説明

多重補間LC電圧制御発振器

【課題】周波数が、中心周波数近辺の同調範囲内の周波数で制御される発振信号を形成するLC電圧制御発振器の提供。
【解決手段】位相補間電圧制御発振器は、複数のn個の位相シフトセルA及びn−1レベルの加算セルSを内含する。位相シフトセルAは、共通の入力信号を受理し、各々は、その他の位相シフトセルAとは異なる量だけ入力信号を位相シフトさせる。第1レベルの加算セルSは、少なくとも2つの位相シフトセルAの出力を受信し加算し、残りの加算セルレベルの各々は、加算セルSの先行レベルの出力を受理する。最後のレベルは、位相シフトセルAの共通の入力信号としてフィードバックされる出力信号を生成する単一の加算セルSを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、名称を「2. 5GHzの多重補間LC電圧制御発振器」という1998年7月31日に出願された仮出願第60/094,903号の優先権を主張するものである。この仮出願は、参照することによって、記載されるように完全に本書に包含される。
【0002】
発明の背景
本発明は一般に、電圧制御発振器に関する。より詳細には、LC電圧制御発振器のための方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発振器は、デジタルシステムにおいてクロック信号を提供するために広く使用される。多くの応用において、クロック信号の周波数、又は位相は、調整が必要とされる可能性がある。この応用の一例は、デジタルデータ通信システムにおける受信ユニットである。デジタル形式でのデータ送信は、広範囲にわたり実施される。デジタルデータの転送における重要な考慮事項は、データの転送速度である。転送するデータと共にクロック信号を内含させることによって、データ送信のために利用可能な帯域幅が減少する。従って、伝送されたデータを回復するために、受信ユニットは、受信ユニットの内部クロックを受信データの周波数、及び位相に同期させる手段を必要とすることが多い。
【0004】
制御可能な発振器を使用して、受信ユニットのクロック信号を提供することが多い。電圧制御発振器(VCO)のような制御可能な発振器は、周波数、及び位相の双方で調整可能であるので、受信データの周波数、及び位相に同調させることが可能である。このため、電圧制御発振器は、通信システムで広く使用され、具体的にはフェーズロックドループ(PLL、phase locked loops)、及びクロックリカバリ回路(CRC、clock recovery circuits)などの応用において使用されている。
【0005】
これらの通信システムは、モノリシック集積回路を使用することが多い。しかしながらモノリシック集積回路は、温度変動のようなプロセス変動の影響を受け、回路の構成素子に影響を及ぼす。このプロセス変動は、チップ上に組込まれる発振器の同調周波数を含む性能に影響を及ぼす。
【0006】
一定範囲の周波数において、クロック信号を提供することが可能なVCOの1つの形式は、ダイオードバラクタを使用するLC発振器である。ダイオードバラクタは、調整可能なキャパシタンスを提供し、これによって、発振器周波数の調整が可能になる。しかしながら、ダイオードバラクタを使用するLC発振器は、問題がなくはない。例えば、ダイオードバラクタは、電圧−電流の線形範囲が制限されることがあるため、線形範囲が所望の目的のために充分な大きさでない場合は、設計がより困難になる。さらに、集積回路上にダイオードバラクタを形成するとき、温度変動などのプロセス変動は、VCOの所望の性能よりも低い性能をもらす可能性がある。
【0007】
2つの異なる遅延経路の補間に基づく電圧制御LC同調発振器が、1992年3月のIEEE J.Solid−State Circuits 第27巻、第3号 p444のN. N.Nguyen及び R.Meyer著「1. 8GHzのモノリシックLC電圧制御発振器(A 1. 8 GHz Monolithic LC Voltage-Controlled Oscillator)」の中で報告されている。この報告は、参照することによって、全ての目的にために本明細書に包含される。しかしながら、この電圧制御LC同調発振器は、VCO同調範囲と共振器Q値との間の構造的なコンフリクトを有する。
【0008】
VCOにリング発振器が使用されることがある。リング発振器は、各遅延セルの遅延を変更することによって、発振器周波数を変更する遅延セルのリングである。リング発振器は、広範な同調範囲を提供できるが、遅延セル内にQが高い要素が不足するために、リング発振器の段がそれぞれ、システム内にノイズを生じさせる。このため、リング発振器もまた、高い位相ノイズを有することが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明は、位相補間電圧制御発振器を提供する。電圧制御発振器は、複数の位相シフトセルを有する。位相シフトセルは、共通入力を受信し、共通入力信号に対して位相がシフトした位相シフト出力信号を出力する。位相シフトセルはそれぞれ、他の位相シフトセルと異なる量で、出力信号を位相シフトさせる。加算セルは、少なくとも2つの位相シフトセルの位相シフト出力信号を受信し、位相シフト出力信号の和を表す信号を出力する。1つの実施形態では、n個の位相シフトセルと、n−1個のレベルの加算セルが存在し、第1のレベルの加算セルは、位相がシフトした出力信号を受信し、他のレベルの加算セルは、他の加算セルが提供する位相シフト出力信号の和を示す信号を受信する。
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、周波数が、中心周波数の近辺の同調範囲内の周波数で制御される発振信号を提供する電圧制御発振器を提供する。電圧制御発振器において、中心周波数よりも小さい共振周波数、又は中心周波数よりも大きい共振周波数のいずれかの共振周波数を有するLCタンクを有する位相シフトセルは、中心周波数の近辺で位相シフトがほとんどない加算セルLCタンク有する加算セルに、位相シフト信号を提供する。1つの実施形態において、加算セルは、修正ギルバートセルを含み、修正は、ギルバートセルの加算におけるLCタンクの使用である。
【0011】
本発明のこれらの及びその他の特長、態様及び利点は、以下の説明、特許請求の範囲、及び添付図面を参照することによってより良く理解できることだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】2つの位相シフト遅延セルと、加算セルとを有する位相補間VCO(PI VCO)の一実施形態のブロックを概略的に示す図である。
【図2】図1の加算セルから出力される正規化された加算信号のベクトルを示す図である。
【図3a】図1の位相シフト遅延セルの回路構成を示す図である。
【図3b】図3aの位相シフト遅延セルのLCタンクを示す図である。
【図3c】図3aの位相シフト遅延セルの伝達関数を示す図である。
【図4a】図1の加算セルの回路構成を示す図である。
【図4b】図3aの加算セルの直列RLCタンクを示す図である。
【図4c】直列RLCタンクのための伝達関数を示す図である。
【図5】N−多重PI VCOを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
図1は、本発明に係る位相補間VCO(PI VCO)の1つの実施形態のブロック図を説明するものである。このPI VCOは、2つのタイプの機能的セルを含む。すなわちAセルと、Sセルとである。図に示されるように、第1のAセル(A1)11、及び第2のAセル(A2)13はそれぞれ、第1の位相シフト信号17、及び第2の位相シフト信号19を生成する。第1の位相シフト信号、及び第2の位相シフト信号は、所与の周波数における信号を、第1のAセル、及び第2のAセルの双方に加えるとき、互いに異なる位相シフトを有する信号である。したがって、Aセルは、位相シフト遅延セルである。
【0014】
Sセル15は、第1の位相シフト信号と、第2の位相シフト信号とを受信し、位相シフト信号を加算することによって、出力加算信号を形成する。加算は、Sセルが前記2つの位相シフト信号の相対的な重み付けを決定する制御信号18もまた受信することによって、重み付けする方法で実行される。出力加算信号は、2つのAセルに入力として提供される。
【0015】
さらに図1の実施形態は、Sセルの出力に信号ejω0tを加える効果を考慮することによって、さらに理解することができる。信号ejωotは、振幅が1であり、周波数がω0であり、初期の位相がゼロである。Sセルの出力端に信号ejω0tを加えることにより、第1の位相シフトセル遅延セル、及び第2の位相シフトセル遅延セルに信号ejω01が加えられる結果になる。一般に、位相シフト遅延セルは、入力信号と比較するとき、位相シフトされ、変更された振幅を有する信号を出力する。位相シフトの量は、入力信号の周波数に依存し、φ(ω0)と書くことができる。したがって、第1のAセルに信号ejω0tを加えることにより、第1のAセルは、第1の位相シフト信号として信号a1ej(ω0t+φ1(ω0))を出力する。同様に、第2のAセルに信号ejω01を加えることにより、第2のAセルは、第2の位相シフト信号として信号a2ej(ω0t+φ2(ω0))を出力する。
【0016】
加算セルSは、第1の位相シフト信号と、第2の位相シフト信号とを順に組み合わせる。組み合わせを実行するときに、加算セルSは、xとして示される加算セルSの制御信号をさらに使用する。第1の位相シフト信号、及び第2の位相シフト信号の寄与を重み付けするとき、発振条件において、組み合わされた信号が当初の信号ejw0tに等しいことが要求される。これは以下の式で与えられる。
[(x(a1ejφ1(ω0)) + (1−x)a2ejφ2(w0)]ejφ3(ω0) = 1 (1)
ここで、ψ3(ω0)は加算セルSによる位相シフトである。
【0017】
図2において、これは、ψ3(ω0)=0であると仮定して、グラフに示される。図2は、第1のAセル、及び第2のAセルからの出力信号を加算した後に正規化される(normalized)加算信号のベクトルを示す図である。第1のAセルからの出力信号は、大きさxa1、及び位相角φ1の上向きベクトルで表わされる。第2のAセルからの出力信号は、大きさ(1−x)a2、及び位相角ψ2の下向きベクトルで表わされる。特定の制御信号xにおいて、式(1)を充足する周波数ω0がある場合は、発振は、ω0において起こる。xの値を調整することによって、VCOは調整されて、第1のAセルの共振周波数と、第2のAセルの共振周波数との間にある周波数で発振する。
【0018】
本発明に係る1つの実施形態において、図1のAセル、及びSセルは、固定値のLC同調回路によって実現される。図3aにおいて、差動遅延セル30(すなわち位相シフトセル)の簡略化した回路図を示す。まず、差動遅延セルの半分のみを参照すると、RLCタンク36は、第1の端子において、抵抗器32を介して電源46に接続される。RLCタンクの第2の端子は、入力FET44によって、第1の差動入力信号に事実上接続される。より具体的には、RLCタンクの第2の端子は、ゲートに第1の差動入力信号が提供される入力FETのドレインに接続される。第1の入力FETのソースは、電流源52に接続される。また、RLCタンクの第2の端子は、出力FET40のゲートに接続される。出力FETのドレインは、電源に接続され、ソースは、電流源52に接続され、位相シフト遅延セルの出力は、出力FETのソースから引き出される。したがって、入力FETに第1の差動入力信号を入力FETに加えることにより、RLCタンクを流れる電流が変化する。これによって、第1のRLCタンクの電圧が順に変化する。電圧の変化は、RLCタンクの特性に依存する。
【0019】
図3bに、第1のRLCタンクの回路図を示す。RLCタンクは、誘導性構成素子Li71と、抵抗性構成素子Ri73と、容量性構成素子Ci75とを並列に有する。RLCタンクの構成素子は、RLCタンクが振動減衰(underdamped)であるように、選択され、それ故に、十分な利得を有するように選択される。すなわちタンクの共振周波数で高いQ値を有するように選択される。さらに、構成素子は、所望のVCO中心周波数の近傍でRLCタンクが共振周波数を有するように選択される。図3cは、共振周波数fc近傍の並列RLCタンクの伝達関数を示す。図に示されるように、この伝達関数は、共振周波数fcの周囲の周波数における小さな変化に対して、大きな位相シフトを示す。したがって、共振周波数fcの周囲の小さな周波数の変化は、出力において、相対的に大きな位相シフトを生成する。さらに、伝達関数は、大きな共振ピーク有する。すなわち高いQ値を有する。したがって、共振周波数の周囲の出力信号の振幅は、他の周波数の周囲よりも非常に大きい。したがって、RLCタンクは、入力信号をフィルタリングする帯域通過フィルタとして作動して、信号のノイズを減少させる。
【0020】
さらに、図3aの位相シフト遅延セルは差動式であり、付加的な素子を有する。付加的な素子は、上述の要素に対して実質的に一致する。付加的な素子は、第2のRLCタンク34を含む。この第2のRLCタンクは、抵抗器32によって電源に接続される端子と、第2の入力FET42のドレインに接続される第2の端子とを有する。第2の入力FETのゲートに第2の差動入力が提供され、ソースは、電流源52に接続される。第2のFETのドレインは、第2の出力FET38のゲートに接続される。第2の出力FETのドレインは、電源に接続され、ソースは、電流源60に接続され、位相シフト遅延セルの第2の差動出力56は、ソースから引き出される。
【0021】
位相シフト遅延セルの差動出力は、加算セルの差動入力となる。したがって、異なる位相シフト遅延セルは、異なる共振周波数を有するRLCタンクを有する。したがって、第1の位相シフトセルは、所望のVCO中心周波数よりも大きい共振周波数を有するRLCタンクを利用し、第2の位相シフトセルは、所望のVCO中心周波数よりも低い共振周波数を有するRLCタンクを利用する。さらに、構成素子は、RLCタンクが図1のPI VCOで使用するときに、所望のVCO中心周波数近くの共振周波数を有するように選択される。
【0022】
図4aに、1つの実施形態において、GaAs MESFETで実現される加算セル回路70の回路図を示す。加算セルは、2つの位相シフト遅延セルが提供する差動入力を重み付けした方法で加算し、差動出力信号を出力する。加算操作を実施するときに、加算セルは、いずれの位相シフトセルの共振周波数よりも著しく高い共振周波数を有し、低いQのピークが端に寄った(shunt-peaking)直列RLCタンクを利用する。
【0023】
図4aに示すように、まず加算セルの半分だけを参照すると、RLCタンク75の第1の端子は、抵抗器72を介して電源に接続される。RLCタンク75の第2の端子は、異なる2つの位相遅延セルからの入力に接続される。より具体的には、第2の端子は、2つの入力FET88、及び82のドレインに接続される。入力FET88、及び82のゲートには、異なる位相遅延セルからの入力が提供され、入力FET88、及び82のソースは、重み付けするFET84、及び90を介して共通の電流源96にそれぞれ接続される。
【0024】
入力FET88及び入力FET82の双方は、RLCタンクの第2の端子に接続される。RLCタンクを流れる電流は、2つの入力FETを流れる電流の和である。したがって、RLCタンクを流れる電流、及びRLCタンクに印加される電圧は、入力FET88と、入力FET82とを流れる電流の関数である。重み付けFET90のゲートへの制御入力118により事実上修正されて入力FET88に加えられる入力と、重み付けFET82のゲートへの制御入力112により事実上修正されて入力FET82に加えられる入力とに、これらの電流は、比例する。したがって、RLCタンクの第2の端子の信号は、異なる位相シフトセルからの2つの入力信号を重み付けした和である。
【0025】
上述のように、加算セルが提供する位相シフトがいずれも小さい場合には、図2のベクトル図により示される関係が適用される。さらに、図5の多重位相補間セルに対して説明するように、加算セルが位相シフトをほとんど提供しない場合には、多数の位相シフトセル、及び加算セルを使用して、VCOの事実上の同調範囲を広げることができる。したがって、RLCタンクは、図4bに示されるような直列のRLCタンクである。
【0026】
前記RLCタンクは、抵抗性構成素子と、誘導性構成素子と、容量性構成素子とを有する。容量性構成素子は、直列の抵抗性及び誘導性構成素子に並列に接続される。上述のように、構成素子は、RLCタンクの共振周波数がVCOの同調範囲内の周波数よりも著しく大きくなるように選択される。したがって、加算セルのRLCタンクは、図4cに示すような伝達関数を有する。VCO同調範囲に近接する周波数範囲では、概して位相シフトはなく、同時にほぼ平坦な位相-周波数応答を有する、すなわちψ3(ω0)=0である。
【0027】
さらに、図4aの加算セルは差動式であり、付加的な要素を有する。付加的な素子は、上述の要素に対して実質的に一致する。付加的な要素は、第2のRLCタンク74を含む。第2のRLCタンクは、抵抗器72によって電源に接続される端子と、入力FET80、及び入力FET86のドレインに接続される第2の端子とを有する。入力FET80、及び入力FET86のゲートはそれぞれ、差動入力108、及び114が提供される。入力FET80、及び86のソースはそれぞれ、重み付けFET84、及び90を介して共通の電流源96に接続される。FET80、及び86のドレインは、出力FET76のゲートに接続される。出力FET76のドレインは、電源に接続され、ソースは、電流源104に接続され、加算セルの差動出力100は、ソースから引き出される。
【0028】
図5に、多重移相補間VCOを示す。図5の多重位相補間VCOは、それが位相遅延セルと、加算セルとで構成されている点で図1の位相補間VCOと類似する。しかしながら、図5の多重位相補間VCOでは、2つより多い位相シフト遅延セルと、多数の加算セルとが使用される。より詳細には、図5の多重位相補間VCOは、n個の位相シフト遅延セル101a〜nと、n−1個の加算セル103a−(n−1)を有する。
【0029】
位相シフト遅延セルは、セルの列を形成する。第1の位相シフト遅延セル101aは、列の第1のセルであり、第2の位相シフト遅延セル101bは、列の第2のセルであり、n番目の位相シフト遅延セル101nは、列のn番目のセルである。セルはそれぞれ、他のセルと異なる共振周波数を有する。したがって、1つの実施形態において、列の中の隣接するセルの間の共振周波数の差異は、△fである。列の中の次のセルは、列の中の先のセルの共振周波数よりそれぞれ△f大きい共振周波数を有する。したがって、1つの実施形態においてn個のセルを仮定すると、VCOの同調範囲は、列の中央のセルの共振周波数fcを中心とし、同調範囲は、おおよそ(fc−△f/2)〜(fc+△f/2)である。
【0030】
2つの隣接する位相シフト遅延セルはそれぞれ、1つの加算セルに入力を提供する。さらに、列の中の第1の位相シフトセルと、最後の位相シフトセルとを除いて、位相シフトセルはそれぞれ、異なる2つの加算セルに入力を提供する。したがって、n個の全ての位相シフトセルごとに、位相シフト遅延セルから入力を受信するn−1個の加算セルがある。
【0031】
さらに、2つの加算セルはそれぞれ、さらに加算するセルに入力を提供する。これは、第1の加算セルセットが位相シフト遅延セルから入力を受信するのと同様の方法で達成される。したがって、位相シフト遅延セルと、加算セルとは、(図5に示すように)位相シフト遅延セルが底辺を形成し、単一の加算セルが頂点を形成する三角形構成を形成すると見なしてもよい。いくつかのレベル加算セルは、三角形の頂点を形成する単一の加算セルと、位相シフト遅延セルとの間に補間される。したがって、多重位相補間VCOにn個の位相シフト遅延セルがある場合には、n−1個の加算セルのレベルがあり、
【数1】

個の加算セルがある。
【0032】
多重位相補間VCOを、さらに十分に探究するために、多重位相補間VCOのサブセット(図5)の動作を探究する。この多重位相補間VCOのサブセット(図5)は3つの位相遅延セル101a−cと、3つの加算セル103a−cを有する。第1の位相遅延セルは、第1の加算セル103aに提供される出力を有する。第2の位相シフト遅延セル101bは、第1の加算セル103aと、第2の加算セル103bとの双方に提供される出力を有する。第3の位相シフトセルは、第2の加算セルに提供される出力を有する。したがって、第1の加算セルは、第1の位相シフトセルと、第2の位相シフトセルとからの入力を受信し、第2の加算セルは、第2の位相シフトセルと、第3の位相シフトセルとからの入力を受信する。
【0033】
第1の加算セル、及び第2の加算セルはそれぞれ、第3の加算セル103cに入力を提供する。説明される実施形態のサブセットにおいて、第3の加算セルは、第1の位相シフトセルと、第2の位相シフトセルと、第3の位相シフトセルとに、入力として出力を提供する。
【0034】
位相シフトセルの動作は、図3に関して先に説明した。しかしながら、説明されるサブセットにおいて、第3の加算セルは、第1の位相シフトセル、又は第2の位相シフトセルのいずれかより大きい出力範囲を有する。すなわち、3つの位相シフトセルは、加算セルに提供される共振周波数の増大範囲(increase range of resonant frequencies)を提供する。加算セルの出力信号の多重レベル加算は、VCO周波数同調範囲において、加算セルによる位相シフトが全体的に不足することにより、ある程度可能である。しかしながら、実際には、構成素子の許容誤差の変化が、加算セルの出力に多少の位相シフトを加えることによって、加算セルのレベルの可能な数と、VCOの同調範囲とが限定される。
【0035】
多重位相補間VCOの同調範囲は、位相シフトセルの数と、それぞれの位相シフトセルの共振周波数の間の周波数の差によってほぼ決定される。したがって、位相シフトセルがそれぞれ、セルの列の直前の位相シフトセルの共振周波数よりも大きい共振周波数を有する場合には、3個の位相セルのVCOは、2個の位相シフトセルのVCOの約2倍の有効な同調範囲を有することになるであろう。n個の位相シフトセルを有する多重位相補間VCOにおいて、有効同調範囲は、2個の位相シフトセルのVCOの同調範囲の約n倍となるであろう。
【0036】
このように、本発明の実施形態は、位相補間VCOを提供する。本発明に係るVCOは、本発明の精神、又は属性から逸脱することなく、他の特定の形式で具現化できる。したがって、説明される実施形態は、あらゆる点で実例であり、限定されないように考えることが望まれ、本発明の範囲を指示するためには、これまでの記述でなく、むしろ添付されるクレーム及びその均等が参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフト信号を生成する複数の位相シフトセルと、
位相シフト信号を累積加算するための複数の補間セルと、
を含んで成る電圧制御発振器。
【請求項2】
位相シフト遅延セルが、
電圧ラインに接続された第1の端子及び第1のトランジスタの第1の端子に接続された第2の端子を有し、前記第1のトランジスタは第1の遅延セルLC共振回路の第2の端子に接続された第1の端子、電流源に接続された第2の端子、及び第1の入力端に接続されたゲートを有する第1のLC共振回路と、
電圧ラインに接続された第1の端子及び第2のトランジスタの第1の端子に接続された第2の端子を有し、前記第2のトランジスタは第2の遅延セルLC共振回路の第2の端子に接続された第1の端子、電流源に接続された第2の端子、及び第2の入力端に接続されたゲートを有する第2のLC共振回路と、
を含んで成る、請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
補間セルが、
電圧ラインに接続された第1の端子及び第1の補間セルトランジスタの第1の端子に接続された第2の端子を有し、前記第1の補間用セルトランジスタは第1の補間セルLC共振回路の第2の端子に接続された第1の端子、電流源に接続された第2の端子、及び第1の補間セル入力端に接続されたゲートを有する第1の補間セルLC共振回路と、
電圧ラインに接続された第1の端子及び第2の補間セルトランジスタの第1の端子に接続された第2の端子を有し、前記第2の補間セルトランジスタは第2の補間セルLC共振回路の第2の端子に接続された第1の端子、電流源に接続された第2の端子、及び第2の補間セル入力端に接続されたゲートを有する第2の補間セルLC共振回路と、
出力端に接続された第1の端子、電流源に接続され第2のトランジスタに接続された第2の端子、及び第3の入力端に接続されたゲートを有する第3のトランジスタと、
出力端に接続された第1の端子、電流源に接続され第1のトランジスタに接続された第2の端子、及び第4の入力端に接続されたゲートを有する第4のトランジスタと、
を含んで成る、請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
各々が共通の入力信号を受信し、共通の入力信号との関係において位相シフトされた位相シフト出力信号を出力する複数の位相シフトセルであって、各位相シフトセルからの位相シフト出力信号が他の位相シフトセルからの位相シフト出力信号とは異なる位相シフト量を有する位相ソフトセルと、
少なくとも2つの位相シフトセルからの位相シフト出力信号を受理し、前記位相シフト出力信号の和を表わす信号を出力する少なくとも1つの加算セルと、
を含んで成る電圧制御発振器。
【請求項5】
n個の位相シフトセル及びn−1レベルの加算セルが存在する、請求項4に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
n−1レベルの加算セルの第1のレベルが、位相シフト出力信号を受理し、加算セルの残りのn−1レベルが位相シフト出力信号の和を表わす信号を受信する、請求項5に記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
中心周波数周辺の周波数同調範囲内で制御可能な周波数の発振信号を提供する電圧制御発振器であって、
発振信号を受理し、この発振信号との関係において、正の位相シフト量を有する第1の位相シフト出力信号を出力する第1の位相シフトセルと、
発振信号を受理し、この発振信号との関係において負の位相シフト量を有する第2の位相シフト出力信号を出力する第2の位相シフトセルと、
第1の位相シフト出力信号及び第2の位相シフト出力信号を受信し、第1の位相シフト出力信号と第2の位相シフト出力信号の加算に基づく発振信号を出力する加算セルと、
を含む電圧制御発振器。
【請求項8】
第1の位相シフトセルが中心周波数よりも小さい共振周波数をもつ第1のLCタンクを含んで成り、第2の位相シフトセルが中心周波数よりも大きい共振周波数を有する第2のLCタンクを含んで成る、請求項7に記載の電圧制御発振器。
【請求項9】
加算セルが加算セルLCタンクを含み、加算セルLCタンクが中心周波数を中心とするほぼゼロの位相シフトを有する、請求項8に記載の電圧制御発振器。
【請求項10】
加算セルLCタンクが中心周波数よりも大きい共振周波数を有する、請求項9に記載の電圧制御発振器。
【請求項11】
第1のLCタンク及び第2のLCタンクが並列LCタンクであり、加算セルLCタンクが直列LCタンクである、請求項10に記載の電圧制御発振器。
【請求項12】
加算セルが修正型ギルバートセルを含んで成り、この修正がギルバートセルの加算ノードにおけるLCタンクを使用しておこなわれる、請求項11に記載の電圧制御発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−273357(P2010−273357A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−149577(P2010−149577)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2000−562997(P2000−562997)の分割
【原出願日】平成11年7月31日(1999.7.31)
【出願人】(592017655)ビテッセ セミコンダクター コーポレイション (5)
【氏名又は名称原語表記】VITESSE SEMICONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】