説明

太陽電池セルおよびその製造方法

【課題】太陽電池の受光面と裏面で生成された電流をともに裏面側で集める集電構造を有する太陽電池セルにおいて、受光面側電極を裏面側に引き出すための基板を厚さ方向に貫通する電極内部において空間が発生することによる特性不良を改善する。
【解決手段】太陽電池セルの受光面側電極を裏面側に引き出すための基板を厚さ方向に貫通する貫通孔にテーパー形状を設けることで、導電材料の貫通孔への注入不良による特性の劣化を改善できる。また、貫通孔内部および裏面側貫通孔周辺の絶縁膜形成、さらに受光面側の電極形成に凹版オフセット印刷法を用いることで、貫通孔を閉塞することなく貫通孔壁面全体に極薄の絶縁膜を形成すると同時に有効受光面積を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶系シリコン太陽電池の多くは、シリコン基板の表裏のいずれか一方の面にp型領域もしくはn型領域が形成されており、他方の面には、前記一方の面とは相反するn型領域もしくはp型領域が形成されている。一般的にシリコン基板の表裏面上には、電極が形成されており、受光面側では、生成した電流を集電するための集電極(バスバー電極、フィンガー電極)が形成されており、裏面側は全面電極となっている。受光面側の集電極は、導電性を高め、抵抗損失を少なくするために、集電極の断面積を拡大することが重要である。しかし、この集電極の存在によって入射光が遮られる、いわゆるシャドウロスを減少させることも重要である。このように、集電極の低抵抗化と太陽電池セルの有効受光面積の増加というあい反する要求に対して、以下の従来技術が開示されている。
【0003】
一つは、シリコン基板に多数の微小な貫通孔を設け、その内部にp−n接合を形成し、光電変換に寄与する構造が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他の一つは、シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み込み、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ結合界面の特性を改善した、いわゆるHIT(Heterojunction with Intrinsic Thin−layer)構造を有する太陽電池セルにおいて、受光面で生成された電流を、貫通孔を介して裏面で集電する集電構造を形成する際、貫通孔周辺に不要なアモルファスシリコン層が堆積することを防止するため、貫通孔の内壁面に絶縁膜を形成したのち、導電対を充填する構造が示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、他の一つは、透光性基板(ガラス基板)上に形成された厚さ1〜10μm程度の絶縁膜を有する光起電力装置において、前記絶縁膜に貫通孔の深さが深くなるにつれて、マスクの開口の大きさを徐々に小さくしながらレーザ光を照射する方法で、テーパー形状の貫通孔を形成する方法が示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−51282号公報
【特許文献2】特開2008−294080号公報
【特許文献3】特開平6−260666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている発明では、レーザ光を基板に対して垂直方向から照射することにより厚さ100〜200μm程度のシリコン基板に対して、直径100μm程度の貫通孔を形成し、つぎに基板表面の破砕層を化学研磨することにより除去する発明が開示されているが、この貫通孔に対してスクリーン印刷法あるいは蒸着法で電極金属層を形成する場合、貫通孔の深さに対して直径が小さいと貫通孔内部に十分に電極材料を注入することができず、空間が存在し導通不良が発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されている発明では、シリコン基板と、当該シリコン基板の表裏に設けられたアモルファスシリコン層及び透明電極とを貫通する複数の貫通孔の内壁面に絶縁膜を形成したのち、銀ペーストをスクリーン印刷法により貫通孔内部に充填する場合、前記同様、貫通孔の深さに対して直径が小さいと貫通孔内部に十分に電極材料を注入することができず、空間が存在し導通不良が発生する可能性がある。
【0009】
さらに、CVD法により貫通孔内壁面に絶縁膜を形成する場合にも、同様に貫通孔の深さに対して直径が小さいと貫通孔内壁面全体に絶縁膜を形成することが困難となる。また、貫通孔内壁面に形成する絶縁膜が厚くなりすぎると、貫通孔を閉塞してしまう可能性がある。
【0010】
また、特許文献3に記載されている発明では、厚さが1〜10μm程度しかない絶縁膜にテーパー形状の貫通孔を設けることは可能であるが、基板厚が350μm程度ある多結晶シリコン基板に応用する場合、レーザパワーを極めて大きくしなければならず、レーザービームを制御するためのスリットが溶融する可能性がある。たとえ、レーザービームを制御するためのスリットが溶融しない場合でも、貫通孔周辺にダメージを受けやすく、基板にクラック等が発生し、基板割れを誘発する可能性がある。
【0011】
また、このような高出力レーザ装置は高価であり、製造コストの増大につながる。従って、基板厚が350μm程度ある多結晶シリコン基板に、特許文献3に記載されている発明に係る方法で、テーパー状の貫通孔を設けることは極めて困難又は非効率である。
【0012】
また、太陽電池セルの特性向上のためには受光面側の電極面積は極力少なくすることが望ましいが、上記特許文献に示されているように、受光面側電極の形成をスクリーン印刷法により行う場合、当該スクリーン印刷法は精度が低いため、電極面積が大きくなりすぎ有効受光面積を十分に大きく取れない可能性がある。
【0013】
さらに、受光面側電極の形成を行わず、裏面側から貫通孔に電極材料をスクリーン印刷法により注入し、受光面側の貫通孔から電極材料があふれ出るようにして受光面側電極を形成した場合、受光面側電極面積及び形状の制御が難しく、受光面側電極と裏面側電極との接合不良が発生しやすいという欠点があった。
【0014】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、弱い出力のレーザ装置で基板にダメージを与えないようにしながら、貫通孔の形状を、内部に導電材料を十分に注入することができるよう、裏面側の内径を大きくし、受光面側に近づくにつれて徐々に内径が小さくなるような、いわゆるテーパー状にするものである。例えば、直径5μm微少領域にレーザパワーを集中させスキャンしながら、直径200μm程度の大きな開口径の貫通孔を形成する。
【0015】
また、受光面側の電極形成は凹版オフセット印刷法により小面積化し、裏面側から貫通孔に電極材料を注入する方法には、印圧が十分に高いスクリーン印刷法を用いたものである。
【0016】
さらに、貫通孔内壁面への絶縁膜形成は、凹版オフセット印刷法により粘度の高い金属アルコキシド化合物材料を極薄く(0.2〜0.5μm程度)印刷塗布することで貫通孔を閉塞することなく、貫通孔内壁面全体に極薄の絶縁膜を形成するものである。ここで、金属アルコキシド化合物材料とは、無機系の塗布型SOG(Spin on Glass)材料のことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る太陽電池セルは、半導体基板と、前記半導体基板の受光面側の主面上に形成された導電型を有する多結晶半導体層と、前記多結晶半導体層の受光面側の主面上に形成された反射防止膜とからなる光電変換部を有する太陽電池セルにおいて、前記光電変換部の裏面側から受光面側にかけて、内径が徐々に小さくなるテーパー状の貫通孔を設けたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、貫通孔をテーパー状にすることで、電極材料の注入を行う際、貫通孔内部に隙間なく十分に電極材料を充填することができると共に、有効受光面積を十分に大きくすることができる。これにより、太陽電池セルの特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1における太陽電池セルの断面図である。
【図2】太陽電池セルの製造工程を段階的に示した図であり、各図(a)〜(f)は各段階を示した図である。
【図3】レーザ光のスキャン方法を示した図であり、(a)及び(b)はスキャン方法の一例を示したものである。
【図4】スキャン方法を用いてテーパー状の貫通孔を形成する工程を段階的に示した図であり、各図(a)〜(g)は各段階を示した図である。
【図5】レーザ光をスキャンした場合のエネルギー分布の概略を示した図である。
【図6】太陽電池セルの製造工程を示したフロー図である。
【図7】貫通孔の製造過程を詳しく示したフロー図である。
【図8】テーパー状の貫通孔の垂直断面を示した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
次に、図面を用いて、この発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態1における太陽電池セルの断面図である。太陽電池セル1は、半導体基板であるp型多結晶シリコン基板2と、n型多結晶シリコン層4とが積層された光電変換部5を有する。p型多結晶シリコン基板2とn型多結晶シリコン層4との界面部分で半導体のpn接合領域が形成されている。また、光電変換部5の受光面側にはシリコン窒素化膜からなる反射防止膜3が形成され太陽電池基板部10を構成している。この発明の実施の形態1における太陽電池セルは、多結晶シリコン基板を用いた場合について説明しているが、単結晶シリコン基板により構成されてもよい。
【0022】
太陽電池基板部10には、p型多結晶シリコン基板2と、反射防止膜3が形成されたn型多結晶シリコン層4を貫通するテーパー状の複数の貫通孔6が設けられている。貫通孔6の内壁面およびp型多結晶シリコン基板2の受光面側主面を表面とした場合の裏面の一部(以下、「表面」は受光面側、「裏面」は受光面側を「表」とした場合の「裏」を示すものとする)には絶縁膜7が形成されている。また、貫通孔6内部には、絶縁膜7を介して導電材料からなる導電体8が充填されている。
【0023】
貫通孔6内部に絶縁膜7を介して充填された導電体8は、太陽電池基板部10の受光面で生成された電流を裏面側へ流す役割を担っている。受光面側電極9により集められた電流は、導電体8により太陽電池基板部10の裏面側に導通されるようになっている。図1では、簡略化のため、1つの貫通孔6部分についてのみ示されているが、通常は太陽電池セル1全域に亘って多数形成されている。
【0024】
次に、この発明の実施の形態1における太陽電池セルの製造方法について、図2〜図8を参照して説明する。図2は太陽電池セルの製造工程を段階的に示した図であり、各図(a)〜(f)は各段階を示した図である。図3はレーザ光のスキャン方法を示した図であり、(a)及び(b)はスキャン方法の一例を示したものである。図4はスキャン方法を用いてテーパー状の貫通孔を形成する工程を段階的に示した図であり、各図(a)〜(g)は各段階を示した図である。図5はレーザ光をスキャンした場合のエネルギー分布の概略を示した図である。図6は太陽電池セルの製造工程を示したフロー図である。図7は図6で示された製造工程の内、貫通孔の製造過程を詳しく示したフロー図である。さらに、図8はテーパー状の貫通孔の垂直断面を示した顕微鏡写真である。以下、図6に示すフローに沿って、所定の図を参照しながら説明する。
【0025】
図2(a)において、太陽電池セル1の基板としてはp型の多結晶半導体基板、例えば比抵抗2Ω・cm程度にボロンをドープしたp型多結晶シリコン基板2を用いる。p型多結晶シリコン基板2を約70℃に加熱したアルカリ溶液中、例えば10%程度の水酸化ナトリウム水溶液に10分間程度浸漬し、基板表面をエッチングする。これにより基板スライス時にp型多結晶シリコン基板2の表面近くに生じたダメ−ジ領域を取り除くとともにp型多結晶シリコン基板2の表面洗浄を実施する。
【0026】
次に、アルカリ溶液、例えば上記同様10%程度の水酸化ナトリウム水溶液に、アルコ−ル溶液、例えばイソプロピルアルコ−ルを1%程度添加した溶液中で、約80℃で5分間異方性エッチングを実施する。これにより表面にテクスチャ形状を形成する。その後、オキシ塩化リン(POCl)ガス雰囲気中に、約900℃で20分間程度加熱する。これによりp型多結晶シリコン基板2の表面にn型多結晶シリコン層4を形成するとともに界面部分で半導体のpn接合領域が形成される。その後、5%程度のフッ化水素酸水溶液中に5分間程度浸漬して多結晶シリコン基板表面に形成されたリンガラス膜を除去する。
【0027】
図2(b)において、上記のように形成されたn型多結晶シリコン層4の受光面側に、プラズマ化学気相成長(P−CVD)法により、シラン、アンモニア及び窒素ガスでシリコン窒素化膜による反射防止膜3を形成する。このシリコン窒素化膜による反射防止膜3の屈折率と膜厚をエリプソメ−タ−によって測定したところ、それぞれ約2.0及び約80nmであった。以上の工程により、太陽電池基板部10が形成される。その後、裏面にエッチングを施す。
【0028】
図2(c)において、太陽電池基板部10の厚み方向に貫通する貫通孔6は、レーザ光又はウォータージェット等を用いて形成することができる。ここでは、レーザ光を用いて貫通孔を形成する場合を例にとり説明する。貫通孔6は太陽電池基板部10の裏面側から表面側に向けて、レーザ光を所定の方法でスキャンすることにより形成する。以下、このスキャン方法を用いて貫通孔6を形成する方法について詳しく説明する。
【0029】
図3はレーザ光のスキャン方法を示した図であり、(a)及び(b)はスキャン方法の一例を示したものであり、図3(a)は、レーザ光を往復スキャンした場合を示し、図3(b)は片側スキャンした場合を示す図である。
【0030】
この場合、レーザ光はスキャンの過程において、スキャン面全体を一通りスキャンする場合、一度スキャンした箇所の少なくとも一部を重複してスキャンしても構わないが、一度スキャンした箇所に隙間を設ける形でスキャンしてはならない。すなわち、スキャン面全体を1回スキャンする場合に、スキャンしていない箇所が存在してはならない。なお、スキャンする場合の周波数は、20Hz〜100Hz程度、望ましくは30Hz〜60Hz程度、さらに望ましくは40Hz程度である。また、レーザ光のスポット径は、2μm〜20μm程度、望ましくは4μm〜6μm程度である。
【0031】
次に、上記スキャン方法を用いてテーパー状の貫通孔を形成する工程を説明する。図4はスキャン方法を用いてテーパー状の貫通孔を形成する工程を段階的に示した図であり、各図(a)〜(g)は各段階を示した図である。この場合、レーザ光を段階ごとに複数回にわけて照射し、各段階でスキャン面積を段階的に小さくする。以下、例えば太陽電池基板部10の厚みが350μmで、裏面側の内径が200μm、表面(受光面)側の内径が20μmの貫通孔6を形成する場合について説明する。以下、図7に示すフローに沿って、所定の図を参照しながら説明する。
【0032】
貫通孔6の形成には、Nd:YVO4(イットリウム・バナジウム・オキサイド)固体レーザによる基本波1064nm光を用いて、30kW程度の出力で5μm程度のスポット径の照射光を連続的照射し、スキャンする形で実施する。
【0033】
図4(a)において、太陽電池基板部10の裏面側の所定の位置に直径が約200μmの円内を、例えば、図3(a)で示す往復スキャンで、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンする。このときに形成される穴は、底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約175μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状となる。ここで、垂直断面が台形形状を有するテーパー状となるのは、レーザ光をスキャンした場合、スキャン領域の中心部分、すなわち直径が約200μmの円の中心部分ほどエネルギー分布が高くなることで、太陽電池基板部10の温度が高くなり、溶融が早く進むためである。レーザ光をスキャンした場合のエネルギー分布の概略については図5に示す。
【0034】
同様にして、同心上で直径が約175μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約175μm、上面(表面)側の内径が約150μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(b)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約150μm、深さが約100の垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。以下、同様の方法を繰り返す。
【0035】
同心上で直径が約150μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約150μm、上面(表面)側の内径が約123μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(c)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約123μm、深さが約150の垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。
【0036】
同心上で直径が約123μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約123μm、上面(表面)側の内径が約97μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(d)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約97μm、深さが約200の垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。
【0037】
同心上で直径が約97μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約97μm、上面(表面)側の内径が約71μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(e)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約71μm、深さが約250の垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。
【0038】
同心上で直径が約71μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約71μm、上面(表面)側の内径が約46μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(f)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約46μm、深さが約300の垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。
【0039】
同心上で直径が約46μmの円内を、穴の深さが50μm程度となるまで連続的にスキャンすることにより、底面(裏面)側の内径が約46μm、上面(表面)側の内径が約20μmの垂直断面が台形形状を有する円柱状の穴を得る。結果として、図4(g)に示すような底面(裏面)側の内径が約200μm、上面(表面)側の内径が約20μmの垂直断面が台形形状を有する貫通孔6を得る。
【0040】
このとき、太陽電池基板部10の裏面と貫通孔6の内側面とが示す外角の角度は、図4(g)に示すように約104.4度となる。以上説明した段階を経て、テーパー状の貫通孔6が得られる。図8は上記説明した方法によって得られたテーパー状の貫通孔6の垂直断面を示した顕微鏡写真である。上記説明したとおり、段階的なスキャンにもかかわらず、きれいなテーパー状の貫通孔6が得られることがわかる。
【0041】
なお、この方法により形成されるテーパー状の貫通孔6は、太陽電池基板部10の厚みに制約を受けることなく設けることが可能であるが、厚みが10μm以下であるような薄い基板については、特許文献3で示されているような方法でもテーパー状の貫通孔を設けることができる。また、厚みが500μmを超えるような場合は、貫通孔を得るまでに多くのスキャンを繰り返すため多くの時間と手間がかかり効率的ではない。よって、この実施の形態で示されている発明は、太陽電池基板部10が50μm〜500μm程度の厚みを有する場合に効果的である。
【0042】
次に、絶縁膜7を形成する工程について説明する。図2(d)において、例えば、無機系の塗布型SOG(Spin on Glass)材料を凹版オフセット印刷で2.0〜3.0μm程度の厚さで貫通孔6内壁面及び貫通孔6の裏面側周辺部に印刷し、450℃程度の乾燥炉で過熱乾燥させることにより絶縁膜7を形成する。このように、凹版オフセット印刷法を用いて絶縁膜7を印刷形成することで、貫通孔6を閉塞することなく、均一に極薄の絶縁膜7を形成することができる。
【0043】
次に、導電体8を充填する工程について説明する。図2(e)において、例えば、太陽電池基板部10の裏面側からアルミニウムを主成分とする導電性金属粉末を用いた導電性ペースト材料を、スクリーン印刷法を用いて貫通孔6部分に印刷し、貫通孔6内部に導電性ペースト材料を充填すると同時に裏面側電極11を形成する。ここで、貫通孔6がテーパー状を有することで、スクリーン印刷法を用いた場合でも、太陽電池基板部10の厚さと貫通孔6の裏面側内径との比率が1/1以上、すなわち、貫通孔6の裏面側内径が太陽電池基板部10の厚さに満たない場合であっても、容易に隙間無く貫通孔6内部に導電性ペースト材料を充填することができる。その後、150℃程度の乾燥オーブンにいれて導電性ペースト材料を乾燥固化させる。
【0044】
ここで、太陽電池基板部10の裏面と貫通孔6の内側面とがなす外角の角度は、直角に近すぎると前記特許文献1で示すように導電性ペースト材料を隙間無く充填することが困難となる。また、角度があまりに大きすぎると導電性ペースト材料の量が多くなるとともに、導電性ペースト材料を乾燥固化させて得られる導電体8の裏面側露出部分で形成される裏面側電極の面積が大きくなりすぎ、太陽電池のセル変換効率が低下するため効率的でない。よって、太陽電池基板部10の裏面と貫通孔6の内側面とがなす外角の角度は100°〜120°程度が望ましく、さらには、この実施の形態1で示した角度である104.4°、すなわち105°前後の角度が最適である。
【0045】
次に、受光面側電極9を形成する工程について説明する。図2(f)において、例えば、太陽電池基板部10の受光面側に、凹版オフセット印刷により2.0〜3.0μm程度の厚さで、銀を主成分とする導電性金属粉末を用いた導電性ペースト材料を印刷し、受光面側電極9を形成する。ここで、受光面側電極9は、貫通孔6の受光面側内径よりも少し大きい直径、すなわち、絶縁膜7の受光面側露出部を覆い隠す程度大きい直径を有する円形状電極を形成する。このことにより太陽電池基板部10の受光面側とのコンタクトを得る。
【0046】
なお、ここでは受光面側電極9は、円形状電極として示されているが、これは、太陽電池基板部10の受光面側とのコンタクトを有効に得ることができる最小の面積が円形形状によって得られるからであり、太陽電池基板部10の受光面側とのコンタクトを得ることができるのであれば、四角形形状又は三角形形状等の多角形形状を有していてもよい。
【0047】
以上ように、受光面側電極9を凹版オフセット印刷法で形成したのは、精度良くスポット状の電極を形成することができるため、ペーストにじみによる面積の増大等を防止するばかりでなく、小面積の受光面側電極9を形成することができるからである。このため、太陽電池セル1の有効面積を増大させ、性能を向上させる効果がある。
【0048】
その後、800〜900℃程度で受光面側電極9と裏面側電極11の焼成を行う。このとき、受光面側電極9は、反射防止膜3貫通し、n型多結晶シリコン層4と導通することで、太陽電池セル1が得られる。
【0049】
以上説明したように、太陽電池セル1を製造すれば、受光面と裏面とで効率よく生成された電流をともに裏面側に集める高効率な集電構造型の太陽電池セル1を得ることができる。
【0050】
なお、この実施の形態1では、テーパー状の貫通孔6がレーザ光により形成される工程について詳しく説明したが、同様にウォータージェットをスキャンする方法でもテーパー状の貫通孔6が得られる。なお、この場合の設定条件は多結晶半導体基板の硬度、貫通孔6の精度等により異なる設計事項である。
【符号の説明】
【0051】
1 太陽電池セル、2 p型多結晶シリコン基板、3 反射防止膜、4 n型多結晶シリコン層、5 光電変換部、6 貫通孔、7 絶縁膜、8 導電体、9 受光面側電極、10 太陽電池基板部11 裏面側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、該半導体基板の受光面側主面上に形成された導電型を有する多結晶半導体層と、該多結晶半導体層の受光面側主面上に形成された反射防止膜とからなる太陽電池基板部を有する太陽電池セルにおいて、前記太陽電池基板の裏面側から受光面側にかけて、内径が徐々に小さくなるテーパー状の貫通孔を設け、該貫通孔内部に絶縁膜を介して導電材料を充填したことを特徴とする太陽電池セル。
【請求項2】
前記光電変換部の厚さが50μmから500μmであることを特徴とする請求項1記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記テーパー状の貫通孔の内壁面と前記太陽電池基板部の裏面とがなす外角の角度が100度から120度であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記テーパー状の貫通孔はレーザ光を同一領域内で複数回スキャンし、前記同一領域内の占める面積を段階的に小さくして得られることを特徴とする前記請求項1記載の太陽電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記スキャンは、前記同一領域内において、前記レーザ光が照射しない部分を有しないことを特徴とする前記請求項4記載の太陽電池セルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−262951(P2010−262951A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110207(P2009−110207)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】