説明

家庭用電気製品および該家庭用電気製品の蓋状態検出方法

【課題】迅速に蓋体の開閉状態を検出でき、異音の発生も防止する。
【解決手段】上端に開口を有する本体11と、本体11に回動可能に配設され、本体11の上端開口を閉塞する蓋体23と、蓋体23に設けた保持機構(保持部56)と、保持機構に揺動可能に軸支され、蓋体23の閉状態で第1可動位置に回動し、開状態で第2可動位置に回動する揺動部材61と、揺動部材61の回動状態を検出することにより蓋体23の開閉状態を示す信号を出力する(フォトインタラプタ67)と、を配設した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体に蓋体を開閉可能に配設した家庭用電気製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用電気製品の1つである炊飯器は、内鍋を収容する本体と、前記本体の上端開口を開閉可能に閉塞する蓋体とを備えている。本体の内部には加熱手段が配設され、この加熱手段によって内鍋を加熱することにより、内鍋内にセットした米飯を炊飯する。また、この種の炊飯器としては、前記蓋体に排気通路の通気孔を閉塞する密閉手段を配設し、内鍋内を大気圧より高い圧力に昇圧可能に構成した圧力炊飯方式のものがある。
【0003】
これらの炊飯器は、予め設定されたプログラムに従って炊飯処理および保温処理を実行する。炊飯処理は、所定温度に維持する予熱工程と、内鍋内を沸騰させる中ぱっぱ(昇温)工程と、沸騰状態を維持する沸騰維持工程と、米飯を炊き上げる炊き上げ工程と、炊き上げたご飯をむらすむらし工程とを有する。保温処理は、ユーザが選択した保温温度に温調するものである。これらの処理は、内鍋の温度を検出することにより、加熱手段による加熱を調整しながら実行される。
【0004】
しかし、これらの処理の実行中に蓋体が開放され、その後、蓋体を閉め忘れた場合には、内鍋内の温度が急激に低下するため、温度センサによって内鍋の正確な温度を検出することはできない。そのため、予め設定した処理を正確に実行することができない。
【0005】
これに対して、蓋体の開閉状態を検出可能とした炊飯器が特許文献1,2に記載されている。これらの特許文献1では、蓋体内にヒンジ接続部の側に向けて上方傾斜する底を有する球状部材を転動可能に配設する容器を設け、この球状部材の転動位置を検出することにより、蓋体の開閉状態を検出可能としている。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献では、蓋体の開閉に応じて球状部材を転動させる構成としているため、容器の底と球状部材との間の抵抗により転動動作が不安定であり、検出誤差が生じるという問題がある。即ち、容器の底は、蓋体の閉塞状態で確実に所定位置に移動させる必要があるため、ヒンジ接続部の側へ向けて上向きに傾斜されている。そのため、蓋体が開放操作されても、水平位置を越えてヒンジ接続部の側が下向きに傾斜するまでは、球状部材は転動しないため、迅速に蓋体の開放を検出できない。しかも、球状部材は、蓋体を開閉操作すると容器の端部に当接するため、その衝突に伴って異音を発生させるという不都合がある。なお、この問題は、炊飯器だけに限られず、蓋体を確実に閉塞する必要がある家庭用電気製品であれば、いずれにも同様に発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−129521号公報
【特許文献2】特開平11−56624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、迅速に蓋体の開閉状態を検出でき、異音も発生させることのない家庭用電気製品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の家庭用電気製品は、上端に開口を有する本体と、前記本体に回動可能に配設され、該本体の上端開口を閉塞する蓋体と、前記蓋体に設けた保持機構と、前記保持機構に揺動可能に軸支され、前記蓋体の閉状態で第1可動位置に回動し、開状態で第2可動位置に回動する揺動部材と、前記揺動部材の回動状態を検出することにより蓋体の開閉状態を示す信号を出力する蓋状態検出手段と、を備える構成としている。
ここで、「蓋体の開閉状態を示す信号を出力する」とは、蓋状態検出手段が揺動部材を検出することにより蓋体の閉状態を示すためにオン信号を出力し、蓋状態検出手段が揺動部材を検出できないことにより蓋体の開状態を示すために何ら信号を出力しない構成、蓋体の閉状態を示すために何ら信号を出力せず、蓋体の開状態を示すためにオン信号を出力する構成、および、蓋体の開閉状態を示すために異なる信号(例えばHi信号およびLow信号)をそれぞれ出力する構成を含む。
【0010】
この家庭用電気製品は、保持機構に揺動可能に軸支した揺動部材の回動状態を、蓋状態検出手段によって検出する構成としており、揺動部材は、蓋体の開放と同時に揺動が開始されるため、蓋体の開放を迅速に検出することができる。しかも、蓋体の開閉時には、揺動部材が保持機構に衝突することはないため、異音が発生することを確実に防止できる。
【0011】
この家庭用電気製品では、前記蓋状態検出手段は、発光部と受光部とを有し、前記揺動部材が受光部の受光路に進入することにより該揺動部材の回動状態を非接触状態で検出する非接触式センサからなることが好ましい。このようにすれば、確実に揺動部材の回動状態を検出することができる。
【0012】
また、前記蓋状態検出手段は、略U字形状をなしその対向空間内に前記揺動部材を移動可能に配設するガイド枠内に配設されており、前記保持機構に、前記蓋体の開状態で第1可動位置から第2可動位置に揺動した揺動部材に当接するストッパ部を設けるとともに、前記揺動部材を、前記ストッパ部に当接した状態で、前記ガイド枠の対向空間内における受光部の検出領域を除く位置に一部が進入した状態を維持するように構成することが好ましい。このようにすれば、蓋体を開状態から閉状態に回動させることにより、揺動部材が第2可動位置から第1可動位置に揺動する際に、揺動部材がガイド枠に干渉することによる作動不良を防止できる。
【0013】
さらに、前記蓋状態検出手段からの信号を受信し、蓋開状態である場合に報知処理を実行する制御手段を設けることが好ましい。このようにすれば、ユーザに蓋体の開放状態を確実に認識させることができる。
【0014】
さらにまた、商用電源からの通電を検出すると、電池によるバックアップモードの実行状態から商用電源による実行状態に移行し、その直後に前記蓋状態検出手段により前記係合受部と係合爪部との係合状態を更に検出する制御手段を設けることが好ましい。ここで、商用電源からの通電を検出する状態とは、ユーザが電源コードを商用電源に接続した場合、および、停電から復帰した場合の両方を含む。そして、商用電源からの通電を検出した直後に蓋体の開閉状態を検出するようにすれば、特に、停電により炊飯処理が一時的に停止され、この際にユーザが蓋体を開放し、復帰により制御手段により制御を再開した際でも、確実に設計通りの制御を実行できる。
【0015】
なお、この家庭用電気製品では、前記本体は、着脱可能に収容する内鍋を備える一方、前記蓋体は、前記内鍋を閉塞し、該内鍋内と外部とを連通する排気通路と、該排気通路を閉塞して前記内鍋内を加圧するとともに前記排気通路を開放して前記内鍋内の圧力を外圧と平衡させる圧力投入手段と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の家庭用電気製品では、揺動可能に軸支した揺動部材の回動状態を蓋状態検出手段によって検出する構成としており、揺動部材は、蓋体の開放と同時に揺動が開始されるため、蓋体の開放を迅速に検出することができる。しかも、蓋体の開閉時には、揺動部材が保持機構に衝突することはないため、異音の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態の家庭用電気製品である炊飯器を示す断面図である。
【図2】図1の炊飯器を示す斜視図である。
【図3】蓋体を構成する下板の平面図である。
【図4】図3の要部断面図である。
【図5】図3の蓋状態検出手段の構成を示す分解斜視図である。
【図6】(A),(B),(C),(D)は揺動部材の作動状態と蓋状態検出手段の検出状態の関係を示す側面図である。
【図7】(A),(B)は蓋体の開放に伴う蓋状態検出手段の作動状態を示す断面図である。
【図8】(A),(B)は移動部材の移動に伴う蓋状態検出手段の作動状態を示す断面図である。
【図9】図8(A)の状態を示す平面図である。
【図10】図8(B)の状態を示す平面図である。
【図11】(A)は炊飯器の構成を示すブロック図、(B)はソレノイドの駆動状態とフォトインタラプタの検出状態との関係によるマイコンの判断を示す図表である。
【図12】マイコンによる制御を示すフローチャートである。
【図13】(A)は図12の第1蓋状態検査工程を示すフローチャート、(B)は図12の第2蓋状態検査工程を示すフローチャートである。
【図14】マイコンによる第2実施形態の制御を示すフローチャートである。
【図15】図13の続きのフローチャートである。
【図16】蓋状態検出手段の変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る家庭用電気製品である圧力炊飯方式の炊飯器を示す。この炊飯器は、電磁誘導加熱される内鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、該炊飯器本体11に回動可能に取り付けた蓋体23とを備えている。そして、この炊飯器は、1つの蓋状態検出手段により、蓋体23の開閉状態と係合状態とを検出可能としたものである。
【0020】
前記炊飯器本体11は、筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、前記胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体14とからなる外装体を備えている。この肩体14は、その略中央に内鍋10を着脱可能に配置するための開口部15を備え、この開口部15の正面側(図1中左側)に、蓋体23の閉塞状態を維持するための孔からなる係合受部16が設けられている。また、肩体14の開口部15には、筒状をなす内胴17と、非導電性材料からなる受け皿状の保護枠18とが配設されている。この保護枠18の下部外周面には、第1加熱手段である誘導加熱コイル19がフェライトコア20を介して配設されている。また、内胴17の外周部には、第2加熱手段である胴ヒータ21が配設されている。さらに、保護枠18には、該保護枠18を貫通して内部の内鍋10の温度を検出するための温度検出手段である内鍋用温度センサ22が配設されている。
【0021】
前記蓋体23は、肩体14の背部に形成されたヒンジ受部に開閉(回動)可能に取り付けられ、炊飯器本体11の上端開口を閉塞するものである。この蓋体23は、炊飯器本体11の外装体と共に外表面材を構成する上板24と、該上板24の底を閉塞する下板35と、該下板35の下面に着脱可能に装着される内蓋71とを備えている。そして、この蓋体23の内部には、内鍋10内と外部とを連通する排気通路が設けられ、この排気通路に内鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧するための圧力投入手段であるリリーフ弁75が設けられている。
【0022】
前記上板24には、その前部に蓋体23を開放操作するための操作部材27を回動可能に装着する装着孔25が設けられている。また、上板24の背部には、蒸気口ユニット30の配設凹部26が設けられている。
【0023】
前記操作部材27は、装着孔25から露出されるロック解除操作部28を備え、その内面に、後述するロック部材38をロック解除方向に回転させるための押圧部29を設けたものである。この操作部材27は、図示しないキックバネによって上向きに付勢されている。
【0024】
また、前記蒸気口ユニット30は、受け皿状の下ケース31と、該下ケース31に着脱可能に取り付けられる上ケース32と、これらケース31,32間をシールする蒸気口パッキン33とを備えている。そして、上板24の配設凹部26に配置し、下ケース31に設けた接続部34を後述する下板35の被接続部49に着脱可能に接続するものである。
【0025】
図1および図2に示すように、下板35は、前記肩体14の上側の凹状の窪み形状と対応する形状をなす。この下板35の上面には、金属製の補強板36が配設されている。また、下板35の背部には、肩体14のヒンジ受部に軸によって回動可能に軸着されるヒンジ接続部37が設けられている。さらに、下板35の前部にはロック部材38が回動可能に取り付けられている。
【0026】
前記ロック部材38は、蓋体23を炊飯器本体11に対して閉塞した状態に維持するためのもので、図3および図4に示すように、金属板を屈曲加工することにより形成されている。このロック部材38には、その両側面に下板35に対して軸着するための軸部39が設けられている。また、ロック部材38の下端縁両側には、肩体14の係合受部16に着脱可能に係合し、肩体14の樹脂壁を挟んで内鍋10のフランジ部に係止する一対の係合爪部40がL字形状をなすように設けられている。さらに、ロック部材38には、上端中央に背面(ヒンジ接続部37)側上向きに傾斜して延び、前記操作部材27の押圧部29が当接する受部41が設けられている。なお、このロック部材38は、図示しない付勢手段であるキックバネによって図1に示す係合位置に付勢されている。
【0027】
また、下板35の底には、図1に示すように、金属製のヒータカバー42を介して第3加熱手段である蓋ヒータ43が配設されるとともに、第2の温度検出手段である蓋体用温度センサ(図11(A)参照)44が配設されている。また、下板35には、内蓋71に配設されたリリーフ弁75を収容し、排気通路の入り口部を構成する第1収容部45が設けられている。この第1収容部45は、下端開口のドーム形状のもので、正面側には駆動用開口部46が設けられ、この駆動用開口部15にパッキン47が配設されている。さらに、本実施形態では、この第1収容部45の横に、内蓋71に配設された調圧弁を収容する第2収容部48が設けられている。さらにまた、下板35には、配設凹部26の下部に位置するように、蒸気口ユニット30の接続部34を着脱可能に接続する被接続部49が設けられている。
【0028】
そして、下板35には、第1収容部45の正面側にリリーフ弁75の駆動手段である第1ソレノイド50が配設され、第2収容部48の正面側には、調圧弁の駆動手段である第2ソレノイド51が配設されている。これらソレノイド50,51は、2ポジションソレノイドであり、通電の有無により進退するロッドを備えている。また、これらソレノイド50,51は、通電によりロッドが図1中左向きに後退する一方、通電が遮断されることによりスプリングの付勢力で図1中右向きに進出するように構成されている。そして、第1ソレノイド50のロッドの先端には、パッキン47を介してリリーフ弁75の球状部材80を押圧する押圧部材52が配設されている。また、第2ソレノイド51の先端には、調圧弁を下向きに押圧可能な押下部材53が配設されている。
【0029】
前記押圧部材52には、第1ソレノイド50の駆動力を利用して蓋体23を開放不可能にロックする移動部材54が配設されている。この移動部材54は、図2および図3に示すように矩形状の枠体からなり、第1ソレノイド50に通電されると、ロッドが後退することにより押圧部材52を介してロック部材38の側に移動する一方、第1ソレノイド50に対する通電が遮断されると、ロッドが進出することによりロック部材38から離反するように移動する。この移動部材54におけるロック部材38の側の端部は、ロック部材38の移動領域に進退可能な一部であるロック部55を構成する。本実施形態では、第1ソレノイド50が中心から横方向に所定間隔をもって位置されるため、その分、ロック部55が中心に向けて突出するように形成されている。
【0030】
この移動部材54は、第1ソレノイド50への通電によりロック作動されると、ロック部材38の移動領域、即ち、受部41の下部である回動領域に一部が進入する第1移動位置であるロック位置(図9参照。)に移動される。また、第1ソレノイド50への通電を遮断することによりアンロック作動されると、ロック部材38の移動領域から完全に後退(離反)した第2移動位置であるアンロック位置(図4参照。)へ移動される。そして、移動部材54は、ロック部55がロック位置に移動した状態で、ロック部材38の受部41との間に僅かな隙間(遊び)のみが形成される肉厚で形成されている。この隙間は、移動部材54がこのロック位置に移動している状態で、ロック部材38が回動されることにより、受部41がロック部55に当接した状態で、ロック部材38の係合爪部40と肩体14の係合受部16とが、蓋体23が開放することのない予め設定した十分な係合代を確保できる寸法に設定されている。即ち、この隙間分、ロック部材38が回動した状態で、係合爪部40と係合受部16との係合代を十分に確保するように構成している。
【0031】
このように構成した移動部材54は、ロック部材38の係合爪部40が肩体14の係合受部16に十分な係合代で係合した状態(以下「正常係合状態」と称する。)では、ロック位置に移動可能である。そして、このロック位置に移動することにより、ロック解除操作部28の操作によるロック部材38の係合解除方向への移動を阻止する。また、移動部材54は、係合爪部40と係合受部16との係合代が正常係合状態より少なく不十分で、内鍋10の内圧が高くなると蓋体23が開放する可能性がある状態(以下「異常係合状態」と称する。)では、ロック部材38の受部41に干渉(図10,図8(B)参照。)することにより、ロック位置への移動が阻止される。なお、この第3移動位置であるハーフロック位置に移動した状態で、ロック解除操作部28が操作されると、ロック部材38の係合解除方向への移動を許容してしまう。
【0032】
そして、本実施形態の蓋体23には、検知部材として揺動部材61を配設し、この揺動部材61の近接および離反を非接触式センサであるフォトインタラプタ67によって検出する。これにより、フォトインタラプタ67の出力信号により蓋体23の開閉状態を検出できるように構成している。また、本実施形態では、この揺動部材61を揺動可能な状態で配設する保持部56を、移動部材54に設けることにより、1個のフォトインタラプタ67で、移動部材54の移動状態を更に検出できるように構成している。
【0033】
前記揺動部材61は、図3および図5に示すように、移動部材54に一体的に設けた保持機構である保持部56に揺動可能な状態で配設される。この保持部56は、移動部材54の側部に突設されており、一対の支持壁57A,57Bを備えている。これら支持壁57A,57Bの上部には装着孔58が設けられ、これらに別体のピン59を貫通させることにより、揺動部材61を揺動可能に装着する。また、支持壁57A,57Bには、装着孔58の上端後側に揺動部材61の回動を停止するストッパ部60が架設されている。
【0034】
前記揺動部材61は、ストッパ部60に対して所定間隔をもって下側に位置して延びる棒状の検知部62を備えている。この検知部62の先端には、ロック位置でフォトインタラプタ67の発光部68と受光部69との対向空間内の検出領域を除く位置に突出し(図6(B)参照)、対向空間内に残存した状態をなすように突出部63が設けられている。この揺動部材61には、下向きに突出する釣合部64が設けられ、この釣合部64の上部に装着孔58に対応する装着孔65が設けられている。この釣合部64の下端には、別体の錘66が配設され、検知部62が水平方向に延びた状態で釣り合うように構成している。そして、この揺動部材61は、検知部62がストッパ部60に当接した状態で、検知部62がフォトインタラプタ67の対向空間内の検出領域を除く位置に一部が進入した状態を維持するように構成している(図6(C)参照)。
【0035】
この揺動部材61を保持部56に揺動可能に保持させると、検知部62が支持壁57A,57Bに対して直交(水平)方向に延びた第1可動位置から、検知部62がストッパ部60に当接した第2可動位置にかけて移動可能である。そして、この揺動部材61は、蓋体23を閉塞した状態で移動部材54が第1ソレノイド50によってロック位置に移動されると、第1可動位置を保持した状態で、保持部56を介してロック部材38の側に移動する。また、揺動部材61は、蓋体23が開放されると、錘66が下側に位置する状態を保持しようとすることにより、ピン59を支点として第2可動位置に回動する。但し、この回動は、検知部62がストッパ部60に当接した状態で停止する。
【0036】
前記フォトインタラプタ67は、揺動部材61の検知部62の近接および離反を非接触状態で検出するもので、発光素子を配設した発光部68と、受光素子を配設した受光部69とを備えている。これら発光部68と受光部69とは、略U字形状をなすガイド枠の対向壁部内に配設されている。このガイド枠は、対向空間内に揺動部材61を移動可能にガイドするものである。そのため、この対向空間は、その中の一部が検出領域を構成する。このフォトインタラプタ67は、検出領域に遮蔽物である検知部62が存在しない状態では、発光素子の光を受光素子が受光可能であり、検出領域に検知部62が進入した状態では、発光素子の光を受光素子が受光できない。そして、検知部62の検出状態を意味する受光状態または非受光状態を、所定の信号としてマイコン82に出力する。
【0037】
このフォトインタラプタ67は検出基板70に実装され、揺動部材61の検知部62と対応する高さに設置されている。ここで、受光部69の実質的な検出部は、対向面に設けた露出孔69aの内部に位置する。そのため、この露出孔69aの軸方向の同一形状領域が、検出領域を構成する。この露出孔69aは、図6(B)に示すように、移動部材54がロック位置にある状態で、揺動部材61の突出部63の上方に位置され、この突出部63では発光部68からの受光路を遮断しないように構成している。また、露出孔69aは、図6(C)に示すように、検知部62がストッパ部60に当接した第2可動位置で、検知部62の下端より下側に位置され、この第2可動位置で検知部62により受光路を遮断しない構成している。そして、このフォトインタラプタ67は、蓋体23が閉じている状態で、かつ、移動部材54がアンロック位置およびハーフロック位置に移動した状態では検知部62で受光路を遮断し、移動部材54がロック位置に移動した状態では突出部63が受光路下に位置し、検知部62で受光路を遮断しない位置に設置されている。即ち、移動部材54がアンロック位置からハーフロック位置までの移動距離(間隔)をS1、アンロック位置からロック位置までの移動距離をS2とすると、これらはS1<S2である。そのため、その移動距離S1以下の領域が、フォトインタラプタ67の非検出領域となるように設置する。即ち、非検出領域とは、検知部62が受光路を遮断している状態になっているため、フォトインタラプタ67の受光部69は、発光部68の発光素子からの光を受光できない領域を意味する。これにより、移動部材54を介して揺動部材61が距離S1を越えて移動すると、検知部62が非検出領域から逸脱し、その状態を検出できるように構成している。
【0038】
前記内蓋71は、図1に示すように、金属製の内蓋本体72と、蓋パッキン73と、樹脂枠74とを備え、ヒータカバー42の下部に着脱可能に配設されるものである。この内蓋71には、下板35の第1収容部45内に配置されるリリーフ弁75と、第2収容部48内に配置される調圧弁(図示せず)とが一体的に配設されている。
【0039】
前記内蓋本体72は、放熱板の役割をなすもので、各収容部45,48と対応する位置には内鍋10内と連通する開口部15が設けられている。前記蓋パッキン73は、内鍋10の開口内周部に密着してシールするものである。前記樹脂枠74は、内蓋本体72の外周部に挟み込むことによって、蓋パッキン73を内蓋本体72との間に離脱不可能に装着するものである。
【0040】
前記リリーフ弁75は、台形筒状をなす弁座部材76と、該弁座部材76を覆うカバー78と、これらの内部に収容された球状部材80とを備えている。弁座部材76は、内鍋10内が沸騰状態で、該内鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積の通気孔77を備えている。カバー78は、第1収容部45の駆動用開口部15に対応し、パッキン47を介して第1ソレノイド50の押圧部材52を進退可能に挿通する挿通孔79を備えている。球状部材80は、転動して通気孔77を閉塞することにより、内鍋10内の空気が外部に排気されるのを防止し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧可能とする。また、押圧部材52に押圧されて排気通路の閉塞を解除(開放)することにより、内鍋10の内圧を大気圧に戻す(平衡)ものである。本実施形態では、この球状部材80は、内鍋10内の圧力が1.30atmに昇圧すると、その圧力で通気孔77上から離反するように転動する重量のものを使用している。
【0041】
前記調圧弁は、スプリングにより下向きに付勢された弁体を備え、該弁体により通気孔を閉塞したものである。この調圧弁は、押下部材53によりスプリングの付勢力が変更されることにより、通気孔を閉塞する力が変更される。これにより、内鍋10内を1.15atmから1.20atmの範囲で加圧可能な圧力を変更可能とするものである。
【0042】
なお、前記内蓋71を装着した蓋体23は、リリーフ弁75および調圧弁の内部、これらと収容部45,48との隙間から、内蓋本体72とヒータカバー42との隙間、被接続部49内、および、蒸気口ユニット30内を経た経路が、内鍋10内と外部とを連通させる排気通路を構成する。
【0043】
この炊飯器には、肩体14の正面上部に、ユーザが炊飯条件を入力するためのスイッチと、その選択状態や動作状態を表示する液晶表示板とを有する操作パネル81が配設されている。また、外装体と保護枠18との間には制御基板(図示せず)が配設されている。そして、この炊飯器は、図11(A)に示すように、制御基板に実装した制御手段であるマイコン82により、予め設定したプログラムに従って制御が実行される。
【0044】
本実施形態では、操作パネル81に配設した炊飯スイッチの操作を検出すると、液晶表示板によって設定された炊飯条件に基づいて、炊飯プログラムに従って、予熱、中ぱっぱ、沸騰維持、および、2度炊きを含むむらしの各工程からなる炊飯処理を実行した後、引き続いて、炊き上げたご飯を所定温度に保温する保温処理を実行する。そして、炊飯処理では、炊飯スイッチの受付直後、および、中ぱっぱ工程を開始時に、第1ソレノイド50の駆動を伴って、フォトインタラプタ67からの信号に基づいて、蓋体23の開閉状態を検出(判断)した後、炊飯器本体11の係合受部16およびロック部材38の係合爪部40の係合状態を検出(判断)する蓋状態検査工程を実行する。そして、蓋体23が閉塞状態であると判断し、かつ、係合受部および係合爪部40が正常係合状態であると判断した場合には、炊飯処理を実行(続行)する(第1処理)。一方、蓋体23が開放状態であると判断した場合、および、係合受部16および係合爪部40が異常係合状態であると判断した場合には、第1ソレノイド50への通電を停止し、移動部材54をアンロック作動させて炊飯処理を停止する。かつ、制御基板に実装した圧電ブザーまたは液晶表示板に設けた表示部によりユーザへ知らせる報知処理を実行する(第2処理)。
【0045】
次に、マイコン82による蓋体23の開閉状態判断、および、係合受部16と係合爪部40の係合状態判断について説明する。
【0046】
蓋状態検出処理では、まず、第1ソレノイド50に対して通電を遮断したアンロック作動状態で、フォトインタラプタ67の信号に基づいて蓋体23の開閉状態を判断する。そして、蓋体23が開状態であると判断した場合には炊飯処理を停止し、蓋体23が閉状態であると判断した場合には係合受部16と係合爪部40の係合状態判断を行う。この係合状態判断は、第1ソレノイド50に対して通電を行うロック作動状態で、フォトインタラプタ67の信号に基づいて判断する。
【0047】
具体的には、炊飯器本体11に対して蓋体23を略水平方向に位置するように閉塞し、第1ソレノイド50を介して移動部材54をアンロック位置に移動させている状態では、揺動部材61は図3、図4および図6(A)に示す状態をなす。この状態では、第1可動位置にある揺動部材61の検知部62がフォトインタラプタ67の検出領域に進入しているため、該フォトインタラプタ67はオフしている。そのため、マイコン82は、図11(B)に示すように、第1ソレノイド50を駆動していないオフ状態で、フォトインタラプタ67がオフしている状態を検出することにより、蓋体23を閉塞した状態を判断できる。なお、移動部材54をアンロック作動させた状態では、リリーフ弁75は、球状部材80が通気孔77から離反され、内鍋10内が大気開放されている。
【0048】
また、ユーザが炊飯器本体11に対して蓋体23の開放操作を行うと、蓋体23は、図7(A)に示す傾斜した状態を経て、図7(B)に示す略上向きに延びる位置まで回動する。そして、揺動部材61が保持部56のストッパ部60に当接するまでは、図7(A)に示すように、揺動部材61の検知部62は、水平方向に延びた状態を維持する。また、蓋体23の開放状態では、図6(C)および図7(B)に示すように、揺動部材61の検知部62がフォトインタラプタ67の検出領域から離反し、該フォトインタラプタ67はオン信号を出力している。そのため、マイコン82は、図11(B)に示すように、第1ソレノイド50を駆動していないオフ状態で、フォトインタラプタ67がオン信号を出力している状態を検出することにより、蓋体23を開放した状態を判断できる。
【0049】
さらに、炊飯器本体11に対して蓋体23を閉塞し、係合爪部40と係合受部16とが正常係合状態である場合に、第1ソレノイド50をロック作動させると、移動部材54を介して揺動部材61は図6(B)、図8(A)および図9に示す状態に位置する。この状態では、揺動部材61の検知部62がフォトインタラプタ67の検出領域から離反しているため、該フォトインタラプタ67はオン信号を出力している。そのため、マイコン82は、図11(B)に示すように、第1ソレノイド50を駆動しているオン状態で、フォトインタラプタ67がオン信号を出力している状態を検出することにより、係合爪部と係合受部16とが正常係合状態であることを判断できる。なお、移動部材54をロック作動させた状態では、リリーフ弁75は、球状部材80が通気孔77上に転動し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧可能となっている。
【0050】
そして、炊飯器本体11に対して蓋体23を閉塞し、係合爪部40と係合受部16とが異常係合状態である場合に、第1ソレノイド50をロック作動させると、移動部材54を介して揺動部材61は図6(D)、図8(B)および図10に示す状態に位置する。この状態では、揺動部材61の検知部62がフォトインタラプタ67の検出領域に進入している(検出領域から離脱した状態でない)ため、該フォトインタラプタ67はオフしている。そのため、マイコン82は、図11(B)に示すように、第1ソレノイド50を駆動しているオン状態で、フォトインタラプタ67がオフしている状態を検出することにより、係合爪部40と係合受部16とが異常係合状態であることを検出できる。なお、この異常係合状態でも、リリーフ弁75の球状部材80は通気孔77上に転動し、内鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧可能となっている。勿論、押圧部材52の構成を変更することにより、異常係合状態では、球状部材80が通気孔77上に転動しないように構成することも可能である。
【0051】
このように、本実施形態の炊飯器は、1個のセンサ67で、蓋体23の開閉状態、および、係合爪部40と係合受部16との係合状態を判断できる。そのため、製品コストの増大を抑制できるとともに、大型化を防止できる。しかも、揺動部材61を配設する移動部材54は、リリーフ弁75を開閉作動させる第1ソレノイド50を駆動手段として兼用しているため、部品点数の削減を図り、コストダウンを図ることができる。
【0052】
しかも、揺動部材61には、移動部材54をロック位置に移動させた状態で、発光部68と受光部69との対向空間内の検出領域を除く位置に突出する突出部63を設けている。また、揺動部材61は、ストッパ部60に当接した状態で、発光部68と受光部69との対向空間内の検出領域を除く位置に一部が進入した状態を維持するように構成としている。そのため、移動部材54が第1移動位置から第2移動位置に移動する際、および、揺動部材61が第2可動位置から第1可動位置に揺動する際に、揺動部材61の検知部62が発光部68または受光部69の筐体に干渉することを防止できる。その結果、揺動部材61の作動不良を防止できる。
【0053】
また、検知部材を揺動可能に軸支される揺動部材61により構成しているため、蓋体23の開放を確実かつ迅速に検出することができる。即ち、検知部材を特許文献1,2のような球状部材により構成した場合には、容器と球状部材との抵抗、および、容器の傾斜により蓋体が開放操作されても迅速に蓋体の開放を検出できない。しかし、本実施形態では、揺動部材61により構成しているため、蓋体23の開放と同時に揺動が開始され、迅速に開放を検出できる。しかも、特許文献1,2では、蓋体の開閉時に球状部材が容器に衝突することにより異音を発する。しかし、本実施形態では、このような衝突による異音を発することもない。
【0054】
次に、マイコン82による制御(炊飯処理)について具体的に説明する。
【0055】
まず、ユーザが炊飯器を購入した状態では、マイコン82は、一次電池(図示せず)による3Vの電圧によるバックアップモードで動作している。この状態で、電源コードの接続により商用電源が投入されると、電源回路を介してゼロクロスパルスが入力されることにより、商用電源からの電圧で動作を開始する。そして、操作パネル81のスイッチが操作されるまで待機し、いずれかの操作を検出すると、その入力処理を実行する。
【0056】
そして、炊飯スイッチの操作を検出すると、マイコン82は、図12に示すように、まず、ステップS1で、第1蓋状態検査工程を実行する。この第1蓋状態検査工程は、図13(A)に示すように、ステップS1−1で、第1ソレノイド50への通電を遮断したアンロック作動状態で、フォトインタラプタ67からの信号により蓋体23の開閉状態を判断する。そして、ステップS1−2で、蓋体23が閉塞状態であると判断した場合にはステップS1−3に進み、蓋体23が開放状態であると判断した場合にはステップS1−8に進む。ステップS1−3では、第1ソレノイド50への通電(オン)を行ったロック作動状態とした後、ステップS1−4で、フォトインタラプタ67からの信号により係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断する。その後、ステップS1−5で、第1ソレノイド50への通電を遮断(オフ)してアンロック作動させた後、ステップS1−6で、正常係合状態であると判断した場合にはステップS1−7に進み、異常係合状態であると判断した場合にはステップS1−8に進む。蓋体23が閉塞され、かつ、正常係合状態である場合には、ステップS1−7で、蓋体23の正常状態であるか異常状態であるかを示すフラグfaに0(正常状態)を入力してリターンする。また、蓋体23が開放され、または、蓋体23が異常係合状態である場合には、ステップS1−8で、faに1(異常状態)を入力してリターンする。なお、所定時刻または所定時間後に炊飯を開始する予約炊飯の場合には、予約スタート時である炊飯スイッチの操作時にも、同様にフタ状態検査工程を実行する。
【0057】
この第1蓋状態検査工程が完了すると、図12に示すように、ステップS2で、faが0である場合、即ち、蓋体23が閉塞され、かつ、係合受部16と係合爪部40とが正常係合状態である場合には、ステップS3に進む。また、faが1である場合、即ち、蓋体23が開放されている場合、または、係合受部16と係合爪部40とが異常係合状態である場合には、ステップS11に進む。
【0058】
ステップS3では、誘導加熱コイル19に通電を開始し、内鍋10の温度が約50℃程度となるように温度調節して加熱する予熱工程を実行する。
【0059】
そして、予め設定した時間が経過することにより予熱工程が終了すると、ステップS4で、第2蓋状態検査工程を実行する。この第2蓋状態検査工程は、蓋体23の開閉状態、および、係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断した後に、蓋体23が閉塞状態かつ正常係合状態である場合には第1ソレノイド50への通電を遮断しない点で、第1蓋状態検査工程と相違する。即ち、この第2蓋状態検査工程は、図13(B)に示すように、ステップS4−1で、第1ソレノイド50への通電を遮断したアンロック作動状態で、フォトインタラプタ67からの信号により蓋体23の開閉状態を判断する。そして、ステップS4−2で、蓋体23が閉塞状態であると判断した場合にはステップS4−3に進み、蓋体23が開放状態であると判断した場合にはステップS4−7に進む。ステップS4−3では、第1ソレノイド50への通電を行ったロック作動状態とした後、ステップS4−4で、フォトインタラプタ67からの信号により係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断する。その後、ステップS4−5で、正常係合状態であると判断した場合にはステップS4−6に進み、異常係合状態であると判断した場合にはステップS4−7に進む。蓋体23が閉塞され、かつ、正常係合状態である場合には、ステップS4−6で、faに0を入力してリターンする。また、蓋体23が開放され、または、蓋体23が異常係合状態である場合には、ステップS4−7で、faに1を入力した後、ステップS4−8で、第1ソレノイド50への通電を遮断してリターンする。
【0060】
この第2蓋状態検査工程が完了すると、図12に示すように、ステップS5で、faが0である場合にはステップS6,7に進み、faが1である場合にはステップS11に進む。
【0061】
ステップS6,7では、図13(B)のステップS4−3による第1ソレノイド50への通電を維持したまま、昇温工程と容量判別工程とを並行処理する。ステップS6の昇温工程は、誘導加熱コイル19に対して100%(フルパワー)の電力で通電し、内鍋10内の米飯を含む水を沸騰させる。なお、この昇温工程では、第1ソレノイド50が通電状態を維持されている。また、球状部材80は通気孔77上に転動して通気孔77を閉塞している。その結果、内鍋10内は徐々に昇圧し、大気圧より高い圧力状態となる。ステップS7の容量判別工程は、加熱中の内鍋10の温度の上昇勾配により、内鍋10内に収容された炊飯容量を判別する。
【0062】
昇温工程が終了すると、ステップS8で、蓋体用温度センサ44の入力値に基づいて誘導加熱コイル19を制御して沸騰維持工程を実行する。そして、予め設定した時間が経過することにより沸騰維持工程が終了すると、ステップS9で、誘導加熱コイル19に対する通電量を上げて炊き上げ工程を実行する。なお、沸騰維持工程では、電力制御により内鍋10内が一時的に減圧され、大気圧より低くなることがある。この際には、第1ソレノイド50への通電を遮断して一時的に大気開放する。そして、大気開放後には、直ぐに第1ソレノイド50への通電を行うことにより、リリーフ弁75を閉弁状態とする。この際にも、前記と同様に、蓋状態検査工程を実行する。
【0063】
炊き上げ工程で、検出温度に基づいて内鍋10内のドライアップを検出すると、ステップS10でむらし工程を実行する。このむらし工程は、第1ソレノイド50への通電を遮断し、内鍋10内への圧力投入を解除する。そして、胴ヒータ21および蓋ヒータ43に通電を開始する一方、誘導加熱コイル19への通電は遮断する。
【0064】
予め設定した時間が経過することにより、むらし工程が終了すると炊飯処理を終了し、引き続いて保温処理に移行する。
【0065】
一方、第1および第2蓋状態検査工程にて、蓋体23の状態が異常であると判断した場合には、ステップS11で、炊飯処理の終了処理を実行した後、ステップS12で、圧電ブザーまたは液晶表示板によりユーザへ知らせる報知処理を実行する。なお、本実施形態では、蓋体23が開放状態であると判断した場合と、ロック部材38が異常係合状態であると判断した場合の両方を、同一のフラグfaによって記憶する構成としたが、それぞれ異なるフラグで記憶するようにしてもよい。
【0066】
このように、本実施形態の炊飯器では、第1ソレノイド50への通電状態を伴って、1個のフォトインタラプタ67によって揺動部材61の回動位置を検出することにより、蓋体23の開閉状態と、係合受部16と係合爪部40との係合状態を検出することができる。そして、蓋体23が開放されている場合、および、係合受部16と係合爪部40とが異常係合状態である場合には、炊飯処理を停止し、報知処理を行う。
【0067】
そのため、蓋体23が開放された状態で炊飯処理が実行されることを防止できる。よって、温度センサ22,44により確実に内鍋10内の温度を検出し、設計通りの炊飯処理を実行できる。また、係合受部16と係合爪部40の異常係合状態で炊飯処理が実行されることを防止できる。よって、異常係合状態で炊飯処理が実行されることにより、内鍋10の内圧が高くなることによる突発的な蓋体23の開放を確実に防止できる。さらに、蓋体23の閉塞状態に異常がある場合には、第1ソレノイド50への通電を遮断してアンロック作動させるため、無駄な電力消費を防止できる。
【0068】
しかも、本実施形態では、予約炊飯の予約スタート時、炊飯開始直後の予熱工程、および、リリーフ弁75の作動開始時(昇温工程等)に、蓋状態検査工程を実行するため、ユーザの誤使用による異常炊飯を防止できる。即ち、ユーザは、「炊きこみ」を選択した場合、炊飯処理の実行中に蓋体23を開放して具を内鍋10に入れることがある。また、通常の白米メニューを選択していても、途中で蓋体23を開放し、その後、蓋体23の閉め忘れや、蓋体23を確実にロックしていない場合などが考えられる。しかし、本実施形態では、ユーザが蓋体23を開閉可能な状態である内鍋10の内圧が大気圧以下で、蓋体23を開放可能な時に蓋状態検査工程を実行するため、誤使用による異常炊飯も確実に防止できる。
【0069】
図14および図15は、第2実施形態の炊飯器のマイコン82による制御を示す。この第2実施形態では、炊飯処理が中断される停電から復帰した状態で、蓋体23の開閉を判断し、蓋体23の閉塞を検出すると、係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断する。そして、蓋体23の開放状態または異常係合状態の場合、炊飯処理を停止するとともに、その状況を報知する。また、炊飯処理および保温処理を実行していない待機状態で、蓋体23の開閉を判断し、蓋体23の閉塞を検出すると、係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断する。そして、蓋体23の開放状態または異常係合状態の場合、ユーザが操作パネル81の炊飯スイッチを操作した際に、その状況を報知するようにした点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0070】
次に、マイコン82による第2実施形態の制御について具体的に説明する。
【0071】
マイコン82は、ユーザが炊飯器を購入した状態では、一次電池(図示せず)による3Vの電圧によるバックアップモード(以下のステップS21)で動作している。
【0072】
この状態で、マイコン82は、図14に示すように、ステップS20で、電源回路を介してゼロクロスパルスが入力されか否かにより、商用電源に接続されているか否かを検出する。そして、商用電源への接続を検出しない場合にはステップS21の停電処理を継続する。また、商用電源が投入され、ゼロクロスパルスが入力されることにより商用電源からの通電を検出した場合には、ステップS22に進む。
【0073】
ステップS22では、停電前の状態と停電復帰時の状態とに基づいた停電復帰処理と、蓋状態検査工程とを実行してステップS23に進む。具体的には、停電復帰処理では、停電前の状態が炊飯処理の実行中であった場合で、停電時間が10分未満である場合には、停電前の状態から炊飯処理を継続して実行する。また、停電前がそれ以外の状態では、予約炊飯を含む炊飯処理および保温処理のいずれも実行していない待機状態とするものである。また、蓋状態検査工程は、第1実施形態の第1蓋状態検査工程と同様に、第1ソレノイド50の非作動状態でフォトインタラプタ67により蓋体23の開閉状態を検出し、閉状態である場合には第1ソレノイド50の作動状態として、フォトインタラプタ67により係合受部16と係合爪部40との係合状態を判断する。そして、蓋体23が開状態である場合、または、蓋体23は閉塞されているが係合受部16と係合爪部40が異常係合状態である場合には、報知処理を実行する。
【0074】
ステップS23では、蓋体23が開放されているか否かを示すフラグfbが0であるか否かを検出する。そして、fbが0(閉塞状態)である場合にはステップS24に進み、fbが1(開放状態)である場合にはステップS26に進む。
【0075】
ステップS24では、第1ソレノイド50への通電を遮断した状態を維持し、フォトインタラプタ67からの信号により蓋体23が開放されたか否かを検出する。そして、フォトインタラプタのオン状態が入力されることにより、蓋体23の開放を検出した場合にはステップS25に進み、fbに1を入力して蓋体23が開放されていることを記憶してステップS26に進む。また、蓋体23の開放を検出しない場合には図15に示すステップS34に進む。
【0076】
ステップS26では、第1ソレノイド50への通電を遮断した状態を維持し、フォトインタラプタ67からの信号により蓋体23が閉塞されたか否かを検出する。そして、フォトインタラプタのオフ状態が入力されることにより、蓋体23の閉塞を検出した場合にはステップS27に進み、蓋体23の閉塞を検出しない場合には、そのまま図15に示すステップS34に進む。
【0077】
ステップS27では、fbに0を入力して蓋体23が閉塞されていることを記憶する。その後、ステップS28で、第1ソレノイド50に対して所定時間通電を行うことにより、移動部材をロック作動させる。そして、ステップS29で、フォトインタラプタ67からの信号により、係合受部16と係合爪部40とが正常係合状態であるか、異常係合状態であるかを判断する。その後、ステップS30で、第1ソレノイド50への通電を遮断して、移動部材54をアンロック作動させる。そして、ステップS31で、蓋体23が正常係合状態であると判断した場合にはステップS32に進み、蓋体23の係合状態を示すフラグfcに0(正常係合状態)を入力して図15に示すステップS34に進む。また、蓋体23が異常係合状態であると判断した場合にはステップS33に進み、fcに1(異常係合状態)を入力して図15に示すステップS34に進む。
【0078】
図15に示すように、ステップS34では、操作パネル81のスイッチが操作されたか否かを検出する。そして、いずれかのスイッチの操作を検出するとステップS35に進み、いずれのスイッチ操作も検出しない場合にはステップS39に進む。
【0079】
ステップS35では、操作を検出したスイッチが炊飯スイッチであるか否かを判断する。そして、炊飯スイッチでない場合にはステップS36に進み、操作を検出したスイッチに対応するスイッチ受付処理を実行してステップS39に進む。また、炊飯スイッチである場合にはステップS37に進む。
【0080】
ステップS37では、fbに1が入力された蓋開放状態であるか否か、および、fcに1が入力された異常係合であるか否かを読み込む。そして、蓋体23が閉塞され、正常係合状態である場合(fb,fc=0)にはステップS36に進み、炊飯スイッチの操作を受け付ける。これにより、このスイッチ受付処理と並行して、予約炊飯を含む炊飯処理が実行される。また、蓋体23が開放されている場合、および、異常係合状態である場合にはステップS38に進み、炊飯スイッチの操作を受け付けることなく、圧電ブザーまたは液晶表示板によりユーザへ知らせる報知処理を実行した後、ステップS39に進む。
【0081】
ステップS39では、ゼロクロスパルス信号の入力が途絶えることにより、商用電源からの通電が遮断されたか否かを検出する。そして、商用電源からの通電が遮断された場合には、図14に示すステップS20に戻る。一方、商用電源からの通電が遮断されていない場合には、図14に示すステップS23に戻る。
【0082】
なお、第2実施形態では、炊飯スイッチの操作を受け付けた後に、第1実施形態と同様の蓋状態検査工程を含む炊飯処理を実行してもよい。また、第2実施形態では、炊飯スイッチ以外のスイッチが操作された場合でも、報知処理を実行する構成としてもよい。
【0083】
このように、第2実施形態では、電池によるバックアップモードの実行状態で商用電源からの通電を検出すると、商用電源からの電力で動作を開始し、その直後に蓋状態検査工程を実行した後、フォトインタラプタ67に係合受部16と係合爪部40との係合状態を更に検出する構成としている。そのため、停電により炊飯処理が一時的に停止された状態で、ユーザが蓋体23を開閉することにより異常係合状態となった場合に、その状態を確実に検出できる。その結果、意図しない蓋体23の開放後の蓋体23の閉め忘れや、蓋体23を確実にロックしていない状態で炊飯することを確実に防止できるとともに、設計通りの制御(炊飯処理)を実行させることができる。
【0084】
また、通常の使用時には、蓋体23の開閉を検出すると、係合受部16と係合爪部40との係合状態検査工程を実行するため、炊飯スイッチの操作と略同時にユーザに蓋体23の閉塞状態に異常があるか否かを認識させることができる。そのため、ユーザの使用上の利便性を向上できるうえ、予め設計した制御を確実に実行させることができる。
【0085】
なお、本発明の家庭用電気製品は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、前記実施形態では、揺動部材61の保持部56を移動可能な移動部材54に配設し、炊飯器本体11の係合受部16とロック部材38の係合爪部40との係合状態も検出可能に構成したが、蓋体23の下板35に配設することにより、蓋体23の開閉状態のみ検出可能に構成してもよい。
【0087】
また、前記実施形態では、蓋状態検出手段として発光部68と受光部69とを対向配置したフォトインタラプタ67を用い、検知部材である揺動部材61が発光部68から受光部69への透光を遮断することにより、近接および離反状態を検出する構成としたが、反射型のフォトリフレクタを用い、揺動部材61を反射性を有する材料により構成し、または、塗装により表面処理を施し、これら受光部69の受光路に進入することにより受光可能となり、オン信号を出力する構成としてもよい。但し、この場合には、発光部68と受光部69とは、ガイド枠における同一の壁部に配設する。
【0088】
また、前記実施形態では、フォトインタラプタ67は、揺動部材61を検出することによりオン信号を出力し、検出しない状態では何ら信号を出力しないオフ状態となる構成としたが、検出することにより何ら信号を出力しないオフ状態となり、検出しない状態でオン信号を出力する構成としてもよい。勿論、検出した場合と検出しない場合に異なる信号(例えばHi信号とLow信号)を出力する構成としてもよい。
【0089】
さらに、前記実施形態では、揺動部材61を水平方向に延びる検知部62と、垂直方向に延びる釣合部64とからなる逆L字形状に形成したが、図16に示すように、垂直方向に垂下する検知部62のみにより構成してもよい。また、揺動部材61の検知部62は、水平方向に延びる構成に限られず、所定角度で傾斜する構成としてもよい。
【0090】
さらにまた、各実施形態では、リリーフ弁75を動作させる第1ソレノイド50のロッドに移動部材54を配設し、リリーフ弁75の開閉動作に連動してロック部材38をロックおよびアンロックする構成としたが、専用のソレノイド(駆動手段)を設けてもよい。勿論、ソレノイドの代わりにモータで駆動してもよい。
【0091】
また、前記各実施形態では、検知部材である揺動部材61の移動状態を非接触式センサであるフォトインタラプタ67により検出する構成としたが、機械式センサであるスイッチにより検出してもよく、そのセンサの構成は希望に応じて変更が可能である。しかも、揺動部材61は1個のセンサ67により検出する構成に限られず、2以上のセンサにより検出する構成としてもよい。
【0092】
そして、各実施形態では、家庭用電気製品として炊飯器を例に挙げて説明したが、自動製パン機や電気ポット、開閉可能な蓋体23を有するその他の家庭用電気製品でも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…内鍋
11…炊飯器本体
19…誘導加熱コイル
22…内鍋用温度センサ
23…蓋体
37…ヒンジ接続部
54…移動部材
56…保持部(保持機構)
60…ストッパ部
61…揺動部材(検知部材)
62…検知部
63…突出部
67…フォトインタラプタ(蓋状態検出手段)
68…発光部
69…受光部
82…マイコン(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口を有する本体と、
前記本体に回動可能に配設され、該本体の上端開口を閉塞する蓋体と、
前記蓋体に設けた保持機構と、
前記保持機構に揺動可能に軸支され、前記蓋体の閉状態で第1可動位置に回動し、開状態で第2可動位置に回動する揺動部材と、
前記揺動部材の回動状態を検出することにより蓋体の開閉状態を示す信号を出力する蓋状態検出手段と、
を備えることを特徴とする家庭用電気製品。
【請求項2】
前記蓋状態検出手段は、発光部と受光部とを有し、前記揺動部材が受光部の受光路に進入することにより該揺動部材の回動状態を非接触状態で検出する非接触式センサからなることを特徴とする請求項1に記載の家庭用電気製品。
【請求項3】
前記蓋状態検出手段は、略U字形状をなしその対向空間内に前記揺動部材を移動可能に配設するガイド枠内に配設されており、
前記保持機構に、前記蓋体の開状態で第1可動位置から第2可動位置に揺動した揺動部材に当接するストッパ部を設けるとともに、
前記揺動部材を、前記ストッパ部に当接した状態で、前記ガイド枠の対向空間内における受光部の検出領域を除く位置に一部が進入した状態を維持するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の家庭用電気製品。
【請求項4】
前記蓋状態検出手段からの信号を受信し、蓋開状態である場合に報知処理を実行する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の家庭用電気製品。
【請求項5】
商用電源からの通電を検出すると、電池によるバックアップモードの実行状態から商用電源による実行状態に移行し、その直後に前記蓋状態検出手段により前記係合受部と係合爪部との係合状態を更に検出する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の家庭用電気製品。
【請求項6】
前記本体は、着脱可能に収容する内鍋を備える一方、
前記蓋体は、前記内鍋を閉塞し、該内鍋内と外部とを連通する排気通路と、該排気通路を閉塞して前記内鍋内を加圧するとともに前記排気通路を開放して前記内鍋内の圧力を外圧と平衡させる圧力投入手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の家庭用電気製品。
【請求項7】
本体の上端開口を開閉可能な蓋体により閉塞するようにした家庭用電気製品の蓋状態検出方法であって、
前記蓋体に揺動可能に軸支され、前記蓋体の閉状態で第1可動位置に回動し、開状態で第2可動位置に回動する揺動部材を設け、
前記揺動部材の回動位置を検出し、揺動部材が第1可動位置に回動している場合に前記蓋体が閉状態であると判断する一方、揺動部材が第2可動位置に回動している場合に前記蓋体が開状態であると判断する
ことを特徴とする家庭用電気製品の蓋状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−246721(P2010−246721A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99062(P2009−99062)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】