説明

定着ユニットの高さ調整機構及びこれを備えた画像形成装置

【課題】ユーザーが定着ユニットの位置調整を簡単に行うことができ定着ユニットの高さ調整機構を提供すること。
【解決手段】両側部に設けられたユニット側位置決め部と画像形成装置本体の相対向する内壁に設けられた位置決めリブ(本体側位置決め部材)31とを嵌合させることによって高さ方向の位置決めがなされる定着ユニットの高さ調整機構において、前記位置決めリブ31を支持部材36によって上下動可能に支持するとともに、前記定着ユニットの装着方向にスライド可能な高さ調整部材37を設け、該高さ調整部材37に形成された高さの異なる複数の凹部37aに支持部材36に形成された凸部36aを選択的に係合させ、高さ調整部材37を画像形成装置本体外部からの手動操作によってスライドさせることによって定着ユニットの高さ調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置本体に対して着脱可能な定着ユニットの高さ調整機構及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって用紙等の記録材に画像を形成する複写機やプリンター等の画像形成装置においては、感光ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像装置によって現像してトナー像として顕像化し、このトナー像を記録材上に転写することが行われる。そして、トナー像が転写された記録材は、定着装置へと搬送され、該定着装置によって加熱及び加圧されてトナー像の定着を受け後に機外に排出され、これによって一連の画像形成動作が完了する。
【0003】
ところで、斯かる画像形成装置において、記録材を搬送する搬送ローラーとその搬送方向下流側に配置された定着装置の定着ローラーとの平行度が悪くなると、記録材の左右において搬送速度に差が生じるため,画像の長さが左右で異なり、台形状の歪んだ画像となってしまう。そして、搬送ローラーと定着ローラーとの平行度が更に悪くなると、記録材のスキューや定着による記録材のしわ等が発生するという問題が発生する。従って、搬送ローラーと定着ローラーとの平行度は高精度に保たれる必要がある。
【0004】
そこで、従来は製造ラインにおいて治具を用いて定着ユニットを装置本体内に高精度に装着したり、調整用の部品を用いて搬送ローラーと定着ローラーとの平行度をライン作業者やサービスマンが調整していた。
【0005】
又、特許文献1,2には、ライン作業者やサービスマンが位置調整用部品を用いて定着ユニットを容易に位置調整し、調整後は位置調整用部品をビス等によって固定することによって搬送ローラーと定着ローラーとの平行度を高精度に保つ技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−292612号公報
【特許文献2】特開2008−046154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2において提案された従来技術においては、市場で稼動する画像形成装置の搬送ローラーと定着ローラーとの平行度がズレてしまった場合や定着ユニットを交換する場合には、その都度サービスマンが出向いて調整作業を行う必要があった。この場合、遠隔地でサービスマンがなかなか出向くことができない場合や、サービスコストを下げるために定着ユニットをユーザー交換が可能なユニットとした場合には、ユーザー自身が定着ユニットの位置調整を簡単に行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ユーザーが定着ユニットの位置調整を簡単に行うことができ定着ユニットの高さ調整機構及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、画像形成装置本体に対して着脱可能であって、両側部に設けられたユニット側位置決め部材と前記画像形成装置本体の相対向する内壁に設けられた本体側位置決め部材とを嵌合させることによって高さ方向の位置決めがなされる定着ユニットの高さ調整機構において、
前記本体側位置決め部材の一方を支持部材によって上下動可能に支持するとともに、前記定着ユニットの装着方向にスライド可能な高さ調整部材を設け、これらの支持部材と高さ調整部材の一方に形成された高さの異なる複数の凹部に他方に形成された凸部を選択的に係合させ、
前記高さ調整部材を前記画像形成装置本体外部からの手動操作によってスライドさせることによって前記定着ユニットの高さ調整を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記支持部材又は前記高さ調整部材の一方を付勢手段によって他方に押圧するとともに、これらの一方に形成されたテーパ面に前記複数の凹部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記高さ調整部材に前記画像形成装置本体外へ延びる調整レバーを設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記高さ調整部材の前記凸部又は凹部が形成された面の反対側の面にラックを形成し、前記画像形成装置本体に調整ダイヤルを回転可能に設けるとともに、該調整ダイヤルの端部に形成されたピニオンを前記高さ調整部材の前記ラックに噛合させたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記調整レバー又は前記調整ダイヤルの操作部を開閉可能なカバーで覆ったことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の画像形成装置は、請求項1〜5の何れかに記載の定着ユニットの高さ調整機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、高さ調整部材を画像形成装置本体外部から手動操作してスライドさせれば、該高さ調整部材と支持部材の一方に形成された凸部と他方に形成された高さの異なる複数の凹部との係合位置が変化するため、支持部材によって上下動可能に支持された一方の本体側位置決め部材の高さが調整される。このため、この本体側位置決め部材に嵌合する左右片側のユニット側位置決め部材及びこれが設けられた定着ユニットの左右片側の高さが調整され、ユーザーが高さ調整部材を画像形成装置本体外部から手動操作することによって定着ユニットの高さ調整を容易に行うことができ、搬送ローラーと定着ローラーとの平行度を高精度に保つことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、支持部材又は高さ調整部材の一方を付勢手段によって他方に押圧するとともに、これらの一方に形成された凹部の開口端にテーパ面を形成したため、支持部材と高さ調整部材の一方に形成された凸部を他方の形成された凹部に確実に係合させることができとともに、各凹部の深さを一定にした状態で各凹部の高さを変えることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、高さ調整部材に設けられた調整レバーをユーザーが画像形成装置本体外部からスライド操作して高さ調整部材をスライドさせることによって定着ユニットの高さ調整を容易に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ユーザーが調整ダイヤルを画像形成装置本体外部から回転操作すると、該調整ダイヤルの回転が互いに噛合するピニオンとラックによって高さ調整部材の直線移動に変換されるため、高さ調整部材がスライドして定着ユニットの高さ調整が容易になされる。尚、ピニオンとラックの歯数を適当に設定することによって調整ダイヤルを回転させる力を小さく抑えることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、画像形成装置本体の外部に露出する調整レバー又は調整ダイヤルの操作部が定着ユニットの高さ調整時以外はカバーによって覆われているため、ユーザーが不用意に調整レバーや調整ダイヤルに触れて定着ユニットの高さに狂いが生じる等の不具合が発生することがない。尚、定着ユニットの高さ調整は、カバーを開けてなされる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、定着ユニットの高さ調整が容易になされて搬送ローラーと定着ローラーとの平行度が高精度に保たれるため、画像の歪みや記録材のスキュー、定着による記録材のしわ等の発生が防がれ、高質画像が安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の搬送カバーを開いた状態を示す部分斜視図である。
【図3】定着ユニットを装置前側から見た斜視図である。
【図4】定着ユニットを装置後側から見た斜視図である。
【図5】画像形成装置本体後部の右側内部の構造を示す部分斜視図である。
【図6】画像形成装置本体後部の左側内部の構造を示す部分斜視図である。
【図7】定着ユニットが装着された画像形成装置本体後部の右側内部の構造を示す部分斜視図である。
【図8】定着ユニットが装着された画像形成装置本体後部の左側内部の構造を示す部分斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る定着ユニットの高さ調整機構の正面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る定着ユニットの高さ調整機構の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る定着ユニットの高さ調整機構の斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを開けた状態を示す部分斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを閉じた状態を示す部分斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る定着ユニットの高さ調整機構の斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係る定着ユニットの高さ調整機構の斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを開けた状態を示す部分斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを閉じた状態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の断面図、図2は同画像形成装置の搬送カバーを開いた状態を示す部分斜視図である。
【0024】
図1に示す画像形成装置1は、複写機能とプリンター機能及びファクシミリ機能を兼備した複合機であって、記録材である用紙の両面に画像を形成することができる装置である。この画像形成装置1は、画像形成装置本体2とその上部に配された自動原稿搬送装置(ADF)3及び画像読取装置4を備えており、画像読取装置4の下方には排紙トレイ5が設けられている。
【0025】
又、画像形成装置本体2の内部上方には、画像形成部6が配され、その下方には上下3段の給紙カセット7が着脱可能に配されている。尚、各給紙カセット7内には記録材である複数枚の用紙が収容されている。
【0026】
上記画像形成部6は、電子写真方式によって画像を形成するものであって、回転可能に配された像担持体としての感光ドラム8と、その周囲に配された帯電ローラー9、現像装置10、転写ローラー11及びクリーニング装置12の他、現像装置10に現像剤であるトナーを補給するためのトナーホッパー13を備えている。尚、画像形成部6の横には、走査光学手段であるレーザースキャナーユニット(LSU)14が配置されている。尚、本実施の形態においては、前記転写ローラー11は、図2に示すように画像形成装置本体2に対して着脱可能な転写搬送ユニット15に回転可能に収容保持されている。
【0027】
又、前記各給紙カセット7の近傍には、各給紙カセット7内の用紙を上位のものから順次取り出すピックローラー16と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して送り出すフィードローラー17とリタードローラー18がそれぞれ配設されている。
【0028】
更に、画像形成装置本体2内の右端部には、用紙搬送路S1と両面搬送路S2が上下方向に配されており、用紙搬送路S1の感光ドラム8と転写ローラー11との当接部である転写ニップ部よりも下流側(図1の下側)にはレジストローラー19が配置され、用紙搬送路S1の転写ニップ部の下流側(図1の上側)には搬送ローラー20と定着ユニット21及び排紙ローラー22が配置されている。又、両面搬送路S2は用紙の両面に画像を形成する場合に使用されるものであって、この両面搬送路S2には複数の搬送ローラー23と排紙ローラー24が配置されている。
【0029】
ところで、前記定着ユニット21は、互いに圧接された状態で回転する定着ローラー21aと加圧ローラー21bを備えており、画像形成装置本体2の右側部に設けられた搬送カバー25を図2に示すように開いた状態で定着ユニット21と前記転写搬送ユニット15が画像形成装置本体2に対して着脱される。
【0030】
次に、以上のように構成された画像形成装置1の画像形成動作について説明する。
【0031】
画像形成動作が開始されると、画像形成部6においては感光ドラム8が不図示の駆動手段によって図1の矢印方向(反時計方向)に回転駆動され、その表面が帯電ローラー9によって所定の電位に一様に帯電される。そして、画像読取装置4から送信される電気信号に基づくレーザービームがレーザースキャナーユニット(LSU)14から出力されて感光ドラム8の表面が露光走査されると、該感光ドラム8上に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム8上に形成された静電潜像は、現像装置10によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として可視像化される。
【0032】
又、同時に例えば最上段の給紙カセット7内に収容された用紙がピックローラー16によって最上位のものからピックアップされ、ピックアップされた用紙は、フィードローラー17とリタードローラー18によって1枚ずつ分離されて用紙搬送路S1をレジストローラー19へと搬送される。そして、レジストローラー19においては、用紙は、一時待機状態とされた後、感光ドラム8上のトナー像に同期する所定のタイミングで画像形成部6へと供給される。
【0033】
画像形成部6においては、感光ドラム8と転写ローラー11との間の転写ニップ部へと供給された用紙は、転写搬送ユニット15に設けられた転写ローラー11によって感光ドラム8に押し付けられながら搬送されることによって、その表面に感光ドラム8上のトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された用紙は、搬送ローラー20によって定着ユニット21へと搬送され、この定着ユニット21の定着ローラ21aと加圧ローラ21b間の定着ニップ部を通過する過程で加熱及び加圧されてトナー像の定着を受ける。尚、用紙へのトナー像の転写後に感光ドラム8の表面に残留するトナー(転写残トナー)はクリーニング装置12によって除去され、表面が清掃された感光ドラム8は次の画像形成動作に備えられる。
【0034】
而して、定着ユニット21にて表面にトナー像が定着された用紙は、用紙搬送路S1を排紙ローラー22に向かって搬送され、排紙ローラー22によって排紙トレイ5へと排出されて一連の画像形成動作が終了する。
【0035】
「定着ユニットの高さ調整機構」
次に、前記定着ユニット21の高さ調整機構の実施の形態について説明する。
【0036】
<実施の形態1>
図3は定着ユニットを装置前側から見た斜視図、図4は同定着ユニットを装置後側から見た斜視図、図5は画像形成装置本体後部の右側内部の構造を示す部分斜視図、図6は同画像形成装置本体後部の左側内部の構造を示す部分斜視図、図7は定着ユニットが装着された画像形成装置本体後部の右側内部の構造を示す部分斜視図、図8は定着ユニットが装着された画像形成装置本体後部の左側内部の構造を示す部分斜視図、図9は本発明の実施の形態1に係る定着ユニットの高さ調整機構の正面図、図10及び図11は同高さ調整機構の斜視図、図12は同高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを開けた状態を示す部分斜視図、図13は同画像形成装置本体のカバーを閉じた状態を示す部分斜視図である。
【0037】
図3に示すように、定着ユニット21の前側側面には上下一対の位置決めリブ26が当該定着ユニット21の着脱方向に長く形成されており、これらの位置決めリブ26間にはユニット側位置決め部材を構成する位置決め凹部27が形成されている。そして、定着ユニット21の前側下部には矩形のブラケット28が下方に向かって一体に突設されており、このブラケット28には上下方向に長い位置決め孔28aが形成されている。
【0038】
又、図4に示すように、定着ユニット21の後側左端にはユニット側位置決め部材を構成する十字の位置決めボス29が当該定着ユニット21の装着方向に向かって一体に突設され、同定着ユニット21の後側右端下部には矩形のブラケット30が下方に向かって一体に突設されている。そして、ブラケット30には左右方向に長い位置決め孔30aが形成されている。
【0039】
他方、図5に示すように、画像形成装置本体2の右端部前側の内部側壁には、本体側位置決め部材を構成する2つの位置決めリブ31が定着ユニット21の着脱方向に配置されており、これらの下方には十字状の位置決めボス32が右方(図5の斜め手前側)に向かって突設されている。
【0040】
又、図6に示すように、画像形成装置本体2の右端部後側の内部側壁には、本体側位置決め部材を構成する円孔状の位置決め孔33が形成されており、その下方には十字状の位置決めボス34が右方(図6の斜め手前側)に向かって突設されている。
【0041】
而して、定着ユニット21の交換等のメンテナンスに際しては、図2に示すように搬送カバー25が開かれた状態で定着ユニット21が画像形成装置本体2に対して着脱されるが、定着ユニット21が画像形成装置本体2内に装着される場合には、該定着ユニット21の前側に形成された上下一対の位置決めリブ26間の位置決め凹部27に画像形成装置本体2の前側内壁に設けられた位置決めリブ31を嵌合させ、その状態を保って定着ユニット21を画像形成装置本体2内にそのまま押し込む。すると、定着ユニット21の後側に突設された位置決めボス29が画像形成装置本体2の後側内壁に形成された位置決め孔33に嵌合し、定着ユニット21の高さ方向の位置決めがなされる。これと同時に、定着ユニット21の前側と後側にそれぞれ突設されたブラケット28,30が画像形成装置本体2内のフレームに当接して当該定着ユニット21の左右方向の位置決めがなされるとともに、各ブラケット28,30にそれぞれ形成された位置決め孔28a,30aに画像形成装置本体2側に突設された位置決めボス32,34が図7及び図8に示すように嵌合するため、定着ユニット21の前後方向の位置決めがなされる。
【0042】
ところで、定着ユニット21の後側においては、位置決めボス29が画像形成装置本体2側の位置決め孔33に嵌合するために後側の高さは固定されているが、前側においては画像形成装置本体2側の位置決めリブ31は本発明に係る高さ調整機構35によってその高さ位置が上下に調整されるため、定着ユニット21は前側の高さ位置が調整されることによって当該定着ユニット21の図1に示す定着ローラー21a(加圧ローラー21b)と搬送ローラー20との平行度が高精度に保たれる。
【0043】
ここで、本発明に係る高さ調整機構35の構成の詳細を図9〜図11に基づいて以下に説明する。
【0044】
画像形成装置本体2側に設けられた前記位置決めリブ31は、プレート状の支持部材36によって支持されており、該支持部材36の下面には2つの凸部36aが下方に向かって一体に突設されている。そして、支持部材36は、定着ユニット21の着脱方向(図9及び図10の矢印方向)にスライド可能な高さ調整部材37によって支持されており、この高さ調整部材37の上面には支持部材36に突設された2つの凸部36aに対応して2つのテーパ面37Aが形成されており、各テーパ面37Aには複数の凹部37aが形成されている。このように高さ調整部材37の各テーパ面37Aに複数の凹部37aが形成されているため、各凹部37aの高さは段階的に変化している。
【0045】
高さ調整部部材37の各テーパ面37Aに形成された複数の凹部37aの1つには支持部材36に突設された各凸部36aがそれぞれ選択的に係合しており、支持部材36は、付勢手段であるスプリング38によって下方に付勢されて高さ調整部材37に押圧されている。そして、高さ調整部材37からは調整レバー39が水平に延びており、この調整レバー39は図12に示すように画像形成装置本体2外へと突出しており、定着ユニット21の高さ調整を行わない場合には、調整レバー39の先端部に設けられた操作部39aは、図13に示すように画像形成装置本体2側に開閉可能に設けられたボックス状のカバー40によって覆われている。
【0046】
而して、以上説明した高さ調整機構35による定着ユニット21の高さ調整は以下の要領でなされる。
【0047】
即ち、画像形成装置本体2内に装着された定着ユニット21の高さ調整を行う場合には、図12に示すようにカバー40を開いてユーザーが画像形成装置本体2の外部から調整レバー39の操作部39aを操作し、該調整レバー39を図9及び図10の矢印方向にスライドさせる。すると、高さ調整部材37が同方向にスライドし、支持部材36に突設された凸部36aが係合していた高さ調整部材37の凹部37aから外れて他の凹部37aに係合するが、複数の凹部37aはそれぞれ高さが異なるために支持部材36及びこれに支持された位置決めリブ31が上下動し、位置決めリブ31の高さが調整される。
【0048】
上述のようにユーザーが画像形成装置本体2の外部から操作レバー39を操作して高さ調整部材37をスライドさせることによって位置決めリブ31の高さが調整されるため、この位置決めリブ31に嵌合する位置決め凹部27を備える定着ユニット21の前側の高さが後側に対して容易に調整され、該定着ユニット21の定着ローラー21a(加圧ローラー21b)と搬送ローラー20との平行度が高く保たれ、図1に示す画像形成装置1によって形成される画像の歪みや用紙のスキュー、定着による用紙のしわ等の発生が防がれ、高質画像が安定的に得られる。尚、調整レバー39の操作部39aの付近に調整目盛を設けておけば、ユーザーが調整目盛で調整代を目視によって確認しながら調整作業を行うことができる。
【0049】
又、本実施の形態では、支持部材36をスプリング38によって付勢してこれを高さ調整部材37に押圧するようにしたため、高さ調整を行わない場合には支持部材36の凸部36aが高さ調整部材37の凹部37aに確実に係合し、定着ユニット21の高さが調整後の高さに維持される。そして、高さ調整部材37においては、テーパ面37Aに複数の凹部37aを形成したため、各凹部37aの深さを一定にした状態で各凹部37aの高さを変えることができる。
【0050】
更に、本実施の形態では、画像形成装置本体2の外部に露出する調整レバー39の操作部39aが定着ユニット21の高さ調整時以外はカバー40によって覆われているため、ユーザーが不用意に調整レバー39の操作部39aに触れて定着ユニット21の高さに狂いが生じる等の不具合が発生することがない。
【0051】
<実施の形態2>
次に、本発明に係る定着ユニットの高さ調整機構の実施の形態2を図14〜図17に基づいて以下に説明する。
【0052】
図14及び図15は本発明の実施の形態2に係る定着ユニットの高さ調整機構の斜視図、図16は同高さ調整機構が設けられた画像形成装置本体のカバーを開けた状態を示す部分斜視図、図17は同画像形成装置本体のカバーを閉じた状態を示す部分斜視図であり、これらの図においては図9〜図13において示したものと同一要素については同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0053】
本実施の形態に係る高さ調整機構35は、前記実施の形態1における調整レバー39に代えて調整ダイヤル41を用いたラックアンドピニオン機構を採用したことを特徴としており、他の構成は前記実施の形態1のそれと同じである。
【0054】
即ち、本実施の形態では、図14及び図15に示すように高さ調整部材37の下面にラック42を形成し、画像形成装置本体2に調整ダイヤル41を回転可能に設けるとともに、該調整ダイヤル41の端部に形成されたピニオン43を高さ調整部材37の下面に形成された前記ラック42に噛合させている。ここで、調整ダイヤル41は図16に示すように画像形成装置本体2外へと突出しており、定着ユニット21の高さ調整を行わない場合には、調整ダイヤル41は、図17に示すように画像形成装置本体2側に開閉可能に設けられたボックス状のカバー40によって覆われている。
【0055】
而して、本実施の形態に係る高さ調整機構35による定着ユニット21の高さ調整は以下の要領でなされる。
【0056】
画像形成装置本体2内に装着された定着ユニット21の高さ調整を行う場合には、図16に示すようにカバー40を開いてユーザーが画像形成装置本体2の外部から調整ダイヤル41を回せば、該調整ダイヤル41の先端部に形成されたピニオン43が回転し、該ピニオン43に噛合するラック42が形成された高さ調整部材37がスライドする。即ち、調整ダイヤル41の回転が互いに噛合するピニオン43とラック42によって高さ調整部材37の直線移動に変換されるため、高さ調整部材37がスライドする。
【0057】
而して、上述のように高さ調整部材37がスライドすると、前記実施の形態1と同様の原理によって支持部材36及びこれに支持された位置決めリブ31が上下動し、位置決めリブ31の高さが調整されるため、定着ユニット21の前側の高さが後側に対して容易に調整される。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、ユーザーが画像形成装置本体2の外部から調整ダイヤル41を回して高さ調整部材37をスライドさせることによって定着ユニット21の高さが容易に調整され、該定着ユニット21の定着ローラー21a(加圧ローラー21b)と搬送ローラー20(図1参照)との平行度が高く保たれ、図1に示す画像形成装置1によって形成される画像の歪みや用紙のスキュー、定着による用紙のしわ等の発生が防がれ、高質画像が安定的に得られる。尚、調整ダイヤル41の操作部の付近に調整目盛を設けておけば、ユーザーが調整目盛で調整代を目視によって確認しながら調整作業を行うことができる。又、ピニオン43とラック42の歯数を適当に設定することによって調整ダイヤル41を回転させる力を小さく抑えることができる。
【0059】
又、本実施の形態では、画像形成装置本体2の外部に露出する調整ダイヤル41が定着ユニット21の高さ調整時以外はカバー40によって覆われているため、ユーザーが不用意に調整ダイヤル41に触れて定着ユニット21の高さに狂いが生じる等の不具合が発生することがない。
【0060】
尚、以上の実施の形態1,2においては、支持部材36側に凸部36aを形成し、高さ調整部材37側に凹部37aを形成したが、これとは逆に支持部材36側に凹部を形成し、高さ調整部材37側に凸部を形成しても良い。又、以上の実施の形態1,2では、付勢手段であるスプリング38によって支持部材36を付勢してこれを高さ調整部材37に押圧する構成を採用したが、これとは逆に高さ調整部材37をスプリング38によって付勢してこれを支持部材36に押圧する構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
2 画像形成装置本体
3 自動原稿搬送装置(ADF)
4 画像読取装置
5 排紙トレイ
6 画像形成部
7 給紙カセット
8 感光ドラム
9 帯電ローラー
10 現像装置
11 転写ローラー
12 クリーニング装置
13 トナーホッパー
14 レーザースキャナーユニット(LSU)
15 転写搬送ユニット
16 ピックローラー
17 フィードローラー
18 リタードローラー
19 レジストローラー
20 搬送ローラー
21 定着ユニット
21a 定着ローラー
21b 加圧ローラー
22 排紙ローラー
23 搬送ローラー
24 排紙ローラー
25 搬送カバー
26 位置決めリブ
27 位置決め凹部(ユニット側位置決め部材)
28 ブラケット
28a ブラケットの位置決め孔
29 位置決めボス(ユニット側位置決め部材)
30 ブラケット
30a ブラケットの位置決め孔
31 位置決めリブ(本体側位置決め部材)
32 位置決めボス
33 位置決め孔(本体側位置決め部材)
34 位置決めボス
35 高さ調整機構
36 支持部材
36a 支持部材の凸部
37 高さ調整部材
37A 高さ調整部材のテーパ面
37a 高さ調整部材の凹部
38 スプリング(付勢手段)
39 調整レバー
39a 調整レバーの操作部
40 カバー
41 調整ダイヤル
42 ラック
43 ピニオン
S1 用紙搬送路
S2 両面搬送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に対して着脱可能であって、両側部に設けられたユニット側位置決め部材と前記画像形成装置本体の相対向する内壁に設けられた本体側位置決め部材とを嵌合させることによって高さ方向の位置決めがなされる定着ユニットの高さ調整機構において、
前記本体側位置決め部材の一方を支持部材によって上下動可能に支持するとともに、前記定着ユニットの装着方向にスライド可能な高さ調整部材を設け、これらの支持部材と高さ調整部材の一方に形成された高さの異なる複数の凹部に他方に形成された凸部を選択的に係合させ、
前記高さ調整部材を前記画像形成装置本体外部からの手動操作によってスライドさせることによって前記定着ユニットの高さ調整を行うことを特徴とする定着ユニットの高さ調整機構。
【請求項2】
前記支持部材又は前記高さ調整部材の一方を付勢手段によって他方に押圧するとともに、これらの一方に形成された前記凹部の開口端にテーパ面を形成したことを特徴とする請求項1記載の定着ユニットの高さ調整機構。
【請求項3】
前記高さ調整部材に前記画像形成装置本体外へ延びる調整レバーを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の定着ユニットの高さ調整機構。
【請求項4】
前記高さ調整部材の前記凸部又は凹部が形成された面の反対側の面にラックを形成し、前記画像形成装置本体に調整ダイヤルを回転可能に設けるとともに、該調整ダイヤルの端部に形成されたピニオンを前記高さ調整部材の前記ラックに噛合させたことを特徴とする請求項1又は2記載の定着ユニットの高さ調整機構。
【請求項5】
前記調整レバー又は前記調整ダイヤルの操作部を開閉可能なカバーで覆ったことを特徴とする請求項3又は4記載の定着ユニットの高さ調整機構。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の定着ユニットの高さ調整機構を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−247466(P2012−247466A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116585(P2011−116585)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】