説明

太陽電池用積層ポリエステルフィルム

【課題】表面突起が少なく、長期の耐防湿性維持に適した太陽電池用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】最外層と中心層を有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り100個以下である、太陽電池用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシートに用いた際、長期の耐防湿性維持に適した太陽電池モジュールに適した太陽電池用積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わる、エネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムであり、その心臓部は半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年以上)に亘って素子を保護するため種々パーケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性樹脂からなる充填材で間隙を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などのバックシートと呼ばれる複数の層構成を有する保護シートで保護された構成になっている。
【0003】
バックシートとして、例えば、太陽電池素子側からポリエステルフィルム/高耐久防湿層(最外層)、ポリエステルフィルム/金属系薄膜層などの防湿層/高耐久防湿層(最外層)などの積層構成を有したものが上市されている。ここで用いられるポリエステルフィルムとして以下のものが提案されている。例えば、特許文献1には触媒として酢酸亜鉛および三酸化アンチモンを用いて重合されたポリエチレンテレフタレートからなる太陽電池用ポリエステルフィルムが開示されている。また、特許文献2にはアンチモン触媒を用いて重合されたポリエチレンテレフタレートと酸化チタン粒子や炭酸カルシウム粒子からなる白色ポリエチレンテレフタレートで構成された太陽電池バックシート用フィルムが開示されている。
【0004】
太陽電池モジュールは太陽電池素子をエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂からなる充填材シート2枚でサンドイッチ状に挟んだ後に、片方の充填材シート上に強化ガラス板からなる上部透明材料を置き、反対側の充填材シート上に前記バックシートをかぶせ、しかる後に40から50℃で約5分間予備加熱し、さらに両側から全体を約150℃で30分間程度熱プレスして太陽電池用バックシートを融着一体化させて太陽電池モジュールを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−70430号公報
【特許文献2】特開2008−311680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池素子は高度な防湿性が要求されている。特に、薄膜系シリコンやアモルファス型シリコンを用いた方式ではより高度なバリア性が要求される。さらに、太陽電池は従来以上に長期継続的な使用が予定される。このような、長期にわたり高度な防湿性を要求されるバックシートにおいては、ポリエステルフィルム表面の突起形状が防湿性低下の要因となることがわかった。
【0007】
つまり、バックシートに用いるポリエステルフィルムに高さ1μm以上の突起が存在すると熱プレス時に金属系薄膜層や高耐久防湿層にキズや凹みを生じる。そのため、局所的に耐防湿性が低下し、高度な防湿性を要求されるバックシートにおいて、このような突起の多いポリエステルフィルムを用いると、その時々の防湿性低下による太陽電池素子の劣化はわずかであっても、10年を越える使用においては太陽電池の寿命に大きな影響を与えることが分かった。
【0008】
すなわち、本願発明は、加工時のハンドリング性を保持しつつ、太陽電池用バックシートとして用いた場合に、長期の耐防湿性維持に適したフィルムであって、高さ1μm以上の粗大突起が少ないフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
本発明の第1の発明は、最外層と中心層を有する少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り100個以下である、太陽電池用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第2の発明は、前記最外層に含まれる粒子が、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機粒子であり、前記粒子の平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、前記最外層における粒子の含有量が0.01〜0.20質量%である前記太陽電池用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第3の発明は、前記粒子が多孔質シリカである前記太陽電池用積層ポリエステルフィルムである。
本発明の第4の発明は、前記太陽電池用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を有する被覆層付き太陽電池用積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルムはハンドリング性に優れ、且つ、高さ1μm以上の突起が100個/1000cm2以下であり、太陽電池用バックシートに用いた際、防湿性の維持に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルム表面において、1μm以上の高さを有する突起の数は、1000cmあたり100個以下である。前記突起の数が100個を超える場合は、防湿層を積層して太陽電池用構成部材に用いた場合、長期の使用により防湿性が低下する。上記突起の数の上限は小さい方が好ましく、より好ましくは95個以下、さらに好ましくは80個以下、よりさらに好ましくは70個以下である。また、上記突起の下限は特に制限しないが、生産性の点からは1個以上であると考える。
【0012】
本願発明者は、高さ1μm以上の突起の形成要因について検討した結果、以下のような知見を得た。
【0013】
前記特許文献のように、ポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを重縮合触媒の主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に三酸化アンチモンが還元され、10μm以下の金属アンチモン粒子が生成する。そして、フィルム製造時の溶融押出し工程で金属アンチモン粒子が凝集し、20〜50μmの異物としてフィルム中に存在するようになり、これが高さ1μm以上の突起となる場合がある。 特に金属アンチモンはポリエステルの結晶核となりやすく、変型しにくい凝集体を生成しやすいため、この傾向が顕著である。
【0014】
尚、フィルムの原料であるポリエステルの製造時の重縮合触媒として、ゲルマニウム化合物を用いた場合は高価であり工業的規模で生産する上で好ましくなく、さらにチタン化合物を用いた場合は耐熱性が不良なため、バックシート用途には好ましくない。
【0015】
さらに、ポリエステルフィルムには耐キズ付き性、ハンドリング性付与のため粒径0.1〜10μm程度の滑剤が添加されるが、これらの滑剤は凝集体を生成しやすいため、滑剤の添加により高さ1μm以上の突起を形成しやすい。
【0016】
そこで、本願発明者は、表面突起の要因である、酸化アンチモンによる金属アンチモン粒子の凝集と滑剤の凝集と抑制すべく鋭意検討を行なった。その結果、下記のような特定の触媒により重合されたポリエステルを用い、さらに特定の層構成とすることにより、表面突起を好適な範囲に抑制しうることを見出し、本願発明に至った。そこで、以下に本願発明の態様を詳述する。
【0017】
本発明のフィルムの主たる構成成分であるポリエステルを重合する際に使用する重縮合触媒は、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒である。
【0018】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物として、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を限定なく使用することができる。
【0019】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0020】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜0.05モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.02モル%である。添加量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、添加量が0.05モル%以上になると、熱安定性や熱酸化安定性の低下、触媒に起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果、熱安定性や熱酸化安定性が優れ、触媒に起因する異物や着色を低減することができる。
【0021】
前記重縮合触媒を構成するフェノール系化合物としては、フェノール構造を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-2-エチル-6-tert-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-tert-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール−ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4,4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル−2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n−オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ビス[(3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチリックアシッド)グリコールエステル、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル−2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル2-{β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス-[-3-(3'-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)]プロピオネート、1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-tert-ブチルフェニル]ブタンなどを挙げることができる。
【0022】
これらは、同時に二種以上を併用することもできる。これらのうち、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0023】
これらのフェノール系化合物をポリエステルの重合時に添加することによって、アルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0024】
前記フェノール系化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。また、本発明では、フェノール系化合物にさらにリン化合物をともに用いても良い。
【0025】
前記重縮合触媒を構成するリン化合物としては特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0026】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
【0027】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
【0028】
前記のリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10−7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10−6〜0.005モルである。
【0029】
前記の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリエステルは、ポリエステル重合触媒として前記の特定の触媒を用いる以外は、従来公知の製造方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応させた後重縮合する方法、もしくはテレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を行った後重縮合する方法、のいずれの方法でも行うことができる。また、重合装置は、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0031】
本発明で用いるポリエステルの触媒は、重合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて本発明の請求項に記載の触媒を用いることもできる。また、前記の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルフィルムを製造に適したポリエステルを製造することが可能である。特に、ポリエステルフィルムの耐久性の点からは、固相重合により高分子量化したポリエステルや、低酸価のポリエステルを用いることも好ましい。固相重合によりポリエステルを高分子量化する場合、固有粘度は0.60〜0.90dl/gであることが高度な耐熱性、耐加水分解性を得るためには好ましく、より好ましくは0.65〜0.8dl/gである。
【0032】
かくして得られたポリエステルは金属アンチモンの凝集物を含まず、太陽電池用積層ポリエステルフィルムの製造原料として好適なものとなる。
【0033】
次に本発明のフィルムの製膜方法について説明する。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、最外層と中心層を有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムである。特に、生産性の点から最外層と中心層の3層構成を有することが好ましい。3層構成における層構成として、表裏の最外層の構成は同組成であっても異組成であっても構わないが、2種3層(A層/B層/A層)が生産性の点から好適である。
【0034】
本発明では最外層(上記2種3層の場合はA層)に粒子を含有し、中心層(上記2種3層の場合はB層)には実質的に粒子を含まない。A層に粒子を含有させる理由は、金属系薄膜層や塗布層等の防湿機能層を積層するなど後加工工程でのハンドリング性付与及び表面積を大きくすることによって前記機能層との密着性を向上させるためである。最外層に粒子を添加する場合は、加工性に適した十分なハンドリング性が得られる。本発明の積層フィルムのハンドリング性は、積層フィルム面同士の動摩擦係数(μd)により評価することができる。この場合、加工性の点から動摩擦係数(μd)が0.7以下であることが好ましい。
【0035】
また、B層には実質的に粒子を含まないとした理由は、滑剤粒子、特に無機粒子の凝集体による1μm以上の突起の生成確率を低減させるためである。また係る構成をとることで、透明性の高いフィルムを得ることができ、シースルー型太陽電池など透明性が求められる分野にも好適である。
【0036】
なお、「不活性粒子が実質上含有されていない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm未満、好ましくは10ppm未満、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0037】
これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0038】
最外層に含まれる粒子の種類及び含有量は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記の粒子は、平均粒子径が0.1〜3.5μmであることが好ましい。前記平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、0.8μmがさらに好ましく、1.0μmがよりさらに好ましい。また、前記平均粒子の上限は、3.0μmであることがより好ましく、2.8μmであることがよりさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm未満では十分なハンドリング性が得られない。3.5μmを越えると高さ1μm以上の突起が生成しやすくなる。
【0040】
また、これらの粒子は多孔質粒子、特に多孔質シリカが好ましい。多孔質粒子はフィルム製膜工程での延伸時に扁平型に変型しやすく、高さ1μm以上の突起を生成しにくいためである。
【0041】
最外層の無機粒子の含有量は最外層を構成するポリエステルに対し、0.01〜0.20質量%であることが好ましい。前記濃度の下限は、0.02質量%がより好ましく、0.03質量%がさらに好ましい。また前記濃度の上限は、0.15質量%がより好ましく、0.10質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満では十分なハンドリング性が得られない。0.2質量%を越えると高さ1μm以上の突起が生成しやすくなる。
【0042】
前記粒子の平均粒子径の測定は下記方法によって求めることができる。
粒子を電子顕微鏡または光学顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(多孔質シリカの場合は凝集体の粒径)を測定し、その平均値を平均粒子径とする。また、積層フィルムの被覆層中の粒子の平均粒子径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、被覆層の断面に存在する粒子の最大径を求めることができる。
【0043】
ポリエステルに上記粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0044】
中でも、本発明ではポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中、又はエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度のため、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出し等する方法(マスターバッチ法)により、更に滑剤凝集物を低減することができ、表面の粗大突起数も少なくすることができるため好適である。
【0045】
本発明で用いる積層フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜300μmの範囲で、使用する規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、250μmが好ましく、特に好ましくは200μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが30μm未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが300μmを超えると、コスト高となる。
【0046】
本発明で用いる積層フィルムとしては、前記ポリエステルを溶融押出し、または溶液押出して得た未配向シートを、必要に応じ、長手方向または幅方向の一軸方向に延伸し、あるいは二軸方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸し、熱固定処理を施した、二軸配向ポリエステルフィルムが好適である。
【0047】
ポリエステルペレットを十分に真空乾燥した後、最外層、および中心層を構成する各ポリエステルを共押出し機に供給し、270〜295℃でシート状に溶融押出しし、冷却固化せしめて未配向のキャストフィルムを得る。得られたキャストフィルムを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向ポリエステルフィルムを得る。
【0048】
その後、フィルムの両端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き220〜240℃の熱処理ゾーンに導き、熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0049】
また、本発明のフィルム製造する際には、突起の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去することが好ましい。ポリエステル中の異物を除去するために、溶融押出しの際に溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合のSi、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物、及び高融点有機物が除去性能に優れ好適である。
【0050】
溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は、25μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが25μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下の濾材を使用して溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、突起の少ないフィルムを得るには極めて重要である。
【0051】
また、積層フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、前記の積層フィルムに、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0052】
本発明においては本発明の積層フィルムの片側、又は両側に位置する防湿機能を有する層に対する接着性改良のために積層フィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を形成してもよい。塗布層を形成する工程は未延伸シート上であっても、一軸延伸フィルム上であっても二軸延伸フィルム上であってもよい。なお、ここで「主成分」とは、非複層を固形成分のうち50質量%以上を占める成分をいう。
【0053】
被覆層を形成する場合に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好適である。これらの塗布液としては例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル溶液、アクリル溶液、ポリウレタン溶液等が挙げられる。被覆層はこれら塗布液を縦方向の一軸延伸ポリエステルフィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な被覆層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる積層フィルムと機能層との密着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。基材フィルムの両面に被覆層を設ける場合は、両面の被覆層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、積層フィルムの用途に応じて、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。被覆層には易滑性を付与するために微粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒子径は0.1μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなるばかりでなく、凝集体を生成し、高さ1μm以上の突起を発生しやすくなる。
【0054】
被覆層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、被覆層の樹脂成分と屈折率が比較的近いため、高い透明性を有するフィルムを得やすいという点から、シリカ粒子が好適である。また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0055】
本発明でいう太陽電池とは、太陽光、室内光等の入射光を取り込んで電気に変換し、当該電気を蓄えるシステムをいい、表面保護シート、高光線透過材、太陽電池モジュール、充填剤層およびバックシートなどから構成される。用途によりフレキシブルな性状のものがある。
【0056】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルムは、上記表面保護シート、バックシートやフレキシブルな電子部材の張合材の基材フィルム(ベースフィルム)として用いることができる。特に、高い耐久性、長期熱安定性が求められる太陽電池用バックシートのベースフィルムとして好適である。太陽電池バックシートとは、太陽電池の裏側の太陽電池モジュールの保護するものである。
【0057】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルムは、単独または2枚以上を貼り合わせて、太陽電池バックシートとして使用することができる。本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムには、水蒸気バリア性を付与する目的で、水蒸気バリア性を有するコーティングやフィルム、無機酸化物層、アルミ箔などを積層することができる。
【0058】
コーティング層としては、ポリフッ化ビニル溶液などフッ素樹脂溶液をコーティングすることにより付与することができる。また、バリア性フィルムとしては、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムなどをもちいることができる。無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、あるいは、それらの混合物等の無機酸化物からなる層であり、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等により積層することができる。これらは、本発明の太陽電池用ポリエステルフィルムに被覆層や接着層を介して、または直接積層したり、サンドイッチ構造をとる形態で用いることができる。
【0059】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルムは、高さ1μm以上の突起が少なく、上記防湿層を設けて太陽電池用部材として用いた場合であっても、長期間にわたり防湿性を維持することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
【0061】
(突起の検出)
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの幅1mの製品フィルムロール表層から10mの部分を取り除き、続く長さ1m以上のフィルムを抜き出し、垂直方向に垂らした。次いでフィルムの背面に三波長昼白色蛍光灯(FL20SS EX−N/18P:ナショナル社製)を配置し前面からフィルム面に対し約10°から45°の範囲で角度を変えながら周囲と比べ、輝く点または、白っぽく見える点、または黒っぽく見える点をマーキングした。
【0062】
(突起高さの測定)
前記マーキングした試料を非接触表面形状計測システム(VertScanR550H-M100)を用いて、下記の条件で測定し、断面プロファイルモードから突起の最高点高さを求めた。尚、埃付着由来の突起は除外した。
なお、被覆層を有する試料の場合は溶剤(メチルエチルケトン)を含浸させたキムワイプ(WIPRS S200:クレシア社製)を用いてマーキングした箇所をキズが付かないように擦り、被覆層を除去した後、突起高さを求めた。(この場合の溶剤は、被覆層を溶解し得るものであれば特に限定されない。)
【0063】
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積:938×696μm
測定は試料の両面について行った。マーキング部の突起は、両面で測定した高さに基づきいずれか高い方を、その面の突起としてカウントした。こうして、フィルム表面1000cm当たりの突起数を求めた。
【0064】
(ハンドリング性)
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に積層フィルムを固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
次いで、同じ積層フィルムから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、平らな金属板上に長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で動摩擦係数(μd)を測定した。測定には東洋BALDWIN社製 RTM−100を用い、動摩擦係数(μd)はJIS K−7125に準拠して算出し求めた。
動摩擦係数(μd)が0.7以下の場合をハンドリング性良好、0.7を越える場合をハンドリング性不良とした。
【0065】
(平均粒子径)
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも300個の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。
【0066】
(ポリエステルの固有粘度)
ポリエステルをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
【0067】
(1)ポリエステル(A)の重合
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%を加えて、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステル(A)を得た。 この際溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。
【0068】
(2)ポリエステル(B)の重合
平均粒子径が2.5μmの多孔質シリカ粒子をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、多孔質シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを得た。
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%と前記シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(B)を得た。
【0069】
(3)ポリエステル(C)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は5μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(C)を得た。
【0070】
(4)ポリエステル(D)の重合
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、高純度テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコールを64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03質量部、トリエチルアミンを0.16質量部と前記多孔質シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成PETに対し、2000ppmとなるよう添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kg/cm、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻した。
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で固有粘度が0.65dl/gに到達するまで重縮合反応を行った。
重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化しポリエステルを得た。この際、溶融樹脂が約275℃に保たれ状態で濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は20μmステンレス焼結体フィルターで樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行った。
得られたポリエステルを回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(D)を得た。
【0071】
(5)ポリエステル(E)の重合
平均粒子径が2.5μmの多孔質シリカ粒子の代わりに平均粒子径が1.8μmの炭酸カルシウム粒子を用いた以外はポリエステル(B)と同様の方法でポリエステル(E)を得た。
【0072】
(実施例1)
基材フィルム中間層用原料としてポリエステル(A)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に、ポリエステル(A)とポリエステル(B)を多孔質シリカ濃度0.06質量%になるように配合し、押出機1(外層A層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、A層、B層、C層の厚さの比は1.5:7:1.5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。次にこの未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0073】
引き続き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.3倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、最高温度230℃の熱固定ゾーンで処理し、幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0074】
(実施例2)
ポリエステル(B)の代わりにポリエステル(E)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0075】
(実施例3)
A層の多孔質シリカ濃度が0.1質量%になるようにポリエステル(A)とポリエステル(B)を配合した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池裏面用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0076】
(実施例4)
A層の多孔質シリカ濃度が0.03質量%になるようにポリエステル(A)とポリエステル(B)を配合した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池裏面用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0077】
(実施例5)
実施例1と同様にして一軸配向PETフィルムを得た。
【0078】
次いで、下記に示す塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、ロールコート法で一軸配向PETフィルムの片面に塗布した。なお、塗布液のウェット塗布量は5g/mとした。また、前記の塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)10μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、ロールコート法で一軸配向PETフィルムの反対面に塗布した。なお、塗布液は塗布厚みが乾燥時に60nmになるように塗布した。
【0079】
その後、最高温度135℃の乾燥炉で6.8秒間乾燥させた。
引き続き、実施例1と同様にして被覆層を有したフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
(塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステルを調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル液を得た。さらに、多孔質シリカ粒子(平均粒子径1.1μm)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル液99.46質量部に前記多孔質シリカ粒子水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液を得た。
【0081】
(比較例1)
ポリエステル(A)の代わりにポリエステル(C)、ポリエステル(B)の代わりにポリエステル(D)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0082】
(比較例2)
ポリエステル(A)とポリエステル(B)を多孔質シリカ濃度0.06質量%になるように配合し、押し出し機1及び2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0083】
(比較例3)
ポリエステル(B)のみを押し出し機2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0084】
(比較例4)
ポリエステル(A)を押し出し機1及び2に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルム厚さ50μmの太陽電池用積層ポリエステルフィルムを得た。
【0085】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の太陽電池用積層ポリエステルフィルムは、表面突起が少なく、長期の耐防湿性維持に適する。そのため、太陽電池バックシートの構成部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層と中心層を有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、
前記積層ポリエステルフィルムは、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルからなり、
前記最外層は粒子を含有し、前記中心層は実質的に粒子を含まず、
前記積層ポリエステルフィルムの表面において、高さ1μm以上の突起の数が1000cm当り100個以下である、
太陽電池用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記最外層に含まれる粒子が、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機粒子であり、
前記粒子の平均粒子径が0.1〜3.0μmであり、
前記最外層における粒子の含有量が0.01〜0.20質量%である、請求項1の太陽電池用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記粒子が多孔質シリカである請求項1または2の太陽電池用積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、共重合ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリウレタン系樹脂の内、少なくとも1種を主成分とする被覆層を有する被覆層付き太陽電池用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−238912(P2010−238912A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85323(P2009−85323)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】