説明

定着装置、画像形成装置

【課題】定着装置にICタグを取り付けても通信性能に影響されず、高温による破損や寿命低下を防止できる定着装置、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】定着装置上面に空気を送風するダクトを配置し、ダクトの空気層を挟んで熱源から離れた側にICタグを取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、及び定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、画像形成部において画像形成処理が行われトナーが転写された記録紙を定着装置にて熱定着させている。
【0003】
一般に画像形成装置は、使用枚数ごとに定期的に部品を交換する定期交換部品が使われている。定期交換部品にはユニットごと交換するものや、ユニットに使われている部品のみを交換するものなどがあり、各々のユニットや部品について何時交換するかの情報を管理することが必要となる。
【0004】
交換時期の情報を作成するために、ICタグあるいはRFID(Radio Frequency IDentification RFタグという)といわれる記憶素子を用いて、履歴情報を記録する手段が用いられている。しかし、これらタグは熱に対して弱いという欠点がある。なお以下ではタグを総称してICタグと呼ぶ。
【0005】
定着装置にICタグを用いる場合、定着装置から発する熱によりICタグが破損したり誤動作したりするという問題があり、その対策が必要となっている。
【0006】
上記問題を解決するために、例えば特許文献1には定着装置の熱源よりも下方となる位置にICタグを取り付ける。さらに熱源とICタグの間に断熱部材を設ける。さらにまた定着装置に空気を利用して強制的に冷却する冷却機構を備え、ICタグは熱源よりも空気の流れの上流に設けるとした技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−84996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に公開された技術では画像形成装置本体から引き出し可能な定着装置にICタグを取り付けた場合、本体側に設けられた通信用アンテナ基板とICタグとをつなぐ通信ケーブルの長さは、引き出し量に相当する分長くなる。しかしICタグから発生する電力は微弱でありノイズに弱いという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、定着装置にICタグを取り付けても通信性能に影響されず、高温による破損を防止できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記構成により達成できる。すなわち、
1.記録紙に転写されたトナー像を熱によって定着し、画像形成装置本体から引き出し可能な定着装置であって、
前記トナー像を溶融させる熱を発熱させる熱源と、
前記定着装置の周囲に設けられ、空気を通過させるダクトと、
前記ダクトの空気層を挟んで前記熱源から離れた側に取り付けられ、情報を記憶するICタグと、
を有することを特徴とする定着装置。
【0011】
2.定着装置側に前記ICタグが取り付けられ、前記ICタグから発信される電波信号を読み取るICタグリーダが、本体側の前記電波信号を読み取り可能な位置に取り付けられていることを特徴とする前記1に記載の定着装置。
【0012】
3.前記ダクトは空気が通過する流路を複数有し、前記流路の少なくともひとつのダクト部分に前記ICタグが取り付けられていることを特徴とする前記1または2に記載の定着装置。
【0013】
4.前記ICタグが取り付けられているダクト部分を取り外し可能としたことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の定着装置。
【0014】
5.前記ダクトを通過する空気が前記ICタグを冷却することを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の定着装置。
【0015】
6.前記1から5の何れか1項に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
定着装置の上筐体板と、さらにその上部に設けた天板との間に空気を送風するダクトを配置し、ダクトの空気層を挟んで熱源から離れた側に、情報を記憶するICタグを取り付けるので、ICタグの使用環境温度が適正に保持されICタグの通信性能に影響されず、高温による寿命低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の定着装置を用いた画像形成装置の実施形態を示す構成図である。
【図2】搬送架台が、画像形成装置本体部から引き出されるところを示す概略斜視図である。
【図3】定着装置の天板と進入ガイド部材を外したところを示す斜視図である。
【図4】定着装置を通紙方向に対して直角な方向から見た概略中央断面図である。
【図5】天板を反対側に返したところを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また以下の本発明の実施の形態における断定的な説明は、ベストモードを示すものであって、本発明の用語の意義や技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(画像形成装置)
図1は本発明の定着装置を用いた画像形成装置の実施形態を示す構成図であり、画像読取装置SCと、画像形成部Aを主な構成としている。
【0020】
画像読取装置SCは、原稿台上に載置された原稿を原稿画像走査露光装置の光学系を用いて走査露光し、CCDセンサなどのラインイメージセンサに投影される。ラインイメージセンサに投影された画像をアナログ信号に変換し、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、走査光学装置3Y、3M、3C、3Kに入力される。
【0021】
画像形成部Aは、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの画像形成ユニット10と、ベルト状の中間転写ベルト6、走査光学装置3、給紙装置20、制御手段を含む電気部CPE(不図示)等から構成されている。
【0022】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電極ユニット2Y、走査光学装置3Y、現像ユニット4Y及びクリーニング手段5Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、像担持体としての感光体ドラム1M、帯電極ユニット2M、走査光学装置3M、現像ユニット4M及びクリーニング手段5Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、像担持体としての感光体ドラム1C、帯電極ユニット2C、走査光学装置3C、現像ユニット4C及びクリーニング手段5Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10Kは、像担持体としての感光体ドラム1K、帯電極ユニット2K、走査光学装置3K、現像ユニット4K及びクリーニング手段5Kを有する。
【0023】
帯電極ユニット2Yと走査光学装置3Y、帯電極ユニット2Mと走査光学装置3M、帯電極ユニット2Cと走査光学装置3C及び帯電極ユニット2Kと走査光学装置3Kとは、潜像形成手段を構成する。
【0024】
4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径トナーとキャリアからなる二成分現像剤を収容する現像ユニット4である。
【0025】
中間転写ベルト6は、現像ユニット4により現像されたトナー画像を一時保持する中間転写体であり、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0026】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写ベルト6上に一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0027】
給紙装置20の給紙カセット21内に収容された記録媒体(以下、記録紙と称す)Pは、給紙手段(第1給紙部)22により給紙され、給紙ローラ23、24、25、26、レジストローラ(第2給紙部)27等を経て、二次転写手段9に搬送され、記録紙P上にカラー画像が転写される。
【0028】
なお、画像形成部Aの下部に鉛直方向に縦列配置された3段の給紙カセット21は、ほぼ同一の構成をなす。また、3段の給紙手段22も、ほぼ同一の構成をなす。給紙カセット21、給紙手段22を含めて給紙装置20と称す。
【0029】
カラー画像が転写された記録紙Pは、定着装置TPにおいて記録紙Pが挟持され、熱と圧力とを加えることにより記録紙P上のカラートナー像(或いはトナー像)が定着されて記録紙P上に固定され、排紙ローラ28に挟持されて機外の排紙トレイ29上に載置される。
【0030】
一方、二次転写手段9により記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写ベルト6は、ベルトクリーニング手段8により残留トナーが除去される。
【0031】
なお、画像形成部Aの説明においては、カラー画像形成にて説明したが、モノクロ画像を形成する場合も本発明に含まれるものである。
【0032】
帯電極ユニット2のコロナワイヤには、直流電源による5〜10kVの高電圧が印加され、感光体ドラム1の表面に均一な一定電位が帯電される。
【0033】
走査光学装置3の露光系にはレーザー光等が用いられ、例えばパルス幅変調により露光量が制御される。
【0034】
(定着装置)
次に本発明に係る定着装置TPについて説明する。
【0035】
図2は搬送架台Dが、画像形成装置本体部Eに設けられている搬送レールR1、R2(不図示)と、搬送架台D側に設けられているレールr1、r2(不図示)とによって矢印X方向に引き出されるところを示す図である。搬送架台Dは、二次転写手段9、定着装置TPなどを有し、給紙装置20から搬送された記録紙Pを定着装置TPにて定着するまでのユニットが備えられている。
【0036】
図3は、定着装置TPの天板51と進入ガイド部材52を外したところを示す斜視図であり、図4は、定着装置TPを通紙方向に対して直角な方向から見た概略中央断面図である。
【0037】
図3において、リブ54、55、56が、天板51及び進入ガイド部材52と、定着装置TPの上筐体板53との間に設けられている。リブ54、55、56によって仕切られた空間は、天板51に設けられた空気流入口e1から不図示の送風機により送られて来る空気eが通る(太線矢印で表示)ダクトとしての機能を備えている。
【0038】
天板51の中央下側には、定着装置TPの熱源Hから離れた側に、情報を記憶するICタグ57が取り付けられている(図4参照)。
【0039】
ICタグ57は、電波を受けて働く小型の電子装置の1つであり、ICタグリーダ58から発射される電波によって微量な電力を生み出し、その電力で、内蔵されている個別番号などの情報処理を行い、電波を送信する仕組みになっている。
【0040】
ICタグ57はアンテナ、ICチップ等で構成され、ICタグリーダ58はアンテナ、チューナー、リーダIC、マイクロコンピュータ部、電源部、操作部、外部接続部、筐体等で構成されている。
【0041】
ICタグリーダ58は、ICタグから発信される電波信号を読み取ってICタグ57の情報を得る。電波出力の関係から、ICタグリーダ58はICタグ57に近づける必要があるが接触させる必要はない。定着装置TP側にICタグ57をつけておくことで、履歴を記録することができる。
【0042】
また、ICタグリーダ58は必要に応じてICタグ57の内容を書き換えられるライター機能が備わり、リーダ/ライター機となる。ライター動作時には一般に電波の到達距離が短くなる。
【0043】
ICタグ57側のアンテナは小さく共振性が高く量産性の良いことが必要で、一般に35から70μm程の線幅のアンテナパターンをフォトエッチング方式で作成している。ICチップ内には簡単なマイクロコンピュータとEEPROM、RAMなどが含まれている。
【0044】
図4に示すように、本実施の形態ではICタグ57を定着装置TPの天板51の内側に取り付け、ICタグリーダ58を画像形成装置本体部側の、ICタグ57から発信される電波情報を受信できる位置に取り付けている(図2参照)。
【0045】
ICタグ57を取り付ける場所は、特に天板51に特定するものではなく、本体側に設けられたICタグリーダ58と、定着装置TP側に設けられたICタグ57が非接触で、発信電波が受信でき、かつダクトの空気層を挟んで定着の熱源と反対側の位置であればよい。例えば、定着装置TPの側面(通紙方向側の面)までダクトを延長し、ダクトの内側または外側にICタグ57を設け、ICタグリーダ58を本体に取り付けることが可能な場所に設けることであってもよい。
【0046】
ここでICタグ57をダクトの内側に設けた場合、外側に設けた場合と比べて、空気eによってICタグ57を効率よく冷却できるという利点がある。
【0047】
また、ICタグ57は、リブ54、55、56によって仕切られた複数の空間の天板51側に取り付けられているが、空気eが流れる流路を有する複数の空間のうち少なくともひとつの空間内に設けていればよい。
【0048】
さらに、本発明の定着装置TPは、ICタグ57が取り付けられているダクトを取り外すことができる構造となっている。
【0049】
図5は、天板51を反対側に返したところを示す図である。符号59はICタグ57を取り付けるICタグ取り付け部材である。ICタグ取り付け部材59は、本実施の形態ではネジによって天板51に取り付けられ、取り外しが可能な構造としている。
【0050】
ICタグ57が故障した場合、ICタグを取り付けているダクト(この場合、ICタグ取り付け部材59)のみ取り外し、新しいICタグ57と交換することで、天板51全部を交換することなく対応できる。
【0051】
また、定着装置TPあるいはダクトが故障し、新品と交換しなければならず、しかも履歴を継承するために今までのICタグ57をそのまま使用する場合、新品の定着装置TPあるいはダクトに、今までのICタグ57を取り付けているICタグ取り付け部材59と交換することが可能である。
【0052】
このように、定着装置上面に空気を送風するダクトを配置し、ダクトの空気層を挟んで熱源から離れた側に情報を記憶するICタグ57を取り付けることより、ICタグ57の使用環境温度が適正に保持されICタグ57の通信性能に影響されず、高温による寿命低下を防止できる。
【0053】
また、ICタグ57をダクトの内側に設けた場合、外側に設けた場合と比べて、空気eによってICタグ57を効率よく冷却できる。
【0054】
さらにダクトが複雑に分割されるように構成され、その一部にICタグ57を取り付けることによりICタグ57が破損した場合に部分的な交換で済む。
【0055】
また逆にダクトが破損した場合に、ICタグ57が取り付けられている部分を残し、ダクトの周辺を交換することによりICタグ57に記録された情報をそのまま継続することができる。
【符号の説明】
【0056】
51 天板
52 進入ガイド部材
53 上筐体版
54、55、56 リブ
57 ICタグ
58 ICタグリーダ
59 ICタグ取り付け部材
A 画像形成部
D 搬送架台
E 画像形成装置本体部
H 熱源
P 記録紙
e 空気
TP 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に転写されたトナー像を熱によって定着し、画像形成装置本体から引き出し可能な定着装置であって、
前記トナー像を溶融させる熱を発熱させる熱源と、
前記定着装置の周囲に設けられ、空気を通過させるダクトと、
前記ダクトの空気層を挟んで前記熱源から離れた側に取り付けられ、情報を記憶するICタグと、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
定着装置側に前記ICタグが取り付けられ、前記ICタグから発信される電波信号を読み取るICタグリーダが、本体側の前記電波信号を読み取り可能な位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ダクトは空気が通過する流路を複数有し、前記流路の少なくともひとつのダクト部分に前記ICタグが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ICタグが取り付けられているダクト部分を取り外し可能としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ダクトを通過する空気が前記ICタグを冷却することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−197372(P2011−197372A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63857(P2010−63857)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】