説明

家庭用消火装置

【課題】火災を検出して警報する警報器と消火装置との連携を適切に確立して家庭で起きる火災に対する対処が適切にできるようにする。
【解決手段】消火制御装置18は、他の機器からの制御開始信号を受信する受信部42と、受信部42で受信した制御開始信号に基づいて消火開始を制御する制御部44を備える。受信部42は、制御開始信号として、火災を検出して警報する住警器10からの火災信号を受信し、制御部44は火災信号の受信に基づいて消火開始を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検出による制御信号を受信して消火する家庭用消火装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、住宅における火災やガス漏れなどの異常を検出して警報する住宅用警報器(以下「住警器」という)が普及しており、近年にあっては、1つの住戸に複数の住警器を設置して部屋毎に火災などの異常を監視する傾向も増加している。
【0003】
このように住戸内に複数の住警器を設置した場合、異常が発生した部屋とは別の部屋に人がいた場合、警報音が聞こえず火災などの災害が広がる恐れがある。このため、住警器間で通信させ、ある住警器で火災を検出して警報した場合、有線又は無線により他の住警器に信号を送って同時に警報させる連動警報ができるようにしている。
【0004】
一方、住宅におけるてんぷら火災を消火する自動消火装置が知られている。この自動消火装置はレンジフードに取り付けられ、たとえばてんぷら火災による熱を受けると感熱ヘッドが作動し、火災を起こしているてんぷら鍋の中へ消火液を自然落下させ、油を周囲に飛散させることなく確実に消火するようにしている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開22007−159916号公報
【特許文献2】特開22008−073409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の住宅に設置される住警器及び消火装置は、住警器は火災を検出して警報することで迅速な避難や初期消火による対処を促しており、また消火装置は自己の感熱部の作動により消火するだけであり、作動して消火開始すると途中で停止させることは出来なかった。また消火器は住警器の警報に気付いた発見者等が自己で操作する必要がある。更に従来は住警器と家庭用消火装置との連携が充分にとられていない状況にあり、この点の更なる改善が望まれている。
【0007】
本発明は、火災を検出して警報する警報器と消火装置との連携を適切に確立して家庭で起きる火災に対する対処が適切にできるようにした家庭用消火装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は家庭用消火装置に於いて、
別の機器からの制御開始信号を受信する受信部と、
受信部で受信した制御開始信号に基づいて消火開始を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、受信部は、制御開始信号として、火災を検出して警報する警報器からの火災信号を受信する。
【0010】
制御部は、受信部が火災信号を受信してから所定時間経過後に消火開始を制御する。
【0011】
本発明の家庭用消火装置は、更に、別機器からの消火開始指示信号を受信する受付部を設け、
制御部は、警報器からの火災信号と受付部で受け付けた消火開始指示信号とに基づいて消火開始を制御する。この場合、制御部は、受付部が別機器からの消火開始指示信号を受け付けてから所定時間経過後に消火開始を制御する。
【0012】
受信部は、制御開始信号として、火災を検出して警報する警報器からの消火開始指示信号を受信する。この場合も、制御部は、受付部が警報器からの消火開始指示信号を受け付けてから所定時間経過後に消火開始を制御する。
【0013】
受信部は、更に、別の機器から制御停止信号を受信し、
制御部は、受信部で受信した制御停止信号に基づいて消火停止を制御する。
【0014】
受信部は、制御停止信号として、火災を検出して警報する警報器から消火停止指示信号を受信する。
【0015】
制御部は、消火開始の制御後に、受信部での火災信号の受信停止を判定した場合に、消火停止を制御する。
【0016】
本発明の家庭用消火装置は、更に、
制御元となる外部機器との間で制御連動グループを形成し、
受信部で受信した制御開始信号が自身の制御連動グループ内の外部機器からの信号か否かを判定する制御連動グループ判定部を備え、
制御部は、制御連動グループ判定部により自分の制御連動グループ内の外部機器の信号であることを判定した場合に、消火開始を制御する。
【0017】
制御連動グループ判定部は、受信部で受信した制御停止信号が自身の制御連動グループ内の外部機器からの信号か否かを判定し、
制御部は、制御連動グループ判定部により自分の制御連動グループ内の外部機器の信号であることを判定した場合に、消火停止を制御する。
【0018】
制御部は、制御連動グループ判別部で自身の制御連動グループに属さないが、制御開始信号を送信した外部機器の警報連動グループに属する他の外部機器からの制御停止信号を判定した際にも、消火停止を制御する。

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、火災警報器などの別機器からの制御信号、例えば火災信号を受信して消火の開始制御が行われ、火災の初期段階で消火が開始されることで、火災の拡大を抑制し、人的な初期消火活動と相俟って家庭における火災被害の拡大を防止することができる。
【0020】
また、火災警報器の警報信号と起動釦装置などによる起動指示信号の両方が得られた時に消火装置の消火開始を制御することで、火災警報器の誤動作による消火開始を未然に防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】住宅に設置した本発明による警報システムの実施形態を示した説明図
【図2】図1の本発明による消火装置の実施形態を住警器と共に示したブロック図
【図3】図2の住警器に設けた送信元管理テーブルを取り出して示した説明図
【図4】図2の住警器で送受信するイベント信号のフォーマットを示した説明図
【図5】図2における住警器の火災監視処理を示したフローチャート
【図6】図2における本発明の消火装置による消火制御を示したフローチャート
【図7】図1の本発明による消火装置の他の実施形態を住警器と共に示したブロック図
【図8】図7における本発明の消火装置による消火制御を示したフローチャート
【図9】図7における本発明の消火装置による他の消火制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は住宅に設置した本発明による家庭用消火装置及び火災警報器としての住警器を用いた警報システムの実施形態を示した説明図である。図1において、住宅11に設けられている台所、居間、主寝室、子供部屋のそれぞれに住警器10が設置されている。住警器10のそれぞれはイベント信号を相互に無線により送受信する機能を備えており、4台の住警器10で1つの警報連動グループを形成し、この住宅全体の火災監視を行っている。
【0023】
警報連動グループの形成は、工場出荷時や住宅11に設置するときに登録を行うことで、それぞれの住警器の記憶部に、同一グループに属する他の住警器の識別子である送信元IDを登録した送信元管理テーブルを設定しておくことで実現できる。
【0024】
警報連動グループを形成した住警器10は、例えば住宅11の子供部屋で火災が発生したとすると、子供部屋に設置している住警器10が火災を検出して警報を開始する。この火災を検出して警報を開始することを、住警器における「発報」という。
【0025】
子供部屋の住警器10が発報すると、住警器10は連動元として機能し、連動先となる他の部屋に設置している住警器10に対し、火災発報を示すイベント信号を無線により送信する。
【0026】
子供部屋以外に設置している住警器10にあっては、連動元となる子供部屋の住警器10からの火災発報を示すイベント信号を受信すると、イベント信号から取得した送信元IDがメモリに登録している送信元管理テーブルの登録済送信元IDに一致したとき、同一グループに属する住警器からの信号と判断し、イベント信号を有効として、イベント内容に基づき連動先の警報動作を行う。
【0027】
例えば連動元となった子供部屋の住警器10の警報音としては、音声メッセージにより例えば「ウーウー、火災警報器が作動しました。確認して下さい。」を連続して出力する。一方、子供部屋以外に設置している連動先の住警器10にあっては、例えば「ウーウー、別の火災警報器が作動しました。確認して下さい。」といった音声メッセージを連続して出力する。
【0028】
住警器10が警報音を出している状態で、住警器に設けている警報停止スイッチを操作すると、所定の警報音停止処理が行われる。
【0029】
また住警器10は障害監視機能を備えており、電池電圧の低下(ローバッテリ)、自動試験による異常検出などの障害を検知すると、例えば「ピッ」といった警報音を所定時間置きに間欠的に出力し、障害が発生したことを報知する。
【0030】
また障害を検出した障害元の住警器10は、他の住警器に障害発生を示すイベント信号を無線送信し、他の住警器においても、イベント信号から取得した送信元IDが登録済の送信元IDに一致していることを条件に障害警報を出力する。
【0031】
また図1の住宅11に設置した警報システムにあっては、台所と子供部屋に本発明による家庭用消火装置を設置している。台所にはレンジフード消火装置16が設置される。台所のレンジ12の上部にはレンジフード14が設置されており、このレンジフード14のレンジ12の直上となる位置にレンジフード消火装置16を設置している。レンジフード消火装置16はレンジ12に向けてヘッド16aを備えている。
【0032】
またレンジフード消火装置16に対しては消火制御装置18が設けられている。消火制御装置18は予め登録した送信元IDに一致する送信元IDを持つ制御信号、例えば台所に設置している住警器10からの火災発報のイベント信号を受信すると、レンジフード消火装置16に内蔵している制御弁を開くことで、ヘッド16aから消火薬液をレンジ12上の火災を起こしている天ぷら鍋に自然落下させる消火の開始制御を行う。
【0033】
また消火制御装置18は、消火停止のイベント信号などの制御信号を受信すると、制御弁の閉動作を行って消火を停止することも可能である。
【0034】
一方、子供部屋には据置き型の消火装置20が設置されている。消火装置20は例えば消火剤ボンベに消火薬剤を加圧充填しており、消火制御装置18による制御弁の開動作で、ヘッド20aから消火薬剤を噴出して消火の開始制御ができるようにしている。
【0035】
消火制御装置18は、子供部屋に設置している住警器10からの火災発報のイベント信号を受信して、消火装置20の消火の開始制御を行わせる。また子供部屋に設置している住警器10から消火停止のイベント信号などを受信すると、制御弁を閉じて、ヘッド12aからの消火薬剤の噴出を停止させる消火の停止制御を行うことも可能である。
【0036】
図2は本発明による消火装置の実施形態を住警器と共に示したブロック図である。図2において、住警器10はプロセッサ24を備え、プロセッサ24に対しては、アンテナ25を備えた送受信部26、メモリなどを用いた記憶部28、センサ部30、報知部32、操作部34及び電池電源36を設けている。
【0037】
送受信部26には送信回路と受信回路が設けられ、他の住警器との間でイベント信号を無線により送受信できると共に、消火制御装置18に対しては消火開始または消火停止のイベント信号を送信できるようにしている。
【0038】
送受信部26としては、日本国内の場合には例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に準拠した構成を備える。もちろん送受信部26は、日本国内以外の場所については、その地域の割当無線局の標準規格に準拠した内容を持つことになる。
【0039】
記憶部28は通常、半導体メモリが使用され、連動グループの形成に用いる送信元管理テーブル29が予め登録されている。
【0040】
図3は図2の送信元管理テーブル29の登録内容を示しており、例えば図2の住警器10を子供部屋に設置した住警器とすると、インデックス1〜3に対応し、子供部屋以外の部屋に設置している住警器10の送信元ID0x00000001〜0x00000003が登録されている。なお先頭の0xは16進表示を示している。
【0041】
また記憶部28には消火制御装置18との制御連動グループIDを格納するようにしても良い。この制御連動グループIDは、住警器間でグループ符号を登録する場合と同様の手法で、住警器10と消火制御装置18の間で登録しても良いし、その他適宜の方法で登録することができる。もちろんこのとき、消火制御装置18の記憶部45には、送信元ID47に代えて制御連動グループIDが格納される。そして、後に説明する図4のイベント信号48には、制御連動グループIDが付加されることになる。
【0042】
再び図2を参照するに、センサ部30には例えば検煙部が設けられており、煙濃度に応じた煙検出信号をプロセッサ24に出力している。センサ部30には検煙部以外に、火災による温度を検出するサーミスタ等、またその他の火災現象を検出する各種素子を設けてもよい。
【0043】
報知部32にはスピーカとLEDが設けられている。スピーカは音声合成回路からの音声メッセージや警報音を出力する。LEDは点滅や明滅、あるいは点灯などにより、火災などの異常及び障害を表示する。
【0044】
操作部34には警報停止スイッチが設けられている。住警器10が警報出力している状態で警報停止スイッチを操作すると、警報音を停止することができる。警報停止スイッチは警報器内部の各種機能等を点検する点検スイッチを兼用している。警報出力がない状態で警報停止スイッチを操作すると、報知部32から点検結果等を知らせる音声メッセージなどが出力される。
【0045】
電池電源36は例えば所定セル数のアルカリ乾電池を使用しており、電池容量としては住警器10における送受信部26を含む回路部全体の低消費電力化により約10年の電池寿命を保証している。
【0046】
プロセッサ24は、CPU、ROM、RAM、AD変換ポート、各種入出力ポートなどにより構成されており、CPUによるプログラムの実行で実現される機能として、火災監視部38が設けられている。
【0047】
火災監視部38は、センサ部30に設けた検煙部からの煙検出信号が火災レベルを超えて火災を検出したとき、報知部32のスピーカから連動元を示す警報音例えば「ウーウー、火災警報器が作動しました。確認して下さい。」を繰り返し出力させると共に、火災発報を示すイベント信号を、送受信部26の送信回路によりアンテナ25から他の住警器に向けて送信させる。
【0048】
また火災監視部38は、他の住警器10からの火災発報を示すイベント信号を送受信回路部26の受信回路により受信したとき、イベント信号を解読して送信元符号を取得し、記憶部28の送信元管理テーブル29に登録している登録済送信元符号のいずれかと一致したとき、即ち同一グループの住警器からのイベント信号であることを認識したとき、そのイベント内容に基づき、報知部32のスピーカから連動先を示す警報音例えば「ウーウー、別の火災警報器が作動しました。確認して下さい。」となる音声メッセージを繰り返し出力させる。
【0049】
後で説明するように、送信元符号の一致判定に代えて住警器10の記憶部28に住警器間の警報連動グループIDを示すグループ符号を格納し、グループ符号の一致を判定して連動警報させるようにしても良い。
【0050】
一方、イベント信号を解読して取得した送信元符号が送信元管理テーブル29に登録されていない場合は、他のグループからのイベント信号と判断し、イベント信号は破棄する。
【0051】
また火災監視部38は、電池電源36の電圧低下(ローバッテリ)を障害として検出したとき、例えば1分間に1回「ピッ」といった障害警報音を出力させると共に、障害を示すイベント信号を他の住警器10に送信する。
【0052】
また火災監視部38は、他の住警器から障害を示すイベント信号を受信したとき、障害警報音を同様に間欠的に出す。火災監視部38による障害はローバッテリ以外に、センサ部30に対する自動試験により異常を検出した場合の障害警報や、住警器10が所定の寿命に近付いたときの寿命警報なども含まれる。報知部32にはLED等の表示灯も設けられ、警報の種類に応じて各種の表示を行う。
【0053】
図4は図2の住警器10の送受信に使用するイベント信号のフォーマットを示した説明図である。図5において、イベント信号48は、送信元ID50、グループ符号52、イベント符号54で構成されている。送信元IDは例えば26ビットの符号である。またグループ符号52は例えば8ビットの符号であり、同一グループを構成する例えば図2の4台の住警器10につき、同じグループ符号が設定されている。
【0054】
イベント符号54は火災、ガス漏れ、障害といったイベント内容を示す符号であり、例えば3ビット符号を使用しており、「001」で火災、「010」でガス漏れ、「011」で障害、残りをリザーブとしている。なおイベント符号54のビット数は、イベントの種類が増加したときには更に4ビット、5ビットと増加させることで、複数種類のイベント内容を表すことができる。
【0055】
再び図2を参照して消火制御装置18及び消火装置20を説明する。消火装置20は据置き型であり、消火剤ボンベ20bに粉末などの消火薬剤を加圧充填しており、消火ボンベ20bの上部からの配管の先端にヘッド20aを装着し、その間に制御弁22を設けている。
【0056】
消火制御装置20は、アンテナ40、受信部42、連動制御グループ判定部43、制御部44、記憶部45及び駆動部46で構成されている。受信部42はアンテナ40により別の機器、この実施形態にあっては住警器10からの制御開始信号として火災発報を示すイベント信号を受信する。
【0057】
制御連動グループ判定部43は、受信部42で受信した制御開始信号又は制御停止信号が記憶部45に登録された送信元ID47に一致する自身の制御連動グループ内の住警器からの信号か否かを判定する。
【0058】
制御部44は、受信部42で受信した火災発報を示すイベント信号に基づいて消火開始を制御する。即ち制御部44は、受信部42で受信した住警器からの火災発報のイベント信号を解読し、イベント信号に含まれる送信元ID50が記憶部45に予め登録している住警器の送信元ID47と一致することを連動制御グループ判定部45により判定したときに、消火制御を開始すべき場所に設置している住警器からの制御開始信号と認識し、駆動部46により制御弁22を開動作し、ヘッド20aから消火対象区画に向けて消火薬剤を噴出させる。
【0059】
図5は図2における住警器10の火災監視処理を示したフローチャートである。図5において、出荷時に住警器10に設けている電池電源36の電極シールなどを外すことにより、電池電源36からプロセッサ24を含む各回路部に対し初めて電源を供給すると、プロセッサ24はステップS1で初期化処理を行った後、ステップS2に進み、センサ部30に設けた検煙部からの煙検出信号が所定の火災レベルを超えるか否かで火災発報の有無を判別している。ステップS2で火災発報が判別された場合には、ステップS3に進み、火災発報のイベント信号を他の住警器に送信した後、ステップS4で連動元としての火災警報を報知部32のスピーカからの音響出力及びLEDの点灯制御で出力する。
【0060】
連動元の火災警報を行った後は、ステップS9で操作部34の警報停止スイッチによる警報停止操作の有無を判別しており、警報停止操作を判別すると、ステップS10で警報停止を行う。
【0061】
一方、ステップS2で自身の火災発報が判別されない場合には、ステップS5で他の住警器からの火災発報のイベント信号の受信を判別すると、ステップS6で受信したイベント信号を解析して送信元IDを取得し、ステップS7で送信元管理テーブル29の登録済の送信元IDと比較し、一致する登録済の送信元IDがある場合は同一グループに含まれる他の住警器からのイベント信号と判断して有効とし、ステップS8でイベント信号に含まれるイベント内容(火災)に基づき連動先としての火災警報を出力する。そしてステップS9に進み、警報停止操作があれば、ステップS10で警報停止を行うことになる。
【0062】
なおステップS9で警報停止操作が無い場合で(No)、火災状態が検出されなくなった場合には、ステップ10へ進んで警報停止処理を行うようにしても良い(自動復旧)。
【0063】
このような住警器の火災監視処理において、ステップS2で火災発報を判別して、ステップS3で送信する火災発報のイベント信号は、図2の消火制御装置18に対する消火開始を行わせるための制御開始信号として送信されることになる。
【0064】
図6は図2における消火制御装置18による本発明の消火制御の概略を示したフローチャートである。図6において、消火制御装置18の受信部42は、ステップS11でイベント信号の受信の有無を判別している。イベント信号を受信すると、ステップS12でイベント信号を解読し、ステップS13で連動制御グループ判定部43によりイベント信号に含まれる送信元ID50が記憶部45に登録している送信元ID47と一致することを判定した場合、ステップS14に進み、イベント符号が火災発報であることを判別すると所定の遅延時間が経過した後にステップS15で駆動部46により制御弁22を開動作し、消火装置20の消火剤ボンベ20bに加圧充填してある消火薬剤をヘッド20aから消火対象区域に噴出させることで消火開始の制御を行う。
【0065】
消火を開始すると消火剤の噴霧煙や蒸気の発生等により視界不良となること等が考えられる。そこで遅延時間を設けて、罹災者が警報に気付いてから消火が開始されるまでの間に避難時間を確保する。また図示されていないが警報停止は常時割込受付され、警報停止処理は消火制御に優先するので、誤報の場合にも遅延時間内に警報停止(復旧)の操作をすれば消火は開始されず、損害発生の危険を低減出来る。
【0066】
続いてステップS16で火災発報のイベント信号の受信停止の有無を判別している。住警器10にあっては、図5の火災監視処理に示したように、ステップS2で火災発報を判別している間は、ステップS3で繰り返し火災発報のイベント信号を送信しているが、火災発報が検出されなくなると火災発報のイベント信号の送信が停止される。また住警器10が警報停止処理を行うと、同様に火災発報のイベント信号の送信が停止される。
【0067】
この火災発報のイベント信号の停止を図6のステップS16で判別すると、誤報であったかまたは火災は鎮火したものと判断して、ステップS17で駆動部46による制御弁22の開動作を停止して閉動作とし、ヘッド20aからの消火薬剤の噴出を停止する。
【0068】
住警器10が警報停止処理を行うときに消火制御装置18に対して消火停止のイベント信号を送信し、消火制御装置18でこれを受信解析して制御弁22を閉動作させるようにしても良い。
【0069】
このような図2の実施形態によれば、例えば図1の子供部屋に設置した住警器10で火災を検出すると、火災警報を出すと同時に、他の部屋に設置している警報器に火災発報のイベント信号を送信して火災警報を連動して出すことができ、更に、子供部屋に設置している消火装置20の消火制御装置18が火災発報のイベント信号を受信し、ヘッド20aから消火用水等を噴出して火災を消火することができる。
【0070】
なお図6の消火制御にあっては、ステップS11〜S13で住警器10から火災発報のイベント信号を1回受信した際に、ステップS14で消火開始の制御を行うようにしているが、住警器10の誤報による消火開始の制御を回避するため、例えば所定期間内に予め定めた複数回、火災発報のイベント信号を受信したときに消火開始の制御を行うようにしてもよい。
【0071】
図7は図1の本発明による消火装置の他の実施形態を住警器と共に示したブロック図であり、この実施形態にあっては、住警器10からの火災発報のイベント信号以外に、他の消火開始指示信号との組合せに基づいて消火開始を制御するようにしたことを特徴とする。
【0072】
図7において、住警器10は図2の住警器10と同じ構成及び動作を行う。一方、消火制御装置18には新たに受付部58が設けられ、受付部58に対しては外部機器として起動釦装置56が接続されている。それ以外の構成は図2と同じである。
【0073】
制御部44は、住警器10からの火災発報のイベント信号を受信部42で受信し、記憶部45に登録されている送信元ID47とイベント信号の送信元ID50が一致を連動制御グループ判定部45で判定したとき、火災発報のイベント信号を有効とし、あわせて起動釦装置56の押釦操作によるスイッチ信号により受付部58から制御部44に対し消火開始指示信号が出力されていることを条件に、駆動部46により制御弁22を開動作し、消火剤ボンベ20bに充填している消火薬剤をヘッド20aから消火対象区域に噴出させる。
【0074】
即ち制御部44は、受信部42で受信された住警器10からの火災発報のイベント信号と、受付部58で受信された起動釦装置56の押釦操作による消火開始指示信号との両者が得られること、即ち論理積処理により、消火開始の制御を行うようにしている。
【0075】
図8は図7の消火制御装置18による消火制御の概略を示したフローチャートである。図8において、消火制御装置18による消火制御は、ステップS21で住警器10からのイベント信号の受信の有無を判別しており、火災発報により送信されたイベント信号を受信すると、ステップS22に進んでイベント信号を解読し、ステップS22でイベント信号から取得した送信元ID50が登録済の送信元ID47に一致することを判別すると、ステップS24に進み、イベント符号からの火災発報を判別する。
【0076】
ステップS24で火災発報を判別するとステップS25に進み起動釦装置56の操作による消火開始指示信号の受付け有無を判別し、消火開始指示信号の受付けを判別すると所定の遅延時間が経過した後にステップS26で制御弁22を開動作して消火開始の制御を行う。ここで所定時間を経過しても消火開始指示信号が受け付けられないときには、ステップS21に戻るようにしても良い。
【0077】
消火を開始すると消火剤の噴霧煙や蒸気の発生等により視界不良となること等が考えられる。そこで遅延時間を設けて、罹災者が警報に気付いてから消火が開始されるまでの間に避難時間を確保する。また図示されていないが警報停止は常時割込受付され、警報停止処理は消火制御に優先するので、誤報や起動釦56の誤操作の場合にも、遅延時間内に警報停止(復旧)の操作をすれば消火は開始されず、損害発生の危険を低減出来る。
【0078】
続いて消火中にあっては、ステップS27で火災発報イベント信号の受信停止の有無を判別しており、住警器において火災発報が判別されなくなると、ステップS27で火災発報のイベント信号の受信停止が判別され、ステップS28に進み、制御弁22を閉動作することで消火停止の制御を行う。住警器10が警報停止処理を行うときに消火制御装置18に対して消火停止のイベント信号を送信し、消火制御装置18でこれを受信解析して消火停止の制御を行うようにしても良く、図8ではこの例を示している。
【0079】
このように図7の実施形態にあっては、住警器10からの火災発報のイベント信号と起動釦装置56などによる他の機器からの消火開始指示信号の両方が得られたときに消火開始の制御を行うことで、住警器10からの誤報による消火制御の開始を確実に防止できる。また起動釦装置56の手動操作により最終的に消火開始の制御を行わせることで、例えば子供などが部屋にいる状態で自動的に消火の開始制御が行われて避難行動が妨げられるような事態を回避できる。
【0080】
なお、ステップS26で所定時間を経過しても消火開始指示信号が受け付けられないときには、ステップS21に戻るようにしても良いとしたが、逆に起動釦装置56による手動起動が行われずに住警器10からの火災発報のイベント信号が所定時間を超えて継続的に受信された場合は、起動釦装置56からの消火開始指示信号がなくとも、制御部44は強制的に制御弁22を開動作して消火の開始制御を行うようにしてもよい。どちらのモードを選択するかは機器やシステムの設置ケース等により選択することになると考えられ、消火制御装置18にこの選択手段を設けても良い。
【0081】
図9は図7における本発明の消火装置による他の消火制御の概略を示したフローチャートであり、この消火制御にあっては、住警器からの火災発報のイベント信号または起動釦装置56の押釦操作による受付部58からの消火開始指示信号のいずれか一方が得られたときに消火開始の制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0082】
図9において、消火制御は、ステップS31で住警器10からの火災発報のイベント信号を受信すると、ステップS32でイベント信号を解読し、ステップS33でイベント信号に含まれている送信元ID50が記憶部45の送信元ID47に一致するか否か判別し、一致した場合にはステップS34に進み、イベント符号から火災発報の有無を判別する。ステップS34で火災発報を判別すると所定の遅延時間が経過した後ステップS36に進み、消火開始の制御を行う。図示されていないが、前述の実施形態同様に警報停止は常時割込受付され、警報停止処理は消火制御に優先する。
【0083】
またステップS31で火災発報のイベント信号の受信がない場合には、ステップS35で起動釦装置56の押釦操作による受付部58からの消火開始指示信号の受付の有無を判別しており、消火開始指示信号の受付を判別すると、所定の遅延時間が経過した後ステップS36に進み、同様に消火開始の制御を行う。
【0084】
このため火災時にあっては、先に住警器からの火災発報のイベント信号が受信されても、また住警器が警報を出す前に居住者が気付いて消火のために起動釦装置56の押釦操作を行った場合のいずれについても、消火開始の制御を行うことができる。
【0085】
消火開始制御が行われた後は、ステップS37で火災発報のイベント信号の受信停止の有無を判別しており、住警器による火災発報の検出がなくなって火災発報のイベント信号の受信が停止すると、ステップS38で消火停止の制御を行う。住警器10が警報停止処理を行うときに消火制御装置18に対して消火停止のイベント信号を送信し、消火制御装置18でこれを受信解析して消火停止の制御を行うようにしても良い。
【0086】
起動押釦56とあわせて緊急停止釦を受付部58に接続し(起動押釦56と兼用でも良い)、この操作を受け付けた時には消火停止の制御を行うようにしても良い。
【0087】
なお図7の実施形態にあっては、消火制御装置18の外部機器として起動釦装置56を信号線により接続しているが、信号線によらず、起動釦装置56に無線送信回路部を設けて無線送信により消火制御装置18に消火開始指示信号を送信するようにしてもよい。この場合には、受付部58は受信部42にその機能が含まれることになる。また起動釦装置56を消火制御装置18に直接、設けた手動操作ができるようにしてもよい。
【0088】
また上記の実施形態にあっては、イベント信号の中にグループ符号を加えた場合を例に取っているが、たとえば送信元符号とイベント符号のみのイベント信号であってもよい。
【0089】
また上記の実施形態にあっては、子供部屋に設置した消火装置20を制御対象とする消火制御装置18を例にとっているが、レンジフード消火装置16を制御対象とした場合も同じである。
【0090】
また上記の実施形態にあっては、制御連動グループに属する住警器からの火災信号を逝去開始信号として消火制御を開始し、同じ制御連動グループに属する住警器の警報停止に伴う警報停止信号を消火停止信号として消火制御を停止しているが、消火装置との連動制御グループには属さないが、消火開始信号を送信した住警器の警報連動グループに属して連動警報を行っている他の住警器からの警報停止による消火停止信号を判定した場合にも、消火停止を制御するようもよい。
【0091】
これは消火装置の消火開始の制御は制御連動グループに属する例えば同じ部屋に設置した住警器からの信号で行うが、消火停止については、別の部屋に設置している制御連動グループに属さない他の住警器による警報停止に連動した消火制御の停止を可能とするものである。
【0092】
また上記の実施形態にあっては、住警器同士が通信して警報連動するシステムを例に取っているが、住警器同士は連動せず、住警器と消火制御装置が連動するシステムにも本発明が適用出来る。
【0093】
また本発明は、屋外または半屋外に設置される放火監視センサと消火装置についても同様に適用出来る。
【0094】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0095】
10:住警器
11:住宅
12:レンジ
14:レンジフード
16:レンジフード消火装置
18:消火制御装置
20:据置き消火装置
20a:消火ヘッド
20b:消火剤ボンベ
22:制御弁
24:プロセッサ
25,40:アンテナ
26:送受信部
28,45:記憶部
29:送信元管理テーブル
30:センサ部
32:報知部
34:操作部
35:起動釦
36:電池電源
38:火災感知部
42:受信部
43:連動制御グループ判定部
44:制御部
46:駆動部
47:送信元ID
48:イベント信号
50:送信元ID
52:グループ符号
54:イベント符号
56:起動釦装置
58:受付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別の機器からの制御開始信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した制御開始信号に基づいて消火開始を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項2】
請求項1記戴の家庭用消火装置に於いて、前記受信部は、前記制御開始信号として、火災を検出して警報する警報器からの火災信号を受信することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項3】
請求項2記載の家庭用消火装置に於いて、前記制御部は、前記受信部が火災信号を受信してから所定時間経過後に消火開始を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項4】
請求項2記戴の家庭用消火装置に於いて、更に、別機器からの消火開始指示信号を受信する受付部を設け、
前記制御部は、前記警報器からの火災信号と前記受付部で受け付けた消火開始指示信号とに基づいて消火開始を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項5】
請求項4記載の家庭用消火装置に於いて、前記制御部は、前記受付部が前記別機器からの消火開始指示信号を受け付けてから所定時間経過後に消火開始を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項6】
請求項1記戴の家庭用消火装置に於いて、前記受信部は、前記制御開始信号として、火災を検出して警報する警報器からの消火開始指示信号を受信することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項7】
請求項6記載の家庭用消火装置に於いて、前記制御部は、前記受け付け部が前記警報器からの消火開始指示信号を受け付けてから所定時間経過後に消火開始を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項8】
請求項1記戴の家庭用消火装置に於いて、
前記受信部は、更に、前記別の機器から制御停止信号を受信し、
前記制御部は、前記受信部で受信した制御停止信号に基づいて消火停止を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項9】
請求項8記戴の家庭用消火装置に於いて、前記受信部は、前記制御停止信号として、火災を検出して警報する警報器から消火停止指示信号を受信することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項10】
請求項2記戴の家庭用消火装置に於いて、前記制御部は、前記消火開始の制御後に、前記受信部での前記火災信号の受信停止を判定した場合に、消火停止を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項11】
請求項4記戴の家庭用消火装置に於いて、
制御元となる外部機器との間で制御連動グループを形成し、
前記受信部で受信した制御開始信号が自身の制御連動グループ内の前記外部機器からの信号か否かを判定する制御連動グループ判定部を備え、
前記制御部は、前記制御連動グループ判定部により自分の制御連動グループ内の外部機器からの信号であることを判定した場合に、消火開始を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項12】
請求項11記戴の家庭用消火装置に於いて、
前記制御連動グループ判定部は、前記受信部で受信した制御停止信号が自身の制御連動グループ内の前記外部機器からの信号か否かを判定し、
前記制御部は、前記制御連動グループ判定部により自分の制御連動グループ内の外部機器からの信号であることを判定した場合に、消火停止を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【請求項13】
請求項11記戴の家庭用消火装置に於いて、前記制御部は、前記制御連動グループ判別部で自身の制御連動グループに属さないが、制御開始信号を送信した前記外部機器の警報連動グループに属する他の外部機器からの制御停止信号を判定した際にも、消火停止を制御することを特徴とする家庭用消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178877(P2010−178877A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24646(P2009−24646)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】