説明

完全フッ素化酸ポリマーをドープした導電性ポリマーの陽イオン性組成物

導電性ポリマー組成物を提供する。この組成物は、導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとを含有する。酸性陰イオン基の第1の部分は、上記導電性ポリマーと複合体を形成する。酸性陰イオン基の第2の部分は、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせであってよい陽イオンとの塩の形態である。この陽イオンの濃度は、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、この固形分は、主として上記導電性ポリマーと上記完全フッ素化酸ポリマーとの合計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、導電性ポリマー組成物、およびそれらの有機電子デバイスへの使用に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年12月28日に出願された米国仮特許出願第60/754,338号明細書に対する優先権を主張し、この記載内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、活性層を含む製品の分類の1つとして定義される。このようなデバイスは、電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、放射線を電気エネルギーに変換したり、あるいは、1つまたは複数の有機半導体層を含んだりする。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンスが可能な有機層を含む有機電子デバイスである。OLEDは、以下の構成を有することができる:
アノード/緩衝層/EL材料/カソード
通常、アノードは、たとえば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの、透明でありEL材料中に正孔を注入する能力を有するあらゆる材料である。場合により、アノードは、ガラスまたはプラスチックの基体上に支持されている。EL材料としては、蛍光性化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。通常、カソードは、EL材料中に電子を注入する能力を有するあらゆる材料(たとえばCaまたはBaなど)である。緩衝層は、典型的には導電性ポリマーであり、アノードからEL材料層中への正孔の注入を促進する。緩衝層は、デバイス性能を促進する他の性質を有することもできる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,463,005号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005−0184287号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/052027号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,670,645号明細書
【特許文献5】国際公開第03/063555号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/016710号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/008424号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/091688号パンフレット
【特許文献9】国際公開第03/040257号パンフレット
【特許文献10】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献11】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献12】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献13】米国特許第6,150,426号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2004−02542970号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2005−0205860号明細書
【非特許文献1】Macromolecules、第34巻、5746−5747貢(2001年)
【非特許文献2】Macromolecules、第35巻、7281−7286貢(2002年)
【非特許文献3】A.フェアリング(Feiring)ら、J.Fluorine Chemistry 2000年、第105巻、129−135貢
【非特許文献4】A.フェアリング(Feiring)ら、Macromolecules 2000年、第33巻、9262−9271貢
【非特許文献5】D.D.デマルト(Desmarteau)、J.Fluorine Chem.1995年、第72巻、203−208貢
【非特許文献6】A.J.アップルビー(Appleby)ら、J.Electrochem.Soc.1993年、140(1)、109−111貢
【非特許文献7】「可溶性導電性ポリマーから製造される可撓性発光ダイオード」(Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer)、Nature 第357巻、477−479頁(1992年6月11日)
【非特許文献8】Y.ワン(Wang)によるカーク・オスマー工業化学百科事典(Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版(Fourth Edition)、第18巻、837−860頁、1996年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善された性質を有する緩衝材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとを含む導電性ポリマー組成物であって、酸性陰イオン基の第1の部分が、導電性ポリマーと複合体を形成し、酸性陰イオン基の第2の部分が、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンとの塩の形態であり、上記陽イオンの濃度が、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、上記固形分が、導電性ポリマーと完全フッ素化酸ポリマーとの合計から実質的になる、導電性ポリマー組成物を提供する。
【0008】
別の一実施形態においては、導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとの水性分散体であって、酸性陰イオン基の第1の部分が、導電性ポリマーと複合体を形成し、酸性陰イオン基の第2の部分が、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンとの塩の形態であり、上記陽イオンの濃度が、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、上記固形分が、導電性ポリマーと完全フッ素化酸ポリマーとの合計から実質的になる、水性分散体を提供する。
【0009】
別の一実施形態においては、本発明の新規な伝導性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む電子デバイスを提供する。
【0010】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0011】
本明細書において提示される概念の理解を進めるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【0012】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0014】
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明は、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、伝導性ポリマー、完全フッ素化酸ポリマー、陽イオン、ドープした導電性ポリマー組成物の調製、酸性プロトンの陽イオンによる置換、電子デバイス、および最後に実施例を扱う。
【0015】
(1.本明細書および特許請求の範囲において使用される用語の定義および説明)
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「導体」およびその変形は、電位が実質的に降下することなく層材料、部材、または構造に電流が流れるような電気的性質を有する層材料、部材、または構造を意味することを意図している。この用語は、半導体を含むことを意図している。一実施形態においては、導体は、少なくとも10−7S/cmの伝導率を有する層を形成する。
【0017】
用語「導電性材料」は、カーボンブラックまたは伝導性金属粒子を加えなくても、本来または本質的に導電性となることができる材料を意味する。
【0018】
用語「緩衝層」または「緩衝材料」は、導電性材料または半導体材料を意味することを意図しており、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。緩衝材料は、ポリマー、オリゴマー、または分子であってよく、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい。
【0019】
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、「正孔輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の移動を促進することを意味することを意図している。発光層は、ある程度正孔輸送特性を有する場合があるが、本明細書において使用される場合、用語「正孔輸送層」は発光層を含まない。
【0020】
用語「ポリマー」は、少なくとも1つの繰り返しモノマー単位を有する材料を意味することを意図している。この用語は、1つのみの種類または化学種のモノマー単位を有するホモポリマー、および、異なる化学種のモノマー単位から形成されるコポリマーなどの2つ以上の異なるモノマー単位を有するコポリマーを含んでいる。
【0021】
用語「完全フッ素化酸ポリマー」は、炭素に結合した反応可能な水素のすべてがフッ素で置換されている、酸性基を有するポリマーを意味する。
【0022】
用語「酸性基」は、イオン化して水素イオンをブレンステッド塩基に供与して塩を形成することができる基を意味する。
【0023】
用語「酸性陰イオン基」は、酸性基から水素イオンが外れた後に残る陰イオン性基を意味する。
【0024】
本発明の組成物は、1つまたは複数の異なる導電性ポリマーと、1つまたは複数の異なる完全フッ素化酸ポリマーとを含むことができる。
【0025】
導電性ポリマーに関して言及する場合の用語「ドープした」、導電性ポリマーが、その導電性ポリマー上の電荷のバランスをとるためのポリマー対イオンを有することを意味することを意図している。
【0026】
用語「ドープした伝導性ポリマー」は、伝導性ポリマーとそれに会合したポリマー対イオンとを意味することを意図している。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的な「または」を意味するのであって、排他的な「または」を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在する)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)Bが真である(または存在する)ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0028】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0029】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC化学物理ハンドブック第81版(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition)(2000−2001年)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0030】
特に明記しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特定の部分が引用されるのでなければ、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであり、限定を意図したものではない。
【0031】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、照明源、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0032】
(2.伝導性ポリマー)
一実施形態においては、本発明の伝導性ポリマーは、少なくとも10−7S/cmの伝導率を有する膜を形成する。伝導性ポリマーが形成されるモノマーを「前駆体モノマー」と呼ぶ。コポリマーは、2種類以上の前駆体モノマーを有する。
【0033】
一実施形態においては、本発明の伝導性ポリマーは、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族から選択される少なくとも1つの前駆体モノマーから生成される。これらのモノマーから生成されたポリマーは、本明細書において、それぞれ、ポリチオフェン、ポリ(セレノフェン)、ポリ(テルロフェン)、ポリピロール、ポリアニリン、および多環式芳香族ポリマーと呼ぶ。用語「多環式芳香族」は、2つ以上の芳香環を有する化合物を意味する。これらの環は、1つまたは複数の結合によって連結している場合もあり、互いに縮合している場合もある。用語「芳香環」は、複素環式芳香環を含むことを意図している。「多環式複素環式芳香族」化合物は、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する。一実施形態においては、多環式芳香族ポリマーはポリ(チエノチオフェン)である。
【0034】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるモノマーは、以下の式Iで表され:
【0035】
【化1】

【0036】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
は、出現するごとに同種または異種となるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR基が一緒になって、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成することで、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成することができ、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、セレン原子、テルル原子、硫黄原子、または酸素原子を含むことができる。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置換されているアルキル基を意味することを意図している。用語「アルキレン」は、2つの結合点を有するアルキル基を意味する。
【0038】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置換されているアルケニル基を意味することを意図している。用語「アルケニレン」は、2つの結合点を有するアルケニル基を意味する。
【0039】
本明細書において使用される場合、置換基に関する以下の用語は、以下に示す式を意味する:
「アルコール」 −R−OH
「アミド」 −R−C(O)N(R)R
「アミドスルホネート」 −R−C(O)N(R)R−SO
「ベンジル」 −CH−C
「カルボキシレート」 −R−C(O)O−Zまたは−R−O−C(O)−Z
「エーテル」 −R−(O−R−O−R
「エーテルカルボキシレート」 −R−O−R−C(O)O−Zまたは−R−O−R−O−C(O)−Z
「エーテルスルホネート」 −R−O−R−SO
「エステルスルホネート」 −R−O−C(O)−R−SO
「スルホンイミド」 −R−SO−NH−SO−R
「ウレタン」 −R−O−C(O)−N(R
式中、すべての「R」基は出現するごとに同種または異種であり:
は単結合またはアルキレン基であり
はアルキレン基であり
はアルキル基であり
は水素またはアルキル基であり
pは0または1〜20の整数であり
Zは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(R、またはRである。
上記基はいずれも、さらに非置換の場合も置換されている場合もあり、いずれの基も、過フッ素化基などのように、1つまたは複数の水素がFで置換されていてもよい。一実施形態においては、上記アルキル基およびアルキレン基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0040】
一実施形態においては、上記モノマー中、両方のRが一緒になって−O−(CHY)−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、出現するごとに同種または異種であり、そして、水素、ハロゲン、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、これらのY基は、部分的または完全にフッ素化されていてもよい。一実施形態においては、すべてのYが水素である。一実施形態においては、上記ポリマーはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0041】
一実施形態においては、上記モノマーは式I(a)を有し:
【0042】
【化2】

【0043】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
は、出現するごとに同種または異種であり、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのRが水素ではなく、
mは2または3である。
【0044】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのRが、5個を超える炭素原子のアルキル基であり、他のすべてのRが水素である。式I(a)の一実施形態においては、少なくとも1つのR基がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR基が、少なくとも1つのフッ素置換基を有する。一実施形態においては、そのR基が完全フッ素化されている。
【0045】
式I(a)の一実施形態においては、モノマー上の縮合脂環式環上のR置換基によって、モノマーの水に対する溶解性が改善され、フッ素化酸ポリマーの存在下での重合が促進される。
【0046】
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのRが、スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレンであり、他のすべてのRが水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのRが、プロピル−エーテル−エチレンであり、他のすべてのRが水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのRがメトキシであり、他のすべてのRが水素である。一実施形態においては、1つのRが、スルホン酸ジフルオロメチレンエステルメチレン(−CH−O−C(O)−CF−SOH)であり、他のすべてのRが水素である。
【0047】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるピロールモノマーは以下の式IIで表され、
【0048】
【化3】

【0049】
式IIにおいて:
は、出現するごとに同種または異種となるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR基が一緒になって、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成することで、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成することができ、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができ;
は、出現するごとに同種または異種となるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。
【0050】
一実施形態においては、Rは、出現するごとに同種または異種であり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから独立して選択される。
【0051】
一実施形態においては、Rは、水素、アルキル、ならびに、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。
【0052】
一実施形態においては、上記ピロールモノマーは置換されておらず、RおよびRの両方が水素である。
【0053】
一実施形態においては、両方のRが一緒になって、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。これらの基は、モノマーおよび結果として得られるポリマーの溶解性を改善することができる6員または7員の脂環式環を形成する。一実施形態においては、両方のRが一緒になって、アルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。一実施形態においては、両方のRが一緒になって、少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換された6員または7員の脂環式環を形成する。
【0054】
一実施形態においては、両方のRが一緒になって−O−(CHY)−O−を形成し、式中、mが2または3であり、Yは、出現するごとに同種または異種であり、水素、アルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、アミドスルホネート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0055】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるアニリンモノマーは以下の式IIIで表され、
【0056】
【化4】

【0057】
式中:
aは0または1〜4の整数であり;
bは1〜5の整数であり、但しa+b=5であり;
は、出現するごとに同種または異種となるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタン選択されるか;あるいは両方のR基が一緒になって、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成することで、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成することができ、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、または酸素原子を含むことができる。
【0058】
重合すると、このアニリンモノマー単位は、以下に示す式IV(a)または式IV(b)、あるいは両方の式の組み合わせで表すことができ、
【0059】
【化5】

【0060】
式中、a、b、およびRは前出の定義の通りである。
【0061】
一実施形態においては、上記アニリンモノマーは置換されておらず、a=0である。
【0062】
一実施形態においては、aが0ではなく、少なくとも1つのRがフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのRが過フッ素化されている。
【0063】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮される縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、2つ以上の縮合芳香環を有し、その少なくとも一方が複素環式芳香族である。一実施形態においては、この縮合多環式複素環式芳香族モノマーは式Vで表され:
【0064】
【化6】

【0065】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNRであり;
は、水素またはアルキルであり;
、R、R10、およびR11は、出現するごとに同種または異種となるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
およびR、RおよびR10、ならびにR10およびR11の少なくとも1つが一緒になって、アルケニレン鎖を形成することで、5または6員の芳香環を完成し、その環は、場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
【0066】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、式V(a)、V(b)、V(c)、V(d)、V(e)、V(f)、およびV(g)で表され:
【0067】
【化7】

【0068】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNHであり;
Tは、出現するごとに同種または異種であり、S、NR、O、SiR、Se、Te、およびPRから選択され;
は、水素またはアルキルである。
これらの縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換されていてもよい。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0069】
一実施形態においては、上記縮合多環式複素環式芳香族モノマーはチエノ(チオフェン)である。このような化合物は、たとえば、(非特許文献1);および(非特許文献2)において説明されている。一実施形態においては、このチエノ(チオフェン)は、チエノ(2,3−b)チオフェン、チエノ(3,2−b)チオフェン、およびチエノ(3,4−b)チオフェンから選択される。一実施形態においては、チエノ(チオフェン)モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される少なくとも1つの基でさらに置換されている。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
【0070】
一実施形態においては、本発明の新規組成物中のポリマーを形成するために使用が考慮される多環式複素環式芳香族モノマーは式VIで表され:
【0071】
【化8】

【0072】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNRであり;
Tは、S、NR、O、SiR、Se、Te、およびPRから選択され;
Eは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
は、水素またはアルキルであり;
12は、出現するごとに同種または異種であり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR12基が一緒になって、アルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成することで、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成することができ、その環は場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
【0073】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、チオフェン類、ピロール類、チエノチオフェン類、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、前駆体モノマーと、少なくとも1つの第2のモノマーとのコポリマーである。コポリマーに望まれる性質に悪影響を与えないのであれば、あらゆる種類の第2のモノマーを使用することができる。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にしてポリマーの50%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして30%以下を構成する。一実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして10%以下を構成する。
【0075】
第2のモノマーの代表的な種類としては、アルケニル、アルキニル、アリーレン、およびヘテロアリーレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。第2のモノマーの例としては、限定するものではないが、フルオレン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、ピリジン、ジアジン類、およびトリアジン類が挙げられ、これらすべてがさらに置換されていてもよい。
【0076】
一実施形態においては、本発明のコポリマーは、最初に構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを形成することによって製造され、式中、AおよびCは、同種の場合も異種の場合もある前駆体モノマーを表し、Bは第2のモノマーを表す。このA−B−C中間前駆体モノマーは、ヤマモト(Yamamoto)、スティル(Stille)、グリニャール(Grignard)メタセシス、スズキ(Suzuki)、およびネギシ(Negishi)カップリングなどの標準的な合成有機技術を使用して調製することができる。次に、この中間前駆体モノマー単独で酸化重合させる、または1つまたは複数の別の前駆体モノマーとともに酸化重合させることによって、コポリマーが形成される。
【0077】
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、2つ以上の前駆体モノマーのコポリマーである。一実施形態においては、これらの前駆体モノマーは、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、ピロール、およびチエノチオフェンから選択される。
【0078】
(3.完全フッ素化酸ポリマー)
本発明の完全フッ素化酸ポリマー(「FFAP」)は、完全にフッ素化されており、酸性プロトンを有する酸性基を有するあらゆるポリマーであってよい。酸性基は、イオン化可能なプロトンを供給する。一実施形態においては、酸性プロトンは3未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは0未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接結合していてもよく、ポリマー主鎖上の側鎖に結合していてもよい。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基は、すべてが同じものである場合もあり、またはポリマーが2種類以上の酸性基を有することもできる。一実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基、スルホンイミド基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0079】
FFAP中、酸性基の第1の部分は、導電性ポリマーと複合体を形成する酸性陰イオン基の形態である。したがって、導電性ポリマーはFFAPでドープされる。FFAPの酸性基の第2の部分は、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンを有する塩の形態である。場合によっては、酸性基の第3の部分が、プロトン化された酸の形態で残存する。
【0080】
一実施形態においては、本発明のFFAPは水溶性である。一実施形態においては、本発明のFFAPは、水に対して分散性である。
【0081】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、有機溶媒に対して濡れ性である。用語「有機溶媒に対して濡れ性」は、膜に成形した場合に有機溶媒によって濡れ性となる材料を意味する。一実施形態においては、濡れ性材料は、40°以下の接触角でフェニルヘキサンによって濡れ性となる膜を形成する。本明細書において使用される場合、用語「接触角」は、図1に示される角度Φを意味することを意図している。液体媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の面と、液滴の外側端部から表面までの線との交差部分によって定義される。さらに、角度Φは、液滴が適用された後で表面上で平衡位置に達した後で測定され、すなわち「静的接触角」である。有機溶媒に対して濡れ性のフッ素化ポリマー酸の膜が、上記表面として示されている。一実施形態においては、接触角が35°以下である。一実施形態においては、接触角が30°以下である。接触角の測定方法は周知となっている。
【0082】
好適なポリマー主鎖の例としては、限定するものではないが、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマーが挙げられ、これらすべてが完全フッ素化されている。
【0083】
一実施形態においては、上記酸性基は、スルホン酸基またはスルホンイミド基である。スルホンイミド基は次式で表され:
−SO−NH−SO−R
式中、Rはアルキル基である。
【0084】
一実施形態においては、酸性基はフッ素化側鎖上にある。一実施形態においては、フッ素化側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびそれらの組み合わせから選択され、これらすべてが完全フッ素化されている。
【0085】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、過フッ素化オレフィン主鎖と、過フッ素化アルキルスルホネート基、過フッ素化エーテルスルホネート基、過フッ素化エステルスルホネート基、または過フッ素化エーテルスルホンイミド基の側基を有する。一実施形態においては、このポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと、2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリールオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。一実施形態においては、このポリマーは、エチレンと、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、対応するフッ化スルホニルポリマーとして製造することができ、後にスルホン酸形態に転化させることができる。
【0086】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、フッ素化および部分スルホン化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)のホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーはブロックコポリマーであってもよい。
【0087】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、式IXで表されるスルホンイミドポリマーであり:
【0088】
【化9】

【0089】
式中:
は、過フッ素化アルキレン、過フッ素化ヘテロアルキレン、過フッ素化アリーレン、および過フッ素化ヘテロアリーレンから選択され、これらは1つまたは複数のエーテル酸素で置換されていてもよく;
nは少なくとも4である。
【0090】
式IXの一実施形態においては、Rはパーフルオロアルキル基である。一実施形態においては、Rはパーフルオロブチル基である。一実施形態においては、Rはエーテル酸素を有する。一実施形態においてはnが10を超える。
【0091】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、過フッ素化ポリマー主鎖と、式Xを有する側鎖とを含み:
【0092】
【化10】

【0093】
式中:
15は、過フッ素化アルキレン基または過フッ素化ヘテロアルキレン基であり;
16は、過フッ素化アルキルまたは過フッ素化アリール基であり;
aは0または1〜4の整数である。
【0094】
一実施形態においては、本発明のFFAPは式XIで表され:
【0095】
【化11】

【0096】
式中:
16は、過フッ素化アルキルまたは過フッ素化アリール基であり;
cは、独立して0または1〜3の整数であり;
nは少なくとも4である。
【0097】
FFAPの合成は、たとえば、(非特許文献3);(非特許文献4);(非特許文献5);(非特許文献6);およびデマルト(Desmarteau)の米国特許公報(特許文献1)に記載されている。
【0098】
一実施形態においては、本発明のFFAPは、少なくとも1つの過フッ素化エチレン系不飽和化合物から誘導された繰り返し単位も含む。このパーフルオロオレフィンは、2〜20個の炭素原子を含む。代表的なパーフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、CF=CFO(CFCF=CF(式中、tは1または2である)、およびR’’OCF=CF(式中、R’’は、1〜約10個の炭素原子の飽和パーフルオロアルキル基である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、このコモノマーはテトラフルオロエチレンである。
【0099】
一実施形態においては、本発明のFFAPはコロイド形成性ポリマー酸である。本明細書において使用される場合、用語「コロイド形成性」は、水に対して不溶性であり、水性媒体中に分散させた場合にコロイドを形成する材料を意味する。コロイド形成性ポリマー酸は、通常、約10,000〜約4,000,000の範囲内の分子量を有する。一実施形態においては、このポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒度は、通常2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲内である。一実施形態においては、このコロイドは2nm〜約30nmの粒度を有する。酸性プロトンを有するあらゆる完全フッ素化コロイド形成性ポリマー材料を使用することができる。
【0100】
本明細書において前述したポリマーの一部は、非酸形態、たとえば、塩、エステル、またはフッ化スルホニルとして形成することができる。後述するように、これらは、伝導性組成物を調製するために酸形態に変換される。
【0101】
(4.陽イオン)
陽イオン濃度は、ドープした伝導性ポリマー1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内である。一実施形態においては、この濃度は、ドープした伝導性ポリマー1グラム当たり5×10−4〜0.2モルの陽イオンであり;一実施形態においては、ドープした伝導性ポリマー1グラム当たり1×10−3〜0.2モルの陽イオンであり;一実施形態においては、ドープした伝導性ポリマー1グラム当たり1×10−3〜0.1モルの陽イオンである。
【0102】
一実施形態においては、酸性プロトンを置換する陽イオンは、有機陽イオンである。有機陽イオンの例としては、1つまたは複数のアルキル基で置換された、アンモニウムイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、上記アルキル基は1〜3個の炭素原子を有する。
【0103】
一実施形態においては、酸性プロトンを置換する陽イオンは、無機陽イオンである。無機陽イオンの例としては、アンモニウム、ならびに周期表の第1族および第2族の陽イオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、無機陽イオンは、NH、Na、K、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0104】
(5.ドープした導電性ポリマー組成物の調製)
一実施形態においては、ドープした導電性ポリマー組成物は、FFAPの存在下での前駆体モノマーの酸化重合によって形成される。一実施形態においては、前駆体モノマーが、2つ以上の伝導性前駆体モノマーを含む。一実施形態においては、これらのモノマーは、構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを含み、式中、AおよびCは、同種の場合も異種の場合もある伝導性前駆体モノマーを表しており、Bは、非伝導性前駆体モノマーを表している。一実施形態においては、この中間前駆体モノマーは、1つまたは複数の伝導性前駆体モノマーとともに重合される。
【0105】
一実施形態においては、酸化重合は均一水溶液中で行われる。別の一実施形態においては、酸化重合は、水と有機溶媒とのエマルジョン中で行われる。一般に、酸化剤および/または触媒の適切な溶解性を得るために、ある程度の水が存在する。過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤を使用することができる。塩化第二鉄、または硫酸第二鉄などの触媒も存在することができる。結果として得られる重合生成物は、FFAPと会合した伝導性ポリマーの溶液、分散体、またはエマルジョンとなる。一実施形態においては、本来伝導性ポリマーが正に帯電しており、FFAP陰イオンによって電荷のバランスがとられる。
【0106】
一実施形態においては、本発明の新規な伝導性ポリマー組成物の水性分散体の製造方法は、前駆体モノマーと酸化剤との少なくとも一方が加えられるときに少なくとも一部のFFAPが存在するのであれば任意の順序で、水と、前駆体モノマーと、少なくとも1つのFFAPと、酸化剤とを混合することによって反応混合物を形成するステップを含む。
【0107】
一実施形態においては、ドープした伝導性ポリマー組成物の製造方法は:
(a)FFAPの水溶液または分散体を提供するステップと;
(b)ステップ(a)の溶液または分散体に酸化剤を加えるステップと;
(c)ステップ(b)の混合物に前駆体モノマーを加えるステップとを含む。
【0108】
別の一実施形態においては、酸化剤を加える前に、FFAPの水溶液または分散体に前駆体モノマーが加えられる。これに続いて、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0109】
別の一実施形態においては、通常、約0.5重量%〜約4.0重量%の範囲内の全前駆体モノマーの濃度で、水と前駆体モノマーとの混合物が形成される。この前駆体モノマー混合物がFFAPの水溶液または分散体に加えられ、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
【0110】
別の一実施形態においては、上記水性重合混合物は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの重合触媒を含むことができる。この触媒は、最後のステップの前に加えられる。別の一実施形態においては、触媒は酸化剤とともに加えられる。
【0111】
一実施形態においては、重合は、水に混和性である共分散液体(co−dispersing liquid)の存在下で行われる。好適な共分散液体の例としては、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、共分散液体はアルコールである。一実施形態においては、共分散液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物から選択される有機溶媒である。一般に、共分散液体の量は約60体積%未満とすべきである。一実施形態においては、共分散液体の量は約30体積%未満である。一実施形態においては、共分散液体の量は5〜50体積%の間である。重合中に共分散液体を使用することによって、粒度が顕著に減少し、分散体の濾過性が改善される。さらに、この方法によって得られた緩衝材料は、粘度の増加が見られ、これらの分散体から作製された膜は高品質となる。
【0112】
共分散液体は、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。
【0113】
一実施形態においては、重合は、ブレンステッド酸である共酸(co−acid)の存在下で行われる。この酸は、HCl、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸またはp−トルエンスルホン酸などの有機酸であってよい。あるいは、この酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などの水溶性ポリマー酸、または前述の第2のFFAPであってよい。複数の酸の組み合わせを使用することもできる。
【0114】
共酸は、最後に加えられる酸化剤または前駆体モノマーのいずれかが加えられる前に、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーとFFAPとの両方が加えられ、最後に酸化剤が加えられる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーが加えられ、続いてFFAPが加えられ、最後に酸化剤が加えられる。
【0115】
一実施形態においては、重合は、共分散液体と共酸との両方の存在下で行われる。
【0116】
一実施形態においては、最初に、水と、アルコール共分散剤と、無機共酸との混合物を反応容器に投入する。これに、前駆体モノマー、FFAPの水溶液または分散体、および酸化剤をこの順序で加える。混合物を不安定化する可能性のある高イオン濃度の局所領域が形成されないようにするため、酸化剤はゆっくり滴下する。この混合物を撹拌し、次に、制御された温度において反応を進行させる。重合が完了してから、反応混合物を強酸陽イオン樹脂で処理し、撹拌し、濾過し;続いて、塩基性陰イオン交換樹脂で処理し、撹拌し、濾過する。前述したように、別の添加順序を使用することもできる。
【0117】
本発明の新規伝導性ポリマー組成物の製造方法において、酸化剤の全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.1〜2.0の範囲内であり、一実施形態においては0.4〜1.5である。FFAPの全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.3〜10の範囲内である。一実施形態においては、この比は1〜7の範囲内である。全体の固形分は、一般に、重量パーセントの単位で、約0.5%〜15%の範囲内であり、一実施形態においては約2%〜7%の範囲内である。反応温度は、一般に約4℃〜50℃の範囲内であり;一実施形態においては約20℃〜35℃の範囲内であり;一実施形態においては約10℃〜25℃の範囲内である。場合により使用される共酸の前駆体モノマーに対するモル比は約0.05〜4である。反応時間は、一般に約1〜約30時間の範囲内である。
【0118】
(6.酸性プロトンの陽イオンによる置換)
一実施形態においては、酸性プロトンを陽イオンで置換するのに好適な条件下で、伝導性ポリマー組成物を少なくとも1つのイオン交換樹脂と接触させる。この組成物は、1つまたは複数の種類のイオン交換樹脂を、同時または順次使用して処理することができる。
【0119】
イオン交換は、流体媒体(水性分散体など)中のイオンが、流体媒体に対して不溶性の固定された固体粒子に取り付けられた類似の荷電イオンと交換される可逆的な化学反応である。本明細書においては、このようなあらゆる物質を意味するために用語「イオン交換樹脂」が使用される。イオン交換基が取り付けられるポリマー支持体が架橋した性質を有するため、この樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂は、陽イオン交換体または陰イオン交換体に分類される。陽イオン交換体は、交換に利用可能な正に帯電した可動イオンを有し、通常は、ナトリウムイオンなどの金属イオンを有する。陰イオン交換体は、負に帯電した交換可能なイオンを有し、通常は水酸化物イオンを有する。
【0120】
一実施形態においては、第1のイオン交換樹脂は、金属イオンの形態、通常はナトリウムイオンの形態であってよい陽イオン酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は塩基性陰イオン交換樹脂である。酸性陽イオンプロトン交換樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂との両方を使用することができる。一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸陽イオン交換樹脂などの無機酸陽イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮されるスルホン酸陽イオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。別の一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル酸、または亜リン酸の陽イオン交換樹脂などの有機酸陽イオン交換樹脂である。さらに、異なる陽イオン交換樹脂の混合物を使用することができる。
【0121】
別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第3級アミン陰イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮される第3級アミン陰イオン交換樹脂としては、たとえば、第3級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミノ化架橋スチレンポリマー、第3級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第4級アミン陰イオン交換樹脂、あるいはこれらおよびその他の交換樹脂の混合物である。
【0122】
一実施形態においては、導電性ポリマーとFFAPとを含む液体組成物に、両方の種類の樹脂を同時に加え、少なくとも約1時間、たとえば約2時間〜約20時間の間、液体組成物との接触を維持する。次に、濾過することによって、イオン交換樹脂を分散体から除去することができる。フィルターのサイズは、比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去され、より小さな分散粒子は通過するように選択される。一般に、新規伝導性ポリマー組成物1グラム当たり、約1〜5グラムのイオン交換樹脂が使用される。
【0123】
ある実施形態においては、酸性プロトンは、塩基性水溶液を加えることによって置換される。塩基性化合物としては、水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩が挙げられる。溶液などの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
一実施形態においては、50%を超える酸性プロトンが陽イオンで置換される。一実施形態においては、60%を超えて置換され;一実施形態においては、75%を超えて置換され;一実施形態、90%を超えて置換される。
【0125】
(7.電子デバイス)
本発明の別の一実施形態においては、本明細書において記載されている伝導性ポリマー組成物からできた少なくとも1つの層を含む電子デバイスを提供する。用語「電子デバイス」は、1つまたは複数の有機半導体層または有機半導体材料を含むデバイスを意味することを意図している。電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電性デバイスまたは太陽電池)、(4)1つまたは複数の有機半導体層(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含む1つまたは複数の電子部品を含むデバイス、あるいは項目(1)〜(4)中のデバイスのあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
一実施形態においては、本発明の電子デバイスは、2つの電気接触層に間に配置された少なくとも1つの電気活性層を含み、このデバイスは二重層をさらに含む。層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電気活性層材料は、放射線を発する場合もあり、または放射線を受けた場合に電子−正孔対の濃度変化を示す場合もある。
【0127】
図2に示されるように、典型的なデバイス100は、アノード層110、緩衝層120、場合による電気活性層130、電気活性層140、場合による電子注入/輸送層140、およびカソード層160を有する。
【0128】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層160に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあり、有機の場合も無機の場合もある。支持体材料の例としては、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
アノード層110は、カソード層160よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、第2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、第11族元素、第4族、第5族、および第6族の元素、ならびに第8〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの第12族、第13族、および第14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、第2族元素、あるいは第12族、第13族、または第14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、有機材料、特に、ポリアニリンなどの伝導性ポリマー、たとえば、(非特許文献7)に記載される代表的な材料も含むことができる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明となるべきである。
【0130】
アノード層110は、化学蒸着または物理蒸着、あるいはスピンコーティング法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0131】
一実施形態においては、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターンが形成される。このパターンは、必要に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を適用する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターンが形成されたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターンが形成されたレジスト層および湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術を使用してパターンを形成することができる。当技術分野において周知の他のパターン形成方法を使用することもできる。
【0132】
本明細書において記載される伝導性ポリマー組成物は、緩衝層120として好適である。用語「緩衝層」または「緩衝材料」は、導電性または半導体材料を意味することを意図しており、これらは、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。緩衝層は、当業者に周知の多種多様の技術を使用して基体上に堆積される。典型的な堆積技術としては、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続技術)、および熱転写が挙げられる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
場合により使用される層130は、緩衝層120と電気活性層140との間に存在することができる。この層は正孔輸送材料を含むことができる。正孔輸送材料の例は、たとえば、(非特許文献8)にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。
【0134】
ある実施形態においては、正孔輸送層が正孔輸送ポリマーを含む。ある実施形態においては、この正孔輸送ポリマーはジスチリルアリール化合物である。ある実施形態においては、そのアリール基が2つ以上の縮合芳香環を有する。ある実施形態においては、このアリール基がアセンである。本明細書において使用される場合、用語「アセン」は、直線状の配列内に2つ以上のオルト縮合ベンゼン環を有する炭化水素親成分を意味する。
【0135】
ある実施形態においては、正孔輸送ポリマーはアリールアミンポリマーである。ある実施形態においては、これはフルオレンモノマーとアリールアミンモノマーとのコポリマーである。
【0136】
ある実施形態においては、このポリマーは架橋性基を有する。ある実施形態においては、熱処理および/またはUV線や可視光線への曝露によって架橋させることができる。架橋性基の例としては、ビニル、アクリレート、パーフルオロビニルエーテル、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン、シロキサン、およびメチルエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。架橋性ポリマーは、溶液法OLEDの製造において利点を有することができる。堆積後に不溶性膜に変換することが可能な層を形成するために可溶性ポリマー材料を使用することで、層の溶解の問題が発生しない多層溶液処理OLEDデバイスの製造が可能となる。
【0137】
架橋性ポリマーの例は、たとえば、米国特許公報(特許文献2)および(特許文献3)に見ることができる。
【0138】
ある実施形態においては、正孔輸送層は、9,9−ジアルキルフルオレンとトリフェニルアミンとのコポリマーであるポリマーを含む。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンと4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニルとのコポリマーである。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとTPBとのコポリマーである。ある実施形態においては、このポリマーは、9,9−ジアルキルフルオレンとNPBとのコポリマーである。ある実施形態においては、このコポリマーは、(ビニルフェニル)ジフェニルアミンおよび9,9−ジスチリルフルオレンまたは9,9−ジ(ビニルベンジル)フルオレンから選択される第3のコポリマーから製造される。
【0139】
デバイスの用途に依存するが、電気活性層140は、印加電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの、米国特許公報(特許文献4)、ならびに特許文献5および特許文献6に開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、特許文献7、特許文献8および特許文献9に記載されているような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン(Thompson)らによる米国特許公報(特許文献10)、ならびにバローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)による特許文献11および特許文献12に記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
場合により使用される層150は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあり、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層140は、電子の移動を促進し、この層がなければ層140および160が直接接触する場合の消光反応の可能性を減少させることができる。場合により使用される層150の材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)およびトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)などの金属キレート化オキシノイド化合物;テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ジルコニウム;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、場合により使用される層150は無機であってもよく、BaO、LiF、LiOなどを含むことができる。
【0141】
カソード層160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソード層160は、第1の電気接触層(この場合、アノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。本明細書において使用される場合、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。本明細書において使用される場合、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0142】
カソード層の材料は、第1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs)、第2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、第12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料を使用することもできる。カソード層160の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
通常、カソード層160は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。ある実施形態においては、アノード層110に関して前述したようにして、カソード層にパターンが形成される。
【0144】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0145】
ある実施形態においては、水および酸素などの望ましくない成分がデバイス100内に入るのを防止するために、接触層160の上に封入層(図示せず)が堆積される。このような成分は、有機層140に対して悪影響を及ぼすことがある。一実施形態においては、封入層は、障壁層または膜である。一実施形態においては、封入層はガラス蓋である。
【0146】
図示していないが、デバイス100は追加の層を含むことができることを理解されたい。当技術分野またはその他の分野で知られている他の層を使用することができる。さらに、上述のいずれかの層は、2つ以上の副層を含むことができるし、層状構造を形成することもできる。あるいは、一部またはすべての層は、電荷キャリア輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を改善するための処理を行うことができ、特に表面処理を行うことができる。それぞれの構成要素層の材料の選択は、好ましくは、デバイスの稼働寿命を考慮した高いデバイス効率、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者によって認識されているその他の重要事項を有するデバイスを提供するための複数の目標のバランスを取るように決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常業務であることを理解されたい。
【0147】
一実施形態においては、本発明の種々の層は、以下の範囲の厚さを有する:アノード110が、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;緩衝層120が、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;場合による正孔輸送層130が、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層140が、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;場合による電子輸送層150が、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160が、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さの影響を受けることがある。たとえば、電子−正孔再結合ゾーンが発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0148】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス100に印加される。それによって、デバイス100の層に電流が流れる。その結果、デバイス100の層全体に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機膜の個別の堆積物が、電流の流れによって独立に励起し、それによって個別のピクセルが発光することができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機膜の堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
【実施例】
【0149】
本明細書に記載される概念を以下の実施例でより詳細に説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0150】
(比較例A)
この比較例は、緩衝層としてバイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)AI4083を使用する場合のデバイス性能に対するpHの影響を示している。
【0151】
バイトロン−P(Baytron−P)AI4083(ドイツのレーバークーゼン(Leverkuson)のH.C.スタルク(H.C.Starck,GmbH))は、ポリ(3,4−ジオキシ−エチレンチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)、すなわちPEDOT/PSSAである。バイトロン−P(Baytron−P)AI4083の入手した状態のサンプルを測定すると、1.5%(w/w)固形分のPEDOT/PSSA、およびpH1.7を有した(比較例A−1)。pHが2.6になるまで、約100gのバイトロン−P(Baytron−P)に約1.0MのNHOH水溶液を加えた(比較例A−2)。別の100gのバイトロン−P(Baytron−P)のpHを3.9に調整した(比較例A−3)。
【0152】
比較例A−1、A−2、およびA−3を、ガラス/ITOバックライト基体(30mm×30mm)上にスピンコーティングした。ITOの厚さが100〜150nmである各ITO基体は、3枚の5mm×5mmピクセルと、1枚の発光用の2mm×2mmピクセルとからなる。ITO基体上にスピンコーティングした後、得られた膜を、最初に空気中130℃で10分間ベークし、次に200℃で10分間ベークした。ベーク後のバイトロン−P(Baytron−P)層の厚さは40nmであった。このバイトロン−P(Baytron−P)層に、ダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303エレクトロルミネッセンスポリマー(p−キシレン中の1%w/v溶液から)の厚さ約60nmの膜を空気中でスピンコーティングした。このエレクトロルミネッセンス膜をドライボックス中130℃で30分間ベークした後、4×10−6Torr未満の圧力において、3nmのBaと260nmのAlとからなるカソードを熱蒸着した。UV硬化性エポキシ樹脂を使用して、デバイスの裏面上にスライドガラスを接合することによってデバイスを封止した。
【0153】
表1は、3つの異なるpHのバイトロン−P(Baytron−P)(登録商標)AI4083緩衝層を使用して作製したデバイスの、200、500、1,000、および2,000ニト(Cd/m)における発光デバイス効率を示している。このデータは、3つすべてのpHのバイトロン−P(Baytron−P)で、輝度を200ニトから2,000ニトまで増加させると、効率がゆっくりと増加することを示している。pHが増加すると、効率が低下し、これはデバイス性能に対するpHの悪影響を示している。
【0154】
(実施例1)
この実施例は、低pHのポリ(3,4−ジオキシエチレンチオフェン)(PEDOT)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)(ポリ(テトラフルオロエチレン)/パーフルオロエーテルスルホン酸))の陽イオン組成物およびデバイス性能と、比較例Aのバイトロン−P(Baytron−P)との比較を示す。
【0155】
PEDOTと、本願特許出願人より購入可能な市販製品のナフィオン(Nafion)(登録商標)を使用して作製されるポリジオキシチオフェンとコロイド形成性ポリマー酸との分散体は、EW(酸当量)が1000である水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド分散体を使用して調製した。温度が約270℃であったことを除けば米国特許公報(特許文献13)の実施例1パート2の手順と類似の手順で25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を作製し、次に、水で重合用の12.0%(w/w)の分散体を得るために希釈した。
【0156】
米国特許公報(特許文献14)に記載されるようにして、1,2−エチレンジオキシチオフェン(「EDOT」)モノマーを上記ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体と反応させた。
【0157】
約18.5時間の反応完了後、各200gのダウエックス(Dowex)M31、およびダウエックス(Dowex)M43イオン交換樹脂、ならびに225gの脱イオン水を反応混合物に加え、120RPMで4時間撹拌した。最後に、VWR 417濾紙を使用して懸濁液からイオン交換樹脂を濾過した。濾過した分散体全体を、5.000psiで一度にオリフィスに圧送した。この分散体のpHは1.9であり、分散体からスピンコーティングし130℃でベークした膜の伝導率は室温で9.4×10−3S/cmであった。
【0158】
この分散体は、PEDOTおよびナフィオン(Nafion)(登録商標)から実質的になる5.34%の総固形分を含有することが測定により分かった。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たりわずか62.7×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、分散体1グラム当たり約3.5×10−6モルのNHに相当する。したがって、陽イオン濃度は、固形分(PEDOTとナフィオン(Nafion)(登録商標)との合計)1グラム当たり0.7×10−4モルのNHであった。アンモニウム陽イオンは、過硫酸アンモニウム酸化剤からの残留量である。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約51×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約15%のスルホン酸基が、固形分中でアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、PEDOT主鎖上の正電荷のバランスをとるために部分酸化ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と複合体を形成する。約3.5個のEDOT単位が1つの電子不足となると仮定するのが妥当である。重合中に使用されたEDOTの総数は、分散体1グラム当たり14.6×10−6である。したがって、部分酸化PEDOTのバランスをとるために4.2×10−6モルのスルホン酸基が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、依然として約80%のスルホン酸が固形分中に酸として残留することになる。アンモニウム陽イオンは、プロトン交換樹脂を使用したさらなる処理によって完全に除去可能なことを理解されたい。
【0159】
比較例Aに示した手順に従って、上記のpH1.9のPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。最初に空気中130℃で10分間ベークした後に200℃で10分間ベークしたPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)膜の厚さは70nmであった。ドライボックス中130℃で30分間ベークしたルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303の厚さは60nmであった。4×10−6Torr未満の圧力において、3nmのBaと260nmのAlとからなるカソードを熱蒸着した。UV硬化性エポキシ樹脂を使用して、デバイスの裏面上にスライドガラスを接合することによってデバイスを封止した。
【0160】
表1中にまとめたこの実施例のデバイスデータは、pH1.9のPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、低輝度において直ちに高い効率に増加することを示している。また、ルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303を使用すると、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率が得られる。T−50(本来の輝度の5,050ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、pHおよび陽イオン濃度とは無関係にPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が高い効率を維持することも示している。
【0161】
(実施例2)
この実施例は、実施例1において作製しNaOH水溶液でpH6.4に調整したポリ(3,4−ジオキシ−エチレンチオフェン)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の陽イオン組成物およびデバイス性能を示す。
【0162】
実施例1で作製したPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、5.34%の固形分を含有し、pHが1.9である。pHが6.4に到達するまで、約200mlのこの分散体に、1N水酸化ナトリウム水水溶液を加えた。この分散体は、5.33%の固形分を含有することが測定により分かった。このpH6.4の分散体からスピンコーティングし130℃でベークした膜の伝導率は室温で2.9×10−4S/cmである。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たり963×10−6gのNaおよび70.6×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、分散体1グラム当たりでおよそ42×10−6モルのNaおよび3.9×10−6モルのNHに相当し、したがって、合計の陽イオン濃度は、分散体1グラム当たり46×10−6モル(NHおよびNa)であった。したがって、全陽イオン濃度は、固形分(PEDOTとナフィオン(Nafion)(登録商標)との合計)1グラム当たり8.6×10−4モルの陽イオン(主としてNa)であった。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約51×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約90%のスルホン酸基が、固形分中でナトリウム塩およびアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、正電荷のバランスをとるために部分酸化3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と複合体を形成する。約3.5個のEDOT単位が1つの電子不足となると仮定するのが妥当である。重合中に使用されたEDOTの総数は、分散体1グラム当たり14.6×0−6モルである。したがって、部分酸化ポリ(EDOT)のバランスをとるために4.2×10−6モルのスルホン酸が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、わずか2%のスルホン酸が固形分中に酸として残留することになる。
【0163】
比較例Aおよび実施例1に示す手順に従い、ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303を使用して、上記の主としてナトリウム陽イオンを含有するpH6.4のPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。表1中にまとめたこの実施例のデバイスデータは、ナトリウム陽イオンを使用して低pHからpH6.4に調整したPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)も、低輝度において直ちに高い効率まで増加することを示している。また、ルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303を使用すると、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率が得られる。T−50(本来の輝度の4,420ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、pHおよび陽イオン濃度とは無関係にPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が高い効率を維持することも示している。
【0164】
(実施例3)
この実施例は、実施例1において作製しNHOH水溶液でpH6.4に調整したポリ(3,4−ジオキシ−エチレンチオフェン)/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の陽イオン組成物およびデバイス性能を示す。
【0165】
実施例1で作製したPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、5.34%の固形分を含有し、pHが1.9である。pHが6.4に到達するまで、約200mlのこの分散体に、1N水酸化アンモニウム水溶液を加えた。この分散体は、5.49%の固形分を含有することが測定により分かった。このpH6.4の分散体から誘導し130℃でベークした膜の伝導率は室温で6.8×10−4S/cmである。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たり745×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、分散体1グラム当たり約41×10−6モルのNHに相当する。したがって、陽イオン濃度は、固形分(PEDOTとナフィオン(Nafion)(登録商標)との合計)1グラム当たり7.7×10−4モルのNHであった。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約53×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約77%のスルホン酸基が、固形分中でアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、正電荷のバランスをとるために部分酸化3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と複合体を形成する。約3.5個のEDOT単位が1つの電子不足となると仮定するのが妥当である。重合中に使用されたEDOTの総数は、分散体1グラム当たり15.1×10−6モルのである。したがって、部分酸化ポリ(EDOT)のバランスをとるために4.3×10−6モルのスルホン酸が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、約15%のスルホン酸が依然として固形分中に酸として残留することになる。
【0166】
比較例1および実施例1に示す手順に従い、ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303を使用して、上記のアンモニウム陽イオンを含有するpH6.4のPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。表1中にまとめたこの実施例のデバイスデータは、アンモニウム陽イオンを使用して低pHから高pHに調整したPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)も、低輝度において直ちに高い効率まで増加することを示している。また、ルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303を使用すると、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率が得られる。T−50(本来の輝度の4,630ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、pHおよび陽イオン濃度とは無関係にPEDOT/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が高い効率を維持することも示している。
【0167】
(実施例4)
この実施例は、低pHのポリピロール/ポリ(テトラフルオロエチレン/パーフルオロエーテルスルホン酸)(「PPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)」)の陽イオン組成物およびデバイス性能を示す。
【0168】
この実施例で使用したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、EW(酸当量)が1000である水性ナフィオン(Nafion)(登録商標)コロイド分散体を使用して調製した。温度が約270℃であったことを除けば米国特許公報(特許文献13)の実施例1パート2の手順と類似の手順で25%(w/w)のナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体を作製し、次に、水で重合用の12.0%(w/w)の分散体を得るために希釈した。
【0169】
米国特許公報(特許文献15)に記載されるようにして、ピロール(「Py」)モノマーをナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体と反応させた。
【0170】
約29時間の反応完了後、各100gのダウエックス(Dowex)M31、およびダウエックス(Dowex)M43イオン交換樹脂、ならびに100gの脱イオン水を反応混合物に加え、これを120RPMで2時間撹拌した。最後に、VWR 417濾紙を使用して懸濁液からイオン交換樹脂を濾過した。この分散体のpHは2.35であり、分散体からスピンコーティングし130℃/10分でベークした膜の伝導率は室温で5.4×10−2S/cmであった。
【0171】
この分散体は、3.88%のPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の固形分を含有することが測定により分かった。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たりわずか93.4×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、分散体1グラム当たり約5.2×10−6モルのNHに相当する。したがって、陽イオン濃度は、固形分(PPy+ナフィオン(Nafion)(登録商標)の合計)1グラム当たり1.3×10−4モルのNHであった。アンモニウム陽イオンは、過硫酸アンモニウム酸化剤からの残留量である。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約36.4×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約14%のスルホン酸基が、固形分中でアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、正電荷のバランスをとるために部分酸化ポリピロールと複合体を形成する。約3.5個のピロール単位が1つの電子不足となると概算される。重合中に使用されたピロールの総数は、分散体1グラム当たり36.4×10−6モルである。したがって、部分酸化ポリピロールのバランスをとるために10×10−6モルのスルホン酸基が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、依然として42%のスルホン酸が固形分中に酸として残留することになる。アンモニウム陽イオンは、プロトン交換樹脂を使用したさらなる処理によって完全に除去可能なことを理解されたい。
【0172】
比較例1および実施例1に示す手順に従い、ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303を使用して、pH2.3のPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。最初に空気中130℃で10分間ベークした後に窒素中200’Cで10分間ベークしたPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)膜の厚さは47nmであった。ドライボックス中130℃で30分間ベークしたルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303の厚さは60nmであった。4×10−6Torr未満の圧力において、3nmのBaと240nmのAlとからなるカソードを熱蒸着した。UV硬化性エポキシ樹脂を使用して、デバイスの裏面上にスライドガラスを接合することによってデバイスを封止した。表1中にまとめたこの実施例のデバイスデータは、pH2.3のPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)によって、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率のルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303デバイスが得られることを示している。T−50(本来の輝度の2,600ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、バイトロン−P(Baytron−P)とは異なり、高pHにおいてナトリウム陽イオンまたはアンモニウム陽イオンを含有するPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が、より高いデバイス効率を有することも示している。
【0173】
(実施例5)
この実施例は、実施例4において作製しNaOH水溶液でpH6.4に調整したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の陽イオン組成物およびデバイス性能を示す。
【0174】
実施例4で作製したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、3.88%の固形分を含有し、pHが2.3である。pHが6.4に到達するまで、約200mlのこの分散体に1N水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この分散体は、3.86%の固形分を含有することが測定により分かった。このpH6.4の分散体からスピンコーティングし130℃でベークした膜の伝導率は室温で1.7×10−3S/cmである。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たり511.8×10−6gのNaおよび76.6×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、pH6.4において、分散体1グラム当たりでおよそ22.3×10−6モルのNaおよび4.2×10−6モルのNHに相当し、あるいは、合計27×10−6モルの総陽イオン(NaおよびNH)に相当する。したがって、陽イオン濃度は、固形分(PPy+ナフィオン(Nafion)(登録商標)の合計)1グラム当たり7×10−4モルの総陽イオン(主としてNa)であった。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約36.2×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約73%のスルホン酸基が、固形分中でナトリウム塩およびアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、正電荷のバランスをとるために部分酸化ポリピロールと複合体を形成する。約3.5個のPPy単位が1つの電子不足となると仮定するのが妥当である。重合中に使用されたPPyの総数は、分散体1グラム当たり36.2×10−6モルである。したがって、部分酸化ポリピロールのバランスをとるために10.3×10−6モルのスルホン酸が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、約0%のスルホン酸が固形分中に酸として残留することになる。
【0175】
比較例1および実施例1に示す手順に従い、ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303を使用して、上記の主としてナトリウム陽イオンを含有するpH6.4のPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。表1中にまとめたデバイスデータは、ナトリウム陽イオンを使用して低pHから高pHに調整したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)も、低輝度において高い効率まで増加することを示している。また、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率のルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303デバイスが得られる。T−50(本来の輝度の2,900ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、バイトロン−P(Baytron−P)とは異なり、高pHにおいてナトリウム陽イオンまたはアンモニウム陽イオンを含有するPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が、より高いデバイス効率を有することも示している。
【0176】
(実施例6)
この実施例は、実施例1において作製しNHOH水溶液でpH6.4に調整したポリピロール/ナフィオン(Nafion)(登録商標)の陽イオン組成物およびデバイス性能を示す。
【0177】
実施例3で作製したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体は、3.88%の固形分を含有し、pHが2.3である。pHが6.4に到達するまで、約200mlのこの分散体に1N水酸化アンモニウム水溶液を加えた。この分散体は、3.81%の固形分を含有することが測定により分かった。このpH6.4の分散体から得られ130℃でベークした膜の伝導率は室温で1.6×10−3S/cmである。イオンクロマトグラフィー分析によると、この分散体が、分散体1mL当たり447.8×10−6gのNHを含有することが示されている。イオン濃度は、pH=6.4において、分散体1グラム当たり約24.8×10−6モルのNHに相当する。したがって、陽イオン濃度は、固形分(PPy+ナフィオン(Nafion)(登録商標)の合計)1グラム当たり6.4×10−4モルのNHであった。固形分%、および重合中に使用したナフィオン(Nafion)(登録商標)量を基準にすると、この分散体は、分散体1グラム当たり約35.7×10−6モルのスルホン酸基を含有する。これより、約69.5%のスルホン酸基が、固形分中でアンモニウム塩を形成していることが分かる。残留するスルホン酸陰イオンの一部は、正電荷のバランスをとるために部分酸化ポリピロールと複合体を形成する。約3.5個のピロール単位が1つの電子不足となると仮定するのが妥当である。重合中に使用されたピロールの総数は、分散体1グラム当たり35.7×10−6モルである。したがって、部分酸化ポリピロールのバランスをとるために10.2×10−6モルのスルホン酸基が陰イオンとして使用されると概算される。このことから、約0%のスルホン酸が固形分中に酸として残留することになる。
【0178】
比較例1および実施例1に示す手順に従い、ルミネーション・グリーン(Lumination Green)1303を使用して、上記のアンモニウム陽イオンを含有するpH6.4のPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)を発光デバイス中に組み込んだ。表1中にまとめたデバイスデータは、アンモニウム陽イオンを使用して低pHから高pHに調整したPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)も、低輝度において高い効率まで増加することを示している。また、すべてのpH値のバイトロン−P(Baytron−P)よりもはるかに高い効率のルミナンス・グリーン(Luminance Green)1303デバイスが得られる。T−50(本来の輝度の3,350ニトの半分に輝度が低下する)寿命を表1に示している。表1は、バイトロン−P(Baytron−P)とは異なり、高pHにおいてナトリウム陽イオンまたはアンモニウム陽イオンを含有するPPy/ナフィオン(Nafion)(登録商標)が、より高いデバイス効率を有することも示している。
【0179】
【表1】

【0180】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つまたは複数のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0181】
以上の明細書において、特定の実施形態を参照しながら本発明の概念を説明した。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の変更および変形を行えることが理解できるであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであるとみなすべきであり、すべてのこのような変更は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0182】
特定の実施形態に関して、利益と、その他の利点と、問題に対する解決法とを以上に記載してきた。しかし、これらの利益と、利点と、問題の解決法と、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがあるあらゆる特徴とが、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴として解釈されるものではない。
【0183】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲において記載される値への言及は、その範囲内にあるすべての値を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】接触角を示す図である。
【図2】有機電子デバイスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとを含む導電性ポリマー組成物であって、前記酸性陰イオン基の第1の部分が、前記導電性ポリマーと複合体を形成し、前記酸性陰イオン基の第2の部分が、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンとの塩の形態であり、前記陽イオンの濃度が、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、前記固形分が、前記導電性ポリマーと前記完全フッ素化酸ポリマーとの合計から実質的になることを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、およびチエノチオフェン類からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記完全フッ素化酸ポリマーが、スルホン酸およびスルホンアミドからなる群から選択される酸性基を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記完全フッ素化酸ポリマーが、過フッ素化アルキルスルホネート基、過フッ素化エーテルスルホネート基、過フッ素化エステルスルホネート基、または過フッ素化エーテルスルホンイミド基の側基を有する、過フッ素化オレフィン主鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記陽イオンが、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとを含む水性分散体であって、前記酸性陰イオン基の第1の部分が、前記導電性ポリマーと複合体を形成し、前記酸性陰イオン基の第2の部分が、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンとの塩の形態であり、前記陽イオンの濃度が、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、前記固形分が、前記導電性ポリマーと前記完全フッ素化酸ポリマーとの合計から実質的になることを特徴とする水性分散体。
【請求項7】
アノードと、緩衝層と、光活性層と、カソードとをこの順序で含む電子デバイスであって、前記緩衝層が、導電性ポリマーと、酸性陰イオン基を有する完全フッ素化酸ポリマーとを含み、前記酸性陰イオン基の第1の部分が、前記導電性ポリマーと複合体を形成し、前記酸性陰イオン基の第2の部分が、無機陽イオン、有機陽イオン、およびそれらの組み合わせから選択される陽イオンとの塩の形態であり、前記陽イオンの濃度が、固形分1グラム当たり5×10−5〜0.2モルの陽イオンの範囲内であり、前記固形分が、前記導電性ポリマーと前記完全フッ素化酸ポリマーとの合計から実質的になることを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−522730(P2009−522730A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548699(P2008−548699)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/049338
【国際公開番号】WO2007/079102
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】