説明

定量送液ポンプ

【課題】 大容量の薬液を高い定量精度で吐出でき、長期に渡り正確な吐出が可能な定量送液ポンプを提供する。
【解決手段】 移送液を収容するポンプ室28の容積を変化させる送液用ベローズ25の内部室または、ポンプ室28を構成するチューブ61の外周側の室内と、シリンジ本体13のシリンジ室17とに非圧縮性液体を充填し、シリンジ室17に、軸方向へ移動可能にピストンロッド10を設けるとともに、シリンジ室17の外部で下方に延びるピストンロッド10の外周を囲む下方ベローズ30と、ピストンロッド10の側方に配置された側方ベローズ36とを設け、下方ベローズ30の内部室から側方ベローズ36の内部室に至る閉鎖空間に非圧縮性液体を充填した。これによって、ピストンロッド10の往復動による下方ベローズ30の伸縮に応じて、側方ベローズ36が、非圧縮性液体が充填された閉鎖空間の容積を略一定に保つように連動しながら伸縮するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体分野、液晶分野等に用いられる薬液を吐出する用途に好適な定量送液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、液晶画面の大型化に伴い液晶ディスプレイ基板のサイズも大きくなっている。このような大型の液晶ディスプレイ基板に対して製造時にレジスト液を塗布する方法として、基板の上方で吐出ヘッドを相対移動または走査させながら細線状のレジスト液を連続的に吐出させることにより、基板面へ所望の膜厚でレジスト液の塗布を行ういわゆるスピンレス法が採用されている。
【0003】
このような用途に使用されるベローズポンプには、大型の基板への塗布に対応する大容量、配管抵抗による高液圧に耐え得る高耐圧性、均一なレジスト膜厚を得るための高定量性が要求される。特に、1回の吐出作動によるトータルのレジスト吐出量と、吐出作動時におけるレジスト吐出量のリニアリティの精度が高いものが要求されている。
【0004】
レジスト液等の薬液の吐出に用いられるベローズポンプとして、ベローズに対してピストンを直接に取り付け、このピストンをステッピングモータとボールねじ機構によって軸方向へ往復動させることによりベローズを伸縮させるものがある(特許文献1)。このベローズポンプでは、レジスト液の液圧が高くなるとベローズが外側から押圧されて変形し、これにより吐出量が変動するため、吐出時におけるリニアリティが確保できず、高い定量精度が要求される用途には使用できない。
【0005】
半導体製造装置の薬液供給に用いられる定量ポンプとして、特許文献2には、非圧縮性液体が収容された第1室と、吐出する液体が収容された第2室とを可撓性ダイヤフラムで仕切り、第1室との間がシールされた状態で第1室を移動するピストンを設けて、このピストンをボールねじ機構によりステッピングモータで駆動することによって第1室の容積を変化させ、この容積変化によりダイヤフラムを変形させることで第2室から液体を吐出させる定量ポンプが開示されている。
【0006】
この定量ポンプでは、バネ付勢によりピストンのシールを行っているが、繰り返し作動によってシール部材が磨耗したり、シール部材が付勢バネから脱落したりすると、第1室の内部の非圧縮性液体が外部に漏れて第1室の容積が減少し、オフセット位置が変化してしまう。また、ピストンロッドが露出していることから、塵埃等によってシール部材が破損する等により液漏れと同時に第1室の内部にエアーが混入した場合には、吐出時における圧縮力によりエアーが容積変化して正確な吐出ができなくなる。
【0007】
特許文献3には、半導体製造用のCVD装置に使用される液体材料を供給するためのベローズポンプが開示されている。このベローズポンプでは、ベローズの内部空間で構成されるベローズ室に非圧縮性液体を充填し、このベローズ室に軸方向に移動可能なピストンを設けて、ピストンを軸方向に往復動させることによってベローズを伸縮させている。
【0008】
しかし、このベローズポンプでは、非圧縮性液体をパッキンのみで封止しているため、上記と同様に液漏れとエアー混入の可能性があり、長期間の使用を考慮した場合に正確な吐出の継続性という点で問題がある。
【0009】
パッキンを介した液漏れへの対策として、特許文献4には、化学・原子力・火力プラン
ト等に用いられる圧力容器に設けられた摺動軸に対して、2箇所に設置されたパッキンの間に小型シリンダから高圧の液体を注入する技術が開示されている。しかし、ベローズポンプにおいてピストンをシールするパッキンを介した液漏れをさらに有効に防止できるシール構造が求められていた。
【0010】
また、図14に示したような定量送液ポンプが知られている(特許文献5)。この定量送液ポンプは、パルスモータ、プーリ、ベルトおよびボールねじで構成された駆動部でベローズ101を伸縮させる機構を備えるとともに、接液部には膨張および収縮自在なチューブ102を備えている。ポンプヘッド103の内部におけるチューブ102の外周側の非圧縮性流体収容室104と、べローズの外側の非圧縮性流体収容室105とが連通され、これらの非圧縮性流体収容室104,105に非圧縮性流体が充填されている。ベローズ101を伸縮させることによって非圧縮性流体収容室104および105の間で非圧縮性流体を流出入させ、これによりチューブ102を膨張、収縮させることによってチューブ102の内部に収容された移送液を吐出する。
【0011】
この構造では、駆動軸の上下運動をベローズ101の伸縮運動に変換し、非圧縮性流体を介してチューブ102を膨張、収縮させて吸入、吐出を行うため、接液部であるチューブ102の内部はエアーの抜けが良く液滞留が起こりにくいという利点がある。
【0012】
しかし、非圧縮性流体をベローズ102で押す構造のため、ベローズ102の伸縮時の容積変化が一定ではなく、また吐出時の負荷抵抗によりベローズ102が変形して吐出量が変化してしまい、一定吐出時のリニアリティが充分に得られず高精度な吐出ができないという問題点がある。
【0013】
また、特許文献6には、ステッピングモータ、ボールねじ、大小2種類のベローズおよびチューブを備えた半導体用の定量ポンプが開示されている。この定量ポンプでは、図14のポンプに比べて形状の小型化、構造の簡素化、および製作、メンテナンスの容易性等のメリットはあるものの、ベローズで非圧縮性流体を押すという基本構造は同じであり、上記したように一定吐出時のリニアリティが充分に得られず高精度な吐出ができないという問題点がある。
【0014】
半導体ウエハのスピンレスコータに用いられるレジスト供給ポンプの場合には、繰り返し精度が良好であれば、一定吐出時のリニアリティが多少悪くても大きな問題にはならないが、液晶ガラス基板のスピンレスコータに用いられるレジスト供給ポンプの場合には、一定吐出時の精度(リニアリティ)が強く要求されるので、上記のような非圧縮性流体をベローズで押す構造のものは好ましくない。
【特許文献1】特開平7−130627号公報
【特許文献2】特許第3057082号公報
【特許文献3】特開平11−159464号公報
【特許文献4】特開平9−144894号公報
【特許文献5】特開平11−309405号公報
【特許文献6】特開平10−061558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、大容量の薬液を高い定量精度で吐出させることができ、さらに、長期に渡り正確な吐出が可能な定量送液ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の定量送液ポンプは、ポンプ室と、該ポンプ室へ移送液が吸入される吸入口と、
該ポンプ室から前記移送液が吐出される吐出口と、非圧縮性液体が内部室に充填され、伸縮によって前記ポンプ室の容積を変化させる送液用ベローズと、が設けられたポンプヘッドと、
前記非圧縮性液体が充填され前記送液用ベローズの内部室と連通されたシリンジ室が設けられたシリンジ本体と、
前記シリンジ本体との間がシール部材によってシールされた状態で前記シリンジ室を軸方向に往復動することにより、該シリンジ室と前記送液用ベローズの内部室との間で前記非圧縮性液体を流出入させ、これにより前記送液用ベローズを伸縮させる駆動部材と、
前記シリンジ室の外部で下方に延びる前記駆動部材の外周を囲み、その下端部が該駆動部材に固定され、該駆動部材の往復動に連動して伸縮する下方ベローズと、
前記駆動部材の側方に配置され、前記下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズと、を備え、
前記下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる空間であり、前記シール部材によって前記シリンジ室と仕切られた空間内に、非圧縮性液体が充填され、前記駆動部材の往復動による前記下方ベローズの伸縮に応じて、前記側方ベローズが、前記非圧縮性液体が充填された前記空間の容積を略一定に保つように連動しながら伸縮することを特徴とする。
【0017】
上記の発明では、駆動部材の移動によりシリンジ室の容積が変化する。具体的には、例えばパルスモータによりボールねじ機構でピストンを移動させることにより、ピストンの移動量に応じてシリンジ室の容積が変化する。これにより、この容積変化分の非圧縮性液体がシリンジ室と送液用ベローズの内部室との間を移動し、この非圧縮性液体の移動量だけ送液用ベローズが伸縮する。
【0018】
このように、ポンプ室の容積を変化させて移送液を吸入、吐出させる部材としてリフト量が大きいベローズを用いているので、大容量の移送液を吐出させることができる。また、送液用ベローズの内部室に充填された非圧縮性液体により送液用ベローズを伸縮させているので、スピンレス法によるレジスト塗布等に使用する場合であっても配管抵抗等による負荷の影響を受けずに高いリニアリティで高精度に移送液を吐出させることができる。
【0019】
さらに上記の発明では、シリンジ室の外部で下方に延びる駆動部材の外周を下方ベローズで囲み、この下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズを駆動部材の側方に配置するとともに、下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる閉鎖空間に非圧縮性液体を充填している。
【0020】
吸入作動時には、駆動部材が下降することによって下方ベローズが下方に押し下げられて伸長し、下方ベローズの内容積は増加するが、この容積増加分だけ側方ベローズの内部室から下方ベローズの内部室に非圧縮性液体が流れ込むので、側方ベローズは収縮する。すなわち、非圧縮性液体が充填された前記閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズが伸長し、側方ベローズが収縮する。
【0021】
一方、吐出作動時には、駆動部材が上昇することによって下方ベローズが上方に押し上げられて収縮し、下方ベローズの内容積は減少するが、この容積減少分だけ下方ベローズの内部室から側方ベローズの内部室に非圧縮性液体が流れ込むので、側方ベローズは伸長する。すなわち、非圧縮性液体が充填された前記閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズが収縮し、側方ベローズが伸長する。
【0022】
このように、駆動部材とシリンジ本体との間をシールするシール部材のシリンジ室とは反対側が、非圧縮性液体を充填した空間で密閉されているので、外気の混入を防止することができる。
【0023】
さらに、吸入作動時にはシリンジ室が負圧となるが、側方ベローズから下方ベローズへ非圧縮性液体が流入することにより、シール部材のシリンジ室とは逆側も負圧となり、シール部材の両側の圧力差が小さくなる。また、吸入完了時には、送液用ベローズは自由長以下の長さに収縮しているので伸長する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室は負圧状態となる。しかし、側方ベローズも同様に自由長以下の長さに収縮しているので伸長する方向へ弾性力が作用し、これによってシール部材のシリンジ室とは逆側も負圧となり、シール部材の両側の圧力差が小さくなる。
【0024】
一方、吐出作動時にはシリンジ室が正圧となるが、下方ベローズから側方ベローズへ非圧縮性液体が流入することにより、シール部材のシリンジ室とは逆側も正圧となり、シール部材の両側の圧力差が小さくなる。また、吐出完了時には、送液用ベローズは自由長以上の長さに伸長しているので収縮する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室は正圧状態となる。しかし、側方ベローズも同様に自由長以上の長さに伸長しているので収縮する方向へ弾性力が作用し、これによってシール部材のシリンジ室とは逆側も正圧となり、シール部材の両側の圧力差が小さくなる。
【0025】
以上のように、本発明の定量送液ポンプによれば、シリンジ室に外気が混入するおそれがなく、またシール部材を介したシリンジ室の内外への液漏れ(液移動)が起きにくいので、長期に渡り高精度な吐出を維持できる。
【0026】
本発明の定量送液ポンプは、内部空間がポンプ室を構成し、径方向に膨張および収縮自在なチューブと、該ポンプ室へ移送液が吸入される吸入口と、該ポンプ室から前記移送液が吐出される吐出口と、前記チューブの外周側の空間で構成され非圧縮性液体が充填されるチューブ外周室と、が設けられたポンプヘッドと、
前記非圧縮性液体が充填され前記チューブ外周室と連通されたシリンジ室が設けられたシリンジ本体と、
前記シリンジ本体との間がシール部材によってシールされた状態で前記シリンジ室を軸方向に往復動することにより、該シリンジ室と前記チューブ外周室との間で前記非圧縮性液体を流出入させ、これにより前記チューブを膨張および収縮させる駆動部材と、
前記シリンジ室の外部で下方に延びる前記駆動部材の外周を囲み、その下端部が該駆動部材に固定され、該駆動部材の往復動に連動して伸縮する下方ベローズと、
前記駆動部材の側方に配置され、前記下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズと、を備え、
前記下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる空間であり、前記シール部材によって前記シリンジ室と仕切られた空間内に、非圧縮性液体が充填され、前記駆動部材の往復動による前記下方ベローズの伸縮に応じて、前記側方ベローズが、前記非圧縮性液体が充填された前記空間の容積を略一定に保つように連動しながら伸縮することを特徴とする。
【0027】
ここで、「チューブを膨張および収縮させる」という場合、内側および外側からの圧力が掛からない状態におけるチューブ形状を基準としてチューブが膨張、収縮するという意味ではなく、あくまでも、チューブが相対的に径方向への容積変化を起こすという意味である。
【0028】
上記の発明では、駆動部材の移動によりシリンジ室の容積が変化する。具体的には、例えばパルスモータによりボールねじ機構でピストンを移動させることにより、ピストンの移動量に応じてシリンジ室の容積が変化する。これにより、この容積変化分の非圧縮性液体がシリンジ室とチューブ外周室との間を移動し、この非圧縮性液体の移動量だけチューブが膨張および収縮する。
【0029】
このように、ポンプ室の容積を変化させて移送液を吸入、吐出させる部材としてチューブを用いているので、移送液はチューブ内のポンプ室を長手方向へストレートに流れて行く。すなわち、ポンプ室内における移送液の滞留が起こりにくくマイクロバブルの発生等が防止され、また、ポンプ室内にエアーが混入してもエアーの抜けが良く、エアーの滞留が起こりにくい。したがって、レジスト液等の移送液の性能が損なわれることがない。
【0030】
さらに上記の発明では、前述した発明と同様に、シリンジ室の外部で下方に延びる駆動部材の外周を下方ベローズで囲み、この下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズを駆動部材の側方に配置するとともに、下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる閉鎖空間に非圧縮性液体を充填している。このように構成することによって、前述した作用により、シリンジ室に外気が混入するおそれがなく、またシール部材を介したシリンジ室の内外への液漏れ(液移動)が起きにくいので、長期に渡り高精度な吐出を維持できる。
【0031】
上記の発明において、前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向に沿って延びる断面円弧状の凹部が複数設けられ、該複数の凹部が、前記チューブの周方向に均等な間隔で配置されていることが好ましい。
【0032】
また、前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向に沿って延びる平面部が複数設けられ、該領域の断面が、前記複数の平面部を辺とし、角部が丸みを有する多角形状であることが好ましい。例えば、前記チューブにおける両端部を除いた領域が、3つの平面部が設けられた断面三角形状または4つの平面部が設けられた断面四角形状であることが好ましい。
【0033】
また、前記チューブにおける両端部を除いた領域の断面が楕円形状であることが好ましい。
また、前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向へ螺旋状に延びる溝部が設けられていることが好ましい。
【0034】
レジスト塗布等の用途では、チューブの材質にはフッソ樹脂等が用いられるが、上記した各構成とすることによって、チューブの膨張、収縮時における径方向への応力に対してチューブは常に所定の形状変化をし、さらに、常に均一な形状変化をするので、チューブの耐久性が向上する。
【0035】
本発明の定量送液ポンプは、前記側方ベローズの収縮完了時および/または伸長完了時における該側方ベローズの先端部の位置を検知するセンサが設けられていることを特徴とする。
【0036】
シール部材の長期間の使用によりこれらが劣化し、液漏れ(液移動)が生じた場合、側方ベローズの収縮完了時および伸長完了時における停止位置が変化するが、側方ベローズの停止位置の変化をセンサで検知することによって、液漏れ等による異常を監視することができる。これによって、シール部材の交換時期を把握したり、側方ベローズの破壊を事前に防止したりすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の定量送液ポンプによれば、大容量の薬液を高い定量精度で吐出させることができ、さらに、長期に渡り正確な吐出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明の一実施形態における定量送液ポンプを示した断面図である。この定量送液ポンプは、液晶ディスプレイ基板にレジスト液を塗布する際に、基板の上方で吐出ヘッドを基板に対して相対移動させながら細線状のレジスト液を連続的に吐出させるスピンレス法によるレジスト塗布装置に用いられる。
【0039】
この定量送液ポンプは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などのフッ素樹脂で形成された円筒形状のポンプヘッド24と、同様にフッ素樹脂で形成された送液用ベローズ25とを備えている。ポンプヘッド24の内部における送液用ベローズ25の外周側の空間は、ポンプ室28を構成する。
【0040】
送液用ベローズ25は、ポンプヘッド24の内部に配置され、水平方向に伸縮することによりポンプ室28の容積を変化させる。
送液用ベローズ25が収縮すると、図示しないレジスト液貯槽からレジスト液が吸入され、吸入側配管46、吸入側空気作動弁45、吸入側継手44を通りポンプヘッド24の吸入口47からポンプ室28にレジスト液が収容される。
【0041】
送液用ベローズ25が伸長すると、ポンプ室28に収容されたレジスト液は、ポンプヘッド24の吐出口48から吐出側継手41、吐出側空気作動弁42、吐出側配管43を通り、図示しないフィルタ、弁等を通過して吐出ヘッドからレジスト液が吐出される。
【0042】
本実施形態では、送液用ベローズ25の形状を、蛇腹部が先端部に向かって縮径する形状、すなわち、断面が台形状である、先端側を切断した円錐形状としている。スピンレス法によるレジスト塗布では、配管抵抗等によりレジスト液圧が高くなるが、送液用ベローズ25の形状をこのようにすることで、外側からレジスト液の圧力が負荷されても送液用ベローズ25は伸縮軸からずれた変形をすることがなく、座屈が防止される。したがって、送液用ベローズ25が座屈してポンプヘッド24の内壁に接触することによるパーティクルの発生を防止することができる。しかし、場合に応じて送液用ベローズ25の形状を他の形状、例えば円筒形状としてもよい。
【0043】
送液用ベローズ25とポンプヘッド24は、ポンプヘッド押さえ27とポンプヘッド台26によって挟み込んで不図示のねじで固定されている。ポンプヘッド台26のポンプヘッド24と逆側の面には、ステンレス等の金属材で形成されたシリンジ本体13が固定されている。シリンジ本体13の内部のシリンジ室17には、シリンジ室17を軸方向に往復動するピストンロッド10が、シール部材15,16を介して摺動自在に設けられている。なお、ピストンロッド10は後述のロッド固定台9と共に、駆動部材を構成している。
【0044】
シリンジ室17は、送液用ベローズ25の内部室である送液用ベローズ室29と連通され、シリンジ室17および送液用ベローズ室29には、シリコーンオイル等の非圧縮性液体が充填されている。この非圧縮性液体は、シリンジ栓14の位置に設けられた開口からシリンジ室17および送液用ベローズ室29に注入され、非圧縮性液体を充填した後にシリンジ栓14によって封止される。
【0045】
ピストンロッド10がシリンジ室17を軸方向に往復動することにより、シリンジ室17の容積が変化し、この容積変化分に応じた量の非圧縮性液体がシリンジ室17と送液用ベローズ室29との間で流出入し、これにより送液用ベローズ25が伸縮してレジスト液が吸入、吐出される。
【0046】
ピストンロッド10は、ボールねじ機構によって、パルスモータ1の回転量に比例した
量だけ上下に移動する。パルスモータ1は、モータ固定台3の下部に固定されている。パルスモータ1のモータ軸2は、軸ぶれを補正可能なカップリング5によりボールねじ軸7と連結されている。
【0047】
モータ固定台3の上部には、台座4が固定されている。パルスモータ1と台座4は、モータ固定台3により、モータ軸2とボールねじ軸7との軸ぶれを無くすように、所定の嵌め合い公差で連結される。台座4にはサポートガイド6が固定され、サポートガイド6が内蔵するボールベアリングによりボールねじ軸7が回転自在に支持されている。
【0048】
ボールねじ軸7は、ロッド固定台9の下部貫通穴に固定されたボールねじナット8に螺合され、ロッド固定台9の上部穴に固定された円筒形状のピストンロッド10の内部空間に、ボールねじナット8を貫通した部分が内包されている。
【0049】
四角形状のロッド固定台9の側面には、リニアブッシュ18が取り付けられ、リニアブッシュ18は、円柱状のシャフト19に摺動自在に支持されている。
シャフト19は、下部側が台座4に、上部側がシャフト固定台20に固定されている。リニアブッシュ18は、円柱状のシャフト19を内包して摺動自在に支持されていることから、回転方向への移動が抑制され、これによりボールねじ軸7の回転に伴うボールねじナット8の回転が抑制される。したがって、ボールねじ軸7の回転がボールねじナット8の上下方向への直線運動に変換される。
【0050】
パルスモータ1の駆動により、モータ軸2と連結されたボールねじ軸7が回転し、ボールねじ軸7の回転がボールねじナット8により直線運動に変換され、これによりピストンロッド10がシリンジ室17を軸方向に移動する。
【0051】
ロッド固定台9の側方には、センサ固定台21に固定されたフォトセンサ22が設けられている。フォトセンサ22は、ロッド固定台9に取り付けられた反射板23の位置を、反射板23からの反射光の有無を検知することによってピストンロッド10の吸入終了位置または吐出開始位置を特定する。
【0052】
本実施形態では、シリンジ室17の外部で下方に延びるピストンロッド10の外周を囲み、ピストンロッド10の往復動に連動して伸縮する下方ベローズ30が設けられている。
【0053】
下方ベローズ30は、上端部がベローズ押さえリング32によってシリンジ台座11に固定され、下端部がベローズ押さえリング31によってロッド固定台9に固定されている。
【0054】
さらに、ピストンロッド10の側方に、側方ベローズ36が設けられている。側方ベローズ36は、ベローズ押さえリング37によってベローズ台座34に固定されている。
ベローズ台座34はシリンジ台座11に固定され、これらのベローズ台座34およびシリンジ台座11に形成された連通孔を介して、下方ベローズ30の内部室である下方ベローズ室33と、側方ベローズ36の内部室である側方ベローズ室38とが連通部80を介して連通されている。
【0055】
下方ベローズ室33から側方ベローズ室38までの内部空間(以下、「閉鎖空間」という)には、シリコーンオイル等の非圧縮性液体が充填されている。この非圧縮性液体は、シリンジ栓35の位置に設けられた開口から閉鎖空間に注入され、非圧縮性液体を充填した後にシリンジ栓35によって封止される。
【0056】
下部側パッキン15および上部側パッキン16で仕切られたシリンジ室17とは反対側の領域は、非圧縮性液体を充填した上記の閉鎖空間で密閉されている。図4に拡大して示したように、下部側パッキン15は、シリンジ本体13の一部であるパッキン台座12と、シリンジ台座11との間に収納され、上部側パッキン16は、シリンジ本体13とパッキン台座12との間に収納されている。
【0057】
下部側パッキン15と上部側パッキン16は、断面がU字状であり、U字の内面に非圧縮性液体の液圧が作用すると外側へ開くように変形する。例えば、断面U字状の耐摩耗性が高い樹脂材のU字内面側にステンレス等によるばねを組み込んだものなどを使用することができる。
【0058】
下部側パッキン15と上部側パッキン16は、U字の開放側が互いに反対方向を向くように、すなわち下部側パッキン15におけるU字の開放側が下向きとなり、上部側パッキン16におけるU字の開放側が上向きとなるように配置されている。
【0059】
シリンジ室17の液圧が高まると、上部側パッキン16のU字内面に非圧縮性液体の圧力が掛かり、U字の両側面が開いてピストンロッド10およびシリンジ本体13に密着してシール性が高まるようになっている。
【0060】
また、下部側パッキン15の下方における、下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間の液圧が高まると、下部側パッキン15のU字内面に非圧縮性液体の圧力が掛かり、U字の両側面が開いてピストンロッド10およびパッキン台座12に密着してシール性が高まるようになっている。
【0061】
なお、ピストンロッド10の外周面とシリンジ本体13の内周面との間には、上部側パッキン16のU字内面に適度に液圧が掛かるように若干の隙間が設けられ、ピストンロッド10の外周面とシリンジ台座11の内周面との間も同様に、下部側パッキン15のU字内面に適度に液圧が掛かるように若干の隙間が設けられている。
【0062】
以下、図2および図3を参照しながら下方ベローズ30および側方ベローズ36の作用について説明する。図2は吸入作動時の状態を示している。吸入作動時には、ピストンロッド10が下降することによって下方ベローズ30が下方に押し下げられて伸長し、下方ベローズ室33の容積は増加する。一方、この容積増加分だけ側方ベローズ室38から下方ベローズ室33に非圧縮性液体52´が流れ込むので、側方ベローズ36は収縮する。すなわち、非圧縮性液体52´が充填された閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズ30が伸長し、側方ベローズ36が収縮する。
【0063】
吸入作動時には、シリンジ室17は負圧状態となるが、側方ベローズ室38から下方ベローズ室33へ非圧縮性流体52´が流れ込むことによって、下部側パッキン15の下方は若干の負圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側の圧力差が少なくなる。
【0064】
また、吸入完了時には、送液用ベローズ25は自由長以下の長さに収縮した状態であるので、伸長する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室17は若干の負圧状態となる。しかし、側方ベローズ36も同様に自由長以下の長さに収縮した状態であるので、伸長する方向へ弾性力が作用し、これによって下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間も若干の負圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側、すなわちシリンジ室17と閉鎖空間との圧力差が少なくなる。
【0065】
一方、図3に示した吐出作動時には、ピストンロッド10が上昇することによって下方ベローズ30が上方に押し上げられて収縮し、下方ベローズ室33の容積は減少する。一方、この容積減少分だけ下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に非圧縮性液体52´が流れ込むので、側方ベローズ36は伸長する。すなわち、非圧縮性液体52´が充填された閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズ30が収縮し、側方ベローズ36が伸長する。
【0066】
吐出作動時には、シリンジ室17は正圧状態となるが、下方ベローズ室33から側方ベローズ室38へ非圧縮性流体52´が流れ込むことによって、下部側パッキン15の下方は若干の正圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側の圧力差が少なくなる。
【0067】
また、吐出完了時には、送液用ベローズ25は自由長以上の長さに伸長した状態であるので、収縮する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室17は若干の正圧状態となる。しかし、側方ベローズ36も同様に自由長以上の長さに伸長した状態であるので、収縮する方向へ弾性力が作用し、これによって下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間も若干の正圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側、すなわちシリンジ室17と閉鎖空間との圧力差が少なくなる。
【0068】
このように、下部側パッキン15および上部側パッキン16のシリンジ室17とは反対側が、非圧縮性液体52´を充填した閉鎖空間で密閉されているので、シリンジ室17へ外気が混入することがない。さらに、ピストンロッド10の上下動による下方ベローズ30の伸長、収縮に連動して側方ベローズ36が逆方向に収縮、伸長することにより、パッキンの片側が大気接触である場合に比べて、吸入時と吐出時のいずれの場合も下部側パッキン15および上部側パッキン16を境界とした上下の圧力差が少なく、シリンジ室17と閉鎖空間との間で非圧縮性液体が流出入して液漏れが生じることを抑制できる。また、空気の分子量に比べて非圧縮性流体の方が分子量が大きいことも、液漏れ防止に有効に作用する。また、下方ベローズ30を設けているため、ピストンロッド10に塵埃が付着することによりシール部材のパッキン15,16を傷つけることがないので、パッキン15,16の寿命が長くなる。
【0069】
本実施形態では、側方ベローズ36の先端部からやや離間した位置に、ベローズストッパ39を配置している。例えばシリンジ室17からの液漏れが生じて、下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間に液漏れした非圧縮性液体52が流れ込むと、閉鎖空間の容積が増大して、吐出時に側方ベローズ36が過剰に伸びて破壊するおそれがある。しかし、ベローズストッパ39を配置することによって、側方ベローズ36がベローズストッパ39の位置まで伸長するとベローズストッパ39に突き当たってそれ以上伸びることがないため、側方ベローズ36の破壊を防止することができる。
【0070】
また、ベローズストッパ39には、センサ40が設置されている。このセンサ40は、側方ベローズ36の収縮完了時、伸長完了時、あるいはこれらの双方の時点における側方ベローズ36の先端部の位置を検知する。センサ40として、公知である各種の光学センサ等を使用することができる。
【0071】
下部側パッキン15および上部側パッキン16の長期間の使用によりこれらが劣化し、液漏れ(液移動)が生じた場合、側方ベローズ36の収縮完了時および伸長完了時における停止位置が変化する。すなわち、シリンジ室17へ非圧縮性液体52´が流入した場合には、側方ベローズ36の停止位置がセンサ40から離れる方向へ移動する。一方、シリンジ室17から非圧縮性液体52が流出した場合には、側方ベローズ36の停止位置がセ
ンサ40に近づく方向へ移動する。
【0072】
側方ベローズ36の停止位置の変化をセンサ40で検知することによって、液漏れによる異常を監視することができる。これによって、下部側パッキン15および上部側パッキン16の交換時期を把握したり、側方ベローズ36の破壊を事前に防止したりすることができる。
【0073】
図5は、本発明の他の実施形態における定量送液ポンプを示した断面図である。この定量送液ポンプは、上述した実施形態と同様に、液晶ディスプレイ基板にレジスト液を塗布する際に、基板の上方で吐出ヘッドを基板に対して相対移動させながら細線状のレジスト液を連続的に吐出させるスピンレス法によるレジスト塗布装置に用いられる。
【0074】
なお、上述した実施形態に対応する各部材等は同一の符号で示しその詳細な説明を省略する。
本実施形態の定量送液ポンプは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂などのフッ素樹脂で形成された円筒形状のポンプヘッド24と、同様にフッ素樹脂で形成されたチューブ61とを備えている。チューブ61の内部空間は、レジスト液が収容されるポンプ室28を構成し、ポンプヘッド24の内部におけるチューブ61の外周側の空間は、非圧縮性液体が収容されるチューブ外周室62を構成する。
【0075】
チューブ61は、ポンプヘッド24の内部に配置され、径方向に膨張および収縮することによりポンプ室28の容積を変化させる。
チューブ61が膨張すると、図示しないレジスト液貯槽からレジスト液が吸入され、吸入側配管46、吸入側空気作動弁45、吸入側継手44を通りポンプヘッド24の吸入口47からポンプ室28にレジスト液が収容される。
【0076】
チューブ61が収縮すると、ポンプ室28に収容されたレジスト液は、ポンプヘッド24の吐出口48から吐出側継手41、吐出側空気作動弁42、吐出側配管43を通り、図示しないフィルタ、弁等を通過して吐出ヘッドからレジスト液が吐出される。
【0077】
吸入側継手44は、吸入側継手台64によってポンプヘッド24に固定されている。チューブ61の吸入側端部は、吸入側ベース63によって、吸入口47がチューブ61の内部に連通するように吸入側継手台64に固定されている。
【0078】
吐出側継手41は、吐出側継手台66によってポンプヘッド24に固定されている。チューブ61の吐出側端部は、吐出側ベース65によって、吐出口48がチューブ61の内部に連通するように吐出側継手台66に固定されている。
【0079】
チューブ61を固定する方法としては、例えば、PTFE樹脂、PTA樹脂などの溶着による方法、Oリングを用いる方法などを挙げることができる。
ポンプヘッド24は、ポンプヘッド台26に不図示のねじで固定されている。ポンプヘッド台26のポンプヘッド24と逆側の面には、ステンレス等の金属材で形成されたシリンジ本体13が固定されている。シリンジ本体13の内部のシリンジ室17には、シリンジ室17を軸方向に往復動するピストンロッド10が、シール部材15,16を介して摺動自在に設けられている。なお、ピストンロッド10は後述のロッド固定台9と共に、駆動部材を構成している。
【0080】
シリンジ室17は、チューブ外周室62と連通され、シリンジ室17およびチューブ外周室62には、シリコーンオイル等の非圧縮性液体が充填されている。この非圧縮性液体は、シリンジ栓14の位置に設けられた開口からシリンジ室17およびチューブ外周室6
2に注入され、非圧縮性液体を充填した後にシリンジ栓14によって封止される。
【0081】
ピストンロッド10がシリンジ室17を軸方向に往復動することにより、シリンジ室17の容積が変化し、この容積変化分に応じた量の非圧縮性液体がシリンジ室17とチューブ外周室62との間で流出入し、これによりチューブ61が膨張および収縮してレジスト液が吸入、吐出される。
【0082】
シリンジ本体13からパルスモータ1までの構成は上述した実施形態と同様であり、パルスモータ1の駆動により、モータ軸2と連結されたボールねじ軸7が回転し、ボールねじ軸7の回転がボールねじナット8により直線運動に変換され、これによりピストンロッド10がシリンジ室17を軸方向に移動する。また、下部側パッキン15および上部側パッキン16も上述した実施形態と同様のものを使用している。
【0083】
また、上述した実施形態と同様に、シリンジ室17の外部で下方に延びるピストンロッド10の外周を囲み、ピストンロッド10の往復動に連動して伸縮する下方ベローズ30が設けられ、ピストンロッド10の側方には、側方ベローズ36が設けられている。下方ベローズ室33から側方ベローズ室38までの閉鎖空間には、シリコーンオイル等の非圧縮性液体が充填されている。
【0084】
以下、図6および図7を参照しながら下方ベローズ30および側方ベローズ36の作用について説明する。図6は吸入作動時の状態を示している。吸入作動時には、ピストンロッド10が下降することによって下方ベローズ30が下方に押し下げられて伸長し、下方ベローズ室33の容積は増加する。一方、この容積増加分だけ側方ベローズ室38から下方ベローズ室33に非圧縮性液体52´が流れ込むので、側方ベローズ36は収縮する。すなわち、非圧縮性液体52´が充填された閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズ30が伸長し、側方ベローズ36が収縮する。
【0085】
吸入作動時には、シリンジ室17は負圧状態となるが、側方ベローズ室38から下方ベローズ室33へ非圧縮性流体52´が流れ込むことによって、下部側パッキン15の下方は若干の負圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側の圧力差が少なくなる。
【0086】
また、吸入完了時には、チューブ61は径方向に膨張した状態であるので、収縮する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室17は若干の負圧状態となる。しかし、側方ベローズ36は自由長以下の長さに収縮した状態であるので、伸長する方向へ弾性力が作用し、これによって下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間も若干の負圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側、すなわちシリンジ室17と閉鎖空間との圧力差が少なくなる。
【0087】
一方、図7に示した吐出作動時には、ピストンロッド10が上昇することによって下方ベローズ30が上方に押し上げられて収縮し、下方ベローズ室33の容積は減少する。一方、この容積減少分だけ下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に非圧縮性液体52´が流れ込むので、側方ベローズ36は伸長する。すなわち、非圧縮性液体52´が充填された閉鎖空間の全体としての容積を一定に保ちながら下方ベローズ30が収縮し、側方ベローズ36が伸長する。
【0088】
吐出作動時には、シリンジ室17は正圧状態となるが、下方ベローズ室33から側方ベローズ室38へ非圧縮性流体52´が流れ込むことによって、下部側パッキン15の下方は若干の正圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側の圧力差が少なくなる。
【0089】
また、吐出完了時には、チューブ61は径方向に収縮した状態であるので、膨張する方向へ弾性力が作用し、これによってシリンジ室17は若干の正圧状態となる。しかし、側方ベローズ36は自由長以上の長さに伸長した状態であるので、収縮する方向へ弾性力が作用し、これによって下方ベローズ室33から側方ベローズ室38に至る閉鎖空間も若干の正圧状態となる。このため、下部側パッキン15および上部側パッキン16を介した両側、すなわちシリンジ室17と閉鎖空間との圧力差が少なくなる。
【0090】
このように、下部側パッキン15および上部側パッキン16のシリンジ室17とは反対側が、非圧縮性液体52´を充填した閉鎖空間で密閉されているので、シリンジ室17へ外気が混入することがない。さらに、ピストンロッド10の上下動による下方ベローズ30の伸長、収縮に連動して側方ベローズ36が逆方向に収縮、伸長することにより、パッキンの片側が大気接触である場合に比べて、吸入時と吐出時のいずれの場合も下部側パッキン15および上部側パッキン16を境界とした上下の圧力差が少なく、シリンジ室17と閉鎖空間との間で非圧縮性液体が流出入して液漏れが生じることを抑制できる。また、空気の分子量に比べて非圧縮性流体の方が分子量が大きいことも、液漏れ防止に有効に作用する。また、下方ベローズ30を設けているため、ピストンロッド10に塵埃が付着することによりシール部材のパッキン15,16を傷つけることがないので、パッキン15,16の寿命が長くなる。
【0091】
本発明では、チューブ61の形状は特に限定されないが、本実施形態のようにチューブ61の材質としてフッソ樹脂等の樹脂材を用いる場合、断面が真円形状である円筒状のチューブを使用すると、外側からの非圧縮性液体による押圧で径方向へ収縮する際に、収縮の仕方が一定とはならず、無理な歪みが生じたりすることがある。このため、繰り返しの膨張、収縮によりチューブが疲労損傷し易くなり、チューブの耐久性が低くなる。このため、チューブ61の形状を以下の形状とすることが好ましい。なお、図8〜図11において、(a)はチューブ61の全体図、(b)はそのA−A線断面図である。
【0092】
図8および図9に示したチューブ61では、チューブ61における両端部を除いた領域に、チューブ61の長手方向に沿って延びる断面円弧状の凹部71を複数設けている。これらの凹部71は、チューブ61の周方向に均等な間隔で配置されている。図8では3つの凹部71がチューブ61の周方向に均等な間隔で配置され、図9では4つの凹部71がチューブ61の周方向に均等な間隔で配置されている。
【0093】
このようにすることで、チューブ61の膨張、収縮時における径方向への応力に対してチューブ61は凹部71を基準として常に一定且つ均一な形状変化をするので、チューブ61の耐久性が向上する。
【0094】
図10および図11に示したチューブ61では、チューブ61における両端部を除いた領域に、チューブ61の長手方向に沿って延びる平面部72が複数設けられている。当該領域の断面は、複数の平面部72を辺とし、角部が丸みを有する多角形状とされている。
【0095】
図10では、チューブ61における両端部を除いた領域が、3つの平面部72が設けられた断面三角形状となっている。図11では、チューブ61における両端部を除いた領域が、4つの平面部72が設けられた断面四角形状となっている。
【0096】
このようにすることで、チューブ61の膨張、収縮時における径方向への応力に対してチューブ61は平面部72を基準として常に一定且つ均一な形状変化をするので、チューブ61の耐久性が向上する。
【0097】
図12に示したチューブ61では、チューブ61における両端部を除いた領域73の断面が楕円形状とされている。この楕円形状は、短軸方向と長軸方向が規定されていれば真の楕円からやや外れた形状であってもよい。
【0098】
このようにすることで、チューブ61の膨張、収縮時における径方向への応力に対してチューブ61は楕円の短軸方向へ常に一定且つ均一な形状変化をするので、チューブ61の耐久性が向上する。
【0099】
図13に示したチューブ61では、チューブ61における両端部を除いた領域に、チューブ61の長手方向へ螺旋状に延びる溝部74が設けられている。このようにすることで、チューブ61の膨張、収縮時における径方向への応力に対してチューブ61は螺旋状の溝部74を基準として常に一定且つ均一な形状変化をするので、チューブ61の耐久性が向上する。
【0100】
なお、図1〜図7において、パッキン15,16以外のシール部材(例えば送液用ベローズ25とポンプヘッド台26とのシール、シリンジ栓14,35のシール等のためのシール部材)は、発明の構成を分かり易くするために省略してある。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における定量送液ポンプを示した断面図である。
【図2】図2は、ポンプ室へレジスト液を吸入する作動状態を示した図1の定量送液ポンプの断面図である。
【図3】図3は、ポンプ室からレジスト液を吐出する作動状態を示した図1の定量送液ポンプの断面図である。
【図4】図4は、パッキンの周辺を示した拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態における定量送液ポンプを示した断面図である。
【図6】図6は、ポンプ室へレジスト液を吸入する作動状態を示した図5の定量送液ポンプの断面図である。
【図7】図7は、ポンプ室からレジスト液を吐出する作動状態を示した図5の定量送液ポンプの断面図である。
【図8】図8は、チューブ形状の一例を示した図であり、図8(a)はチューブの斜視図、図8(b)はそのA−A線断面図である。
【図9】図9は、チューブ形状の他の例を示した図であり、図9(a)はチューブの斜視図、図9(b)はそのA−A線断面図である。
【図10】図10は、チューブ形状の他の例を示した図であり、図10(a)はチューブの斜視図、図10(b)はそのA−A線断面図である。
【図11】図11は、チューブ形状の他の例を示した図であり、図11(a)はチューブの斜視図、図11(b)はそのA−A線断面図である。
【図12】図12は、チューブ形状の他の例を示した図であり、図12(a)はチューブの斜視図、図12(b)はそのA−A線断面図である。
【図13】図13は、チューブ形状の他の例を示した斜視図である。
【図14】図14は、従来の定量送液ポンプの断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 パルスモータ
2 モータ軸
3 モータ固定台
4 台座
5 カップリング
6 サポートガイド
7 ボールねじ軸
8 ボールねじナット
9 ロッド固定台
10 ピストンロッド
11 シリンジ台座
12 パッキン台座
13 シリンジ本体
14 シリンジ栓
15 下部側パッキン
16 上部側パッキン
17 シリンジ室
18 リニアブッシュ
19 シャフト
20 シャフト固定台
21 センサ固定台
22 フォトセンサ
23 反射板
24 ポンプヘッド
25 送液用ベローズ
26 ポンプヘッド台
27 ポンプヘッド押さえ
28 ポンプ室
29 送液用ベローズ室
30 下方ベローズ
31 ベローズ押さえリング
32 ベローズ押さえリング
33 下方ベローズ室
34 ベローズ台座
35 シリンジ栓
36 側方ベローズ
37 ベローズ押さえリング
38 側方ベローズ室
39 ベローズストッパ
40 センサ
41 吐出側継手
42 吐出側空気作動弁
43 吐出側配管
44 吸入側継手
45 吸入側空気作動弁
46 吸入側配管
47 吸入口
48 吐出口
51 レジスト液
52,52´ 非圧縮性液体
61 チューブ
62 チューブ外周室
63 吸入側ベース
64 吸入側継手台
65 吐出側ベース
66 吐出側継手台
71 凹部
72 平面部
73 チューブの両端部を除いた領域
74 溝部
80 連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、該ポンプ室へ移送液が吸入される吸入口と、該ポンプ室から前記移送液が吐出される吐出口と、非圧縮性液体が内部室に充填され、伸縮によって前記ポンプ室の容積を変化させる送液用ベローズと、が設けられたポンプヘッドと、
前記非圧縮性液体が充填され前記送液用ベローズの内部室と連通されたシリンジ室が設けられたシリンジ本体と、
前記シリンジ本体との間がシール部材によってシールされた状態で前記シリンジ室を軸方向に往復動することにより、該シリンジ室と前記送液用ベローズの内部室との間で前記非圧縮性液体を流出入させ、これにより前記送液用ベローズを伸縮させる駆動部材と、
前記シリンジ室の外部で下方に延びる前記駆動部材の外周を囲み、その下端部が該駆動部材に固定され、該駆動部材の往復動に連動して伸縮する下方ベローズと、
前記駆動部材の側方に配置され、前記下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズと、を備え、
前記下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる空間であり、前記シール部材によって前記シリンジ室と仕切られた空間内に、非圧縮性液体が充填され、前記駆動部材の往復動による前記下方ベローズの伸縮に応じて、前記側方ベローズが、前記非圧縮性液体が充填された前記空間の容積を略一定に保つように連動しながら伸縮することを特徴とする定量送液ポンプ。
【請求項2】
内部空間がポンプ室を構成し、径方向に膨張および収縮自在なチューブと、該ポンプ室へ移送液が吸入される吸入口と、該ポンプ室から前記移送液が吐出される吐出口と、前記チューブの外周側の空間で構成され非圧縮性液体が充填されるチューブ外周室と、が設けられたポンプヘッドと、
前記非圧縮性液体が充填され前記チューブ外周室と連通されたシリンジ室が設けられたシリンジ本体と、
前記シリンジ本体との間がシール部材によってシールされた状態で前記シリンジ室を軸方向に往復動することにより、該シリンジ室と前記チューブ外周室との間で前記非圧縮性液体を流出入させ、これにより前記チューブを膨張および収縮させる駆動部材と、
前記シリンジ室の外部で下方に延びる前記駆動部材の外周を囲み、その下端部が該駆動部材に固定され、該駆動部材の往復動に連動して伸縮する下方ベローズと、
前記駆動部材の側方に配置され、前記下方ベローズと内部室が連通した側方ベローズと、を備え、
前記下方ベローズおよび側方ベローズの内部室と、これらの内部室を連通させる連通部とからなる空間であり、前記シール部材によって前記シリンジ室と仕切られた空間内に、非圧縮性液体が充填され、前記駆動部材の往復動による前記下方ベローズの伸縮に応じて、前記側方ベローズが、前記非圧縮性液体が充填された前記空間の容積を略一定に保つように連動しながら伸縮することを特徴とする定量送液ポンプ。
【請求項3】
前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向に沿って延びる断面円弧状の凹部が複数設けられ、該複数の凹部が、前記チューブの周方向に均等な間隔で配置されていることを特徴とする請求項2に記載の定量送液ポンプ。
【請求項4】
前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向に沿って延びる平面部が複数設けられ、該領域の断面が、前記複数の平面部を辺とし、角部が丸みを有する多角形状であることを特徴とする請求項2に記載の定量送液ポンプ。
【請求項5】
前記チューブにおける両端部を除いた領域の断面が楕円形状であることを特徴とする請求項2に記載の定量送液ポンプ。
【請求項6】
前記チューブにおける両端部を除いた領域に、該チューブの長手方向へ螺旋状に延びる溝部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の定量送液ポンプ。
【請求項7】
前記側方ベローズの収縮完了時および/または伸長完了時における該側方ベローズの先端部の位置を検知するセンサが設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の定量送液ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−266250(P2006−266250A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153757(P2005−153757)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】