説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着部材と加圧回転体の周速差によるスリップの発生を抑えて、画像の伸びを抑えることができる定着装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】定着装置100において、駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214へ駆動力を伝達するギア列にクラッチ付ギア206が設けられている。定着を行うと、定着ベルト102の熱によって加圧ロール104が熱膨張して加圧ロール104の周速が定着ベルト102の周速より速くなる。ここで、駆動モータ180の駆動力によって回転する定着ベルト102の周速よりも加圧ロール104によって回転する定着ベルト102の周速が大きいとき、クラッチ付ギア206が空転して駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214に伝達される駆動力を遮断する。これにより、定着ベルト102と加圧ロール104が連れ回りとなり周速差によるスリップが生じにくくなるので、定着時のトナー画像の伸びを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機等の画像形成装置において、記録用紙上に転写されたトナー像を、熱源を備えた定着ロールと加圧ロールとで形成されるニップ部に通して、熱と圧力の作用でトナーを溶融して定着する定着装置が利用されている。
【0003】
定着ロール、加圧ロールは、端部に駆動用ギアが取り付けられ、モータ等の駆動源から該駆動用ギアに駆動力が伝達されることにより回転する。
【0004】
ここで、定着ロール及び加圧ロールに駆動用ギアを取り付けた定着装置の一例として、駆動源と定着ロールの駆動用ギアとの間に伝達ギアを配置すると共に、定着ロールの駆動用ギアと加圧ロールの駆動用ギアを噛合させた定着装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の定着装置は、駆動源から伝達ギアを介して定着ロールの駆動用ギアに駆動力を伝達させ、定着ロール及び加圧ロールを回転させている。
【特許文献1】特開平11−224011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、定着部材と加圧回転体の周速差によるスリップの発生を抑えて、画像の伸びを抑えることができる定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る定着装置は、加熱されて現像剤を記録媒体に定着する無端状の定着部材と、前記定着部材の内側に配置された支持体と、前記定着部材を前記支持体へ加圧する加圧回転体と、定着時に前記定着部材に前記加圧回転体を接触させ、非定着時に離間させる接離手段と、を備え、駆動源から前記加圧回転体に駆動力を伝達する第1駆動力伝達手段と、前記駆動源から前記定着部材に駆動力を伝達する第2駆動力伝達手段と、前記駆動力によって回転する前記定着部材の周速よりも前記加圧回転体によって回転する前記定着部材の周速が大きいとき、前記第2駆動力伝達手段から前記定着部材へ伝達される駆動力を遮断する駆動力遮断手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2に係る定着装置は、前記第1駆動力伝達手段及び前記第2駆動力伝達手段がギア列で構成され、前記駆動力遮断手段がクラッチで構成されたことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3に係る定着装置は、前記定着部材の周速度を検知する速度検知手段と、前記速度検知手段で検知された前記定着部材の周速度と予め設定された前記定着部材の基準速度とが等しくなるように、前記駆動源の回転速度を変更制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置と、露光光を出射する露光部と、前記露光部の前記露光光で形成された潜像を現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像部と、前記現像部で顕在化された前記現像剤像を記録媒体上に転写する転写部と、前記転写部で前記現像剤像が転写された記録媒体を前記定着装置に搬送する搬送部と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、本構成を有していない場合に比較して、定着部材と加圧回転体の周速差によるスリップの発生を抑えて、画像の伸びを抑えることができる。
【0012】
請求項2の発明は、本構成を有していない場合に比較して、定着部材へ伝達される駆動力の遮断が容易となる。
【0013】
請求項3の発明は、本構成を有していない場合に比較して、さらに画像の伸びを抑えることができる。
【0014】
請求項4の発明は、本構成を有していない場合に比較して、画像の伸びを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の定着装置及び画像形成装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0016】
図1には、画像形成装置としてのプリンタ10が示されている。
【0017】
プリンタ10において、プリンタ10の本体を構成する筐体12に光走査装置54が固定されており、光走査装置54に隣接する位置に、光走査装置54及びプリンタ10の各部の動作を制御する制御ユニット50が設けられている。
【0018】
光走査装置54は、図示しない光源から出射された光ビームを回転多面鏡(ポリゴンミラー)で走査し、反射ミラー等の複数の光学部品で反射して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応した光ビーム60Y、60M、60C、60Kを出射するようになっている。
【0019】
光ビーム60Y、60M、60C、60Kは、それぞれ対応する各感光体20Y、20M、20C、20Kに導かれる。
【0020】
プリンタ10の下方側には、記録用紙Pを収納する用紙トレイ14が設けられている。用紙トレイ14の上方には、記録用紙Pの先端部位置を調整する一対のレジストローラ16が設けられている。
【0021】
プリンタ10の中央部には、画像形成ユニット18が設けられている。画像形成ユニット18は、前述の4つの感光体20Y、20M、20C、20Kを備えており、これらが上下一列に並んでいる。
【0022】
感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向上流側には、感光体20Y、20M、20C、20Kの表面を帯電する帯電ローラ22Y、22M、22C、22Kが設けられている。
【0023】
また、感光体20Y、20M、20C、20Kの回転方向下流側には、Y、M、C、Kの各トナーをそれぞれ感光体20Y、20M、20C、20K上に現像する現像器24Y、24M、24C、24Kが設けられている。
【0024】
一方、感光体20Y、20Mには第1中間転写体26が接触し、感光体20C、20Kには第2中間転写体28が接触している。そして、第1中間転写体26、第2中間転写体28には第3中間転写体30が接触している。
【0025】
第3中間転写体30と対向する位置には、転写ロール32が設けられている。転写ロール32と第3中間転写体30との間を記録用紙Pが搬送され、第3中間転写体30上のトナー画像を記録用紙Pに転写させる。
【0026】
記録用紙Pが搬送される用紙搬送路34の下流には、定着装置100が設けられている。定着装置100は、定着ベルト102と加圧ロール104を有しており、記録用紙Pを加熱・加圧してトナー画像を記録用紙P上に定着させる。
【0027】
トナー画像が定着された記録用紙Pは、用紙搬送ロール36でプリンタ10の上部に設けられたトレイ38に排出される。
【0028】
ここで、プリンタ10の画像形成について説明する。
【0029】
画像形成が開始されると、各感光体20Y〜20Kの表面が帯電ローラ22Y〜22Kによって一様に帯電される。
【0030】
光走査装置54から出力画像に対応した光ビーム60Y〜60Kが、帯電後の感光体20Y〜20Kの表面に照射され、感光体20Y〜20K上に各色分解画像に応じた静電潜像が形成される。
【0031】
この静電潜像に対して、現像装置24Y〜24Kが選択的に各色、すなわちY〜Kのトナーを付与し、感光体20Y〜20K上にY〜K色のトナー画像が形成される。
【0032】
その後、マゼンタ用の感光体20Mから第1中間転写体26にマゼンタのトナー画像が一次転写される。また、イエロー用の感光体20Yから第1中間転写体26にイエローのトナー画像が一次転写され、第1中間転写体26上で前記マゼンタのトナー画像に重ね合わされる。
【0033】
一方、同様にブラック用の感光体20Kから第2中間転写体28にブラックのトナー画像が一次転写される。また、シアン用の感光体20Cから第2中間転写体28にシアンのトナー画像が一次転写され、第2中間転写体28上で前記ブラックのトナー画像に重ね合わされる。
【0034】
第1中間転写体26へ一次転写されたマゼンタとイエローのトナー画像は、第3中間転写体30へ二次転写される。一方、第2中間転写体28へ一次転写されたブラックとシアンのトナー画像も、第3中間転写体30へ二次転写される。
【0035】
ここで先に二次転写されているマゼンタ 、イエローのトナー画像と、シアンおよびブラックのトナー画像とが重ね合わされ、カラー(3色)とブラックのフルカラートナー画像が第3中間転写体30上に形成される。
【0036】
二次転写されたフルカラートナー画像は、第3中間転写体30と転写ロール32との間のニップ部に達する。そのタイミングに同期して、レジストロール16から記録用紙Pが当該ニップ部分に搬送され、記録用紙P上にフルカラートナー画像が三次転写(最終転写)される。
【0037】
この記録用紙Pは、その後、定着装置100に送られ、定着ベルト102と加圧ロール104とのニップ部を通過する。その際、定着ベルト102と加圧ロール104とから与えられる熱と圧力との作用により、フルカラートナー画像が記録用紙Pに定着する。定着後、記録用紙Pは用紙搬送ロール36によりトレイ38に排出され、記録用紙Pへのフルカラー画像形成が終了する。
【0038】
次に、本実施形態に係る定着装置100について説明する。
【0039】
図2に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体122を備えている。
【0040】
筐体122の内部には、矢印D方向へ回転する無端状の定着ベルト102が設けられている。
【0041】
定着ベルト102は、図4bに示すように、内側から外側に向けて基層134、発熱層132、保護層130、弾性層128、及び離型層126で構成されており、これらが積層され一体となっている。
【0042】
基層134は、定着ベルト102の強度を保持するベースとなるもので、ポリイミド(PI)で構成されている。基層134の厚さは30〜80μmとしている。なお、基層134として、非磁性ステンレスを用いてもよい。
【0043】
発熱層132は、前述の磁界H(図2参照)を打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料であり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料を用いることができる。本実施形態では、固有抵抗を1.7×10−8Ωm以下に小さくして必要な発熱量を効率よく得ること、及び低コストの観点から、発熱層132として銅を用いている。
【0044】
また、発熱層132は、熱容量ができるだけ小さい方が定着装置100のウォームアップ時間を短縮することができるため、できるだけ薄い層を設けることが望ましく、10μmとしている。
【0045】
保護層130は、基層と同等の合成樹脂で厚さを40−60μm、あるいは非磁性ステンレス(固有抵抗7.2×10−7Ωm)で構成され、厚さを30〜60μmとしている。また、ニッケル(固有抵抗7×10−8Ωm)で構成され、厚さを5〜9μmとしてもよい。
【0046】
弾性層128は、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられ、本実施形態ではシリコンゴムを用いている。
【0047】
離型層126は、記録用紙P上で溶融されたトナーT(図2参照)との接着力を弱めて、記録用紙Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層126として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂を用いることが好ましく、本実施形態ではPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。なお、本実施形態では、離型層126の厚さは30μmとしている。
【0048】
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108と定着ベルト102との間隔は1〜3mm程度となっている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、凸部108Aが突設されている。
【0049】
ボビン108には、励磁コイル110が、凸部108Aを中心として軸方向(図2の紙面奥行き方向)に複数回巻き回されている。
【0050】
励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成されたフェライト系の磁性体からなる磁性コア112が配置され、ボビン108に支持されている。
【0051】
一方、定着ベルト102の内側には、非磁性体であるアルミニウムあるいは非磁性ステンレスからなる固定部材114が、定着ベルト102と非接触で配置され、両端が定着装置100の筐体122に固定されている。
【0052】
固定部材114は、定着ベルト102と対向して円弧状に形成された円弧部114Aと、柱状に形成された柱部114Bとで構成され、円弧部114Aと柱部114Bは一体成形されている。
【0053】
固定部材114の円弧部114Aには、該円弧部114Aに沿って、前述の磁性コア112と同様の材質からなる磁性コア116が設けられている。磁性コア116は、定着ベルト102と非接触状態となっている。この磁性コア116と磁性コア112との間で、定着ベルト102を貫通した磁界Hによる閉磁路が形成され、磁界Hが強められる。
【0054】
また、固定部材114の柱部114Bの端面には、定着ベルト102を内側から支持する支持部材118が固定されている。
【0055】
支持部材118は、ウレタンゴム又はスポンジ等の弾性を有する部材で構成され、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルトを外方向へ押圧している。
【0056】
一方、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を支持部材118に向けて加圧するとともに、図示しないモータ及びギアからなる駆動機構により矢印E方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
【0057】
加圧ロール104は、ステンレスあるいはアルミニウム等の金属からなる芯金106の周囲に、スポンジ、シリコンゴム及びPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)が被覆された構成となっている。
【0058】
また、加圧ロール104は、図5に示すリトラクト機構によって矢印A、B方向に移動可能となっており、矢印A方向に移動したときは定着ベルト102の外周面と接触して加圧し、矢印B方向に移動したときは定着ベルト102の外周面から離間するようになっている。
【0059】
ここで、加圧ロール104のリトラクト機構について説明する。
【0060】
図5には、加圧ロール104を定着ベルト102に接触又は離間させるリトラクト機構部150が示されている。
【0061】
リトラクト機構部150は、板金で構成され、加圧ロール104の両端部を回転可能に支持する図示しないベアリングが固定されたアーム部材152を有している。
【0062】
アーム部材152は、筐体122の内側で加圧ロール104の両端部に立設された一対の側板154に、円柱状の支持ピン156によって取り付けられ、矢印R1方向に揺動可能となっている。
【0063】
側板154の側面には、ボルト158が、側板154の側面と略平行に設けられている。ボルト158は、先端部が、側板154に突設された板状の固定部160の穴部157に締結され、後端部が、図示しない係合部に接着されることにより固定されるようになっている。
【0064】
また、アーム部材152の支持ピン156と反対側には、ボルト158が挿通可能な大きさの穴部159が形成された板状の付勢部162が突設されている。
【0065】
ここで、ボルト158が付勢部162の穴部159に挿通されると共に、所定の弾性力のバネ164がボルト158に外挿され、さらに、ボルト158の先端部が、穴部157に締結されることにより、固定部160と付勢部162の間にバネ164が設けられる。
【0066】
アーム部材152は、バネ164の付勢力によって左側へ付勢される。これにより、加圧ロール104が、定着ベルト102から離れるようになっている。
【0067】
一方、アーム部材152の近傍には、略円柱状の支持ピン168を軸として矢印R2方向へ揺動する偏芯カム166が設けられている。
【0068】
偏芯カム166には、所定の歯数のギア部172が設けられている。ギア部172には、所定の歯数の駆動ギア174が噛合している。また、駆動ギア174は、図示しない電源によって駆動される駆動モータ176の正転(反時計回り)、逆転(時計回り)によって、偏芯カム166を揺動するようになっている。
【0069】
ここで、駆動モータ176が正転ONとなり、駆動ギア174が正転方向へ回転すると、偏芯カム166は、右側に揺動する。これにより、偏芯カム166が、アーム部材152と接触して、アーム部材152を定着ベルト102側へ揺動させ、加圧ロール104が、定着ベルト102に接触する。
【0070】
また、駆動モータ176が逆転ONとなり、駆動ギア174が逆転方向へ回転すると、偏芯カム166は、左側に揺動する。これにより、偏芯カム166が、アーム部材152の接触部170から離れ、アーム部材152が、バネ164で左側へ付勢されて、加圧ロール104が、定着ベルト102から離れる。
【0071】
図2に示すように、加圧ロール104が定着ベルト102を支持部材118側に加圧すると、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102に凹部103が形成され、凹部103に隣接する位置に凸部105が形成される。
【0072】
このニップ部の形状は、トナーTが載った記録用紙Pが通過するときに、定着ベルト102から剥離させる方向に湾曲した形状となっている。このため、矢印IN方向から搬送されてきた記録用紙Pは、それ自体の腰の強さでニップ部の形状に倣って矢印OUT方向に排出される。
【0073】
また、支持部材118は、定着ベルト102を加圧ロール104側に押圧するとともに定着ベルト102の内周面に倣って湾曲し、ニップ幅を広げる。
【0074】
定着ベルト102の裏面で、励磁コイル110と対向する領域で且つ記録用紙Pの通過領域には、定着ベルト102裏面の温度を測定するサーミスター120が接触して設けられている。サーミスター120の接触位置は、記録用紙Pのサイズの大小によって測定値が変わらないように、定着ベルトの軸方向(図2の紙面奥行き方向)の略中央部となっている。
【0075】
サーミスター120は、定着ベルト102裏面から与えられる熱量に応じて抵抗値が変化することで、定着ベルト102裏面の温度を計測する。
【0076】
図4aに示すように、サーミスター120は、配線136を介して、前述の制御ユニット50(図1参照)の内部に設けられた制御回路138に接続されている。また、制御回路138は、配線140を介して通電回路142に接続されており、通電回路142は、配線144、146を介して前述の励磁コイル110に接続されている。
【0077】
ここで、制御回路138は、サーミスター120から送られた電気量に基づいて定着ベルト102裏面の温度を測定し、この測定温度と予め記憶させてある定着設定温度(本実施形態では170℃)と比較する。そして、測定温度が定着設定温度よりも低い場合は、通電回路142を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図2参照)を発生させる。一方、測定温度が定着設定温度よりも高い場合は、通電回路142を停止するようになっている。
【0078】
通電回路142は、制御回路138から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線144、146を介して励磁コイル110に所定の周波数の交流電流を供給又は供給停止するようになっている。
【0079】
次に、定着ベルト102及び加圧ロール104の回転機構について説明する。なお、各シャフト及び各ギアは、前述の筐体122(図2参照)の側板に設けられている。
【0080】
図6に示すように、定着装置100は、前述の制御ユニット50から通電されて駆動する駆動モータ180を備えている。
【0081】
駆動モータ180には、シャフト182が取り付けられており、シャフト182に駆動ギア184が取り付けられている。駆動ギア184には、シャフト186に外挿された第1ギア188の大径部188Bが噛合されている。また、第1ギア188の小径部188Aは、シャフト190に外挿された第2ギア192に噛合されている。
【0082】
第2ギア192は、第1ギア188と異なる位置で、シャフト194に外挿された第3ギア196に噛合されている。第3ギア196は、第2ギア192と異なる位置で、シャフト198に外挿された第4ギア200に噛合されている。
【0083】
第4ギア200は、第3ギア196と異なる位置で、加圧ロール104のシャフト202に外挿された加圧ロール駆動ギア204に噛合されている。
【0084】
加圧ロール駆動ギア204は、前述のリトラクト機構部150が動作しても、常時第4ギア200と噛合するようになっている。
【0085】
一方、シャフト182には、駆動ギア184の他に、クラッチ付ギア206が設けられている。クラッチ付ギア206は、シャフト208に外挿された第5ギア210に噛合されている。
【0086】
第5ギア210は、クラッチ付ギア206と異なる位置で、シャフト212に外挿された定着ベルト駆動ギア214に噛合されている。定着ベルト駆動ギア214は、略円柱状のキャップ部(図示せず)が形成されており、このキャップ部が定着ベルト102の一方の端部に嵌め込まれ、接着によって固定されている。
【0087】
なお、上記各ギアは、各シャフトと嵌合しており、図示しないEリング等によりシャフトから抜けないように固定されている。
【0088】
また、クラッチ付ギア206は、駆動モータ180の駆動力によって回転するときの周速よりも、加圧ロール104によって回転するときの周速が大きいとき、空転して、駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214に伝達される駆動力を遮断するようになっている。
【0089】
次に、プリンタ10の制御ユニット50について説明する。
【0090】
図3に示すように、制御ユニット50は、プリンタ10の各種制御を行う中央処理ユニット(CPU)70と、各種制御プログラムが記憶されたプログラム記憶部(ROM)72と、前述のサーミスタ120で測定された温度測定データ又はその他の測定データを一時的に記憶し、又は消去するデータ記憶部(RAM)74と、所定のクロックで動作するタイマ76とを有している。なお、制御ユニット50は、前述の制御回路138(図4a参照)を含んでいる。
【0091】
中央処理ユニット70は、各種信号の入出力が行われる入出力インターフェース80に接続されており、この入出力インターフェース80を介して、スイッチ82、ユーザーインターフェース(UI)84、サーミスタ120、駆動モータ180、駆動モータ176、及び通電回路142に接続されている。なお、スイッチ82は、プリンタ10(図1参照)の電源をON/OFFするためのスイッチであり、ユーザーインターフェース84は、画像形成等の実行をユーザーが直接指示するための入力パネル等で構成されている。
【0092】
ここで、スイッチ82、ユーザーインターフェース84、及びサーミスタ120から入出力インターフェース80を介してCPU70に信号が入力されるようになっている。一方、CPU70からの制御信号は、入出力インターフェース80を介して、駆動モータ180、駆動モータ176、及び通電回路142に出力されるようになっている。
【0093】
次に、定着ベルト102の周速度検知について説明する。
【0094】
図2及び図7に示すように、定着ベルト102の外周面から所定距離離間して、フォトセンサ117が対向配置されている。
【0095】
フォトセンサ117は、図7bに示すように、フォトセンサ117の本体を構成する筐体121の内部に、光を出射する出射部123と、被検知対象物で反射された反射光(RL)を受光して電気信号に変換する受光部125とを備えている。
【0096】
フォトセンサ117には、電源線127と信号線129が接続されている。ここで、図示しない電源から電源線127を介して電力供給されることで、出射部123から光を出射するようになっている。
【0097】
また、信号線129の他端は、前述の入出力インターフェース80(図3参照)を介してCPU70(図3参照)に接続されており、受光部125で受光される光の光量に基づいて生成された電気信号(パルス信号)が、信号線129を通ってCPU70に送られるようになっている。
【0098】
図7aに示すように、定着ベルト102は、長手方向において、記録用紙P(矢印C方向に進行)が通過する通紙領域(L2)と、記録用紙Pが通過しない非通紙領域(L1、L3)を有している。ここで、定着ベルト102の非通紙領域L3に、アルミ箔あるいはベルト表面と反射率の異なる材料からなり矩形状のマーク材119が設けられている。
【0099】
図7bに示すように、マーク材119は、予め定着ベルト102の製造過程において、弾性層128と離型層126の間に埋め込まれている。マーク材119の厚さは、6〜20μmとしている。
【0100】
なお、定着ベルト102の離型層126は、前述のフォトセンサ117の出射部123から出射された光を透過可能に構成されており、離型層126に入射した光は、マーク材117表面で反射され、反射光RLとなって受光部125で受光される。
【0101】
また、図7aに示すように、前述のフォトセンサ117の取り付け位置は、マーク材119が移動する移動領域(L4)と対向する位置となっている。
【0102】
ここで、定着ベルト102が矢印X方向に回転移動すると、マーク材119も矢印X方向に移動する。
【0103】
マーク材119がフォトセンサ117と対向する位置に来た場合、マーク材119で光が反射されるため、フォトセンサ117からHI信号が出力される。一方、マーク材119がフォトセンサ117と対向する位置に無い場合、定着ベルト102表面で光が乱反射されるなどして、フォトセンサ117に反射光RLがほとんど入射しないので、フォトセンサ117からLO信号が出力される。
【0104】
これにより、HI信号及びLO信号からなるパルス信号が生成される。マーク材119の幅を、このパルス信号の立ち上がり期間(HI)の時間で除することにより、定着ベルト102の周速度が求められる。
【0105】
次に、定着装置100の定着動作について説明する。
【0106】
図2及び図3に示すように、前述の画像形成工程においてトナー像が画像形成開始されるのと略同時に、駆動モータ180及び通電回路142に電力が供給され、定着ベルト102及び加圧ロール104が回転する。この時点では、加圧ロール104はリトラクト機構部150(図5参照)によって定着ベルト102から離間している。
【0107】
続いて、定着ベルト102の導電層132に磁界Hによって渦電流が誘導され、定着ベルト102が発熱する。
【0108】
続いて、所定のタイミングで、リトラクト機構部150の駆動モータ176が駆動され、加圧ロール104が定着ベルト102に圧接される。
【0109】
続いて、サーミスタ120で定着ベルト102の裏面温度を検知してフィードバック制御することで、定着ベルト102が所定の温度に加熱される。この状態で、未定着トナー像を担持した記録用紙Pが、定着ベルト102と加圧ロール104の間の定着ニップ部に送り込まれる。
【0110】
定着ニップ部内では、トナー像が加熱及び加圧され、記録用紙P上に定着される。
【0111】
続いて、記録用紙Pは、定着ニップ部の出口における定着ベルト102の曲率の変化によって定着ベルト102から剥離され、トレイ38に搬送される。
【0112】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0113】
図1に示すように、前述のプリンタ10の画像形成工程を経て、トナーが転写された記録用紙Pが定着装置100に送られる。そして、定着装置100において、前述のようにトナー像が記録用紙Pに定着される。
【0114】
ここで、定着開始前は、定着ベルト102と加圧ロール104が接触していないため、定着ベルト102の熱量が加圧ロール104に伝導せず、定着ベルト102を短時間で昇温加熱することができる。
【0115】
ウォームアップ時間と消費電力量について、リトラクト機構部150を有する本実施形態の定着装置100と、リトラクト機構部150を有していない従来の定着装置との比較をしたところ、表1の結果が得られた。
【0116】
表1に示すように、ウォームアップ時間が従来の1/5以下となり、消費電力量が1/2以下となることが確認された。
【0117】
【表1】



一方、連続して定着が行われると、定着ベルト102は熱容量が低いため、ほとんど外径が変化しないが、加圧ロール104は熱膨張によって外径が拡大することになる。
【0118】
特に、加圧ロール104の記録用紙Pが通過しない非通紙領域では、記録用紙Pに熱量が奪われずに蓄積されるため、通紙領域よりも温度が高温となり、外径が大きくなる。
【0119】
図8aに示すように、定着開始時、又は定着枚数が少ないときには、加圧ロール104は中央部と両端部で外径がほとんど変化していない。このため、定着ベルト駆動ギア214と加圧ロール駆動ギア204が所定の回転数で回転するとともに、該回転数に比例した周速度で、定着ベルト102、加圧ロール104が回転する。
【0120】
この状態では、定着ベルト102において、駆動モータ180の駆動力によって回転する周速と、加圧ロール104によって回転する周速が略等しいため、駆動ギア184とクラッチ付ギア206が接続された状態(CN)、即ち一体となって回転する。
【0121】
一方、図8bに示すように、連続定着を行うと、加圧ロール104の両端部の外径が、熱膨張によって、中央部の外径よりも大きくなる。これにより、駆動ギア184を所定の回転速度で回転しても、加圧ロール104の周速の方が定着ベルト102の周速より大きくなる。
【0122】
このままの状態で定着ベルト102及び加圧ロール104を回転させると、定着ベルト102と加圧ロール104の間でスリップが生じて、両者の間を通過するトナー画像が伸びてしまう。
【0123】
また、定着ベルト102は、加圧ロール104と接触しているため、加圧ロール104に合わせるようにして周速が大きくなり、定着ベルト駆動ギア214による周速よりも大きくなって、座屈し易くなってしまう。
【0124】
しかし、本発明では、駆動モータ180の駆動力によって回転する定着ベルト102の周速よりも、加圧ロール104によって回転する定着ベルト102の周速が大きいとき、クラッチ付ギア206が空転するので、駆動ギア184から定着ベルト駆動ギア214に伝達される駆動力が遮断される。
【0125】
これにより、定着ベルト102は、加圧ロール104と連れ回りするようになり、定着ベルト102と加圧ロール104の周速差によるスリップが生じにくくなるので、定着時のトナー画像の伸びを抑えることができる。
【0126】
また、駆動モータ180の駆動力によって回転する定着ベルト102の周速よりも、加圧ロール104によって回転する定着ベルト102の周速の方が大きくなることによる、ねじりせん断力の発生を抑えることができるので、定着ベルト102が座屈しにくくなり、定着装置100を長期間使用可能となる。
【0127】
ここで、連続定着時に、定着ベルト102を加圧ロール104に連れ回りさせるだけでは、周速度が増加していくことになる。
【0128】
しかし、本発明では、図7に示すように、定着ベルト102の周速度をフォトセンサ117で検知されるパルス信号に基づいて検知して、予め定めておいた基準速度よりも早い場合は、基準速度となるように、駆動モータ180の回転速度を低下させる。
【0129】
これにより、定着ベルト102が加圧ロール104と連れ回りしても、定着ベルト102の周速度の変動を抑えられる。
【0130】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0131】
プリンタ10は、固体の現像剤を用いる乾式の電子写真方式だけでなく、液体現像剤を用いるものであってもよい。
【0132】
定着ベルト102の温度の検知手段として、サーミスタ120の代わりに熱電対を用いてもよい。
【0133】
クラッチ付ギア206は、トルクリミッタを設けたギアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定着装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る制御部の模式図である。
【図4】(a)本発明の実施形態に係る制御回路及び通電回路の接続図である。(b)本発明の実施形態に係る定着ベルトの断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るリトラクト機構部を示した構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る各ギアの噛合状態を示した構成図である。
【図7】(a)本発明の実施形態に係るフォトセンサの配置を示した模式図である。(b)本発明の実施形態に係るフォトセンサの光検知状態を示した模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係るクラッチ付ギアの作用を示した模式図である。
【符号の説明】
【0135】
10 プリンタ(画像形成装置)
18 画像形成ユニット(露光部)
24 現像器(現像部)
32 転写ロール(転写部)
34 用紙搬送路(搬送部)
50 制御ユニット(制御手段)
54 光走査装置(露光部)
100 定着装置(定着装置)
102 定着ベルト(定着部材)
104 加圧ロール(加圧回転体)
117 フォトセンサ(速度検知手段)
118 支持部材(支持体)
150 リトラクト機構部(接離手段)
180 駆動モータ(駆動源)
184 駆動ギア(駆動源)
188 第1ギア(第1駆動力伝達手段、ギア列)
192 第2ギア(第1駆動力伝達手段、ギア列)
196 第3ギア(第1駆動力伝達手段、ギア列)
200 第4ギア(第1駆動力伝達手段、ギア列)
204 加圧ロール駆動ギア(第1駆動力伝達手段、ギア列)
206 クラッチ付ギア(第2駆動力伝達手段、駆動力遮断手段、クラッチ)
210 第5ギア(第2駆動力伝達手段、ギア列)
214 定着ベルト駆動ギア(第2駆動力伝達手段、ギア列)
P 記録用紙(記録媒体)
T トナー(現像剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されて現像剤を記録媒体に定着する無端状の定着部材と、
前記定着部材の内側に配置された支持体と、
前記定着部材を前記支持体へ加圧する加圧回転体と、
定着時に前記定着部材に前記加圧回転体を接触させ、非定着時に離間させる接離手段と、を備え、
駆動源から前記加圧回転体に駆動力を伝達する第1駆動力伝達手段と、
前記駆動源から前記定着部材に駆動力を伝達する第2駆動力伝達手段と、
前記駆動力によって回転する前記定着部材の周速よりも前記加圧回転体によって回転する前記定着部材の周速が大きいとき、前記第2駆動力伝達手段から前記定着部材へ伝達される駆動力を遮断する駆動力遮断手段と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1駆動力伝達手段及び前記第2駆動力伝達手段がギア列で構成され、前記駆動力遮断手段がクラッチで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の周速度を検知する速度検知手段と、
前記速度検知手段で検知された前記定着部材の周速度と予め設定された前記定着部材の基準速度とが等しくなるように、前記駆動源の回転速度を変更制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置と、
露光光を出射する露光部と、
前記露光部の前記露光光で形成された潜像を現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像部と、
前記現像部で顕在化された前記現像剤像を記録媒体上に転写する転写部と、
前記転写部で前記現像剤像が転写された記録媒体を前記定着装置に搬送する搬送部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−75167(P2009−75167A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241427(P2007−241427)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】