜3Torrの範囲内であるとよい。
【0020】
場合によっては、使用中、多重デバイスインターフェース内部の圧力は、1mTorr〜1Torrの範囲内であるとよい。
【0021】
場合によっては、多重極ロッドセットは四重極ロッドセットおよび隣接する六重極ロッドセットを含む。
【0022】
場合によっては、多重極ロッドセットは隣接する六重極ロッドセットを含む。
【0023】
1つ以上のイオン源のそれぞれは、エレクトロスプレーイオン化イオン源、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、電子衝撃イオン源、または化学イオン化イオン源を含むことができる。
【0024】
結合部分を含む好ましい実施形態に対して、結合部分は曲率半径を有する湾曲部を含むことができる。
【0025】
別の態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、2つ以上のイオン源を下流側デバイスにインターフェースするために質量分析において使用される多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、入口部分および出口部分を有する2つ以上の入力経路であって、各入力経路の入口部分は複数のイオン源の中の1つに連結され、該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、該生成されたイオンを出口部分へ伝達する該2つ以上の入力経路と、生成されたイオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域であって、入力ロッドセットのそれぞれの出口部分に隣接して配置される該結合領域と、入口部分および出口部分を有する出力経路であって、出口経路の入口部分は結合領域に隣接して結合イオンを受け入れ、および該結合イオンを出力経路の出口部分へ伝達し、および出力経路の出口部分は下流側デバイスに連結可能である該出力経路とを含む。
【0026】
さらなる態様において、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態は、1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために質量分析において使用される多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、3つ以上の経路および遷移領域を含む。複数のけいろは、入力経路か出力経路か不使用経路かのいずれかとして構成される。入力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは遷移領域に連結されて別々の経路を形成する。出力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは遷移領域に連結されかつ下流側デバイスの中の1つに連結されできる。使用中、入力経路として構成されている複数の経路のそれぞれは、異なるイオン源にれんけつされて該イオン源から生成されたイオンを受け入れ、および該生成されたイオンを遷移領域に導き、そしてそこで、生成されたイオンは出力経路として構成されかつ下流側デバイスの中の1つに連結可能である複数の経路の中の1つに伝達される。
【0027】
本発明をより良く理解するために、および如何に効果的に実行できるかをより明確に示すために、単なる例として、本発明の少なくとも1つの好ましい実施形態を示す添付の図面をここで参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図を単純明快にするために、図に示した部品を必ずしも縮尺どおりに描いていないことは言うまでもない。たとえば、いくつかの部品の寸法をはっきり分かるように他の部品に対して誇張する場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の部品を示すために図面の中で参照番号を繰り返す場合がある。さらに、本発明の完璧な理解を与えるために多数の具体的で明確な詳細を述べる。しかし、当業者には明らかなとおり、本発明は、これらの特定の詳細なしに実施が可能である。別の例において、本発明を不明瞭にしないために、良く知られた方法、手順、および部品については詳細に説明していない。場合によっては、さまざまな部品に対する寸法および公差を提供するつもりである。しかし、これは、本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ本発明の好ましい実施形態を機能させるために詳細を提供するものである。
【0029】
全体として、本発明は、質量分析解析のための多重デバイスの構成を可能にしかつ同時動作を可能にする多重デバイスインターフェースを提供するものである。一態様において、本発明のさまざまな好ましい実施形態は、いくつかの異なったイオン源から入力サンプルを受け入れ、および複数の入力サンプルを下流側デバイス、たとえば、質量分析計などへ供給できる多重デバイスインターフェースを提供する。多重デバイスインターフェースは、さまざまなイオン源が同時に動作できるように構成できる。多重デバイスインターフェースは、さまざまなイオン源の間での切換のために手動操作を必要としないで機能できる。したがって、質量分析解析工程が、イオン源の変更またはさまざまな解析サンプルのさまざまなイオン源への詰め込みのために停止される必要がないので、本発明の多重デバイスインターフェースによって、全解析時間は低減される。むしろ、さまざまな解析サンプルを最初にさまざまなイオン源の中に詰め込むことができ、次に、質量分析解析工程を開始すると同時に、別のイオン源を順次または並行式に動かすことができる。別の態様において、本発明のさまざまな好ましい実施形態では、1つ以上のイオン源から入力サンプルを受け入れ、該入力サンプルを2つ以上の下流側デバイスに並行または順次に供給できる。
【0030】
ここで図1を参照すると、そこには、イオン源12、イオン集束デバイス14、質量分析装置16、および検出器18を含む、従来の質量分析計システム10の典型的な実施形態のブロック線図が示されている。当業者には一般に公知のとおり、質量分析計システム10には、さまざまなポンプおよび電源装置(不図示)が使用される。
【0031】
イオン源12は、解析を必要とする追跡物体からの分析物イオンを供給する。エレクトロスプレーイオン源、MALDIイオン源など多様なデバイスをイオン源12として使用できる。一般に四重極イオンガイドであるイオン集束部材デバイス14は、イオン源12から分析物イオンを受け入れ、集束し、および該イオンを質量分析装置16へ導く。四重極イオンガイドは、次の下流側デバイスへ分析物イオンを導くために適切な大きさおよび周波数(一般に1MHz)を有するRF電圧がかけられている4つの細長い導体ロッドを含む。RF場は、イオンの径方向閉じ込めを行う電位井戸を形成する。イオン集束デバイス14は、高圧(たとえば、mTorr領域)で動作でき、衝突冷却および減圧などの他のタスクを実行できる。六重極イオンガイド、八重極イオンガイド、またはスタックリングなどといったイオンガイドのための他の構成も使うことができる。
【0032】
本明細書で扱う好ましい実施形態のそれぞれにおいて、イオン集束ガイド14は、より一般には、分析物イオンを処理する「イオン調整デバイス」であると考えてもよい。たとえば、イオン調整デバイスは、関心のある分析物イオンからフラグメントイオンを生成する衝突室とこれらのフラグメントイオンを集束し、下流側質量分析装置16へ送るイオンガイドとの両方の結合体を含んでもよい。
【0033】
質量分析装置16は、さまざまな質量対電荷比を有するイオンを選択する質量フィルタであってもよい。このフィルタは、関心のある質量範囲に依存して質量分析装置16に印加されるDCまたはRF電圧のパラメータを変更することによって実現される。あるいは、質量分析装置16は、直線状四重極質量分析装置、直線状または反射TOF質量分析装置、磁気領域解析装置などといったあらゆる適切な質量分析装置であるとよい。つぎに、選択されたイオンは、検出および測定のために検出器18へ送られる。検出器としては、当業者には公知のとおり、さまざまなデバイスが使われてよい。
【0034】
質量分析計に使用され、従って、RFおよびDC両方の電圧が印加される四重極には、厳密な長さおよび機械加工要求基準が必要である。たとえば、これらのロッドは、20cm以上の長さ、0.5マイクロメートルより良い粗さ公差、および2.5マイクロメートルより良い真直度公差を有する金属化セラミック製である。しかし、通常RF電圧のみ印加されるイオンガイドとして動作する四重極は、ゆるい機械加工要求基準を有し、2.4cmという短さであってもよい。
【0035】
図1に示した従来の好ましい実施形態は、別のイオン源を連結する必要があるとき、質量分析計システム10全体を遮断しなければならないので、最良の構成ではない単一イオン源12に連結されている。ここで図2を参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース102を有する質量分析計システム100の典型的な好ましい実施形態のブロック線図が示されている。質量分析計システム100は、いくつかのイオン源12a〜12nおよびイオン集束デバイス14a〜14nが多重デバイスインターフェース102に連結されていることを除けば、質量分析計システム100と類似である。さらに、多重デバイスインターフェース102は、イオン集束デバイス15に連結されている。システム100の残りの部分は、システム10と類似である。これらの部品のそれぞれは、当業者には公知である技術によって互いに連結されている。たとえば、これらのデバイスのいくつかは、互いにボルト締めされてもよい。多重デバイスインターフェース102では、複数イオン源12a〜12nの同時動作が可能であり、およびさまざまなイオン源が全体としてインターフェース圧力などといった類似の環境下で動作するという前提で、同時に使えるイオン源の種類は限定されない。イオン集束デバイス14a〜14nおよび15は、いくつかの好ましい実施形態においては、多重デバイスインターフェース102がイオン集束も行えるので、オプションである。たとえば、多重極を多重デバイスインターフェース102に使う場合、次に多重極の長さは、十分なイオン冷却および集束を行うに十分な長さになるように選択するとよい。ロッドセットの長さは、動作圧力と生成されたイオンの初期エネルギー(典型的な設計方法は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第4,963,736号に記載されている)とに依存する。
【0036】
ここで図3aおよび3bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース200の好ましい一つの典型的な実施形態の概略の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース200は、3つの入力ロッドセット202、204、および206と、1つの出力ロッドセット208とを含む。入力および出力ロッドセットを入力および出力多重極ロッドセットと呼んでもよい。概して言えば、入力ロッドセットを入口通路であると考え、出力ロッドセットを出口通路であると考えてもよい。多重デバイスインターフェース200は、ロッドセット202、204、206、および208が、概してxまたはy方向に配置されているので、若干平面すなわち2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース200は、平面の形状または何か他の適切な形状であってもよい、組になった電極210および212を含み、分析物イオンを多重デバイスインターフェース200から逃がさないようにしている(図3aは、インターフェース200の構造を示すために電極210を示していない)。出力ロッドセット208は、この例ではイオン集束デバイス14である下流側デバイスに連結されている。多重デバイスインターフェース200は、ハウジング(不図示)の内部に密閉されている。
【0037】
多重デバイスインターフェース200の各ロッドセットは、概して正方形形状の四重極構造を有する。この構造は、ロッドセット206を眺めることによって図3b内で見ることができる。互いに隣接しているロッドセットの間に間隙を残すことは可能である。しかし、一実施例において、隣接するロッドには、同一電位が印加されていて、そのため、隣接するロッドは、図3aに示すとおり、互いに接触してもよい。
【0038】
別の実施例において、複数の長手軸(この例においては、2軸)を有する多軸ロッドを使って、隣接する組になったロッドセット202、204、206、および208のために2つの四重極ロッドを設けてもよい。用語多軸は、多軸ロッドが2つのロッド部分および1つの結合部分を有することを指す。結合部分は2つのロッド部分を互いに連結する。各ロッド部分は実質的には直線状であり、ロッド部分の長手軸は互いに対して同一線上にない。この特定の例において、多軸ロッドは、一般的な2次元構造を備えたL字形状を有する。L字形状ロッドの結合部分は、約90度の湾曲部を有してよい。あるいは、該湾曲部は、滑らかな曲率半径を含むとよい(図3c参照)。湾曲度はシミュレーションすなわち実験を通して決定するとよい。湾曲度は、結合領域210内の入力ロッドセット202、204、および206の出口付近の電磁場と、出力ロッドセット208の入口付近の電磁場との間に滑らかな遷移を与えるために選択されることが望ましい。
【0039】
この典型的な好ましい実施形態においては、3つのイオン源12a〜12cを入力ロッドセット202〜06の入口領域に連結できる。図3a内の矢印は、イオンの流れ方向を示す。動作中、イオン源12a〜12cは、イオンを生成し、適切なRF電位が入力ロッドセット202〜206に印加され、分析物イオンは各入力ロッドセット202〜206の入口領域から出口領域へ導かれる。次に分析物イオンは、さまざまなイオン源12a〜2cからの分析物イオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域214へ導かれる。次に結合領域214内の結合イオンは、出力ロッドセット208の入口部分から出口部分へ、それから隣接する下流側デバイスへと移動する。
【0040】
所定のロッドセットの軸線に沿ったイオンの動きは、ガス流、イオン拡散、軸線に沿ってかけられた電場、または空間電荷に起因している可能性がある。軸方向場は、ロッドセットの外側に配置された電極から浸透した場によって、または参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,111,250号に記載のさまざまな手段によって生成できる。イオンを移動させるこれらの方法を使うことにより、確実にイオンを入力および出力ロッドセットを通して希望する方向へ効果的かつ迅速に移動させることができる。
【0041】
全体として、イオンの流れは、各ロッドセットの入口および出口における電場および/またはガス流によって制御される。イオンは、RF場によって生成される実効電位によっても径方向に閉じ込められる。ロッドセット202〜208に印加するRF電位の大きさおよび周波数は、各イオン源12a〜12cによって生成された分析物イオンの性質に依存して選択が可能である。RF電位は、「−」および「+」符号によってロッドがRF電源装置の特定の端子に連結されていることを示した図3aおよび3bに示したとおり、所定のロッドセット内の組になった隣接するロッドに印加される。それに加えて、所定のロッドセットの入口または出口においては、生成されたイオンが移動する方向も画定する数ボルトまたは数十ボルトの電圧降下がある。たとえば、ロッドセット202からのイオンは、いくらかロッドセット206の出口領域に入る可能性があるが、これらのイオンは、ロッドセット206の入口領域から出ることはない。その代わり、これらの「方向の定まらない」イオンの移動方向は、一般に反転し、該方向の定まらないイオンは、一般にイオン拡散および電圧降下によって最後には結合領域214の方へ移動することになる。さらに、別の場合においては、入力ロッドセット204の入口において、エレクトロスプレーイオン源などの大気圧イオン源があるとよく、該大気圧イオン源は、ロッドセット204と208との共通軸線に沿ってガスの弱い流れを形成し、イオンを入力ロッドセット202および/または206からロッドセット208の出口領域に向かう方向に導く効果がある。約1mTorrより大きい圧力の維持、または方向性流れの生成のいずれかのために、ガス流を意図的に導入してもよい。ポンプを配置する場所は、当業者には公知であろう。
【0042】
入力ロッドセット202〜206および出力ロッドセット208が互いに出会う結合領域には間隙があり、および該領域ではRF場がより弱いので、分析物イオンを該結合領域214から逃がさないようにするために組になった阻止電極すなわち阻止プレート210および212が追加されている。阻止電極210および212は、ロッドセット202〜208の上部および下部ロッドそれぞれの上面および下面から約1〜50mm、より好ましくは約1〜10mmだけ垂直方向に間隔を置いて配置されるとよい。
【0043】
イオン源が入力ロッドセット202〜206の中の1つに連結されていない場合、阻止プレートまたは他の形式の電極の使用も可能である。たとえば、イオン源を入力ロッドセット202に連結しない場合、次に、他のイオン源からのイオンを不使用入力ロッドセット202の入口から逃がさないようにするために追加の電極すなわち阻止プレート(不図示)を入力ロッドセット202の入口に極めて接近して配置し、および該阻止プレートに適切な電位を印加するとよい。阻止電極は、不使用入力ロッドセットの入口の内側に挿入したロッドまたはプレートによって構築してもよい。ロッドまたはプレートは、不使用入力ロッドセットのロッド間に垂直または水平に、または十字に配置してもよい。分析物イオンを衝突冷却させることを想定した場合、場合によっては、1VDCで十分に不使用入力ロッドセットの入口を阻止できる。しかし、大きい電圧、たとえば、5〜50VDCを阻止プレートに印加してもよい。あるいは、不使用入力ロッドセットに対してガス流を単独または阻止電極との組合せのいずれかで使用して、イオンを多重デバイスインターフェース102から逃がさないようにしてもよい。
【0044】
不使用入力ロッドセットの入口において電極に印加した阻止電位は、結合領域を通り抜けるイオンの動きに影響を与えるほど入力ロッドセットの中に十分深く浸透しない。このため、不使用入力ロッドセットの入口において約1〜20Vまたはさらに50VDCの広範囲の電圧を阻止電極に印加できる。他方では、阻止プレート210および212からの電位が結合領域214の中に浸透し、およびその影響が大きすぎる場合は、結合領域214を通り抜けるイオン運動を阻止する電位障壁を生成するとよい。したがって、阻止プレート210および212に印加する電圧範囲は一般に比較的小さく、すなわち0.2〜5V、そして、結合領域214の大きさと、阻止プレートがどれだけ結合領域214の上部および下部に近いかとに依存する場合においては多分10VDCまでになる。
【0045】
ここで図3cを参照すると、そこには多重デバイスインターフェース250の典型的な実施例の等角図が示されている。多重デバイスインターフェース250は、阻止プレート252、支持部材254〜260、および連結ポート262を含む。他の連結ポート(不図示)もさまざまなイオン源に連結するために含まれている。多重デバイスインターフェース250は、多重デバイスインターフェース250の内部構造を見ることができるように、図3c内には示さなかったハウジングも含む。連結ポート262は、多重デバイスインターフェース250を下流側デバイスに連結するために使われる。支持部材254〜260は、多重デバイスインターフェース250用のハウジングを取り付けるために使用される。部材262は、下流側デバイスの一部を示す。
【0046】
この典型的な実施例において、一般的な2次元L字形状を有する多軸ロッドは、2つの隣接するロッドセットに対して1つのロッドを形成するために使用される。参照ラベルは、概してロッドセット202〜208に属するロッドを示す。各多軸ロッドは、結合部分を有する(簡潔にするために、結合部分の中の1つ266だけを示す)。各多軸ロッドのロッド部分は、ロッドを所定位置に保持するために支持部材254〜260の内部にある対応する溝またはブラケットに係合するフランジ(不図示)を備えているとよい。たとえば、フランジ264は、ロッドセット204のロッドの中の1つにラベルが付けられている。あるいは、フランジはロッド上に設けられなくてもよく、支持部材254〜260の内側部分がロッドの外側表面を収容できる溝形状を有してもよい。いくつかのロッドは、イオン源に対する特定配向を物理的に収容できる先細りになった部分を有してもよい。
【0047】
本発明者らは、多軸ロッドの結合部分268の鋭い端部すなわち湾曲部を除去すると、入力ロッドセット202〜206の出口付近、出力ロッドセット208の入力付近、および結合領域214において電場力線が「滑らかに」保たれる効果があり、したがって、これらの領域において「滑らかな」イオン運動が保持されることを発見した。したがって、多軸ロッドは、一般に結合部分に曲率半径を採用するとよい。他方、大き過ぎる曲率半径を採用することは、大きくなりすぎる可能性がある間隙を結合領域214内に作り出す可能性があり、および各イオンロッドセット202〜208の軸線近くにイオンを保持する径方向電位井戸を弱める可能性があるので、好ましくない場合がある。
【0048】
ここで図4aおよび4bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース300の別の典型的な好ましい実施形態の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース300は、概してx、y、またはz方向に配置されているロッドセットを備えた概して3次元構造を有する。多重デバイスインターフェース300は、5入力ロッドセット302〜310、1出力ロッドセット312、および結合領域314を含む。したがって、多重デバイスインターフェース300は、最高5つの異なるイオン源12a〜12eを連結できる。多重デバイスインターフェース300には各x−y−z方向に沿って入力ロッドセットがあるので、多重デバイスインターフェース200に対して存在したような間隙は結合領域314の上方/下方にまったくなく、およびしたがってこの領域を覆うどんな電極プレートもまったく不要である。しかも、多重デバイスインターフェース300の構造は、各ロッドセットが概して正方形形状の四重極構造を有する点で多重デバイスインターフェース200の構造と若干似ている。他の点では、多重デバイスインターフェース300は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。たとえば、阻止電極(不図示)は、やはり各不使用入力ロッドセットに必要である。さらに、隣接するロッドセットのロッド間に90度の角度を採用するよりもむしろ、望ましくは多重デバイスインターフェース250(図3c参照)に対してなされたように曲率半径を使う方がよい。
【0049】
さらに、隣接するロッドセットのロッドは互いに連結されるとよい。たとえば、ロッドセット302〜310に対して、ロッド302b、304a、および308bは、互いに連結されるとよい。この連結を実現するためには、4つの直線ロッド部分および単一結合部分を備えた多軸ロッドを使用するとよい。
【0050】
ここで図5aおよび5bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース400の別の典型的な好ましい実施形態の概略のそれぞれ上面および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース400は、概してxまたはy方向に配置されているロッドセットを備えた概して2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース400は、3入力ロッドセット402〜406、1出力ロッドセット408、および結合領域410を含む。したがって、多重デバイスインターフェース400は、最大3つの異なるイオン源12a〜12cに連結できる。多重デバイスインターフェース400の各ロッドセットは、概してダイヤモンド形状の四重極構造も有する(この構造は、図5bの入力ロッドセット406の端部断面を観察することによって見ることができる)。
【0051】
一実施例において、多重デバイスインターフェース400は、概してL字形状である多軸ロッド412〜418と、概してX字形状すなわち十字形状である多軸ロッド420および422で作るとよい。多軸ロッド420および422は、それぞれ最上部および最下部ロッドである。多軸ロッド412〜418は、多軸ロッド420と422との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド420および422によって画定された4つの四半分内に配置されている。ロッド412〜418は、中間レベルロッドと呼んでもよい。前と同じように、多軸ロッド412〜422のそれぞれの結合部分の湾曲部は、多重源インターフェース250(図3c参照)内で使用したような曲率半径を有するとよい。
【0052】
多重デバイスインターフェース400は、十字形状の多軸ロッド420および422を使用しているために、結合領域410の上方または下方に間隙を有していない。したがって、この領域内には、イオンを多重デバイスインターフェース400から逃がさないようにするためにどんな阻止電極も不要である。しかし、阻止電極は、不使用である入力ロッドセットがもしあればやはり必要になる。他の点では、多重デバイスインターフェース400は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。
【0053】
ここで図6aおよび6bを参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース500の別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース500は、概してxまたはy方向に配置されているロッドセットを備えた概して2次元構造を有する。多重デバイスインターフェース500は、2入力ロッドセット502および504、1出力ロッドセット506、および結合領域508を含む。したがって、多重デバイスインターフェース500は、最大2つの異なるイオン源12a〜12bに連結できる。多重デバイスインターフェース500も、概してダイヤモンド形状の四重極構造を有する。しかし、一実施例において、多重デバイスインターフェース500は、概してL字形状を有する2つの多軸ロッド510および512と、概してT字形状を有する2つの多軸ロッド514および516と、直線ロッド518とで作るとよい。多軸ロッド514および516は、それぞれ最上部および最下部のロッドである。多軸ロッド510および512は、多軸ロッド514と516との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド514と516の一方の側に配置される一方、直線ロッド518は、多軸ロッド514と516との間で垂直方向の中間、かつ多軸ロッド510および512と反対方向で多軸ロッド514および516の他方の側に配置されている。ロッド510、512、および518は、中間レベルロッドと呼んでもよい。多重デバイスインターフェース500は、多軸ロッド514および516も使用しているために、結合領域508の上方または下方に間隙を有していない。したがって、この領域内には、イオンを多重源インターフェース500から逃がさないようにするためにどんな阻止電極も不要である。他の点では、多重デバイスインターフェース500は、多重デバイスインターフェース200と同様に動作する。前と同じように、多軸ロッド510〜516の結合部分に90度の角度を有するよりもむしろ、多重デバイスインターフェース250(図3c参照)に対してなされたように曲率半径を採用することが望ましい。さらに阻止電極およびまたはガス流は、もしあれば不使用入力ロッドセットに対して必要である。
【0054】
場合によっては、解析のために分析物イオンを複数の下流側デバイスへ供給することが必要になる場合がある。この場合、2つ以上の多重極ロッドセットを出力ロッドセットとして構成する。ここで図7を参照すると、そこには、本発明による多重デバイスインターフェース602を有する質量分析計システム600の典型的な好ましい実施形態のブロック線図が示されている。多重デバイスインターフェース602は、イオン集束デバイス14a〜14nを介してイオン源12a〜12nに連結されている。多重デバイスインターフェース602はまた、イオン集束デバイス15a〜15nを介して質量分析装置16a〜16n(または質量分析解析装置として使用する他の適切な下流側部材)にも連結されている。検出器18a〜18nは、使用する質量分析装置16a〜16nのタイプに依存して採用してもよい。なお、集束デバイス14aから4nがオプションであるようにイオン集束デバイス15a〜15nもオプションであるが、それは、多重デバイスインターフェース602のロッドセットがイオン集束を備えている場合があるからである。なお、図7に示した概略構成は、さらに変更が可能である。たとえば、多重デバイスインターフェース602に連結した複数連鎖の下流側部材および1つのイオン源のみであってもよい。単一入力の場合、多重デバイスインターフェース602の結合領域は、結合領域よりもむしろ遷移領域としての役割を果し、そこにおいて、生成されたイオンは、複数連鎖の下流側部材へ送られる。所定のロッドセットは、該ロッドセットを連結したデバイス(すなわち、イオン源または下流側部材)と該所定のロッドセットに印加した電位の値とに依存して、入力ロッドセットまたは出力ロッドセットとして構成するとよい。
【0055】
より効果的な構成として、前述の多重デバイスインターフェースのさまざまな好ましい実施形態を使えば、1つ以上の入力源を1つ以上の下流側デバイスに連結できる。この連結は、出力ロッドセットが適切に下流側デバイスに物理的に確実に連結されるように該出力ロッドセットをできる限り物理的に調節する必要がある以外には、該インターフェースにどんな大幅な変更もする必要なしに、行うことができる。所定のロッドセットに印加した電位によって、他のロッドセットに印加した電位との相関から、所定のロッドセットが入力ロッドセットとして構成されるか、出力ロッドセットとして構成されるかが決定付けられる。複数の出口は、複数の入力源に取り付けたインターフェースのさまざまな好ましい実施形態について説明した方法に若干似た方法で適切な電界を印加することによってゲート制御ができる。
【0056】
いくつかの出力が存在できるとはいえ、各出力が同時に機能する必要はない。多重デバイスインターフェース602の1つの可能な応用例としては、1つ以上のイオン源が2つの異なる質量分析装置にイオンを供給するという場合があってもよい。この応用例は、一方の質量分析装置が単一MS解析装置により適しているのに対して他方の質量分析装置がMS/MS解析により適している場合、特に適用可能である。
【0057】
多重デバイスインターフェースのさまざまな典型的な好ましい実施形態は、さまざまな方法に変更が可能である。たとえば、ロッドセットに対して四重極のみ使用するよりも、六重極または八重極を使用することもできる。たとえば、四重極を六重極または八重極に連結してもよく、六重極を六重極に連結してもよい。これらの構成の典型的な好ましい実施形態をいくつか以下に説明する。全体として、N四重極を2N多重極に連結できる多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態がいくつかあるとよい。
【0058】
ここで図8aおよび8bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース500の構成に対応する多重デバイスインターフェース700の別の好ましい実施形態の端面図および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース700は、ロッドセット702、704、および706を含む。ロッドセット704は、四重極ロッドセットで構築されており、ロッドセット702および706は、六重極ロッドセットで構築されている。参照番号708は、概して多重デバイスインターフェース700の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース700は、直線ロッド710、712、および714と多軸ロッド716、718、720、および722で作るとよく、そしてそこで、多軸ロッド716および720は概してT字形状を有し、および多軸ロッド718および722は、概してL字形状を有する。適切なRF電位を例示の極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。さらに、これらの図に示したとおり類似の方法で、1つの四重極をあらゆる2N多重極に取り付けるとよい。
【0059】
ここで図9aおよび9bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース200の構成に対応する多重デバイスインターフェース800の別の好ましい実施形態の前面および側面図が示されている。多重デバイスインターフェース800は、ロッドセット802、804、806、および808を含む。参照番号810は、概して多重デバイスインターフェース800の中央にある結合領域の位置を示す。ロッドセット802および806は、四重極ロッドセットで構築し、ロッドセット804および808は、六重極ロッドセットで構築している。一実施例において、多重デバイスインターフェース800は、多軸ロッド812〜824で作るとよく、そしてそこで、多軸ロッド812〜818は概してT字形状を有し、および多軸ロッド820〜824は、概してL字形状を有する(L字形状の多軸ロッドの1つは、図9および9b内に見えない)。適切なRF電位を例示の極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。さらに、これらの図に示したとおり類似の方法で、2つの四重極を八重極に取り付けるとよい。一般に、3つ以上の四重極は、2N多重極に取り付けでき、そしてそこでN>4である。
【0060】
ここで図10aおよび10bを参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース200の構成に対応する多重デバイスインターフェース900の別の好ましい実施形態の前面図および側面図がそれぞれ示されている。多重デバイスインターフェース900は、六重極を介して構築したロッドセット902、904、906、および908を含む。参照番号910は、概して多重デバイスインターフェース900の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース900は、概してL字形状を有する(3つのL字形状の多軸ロッドは、図10aおよび10b内に見えない)多軸ロッド912〜928で作るとよい。適切なRF電位を例示のような極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導く。1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。阻止電極および/またはガス流もあらゆる不使用入力または出力ロッドセットに対して使用するとよい。
【0061】
ここで図11を参照すると、そこには、多重デバイスインターフェース300の構成に対応する多重デバイスインターフェース1000の別の好ましい実施形態の上面図が示されている。多重デバイスインターフェース1000は、ロッドセット1002、1004、1006、および1008、ならびにロッドセット1008と直接的に直線状に並んでいて見えない別のロッドセットを含む。参照番号1010は、概して多重デバイスインターフェース1000の中央にある結合領域の位置を示す。一実施例において、多重デバイスインターフェース1000は、概してL字形状を有する多軸ロッド1012〜1022で作るとよい(多軸ロッド1012〜1022のセットと直接的に直線状に並びかつそのセットの鏡像であり、したがって、図11aおよび11bでは見えない)。前と同じように、適切なRF電位を例示のような極性で印加し、生成されたイオンを1つ以上の出力ロッドセットへ導き、および1つ以上のロッドセット内にガス流を使って、イオン移送を容易にするとよい。
【0062】
明らかなように、さまざまな好ましい実施形態において説明した結合領域は、より一般的には、1つ以上の入力ロッドセットからの生成されたイオンが1つ以上の出力ロッドセットへ移動する遷移領域と呼んでもよい。さらに、出力ロッドセットとして構成し、下流側デバイスに連結していないあらゆる多重極ロッドセットに対して阻止電極および/またはガス流を使用するとよいことは明らかである。
【0063】
本明細書において開示した多重デバイスインターフェースのさまざまな好ましい実施形態の物理的配向は、イオン源12a〜12nの同時動作を可能にするが、それは、結合領域214へ向かう入力ロッドセット202〜206のそれぞれの経路をふさぐ物理的部材がまったくないからである。
【0064】
さらに、各入力ロッドセットの入口部分は、取り付けるイオン源に依存するいくつかの特別な物理的構造を含むとよい。たとえば、イオン開口部、スキマーコーンなどは、所定のイオン源に含まれてよく、所定のイオン源に連結する入力ロッドセットの入口部分は、イオン源の物理的配向に依存して再構築するとよい。たとえば、図3cに示す最も左の入力ロッドセットは、円錐形のスキマー内部に装着できるように形成した先細りになったロッドを有する。しかし、入力ロッドセットの入口領域がスキマーコーンなどといった物理的部材を含むとよい別の事例があってもよい。所定のロッドセットの出口領域がいくつかの特別な物理的構造を含むとよいいくつかの事例があってもよい。たとえば、出力ロッドセット208の出口領域が、オリフィスプレートを含んでもよいが、それは、この出力ロッドセット208が、通常、真空状態の下で動作する質量分析装置に直接連結されてもよいからである。オリフィスプレート内の開口部の大きさは、たとえば、直径1〜3mmであるとよい。
【0065】
さらに、別の好ましい実施形態において、異なるロッドセットに対して異なるロッド厚さを形成することがより効果的である事例があってもよい。出力ロッドセットは、いくつかのイオン源からイオンを受け入れるので、さまざまな大きさのロッドならびにさまざまな動作電圧を有してもよい。
【0066】
本明細書で説明した本発明の多重デバイスインターフェースのそれぞれの動作圧力は、各入力ロッドセット内の分析物イオンの衝突冷却にある程度は依存する。本発明者らは、動作圧力の下限は約1mTorrである一方、上限は3Torrほどの高さであってもよいことを発見した。しかし、1Torrの上限がより好ましい。より好ましい圧力範囲は、5〜100mTorrである。この圧力範囲は、さまざまなイオン源によって供給される分析物イオンのタイプとは無関係である。しかし、圧力範囲の低端部は冷却イオンの要求基準によって規定される一方、圧力範囲の高端部は生成されたイオンのRF閉じ込めの要求基準によって規定される。下限圧力は、生成されたイオンをほとんど熱エネルギーの状態に至らせるために選ばれ、それによって、生成されたイオンは、結合領域へおよび次に出力ロッドセットの中へと必要な方向転換をなすことができる。この方向転換は、一定量のガスが多重デバイスインターフェース内に存在することを必要とする衝突冷却を通して行われる。たとえば、1mTorrより小さい圧力を選択すると、生成されたイオンの衝突冷却をもたらすためには、ロッドセットの長さは、1メートルより長くすべきであることが要求されることになると思われ、これは場合によっては極めて実用的でない可能性がある。さらに、2〜3Torrより大きい圧力を選択すると、結果的に、生成されたイオンに対して十分な閉じ込めをもたらさないRF場が生じる可能性がある。
【0067】
本発明の多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態のそれぞれは、1mTorrより高い圧力で機能できるイオン源とともに使用するとよい。このイオン源には、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源などといったすべてのタイプの大気圧(AP)イオン化源、すべてのタイプのエレクトロスプレーイオン源が含まれる。イオン源には、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、および電子衝撃および化学イオン化源も含まれてよい。
【0068】
本発明の多重デバイスインターフェースのそれぞれの場合、ロッドセットに印加するRF電圧の大きさおよび周波数は、伝達されるべきイオン質量対電荷比の範囲に依存する。たとえば、RF四重極において、当業者には一般に知られているとおり、低質量カットオフは、印加するRF電圧の振幅に比例する。好ましい各実施形態の場合、DCオフセット電圧を各ロッドセットのロッドに印加し、イオンをイオン源から結合領域に引き付け、イオンを出力ロッドセットの方へ向ける。通常、ほんの数ボルトDCのオフセット電圧が必要である。オフセット電圧の極性は、生成されたイオンが正であるか負であるかに依存して選択する。
【0069】
本発明の多重デバイスインターフェースの好ましい実施形態のそれぞれの場合、ロッドセットの各ロッドの直径は、約2mm〜2cmに変更が可能である。各ロッドセットのロッドのために正しく直径を選択する方法は、当業者には明白であろう。
【0070】
本発明の多重デバイスインターフェースは、上記の圧力範囲で動作する多重極またはスタックリングイオンガイドを通常利用するあらゆるタイプの質量分析計に適用できる。該質量分析計には、四重極型、三連四重極型、直線状イオントラップ型、軸注入または直交注入を備えた飛行時間型質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FTICR)、およびそれらのさまざまなタンデム結合型が含まれる。
【0071】
ここで図12を参照すると、そこには、2つのエレクトロスプレーイオン源を、図3aおよび3bに示す構造を有する多重デバイスインターフェースに連結しかつ同時に動作させたときに記録した質量スペクトルの線分が示されている。蛋白質ミオグロビンの溶液をイオン源の中の1つに加える一方、ペプチドALILTLVSをキャリブラントとして使用して別のイオン源に供給した。その成果物は、本発明の多重デバイスインターフェースが、一方のイオン源によって分析物を供給でき、かつ他方のイオン源によってキャリブラントを同時に供給できる複数イオン源の同時動作を可能にすることを示している。したがって、分析物スペクトルは、より良好な質量精度を求めて同時に較正ができる。図12内のピーク付近の数字は、それぞれ電荷および質量を示す。
【0072】
ここで図13を参照すると、そこには、エレクトロスプレーおよびMALDIイオン源を、図3aおよび3bに示す構造を有する多重デバイスインターフェースに連結しかつ同時に動作させたときに記録した質量スペクトルの線分が示されている。MALDI源は7mTorrの高い圧力で動作し、およびエレクトロスプレーイオン化源は大気圧で動作した。較正溶液は、下流側質量分析装置(すなわち、ロッドセット204に連結されている)と直線状に連結したエレクトロスプレーイオン源の中に入れた。4つのペプチドの混合物は、下流側質量分析装置(すなわち、ロッドセット206に連結されている)の軸線と直交する入力ロッドセットに配置されたMALDI源のプレート上に置いた。第3入力(すなわち、ロッドセット202)は阻止電極に印加した正電位によってふさいだ。図13内のピーク付近の数字は、所与のピークの質量対電荷比(m/z)を示す。
【0073】
添付の特許請求の範囲において画定している本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書において説明しかつ図示した好ましい実施形態にさまざまな変更をなすことが可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、従来の質量分析計システムの典型的な実施形態のブロック線図である。
【図2】図2は、本発明による多重デバイスインターフェースを有する質量分析計システムの典型的な好ましい実施形態のブロック線図である。
【図3a】図3aは、図2の多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図3b】図3bは、図3aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図3c】図3cは、図3aの多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施例の等角図である。
【図4a】図4aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図4b】図4bは、図4aの多重デバイスインターフェースの側面図である。
【図5a】図5aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図5b】図5bは、図5aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図6a】図6aは、図2の多重デバイスインターフェースの別の典型的な好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図6b】図6bは、図6aの多重デバイスインターフェースの概略の側面図である。
【図7】図7は、本発明による複数の出力を形成するために別の方式で構成された多重デバイスインターフェースを有する質量分析計システムの別の典型的な好ましい実施形態のブロック線図である。
【図8a】図8aは、1つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の端面図である。
【図8b】図8bは、1つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図9a】図9aは、2つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の正面図である。
【図9b】図9bは、2つの四重極ロッドセットおよび2つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図10a】図10aは、4つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の正面図である。
【図10b】図10bは、4つの六重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの典型的な好ましい実施形態の概略の側面図である。
【図11】図11は、2つの六重極ロッドセットおよび3つの四重極ロッドセットを組み込んだ多重デバイスインターフェースの別の好ましい実施形態の概略の上面図である。
【図12】図12は、2つのエレクトロスプレーイオン源を図3aおよび図3bに示した構成を有する多重デバイスインターフェースに連結し、同時に動作させたときに記録された質量スペクトルの線分である。
【図13】図13は、エレクトロスプレーおよびMALDIイオン源を図3aおよび図3bに示した構成を有する多重デバイスインターフェースに連結し、同時に動作させたときに記録された質量スペクトルの線分である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、
a)自身に印加された電位に依存して入力ロッドセットまたは出力ロッドセットのいずれかとして構成される3つ以上の多重極ロッドセット
を含み、
入力ロッドセットとして構成された該多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、該入口部分は、該1つ以上のイオン源の内の1つに連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該出口部分へ伝達し、
出力多重極ロッドセットとして構成された該多重極ロッドセットは、入口部分および出力部分を有し、該出力多重極ロッドセットの該入口部分は、入力ロッドセットとして構成されている該多重極ロッドセットの中の少なくとも1つの前記出口部分に隣接していることにより、該生成されたイオンを受け入れて該出力多重極ロッドセットの該出力部分へ伝達し、該出力多重極ロッドセットの該出口部分は下流側デバイスに連結可能であり、
該多重極ロッドセットの内の少なくとも2つは入力ロッドセットとして構成されているか、または、該多重極ロッドセットの内の少なくとも2つは出力ロッドセットとして構成されている、多重デバイスインターフェース。
【請求項2】
前記多重デバイスインターフェースは、入力ロッドセットとして構成された前記多重極の前記出口部分を、出力ロッドセットとして構成された該多重極の前記入口部分に連結する遷移領域をさらに含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項3】
前記多重デバイスインターフェースが一般的な平面構造を有し、前記多重極ロッドセットが該平面のいずれかのディメンジョンに沿って配置されている、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項4】
前記多重デバイスインターフェースは4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有しており、該多重デバイスインターフェースは前記遷移領域の上方および下方に位置している上部および下部の阻止電極をさらに含んでおり、使用において、阻止電位が該上部および下部の阻止電極に印加され、イオンを該結合領域から逃がさないようにする、請求項3に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項5】
使用において、前記阻止電位が0.2〜10ボルトDCになるように選択される、請求項4に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項6】
隣接する多重極ロッドセットの内の隣接するロッドが多軸ロッドによって供給され、該多軸ロッドが2つのロッド部分と該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、請求項4に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項7】
前記結合部分が曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項6に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項8】
前記多重デバイスインターフェースが阻止電極をさらに含み、該阻止電極が不使用入力ロッドセットの前記入口部分に隣接しているか、または該阻止電極が任意の不使用出力ロッドセットの前記出口部分に隣接しており、使用中、電位が該阻止電極に印加されることにより、任意の生成されたイオンを該不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項9】
使用において、前記阻止電位が1〜50ボルトDCになるように選択される、請求項8記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項10】
ガス源は前記1つ以上のイオン源のいずれにも連結されていない入力ロッドとして構成された任意の不使用多重極ロッドセットの前記入口部分に連結されているか、または、該ガス源は下流側デバイスに連結されていない出力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの前記出口部分に連結されており、使用中、該ガス源が阻止ガス流を供給することにより、任意の生成されたイオンを該不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項11】
前記多重デバイスインターフェースは4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれはダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項3に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項12】
前記多重デバイスインターフェースは、
a)前記多重極ロッドセットのそれぞれの中に上部および下部のロッドを供給するための概して十字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、
b)該上部および下部の多軸ロッドの該十字形状によって画定された各四半分の中で、該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、該各中間レベル多軸ロッドは隣接するロッドセットの中に隣接するロッドを供給しており、該各中間レベル多軸ロッドは2つのロッド部分と、前記2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、中間レベル多軸ロッドと
を含む、請求項11に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項13】
前記結合部分が曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項12に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項14】
前記多重デバイスインターフェースが3つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれがダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項15】
前記多重デバイスインターフェースは、
a)前記多重極ロッドセットのそれぞれの中に前記上部および下部のロッドを供給するための概してT字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、
b)該上部および下部の多軸ロッドの該T字形状によって画定された各四半分の中で、該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、該各中間レベル多軸ロッドは2つのロッド部分と、該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、中間レベル多軸ロッドと、
c)該中間レベル多軸ロッドの反対側で該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された中間レベル直線ロッドであって、該多重極ロッドセットの内の2つの部分である、中間レベル直線ロッドと
を含む、請求項14に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項16】
前記結合部分は、曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項15記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項17】
前記多重デバイスインターフェースは、3次元構造の3つのディメンジョンの内のいずれかに沿って配置されている前記多重極ロッドセットを備えた該3次元構造を有する、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項18】
前記多重デバイスインターフェースは6つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項17に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項19】
互いに隣接する前記多重極ロッドセットの中の隣接するロッドは、概してL字形状を有する多軸ロッドによって供給されており、該多軸ロッドは2つのロッド部分と、該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、請求項18に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項20】
前記結合部分は、曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項19記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項21】
使用中、前記多重デバイスインターフェース内の圧力が1mTorr〜3Torrの範囲にある、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項22】
使用中、前記多重デバイスインターフェース内の圧力が1mTorr〜1Torrの範囲にある、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項23】
前記多重極ロッドセットが四重極ロッドセットおよび隣接する六重極ロッドセットを含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項24】
前記多重極ロッドセットが隣接する六重極ロッドセットを含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項25】
前記1つ以上のイオン源のそれぞれは、エレクトロスプレーイオン化イオン源、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、電子衝撃イオン源、または化学イオン化イオン源を含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項26】
2つ以上のイオン源を下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、
a)入口部分および出口部分を有する2つ以上の入力経路であって、該各入力経路の該入口部分は該複数のイオン源の内の1つに連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該出口部分へ伝達する、2つ以上の入力経路と、
b)該生成されたイオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域であって、入力ロッドセットのそれぞれの出口部分に隣接して配置された、結合領域と、
c)入口部分および出口部分を有する出力経路であって、該出口経路の該入口部分は該結合領域に隣接することにより、該結合イオンを受け入れて該出力経路の該出口部分へ該結合イオンを伝達し、該出力経路の該出口部分は該下流側デバイスに連結可能である、出力経路と
を含む、多重デバイスインターフェース。
【請求項27】
1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、3つ以上の経路および1つの遷移領域を含んでおり、該複数の経路は入力経路、出力経路、または不使用経路のいずれかとして構成され、入力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、該遷移領域に連結されかつ該遷移領域への別個の経路を供給しており、出力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、該遷移領域に連結されかつ該下流側デバイスの内の1つに連結可能であり、使用中、入力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、異なるイオン源に連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該遷移領域へ導き、該遷移領域では、該生成されたイオンが、出力経路として構成されかつ該下流側デバイスの1つに連結可能である該複数の経路の内の1つへ伝達される、多重デバイスインターフェース。
【請求項1】
1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、
a)自身に印加された電位に依存して入力ロッドセットまたは出力ロッドセットのいずれかとして構成される3つ以上の多重極ロッドセット
を含み、
入力ロッドセットとして構成された該多重極ロッドセットは、入口部分および出口部分を有し、該入口部分は、該1つ以上のイオン源の内の1つに連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該出口部分へ伝達し、
出力多重極ロッドセットとして構成された該多重極ロッドセットは、入口部分および出力部分を有し、該出力多重極ロッドセットの該入口部分は、入力ロッドセットとして構成されている該多重極ロッドセットの中の少なくとも1つの前記出口部分に隣接していることにより、該生成されたイオンを受け入れて該出力多重極ロッドセットの該出力部分へ伝達し、該出力多重極ロッドセットの該出口部分は下流側デバイスに連結可能であり、
該多重極ロッドセットの内の少なくとも2つは入力ロッドセットとして構成されているか、または、該多重極ロッドセットの内の少なくとも2つは出力ロッドセットとして構成されている、多重デバイスインターフェース。
【請求項2】
前記多重デバイスインターフェースは、入力ロッドセットとして構成された前記多重極の前記出口部分を、出力ロッドセットとして構成された該多重極の前記入口部分に連結する遷移領域をさらに含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項3】
前記多重デバイスインターフェースが一般的な平面構造を有し、前記多重極ロッドセットが該平面のいずれかのディメンジョンに沿って配置されている、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項4】
前記多重デバイスインターフェースは4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有しており、該多重デバイスインターフェースは前記遷移領域の上方および下方に位置している上部および下部の阻止電極をさらに含んでおり、使用において、阻止電位が該上部および下部の阻止電極に印加され、イオンを該結合領域から逃がさないようにする、請求項3に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項5】
使用において、前記阻止電位が0.2〜10ボルトDCになるように選択される、請求項4に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項6】
隣接する多重極ロッドセットの内の隣接するロッドが多軸ロッドによって供給され、該多軸ロッドが2つのロッド部分と該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、請求項4に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項7】
前記結合部分が曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項6に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項8】
前記多重デバイスインターフェースが阻止電極をさらに含み、該阻止電極が不使用入力ロッドセットの前記入口部分に隣接しているか、または該阻止電極が任意の不使用出力ロッドセットの前記出口部分に隣接しており、使用中、電位が該阻止電極に印加されることにより、任意の生成されたイオンを該不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項9】
使用において、前記阻止電位が1〜50ボルトDCになるように選択される、請求項8記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項10】
ガス源は前記1つ以上のイオン源のいずれにも連結されていない入力ロッドとして構成された任意の不使用多重極ロッドセットの前記入口部分に連結されているか、または、該ガス源は下流側デバイスに連結されていない出力ロッドセットとして構成されたあらゆる不使用多重極ロッドセットの前記出口部分に連結されており、使用中、該ガス源が阻止ガス流を供給することにより、任意の生成されたイオンを該不使用多重極ロッドセットから逃がさないようにする、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項11】
前記多重デバイスインターフェースは4つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれはダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項3に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項12】
前記多重デバイスインターフェースは、
a)前記多重極ロッドセットのそれぞれの中に上部および下部のロッドを供給するための概して十字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、
b)該上部および下部の多軸ロッドの該十字形状によって画定された各四半分の中で、該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、該各中間レベル多軸ロッドは隣接するロッドセットの中に隣接するロッドを供給しており、該各中間レベル多軸ロッドは2つのロッド部分と、前記2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、中間レベル多軸ロッドと
を含む、請求項11に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項13】
前記結合部分が曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項12に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項14】
前記多重デバイスインターフェースが3つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれがダイヤモンド形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項15】
前記多重デバイスインターフェースは、
a)前記多重極ロッドセットのそれぞれの中に前記上部および下部のロッドを供給するための概してT字形状を有する上部および下部の多軸ロッドと、
b)該上部および下部の多軸ロッドの該T字形状によって画定された各四半分の中で、該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された概してL字形状を有する中間レベル多軸ロッドであって、該各中間レベル多軸ロッドは2つのロッド部分と、該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、中間レベル多軸ロッドと、
c)該中間レベル多軸ロッドの反対側で該上部および下部の多軸ロッドの間に配置された中間レベル直線ロッドであって、該多重極ロッドセットの内の2つの部分である、中間レベル直線ロッドと
を含む、請求項14に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項16】
前記結合部分は、曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項15記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項17】
前記多重デバイスインターフェースは、3次元構造の3つのディメンジョンの内のいずれかに沿って配置されている前記多重極ロッドセットを備えた該3次元構造を有する、請求項2に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項18】
前記多重デバイスインターフェースは6つの多重極ロッドセットを含み、該多重極ロッドセットのそれぞれは正方形形状の端部断面を備えた四重極構造を有する、請求項17に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項19】
互いに隣接する前記多重極ロッドセットの中の隣接するロッドは、概してL字形状を有する多軸ロッドによって供給されており、該多軸ロッドは2つのロッド部分と、該2つのロッド部分を連結するための結合部分とを含む、請求項18に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項20】
前記結合部分は、曲率半径を有する湾曲部を含む、請求項19記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項21】
使用中、前記多重デバイスインターフェース内の圧力が1mTorr〜3Torrの範囲にある、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項22】
使用中、前記多重デバイスインターフェース内の圧力が1mTorr〜1Torrの範囲にある、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項23】
前記多重極ロッドセットが四重極ロッドセットおよび隣接する六重極ロッドセットを含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項24】
前記多重極ロッドセットが隣接する六重極ロッドセットを含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項25】
前記1つ以上のイオン源のそれぞれは、エレクトロスプレーイオン化イオン源、AP MALDIイオン源、AP化学イオン化イオン源、AP光イオン化イオン源、大気圧より低い圧力で動作するMALDIイオン源、電子衝撃イオン源、または化学イオン化イオン源を含む、請求項1に記載の多重デバイスインターフェース。
【請求項26】
2つ以上のイオン源を下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、
a)入口部分および出口部分を有する2つ以上の入力経路であって、該各入力経路の該入口部分は該複数のイオン源の内の1つに連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該出口部分へ伝達する、2つ以上の入力経路と、
b)該生成されたイオンが混ぜ合わされて結合イオンが形成される結合領域であって、入力ロッドセットのそれぞれの出口部分に隣接して配置された、結合領域と、
c)入口部分および出口部分を有する出力経路であって、該出口経路の該入口部分は該結合領域に隣接することにより、該結合イオンを受け入れて該出力経路の該出口部分へ該結合イオンを伝達し、該出力経路の該出口部分は該下流側デバイスに連結可能である、出力経路と
を含む、多重デバイスインターフェース。
【請求項27】
1つ以上のイオン源を1つ以上の下流側デバイスにインターフェースするために、質量分析において使用される多重デバイスインターフェースであって、該多重デバイスインターフェースは、3つ以上の経路および1つの遷移領域を含んでおり、該複数の経路は入力経路、出力経路、または不使用経路のいずれかとして構成され、入力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、該遷移領域に連結されかつ該遷移領域への別個の経路を供給しており、出力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、該遷移領域に連結されかつ該下流側デバイスの内の1つに連結可能であり、使用中、入力経路として構成された該複数の経路のそれぞれは、異なるイオン源に連結可能であることにより、該イオン源から生成されたイオンを受け入れて該生成されたイオンを該遷移領域へ導き、該遷移領域では、該生成されたイオンが、出力経路として構成されかつ該下流側デバイスの1つに連結可能である該複数の経路の内の1つへ伝達される、多重デバイスインターフェース。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−508293(P2009−508293A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529434(P2008−529434)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001494
【国際公開番号】WO2007/030923
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【出願人】(508062030)ユニバーシティ オブ マニトバ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001494
【国際公開番号】WO2007/030923
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【出願人】(508062030)ユニバーシティ オブ マニトバ (2)
【Fターム(参考)】
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