説明

大規模な浄水および脱塩

本発明の実施形態は、浄水および脱塩のためのシステムおよび方法を提供する。システムは、予熱器、脱気装置、デミスタを有する複数の蒸発室、ヒートパイプ、制御システムを有し、制御システムは、ユーザ介入または洗浄を必要とすることなく浄化・脱塩システムの連続動作を可能にする。システムは、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物を含む複数の汚染物質種を汚染水サンプルから除去しつつ、各蒸留段階から熱を回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年9月17日に出願された米国仮特許出願第61/097,835号の優先権を主張し、該出願の全体の開示内容は参照することにより本明細書に組み入れられる。本発明は浄水および脱塩の分野に関する。特に、本発明の実施形態は、数か月から数年の経過にわたって最小限の洗浄またはメンテナンスで済む自動プロセスで広範囲の不純物のほぼ全てを水から取り除くシステムおよび方法であって、単位流入水当たりの生産水の歩留まりが比較的高く、エネルギ必要量が極めて低いシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水技術は、現代の生活に欠かせない態様に急速になってきている。これは、従来の水資源が益々乏しくなってきており、飲料水用の地方自治体の分配システムが経時的に劣化し、水使用量の増大により井戸および貯水池が使い果たされ、それにより、塩水汚染が引き起こされるからである。また、例えば集約農業、ガソリン添加剤、および重有毒金属を含む水源の更なる汚染が様々な活動から生じている。これらの問題は、次第に増える好ましくないレベルの細菌、バクテリア、塩、MTBE、塩素酸塩、過塩素酸塩、ヒ素、水銀、および更には水道において飲料水を消毒するために使用される化学物質をもたらしている。
【0003】
また、地球のほぼ3/4が海洋によって覆われているにもかかわらず、淡水資源は、地球上の水の全ての約3%に限られており、人口増加および地球温暖化の結果として益々乏しくなってきている。全ての淡水の約69%は氷冠および氷河に保たれており、これらは地球規模の溶解の増大に伴って回復不可能になっている。そのため、実際に利用できるのは1%未満であり、その殆ど(90%を超える)は、人的活動および塩分流入によって次第に汚染される帯水層の地下水である。したがって、広範囲の汚染物質を除去しつつ海水や塩水を含む塩性水を淡水へ変えることができる技術の必要性が差し迫っている。
【0004】
多重効用蒸留(MED)、多段フラッシュ蒸留(MSF)、または蒸気圧縮蒸留(VC)のような逆浸透(RO)濾過熱蒸留システムなどの従来の脱塩・水処理技術は、塩分環境で見出される様々な水汚染物質を稀にしか処理できない。更に、これらの技術は、商業的に利用できる場合であっても、しばしば、許容できる水質を得るために複数の処理段階または様々な技術の組み合わせを必要とする。ROシステムは、塩分含有量が増大するにつれて高い水圧の要件に苦しめられ、そのため、商業的な脱塩において益々高価になるとともに、流入供給水の30%を超える水を一般に廃棄し、それにより、水が乏しいときには該システムの魅力が次第に薄れる。紫外(UV)光照射またはオゾン処理などの従来の数少ない技術は、ウイルスおよびバクテリアに対して有効であるが、溶解ガス、塩、炭化水素、および不溶性固体などの他の汚染物質を殆ど除去しない。更に、殆どの蒸留技術は、それらが汚染物質の一部の除去に優れる場合があるが、しばしば全種類の汚染物質を処理できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業的な脱塩プラントは、通常は1〜3年の建造期間を要する複雑なエンジニアリングプロジェクトであるため、通常は資本集約的であり、1つの場所から他の場所へ移動させることが難しい。脱塩プラントの複雑さ及び複数の技術への依存により、該プラントのメンテナンスコストが高くなる傾向がある。このように、ROプラントは安定した圧力条件および流れ条件下で連続的に動作するように設計されるため、大きな圧力変動または停電が、交換するのが高価な膜を損傷させる可能性があり、その技術は、RO膜の汚染を防止するために流入供給水の大規模な前処理を必要とする。熱蒸留システムは、しばしば、所定量の熱エネルギを用いて増大する蒸気を抽出することにより水の回収を高めるために真空に依存するが、大規模なシステムにおける真空システムは、漏れに起因して厄介であり、機械的な補強を必要とする。また、熱システムは、凝縮熱の一部を回収するために熱交換器に依存するが、熱交換器は、汚染およびスケール形成しがちであり、頻繁なメンテナンスを必要とする。
【0006】
したがって、連続的で且つ自浄式であり、腐食に耐え、携帯可能でコンパクトであるとともに、注入水の大部分を回収し、比較的安価で、メンテナンスが少ない高性能な蒸留システムが、増大する水汚染問題および世界的な水不足を解決するための最良の長期的選択肢のように思われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、改良された脱塩・浄水システムを提供する。システムは、注入口と、予熱器と、脱気装置と、複数の蒸発室と、デミスタと、生成物凝縮器と、廃棄物排出口と、生成物排出口と、熱の伝達および回収のための複数のヒートパイプと、制御システムとを含むことができる。制御システムは、最小のユーザ介入または洗浄をもって浄水システムの連続動作を可能にする。システムは、汚染水サンプルから、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物を含む複数種の汚染物質を除去することができる。システムの実施形態において、生成される水の量は、注入水の量の約20%〜約95%となり得る。システムは、蒸発室、凝縮器、および予熱器の垂直積層構造であって、コンパクトであり、したがって水製造1日当たり1000〜50000000ガロンの範囲で持ち運びできる垂直積層構造を備える。
【0008】
システムは、注入水のための流量コントローラを含むこともできる。流量コントローラは、圧力調整器、ポンプ、ソレノイド、バルブ、アパーチャなどを含むことができる。圧力調整器は、約0kPa〜250kPa(0〜36psi)の水圧を維持することができる。流量コントローラは、0.5〜3500ガロン/分の水流量を維持できる。システムは、堆積物トラップやサンドフィルタなどを含むことができる。また、システムは停止制御器を更に含むことができる。停止制御器は、例えば、手動制御器、氾濫制御器、タンク容量制御器、蒸発室容量制御器、または同様の制御装置であってもよい。フィードバック制御システムは、例えば、生産水タンク内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流れ、水流の時間、水流がない時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、排出口水質(総溶解固形分)、蒸発室内の圧力差、および蒸発室越流堰フロート等に基づくことができる。
【0009】
また、システムは、脱気装置で必要とされる温度まで流入水を加熱する予熱器を有することができる。予熱器から出る水は、少なくとも約96℃の温度を有することができる。予熱タンクは、流入水がタンク内で数回転循環するように螺旋配列の羽根を有してもよく、それにより、予熱を行なうための滞留時間が与えられる。流入供給水は、予熱器内に接線方向で入って、必要とされる温度に達するまでヒートパイプによって徐々に予熱され、脱気装置と接続する或いは脱気が不要な場合には下側蒸発室と直接に接続する降水管を通じて予熱器から出る。
【0010】
脱気装置は、略垂直方向に向くことができ、上端および下端を有する。予熱された水は脱気装置の上端に入り、また、脱気された水は脱気装置の下端近傍から出る。システムにおいて、最も高い蒸発室からの蒸気は、脱気装置の下端近傍に入ることができるとともに、脱気装置の上端近傍から出ることができる。脱気装置は、水と蒸気との混合を促進させるように適合されているマトリクスを含むことができ、それにより、脱気装置内でガスの反対方向の流れに抗して注入水を逆流させることによってほぼ全ての有機物、揮発性物質、およびガスを注入水から取り除く。ガスは、例えば、蒸気、空気、窒素などであってもよい。マトリクスは略球状の粒子を含むことができる。しかしながら、マトリクスは非球状の粒子を含むこともできる。マトリクスは、脱気装置内で均一な充填を可能にするように選択されるサイズを有する粒子を含むことができる。マトリクスが異なるサイズの粒子を含むこともでき、粒子をサイズ勾配を成して脱気装置内に配置することができる。水は、有機物および揮発性ガスを実質的に伴わずに脱気装置から出ることができる。
【0011】
上側蒸発室は、複数の熱伝達パイプを収容する多孔底部を有する円筒形または長方形タンクを含むことができる。上側蒸発室は、下側蒸発室と流体連通する或いは蒸発室の底部にある或いはこれらの両方である降水管であってもよい中心排水管を含むこともできる。蒸発室は複数の粒子を含む自浄媒体を含むこともでき、排水管は開口を有し、開口は、粒子が底部排水管を通過できないようにするサイズを有し、更に、開口は、粒子の形状に対して相補的でない形状を有する。蒸発室は、少なくとも蒸発室の加熱域の近傍の領域で沈殿の蓄積を妨げるための自浄媒体を含むことができる。媒体は複数の粒子を含むことができる。粒子は略球状であってもよい。粒子は、蒸発室内の水の沸騰による粒子の略連続的な攪拌を可能にする特性を含むことができる。特性は、例えば、比重、サイズ、形態、個体数などであってもよい。粒子は選択された硬度を有し、それにより、硬度は、粒子または蒸発室を実質的に腐食させることなく粒子による蒸発室の汚れ落としを可能にする。また、粒子は、セラミック、金属、ガラス、または石から構成されることができる。粒子は、約1.0よりも大きく且つ約8.0よりも小さい、またはより好ましくは約2.0〜約5.0の比重を有することができる。
【0012】
上側デミスタを蒸発室の上面近傍に位置させることができる。蒸発室からの蒸気は加圧下でデミスタに入ることができる。デミスタは圧力差を含むことができ、圧力差は125〜約2500Pa以上であってもよい。デミスタは、サイクロン作用によって或いはミスト粒子が蒸気によって運ばれるのを妨げる機械的障害を与えることによって、清浄蒸気を廃蒸気から分離するように適合されていてもよい。廃蒸気に対する清浄蒸気の比率は約10:1より大きくてもよい。制御システムは、蒸気品質を調整するためのパラメータを調整できる。蒸気品質は、例えば、清浄な蒸気純度、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率などを含むことができる。パラメータは、清浄蒸気排出口の凹部位置、デミスタにわたる圧力差、蒸気注入口の流れに対する抵抗、および蒸気排出口の流れに対する抵抗などの少なくとも1つのパラメータを含むことができる。
【0013】
デミスタからの清浄な蒸気は、蒸気に対して円形動作を与えるための羽根を含む上側凝縮器に入り、したがって、凝縮器内でのその滞留時間が長くなり、完全な蒸気凝縮が確保される。凝縮器タンクは、複数のヒートパイプを収容する多孔上端部を有する円筒状または長方形状のタンクである。ヒートパイプは、蒸気の凝縮熱を除去して、そのような熱を上側予熱器または上側蒸発室に伝える。生産水は、生成物排出口を通じて生成物凝縮器から出ることができる。
【0014】
沸騰および凝縮の複数の段階を上側凝縮器の下側に与えることができ、したがって、蒸留の複数の段階のための熱が再循環される。底部蒸発室にある最後の段階を除き、各段階は、蒸発室、デミスタ、凝縮器、および複数のヒートパイプから成り、これらの全ては前述したものと同一である。
【0015】
底部蒸発室は、熱エネルギ源がその下側或いは蒸発室自体の内側に配置される点を除き、上側蒸発室と同じである。蒸発のための熱は、電気、天然ガス、石油、または他の炭化水素燃料、または約110℃以上の温度を与える任意の廃棄物源であってもよい。
【0016】
より詳細には、本開示は、注入口と、予熱器と、脱気装置と、複数の蒸発室と、デミスタと、ヒートパイプと、生成物凝縮器と、廃棄物排出口と、複数の生成物排出口と、加熱室と、制御システムとを備える浄水及び脱塩システムであって、凝縮熱が回収されて更なる蒸発のために再使用され、蒸留エネルギが、電気、油、炭化水素、または天然ガスの燃焼、または廃熱から成っていてもよく、制御システムが、ユーザ介入または洗浄を必要とすることなく浄水および脱塩の連続動作を可能にし、システムが、汚染水サンプルから、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物を含む複数の汚染物質の種類を除去することができ、それにより、汚染された水に含まれる汚染物質種が表1のMCL列に示されるレベルの25倍以下のレベルを有するときに、システムで浄化された水に含まれる全ての汚染物質種のレベルが表1のMCL列に示されるレベルを下回る、浄水及び脱塩システムに関する。
【0017】
更なる態様において、システムは、注入水の量の約20%〜約95%である浄水量を生成する。
【0018】
更なる態様において、システムが少なくとも約2ヶ月の使用にわたって洗浄を必要としない。
【0019】
更なる態様において、システムが少なくとも約1年の使用或いはそれ以上にわたって洗浄を必要としない。
【0020】
更なる態様において、システムは、注入口を通じた水の流れを調節するための注入口スイッチを備える。
【0021】
更なる態様において、注入口スイッチは、ソレノイド、バルブ、およびアパーチャから成るグループから選択される機構を備える。
【0022】
更なる態様において、注入口スイッチが制御システムにより制御される。
【0023】
更なる態様において、システムは停止制御器を備える。
【0024】
更なる態様において、停止制御器は、手動制御器、氾濫制御器、凝縮器容量制御器、および蒸発室容量制御器から成るグループから選択される。
【0025】
更なる態様において、制御システムは、蒸発室内の温度センサ、凝縮器フロート、および氾濫検出器のうちの少なくとも1つからのフィードバックに基づいて注入口を制御する。
【0026】
更なる態様において、制御システムは、浄化システムからのフィードバックに基づいてスイッチを制御する。
【0027】
更なる態様において、フィードバックは、生産水容器内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流れ、水流の時間、水流がない時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、流出水水質(総溶解固形分)、蒸発室内の圧力差、および蒸発室越流堰フロートを横切る水の移動から成るグループから選択される少なくとも1つの特性に基づく。
【0028】
更なる態様において、システムは流量コントローラを備える。
【0029】
更なる態様において、流量コントローラが圧力調整器を備える。
【0030】
更なる態様において、圧力調整器が約0kPa〜250kPa(0〜36psi)の水圧を維持する。
【0031】
更なる態様において、システムは堆積物トラップを備える。
【0032】
更なる態様において、予熱器から出る水が少なくとも約96℃の温度を有する。
【0033】
更なる態様において、脱気装置は、略垂直方向に向けられ、上端および下端を有する。
【0034】
更なる態様において、予熱器からの加熱水が脱気装置の上端近傍に入る。
【0035】
更なる態様において、加熱水が脱気装置の下端近傍から出る。
【0036】
更なる態様において、蒸発室からの蒸気が脱気装置の下端近傍に入る。
【0037】
更なる態様において、蒸気が脱気装置の上端近傍から出る。
【0038】
更なる態様において、脱気装置は、水と蒸気との混合を促進させるように適合されているマトリクスを備える。
【0039】
更なる態様において、マトリクスが略球状の粒子を備える。
【0040】
更なる態様において、マトリクスが非球状の粒子を備える。
【0041】
更なる態様において、マトリクスは、脱気装置内で均一な充填を可能にするように選択されるサイズを有する粒子を備える。
【0042】
更なる態様において、マトリクスが異なるサイズの粒子を備え、粒子がサイズ勾配を成して脱気装置内に配置される。
【0043】
更なる態様において、脱気装置から出る水が有機物および揮発性ガスを実質的に伴わない。
【0044】
更なる態様において、蒸発室は、下側の凝縮器から伝えられる熱を供給する複数のヒートパイプを含む。
【0045】
更なる態様において、蒸発室が排水管を更に備え、排水管が蒸発室にあり或いは蒸発室の中央の周囲にある。
【0046】
更なる態様において、蒸発室は、各ヒートパイプを取り囲む同心多孔円筒体内に封入される複数の粒子を備える自浄媒体を更に備える。
【0047】
更なる態様において、蒸発室は、少なくとも蒸発室内のヒートパイプの近傍の領域で沈殿の蓄積を妨げるための自浄媒体を備える。
【0048】
更なる態様において、媒体が複数の粒子を備える。
【0049】
更なる態様において、粒子が略球状である。
【0050】
更なる態様において、粒子は、蒸発室内の水の沸騰による粒子の略連続的な攪拌を可能にする特性を備える。
【0051】
更なる態様において、特性は、比重、サイズ、形態、個体数、および組成から成るグループから選択される。
【0052】
更なる態様において、粒子が選択された硬度を有し、硬度は、粒子または蒸発室を実質的に腐食させることなく粒子による蒸発室の汚れ落としを可能にする。
【0053】
更なる態様において、粒子は、セラミック、金属、ガラス、または石から構成される。
【0054】
更なる態様において、粒子が約1.0よりも大きく且つ約8.0よりも小さい比重を有する。
【0055】
更なる態様において、粒子が約2.0〜約5.0の比重を有する。
【0056】
更なる態様において、加熱室は、電気加熱素子、ガスまたは石油バーナー、または廃熱源からの熱を伝えるヒートパイプを更に備え、加熱室が蒸発室の底部に隣接する。
【0057】
更なる態様において、デミスタが蒸発室の上面近傍に位置される。
【0058】
更なる態様において、蒸発室からの蒸気が加圧下でデミスタに入る。
【0059】
更なる態様において、デミスタが圧力差を生み出すように構成され、圧力差が125〜2500Pa以上である。
【0060】
更なる態様において、デミスタは、サイクロン作用によって清浄蒸気を廃蒸気から分離するように適合されている。
【0061】
更なる態様において、蒸発室は、凝縮滴がデミスタに入ることをバッフルガードおよび金属溝によって防止する。
【0062】
更なる態様において、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率が約10:1よりも大きい。
【0063】
更なる態様において、蒸気品質は、清浄な蒸気純度、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率、および清浄蒸気の総量から成るグループから選択される少なくとも1つの品質を備える。
【0064】
更なる態様において、デミスタ制御パラメータは、清浄蒸気排出口の凹部位置、デミスタにわたる圧力差、蒸気注入口の流れに対する抵抗、および蒸気排出口の流れに対する抵抗から成るグループから選択される少なくとも1つのパラメータを備える。
【0065】
更なる態様において、システムは、凝縮器生成物を冷却するためのヒートパイプを備える。
【0066】
更なる態様において、生産水が生成物排出口を通じて生成物凝縮器から出る。
【0067】
更なる態様において、廃水が廃棄物排出口を通じてシステムから出る。
【0068】
更なる態様において、制御システムは、システムが安定な動作温度に達するまで生産水を廃棄物排出路へそらす。
【0069】
更なる実施形態において、本開示は、水を浄化して脱塩する方法であって、第1の濃度の少なくとも1つの汚染物質を備える注入水源を設けるステップと、注入水の温度を90℃を超えて上昇させることができる予熱器に注入水を通過させるステップと、脱気装置内でガスの反対方向の流れに抗して注入水を逆流させることによって、ほぼ全ての有機物、揮発性物質、およびガスを注入水から取り除くステップと、蒸気の形成を可能にする条件下で水を蒸発室内に10〜90分或いはそれ以上の平均滞留時間にわたって維持するステップと、蒸気を蒸発室からサイクロンデミスタへ排出するステップと、清浄な蒸気の発生量がデミスタからの廃棄物の発生量よりも少なくとも約4倍多くなるようにデミスタ内で清浄な蒸気を汚染物質を含む廃棄物から分離するステップと、清浄な蒸気を凝縮させて、第1の濃度よりも低い第2の濃度の少なくとも1つの汚染物質を備える浄水を発生させるステップと、回収される熱の量が凝縮熱の少なくとも50%になるように、凝縮器から熱を回収して上側蒸発室または予熱器へ伝えるステップとを備える方法に関する。
【0070】
更なる態様において、少なくとも1つの汚染物質は、微生物、放射性核種、塩、有機物から成るグループから選択される汚染物質を備え、第2の濃度が表3に示される濃度以下であり、第1の濃度が第2の濃度の少なくとも約10倍である。
【0071】
更なる態様において、第1の濃度が第2の濃度よりも少なくとも約25倍大きい。
【0072】
更なる態様において、ガスは、蒸気、空気、および窒素から成るグループから選択される。
【0073】
更なる態様において、プロセスステップは、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約3ヶ月間にわたって自動的に繰り返される。
【0074】
更なる態様において、プロセスステップは、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約1年間にわたって自動的に繰り返される。
【0075】
更なる態様において、蒸発室、凝縮器、および予熱器の積層構造が、蒸発室と凝縮器とを分離する多孔板を伴って金属シェル内に封入される。
【0076】
更なる態様において、多孔板は、ヒートパイプ、脱気装置、デミスタ、塩水オーバーフローチューブ、および廃棄物流チューブの通過を可能にする。
【0077】
更なる態様において、蒸発室、予熱器、ヒートパイプの構造の材料が非腐食性チタン合金から形成される。
【0078】
更なる態様において、非腐食性チタン合金がTi−6Al,4V合金を備える。
【0079】
更なる態様において、蒸発室、予熱器、およびヒートパイプは、非腐食性クロロフルオロカーボンポリマーでコーティングされる普通鋼または他の金属または合金を備える。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】Aは、脱塩/浄水システムの実施形態の正面図であり、Bは、脱塩/浄水システムの実施形態の正面図である。
【図2】底部蒸発室の概略図である。
【図3】底部蒸発室の正面図である。
【図4】(a)は、想定し得る加熱形態を示している。(b)は、想定し得る加熱形態を示している。(c)は、想定し得る加熱形態を示している。(d)は、想定し得る加熱形態を示している。(e)は、想定し得る加熱形態を示している。
【図5】凝縮器の概略図である。
【図6】凝縮器の平面図(plant view)である。
【図7】Aは、二重蒸留形態のための蒸発室の概略図であり、Bは、三重蒸留形態のための蒸発室の概略図である。
【図8】凝縮器の概略図である。
【図9】予熱器の概略図である。
【図10】予熱器の平面図(plant view)である。
【図11】予熱器の正面図である。
【図12】脱気装置の概略図である。
【図13】脱気装置の正面図である。
【図14】バッフルガードおよび金属溝の図である。
【図15】バッフルガードの写真である。
【図16】サイクロンデミスタの概略図である。
【図17】ヒートパイプの概略図である。
【図18】ヒートパイプのための自浄機能を示す図である。
【図19】漏れのない動作を行なうようにヒートパイプを取り付けるための想定し得る構成の図である。
【図20】脱塩・浄水システムの一実施形態の制御回路の図である。
【図21】脱塩システムの積層配置のための別の実施形態の正面図である。
【図22】脱塩システムの別の実施形態のための多孔板の図である。
【図23】脱塩システムの積層配置のための別の実施形態の平面図(plant view)である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
ここでは、場合により典型的な形態で或いは1つ以上の図を参照することにより、本発明の実施形態が開示される。しかしながら、特定の実施形態の任意のそのような開示は、単なる典型的なものであり、本発明の全範囲を示すものではない。
【0082】
本発明の実施形態は、浄水および脱塩のためのシステム、方法、および装置を含む。好ましい実施形態は、完全に自動化され且つ非常に長い期間にわたって洗浄またはユーザ介入を必要としない広範囲の浄水を提供する。例えば、ここに開示されるシステムは、2、4、6、8、10または12か月あるいはそれ以上にわたってユーザの制御または介入を伴わずに作動できる。好ましい実施形態において、システムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15年あるいはそれ以上にわたって自動的に作動できる。
【0083】
したがって、本発明の実施形態は、少なくとも、塩水、汚染水、または海水のための注入口、予熱器、脱気装置、1つ以上の蒸発室、1つ以上のデミスタ、生成物排出口を有する1つ以上の生成物凝縮器、廃棄物排出口、および制御システムを含む浄水及び脱塩システムであって、排出口から出る生産水が略純水であり、生成される生産水の量が流入水の量の少なくとも約10、15または20%であり、制御システムがユーザ介入を要求することなく浄化システムの動作を連続的に可能にする、浄水及び脱塩システムを提供する。好ましい実施形態において、生成される生産水の量は、流入水の量の少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98または99%以上である。したがって、システムは、流入水の取得及び/又は廃水の処分と関連する比較的高い費用または不都合を伴う状態において大きな利点を有する。システムは、単位流入水または廃水当たりの生産水のその生成において多くの他のシステムよりもかなり効率良い。
【0084】
略純水は、異なる実施形態では、以下の基準のいずれかを満たす水、すなわち、注入水よりも少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、500、750、1000倍またはそれ以上高い純度である所定の純度まで任意の汚染物質に関して浄化される水であってもよい。他の実施形態において、略純水は、注入水中に存在する複数の汚染物質に関して先のレベルのうちの1つまで浄化される水である。すなわち、これらの実施形態において、水純度または水質は、一連の1つ以上の汚染物質の濃度の関数であり、また、略純水は、注入水中のこれらの汚染物質の濃度と生産水中の同じ汚染物質の濃度との間で例えば25倍以上の比率を有する水である。
【0085】
他の実施形態では、水純度を導電率によって測定することができる。この場合、超純水は一般に約0.1マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有し、また、蒸留水は一般に約0.5の導電率を有する。そのような実施形態において、生産水の導電率は、一般に約0.1〜0.77、典型的には約0.2〜0.6、好ましくは約0.2〜0.5、0.2〜0.4、または0.2〜0.3である。導電率は、総溶解固形分(TDS)の尺度であり、塩、イオン、ミネラル等に関する水純度の良好な指標である。
【0086】
あるいは、水純度は、例えば表1および表2に挙げられるような現在の米国環境保護庁(EPA)規格および表2に挙げられるような他の一般に認められた規格などの様々な規格によって測定することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態は、例えば表1に挙げられる任意の汚染物質を含む任意の1つ以上の汚染物質を広範囲の汚染物質から減らすことができる。表1において、最終的な生産水は、そのような汚染物質に関して、「MCL」(最大濃度レベル)の標識が付された縦列に定められるレベル或いはそれを下回るレベルを有し、この場合、注入水は、そのような汚染物質に関して、定められたMCLの最大で約25倍のレベルを有する。同様に、幾つかの実施形態において、および幾つかの汚染物質に関して、本発明のシステムは、注入水がMCLまたは生産水よりも30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、500または1000倍或いはそれ以上高い汚染物質を有するときに、汚染物質をMCLに至るまで除去することができる。
【0087】
汚染物質を注入水から除去するための任意のシステムの能力は、ある程度、注入水中の総不純物レベルの関数であるが、本発明のシステムは、大きく異なる種類の複数の異なる汚染物質を単一の供給流から除去して、蒸留水に匹敵し、場合によっては超純水に匹敵する水を生成するのに特に良く適する。なお、表1の縦列「チャレンジ水」は、EPA試験で使用される水中の汚染物質における濃度レベルを含む。本発明の浄水システムの好ましい実施形態は、一般に、この縦列に挙げられる量よりもかなり多い量の初期汚染物質を除去することができる。しかしながら、勿論、縦列「チャレンジ水」に記載されるレベルに対応する汚染物質レベルも同様に本発明の実施形態の能力の範囲内に十分入る。
【0088】
表1












【0089】
水純度及び/又は浄水性能の効率の決定は、広範囲の汚染物質を除去できるシステムの能力に基づくことができる。多くの生物学的汚染物質に関して、目的は、ほぼ全ての生きた汚染物質を除去することである。表2は、源水の更なる一般的な汚染物質、および汚染物質の試験レベルのための標準的なプロトコルを挙げている。表1、2に挙げられるプロトコルは、一般的な水質汚染物質に関するハイパーテキスト転送プロトコルwww.epa.gov/safewater/mcl.html#mcls(飲用水中の有機化合物の決定のための方法、EPA/600/4−88−039、1988年12月、1991年7月改訂)で公的に利用できる。方法547、550および550.1が、飲用水中の有機化合物の決定のための方法−補足I、EPA/600−4−90−020、1990年7月の中にある。方法548.1、549.1、552.1および555が、飲用水中の有機化合物の決定のための方法−補足II、EPA/600/R−92−129、1992年8月の中にある。方法502.2、504.1、505、506、507、508、508.1、515.2、524.2、525.2、531.1、551.1および552.2が、飲用水中の有機化合物の決定のための方法−補足III、EPA/600/R−95−131、1995年8月の中にある。方法1613は、「Tetra−through OctaChlorinated Dioxins and Furans by Isotope−Dilution HRGC/HRMS」、EPA/821−B−94−005、1994年10月と題されている。以上のそれぞれは、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0090】
表2




【0091】
表3システム検証のための典型的な汚染物質





1 MCLG=目標最大許容濃度
2 MFL=百万ファイバ/リットル
3 pCi/l=ピコキュリー/リットル
4 実質的に検出できない生物的汚染物質
【0092】
浄水及び脱塩システムの全体的な説明
例えば図1Aおよび図1Bに示されるような好ましい実施形態において、浄水及び脱塩システムは、蒸発室(ボイラ、沸騰室、または沸騰タンクとしても知られる)1、3、5および凝縮器(凝縮室としても知られる)2、4、6の垂直に積層された配列から成る。この場合、熱源が積層体の底部に設けられ、予熱器(予熱室としても知られる)7が積層体の上端に設けられ、揮発性有機化合物を流入水から除去するために脱気装置8がシステムの上端に設けられ、各蒸発室から汚染されたミスト粒子を除去するために複数のデミスタ(霜取り装置としても知られる)9が設けられ、各凝縮器から熱を回収してそのような熱を上側の蒸発室へ伝えるために複数のヒートパイプ10が設けられ、また、水質汚染物質を除去して排出させるために廃棄物流排出口11が設けられる。当業者であれば、例えば、蒸発室、凝縮器、および予熱器などの側方配列など、垂直積層構造に代わる様々な構成が考えられる。
【0093】
図21、22、23は、蒸発室1、3、5および凝縮器2、4、6の垂直積層構造の別の実施形態を示している。この場合、熱源が積層体の底部に設けられ、予熱器7が積層体の上端に設けられ、揮発性有機化合物を流入水から除去するために脱気装置8がシステムの上端に設けられ、各蒸発室から汚染されたミスト粒子を除去するために複数のデミスタ9が設けられ、各凝縮器から熱を回収してそのような熱を上側の蒸発室へ伝えるために複数のヒートパイプ10が設けられ、また、水質汚染物質を除去して排出させるために廃棄物流排出口11が設けられる。そのような別の実施形態では、全ての蒸発室、凝縮器、および予熱器が外側シェル300内に入れられ、また、個々のタンクがプレートによって分離され、プレートの一部は、ヒートパイプ10、脱気装置8、熱塩水オーバーフローチューブ21、廃棄物流チューブ11、およびデミスタ9の通過に対応するために多孔板301である。この別の実施形態は、製造において特定のコスト利点を与えるとともに、熱損失を最小にする更に簡単な構成をもたらす。
【0094】
汚染物質を含む流入水、例えば塩水または海水がシステムの上端に連続的に入って予熱器タンク7に流入する。システムに入る流量は、定流量ポンプ、制御弁を有する可変流量ポンプ、または流入する流れ圧力を制御する様々な電子制御センサであってもよい流量コントローラによって制御される。流量コントローラに関しては、随意的に、流量コントローラは、圧力を変えることによりシステム内への水流を抑制することができ、また、注入水に対する大きな需要をシステム内で検出することによりそのような圧力変化を信号で伝えることができる。流量のバイナリ制御ではなく流量のこの可変制御は、システムにおいて特定の効率を得ることを可能にし得る。あるいは、システムに流入する流量は、システムが浄化プロセスのために更なる水を受けることができることを知らせる信号を受信することにより制御されてもよい。より多くの注入水に対する需要のそのようなフィードバックは、例えば、蒸発室1、3、5内の水位、生成物凝縮器2、4、6内の水位、脱気装置8内に入る予熱された水の温度、蒸発室から出る蒸気の温度または量などを含めて、システム内の様々なポイントからもたらすことができる。
【0095】
他の制御およびフィードバックのポイントは、例えば、システム内の任意のポイントでの水質の検出、システム内の任意のポイントでの水または蒸気の量の検出、システム故障を示す漏れ或いは温度の検出などを含むシステムの自動機能において、更なる利点を与えることができる。システムの実施形態は、そのような制御および制御の組み合わせの全てを熟慮する。これらは、例えば、氾濫、蒸発室容量などを検出する制御を含む。様々な実施形態において、フィードバックは、定性的であってもよく及び/又は定量的であってもよい。これらは、例えば、生成物凝縮器内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流量、水流時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、出力水質(例えば、総溶解固形分の尺度など)、蒸発室にわたる或いはシステムの他のポイントにわたる圧力差、蒸発室オーバーフローにわたる水の流量を含むことができる。
【0096】
電気バーナー、天然ガスバーナー、または石油バーナーによって或いは廃熱によって熱エネルギが供給されて、システムがONされると、システムは、システムの寿命のほぼ全体にわたって完全自動制御されるように構成される。システムは、通常の状況下でユーザ介入が必要とされないように、氾濫を回避して水流量、圧力、出力、および連続洗浄を調整するための様々なフィードバック機構を含む。これらの制御の中には、予熱器7内のフロート液面検出器、サイドフロートスイッチ、タイマ、温度センサ、および電力計がある。
【0097】
停止制御器は、手動制御器、システムのベースにあるフロートまたは水分検出器であってもよい氾濫制御器、凝縮器容量制御器、および蒸発室容量制御器を含む。注入水または他のパラメータのバイナリ、ON/OFF切り換えを与える制御に加えて、システムは、例えば、圧力ベースまたは容量ベースの流量制御、圧力調整器などの可変制御を熟慮する。好ましい実施形態において、圧力調整器は、注入水圧力をそれが例えば0〜250kPaとなるように調整することができる。他の実施形態において、圧力は、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、275、300、350、400、450または500kPa或いはそれ以上であってもよい。圧力の調整は、随意的に他のパラメータの調整と組み合わせて、システム内の水流の量および速度を減衰させることができる。例えば、システムの寸法と組み合わせた圧力調整は、2.5〜132、000リットル/分またはそれ以上の水流量を与えることができる。ここで説明されるシステムは、主に、比較的大規模な水製造に関して説明されるが、システムは任意の量の水製造に合わせて拡大縮小可能である。したがって、水流量に上限または下限はない。しかしながら、典型的な流量は、10〜500ml/分、5〜1000リットル/分、30〜30000リットル/分、400〜200000リットル/分などの範囲を含む。
【0098】
システムは、注入水から堆積物を除去できる堆積物トラップを更に含み、それにより、そのような堆積物によってシステムが早期に汚染されるのを回避できる。当技術分野においては様々な種類の堆積物トラップが知られており、本発明のシステムと共に使用するために様々な種類の堆積物トラップを選択できる。同様に、ユーザ介入および洗浄の必要性を最小限に抑えるために、堆積物トラップは、それ自体、自浄機能を有することができる。例えば、堆積物トラップは、交互サンドフィルタまたは回転スクリーンを有することができる。この場合、汚染されたスクリーンから新しいスクリーンへの交代を装置にわたる水圧差によって行なうことができ、それにより、スクリーンが蓄積堆積物に関して特定の飽和点に達すると、そのスクリーンが堆積物により汚染されていないスクリーンに切り換えられる。幾つかの実施形態では、汚染されたスクリーンまたはサンドフィルタを水の流路内に配置し、それにより、スクリーンを横切る当初の流れ方向とは反対の方向で水がサンドフィルタまたはスクリーンを横切って流れるようにして、堆積物を廃棄物経路または排水管へと堆積物を除去することができる。したがって、ここに開示されるシステムは、従来の堆積物トラップおよび自浄堆積物トラップの使用を熟慮する。
【0099】
浄水及び脱塩システムの予熱機能は予熱器7を含むことが好ましい。しかしながら、システム内へ流入する塩水または海水が約90℃以上の温度の脱気装置8に到達する結果となる場合には、この機能を多数の異なる方法で果たすことができる。したがって、予熱機能は、例えば、内容積に対する表面積の高い比率を可能にする構造を伴う円筒タンク、長方形タンク、または異なる形態の任意の種類のタンク等を含む多数の異なる形態で具現化できる。
【0100】
例えば図9、10、11によって示されるような好ましい実施形態において、予熱器は、予熱器の底部を貫通する複数のヒートパイプ10によって加熱される。これらのヒートパイプは、凝縮器からの凝縮熱を流入する海水または塩水に伝える。海水または塩水がオリフィス71を通じて予熱器7に入ると、流入水は、螺旋羽根によって予熱器の底部に押しやられる螺旋パターンで水が流れるにつれてヒートパイプ10によって沸騰温度付近まで徐々に加熱される。流入する海水または塩水は、予熱器の上側中心近傍で沸騰温度付近に達すると、チューブ82を通じて予熱器から出て、脱器装置8の上端近傍に入る。予熱器の寸法および形態は、予熱器内の水の温度を約90℃以上まで高めるのに十分な滞留時間を可能にするように適合されている。システムの規模に応じて、また、水の処理量に関するシステムの能力に応じて、予熱機能は、効率的な熱交換を可能にする材料および形態から利益を享受し得る。あるいは、幾つかの実施形態では、構造の耐久性、スペース考慮、メンテナンスの容易性、材料の利用可能性または費用、および他の考慮が、本発明のこの態様における設計上の選択に影響を及ぼす可能性がある。
【0101】
幾つかの実施形態において、システムは、例えば高度が高いなどの標準外の環境的条件下で有利に機能できる。高い高度では、塩水または海水を含む水の沸点が100℃を下回り、したがって、蒸発室に対する通常の熱の印加率では、より多くの量の蒸気を生成するとともに、システムにおける定量的なスループットを更に高めることができる。そのような実施形態では、予熱温度が影響を受ける場合もあることは明らかである。蒸発室温度が下がり、凝縮器温度が下がる場合には、予熱器内での水の滞留時間を更に長くできるようにすることによって、例えば、同じ流量をもって更に大きい容積を有するように或いは同じ容積をもって更に少ない流量を有するように予熱器を構成することにより、所望の温度までの予熱を達成できる。しかしながら、蒸発室内での高レベルの蒸気生成に起因して、殆どの実施形態では、予熱チューブ内の流量を下方修正して有利な滞留時間および望ましい予熱温度を得ることが嫌われる。これは、より大きな蒸気生成率が同時に注入水に対する高い需要を意味するからである。
【0102】
脱気は、図12および図13によって示され水蒸気蒸留によって達成される。脱気装置性能における重要なファクタは、質量移動率、すなわち、垂直脱気装置内で下方へ向かう水の質量と上方へ向かう水蒸気の質量との比率である。確かに、脱気機能は、ガスを伴う水の質量移動逆流を可能にする様々な構成によって達成できる。好ましい実施形態では、ガスが蒸気である。つまり、ガスが空気や窒素などであってもよい。水と蒸気との混合速度および混合作用は、脱気装置カラム媒体のサイズ、構造、および充填度、並びに、媒体の粒子間の空隙量によって影響される。好ましい実施形態において、媒体の粒子は螺旋を形成するように充填する。脱気装置の性能は、それを通過する蒸気および水の速度および量によって影響される。したがって、これらは、蒸気注入・排出オリフィスのサイズや水流量などのファクタによって制御することができる。脱気装置の機能および構造に関する有用な情報は、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられるWilliams、RobertのThe Geometrical Foundation of Natural Structure(A Source Book of Design、New York:Dover、1979)において与えられる。
【0103】
したがって、注入水流量の制御、脱気装置内での大きい蒸気泡の回避等は、脱気装置の効率的な機能を助けることができる。これらのパラメータが望ましい範囲内にないときには、脱気装置内で氾濫または噴流が生じる可能性がある。注入水の氾濫は脱気装置内に水プラグを形成し、また、噴流は水を蒸気と共に脱気装置から吹き飛ばし、これらのうちのいずれかが脱気装置性能に支障を来す可能性がある。したがって、氾濫および噴流を最小限に抑え且つ水流入と蒸気流出との間のバランスが良い領域で動作することが望ましい。本発明の実施形態の脱気装置は、それが多くの従来の脱気装置のように1つの汚染物質だけを完全に除去するように設計されていないという点において特に重要である。代わりに、本発明の実施形態の脱気装置は、様々な汚染物質を非常に効果的に除去する。注入水が例えば1ppmの汚染物質を有する典型的な設定では、プロセスは、50、40、10、5、2または1ppbに至るまでの減少を達成しようとする。
【0104】
水の脱気は、通常、流入水を加熱して揮発性化合物の蒸気圧を高めることによって達成される。各化合物の沸点では、溶解ガスの溶解度がゼロまで降下し、その結果、ガスが水から抜け出る。例えば、飲用水中で見出される揮発性物質の多くは、通常は水の沸点を十分に下回る温度で非常に大きな分圧を有する塩素化合物である。したがって、これらの物質の多くは、水を約200−210°F(93−99℃)の温度まで加熱して適切な脱気を行なうことによって水から除去することができる。しかしながら、物質は水から直ぐに完全に抜け出ず、したがって、溶解ガスを完全に除去するためには幾らかの時間を要する。
【0105】
以前の脱気装置の構造に伴う1つの困難は、それらが脱気装置内での加熱水の滞留時間の制御を殆ど行なわないということである。その結果、過剰な量の揮発性物質が流入水中に存在する場合には、全ての揮発性物質の脱気を行なうのに十分な滞留時間が与えられない場合がある。また、多くの脱気装置は圧力制御を伴うことなく動作し、そのため、水蒸気がシステムからの揮発性成分の質量移動を行なうために選択される媒体である場合には、水蒸気の過剰な損失をもたらす可能性がある。
【0106】
脱気装置構造の他の問題は拡張性である。大型の産業用脱気装置は、かなりの圧力降下と多量の液体およびガスとを伴って動作し、質量移動、したがって脱気にとって効果的であるが、小型の脱気装置はうまくスケールダウンしない。必要なものは、付加的な滞留時間を可能とし且つ廃蒸気の量も制限できる更にコンパクトな脱気装置である。
【0107】
幾つかの実施形態では、同心的な粒子の層を有する脱気装置が設けられる。この場合、粒子の内側層は、粒子間に比較的小さい空間をもたらすように構成され、また、粒子の外側層は、粒子間に比較的大きい空間をもたらすように構成される。様々な実施形態では、粒子は、無作為な構造化された充填を脱気装置内で成す。粒子は、金属、ガラス、およびプラスチックなどの材料から形成することができる。脱気装置は水入口を上端に有することができる。脱気装置は、廃蒸気出口を上端に有することができるとともに、加熱蒸気入口および水出口を下端に有することができる。
【0108】
幾つかの実施形態では、同心的な粒子の層を保持する容器を有する脱気装置が設けられる。この場合、粒子の内側層は、粒子間に小さい空間をもたらすように構成され、粒子の中間層は、粒子間に中程度の空間をもたらすように構成され、また、粒子の外側層は、粒子間に比較的大きい空間をもたらすように構成される。中程度の空間は、システム内の水蒸気が気相から液化し始めるように適合されており、また、小さい空間は、水蒸気が液体の水へと変換されるようにこのプロセスが続くべく十分に小さい。
【0109】
他の実施形態において、脱気装置の容器は、該容器の底部外周に蒸気入口を有する。蒸気入口により、蒸発室からの加熱蒸気は、外周で容器に入って、脱気装置の内側の外周を加熱できる。容器は、該容器の上端に蒸気出口を有しており、この蒸気出口で廃蒸気がシステムから抜け出る。容器は、該容器の上端に水入口を有する。容器は、該容器の底部に浄水出口を有する。水出口は、例えば、容器の中央底部に位置される。容器は粒子で満たされる。幾つかの実施形態では、3つのサイズの粒子が存在し、所定のサイズの各粒子が同心円帯で位置される。つまり、そのような実施形態では、3つの同心円帯が存在し、各同心円帯が所定サイズの粒子を有する。好ましい実施形態では、粒子がガラスビーズである。より好ましい実施形態では、3つのサイズの粒子が存在し、最も大きいサイズの粒子が容器の最も外側の領域に存在し、最も小さいサイズの粒子が容器の最も内側の領域に存在する。
【0110】
幾つかの実施形態はコンパクトで更に効果的な脱気装置を含む。脱気装置は様々な多孔率の同心層を使用し、それにより、蒸気が通過できるようにする領域が脱気装置に形成されるとともに、水蒸気凝縮を促進させる他の領域が形成されるのが好ましい。脱気装置は、該脱気装置の内側に表面積を加える粒子を脱気装置の内側に有し、それにより、水が浄化されるためのより長い滞留時間を可能にする。
【0111】
幾つかの実施形態において、システムの多孔性は異なるサイズの粒子によって得られる。これらの実施形態において、外側層の粒子は、加熱蒸気が蒸発室などの蒸気源から脱気装置全体内へと更に容易に通過できるように比較的大きいサイズを有する。蒸発室からくるこの加熱蒸気は、システムの内部温度を沸点付近に維持するための断熱体としても作用し得る。大きいサイズの粒子から構成される外側層の内側は、中間サイズの粒子の層である。この中間サイズの粒子の層は、適切な透過性と長い滞留時間とをもたらし、それにより、高い比率の揮発性物質を脱気させることができる。孔と粒子とから成るこの中間サイズの層は、蒸気から水を液化させる傾向が強い。これは、粒子間の空間が小さいからである。内側層は更に小さいサイズの粒子を含み、それにより、孔の大部分が脱気水で満たされ、該脱気水は重力によって蒸発室内へと流れる。
【0112】
脱気システムは蒸発室装置に近接して位置されるのが好ましい。好ましくは、脱気ユニットが蒸発室の上端に位置される。これにより、蒸発室からの蒸気は、蒸発室から上昇して脱気装置へと直接に至ることができる。また、これにより、脱気装置からの脱気水は蒸発室内へと真っ直ぐに流出できる。当業者であれば分かるように、蒸発室と脱気装置との間に大きな距離間隔は何ら必要ない。1つの実施形態では、粒子を保持するためのスクリーンだけが脱気装置を蒸発室から分離する。
【0113】
粒子は、任意の形状、例えば、球状、半球状、不定形状、長方形状、楕円状、正方形状、円形状、多角形状、不規則状(例えば砂利)等を成すことができる。粒子表面は、例えば、無孔、多孔質、半多孔質、コーティングされ、あるいは、長い滞留時間を与えるように構造化されるなど、望み通りに変化され得る。粒子は球状で且つ無孔質であることが好ましい。当業者であれば分かるように、異なるサイズの粒子は、粒子間に異なるサイズの空間(隙間空間)を有する。例えば、大きいガラス球は、小さいガラス球よりも大きい空間を有する。粒子間空間のサイズは、粒子のサイズ、粒子の形状、および他のファクタに基づいて変化し得る。一般に、大きい略球状の粒子は、大きい多孔率を有する混合体をもたらす。すなわち、球間に比較的大きい空間が存在する。同様に、小さい粒子は小さい隙間空間を有し、それにより、蒸気を液体水へと凝縮する傾向が強い環境がもたらされる。
【0114】
粒子を任意の適した材料から形成できる。典型的な材料としては、金属、ガラス、複合体、セラミック、プラスチック、石、セルロース材料、繊維材料などが挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて材料の混合物を使用できる。当業者は、それぞれの特定の目的のために適した材料を決定できる。好ましくは、材料がガラスから形成される。選択された材料は、著しい亀裂、破壊、他の損傷を伴うことなく、または有毒な材料を水中に浸出させることなく、長期間にわたって高温使用に耐えることができるのが好ましい。必要に応じて、異なるサイズの粒子を異なる材料から形成できる。例えば、外側粒子を金属から形成することができ、中間層を耐熱性プラスチックから形成することができ、また、中心層をガラスから形成できる。選択された材料は、加熱プロセスに起因して破損、錆、または亀裂に耐えることができるのが好ましい。
【0115】
幾つかの実施形態では、粒子のサイズを変えるのではなく、粒子の表面特性などの粒子の他の特性が変えられる。また、必要に応じて、脱気装置に異なるサイズの粒子の混合体を充填することができる。この場合、充填処理は、小さい粒径が脱気装置の中心領域を徐々に満たすことができるようにするべく行なわれる。幾つかの実施形態において、層には、層全体にわたって均一な粒子が充填される。他の実施形態において、層は、不均一であるとともに、他の形状のビーズ、粒子、ガラスウール等を含む。粒子の不均一性は、サイズだけでなく、例えば組成、表面特性、密度、比熱、湿潤性(疎水性対親水性)、硬度、延性なども挙げることができる。好ましくは、前述したように、粒子がどのような形状をとるにせよ、不均一性は脱気装置内で同心リング状に分布されるが、本発明の幾つかの実施形態では、同心的でない他の配置も考えられる。
【0116】
本発明の方法を用いた水の処理によって除去できる或いは減少させることができる揮発性汚染物質の例としては、メチル第3ブチルエーテル、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレントランス−1,2−ジクロロエチレン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、エチルベンゼン、スチレン、テトラクロロエチレン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トルエン、塩化ビニル、キシレン、酸素、窒素、二酸化炭素、塩素、臭素、フッ素、および水素などの天然ガス、ギ酸、エチルヒドラジン、メチルメタクリレート、ブチルエチルアミン、ブタノール、プロパノール、アセトアルデヒド、アセトニトリル、ブチルアミン、エチルアミン、エタノール、メタノール、アセトン、アリルアミン、アリルアルコール、メチルアセテート、水酸化アンモニウム、アンモニアなどの他の揮発性有機化合物(VOC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
図7Aおよび図7Bに示されるように、流入塩水または海水が脱気されたら、該水が重力によって下側の蒸発室3内へ流れ込む。この沸騰タンクは、本質的に、システムの所望の処理能力とシステム設計に影響を及ぼすファクタに基づいてなされる他の設計選択とに応じて、任意のサイズおよび構造を有することができる。例えば、蒸発室は、約100ガロンまたは2000−10000ガロン、11000−100000ガロン或いはそれ以上の容積容量を有することができる。本発明のシステムは完全に拡張可能であるため、蒸発室のサイズを変えて望み通りに選択できる。同様に、蒸発室の構造を望み通りに変えることができる。例えば、蒸発室は、円筒状、球状、長方形状、または任意の他の形状であってもよい。好ましい実施形態において、蒸発室3は、円筒状であり、蒸発室の底部を貫通する複数のヒートパイプ10によって穿孔され、過剰な熱い塩水を下側の蒸発室内へと運ぶ中心に位置される排出管21を有するとともに、蒸発室の上端に取り付けられるデミスタ9を有する。この好ましい構造において、脱気装置の上端から揮発性構成物質を運ぶ廃棄物流11も蒸発室を垂直に横切る。デミスタからの清浄な蒸気91は上側の凝縮器4へと上方に流れる。
【0118】
浄水システムの動作は連続的であるため、塩水または海水が沸騰によって部分的に凝縮され、蒸発室3内の凝縮度合いが蒸留段階の数によって決定される。したがって、2つの蒸留段階が使用される場合には、蒸発室内の塩分の度合いは、拒絶されるべき廃塩水の値の半分、すなわち、約12%に維持される。3つの蒸留段階が使用される場合には、蒸発室3内の塩分の度合いは、約23%の最終塩水濃度の約1/3に達することができる。
【0119】
好ましい実施形態において、蒸発室は、重力のみによって排出管21を通じて排液する。他の実施形態では、蒸発室の排液がポンプ作用によって行なわれる。蒸発室3の連続排液は、蒸発室内の流体の一定レベルの沸騰を維持し、また、そのような連続排液は、蒸発室内での堆積物、塩、および他の粒子の沈殿も回避する。
【0120】
図18は、蒸発室内のスケール沈積を防止する自浄機構を示している。スケールは、蒸発室3の場合には各ヒートパイプ10の上面に対応するより熱い表面に優先的に形成する傾向がある。好ましい実施形態では、ヒートパイプは、多孔円筒体27および複数のセラミックボール28によって取り囲まれる。自浄媒体は、多数の適切な選択肢のいずれかから選択することができる。そのような選択肢としては、任意の様々な形状のガラスまたはセラミックビーズ或いはボール、石、合成構造体などが挙げられる。あらゆる場合において、自浄媒体の特性は、沸騰水による攪拌が自浄媒体の個々の粒子を移動させるがそのような移動が自浄媒体の物理特性によって克服され、それにより、各粒子が再び各ヒートパイプの側へと落下して蒸発室の底部に至り、任意の堆積物またはスケールと衝突して除去するように選択される。例えば、比較的高い比重を有するが体積に対する表面の比率が比較的小さい自浄媒体は、低い比重を有するが体積に対する表面の比率が比較的高い第2の自浄媒体にほぼ匹敵するような態様で機能する場合がある。いずれの場合にも、当業者は、所望の結果を達成するために形態の組み合わせ及び組成を選択することができる。幾つかの実施形態では、例えば超音波エネルギの適用などの別の自浄手法が使用される。
【0121】
自浄媒体の設計上の選択における他の考慮はその硬度である。一般に、硬度は、蒸発室を構成する材料の硬度にほぼ匹敵しなければならない。これは、媒体または蒸発室の壁または底部の著しい腐食を伴うことなく長期間にわたる自浄媒体の連続使用を可能にする。ヒートパイプ10を伴うケースなど、蒸発室の加熱要素が該室の内部にある幾つかの実施形態では、自浄媒体の硬度および他の特性を、加熱要素および蒸発室自体の腐食及び/又は他の損傷を回避するように選択できる。
【0122】
蒸発室の構造および蒸発室洗浄媒体によって与えられる自浄機構のため、本発明の実施形態のシステムは、その通常の使用のライフスパンにわたって洗浄を必要としない。幾つかの実施形態では、2、3、4、5または6カ月間にわたって洗浄が必要とされない。他の実施形態では、9、12、18、24、30または36ヶ月間にわたって洗浄が必要とされない。他の実施形態では、4、5、6、7、8、9または10年あるいはそれ以上にわたって洗浄が必要とされない。
【0123】
蒸発室内の水の滞留時間は、注入水の性質とシステムの所望の性能とに基づいて所定の範囲内で変化可能である。適切な範囲は、生物汚染物質が流入水中にあるかどうかを含む様々なファクタによって決定される。生物汚染物質を効果的に除去するには、蒸発室内で高温に晒される時間を変えることができる必要があり得る。一部の生物汚染物質は他の生物汚染物質よりも急速に高い熱に影響され易い。多くの実施形態では、10分程度の短い滞留時間が、殆どの生物汚染物質を殺すのに十分である。他の実施形態では、広範囲の生物汚染物質を更に完全に除去するために更に長い滞留時間が望ましい場合がある。蒸発室内での滞留時間の範囲の上限は、一般に、選択された量の水を沸騰温度に維持するために必要とされるエネルギと比べた生産水の所望の生成速度に関する効率を考慮することによって規定される。したがって、蒸発室内での滞留時間は、生物汚染物質の除去に有利な時間点に合わせた、水が沸点に達して蒸気として放出されるために必要とされる最小時間程度の短さ、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45分等となり得る。また、幾つかの実施形態では、例えば50、60、70、80および90分などの更に長い滞留時間が選択されてもよい。
【0124】
蒸発室内で生成される蒸気は、一般に、粒子、堆積物、および他の汚染物質がない。しかしながら、沸騰作用により、特定の汚染物質を、蒸気相中へ運ぶことができ、例えば空気/水界面に形成されるミストの微小滴の表面上に運ぶことができる。また、図14に示されるように、蒸気は蒸発室上端の下面上で液滴へと液化し得る。そのような液滴14は、横方向に移動できるとともに、蒸気の流れと共にデミスタ装置9に入ることができる。金属溝13が、そのような液滴が移動して蒸気流を汚染するのを防止する。また、バッフルガード15が、蒸気によって運ばれるミスト粒子に対するバリアを形成してもよい。図15は、蒸発室の下面に取り付けられるバッフルガードの写真を示している。
【0125】
上記蒸気洗浄機構に加えて、デミスタを用いて、清浄蒸気をそのような汚染物質を伴うミストから分離できる。当技術分野においては、蒸気をサイズおよび移動性に基づいてミストから分離するためにスクリーンやバッフル等を使用するデミスタを含めて、様々な種類のデミスタが知られている。好ましいデミスタは、蒸気を差分密度に基づいてミストから分離するためにサイクロン作用を使用するデミスタである。サイクロンは、流体またはガスを高速で径方向動作で移動させるという原理で作用し、それにより、流体またはガスの構成要素に対して遠心力を及ぼす。従来のサイクロンは、あるケースでは角加速を助けることができる円錐曲線を有する。サイクロン分離の効率を制御する重要なパラメータは、蒸気注入口のサイズ、清浄な蒸気および汚染物質を伴うミストのための2つの排出口のサイズ、および入口ポイントと出口ポイントとの間の圧力差である。
【0126】
図3および図16により示されるように、デミスタは、一般に、蒸発室1または3内またはそれよりも上側に位置され、それにより、蒸発室からの蒸気が入口オリフィス92を通じてデミスタ内に入ることができる。そのようなオリフィスを通じてデミスタ内に入る蒸気は、主に蒸発室とデミスタとの間の圧力差およびオリフィスの構造の関数である初期速度を有する。一般に、デミスタにわたる圧力差は水の約0.5〜10インチコラム−約125−2500Paである。入口オリフィスは、一般に、サイクロンへの蒸気の流入に対して大きな抵抗を与えないように形成される。高速では、例えばサイクロン円錐領域93では、ミストよりも密度が比較的かなり小さい清浄な蒸気がサイクロンの中心へと移動し、一方、ミストは外周に向けて移動する。サイクロンの中心に位置される清浄蒸気排出口91は清浄な蒸気のための出口ポイントを与え、一方、サイクロンの底部付近に位置されるミスト排出口94はデミスタからのミストの流出を許容する。清浄な蒸気はデミスタから凝縮器へと通り、一方、ミストは再び蒸発室に入るように方向付けられる。典型的な動作では、ミストに対する清浄蒸気の比率は、少なくとも約2:1、より一般的には3:1、4:1、5:1または6:1、好ましくは7:1、8:1、9:1または10:1であり、最も好ましくは10:1よりも大きい。デミスタ選択性は、例えば、清浄蒸気出口開口の位置およびサイズ、デミスタにわたる圧力差、デミスタの構造および寸法などを含む幾つかのファクタに基づいて調整することができる。デミスタ構造に関する更なる情報は、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる2005年7月6日に出願されたIMPROVED CYCLONE DEMISTERと題される米国仮特許出願第60/697107号で与えられる。ここに開示されるデミスタは、サブミクロンレベルの汚染物質の除去において極めて効率的である。一方、例えばスクリーンタイプおよびバッフルタイプのデミスタなどの他の構造のデミスタは、サブミクロンレベルの汚染物質の除去においてあまり効率的ではない。
【0127】
清浄な蒸気は、一般に各蒸発室の真上に位置される凝縮器内で凝縮される。過剰な熱は、ヒートシンク、ファン、熱交換器、またはヒートパイプによって排出され得る。好ましい実施形態において、熱は、図5、6、8に示されるようにヒートパイプによって凝縮器から除去される。凝縮蒸気からの熱を注入水へ伝えるためのヒートパイプの議論は、2005年10月14日に出願されたENERGY−EFFICIENT DISTILLATION SYSTEMと題される米国仮特許出願第60/727,106号、および2008年9月9日に出願されて米国特許出願公開第2009/0218210号として公開された同様にENERGY−EFFICIENT DISTILLATION SYSTEMと題される米国特許出願第12/090,248号において与えられており、これらはいずれも参照することによりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0128】
清浄な蒸気は、デミスタからチューブ91を介して凝縮器2または4または6内に入る。清浄な蒸気が凝縮器内に入ると、蒸気が螺旋形態で回転し、それにより、滞留時間が増大して、凝縮が最も効果的となる。凝縮器内での蒸気の螺旋動作は螺旋羽根によって行なわれる。凝縮の熱は、凝縮器の上面に取り付けられる複数のヒートパイプ10によって除去される。熱がヒートパイプによって除去されて上側の蒸発室または予熱器へと上方へ伝えられると、蒸気が生産水へと凝縮し、この生産水は清浄水排出口24を通じて出る。熱い塩水を上側の蒸発室から下側の蒸発室へと運ぶ廃蒸気チューブ11および塩水オーバーフローチューブ21はいずれも凝縮器を横切る。
【0129】
図2および図3は、底部蒸発室および加熱システムの好ましい構造を示している。複数の蒸留段階で使用され得るような中間沸騰および凝縮器は、前述したものと全く同様であり、したがって繰り返して説明しない。底部蒸発室1は蒸発による塩水凝縮の最後の段階を示し、また、この段階からの廃塩水濃度は、システムの任意のポイントで結晶化を防止するために約23%塩またはそれを下回る。熱い塩水がチューブ21を通じて底部蒸発室1に入り、それにより、水の数インチの過度な液圧、あるいは、最も上側の蒸発室よりも5−25℃高い沸騰温度を維持するのに十分な過圧が引き起こされ、したがって、様々な蒸留段階間で効率的な熱伝達が確保される。蒸発室内に配置されて排水管流11に接続される他のチューブは、蒸発室内での一定レベルの塩水沸騰を維持して、廃塩水と浮遊状態の任意の粒子とを連続的に除去する。蒸発室内で生成される蒸気は、デミスタ9内に入り、そこで浄化される。
【0130】
蒸留のためのエネルギは、蒸発室1の底部に位置されるヒータタンク21によって与えられる。図4は、熱を与えるための様々な異なる構造を示している。図4(a)は、本発明の主題がエネルギ不可知論であるという事実を示している。脱塩のための提案されたシステムは、電気、天然ガス、油、または炭化水素、あるいは、更にはそれらが120−130℃よりも高い温度の熱を供給する限りにおいて廃熱源を含む、任意の形態のエネルギをエネルギ源211として使用できる。図4(b)は、石油バーナーまたはガスバーナー212から成る最も簡単な構造を示している。図4(c)は、電源216および抵抗ヒータ213を備える電気ヒータを描いている。図4(d)は、絶縁スリーブ214によって取り囲まれ且つ電源216に接続される抵抗ヒータ213を使用する、ヒートパイプ215の抵抗加熱を示しており、ヒートパイプ215はその後に熱を蒸発室へ伝える。そして、図4(e)は、ヒートパイプ215を使用することによる廃熱217の利用を示している。
【0131】
図17は従来のヒートパイプの動作原理を示している。ヒートパイプは、一般的に水であってもよい少量の作動流体18で部分的に満たされるとともに毛管芯19で満たされる、部分真空下にあるシールチューブ17から成る。熱源25がエンタルピーの形態のエネルギをヒートパイプの一端に与え、また、そのエネルギが作動流体18の蒸発を引き起こす。作動流体の蒸気は直ぐにチューブを満たす。これは、チューブが部分真空下にあるからである。作動流体蒸気は、僅かに低い温度にあるヒートパイプの反対側の端部に達すると直ぐに液化して、凝縮熱の形態の同じエンタルピーを与え戻す。作動流体は、液体へと凝縮すると、毛管芯によって吸着され、毛管芯はそれを元の開始ポイントへと運ぶ。蒸発の熱は定義により凝縮の熱に等しいため、ヒートパイプは、壁を通じた熱損失以外にかなりの温度損失を伴うことなく熱を非常に効率的に伝える。
【0132】
図19は、漏れを防止するようにヒートパイプを蒸発室3および凝縮器2に取り付けるための好ましい構造を示している。円形スリーブ36がヒートパイプ10に溶接され或いは取り付けられる。小径スリーブが蒸発室底部26または上側凝縮器上端37に溶接され或いは取り付けられる。Oリング33を圧縮させるためにネジ34がこれらのスリーブを圧力下で取り付ける。
【0133】
蒸発室および予熱器のための構造の材料は、塩分を含んだ環境で腐食に耐える任意の材料であってもよい。好ましい実施形態において、蒸発室および予熱器は、高温海水の腐食に耐えることで知られるTi−6Al−4Vなどのチタン合金を使用して製造される。あるいは、特定のクロロフルオロカーボンポリマー(例えばテフロン(登録商標))または沸騰温度および塩分を含む環境に耐える様々なポリマー材料でコーティングされるときには、従来のカーボンスチールが使用されてもよい。構造のこれらの材料は、典型的なものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。当業者は、他の金属および合金など、本発明の思想内に包含されて開示範囲によって規定される別の材料およびコーティングを考慮し得る。
【0134】
幾つかの実施形態において、本明細書中にその実施形態が開示される水を浄化するためのシステムは、更なる有利な機能を与えるために他のシステムおよび装置と組み合わせることができる。例えば、システムは、2005年5月2日に出願されたSOLAR ALIGNMENT DEVICEと題される米国仮特許出願第60/676870号、2005年7月6日に出願されたVISUAL WATER FLOW INDICATORと題される米国仮特許出願第60/697104号、2005年7月6日に出願されたAPPARATUS FOR RESTORING THE MINERAL CONTENT OF DRINKING WATERと題される米国仮特許出願第60/697106号、2005年7月6日に出願されたIMPROVED CYCLONE DEMISTERと題される米国仮特許出願第60/697107号、2004年12月1日に出願されたPCT出願US2004/039993号、2004年12月1日に出願されたPCT出願US2004/039991号、2006年10月13日に出願されたPCT出願US06/40103号、2006年10月16日に出願されたPCT出願US06/40553号、2007年3月2日に出願されたPCT出願US2007/005270号、2008年3月21日に出願されたPCT出願US2008/003744号、および2003年12月2日に出願された米国仮特許出願第60/526,580号に開示される装置または方法のいずれかと併せて使用することができ、前記出願のそれぞれは参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0135】
当業者であれば分かるように、これらの方法および装置は、目的を果たすように適合されており或いはなっていてもよく、また、前述した結果および利点を得るとともに、様々な他の利点および利益を得る。本明細書中に記載される方法、手続き、および装置は、現在好ましい実施形態の代表的な例示であり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。それらの変更および他の用途は、当業者が想起でき、本発明の思想内に包含されるとともに開示範囲によって規定される。
【0136】
制御機器
この議論は図20を参照することにより助けられる。主電源スイッチが給電されると、制御回路は、起動手続きを決定し、その後に連続動作を決定する。最初に、水を一定の流量でシステム全体に供給し始める吸い込みポンプに電力が供給される。ユーザ入力は、「スタート」、「ポーズ/ホールド」、およびメンテナンスモードを含み、また、ユーザ状態は、ディスプレイ、遠隔端末を介して、あるいは、インターネットを介して、動作モードおよびセンサ状態を示すことができる。上側蒸発室の温度センサは、水の沸点よりも低い温度を検出し、全ての凝縮器の出力を排水管へそらすソレノイドバルブを作動させる。センサ入力は、蒸発室温度、脱気装置温度、デミスタ温度、注入水濁度(総溶解固形分)、排出水濁度(総溶解固形分)、および水オーバーフローのうちの1つ以上を含む。同時に、同じ温度センサは、ヒータ室にエネルギを入力させるエネルギ入力スイッチを作動させる。ヒータシステムが電気、ガス、油、または廃熱によって動作するかどうかに応じて、入力スイッチは、電気コイルへの給電をONにし、燃料供給源をONにし、バーナーを点火し、あるいは、廃熱供給源をONに切り換える。
【0137】
システムが最高温度に達すると、上側蒸発室のセンサが沸騰温度に達し、その時点で、センサは、全ての凝縮器の排水路を閉じて生産水の供給を可能にするソレノイドバルブを作動させる。
【0138】
制御回路は多数の安全機能を含み、それらの全ては、警告灯または音響信号を起動させつつシステムの電源をOFFにする。生成物排出口に位置される導電率センサは、水質を連続的に監視し、そのような水質が所定のポイントを超えて悪化する場合にはシステムをOFFにする。具体的には、動作状態は、水質警報、水質エラー、および始動、通常、メンテナンス、OFFなどの動作モードを含み、源水流または蒸発室熱によって外部システム制御を行なうことができてもよい。同様に、加熱室の温度センサはシステムの過熱を防止する。排水管流に位置される導電率プローブは、廃塩水の濃度を測定して、そのような濃度が23%塩を超える場合にはシステム内の結晶化問題を防止するためにシステムを停止させる。注入流制御によって或いは蒸発室排液によって脱塩制御を行なうことができる。
【0139】
当業者であれば分かるように、本発明の範囲および思想から逸脱することなく、本明細書に開示される発明に対して様々な置き換え及び変更を行なうことができる。
【0140】
当業者であれば分かるように、本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、互いに別個に或いは互いに併せて実施することができる。したがって、別個の実施形態の組み合わせは、本明細書に開示される発明の範囲内に入る。
【0141】
全ての特許および公報は、あたかもそれぞれの個々の公報が参照することにより本明細書に組み入れられるべく具体的に且つ個々に示されていたかのように、同じ程度まで参照により本明細書に組み入れられる。
【0142】
本明細書に例示的に記載される発明は、本明細書中に具体的に開示されない任意の1または複数の要素、1または複数の限定を欠く場合に適切に実施できる。使用された用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定するものではなく、また、そのような用語および表現の使用が図示して説明した特徴またはその一部の等価物の排除を示唆する意図はない。言うまでもなく、開示された発明の範囲内で様々な変更が可能である。したがって、本発明及び任意の特徴を好ましい実施形態によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示される概念の改良および変形を当業者が成すことができ、また、そのような改良および変形が開示によって規定される本発明の範囲内に入るとみなされることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口と、予熱器と、脱気装置と、複数の蒸発室と、デミスタと、ヒートパイプと、生成物凝縮器と、廃棄物排出口と、複数の生成物排出口と、加熱室と、制御システムとを備える浄水及び脱塩システムであって、
システムは、凝縮熱を回収してそれを更なる蒸発のために再使用するものであって、
蒸留エネルギが、電気、燃焼、および廃熱から成るグループから選択される供給源から得られ、前記燃焼が、油、炭化水素、および天然ガスから成るグループから選択される材料を伴い、
制御システムが、ユーザの介入または洗浄を必要とすることなく浄水および脱塩の連続動作を可能にするように構成されており、
システムは、汚染水サンプルから、微生物学的汚染物質、放射性汚染物質、金属、塩、揮発性有機物、および不揮発性有機物から成るグループから選択される少なくとも一種の汚染物質を除去することができ、
汚染された水に含まれる汚染物質種のレベルが表1のMCLの列に示されるレベルの25倍以下であるときに、システムで浄化された水に含まれる全種の汚染物質が表1のMCL列に示されるレベルを下回るように構成されている、浄水及び脱塩システム。
【請求項2】
生成される浄水の量が注入水の量の約20%〜約95%である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
システムが少なくとも約2ヶ月の使用にわたって洗浄を必要としない、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
システムが少なくとも約1年以上の使用にわたって洗浄を必要としない、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
注入口を通じた水の流れを調節するための注入口スイッチを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
注入口スイッチが、ソレノイド、バルブ、およびアパーチャから成るグループから選択される機構を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
注入口スイッチが制御システムにより制御される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
停止制御器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
停止制御器が、手動制御器、氾濫制御器、凝縮器容量制御器、および蒸発室容量制御器から成るグループから選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
制御システムが、蒸発室内の温度センサ、凝縮器フロート、および氾濫検出器のうちの少なくとも1つからのフィードバックに基づいて注入口を制御する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
制御システムが、浄化システムからのフィードバックに基づいてスイッチを制御する、請求項5に記載のシステム。
【請求項12】
フィードバックが、生産水容器内の水の量、生成物排出口を通る生産水の流れ、水流の時間、水流がない時間、蒸発室内の水の量、漏れの検出、蒸発室圧力、排出口水質(総溶解固形分)、蒸発室内の圧力差、および蒸発室越流堰フロートを横切る水の移動から成るグループから選択される少なくとも1つの特性に基づいている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
流量コントローラを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
流量コントローラが圧力調整器を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
圧力調整器が約0kPa〜250kPa(0〜36psi)の水圧を維持する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
堆積物トラップを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
予熱器から出る水の温度が少なくとも約96℃である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
脱気装置が略垂直方向に向けられて上端および下端を有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
予熱器からの加熱水が脱気装置の上端近傍に入る、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
加熱水が脱気装置の下端近傍から出る、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
蒸発室からの蒸気が脱気装置の下端近傍に入る、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
蒸気が脱気装置の上端近傍から出る、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
脱気装置が、水と蒸気との混合を促進させるように適合されているマトリクスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
マトリクスが略球状の粒子を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
マトリクスが非球状の粒子を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
マトリクスが、脱気装置内で均一な充填を可能にするように選択されたサイズの粒子を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
マトリクスが異なるサイズの粒子を含み、粒子がサイズ勾配を成して脱気装置内に配置されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
脱気装置から出る水が有機物および揮発性ガスを実質的に伴わない、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
蒸発室が、下側の凝縮器から伝えられる熱を供給する複数のヒートパイプを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
蒸発室が排水管を更に備え、排水管が蒸発室の中央または蒸発室の中央近傍に位置している、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
蒸発室が、各ヒートパイプを取り囲む同心多孔円筒体内に封入された複数の粒子を含む自浄媒体を更に含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
蒸発室が、少なくとも蒸発室内のヒートパイプの近傍領域での沈殿の蓄積を妨げるための自浄媒体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
媒体が複数の粒子を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
粒子が略球状である、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
粒子が、蒸発室内での水の沸騰による粒子の略連続的な攪拌を可能にする特性を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
特性が、比重、サイズ、形態、個体数、および組成から成るグループから選択される、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
粒子が選択された硬度を有し、硬度が、粒子または蒸発室を実質的に腐食させることなく粒子による蒸発室の汚れ落としを可能にする、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
粒子が、セラミック、金属、ガラス、または石から構成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項39】
粒子が約1.0よりも大きく且つ約8.0よりも小さい比重を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
粒子が約2.0〜約5.0の比重を有する、請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
加熱室が、電気加熱素子、ガスまたは石油バーナー、または廃熱源からの熱を伝えるヒートパイプを更に備え、加熱室が蒸発室の底部に隣接する、請求項1に記載のシステム。
【請求項42】
デミスタが蒸発室の上面近傍に位置している、請求項1に記載のシステム。
【請求項43】
蒸発室からの蒸気が加圧下でデミスタに入る、請求項1に記載のシステム。
【請求項44】
デミスタが圧力差を生み出すように構成されており、圧力差が125〜2500Pa以上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項45】
デミスタが、サイクロン作用によって清浄蒸気を廃蒸気から分離する、請求項1に記載のシステム。
【請求項46】
蒸発室が、凝縮滴がデミスタに入ることをバッフルガードおよび金属溝によって防止する、請求項1に記載のシステム。
【請求項47】
廃蒸気に対する清浄蒸気の比率が約10:1よりも大きい、請求項45に記載のシステム。
【請求項48】
蒸気品質が、清浄な蒸気純度、廃蒸気に対する清浄蒸気の比率、および清浄蒸気の総量から成るグループから選択される少なくとも1つの品質を備える、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
デミスタ制御パラメータが、清浄蒸気排出口の凹部位置、デミスタ内の圧力差、蒸気注入口の流れに対する抵抗、および蒸気排出口の流れに対する抵抗から成るグループから選択される少なくとも1つのパラメータを備える、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
凝縮器生成物を冷却するためのヒートパイプを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項51】
生産水が生成物排出口を通じて生成物凝縮器から出る、請求項1に記載のシステム。
【請求項52】
廃水が廃棄物排出口を通じてシステムから出る、請求項1に記載のシステム。
【請求項53】
制御システムが、システムが安定な動作温度に達するまで生産水を廃棄物排出路へそらす、請求項1に記載のシステム。
【請求項54】
水を浄化して脱塩する方法であって、
第1の濃度の少なくとも1つの汚染物質を含む注入水源を設けるステップと、
注入水の温度を90℃を超えるまで上昇させることができる予熱器に注入水を通過させるステップと、
脱気装置内でガスの反対方向の流れに抗して注入水を逆流させることによって、ほぼ全ての有機物、揮発性物質、およびガスを注入水から取り除くステップと、
蒸気の形成を可能にする条件下で水を蒸発室内に10〜90分或いはそれ以上の平均滞留時間にわたって維持するステップと、
蒸気を蒸発室からサイクロンデミスタへ排出するステップと、
清浄な蒸気の発生量がデミスタからの廃棄物の発生量の少なくとも約4倍となるようにデミスタ内で汚染物質を含む廃棄物から清浄な蒸気を分離するステップと、
清浄な蒸気を凝縮させて、第1の濃度よりも低い第2の濃度の少なくとも1つの汚染物質を含む浄水を発生させるステップと、
回収される熱の量が凝縮熱の少なくとも50%になるように、凝縮器から熱を回収して上側蒸発室または予熱器へ伝えるステップと、
を含む方法。
【請求項55】
少なくとも1つの汚染物質が、微生物、放射性核種、塩、および有機物から成るグループから選択される汚染物質を含み、第2の濃度が表3に示される濃度以下であり、第1の濃度が第2の濃度の少なくとも約10倍である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
第1の濃度が第2の濃度の少なくとも約25倍である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ガスが、蒸気、空気、および窒素から成るグループから選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
プロセスステップが、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約3ヶ月間にわたって自動的に繰り返される、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
プロセスステップが、洗浄またはメンテナンスを必要とすることなく少なくとも約1年間にわたって自動的に繰り返される、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
蒸発室、凝縮器、および予熱器の積層構造が、蒸発室と凝縮器とを分離する多孔板を伴う金属シェル内に封入される、請求項1のシステムを使用して行なわれる請求項54に記載の方法。
【請求項61】
多孔板が、ヒートパイプ、脱気装置、デミスタ、塩水オーバーフローチューブ、および廃棄物流チューブの通過を可能にする、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
蒸発室、予熱器、およびヒートパイプを構成する材料が非腐食性チタン合金から成っている、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
非腐食性チタン合金がTi−6Al、4V合金を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
蒸発室、予熱器、およびヒートパイプが、非腐食性クロロフルオロカーボンポリマーでコーティングされる普通鋼または他の金属または合金を含む、請求項60に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2012−502785(P2012−502785A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527072(P2011−527072)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/057277
【国際公開番号】WO2010/033675
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(506186433)シルバン ソース、 インク. (5)
【Fターム(参考)】