説明

太陽電池

【課題】バスバー部分におけるキャリヤの収集効率を向上させ、光電変換効率を向上させることができる裏面コンタクト型の太陽電池を提供する。
【解決手段】結晶系半導体基板2の裏面に、集電用のプラス電極7とマイナス電極9とを複数形成し、それぞれをバスバー10,6で共通に接続し、さらに、バスバー10,6の外側に、逆極性の補助電極5,8を形成し、それぞれを同極性の集電電極7,9に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電電極を裏面に配置した裏面コンタクト型の太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換効率を飛躍的に向上させる技術として、裏面コンタクト型太陽電池が注目されている。通常の太陽電池は、光入射面に電流取り出し用の集電電極が形成されるため、集電電極部分が非発電部となってしまい、変換効率を低下させる原因となっている。裏面コンタクト型太陽電池は、集電電極を裏面に配置することによりシャドーロスを無くした構造を有している。さらに、集電電極が裏面にあるので、pn接合が裏面に形成される。
【0003】
また、通常の太陽電池では、表面に反射防止のテクスチャを設けた場合、凹凸が有るために良好なpn接合を形成することが難しくなったり、表面電極が凹凸を被覆できずに断線したりする問題がある。しかし、裏面コンタクト型太陽電池では、pn接合と電極が平坦な基板裏面に配置されるため、上記のような問題は生じない。さらに、プラス電極及びマイナス電極が共に裏面にあるため、従来のように直列化のために表の電極を裏にまわす必要がなく、簡略な構造となる。そして、表面電極がないので意匠性が向上し、住宅の屋根に設置するには好ましい意匠性が得られる。
【0004】
例えば、特許文献1には、裏面側にp+層とn+層とを形成して基板とpn接合を形成し、電流取り出し用のプラス側電極及びマイナス側電極がp+層及びn+層に重ねて形成された裏面コンタクト型太陽電池が開示されている。光により発生した少数キャリヤは、移動距離が拡散長以上になると再結合して消滅してしまい、有効に取り出せない。また、短絡電流値が減少するので、少数キャリヤの移動距離は拡散長以下であることが望ましい。
【0005】
電流を外部に取り出す構造は、非集光型のように大面積セルの太陽電池では、全面を覆うリードフレームや電極同士がショートしないように絶縁材等を設けるとコスト高となる。従って、複数の集電電極の集合部に電流を外部に取り出して直列化するために、バスバーが設けられている。このバスバーは、例えば、集電電極より幅広に形成した形状として、集電電極と同一面上で基板の端に配置するのが一般的である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−298078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたバスバーは、太陽電池セルの端部に配置され、片側には逆極性の集電電極がない。そのため、バスバー上部で発生した少数キャリヤについては、逆極性の電極までの拡散距離が長いため収集効率が充分でなく、実質的にバスバー部分が光電変換に有効に使われない無効な領域となっていた。
【0008】
本発明の目的は、バスバー部分におけるキャリヤの収集効率を向上させ、光電変換効率を向上させることができる裏面コンタクト型の太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池は、結晶系半導体基板と、該基板の裏面に形成された互いに極性の異なる領域にそれぞれ配置された複数の集電電極と、各極性の集電電極を共通に接続する電流取り出し用のバスバーと、を備えた裏面コンタクト型の太陽電池において、
前記バスバーに近接させて、該バスバーとは異なる極性の補助電極を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記本発明においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
前記補助電極は前記基板の端部に設けられている。
前記バスバーと前記補助電極との距離が、前記半導体基板の拡散長以下である。
前記集電電極が櫛歯状に形成されている。
前記補助電極は同極性の前記集電電極に接続されている。
前記基板の光入射側に、該基板と同一導電型で該基板よりも不純物濃度の大きい表面電界層が設けられている。
前記基板の裏面にパッシベーション層が設けられている。
前記結晶系半導体基板が多結晶または単結晶のシリコンにより形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バスバーに近接させて逆極性の補助電極を設けたことによって、バスバー上部で発生したキャリヤを該補助電極により有効に取り出すことができ、光電変換効率の高い太陽電池が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の太陽電池の第1の実施形態を示し、(a)は太陽電池の裏面側の模式図、(b)は(a)のA−A’断面の模式図、(c)は(a)のB−B’断面の模式図である。図1において、1は表面パッシベーション層、2はp-基板、3はp+層、4はn+層である。また、5はプラス側の補助電極、6はマイナス側のバスバー、7はプラス電極、8はマイナス側の補助電極、9はマイナス電極、10はプラス側のバスバーである。
【0013】
-基板2は、光吸収して光キャリヤを発生するための機能を有する。基板2の材料としては、シリコンやGaAsなどの太陽電池として公知の材料が好適に用いられる。特に、シリコンは安価で安定した供給が得られ、15cm角などの比較的大面積が得られることからより好ましい材料である。
【0014】
また、上記基板2の結晶質としては、多結晶、単結晶共に用いることができる。この基板2の作製方法には、原料ポリシリコンを凝固させる公知の方法が好適に用いられる。例えば、単結晶の場合にはCZ法またはFZ法が用いられ、多結晶の場合には一方向凝固法が用いられて、インゴットが形成される。
【0015】
インゴットはバンドソーなどで周囲の形状が整えられ、単結晶の場合には主に円形状に、多結晶の場合には矩形状に切断される。多結晶の場合のインゴットは70cm角程度と大きいため、例えば、15cm角となるようにバンドソーで分割された後、ワイヤーソーなどでウエハー状にスライスされる。スライス後の厚みは通常200μmから300μm程度であるが、キャリヤの収集効率の向上及び材料コストの低下の要求から、さらに薄くすることが望まれている。しかしながら、薄くした場合の割れ発生の問題に起因するプロセス上の制約などから、極端に薄くすることはできない。従って、安定的に生産できる厚みとしては100μm程度が好ましい。
【0016】
スライス後に光閉じ込めの目的で、光入射面側表面に微細なテクスチャを形成することが好ましい。テクスチャ形成方法は、一般的にはアルカリによる異方性エッチングが実用的に用いられている。しかし、多結晶基板では結晶方位が一定でないことから異方性エッチングの手法では充分でなく、場合によっては該エッチングを省略したり、或いはRIEなどの別の方法を用いている。
【0017】
太陽電池として重要な基板品質を表す特性パラメータは、キャリヤの拡散長や基板の比抵抗などである。
【0018】
拡散長は基板品質により異なるが、数μmから数千μm程度である。一般的に、多結晶では小さい値となり、単結晶では大きい値となる。拡散長の測定方法としては、公知のSPV法が好適に用いられる。
【0019】
比抵抗については、ドーピングによって制御されるものであり、通常0.1から10Ω・cm程度が好ましい数値である。図1では導電型としてp型を示したが、所望に応じてn型であってもよく、その場合、他のドーピングされた層については図1と逆の導電型となる。
【0020】
表面パッシベーション層1は、p-基板2の光入射側表面の表面再結合を緩和するとともに、反射を防止するために設けられる薄膜材料である。表面パッシベーション層1の材料としては、SiO2膜やSiN膜が好適に用いられる。一般的には、単結晶シリコンの表面パッシベーションには、SiO2膜が良好な材料として知られている。他方、多結晶シリコンの表面パッシベーションには、SiN膜が良好な材料として知られている。さらに、その作製方法によりパッシベーションの効果が異なることが知られている。そのため、基板材質に応じて表面パッシベーション層1の材料、作製方法を選択して用いることが好ましい。SiO2膜の形成方法としては、公知の熱酸化法を用いることで好適に形成される。SiN膜はCVD法を用いて形成される。パッシベーション層と反射防止層とを兼ねてSiN膜が形成される場合には、CVD法によりSiN膜を形成した後、熱処理を施してパッシベーションを行ってもよい。熱処理を行う理由は、熱によって遊離したSiN膜中の水素原子が基板の表面やバルクの粒界などの欠陥を減少させる作用があると説明されている。
【0021】
前記表面パッシベーション層1の厚みは、10nmから100nm程度が好適である。反射防止層を兼ねる場合の好適な厚みは、光の波長と半導体基板の屈折率、薄膜材料の屈折率から求まる光の反射率を最小限とする光学設計に由来する好適な値とすることが好ましい。このような厚みとしては、例えば、波長550nmに対する反射率を最小にする設計を行う場合、厚みは100nm程度である。また、SiO2膜でパッシベーションした後に、反射防止層としてSiN膜を形成してもよい。
【0022】
+層3は、p-基板2とプラス電極7とを良好にオーミック接合するための層である。p+層3の作製方法としては、アルミニウムのペーストをスクリーン印刷法で塗布して乾燥後、800℃程度で焼成を行う方法が公知である。この方法は本発明でも好適に用いることができ、p-基板2中にp+層3が形成される。特に本発明ではp+層3及びn+層4が櫛型や点状の形状であるから、スクリーン印刷法を用いることが生産上好ましい。
【0023】
+層4は、p-基板2と半導体接合を形成して光起電力を発生させるための層である。n+層4の作製方法は、例えば、リンを含む気体としてPOCl3やP25を気化させて熱拡散させる公知の方法が好適に用いられる。この場合、櫛型などの所望のパターンを得るには、SiO2膜などに開口部を設けたマスクパターンが必要となる。マスクを使わない方法としては、リンを含む薬剤をペースト状にしてスクリーン印刷法やインクジェット法で塗布してもよく、各手法は所望の印刷精度や特性に応じて適宜選択される。
【0024】
+層3及びn+層4は互いに隣接するように配置することにより、キャリヤの収集効率が良好となる。即ち、p+層3とn+層4との水平距離を基板2の拡散長以下にすることで良好な特性が得られる。これは、p+層3の上部で発生した少数キャリヤ(エレクトロン)がn+層4に移動するに際し、移動距離が拡散長以下であればキャリヤが消滅せず、有効に取り出せるからである。例えば、細長いパターンや点状のパターンにより、p+層3及びn+層4を互いに隣接して配置することが好ましい。細長いパターンの場合、p+層3及びn+層4からなる櫛歯状パターンが互いに向き合うように配置することが好ましい。
【0025】
図2は、細長い櫛歯状パターンのp+層3及びn+層4を形成した場合の電極ピッチと効率の関係のシミュレーション結果を示す説明図である。シミュレーションは、市販のデバイスシミュレーションソフトを用いて行った。図2に示す結果から、電極ピッチ(即ち、p+層及びn+層のピッチ)が小さい程変換効率が向上することが分かる。
【0026】
プラス電極7及びマイナス電極9は、太陽電池セルの電流を取り出すために、集電電極として形成される。集電電極の電極幅及び電極間距離が共に小さい程キャリヤの収集効率が良くなるが、幅と距離を小さくするには製造プロセスとして微細加工が必要となる。例えば、フォトリソグラフィーの手法を用いることで数μmから数十μm程度の加工が可能である。しかし、フォトリソグラフィーの手法を用いると、フォトマスクを必要とし、露光、現像、マスク除去などの工程の増加によりコスト高となり、スループットが悪くなるため実用的ではない。量産レベルでは、コストが低くスループットの良いスクリーン印刷法が用いられる。即ち、集電電極の形成方法としては、アルミニウムペーストまたは銀ペーストをスクリーン印刷法で塗布して乾燥後焼成することにより、比抵抗の小さい良好な電極が形成される。プラス電極7及びマイナス電極9の幅は、スクリーン印刷の実用的な印刷精度と半導体基板2の拡散長とにより決定され、0.1mm程度から2mm程度が好ましい。また、互いに櫛歯状に向き合う配置での電極間距離(プラス電極とマイナス電極との隙間の距離)についても、上記と同様に0.1mm程度から2mm程度が好ましい。
【0027】
アルミニウムペーストや銀ペーストには、ガラスフリットが添加された太陽電池用として知られた焼成タイプのペーストが好適に用いられる。また、p+層3の形成にアルミペーストを用いた場合には、同時にプラス電極7が形成されることとなるため、工程が簡略化される。
【0028】
バスバー6は、マイナス電極9を集合させて電流を一箇所に集めるために用いられる。従って、バスバー6の極性はマイナスとなる。バスバー6は、電流密度が大きくなることを避けるために幅広に形成する必要があり、通常2mmから5mm程度の幅が良好である。
【0029】
補助電極5は、バスバー6に隣接して形成されるもので、極性はバスバー6と逆の極性となる。また、その上部には、対応する不純物ドープ層(図1ではp+層)が形成される。補助電極5は、半導体基板2の最端部に設けることが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0030】
一般的に基板2の特性は面内分布を有するが、端部において特性が低下する傾向がある。これは、インゴット作成時に坩堝からの不純物が基板端部に取り込まれ易いことや、大型のインゴットを分割した場合に切断面になる基板端部にダメージが残り易いことによる。以上の理由で、基板端部でのキャリヤ収集効率は一般的に悪くなる。特性が低下している部分の端部からの距離は作製方法により異なるが、数百μmから数mmと考えられる。
【0031】
基板端部においては基板特性が低いことから、光入射側の表面近傍に発生したキャリヤを基板裏面まで収集することが困難になる。しかしながら、隣接するバスバー部分の上部で発生し、裏面近傍まで拡散したキャリヤの収集に関しては収集距離が短いので、補助電極5をキャリヤ収集用に役立てることができる。従って、基板2の最端部の特性が低くキャリヤ発生層として利用できない場合であっても、隣接するバスバーのキャリヤ収集には利用できるため、補助電極5は基板2の最端部に配置することが望ましい。基板2の最端部での特性が良好であれば、補助電極5の部分も光によるキャリヤ発生を利用できることは言うまでもない。
【0032】
図7は、補助電極の無い従来の裏面コンタクト型太陽電池を示し、(a)は太陽電池の裏面側の模式図、(b)は(a)のC−C’断面の模式図である。図8は、図7のバスバー近傍でのキャリヤ発生と収集を示す模式図である。図7及び図8において、図1と同じ部材には同じ符号を付した。
【0033】
図7に示すように、バスバー6の片方の側は基板の端になっている。図8に示すように、バスバー6上部で発生した少数キャリヤ(エレクトロン)は遠方のp+層3まで移動する必要がある。しかし、この移動距離が基板の拡散長以上であれば、再結合して消滅するので取り出すことが困難となる。上述したように、バスバー6の幅は2mm程度から5mm程度である。しかし、良質な単結晶シリコンにおいても拡散長は1mm程度であるため、バスバー6の端部(基板端部に面する側)に発生したキャリヤは取り出し難いことが理解される。
【0034】
図3は、本発明の太陽電池におけるキャリヤの発生と収集の様子を示す模式図である。図示するように、バスバー6端部の上部で発生したキャリヤは補助電極5に拡散することで有効に取り出すことができる。補助電極5自体の幅は、集電電極と同様にスクリーン印刷法であれば0.1mm程度と細くすることが可能である。従って、補助電極5の上部で発生したキャリヤの取り出しについて問題となることはない。また、補助電極5は集電電極よりも電流値が大きくなり、且つ集電の距離も長いため、集電電極に比べて幅広にしたり、電極材料または半田等を用いて厚盛りにしたりしてもよい。
【0035】
次に、図1に示した第1の実施形態の太陽電池の作製工程を具体例を挙げて説明する。先ず、厚さ200μmで15cm角の大きさの多結晶シリコンウエハー基板2を用意する。この基板2の比抵抗は0.5Ω・cmで、導電型はp型とする。次に、基板2をフッ酸、硝酸及び酢酸の混酸で数分浸漬してソーダメージを除去し、引き続いて80℃の20%水酸化ナトリウム溶液に30分浸漬してアルカリエッチングを行ってテクスチャ処理を行う。
【0036】
また、光入射面側にパッシベーションと反射防止の機能を兼ねるSiN膜1をCVD法により形成する。CVD法の原料ガスとしてSiH4ガスとNH3ガスとを用い、公知のプラズマCVD装置によって成膜する。SiN膜1の膜厚は、550nmの波長の光における反射率を最小値とするため100nmとする。
【0037】
さらに、以下のようにスクリーン印刷法により、基板2の片面にp+層を形成する。即ち、p+層3の印刷パターンを用意してアルミペーストを印刷する。そのパターンは、幅1mm長さ140mmの矩形状で1.4mmの間隔で平行に形成した櫛歯状縦線パターンと、該縦線パターンに直角なバスバー6に対応した幅4mmの横線パターンと、補助電極5に対応した横線パターンである。
【0038】
そして、コンベア式のIR焼成炉を用いて、連続して乾燥、焼成を行う。乾燥温度は120℃とし、焼成温度は800℃とする。焼成後アルミニウムが基板2に拡散してp+層のパターン3が形成される。拡散せずに残ったアルミニウムにより、プラス電極7、補助電極8及びバスバー10等の電極が同時に形成される。
【0039】
その後、印刷法によってリンを含んだペースト状の拡散剤を印刷して乾燥及び拡散を行って、n+層のパターンを形成する。n+層のパターンの形状は、p+層と同様にバスバー6と補助電極8に対応した幅1mm、長さ140mmの形状として1.4mmピッチで平行に形成した櫛歯状縦線パターンとする。p+層パターンとn+層パターンとの間には0.2mmの間隔が開いている。
【0040】
次に、銀ペーストをスクリーン印刷法で印刷して乾燥させた後、IR焼成炉を用いて800℃で焼成を行い、マイナス電極9、補助電極5及びバスバー6を同時に形成する。以上のようにして、第1の実施形態の太陽電池が作製される。
【0041】
以上のように第1の実施形態の太陽電池によれば、電流取り出し用のバスバー6に隣接させて補助電極5が配設され、隣接するバスバー6と補助電極5とは異なる極性を有している。また、バスバー6と補助電極5との距離が半導体基板2の拡散長以下となるように設定されている。さらに、補助電極5が集電電極7に接続されている。従って、これらの構成により、バスバー6上部で発生したキャリヤを補助電極5により有効に取り出すことができ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0042】
また、集電電極を櫛歯状に形成することにより、発生したキャリヤを有効に取り出すことができ、且つバスバー6まで輸送できる。さらに、基板2の最端部に補助電極5を設けることにより基板2の最端部の特性が低い場合であっても、キャリヤ収集領域として有効に活用できる。従って、これらの構成により、発生したキャリヤの収集効率が増大し、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0043】
加えて、結晶系半導体基板が多結晶または単結晶のシリコンで形成されることにより、良好な特性を有し、安価な太陽電池を提供することができる。
【0044】
また図4は、本発明の太陽電池の第2の実施形態を示す模式図である。図4において、1は表面パッシベーション層、2はp-基板、3はp+層、4はn+層である。また、5は補助電極、6はバスバー、7はプラス電極、41は表面電界層(フロントサーフェスフィールド層)、42は裏面パッシベーション層である。
【0045】
第2の実施形態では、裏面のパッシベーション層42と表面の表面電界層41とを設けた構成例であり、所望に応じて適宜選択してそれぞれの層を形成するものである。以下に、裏面のパッシベーション層42と表面の表面電界層41の機能を説明する。
【0046】
-基板2の裏面には裏面パッシベーション層42が設けられている。該裏面パッシベーション層42の機能は、p-基板2の裏面及びp+層3、n+層4の裏面を被覆することで、表面再結合速度を低減するものである。また、補助電極5、バスバー6、プラス電極7とp+層3、不図示のマイナス電極とn+層4とのコンタクト面積を小さくすることで、さらに表面再結合速度を低減できる。
【0047】
補助電極5、バスバー6、プラス電極7、不図示のマイナス電極は、裏面パッシベーション層42に設けられた開口部により、p+層3またはn+層4とコンタクトする構造である。即ち、バスバー6、プラス電極7とp+層3またはn+層4とが直接コンタクトすることによるキャリヤの消滅を可能な限り少なくすることを目的に形成する。裏面パッシベーション層42の材料及び作製方法としては、表面パッシベーション層1と同様の材料、作製方法が用いられる。裏面パッシベーション層42の形成後に、所定の位置に電極コンタクト用の開口部をエッチングにより形成する。この場合、開口部は櫛歯状ではなく点状に形成してもよい。開口面積が小さいことでパッシベーションの効果はより効果が大きくなるが、接触抵抗は大きくなるため、相互の作用のバランスがとれて最適な特性となる開口面積を選択して用いればよい。
【0048】
また、基板2の表面には、該基板2と同じ導電型で不純物濃度の大きいp+層からなる表面電界層41が設けられている。この表面電界層41を設けたことにより、p-基板2のエネルギーバンドの伝導帯側に障壁が形成され、少数キャリヤのエレクトロンが再結合せずに裏面側に拡散されることになる。このように表面電界層41は、光入射側で発生した少数キャリヤの再結合を防いで裏面の電極に到達させる層であり、この表面電界層41はフロントサーフェスフィールドと呼ばれる。
【0049】
次に、図4に示した第2の実施形態の太陽電池の作製工程を具体例を挙げて説明する。第2の実施形態の太陽電池は、以下に説明する事項以外は、第1の実施形態の太陽電池の作製工程と略同様に作製される。
【0050】
先ず、基板2を混酸処理し、アルカリ処理を行った後、表面パッシベーション層41を形成する。その後、BBr3を含むN2ガスを拡散炉に流しながら基板2の加熱を行って、p型の表面電界層41を形成する。次いで、裏面はエッチングを行い、p+層3を除去する。
【0051】
また、スクリーン印刷法により基板2の裏面にアルミペーストを印刷してp+層3の櫛型パターンを形成して乾燥焼成する。さらに、スクリーン印刷法により、リンを含んだペースト状の拡散剤を印刷してn+層4のパターンを形成して乾燥焼成する。
【0052】
そして、表面パッシベーション層41を形成した方法と同様にして、裏面パッシベーション層42を形成する。次に、裏面パッシベーション層42に開口部を設けるために開口部パターンに応じてSiNエッチング用のペーストをスクリーン印刷して加熱洗浄する。この工程において、図4に示したように、裏面パッシベーション層42に開口部が形成される。その後、アルミペースト、銀ペーストの電極パターンを印刷して焼成し、プラス電極7、不図示のマイナス電極、補助電極5及びバスバー6を形成する。以上のようにして、第2の実施形態の太陽電池が作製される。
【0053】
以上のように第2の実施形態の太陽電池は、第1の実施形態の太陽電池と基本的には同様の作用効果を奏する。特に、第2の実施形態によれば、基板2の光入射側に、基板2と同一導電型で基板2よりも不純物濃度の大きい表面電界層41を設けているので、光入射面で発生したキャリヤを有効に取り出すことができる。また、基板2の裏面にパッシベーション層42を設けているので、裏面でのキャリヤの再結合を防止することができる。従って、これらの構成により、キャリヤの収集効率が増大し、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0054】
次に、第1及び第2の実施形態の太陽電池を複数枚、直列または並列接続する構造について説明する。図5は、本発明の太陽電池を複数並べて直列化するための端子の取り出し方法を示す模式図である。図5に示すように、一方の太陽電池のマイナス側バスバー6の端部に、銀メッキ銅箔製などの金属製の接続端子51を半田付け等により接合して外部に引き出す。そして、該接続端子51を隣接する他方の太陽電池のプラス側バスバー10の端部に半田付け等を行うことにより、太陽電池の直列化が可能となる。このような接続構造を採用することにより、接続のための端子を表から裏に取りまわすことなく、裏面コンタクト型太陽電池が直列または並列に接続可能となる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の太陽電池の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
本実施例では、市販の2次元デバイスシミュレーションソフトATLASを用いて、本発明の太陽電池と従来の太陽電池との特性の違いをシミュレーションにより検証した。
【0057】
図6は、シミュレーションに用いたモデルを示し、(a)は本発明の構成、(b)は従来の構成である。本発明の太陽電池については上記第1の実施形態と同様の構成としたが、2次元モデルであり、モデルの縦横比をほぼ同じにするために、図6は図1(c)の断面模式図の右側のみをモデル化したものである。尚、図6(a)、(b)の双方の構成において、p型の表面電界層41が形成されている。
【0058】
図6において、基板2の厚みは150μmとし、バスバー6上部のn+層3の長さは25μmとした。また、補助電極5上部のp+層の幅は25μmとし、集電電極(プラス電極)7上部のp+層の幅は50μmとした。さらに、基板品質としては、拡散長と同様にキャリヤの走行性を表す指標であるライフタイムを100μsecとした。このライフタイムは、多結晶では一般的に10μsec程度であり、単結晶では一般的に1msec程度である。
【0059】
以上の構成において、図6(a)の補助電極5が存在する構成の光電変換効率と、図6(b)の補助電極5が存在しない構成の光電変換効率とを比較したところ、本発明の補助電極5が存在する場合は、補助電極5が存在しない従来の太陽電池に比して、短絡電流値が上昇することにより0.3%変換効率が向上することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の太陽電池の第1の実施形態を模式図である。
【図2】細長い櫛歯状パターンのp+層及びn+層を形成した場合の電極ピッチと効率の関係のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図3】本発明の太陽電池におけるキャリヤの発生と収集の様子を示す模式図である。
【図4】本発明の太陽電池の第2の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の太陽電池を直列化するための端子の取り出し方を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例においてシミュレーションに用いたモデルを示す模式図である。
【図7】従来の裏面コンタクト型太陽電池を示す模式図である。
【図8】従来の太陽電池のバスバー近傍でのキャリヤ発生と収集を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 表面パッシベーション層
2 p-基板
3 p+
4 n+
5 プラス側補助電極
6 マイナス側バスバー
7 プラス電極
8 マイナス側補助電極
9 マイナス電極
10 プラス側バスバー
41 裏面パッシベーション層
42 表面電界層
51 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶系半導体基板と、該基板の裏面に形成された互いに極性の異なる領域にそれぞれ配置された複数の集電電極と、各極性の集電電極を共通に接続する電流取り出し用のバスバーと、を備えた裏面コンタクト型の太陽電池において、
前記バスバーに近接させて、該バスバーとは異なる極性の補助電極を設けたことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記補助電極は前記基板の端部に設けられている請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記バスバーと前記補助電極との距離が、前記半導体基板の拡散長以下である請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記集電電極が櫛歯状に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記補助電極は同極性の前記集電電極に接続されている請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項6】
前記基板の光入射側に、該基板と同一導電型で該基板よりも不純物濃度の大きい表面電界層が設けられている請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項7】
前記基板の裏面にパッシベーション層が設けられている請求項1から6のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項8】
前記結晶系半導体基板が多結晶または単結晶のシリコンにより形成されている請求項1から7のいずれかに記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−281044(P2007−281044A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102642(P2006−102642)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】