説明

家具駆動装置

本発明は、電動モータと、駆動対象の家具部分に駆動力を作用させるために2端部間で往復するアクチュエータと、電動モータとアクチュエータとの間に連結されたトランスミッションとを含んだ、可動家具部分を駆動させるための家具駆動装置に関する。トランスミッションは、2つの相互に噛合する歯車を備えた偏心トランスミッションの形態である少なくとも一つの伝達段階を有し、偏心トランスミッション(6)がアクチュエータ(4)の端部位置に対応して2つの端部位置を有するように、2つの歯車(7、8)の一方は、アクチュエータ(4)に固定式に接続または連結されており、もう一方の歯車(7、8)は、電動モータ(3)に連結されており、2つの端部位置の第1の端部から他方の端部への歯車(7、8)の回転で伝達比が連続的に減少することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、駆動対象の家具部分に駆動力を作用させるために2端部間で往復するアクチュエータ(作動器)と、電動モータとアクチュエータとの間に連結されたトランスミッションとを含んだ、可動家具部分を駆動させるための家具駆動装置に関し、トランスミッションは、2つの相互に噛合する歯車を備えた偏心トランスミッションの形態である少なくとも一つの伝達段階を有する。
【背景技術】
【0002】
様々な理由(調達コスト、必要容積、必要動力)で、できる限り小さく、さらにトルク制御のための複雑な電子制御システムを必要とせずに好都合に運行させる電動モータを使用することが望ましい。
【0003】
本出願が優先権主張するオーストリア特許出願A1542/2007は、L型レバー構成物によって達成される変動伝達比を有する家具駆動装置を開示している。
【0004】
EP1194708B1は、偏心トランスミッションの形態の伝達段階を備えたアクチュエータを駆動させるための駆動装置について解説しており、その偏心トランスミッションは、2つの相互に噛合する歯車を有する。その明細書は、トランスミッションに使用する多くの状況において、最大駆動出力トルクは、一位置のみで要求され、その点に関してそのような必要条件は、例えば閉機能を実行する伝達に関して生じると説明する。
【0005】
前記の明細書によれば、電動モータと、一定の伝達比を有するトランスミッションとを利用する駆動装置は、一般的に高い伝達比を要することになる。電動モータで最大トルクを達成するには、まず伝達比レベルが非常に高くなければならないという弱点がある。加えて、高い伝達比は、伝達のための長いセッテイング時間も必要である。
【0006】
一定した伝達比を備えたトランスミッションの代わりに、EP1194708B1は、2段階伝達を提案しており、第1伝達段階は、波形トランスミッション(調和駆動トランスミッション)の形態であり、第2段階は、偏心トランスミッションの形態である。
【0007】
この明細書は、有利な伝達比設定の例については説明していない。着目点は、トルクとセッテイング時間との間の相互作用に向けられている。
【0008】
EP1194708B1の内容は、比率が従属的な役割だけを果たす状況での使用状況におけるトルクとセッテイング時間との間の比の固定化のために非常に限られている。
【0009】
EP1898036A1は、2つの相互に噛合する歯車を有する偏心トランスミッションを備えた車両用のフラップのための運転用アクチュエータを開示している。この明細書は、モータ車両(自動車)用のフラップに関して、閉工程中にシール(Seal)によって発生する反作用力を克服するために十分に高いトルクを備えたモータ車両用のフラップに作用することが必要であると解説している。これは、閉動作の大部分で車両用フラップが比較的に低い伝達比によって発動されることで解決される。モータ車両フラップが閉位置に接近するとき、特にシールに対して押圧されるときにより高い伝達比で駆動される。
【0010】
車両フラップは、多くの場合に手動で開けられるという事実のおかげで、EP1898036A1においては、開動作は解説されていない。
【0011】
よって、EP1898036A1は、2端部間で往復するアクチュエータを有する前述の一般的な種類の家具駆動装置には関係しない。
【0012】
DE19739851A1は、さらにかけ離れた従来技術を開示している。この明細書は、単体の電動モータによって駆動される、2本の前面ガラスワイパーレバーを備えた前面ガラスワイパー装置について説明しており、設定領域で前面ガラスワイパーの往復運動を減速または加速するための偏心トランスミッションが提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、よく知られた偏心トランスミッションを利用しており、可動家具部分の動作の全行程において伝達比が一定である家具駆動装置よりも有利な運行特性を有する家具駆動装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項1の特徴を有する家具駆動装置によってこの目的を達成する。
【0015】
偏心トランスミッションの2つの歯車の一方のアクチュエータへの固定接続と、偏心トランスミッションの2つの歯車が互いに噛合するという事実とがアクチュエータと、偏心トランスミッションの2つの歯車の相対的位置との間の1:1対応の存在を確実にする。特にその結果、偏心トランスミッションは、アクチュエータの位置に対応して2つの端部位置を有する。この方策は、2つの端部位置の第1の端部から他方の端部への偏心トランスミッションの歯車の回転で伝達比が連続的に減少することを可能にする。
【0016】
よって、本発明の家具駆動装置においては、偏心トランスミッションの第1位置から開始するトランスミッションによって、並びに前述の対応によって、アクチュエータに対する電動モータによって発生するトルクが、アクチュエータの対応する端部位置の領域においても最大になる。家具枠体に家具駆動装置が取り付けられた状態で、アクチュエータが駆動対象の家具部分に接続されている状態では、アクチュエータの端部位置は、駆動対象の家具部分の閉位置または完全開位置にそれぞれ対応している。従って、本発明では、第1端部位置(家具部分の閉位置)から開始する場合には、電動モータがゆっくりと開始するときに特に高速であり、最良レベルのトルクが利用できる。
【0017】
この好適実施態様では、家具部分は、重力のおかげで開端部から動作をさらに容易に開始でき、自動引込機構に組み込まれる力保存手段が存在しないフラップ戸である。閉位置から動作を開始することは、本発明の方策により最大トルクが利用可能となることによってさらに容易になる。
【0018】
偏心トランスミッションの2つの歯車の一方のアクチュエータへの固定接続または連結は、家具駆動装置の取り付けまたは部材の取替えなどを可能にするため当然に取り外しが可能である。唯一の必須要素は、家具駆動装置の運行中、接続または連結によってアクチュエータの端部位置と偏心トランスミッションの端部位置との間の対応を確実に提供できることである。
【0019】
本発明の別な利点は、「請求の範囲」で定義されている。
【0020】
本発明による家具駆動装置を有する可動式に取り付けられた家具部分(フラップ戸、ドアまたは引出しなど)を有する家具もまた本発明の対象である。
【0021】
本発明のさらに別な利点および詳細は、図面と関連する説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明による家具駆動装置の斜視図である。
【図2】図2aと図2bは、図1の家具駆動装置の電動モータとアクチュエータとの間の駆動力伝達を前方と後方からそれぞれ示した斜視図である。
【図3】図3は、図2aと図2bに対応する図であるが、動力伝達に直接関係しない全ての部品を省略したものである。
【図4a】図4aは、本発明による家具駆動装置で使用される偏心トランスミッションを示している。
【図4b】図4bは、本発明による家具駆動装置で使用される偏心トランスミッションを異なる位置で示している。
【図4c】図4cは、本発明による家具駆動装置で使用される偏心トランスミッションを異なる位置で示している。
【図5a】図5aは、家具枠体に取り付けられた状態の本発明による家具駆動装置を示している。
【図5b】図5bは、家具枠体に取り付けられた状態の本発明による家具駆動装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施態様では、図1の家具駆動装置1は、2つの解放可能に接続された構成要素13と14を含んでいる。ここで構成要素14は、家具フラップ戸のためにそれ自体十分に機能的である駆動装置であり、それ自体は、知られているためここでは詳述の必要はない。ここでは、構成要素14の領域に配置されたアクチュエータ4のみを解説しており、これによってレバー機構15(図5)により可動家具部分2に作用力が適用される。
【0024】
電動モータ3、トランスミッション5およびアクチュエータ4に非回転式に接続されたシャフト12は、構成要素13に配置されており、以下の図面で詳述する。
【0025】
図2aと図2bは、構成要素14を省略した構成要素13を示している。ここでは、2つの構成要素13と14との間の力伝達インターフェースは、シャフト12によって表されており、これは、トランスミッション5を介して電動モータ3で駆動可能であり、加工された形状を有しており、アクチュエータ4に接続された対応形態の凹部と係合する。シャフト12が回転するとアクチュエータ4も対応して回転する。
【0026】
本発明による家具駆動装置の駆動列(図2a参照)は、トランスミッション5の第1伝達段階のウォーム駆動を介して共調する電動モータ3によって図2aの左側で開始する。この場合、電動モータ3とトランスミッション5との間には、適正な脱結合を提供し、軸のずれを補正するための噛合クラッチ9が配置されている。本実施例では、トランスミッション5は、アクチュエータ4に適用される過度な作用力による電動モータ3へのダメージを防止する目的で過負荷安全装置10をさらに有している。フリーホイール継手16は、電動モータ3によるダメージを受けることがないように、設定範囲(例えば家具部分2の閉位置の直前)の家具部分2の動作をコントロールする。この方法で、電動モータ3を調節システムによって調節する代わりに、この領域内で純粋な機械的要素(例えば引込み具)によって家具部分2のための好適な連続動作を達成させることが可能である。
【0027】
図3は、偏心トランスミッション6の形態である伝達段階の歯車7と8を明示している。この図は、異なる半径r1とr2を示しており、r1は、歯車7に関係し、r2は、歯車8に関係している。半径r1とr2(歯車の回転軸から歯車周囲までの測定値)は、所望のトルク状態を提供するように所定の計算方式で提供されている。この場合2つの歯車7と8の回転軸は、互いに固定間隔にて配置されているので、ここでは、電動モータ3に連結された歯車7の半径r1と、アクチュエータ4に接続された歯車8の半径r2は、それぞれ2つの回転軸間の間隔を正確に提供するように提供されなければならない。
【0028】
図4aから図4cは、本発明で使用する偏心トランスミッション6を図示しており、この実施例では、図1から図3に示す偏心トランスミッション6とは幾分異なっている。その違いは、歯車周囲から離れた領域での歯車7と8の形状のみに関しており、従って本発明の運用モードとは無関係である。
【0029】
図4aと図4cに示す偏心トランスミッション6の端部位置は、それぞれ家具部分2の閉端位置(図4a)と可動家具部分2の全開端位置(図4c)に対応する。図4bに示す位置は、可動家具部分2の中間位置に対応する。偏心トランスミッションの伝達比は、重要であり、トランスミッション5全体では、図4aの端部位置から図4cの他方の端部位置への歯車7と8の回転運動で連続的に減少する。伝達比は、このようにしてその端部位置で最小値となる(駆動出力歯車として作動する歯車8の最小トルクと、歯車8の最大周囲速度)。
【0030】
歯車7と8のそれぞれの相対位置によって、作用力伝達のための異なる効果的なレバー長と所望する異なるトルクレベルとが存在する。
【0031】
図5aと図5bは、それぞれ家具11の前方と後方を図示しており、本発明の家具駆動装置1は、家具枠体の左側に取り付けられている。この場合、家具駆動装置1のアクチュエータ4は、レバー機構部15を介して駆動される家具部分2に接続されている。図示の実施例では、本発明の家具駆動装置1は、家具枠体の片側のみに提供されており、もう片側には、機械的構成要素14のみが取り付けられている。構成要素13を家具枠体の両側に提供して本発明の家具駆動装置を完成させることも可能である。
【0032】
本発明の家具駆動装置1の発動は、タッチラッチ機能によって従来方法で実行できる。この機能によってユーザによって引き起こされる可動家具部分2の僅かな移動(例えば押し込み、または引き出し)は、センサに検知され、その結果、起動コマンドが家具駆動装置1に与えられる。この機能は、家具駆動装置1自体に組み込むことが可能な従来式の制御または調節装置によって実行される。
【0033】
図面の表示は、一定比率での縮尺である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、駆動対象の家具部分に駆動力を作用させるために2端部間で往復するアクチュエータと、前記電動モータと前記アクチュエータとの間に連結されたトランスミッションとを含んだ、可動家具部分を駆動させるための家具駆動装置であって、
前記トランスミッションは、2つの相互に噛合する歯車を備えた偏心トランスミッションの形態である少なくとも一つの伝達段階を有し、
前記偏心トランスミッション(6)が前記アクチュエータ(4)の前記端部位置に対応して2つの端部位置を有するように、前記2つの歯車(7、8)の一方は、前記アクチュエータ(4)に固定式に接続または連結されており、
もう一方の前記歯車(7、8)は、前記電動モータ(3)に連結されており、
前記2つの端部位置の第1の端部から他方の端部への前記歯車(7、8)の回転で伝達比が連続的に減少することを特徴とする家具駆動装置。
【請求項2】
偏心トランスミッション(6)の2つの歯車(7、8)の回転軸は、互いに固定した間隔を開けて配置されていることを特徴とする請求項1記載の家具駆動装置。
【請求項3】
電動モータ(3)に連結された歯車(7)の半径(r1)は、第1の端部から他方の端部へ向かって増加し、アクチュエータ(4)に接続または連結された歯車(8)の半径(r2)は、対応して減少することを特徴とする請求項2記載の家具駆動装置。
【請求項4】
フリーホイール継手(9)および/または過負荷安全装置(10)は、電動モータ(3)と該電動モータ(3)に連結された歯車(7)との間に接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の家具駆動装置。
【請求項5】
アクチュエータ(4)は、歯車(8)に非回転式に接続されたシャフト(12)を介して該歯車(8)によって駆動可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の家具駆動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の家具駆動装置によって特徴付けられた可動式に取り付けられた家具部分を含んだ家具。
【請求項7】
家具部分(2)は、フラップ戸、ドアまたは引出しの形態であることを特徴とする請求項6記載の家具。
【請求項8】
第1の端部の位置は、可動式に取り付けられた家具部分がその閉位置であるアクチュエータ(4)の端部の位置に対応することを特徴とする請求項6または7記載の家具。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−522139(P2011−522139A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508759(P2011−508759)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000157
【国際公開番号】WO2009/137849
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(597140501)ジュリウス ブルム ゲゼルシャフト エム.ビー.エイチ. (122)
【Fターム(参考)】