説明

好ましくは軟質の支持体上に電子コンポーネントを組立てる方法及びかくして得られたパスポートといった電子物品

本発明は、支持体上でのシリコンチップ等の電子コンポーネントの組立てプロセスに係わり、その方法は、予め定められた少なくとも1つのパッド(41A)に1つのバンプ(42)が備わっている、複数の接続用パッドを有する電子コンポーネント(40)を提供する手順と;前記バンプを介して前記予め定められたパッドに電気的に接続すべき少なくとも1つの端子(31)を有する支持体(30)を提供する手順と;バンプが備わった前記予め定められたパッドと前記端子を対面させて置き、前記バンプと前記端子を接触させ、既定の温度及び圧力条件下でこれらを互いに組み立てる手順と;を具備する。前記バンプと前記端子を接触させ固定する前に、前記端子の表面を絶縁層(32)で被覆し、前記絶縁層は、前記温度及び圧力条件下で前記バンプが横断できるように選択された材料でできている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子チップ(素子又は部品)とチップ内蔵型パスポートの支持体のような軟質支持体などのその支持体との間の電気接続の実現に関する。
【背景技術】
【0002】
IDチップが、例えばカバー(被覆)といったようなシートに内蔵され、かつ該チップが接点を持たずに外部と通信できるようにする(従って見かけの接触用パッド(当て物)が無く、そのため高レベルの秘密厳守が確保される)このシートの厚み内に実現された1本のアンテナにこのチップが接続されているパスポートを製造することは、すでに提案されている。
【0003】
かくして、既知の技術に従うと、パスポートは、カバー上に直接(例えば導電性銀インキを用いて)シルクスクリーン印刷されたアンテナを用いて実現される。その後、「フリップチップ」と呼ばれる技術(これは一般に、通常の組立てよりもさらに高い精度でブラインド(盲カバー)により実施される反転後の組立てである)に従ってチップが組立てられ、そのためそのパッド(英語では「pads」)のうちの予め定められたいくつかが、アンテナの適切な端子に電気的に接続されるようになっている。
【0004】
実際には、これらの予め定められたパッドには、バンプ(凸部)(英語では「bumps」)が事前に具備されており、かかるバンプ(凸部)は、これらのパッド及びそれに隣接するパッドのレベルとの関係において突出部分を構成し、特にチップカード(従って剛性支持体)内へのチップの組立ての場合に主としてアンテナ端子が、そのサイズとは無関係に、実際に接続すべきパッドに隣接するパッドと接触することがないよう保証している。
【0005】
しかしながら、パスポートのカバーといったような可撓性ある製品においては、チップとアンテナ端子の間の接続の実現段階が、支持体が軟質であること(これは実際には紙でできている)及びチップのパッドが非常に近接していることによって妨害される、ということが判明している。チップをアンテナの端子(ひいては軟質支持体)に対して圧接する場合、この支持体は、圧入によって局所的にしか変形できず、そのため圧入されていない端子の側面部分は、チップの隣接するパッド上にバンプが無いにも関わらず、これらのパッドと偶発的な接続を作り出す可能性がある。このため、接続作業の検査ではきわめて満足のいくものであることが示され得るのに、短絡の危険性も発生することになる。
【0006】
このような状況は、図1に表わされており、ここでは、導電性インキでできた1つの端子11で局所的に被覆されている支持体10は、バンプ22を備えた左側にあるものを含むパッド21の備わったチップを下向きに圧接する際に屈曲させられている。このバンプは、支持体とインキを局所的に押圧して窪ませ、一方、窪みの少ない端子11の側面部分は右側パッド21と接触することになる。実際、導電性インキ端子は、ここではほぼ恒常的厚みをもつものとして表わされているが、特にシルクスクリーン印刷の場合に端子を被着させるために用いられる技術に応じて、実際には、その厚みがおよそバンプの厚みであり得、従って隣接するパッドとの偶発的な接触の危険性も生み出す小さな側面インキビード(玉状突起)(図示せず)が形成させられる可能性がある。
【0007】
隣接する2つのパッドの間の距離は、パッドの辺が約80ミクロンであるのに実際およそ60ミクロンでしかない可能性があり、一方アンテナ端子の表面積は、幅が標準的に150ミクロン以上で(シルクスクリーン印刷の場合特に、80ミクロンの直径の導電性銀薄片を有するインキで)、およそ平方ミリメートル単位にまでなり得る。実際には、パッド間の距離(中心間)が250ミクロン未満まで減少する度に上述の問題が発生する恐れがあると考えることができる。
【0008】
端子の寸法を減少することも考えられると思われるが、それにより、現実の大量生産をほとんど妨げる程度まで、位置決め制約条件を極度に厳しくすることになるだろう。ここで、反転のオプションを備えたチップ設置機械(「フリップチップ」のケース)、例えばDATACON社製のものといったような(そのコストは約300,000ユーロであり得る)機械は、支持体(考慮されている例ではパスポート)上の整列モチーフ(構成体)及びチップ上のパッドの自動認識システムを有しているということを思い起こされたい。該機械は、(実際には類似の多数のチップで形成された直径約300mmのディスクの内部で)チップを回収し、それを反転させ、検出された位置に応じてそれを支持体上に設置しに来る。このような作動オプションにおいて、このようなラインが比較的低速である(これは毎時1000個を上回ることができない)ことを考慮すると、位置決め制約条件をさらに厳密化することは致命的な欠点となるように思われる。
【0009】
支持体の構成材料が特に軟質でない場合であっても軟質材料のパッド又は端子を利用したい場合、さらには、剛性支持体上でさえ、端子の形成技術によって大きい側面ビードが出現した場合に、同じタイプの問題が提起される可能性があるということがわかる。その上、考慮対象の1つ又は複数の端子は、他のプロセッサ、スクリーンなどといったようなアンテナのその他の異なる単数又は複数の回路に接続され得、同様に、問題の接続は、1つのチップのパッドだけでなく、例えば前述のもののような任意のその他の電子コンポーネントのパッドにも関係し得る。
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的は上述の欠点を補正することを目的とし、支持体に対するコンポーネントの通常の位置決め制約条件を厳密化する必要なく、ひいてはそれを軽減さえしながら充分な大量生産速度を可能にしながら、たとえ支持体が軟質である場合又は端末の形成技術が側面ビードを出現させる恐れがある場合でも、端子とのコンポーネントのパッドの偶発的な接続の危険性を最小限におさえることのできる、支持体上への電子コンポーネント、特に電子チップの組立てプロセス(方法)、を目的としている。該発明は、同様に、支持体が軟質であるか又は端子が側面ビード(玉状突起)を有している場合でさえ、そして1つ又は複数の端子が大きなサイズのものである場合でさえ、このような端子ともう1つのパッドの間の偶発的な接続なく、支持体上に形成された端子に高い信頼性で接続されているコンポーネント(構成要素)のパッドをもつ支持体(特にパスポートといったような身分証明書であるが、必ずしもそれである必要はない)の上に組立てられる電子チップといったような電子コンポーネントを有する電子エンティティ(物品又は製品)をも目的としている。
【0011】
このため、本発明は、支持体上での電子コンポーネント(構成要素)の組立てプロセス(方法)であって、
− 予め定められた少なくとも1つのパッドに1つのバンプ(凸部)が備わっている、複数の接続用パッドを有す電子コンポーネント(構成要素)を提供する手順と、
− 前記バンプ(凸部)を介して前記予め定められたパッドに電気的に接続すべき少なくとも1つの端子を有する支持体を提供する手順と、
− バンプが備わったこの予め定められたパッド(当て物)とこの端子を対面させて置き、このバンプとこの端子を接触させ、既定の温度及び圧力条件下でこれらを互いに固定する手順と、
を具備するプロセス(方法)において、このバンプとこの端子を接触させ固定する前に、この端子の表面を絶縁層で被覆し、この絶縁層は、前記の温度及び圧力条件下でこのバンプが横断できるように選択された材料でできていることを特徴とするプロセス(方法)を提案する。
【0012】
かくして、端子とそれに接続されなくてはならないパッドの間の電気的接続は、このパッドに備わっていてかつ支持体に対してコンポーネントを接触させた際に絶縁層を横断する、バンプによって確立される。従って絶縁層は、他のあらゆる場所に存続し、この端子とそれに接続されることにはなっていない(従ってバンプを備えていなかった)他の全てのパッドとの間の電気的絶縁を維持する。
【0013】
本発明は、該コンポーネント(構成要素)が電子チップ(素子又は部品)である場合に特に適合する。
【0014】
本発明の利点は、特に剛性である数多くの支持体の場合において見られる。この場合、絶縁層の存在は、バンプを介したパッド及び端子の接触及び固定条件に対する制約を軽減できるようにする可能性がある。バンプ及び端子の固定では、既知の解決法の場合に比べて、今後、特に端子の形成が側面ビードを出現させ得た場合に、この端子とその他のパッドの間の偶発的な電気的接続をひき起こす確率が低くなる。しかしながら、既定の温度及び圧力条件で圧壊する能力をもつ材料で支持体が作られている場合でも、このようなタイプの支持体ではパスポートの製造に関して上述した欠点が現われ得ることから、本発明は同じくこのような場合にもきわめて有利である。
【0015】
この軟質支持体という概念(このような支持体は圧縮可能であるとも言える)は、まず最初に繊維質材料で作られた支持体の場合(これはコストが手頃な広範囲の支持体に対応する)を含む広い材料範囲を包含することができる(ここには特に、手頃なコストで容易に得られる紙ベースの材料が入る)。(充分薄い厚みを選んだ場合に)軟質であり得る材料のもう1つの有利な例としては、例えばPVCなどのプラスチック材料の例がある。軟質支持体に関しては、場合によって一部のケースで、絶縁層(ひいては関連する端子)と同様、バンプが部分的にこれらの支持体を横断し、このためこの端子とのより良い電気的接触が得られることになる可能性がある、という点を指摘することができる。
【0016】
該プロセス(方法)は、シート状の支持体に応用され得、かつ身分証明書(パスポート、ただし場合によっては入場カード、IDカードなど)の作製にも応用され得るということが容易に理解される。
【0017】
バンプは、原則として、接触及び固定の際に適用される温度及び圧力条件下でバンプが絶縁層を横断できるかぎり、パッド上の単純な肥厚の形を含め、任意の形状を有することができる。ただし、好ましくは、絶縁層中のバンプの貫入に有利に作用するよう、このバンプは有利には、パッドと反対側で狭窄する形状を有する。
【0018】
特に、本発明は、略ボールの形状(完全な球形ではない)をした、ヒューズの端部を溶融させることにより得られる、これまではむしろ不都合と考えられていたくさび状部分、更には尖った部分を有する、それ自体公知のバンプ(時として英語では”stud bump”と称される)の利点を利用している。好ましい実施例では、バンプの厚さはくさび状部分を除き20乃至50ミクロンである。別の実施例では、バンプは柱状あるいは錐状である。また、バンプの幾何学的形状が尖ってくるほど、絶縁層を横断してバンプが当該層に穴を開けることになり、それは、端子形成材料部分、更には支持体形成材料部分まで達することがある。
【0019】
一般的な形態では、バンプは金あるいは金合金が用いられるが、それ以外の材料でもよく、例えば銅合金が考えられる。
【0020】
好ましくは、支持体は少なくとも2つの端子を有する。
【0021】
端子は、導電性インキを用いて、シルクスクリーン印刷(ひいてはタンポ印刷又はフレキソ印刷)によって実施される。変形形態では、グラビア印刷、オフセット印刷などによりインキを被着させることができる。例えば電解により金属又は金属合金(例えば銅)を成長させることによりそれらを実現することも可能である。実際には、端子は、例えば1本のアンテナのトラック(経路)といった、それらがその端部を構成している導電性トラック(経路)と同時に形成させることもできる。又いくつかの可撓性支持体については、従来の写真製版により端子の形成を行うこともできる、ということも指摘に値する。
【0022】
バンプが備わっていないパッドと比べて端子の絶縁が良好であることを考慮に入れると、本発明はこれらの端子に大きな表面積を与えることを可能にし、かくしてこの表面積は、電子チップに対面している支持体の表面積の66%〜95%の間に達し得る。その結果、接触の際の位置決め制約条件は著しく低減されることになる。好ましくは、これらの端子は平方ミリメートル単位を上回る個別の表面積を有する。
【0023】
絶縁層の表面積にも制限はなく、このことは偶発的な接続を最小限にとどめるのに極めて有利である。このようにして、絶縁層は、コンポーネントを組立てるべき領域内に支持体が有している端子を被覆することができる。絶縁層はさらに、接触段階の際に電子コンポーネントに対面している支持体の表面の少なくとも大部分にわたり拡がることさえできる。この層は、連続的又は不連続的であり得る(特に、それぞれに端子を被覆するこの層の部分の間には有利にも分離が存在する)。
【0024】
特に有利なケースでは、端子は支持体上に形成されたアンテナの一部を成し(こうしてコンポーネントと外部の接触の無い交換が可能である)、絶縁層は少なくともこのアンテナの大部分を覆い、この場合この層はコンポーネントのそばでは絶縁機能を有し、他の場所では、アンテナ及びその支持体(特に繊維質である場合)の、例えば機械的な又は水分に対する保護機能を有する。
【0025】
絶縁層は、さまざまな材料で作ることができる。
【0026】
物理的説明によって制限されることは望まないが、実際問題として、横断を受ける絶縁層の能力(これは基本的にそれを構成する材料に左右される)は、バンプの推力の下で一種のクリープにより側面に押し出される能力又はバンプの幾何形状に従って穿孔を受容する能力であり得る。
【0027】
かくして有利には、絶縁層は、周知の一材料カテゴリに対応する絶縁ワニスでできている。好ましいことに、この絶縁ワニスは、1000mJ/cm2未満、好ましくは約500mJ/cm2の重合エネルギーを有するように選択され、こうしてわずかな収縮しか付与されず、実際乾燥及び/又は冷却の後支持体のいかなる起状も誘発されない。
【0028】
しかしながら、絶縁層は同様に非導電性インキでもあり得る。
【0029】
絶縁インキ又はワニスのいずれであろうと、絶縁層は特にシルクスクリーン印刷によって被着され得る。この絶縁層は、直列に接続すべき2本のアンテナトラック間の導電性ブリッジ(架橋)を形成する横方向導電性ストランド(線)に対する支持体として役立つように利用可能である(例えば仏特許第2787609号明細書を参照のこと)。
【0030】
ただし、該絶縁層は同様に、例えば薄い紙シート(例えば厚み15ミクロン)といった繊維質材料でもあり得る。
【0031】
実際、絶縁層の構成材料の如何に関わらず、その厚みは有利には5〜25ミクロン、好ましくは10〜15ミクロンの間に含まれる。
【0032】
チップカードの製造においてそれ自体既知である有利な特徴に従うと、接触段階の後、その端子と絶縁層が備わった支持体と電子チップの間に含まれる空間は、充填用樹脂により充填されかつ/又は電子チップは保護用樹脂の中に埋め込まれる。
【0033】
本発明のプロセス(方法)によって得られる電子エンティティ(物品又は製品)は、それが1つの支持体上に例えば電子チップなどの電子コンポーネントを有する電子エンティティであり、この支持体が少なくとも1つの端子を有し、この電子コンポーネントが、この端子にこのパッドを電気的に接続するバンプが備わった予め定められた少なくとも1つのパッドを含む複数のパッドを有し、この端子が、バンプにより横断される絶縁層で被覆されていることを特徴とすることによって識別されている。
【0034】
本発明のプロセス(方法)によって得られるかかる電子エンティティは、有利には、端子がさらに予め定められたパッドに隣接する、接触点(プロット)と対面して拡がっているという特徴を有し、この隣接パッドにはバンプが備わっておらず、少なくとも前記絶縁層により端子から分離されている。
【0035】
このエンティティのその他の有利な特徴は、本発明のプロセス(方法)に関して上述した有利な特徴に対応する。
【0036】
該発明の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照して、制限的な意味のない一例として示されている以下の記述から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図3は、図2の支持体30上に本発明に従って組立てられるための、ここでは電子チップ(素子又は部品)である電子コンポーネント(構成要素)40を表わしている。
【0038】
支持体30は、(例えばアンテナといった支持体によっても担持された図示されていない回路に接続されている(以下参照)端子31を担持している。本発明に従うと、そこにチップ(素子又は部品)を組立てる前に、この端子の表面を絶縁層32で被覆する。
【0039】
チップ(素子又は部品)40の方はというと、これはパッド41A及び41Bを含む複数の接続用パッドを有しており、そのうちここではパッド41Aである1つのパッドを、端子31に接続させるようになっており、このパッドにはバンプ(凸部)42が備わっている。
【0040】
支持体上のチップの組立ては、(その図3の構成に対しチップを反転させた後)そのバンプが備わったパッド41Aを支持体の端子31と対面させて置き、その後このバンプとこの端子を接触させ、予め定められた温度及び圧力条件下でこれらを固定することから成り、絶縁層の構成材料は、前記温度及び圧力条件下でバンプが絶縁層を横断し、端子の表面の残りの部分を露出させることなく端子とパッドとの接続を確立するようなものである。従って、支持体は、バンプ42が押しつけられている場所で幾分か圧入されているものの、絶縁層32は、図1に関して指摘されたものと異なり、この端子31の左側面部分がパッド41Bと接触するのを妨げている。
【0041】
考慮対象の例においては、有利にも支持体は実際、温度及び圧力条件下で圧壊する能力をもつ材料で作られている。すなわち、該発明は、有利にはシート状をした繊維質材料といったような軟質材料に応用可能である。例えばこれは、SECURALIN(登録商標)という呼称でFIBERMARK社から販売されている紙である。変形形態では、合成繊維紙タイプの繊維質材料でもあっても良い。
【0042】
変形形態では、この支持体は、有利には200ミクロン未満の厚みの、例えばPVCなどのプラスチック材料のシートである。
【0043】
この先で見ていくように、紙又はプラスチック材料の選択により、特に該発明を身分証明書に応用できることになる。
【0044】
接続すべきパッドに設けられたバンプは、(電解成長などにより得られる)例えば包括的に平行六面体といった任意の形のバンプであり得るが、有利には、それは、接触/固定段階の際に絶縁層の横断を容易にするように、パッドの反対側で狭窄する形状を有している。
【0045】
この形状はかくして、球状又は平担化されたボールの形状であっても良い。
【0046】
それでも、好ましくは、このバンプはくさび状の一部分(例えば柱状又は錐状部分)、さらには尖った部分を有している。かくして、バンプ(凸部)は有利には、英語で「stud bump」と呼ばれるタイプのものである。すなわちヒューズの端部を溶融させることにより得られ、このために、このバンプは尖った部分を有するボールの形状を有する。このようなバンプの実現は、バンプ42を形成する小さな塊をそこから離脱させたばかりのワイヤ100が見られる図3の中で概略的に示されている。このバンプは、毛細管内にワイヤを設置することから始めて超音波溶接機によって得ることができ、電気放電によりワイヤの端部を溶融させることでボールを構成し、その後パッドに対しこのボールを圧壊させることになる。毛細管は、それが再上昇しワイヤがボールとの接合部で切れた時点で小さな尾を作り出すような形状を有している。かかるバンプの直径は、標準的に、作業条件又はワイヤに応じて25ミクロン又は32ミクロンである。
【0047】
図3のもののようなバンプは、くさび状の部分(つまり前述の尾)を除いて、標準的に約20〜50ミクロン、例えば約40ミクロンの厚みを有する。
【0048】
ここで図4について、バンプが絶縁層を横断するだけでなく、さらに端子を形成する層を横断しかつ支持体自体の中に侵入し、このことによって、このリンク(接続部)のきわめて優れた機械的堅牢度と共にきわめて優れた電気的接点が確保されるということは、指摘に値する。
【0049】
バンプは有利には、金又は金合金であるが、当然のことながらその他の導電性材料も利用可能である。
【0050】
図5は、以上で記述されたプロセス(方法)を用いて得られる電子エンティティ(物品又は製品)を表わしているが、それでも変形形態を伴っている。
【0051】
この図5は、チップ60が上に組立てられている支持体50を表わす。この支持体は、導電性トラック(経路)55により左右両方に延長されている2つの端子51を伴って表わされている。
【0052】
これらの端子はここでは2つ共、絶縁層52により被覆されている。しかしながら、この絶縁層は、ここでは、これら2つの端子の間で支持体の表面上に拡がっていないという意味で不連続である。この絶縁層はそれでも、ここではチップと対面して表面(端子により被覆されているか又はされていない)の少なくとも大部分にわたり拡がっており、ここではその上、これらの端子がその延長部分を成しているトラック部分55の上に拡がっている。
【0053】
端子51とバンプ62の接触の前又は後に(パッドは表示されていない)、有利には、その端子と絶縁層を備えた支持体と電子チップの間に含まれる空間を充填するような形で、充填用樹脂63の被着が存在し、この充填用樹脂63は時として英語で「underfill」と呼ばれる。なお、電子チップはその保護用樹脂64の中にさらに埋め込まれる。このような充填用及び/又は保護用樹脂の存在は、それ自体チップカードの分野において既知のものであり、ここでは詳述しない。
【0054】
図6及び7は、図5の電子エンティティの変形実施形態を表わしている。図5のエンティティのものと類似したこれらの図6及び7のエンティティの要素には、そこで同じ符号が割振られているが、ただし「ダッシュ」の添字が後続している。
【0055】
端子51’は、(当然のことながら端子の間の短絡をことごとく回避するため端子間に空間を存続させながら)電子チップに対面する支持体の表面の66%〜95%を被覆するほどまで、図5上のものよりも大きいサイズを有するということがわかる。これらの端子の表面積は、平方ミリメートルを上回り得る。
【0056】
さらに、絶縁層52’は、図5の層52のものと同様に、チップと対面する支持体の表面のほぼ全体にわたり、ならびにこれらの端子51に通じるトラック部分55上に拡がり、ここでも又、端子を覆うそのそれぞれの部分の間の間隔どりが存在する。これに対して、充填用樹脂63’はここではさらに、支持体内の充填物(定着)63’Aを生成するほどまでに、端子間で支持体の質量部内に拡がっている。当然のことながら、この充填物は、深さを大幅に誇張して表わされており、この充填用樹脂で湿らすことのできる支持体の場合にのみ発生し得る。
【0057】
絶縁層は、保護又は他のあらゆる理由で望まれ得るだけの大きさの表面にわたり拡がることができる。
【0058】
かくして、ここではパスポートである身分証明書類の例えば紙といったカバーの形で図5の支持体50が表わされている図8上では、チップ(これは保護用樹脂質量部64内で区別されない)は、端子を介して、ここではアンテナ55であるこの支持体により同様に担持されている1つの回路に接続されている。絶縁層は、(バンプが横断している場所を除いて)チップと端子の間のみならず、アンテナ全体にわたり拡がっている。
【0059】
絶縁層はさまざまな性質のものであり得る。かくして絶縁層を絶縁ワニスで作ることが可能であり、これは据えつけの容易なタイプの材料に対応する。これは、充分に熟練した技術によって被着させ乾燥させることができる。このワニスは有利には、1000mJ/cm2未満、好ましくは500mJ/cm2の重合エネルギーを有するように選択され、このためこの絶縁ワニスに発生する収縮は小さくなり、従って、チップの組立て及び固定後にシートに影響を及ぼし得る褶曲(又は、波動)現象が最小限におさえられる。このワニスは、例えばACHESON PF455という呼称で知られているワニスである。
【0060】
図示されていない変形形態では、該絶縁層を非導電性インクを用いて実現することもできる。
【0061】
この絶縁層は、シルクスクリーン印刷によって被着され得る。変形形態では、スパッタリング(吹付塗装)により行なうこともできる。
【0062】
ただし、この層は例えば紙(例えば厚み15ミクロンの薄いシート)といった繊維質材料で実施することもできる。
【0063】
その組成の如何に関わらず、この絶縁層は、標準的に1.5〜25ミクロン、好ましくは10〜15ミクロンの間に含まれる厚みを有し、これは、他の場所では優れた電気的絶縁を維持しながらバンプによる横断を可能にするための優れた妥協案である。
【0064】
チップの組立ての際に適用される温度及び圧力条件は、例えば180℃の加熱ヘッドで8秒間370グラムの圧力といった、考慮対象のワニスの場合においてこのワニスを構成する樹脂の重合条件であり得る。しかしながら、支持体を形成するシートを支持するテーブルの温度を45℃前後まで低下する(原則的には60℃の温度で損失が補償できるが、バンプによる横断の障害となり得るワニスの軟化を回避するには高すぎることが判明する可能性がある)ことが好ましい。
【0065】
該発明に従うと、以下のようになることがわかるだろう:
− 接続すべきパッドのみを接続する;
− 端子のサイズに絶対的な条件は無い;
− チップの位置決め制約条件はきわめて穏やかであり、標準的に+/−0.5mmである;
− チップをブラインド(盲カバー)で被着させることさえ可能である(機械はもはやチップ上のパッドを認識できる必要はない;
− もはや「フリップチップ」のオプションをもつ機械の位置決め精度を有する必要はなく(チップを反転済みの構成で位置決めするだけでよい)、このため、かかる反転を実施する能力をもつ高精度の機械よりも低コストの機械を利用できると同時に、例えば一時間に約5000チップといった高い速度を達成することが可能である;
− 同じ材料(絶縁層のもの)により、チップの近くで優れた絶縁が可能になると同時に、端子に接続される回路の優れた保護が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、技術的現状に従った1つのチップのパッドと下側にある端子の間の接続ゾーンの断面図の詳細の概略図である。
【図2】図2は、本発明のプロセスの第1段階に従った支持体の詳細の断面図である。
【図3】図3は、本発明に従った図2の支持体に接続させたいチップの詳細の断面図である。
【図4】図4は、図2の支持体上にある図3の電子チップの本発明に従った反転後の組立ての結果の、図1のものと類似した詳細断面図である。
【図5】図5は、本発明の一変形実施形態に従った1つの電子エンティティの概略的断面図である。
【図6】図6は、もう1つの一変形実施形態に従ったもう1つの電子エンティティの概略的断面図である。
【図7】図7は、支持体の上部表面の平面内の図6のエンティティの下面図である。
【図8】図8は、図5に従った支持体上に組立てられたチップがそのシートについているパスポートの概略的斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上での電子コンポーネントの組立て方法であって、
− 予め定められた少なくとも1つのパッド(41A)に1つのバンプ(42、62、62”)が備わっている、複数の接続用パッドを有する電子コンポーネント(40、60、60’)を提供する手順と、
− 前記バンプを介して前記予め定められたパッドに電気的に接続すべき少なくとも1つの端子(31、51、51’)を有する支持体(30、50、50’)を提供する手順と、
− バンプが備わったこの予め定められたパッドとこの端子を対面させて置き、このバンプとこの端子を接触させ、既定の温度及び圧力条件下でこれらを互いに固定する手順と、
を具備する方法において、
前記バンプとこの端子を接触させ固定する前に、前記端子の表面を絶縁層(32、52、52’)で被覆し、前記絶縁層は、前記温度及び圧力条件下で前記バンプが横断できるように選択された材料でできていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コンポーネントが電子チップであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持体が前記温度及び圧力条件下で圧壊可能な材料でできていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持体が繊維質材料で作られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体が紙ベースの材料で作られていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記支持体がプラスチック材料で作られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持体が身分証明書の一部を成すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電子コンポーネントの前記予め定められたパッドの前記バンプが、接触段階に際し前記絶縁層を容易に横断できるように、前記パッドの反対側で狭窄する形状を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記バンプが、ヒューズワイヤの端部の溶融によって形成されており、これにより、前記バンプはくさび状部分をもつボールの形をしていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記くさび状部分を除く前記バンプの厚みが、20〜50ミクロンの間に含まれることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バンプが、前記支持体内に貫入するまで前記絶縁層及び前記端子を横断できるようにすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バンプが、金又は金合金でできていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記支持体が少なくとも2つの端子を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記これらの端子が、前記電子コンポーネントと対面している前記支持体の前記表面の66%〜95%を被覆していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
連続する又は不連続な前記絶縁層が前記の端子を被覆することを特徴とする請求項13又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記絶縁層が、接触段階の際に前記電子コンポーネントに対面している前記支持体の前記表面の少なくとも大部分にわたり拡がっていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記端子が前記支持体上に形成されたアンテナの一部を成し、前記絶縁層がこのアンテナの少なくとも大部分を網羅することを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記絶縁層が絶縁性ワニスでできていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
この絶縁ワニスが、わずかな収縮しか付与しない1000mJ/cm2未満の重合エネルギーを有するように選択されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁ワニスが、約500mJ/cm2の重合エネルギーを有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記絶縁層をシルクスクリーン印刷によって被着させることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁層の前記厚みが、5〜25ミクロンの間、好ましくは10〜15ミクロンの間に含まれていることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記接触段階の前又は後に、その端子及び前記絶縁層の備わった前記支持体と前記電子コンポーネントの間に含まれる前記空間を充填するように充填用樹脂を被着させることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
1つの支持体上に1つの電子コンポーネントを有する電子物品において、
前記支持体(30、50、50’)が少なくとも1つの端子(31、51、51’)を有し、前記電子コンポーネント(40、60、60’)は、予め定められた少なくとも1つのパッド(41A)を前記端子に電気的に接続するバンプ(42、62、62’)が備わっている複数のパッドを有しており、前記端子は、前記バンプが横断する絶縁層(32、52,52’)で被覆されていることを特徴とする電子物品。
【請求項25】
前記電子コンポーネントが電子チップであることを特徴とする請求項24に記載の電子物品。
【請求項26】
前記端子がさらに、選択されたパッドに隣接するパッドと対面して拡がっており、この隣接するパッドがバンプを備えておらず、少なくとも前記絶縁層により前記端子から分離されていることを特徴とする請求項24又は25に記載の電子物品。
【請求項27】
前記支持体が繊維質材料で作られていることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項28】
前記支持体が紙ベースの材料で作られていることを特徴とする請求項27に記載の電子物品。
【請求項29】
前記支持体がプラスチック材料で作られていることを特徴とする請求項24〜26のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項30】
前記支持体が身分証明書の一部を成すことを特徴とする請求項24〜29のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項31】
前記支持体がパスポートのカバーの一部を成すことを特徴とする請求項30に記載の電子物品。
【請求項32】
前記パッドの反対側で狭窄する形状を有することを特徴とする請求項24〜31のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項33】
前記バンプが、くさび状部分をもつボールの形をしていることを特徴とする請求項32に記載の電子物品。
【請求項34】
前記くさび状部分を除く前記バンプの厚みが20〜50ミクロンの間に含まれることを特徴とする請求項33に記載の電子物品。
【請求項35】
前記バンプが、前記支持体内に貫入するまで前記絶縁層及び前記端子を横断することを特徴とする請求項32〜34のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項36】
前記バンプが金又は金合金でできていることを特徴とする請求項24〜35のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項37】
前記支持体が少なくとも2つの端子を有することを特徴とする請求項24〜36のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項38】
これらの端子が、前記電子コンポーネントと対面する前記支持体の前記表面の66%〜95%を被覆していることを特徴とする請求項37に記載の電子物品。
【請求項39】
連続する又は不連続な前記絶縁層がこれらの端子を被覆することを特徴とする請求項37又は38のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項40】
前記絶縁層が、前記電子コンポーネントに対面している前記支持体の前記表面の少なくとも大部分にわたり拡がっていることを特徴とする請求項39に記載の電子物品。
【請求項41】
前記端子が前記支持体上に形成されたアンテナの一部を成し、前記絶縁層がこのアンテナの少なくとも大部分を網羅することを特徴とする請求項37〜40のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項42】
前記絶縁層が絶縁性ワニスでできていることを特徴とする請求項24〜41のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項43】
この絶縁ワニスが、1000mJ/cm2未満の重合エネルギーを有することを特徴とする請求項42に記載の電子物品。
【請求項44】
前記絶縁ワニスが、約500mJ/cm2の重合エネルギーを有することを特徴とする請求項43に記載の電子物品。
【請求項45】
この絶縁層がシルクスクリーン印刷によって被着されることを特徴とする請求項24〜44のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項46】
前記絶縁層の前記厚みが5〜25ミクロンの間、好ましくは10〜15ミクロンの間に含まれていることを特徴とする請求項24〜45のいずれか1項に記載の電子物品。
【請求項47】
その端子及び前記絶縁層の備わった前記支持体と前記電子コンポーネントの間に含まれる前記空間が充填用樹脂によって充填されていることを特徴とする請求項24〜46のいずれか1項に記載の電子物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−515178(P2008−515178A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532919(P2007−532919)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002266
【国際公開番号】WO2006/035128
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(501094410)オベルトゥル カード システムズ ソシエテ アノニム (9)
【出願人】(507092746)
【Fターム(参考)】