説明

太陽電池の分光感度測定装置

【課題】簡易構造、且つ、低コストでありながら、同時に、従来よりも単色光の照射強度を増大することができる太陽電池の分光感度測定装置を提供する。
【解決手段】この分光感度測定装置100は、2つの長波長光源102A及び短波長光源102Bを有する入射光学系102と、入射光学系102の光源102A、102Dから出射される光を分光し、所定スペクトルの単色光を出射可能な分光光学系104と、分光光学系104から入射される光を被測定物110に照射する出射光学系106と、バイアス光源108Aからのバイアス光を被測定物110に照射するバイアス光学系108と、を備えており、分光光学系104は凹面グレーティング104Bを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の分光特性を測定可能な太陽電池の分光感度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色素増感型太陽電池等の太陽電池の分光特性を測定可能な、太陽電池の分光感度測定装置が広く知られている。
【0003】
例えば、図2に示される分光感度測定装置10は、単色光源12が生成する単色光を、入射光学系14、分光光学系15及び出射光学系16を介して、被測定セルCUTに照射する単色光照射装置18と、バイアス光源20が発生するバイアス光を、単色光に重畳させて照射するバイアス光照射装置22と、被測定セルCUTの出力信号を測定する分光感度測定部24と、を有して構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
この分光感度測定装置10は、バイアス光照射装置20から出射されるバイアス光が被測定セルCUTに照射されている状態で単色光照射装置18から出射される単色光を被測定セルCUTに照射させ、そのときの被測定セルCUTの出力信号に基づいて分光感度測定部24で分光感度の測定を行うものである。
【0005】
このような分光感度測定装置10の分光光学系15に適用される光学素子としては、例えば、図3に示されるようなCzerny−Turner型のモノクロメータ30が知られている。
【0006】
このモノクロメータ30は、入射スリット32と、出射スリット34と、結像素子36、38と、平面グレーティング40と、を有して構成され、平面グレーティング40の回転により出射スリット34を通過する単色光の波長走査(分光)を行うようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−57114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分光感度測定装置の分光光学系に広く適用されるCzerny−Turner型のモノクロメータ30は、構成部品が多く、構造が複雑で、高コストになりやすいといった問題があった。
【0009】
しかも、従来の分光感度測定装置によって出射可能な単色光の照射強度は0.5〜5mW/cm程度であるため、5mW/cmを超える照射強度を必要とする太陽電池の分光感度測定には適用することができないといった問題があった。特に、低コストの太陽電池として近年注目されている色素増感型太陽電池は、5mW/cmを越える照射強度が必要とされ、従来の分光感度測定装置での測定には限界があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、簡易構造、且つ、低コストでありながら、同時に、従来よりも単色光の照射強度を増大することができる太陽電池の分光感度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、光源から出射される光を分光し、所定スペクトルの単色光を出射可能な分光光学系を有する太陽電池の分光感度測定装置において、前記分光光学系は、凹面グレーティングを有して構成されていることにより、上記課題を解決したものである。
【0012】
本発明によれば、従来よりも単色光の照射強度を増大することができる上に、凹面鏡などの結像素子を用いずに分光光学系を構成することができ、簡易構造、且つ、低コストの装置にすることができる。
【0013】
なお、前記凹面グレーティングは、少なくとも400nm〜1200nmの波長帯域の前記単色光を出射可能とされ、且つ、該単色光の前記波長帯域における照射強度が、0.5mW/cm以上とされていれば、1つの凹面グレーティングで太陽電池の分光感度測定に必要な波長帯域(400nm〜1200nm)を全てカバーすることができる上に、その波長帯域において所定の照射強度(0.5mW/cm以上)を確保することができるようになる。
【0014】
特に、単色光の波長帯域400nm〜800nmにおける照射強度が、5mW/cm〜10mW/cmとされていれば、単色光を太陽光スペクトルの特性に、より近づけることができ、精度の高い分光感度測定が可能となる。
【0015】
なお、本発明に係る太陽電池の分光感度測定装置は、色素増感型太陽電池への適用が、より効果的である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る太陽電池の分光感度測定装置によれば、簡易構造、且つ、低コストでありながら、同時に、従来よりも出射光の照射強度を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態の一例に係る太陽電池の分光感度測定装置について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の一例に係る太陽電池の分光感度測定装置(以下、単に「分光感度測定装置」と称す。)100の光学系統図を示したものである。
【0019】
この分光感度測定装置100は、2つの長波長光源102A及び短波長光源102Dを有する入射光学系102と、入射光学系102の光源102A、102Dから出射される光を分光し、所定スペクトルの単色光を出射可能な分光光学系104と、分光光学系104から入射される光を被測定物(例えば、色素増感型太陽電池セル)110に照射する出射光学系106と、バイアス光源108Aからのバイアス光を被測定物110に照射するバイアス光学系108と、を備えている。
【0020】
入射光学系102は、ハロゲンランプからなる長波長光源102Aと、この長波長光源102Aから出射された一部の光を集光し、分光光学系104へ導く第1レンズ102Bと、長波長光源102Aから出射された光の他の一部を反射し、分光光学系104へ導く第1集光鏡102Cと、キセノンランプからなる短波長光源102Dと、この短波長光源102Dから出射された一部の光を集光し、分光光学系104へ導く第2レンズ102Eと、短波長光源102Dから出射された光の他の一部を反射し、分光光学系104へ導く第2集光鏡102Fと、長波長光源102Aと短波長光源102Dとを切り替える光源切替えステージ102Gと、を有して構成されている。
【0021】
分光光学系104は、入射スリット104Aと、この入射スリット104Aを通過した光を所定スペクトルの単色光に分光する凹面グレーティング104Bと、分光された単色光が通過する出射スリット104Cと、を有して構成されている。
【0022】
この分光光学系104の凹面グレーティング104Bは、回転ステージ104D上に固定されており、回転ステージ104を回転させることによって、入射スリット104Aを介して入射される光の波長走査が可能な構造となっている。なお、本実施形態の一例に係る凹面グレーティング104Bは、溝本数1000本/mm、逆線分散3.3nm/mm、F値2.2、波長範囲400〜1200nm、直径150mmとされている。
【0023】
出射光学系106は、分光光学系104から入射された単色光を集光する第3レンズ106Aと、単色光の高次光をカットするフィルタ106Bと、フィルタ106Bを通過した単色光の光量を調整するNDフィルタ106Cと、NDフィルタ106Cを通過した単色光を集光する第4レンズ106Dと、単色光の一部を反射するミラー106E、106Fと、これらミラー106E、106Fによって反射された単色光をモニターする第1、第2フォトディテクタ106G、106Hと、単色光とノイズ成分(迷光)とを識別する光チョッパ106Iと、光チョッパ106Iを通過した単色光を集光し、被測定物110に照射する第5レンズ106Jと、を有して構成されている。
【0024】
バイアス光学系108は、キセノンランプからなるバイアス光源108Aと、このバイアス光源108Aから出射された一部の光を集光し、被測定物110へ導く第6レンズ108Bと、バイアス光源108Aから出射された光の他の一部を反射し、被測定物110へ導く第3集光鏡108Cと、を有して構成されている。
【0025】
次に、この分光感度測定装置100の作用について説明する。
【0026】
入射光学系102の長波長光源102A(又は短波長光源102D)から出射した光は、分光光学系104の入射スリット104Aを介して凹面グレーティング104Bに入射する。そして、凹面グレ−ティング104Bに入射した光は、凹面グレ−ティング104Bで所定スペクトルの単色光に分光された後、出射スリット104Cを介して出射光学系106に出射する。出射光学系106に入射した単色光は、出射光学系106において高次光の除去、光量の調整等がなされた後、被測定物110に照射される。なお、単色光の波長帯域400nm〜1200nmにおける照射強度は、0.5mW/cm以上とされており、特に、単色光の波長帯域400nm〜800nmにおける照射強度は、5mW/cm〜10mW/cmとされている。
【0027】
一方、バイアス光学系108のバイアス光源108Aから出射する光は、出射光学系106から照射される単色光に重畳された状態で、被測定物110に照射される。
【0028】
本実施形態の一例に係る分光感度測定装置100によれば、分光光学系104は、凹面グレーティング104Bを有して構成されているため、従来よりも単色光の照射強度を増大することができる上に、凹面鏡などの結像素子を用いずに分光光学系を構成することができ、簡易構造、且つ、低コストの装置にすることができる。
【0029】
又、凹面グレーティング104Bは、少なくとも400nm〜1200nmの波長帯域の単色光を出射可能とされ、且つ、該単色光の前記波長帯域における照射強度が、0.5mW/cm以上とされているため、1つの凹面グレーティング104Bで太陽電池の分光感度測定に必要な波長帯域(400nm〜1200nm)を全てカバーすることができる上に、その波長帯域において所定の照射強度(0.5mW/cm以上)を確保することができる。
【0030】
特に、単色光の波長帯域400nm〜800nmにおける照射強度が、5mW/cm〜10mW/cmとされているため、単色光を太陽光スペクトルの特性に、より近づけることができ、精度の高い分光感度測定が可能な上に、5mW/cmを超える照射強度を必要とする太陽電池(例えば、色素増感型太陽電池など)の分光感度測定にも適用が可能である。
【0031】
なお、本発明に係る分光感度測定装置は、上記実施形態における分光感度測定装置100の構造や形状等に限定されるものではない。
【0032】
従って、例えば、入射光学系102は長波長光源102A及び短波長光源102Dの2つの光源を備えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、入射光学系を1つの光源で構成してもよい。又、単色光の照射強度も、上記実施形態において示した数値に限定されるものではない。
【0033】
即ち、本発明に係る分光感度測定装置は、分光光学系が凹面グレーティングを有して構成されていればよい。
【0034】
なお、本発明に係る分光感度測定装置は、色素増感型太陽電池への適用が、より効果的であるが、色素増感型太陽電池以外の太陽電池に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、色素増感型太陽電池等の太陽電池の分光感度測定装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る分光感度測定装置の光学系統図
【図2】従来の分光感度測定装置を示す概略図
【図3】従来の分光感度測定装置におけるモノクロメータを示す概略図
【符号の説明】
【0037】
CUT…被測定セル
10、100…分光感度測定装置
12…単色光源
14…入射光学系
15…分光光学系
16…出射光学系
18…単色光照射装置
20…バイアス光源
22…バイアス光照射装置
24…分光感度測定部
30…モノクロメータ
32…入射スリット
34…出射スリット
36、38…結像素子
40…平面グレーティング
102…入射光学系
102A…長波長光源
102B…第1レンズ
102C…第1集光鏡
102D…短波長光源
102E…第2レンズ
102F…第2集光鏡
102G…光源切替えステージ
104…分光光学系
104A…入射スリット
104B…凹面グレーティング
104C…出射スリット
104D…回転ステージ
106…出射光学系
106A…第3レンズ
106B…フィルタ
106C…NDフィルタ
106D…第4レンズ
106E、106F…ミラー
106G…第1フォトディテクタ
106H…第2フォトディテクタ
106I…光チョッパ
106J…第5レンズ
108…バイアス光学系
108A…バイアス光源
108B…第6レンズ
108C…第3集光鏡
110…被測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光を分光し、所定スペクトルの単色光を出射可能な分光光学系を有する太陽電池の分光感度測定装置において、
前記分光光学系は、凹面グレーティングを有して構成されている
ことを特徴とする太陽電池の分光感度測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹面グレーティングは、少なくとも400nm〜1200nmの波長帯域の前記単色光を出射可能とされ、且つ、該単色光の前記波長帯域における照射強度が、0.5mW/cm以上とされている
ことを特徴とする太陽電池の分光感度測定装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記単色光の波長帯域400nm〜800nmにおける照射強度が、5mW/cm〜10mW/cmとされている
ことを特徴とする太陽電池の分光感度測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
色素増感型太陽電池の分光感度が測定可能とされている
ことを特徴とする太陽電池の分光感度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−30034(P2006−30034A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210715(P2004−210715)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】