説明

対物レンズ、およびそれを搭載した光ディスク装置

【課題】
溝構造を持つガイド層と複数の記録層が積層された多層ディスクにおいて、ガイド層に集光する光ビームの収束・発散具合が対物レンズに対して変化すると、球面収差が発生する。これにより、ガイド層に集光する光ビームの集光性能が劣化する恐れがある。
【解決手段】
各記録層に対して、対物レンズの作動距離を略等しくする。実現する手段としては、例えば対物レンズのI/O特性を最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを用いて光ディスクから情報を再生、または光ディスクに情報を記録する光ディスク装置、および該光ディスク装置に搭載する対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Blu-ray Disc(TM)規格の光ディスクにおいて、記録容量を増加させるために3層や4層の記録層を有する光ディスクが開発され、規格化が行われた。今後更なる大容量化を目的として、より多数の記録層を有する光ディスクの開発が行われると予想されている。たとえば特許文献1および非特許文献1では、トラッキングサーボ制御を行うための物理的な溝構造を持つ層(以下、ガイド層)をもうけ、記録再生を行う層(記録層)にはランド/グルーブ構造を有さない光ディスク(グルーブレスディスク)が示されており、記録層を多数積層する場合でも製造が容易であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-40093号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Ogasawara et.al.、 "16 Layers Write Once Disc with a Separated Guide Layer"、ISOM2010、Th-L-07
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなグルーブレスディスクを記録再生する際の課題のひとつとして、対物レンズによって第1の光ビームを記録層に集光させると同時に、同一の対物レンズを用いて第2の光ビームをガイド層に集光させる必要がある。
【0006】
ここで、再生および記録時において、対物レンズとディスク表面の間隔として定義される作動距離が記録層毎に異なると、ガイド層の位置は固定のため、ガイド層に集光させる光ビームの収束・発散具合を対物レンズに対して記録層毎に異なるように設定することになる。
【0007】
対物レンズに入射する光ビームの収束・発散具合が変わると、それに伴って球面収差が発生するため、ガイド層に集光する光ビームの集光性能が劣化、または該球面収差を補正するための素子が新たに必要になる等の課題が生じる。ガイド層に集光する光ビームに対して、新たに球面収差補正素子を追加するのは、光ディスク装置の価格、大きさ、複雑さの観点から不利となる。
【0008】
そこで本発明の目的は、装置の合理化やガイド層に集光する光ビームの集光性能を確保する光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は特許請求の範囲に記載の発明により解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の合理化やガイド層に集光する光ビームの集光性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】光ディスク装置の一実施例を示すブロック構成図
【図2】光ディスクの構造を示す概略図
【図3】光ディスク装置の処理フローを示す概略図
【図4】対物レンズの作動距離を示す概略図
【図5】光ディスク装置の光学系を示す概略図
【図6】対物レンズに入射した光ビームの集光点を示す概略図
【図7】対物レンズのI/O特性を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明に従う光ディスク装置の一実施例を示すブロック構成図である。光ディスク装置101は装置に装着された光ディスク102にレーザ光を照射することで情報の記録または再生を行い、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)などのインターフェースを通じてPC(Personal Computer)などのホスト103と通信を行う。
【0014】
光ディスク102の構造を図2に例示する。光ディスク102は例えばトラック(ガイド溝)の構造を持つガイド層と、トラックの構造を持たないN個の記録層(N≧1、Nは自然数)を有する。光ディスク装置101は対物レンズ311によって、記録層とガイド層にレーザスポットを生じることができる。
【0015】
本光ディスク装置101は、コントローラ201と信号処理部202と、光ピックアップ203と、光ピックアップ203を光ディスク102の半径方向に移動するスライダモータ204と、スライダモータ204を駆動するスライダ駆動手段205と、光ピックアップ203中に備えられた球面収差補正素子を駆動するための収差補正駆動手段206と、光ディスク102を回転するためのスピンドルモータ207と、スピンドルモータ207の回転に同期した信号を生成する回転信号生成手段208と、スピンドルモータ207を回転させるための回転信号を生成するスピンドル制御手段209と、スピンドル制御手段209が生成する回転信号に応じてスピンドルモータ207を駆動するスピンドル駆動手段210と、光ディスク102の記録層と記録層に対して合焦するレーザスポットの位置ずれ量、ならびに光ディスク102のガイド層とガイド層に対して合焦するレーザスポットの位置ずれ量を示すフォーカス誤差信号を生成するフォーカス誤差信号生成手段211と、フォーカス誤差信号に応じてフォーカス駆動信号を生成するフォーカス制御手段212と、フォーカス駆動信号に応じて光ピックアップ203中に備えられたアクチュエータ312、ならびに可動レンズ321を駆動するフォーカス駆動手段213と、光ディスク102のガイド層上のトラックとレーザスポットとの位置ずれ量を示すトラッキング誤差信号を生成するトラッキング誤差信号生成手段214と、トラッキング誤差信号に応じてトラッキング駆動信号を生成するトラッキング制御手段215と、トラッキング駆動信号に応じてアクチュエータ312を駆動するトラッキング駆動手段216とを備えている。
【0016】
光ピックアップ203は、たとえば405nmと650nmなど波長の異なる2つの光学系を備えている。まず、405nmの光学系について再生時の動作を説明する。レーザドライバ301は、コントローラ201によって制御されており、レーザダイオード302を駆動する電流を出力する。この駆動電流は、例えばレーザノイズを抑制するために数百MHzの高周波重畳が印加されている。レーザダイオード302は、駆動電流に応じた波形で波長405nmのレーザ光を出射する。出射されたレーザ光はコリメータレンズ303にて平行光となり、ビームスプリッタ304で一部が反射し、集光レンズ305によってパワーモニタ306に集光する。パワーモニタ306は、レーザ光の強度に応じた電流または電圧をコントローラ201にフィードバックする。これによって光ディスク102の記録層に集光するレーザ光の強度が、たとえば2mWなど所望の値に保持される。一方、ビームスプリッタ304を透過したレーザ光は偏光ビームスプリッタ307にて反射し、ダイクロイックミラー308を透過する。ダイクロイックミラー308は特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する光学素子である。ここでは波長405nmの光を透過し、650nmの光を反射するものとする。ダイクロイックミラー308を透過したレーザ光は、収差補正駆動手段206にて駆動される可動レンズ309によって収束・発散が制御され、1/4波長板310にて円偏光となり、対物レンズ311によって光ディスク102の記録層に集光する。対物レンズ311は、アクチュエータ312によって位置制御される。光ディスク102によって反射したレーザ光は、光ディスク102に記録された情報に応じて強度が変調される。1/4波長板310にて直線偏光となり、ダイクロイックミラー308および球面収差補正素子309を経て、偏光ビームスプリッタ307を透過する。透過したレーザ光は、集光レンズ313によってディテクタ314に集光する。ディテクタ314はレーザ光の強度を検出し、これに応じた信号を信号処理部202に出力する。信号処理部202は、ディテクタ314から出力された再生信号に対し増幅、等化、復号などの処理を行い、復号したデータをコントローラ201に出力する。コントローラ201はデータをホスト103に出力する。
【0017】
またフォーカス誤差信号生成手段211は、ディテクタ314から出力された信号から、記録層に対するフォーカス誤差信号を生成する。フォーカス制御手段212はコントローラ201からの指令信号により、フォーカス誤差信号に対応したフォーカス駆動信号をフォーカス駆動手段213に出力する。フォーカス駆動手段213はフォーカス駆動信号に応じて、アクチュエータ312をディスク面に垂直な方向に駆動する。上述したようにフォーカス制御手段212とフォーカス駆動手段213が動作することで、光ディスク102の記録層に照射されたレーザスポットが常に記録層で合焦するようにフォーカス制御が行われる。
【0018】
記録を行う際には、ホスト103からコントローラ201へと記録データが入力される。コントローラ201は、入力されたデータに対応した記録波形をレーザドライバ301へ出力する。レーザドライバ301は、記録波形に応じた駆動電流をレーザダイオード302に出力し、レーザダイオード302が対応した波形でレーザ光を出射することで光ディスク102の記録層に記録が行われる。
【0019】
次に、650nmの光学系について説明する。本光学系については、記録時と再生時での動作の差異はない。405nmの光学系と同様に、レーザドライバ301がレーザダイオード315を駆動し、レーザダイオード315は波長650nmのレーザ光を出射する。レーザ光の一部は、コリメータレンズ316、ビームスプリッタ317、集光レンズ318を経て、パワーモニタ319にてパワーがモニタされる。モニタしたパワーをコントローラ201にフィードバックすることで、光ディスク102のガイド層に集光するレーザ光の強度が、たとえば3mWなど所望のパワーに保持される。ビームスプリッタ317を透過したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ320を透過し、可動レンズ321にて収束・発散の制御が行われる。可動レンズ321を経たレーザ光は、ダイクロイックミラー308にて反射し、1/4波長板310を経て、対物レンズ311により光ディスク102のガイド層に集光する。光ディスク102にて反射したレーザ光を偏光ビームスプリッタ320にて反射し、集光レンズ322にてディテクタ323に集光する。
【0020】
トラッキング誤差信号生成手段214は、ディテクタ323から出力された信号から、光ディスク102のガイド層に対するトラッキング誤差信号を生成する。トラッキング制御手段215はコントローラ201からの指令信号により、トラッキング誤差信号に応じたトラッキング駆動信号を生成する。トラッキング駆動手段216はトラッキング駆動信号に応じてアクチュエータ312をディスクの半径方向に駆動する。上述したようにトラッキング制御手段215とトラッキング駆動手段216が動作することで、光ディスク102のガイド層に照射されたレーザスポットが常にガイド層上のトラックを追従するようにトラッキング制御が行われる。
【0021】
また、フォーカス誤差信号生成手段211は、ディテクタ323から出力された信号から、光ディスク102のガイド層に対するフォーカス方向の誤差信号であるフォーカス誤差信号を生成する。フォーカス制御手段212はコントローラ201からの指令信号により、フォーカス誤差信号に応じたフォーカス駆動信号を生成する。フォーカス駆動手段213はフォーカス駆動信号に応じて可動レンズ321を駆動する。可動レンズ321を駆動することで、光ディスク102のガイド層に照射されたレーザスポットが常にガイド層で合焦するように制御が行われる。
【0022】
またスライダ駆動手段205、収差補正駆動手段206、スピンドル制御手段209に関しても、コントローラ201からの指令信号により動作する。
【0023】
なお、ここではレーザダイオード302とレーザダイオード315を駆動するために同一のレーザドライバ301を用いたが、それぞれのレーザダイオードに固有のレーザドライバを備えても良い。またフォーカス誤差信号生成手段211、フォーカス制御手段212およびフォーカス駆動手段213も405nmの光学系と650nmの光学系で共有する構成としたが、別々の構成であっても良い。
【0024】
図3に光ディスク装置101に光ディスク102を挿入時の光ディスク装置101の処理フローを示した。
【0025】
S401で光ディスク102を光ディスク装置101に挿入すると、S402で光ディスク装置101はディスクの有無の確認やディスク種別の確認を行う。このとき、たとえば光ディスク装置101は光ディスク102にレーザ光を照射して、反射光によって認識を行うことができる。
【0026】
次にS403では、挿入された光ディスク102に対して、光ディスク装置101内の各種パラメータを好適するための調整処理を行う。各種パラメータとは、たとえばフォーカス制御手段212やトラッキング制御手段215内に含まれる増幅器の増幅率を光ディスク102の反射率にあわせて調節することなどが挙げられる。
【0027】
各種調整を行った後、S404で光ディスク102の管理情報を読み出す。
【0028】
S405まで処理が進むと、記録または再生可能な状態となり、ホスト103からのコマンドに応じて記録または再生を行うことができる。
【0029】
調整処理S403のタイミングはこれに限るものではなく、一部の調整処理を管理情報読み出しS404の後などに行ってもよい。
【0030】
続いて、本実施例の特徴となる点について説明する。本実施例の特徴の一つは図4に示すように、第1の記録層を記録または再生する際の対物レンズの作動距離WD1と、第1の記録層とは異なる記録層(便宜上、第2の記録層と呼ぶ)を記録または再生する際の対物レンズの作動距離WD2が略等しい事を特徴としている。この特徴により光ディスク装置の合理化ができる。以下、順を追って詳細に説明する。
【0031】
なお、記録層にグルーブ構造を有する光ディスクである従来のBD多層などは、記録層とガイド層が分離していない。そのため、このような従来の光ディスクの場合は、本発明が解決しようとする課題は生じない。
【0032】
複数の記録層を備えた光ディスクに対応する光ディスク装置は、基板厚の変化に応じて発生する球面収差の変化を補正する必要がある。一般には、記録層に合焦させる光ビームに対し、対物レンズに入射する該光ビームの収束・発散具合を調整し、該対物レンズの物体側距離を変化させる事で該球面収差を打ち消すための球面収差を故意に発生させ、補正する。そのため、光学系には対物レンズとは異なるレンズを備え、該レンズを光軸方向に動かす事で対物レンズの物体側距離を変える手段が一般的に用いられる。本実施例では図1における符号309が該レンズに相当する。また該光ディスク装置においては、記録層に合焦させる光ビームとは異なる光ビームを光ディスク102のガイド層に合焦させる必要があるため、ガイド層に合焦させる光ビームのフォーカスを調整するためのレンズを備える。本実施例では図1における符号321が該レンズに相当する。具体的には、符号321のレンズによって対物レンズに入射する光ビームの収束・発散具合が変わり、ガイド層に合焦させる光ビームのフォーカスを調整する。レンズ309およびレンズ321は光軸方向に動く事から、本実施例では便宜上、可動レンズと呼ぶ事とする。
【0033】
図5は、図1に示した光ディスク装置において、光学部品に着目した図である。図5において符号309aと符号321aは所定の記録層(第1の記録層)に記録または再生している時の可動レンズの位置を示しており、符号309および符号321は該所定の記録層に対して基板厚さが異なる別の層(第2の記録層)に記録または再生している時の可動レンズの位置を示している。ここで、記録および再生中に可動レンズが停止せず連続的に動く場合は、平均的な位置を表しているものとする。なお、図5において、可動レンズ309および可動レンズ321の可動方向を一方向で示しているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、第1の記録層と第2の記録層の位置関係によって可動方向は変わる。
【0034】
本実施例では前述したとおり、第1の記録層を記録または再生する際の対物レンズの作動距離WD1と、第2の記録層を記録または再生する際の対物レンズの作動距離WD2が略等しい事を特徴としている。そのため、ガイド層に集光する光ビームに着目すると、第1の記録層を記録または再生時および第2の記録層を記録または再生時において、対物レンズに入射する光ビームの収束・発散具合はほぼ変わらない事となる。
【0035】
対物レンズに入射する光ビームの収束・発散具合がほぼ変わらないということは、可動レンズ321の駆動量が非常に小さい事を意味する。なお作動距離が完全に等しければ、理想的にはΔd2=0となる。一方、記録層に照射させる光ビームに関しては、ディスク表面から集光点までの基板厚が変わるため、基板厚の違いで生じる球面収差を補正するため、光ビームの対物レンズに対する収束・発散具合を変化させる必要が生じ、可動レンズ(309)を動かす必要がある。換言すれば、より具体的には、本実施例は、第1の記録層に記録または再生している時の可動レンズの位置と第2の記録層に記録または再生している時の可動レンズの位置の差分を図5に示すようにΔd1およびΔd2とすると、
【0036】
【数4】

【0037】
を満たせばよい。なお、作動距離WD1とWD2が完全に等しくない場合であっても、(数4)や(数4)を別表現した(数1)を満たすことにより、作動距離WD1とWD2の差を小さくすることが可能となり、ガイド層に集光する光ビームの集光性能を確保できる。
【0038】
なお上記において、第1の記録層は光ディスク102の記録層のうち、どの層でも良い。つまり本実施例は、基板厚が異なる記録層を記録または再生する際は、それよりも前に別の層を記録または再生していた時の可動レンズ位置を基準にした場合、可動レンズ321に比べて可動レンズ309の駆動量が大きい事を一つの特徴としている。なお前述したように、図5において、可動レンズ309および可動レンズ321の可動方向を一方向で示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の記録層と第2の記録層の位置関係によって可動方向は変わっても良い。本実施例の一つの本質は、位置の差分Δd1およびΔd2が(数4)を満足する事である。
【0039】
本実施例では、可動レンズ321の駆動量を小さくできるので、可動レンズを駆動する駆動機構の駆動範囲を小さく設計でき、装置の小型化に効果がある。また駆動量が小さいため、光ディスク装置の省電化に効果がある。
【0040】
さらに本実施例では、ガイド層に集光する光ビームの球面収差量の観点からも効果がある。一般に、対物レンズに入射する光ビームの収束・発散具合が変わると、それに応じて球面収差が発生する。しかしながら本実施例では第1および第2の記録層を記録または再生時において、ガイド層に集光する光ビームの対物レンズに対する収束・発散具合がほぼ変わらないため、球面収差の変化がほとんど無いためである。対物レンズに対する収束・発散具合が大きく変化すると球面収差が発生するため、光ビームの集光特性が劣化する恐れがある。その観点で、本実施例のように第1の記録層と第2の記録層における作動距離を略等しくすることは、球面収差の観点で効果は大きい。どの記録層を記録または再生する場合でも、所定の位置にあるガイド層に光ビームを合焦させる事が必要なため、本実施例を適用する事で、上記の効果が期待できる。
【0041】
第1の記録層および第2の記録層に対して作動距離を略等しくするためには、例えば以下に示す様な特性の対物レンズを用いることでも実現できる。
【0042】
図6は、対物レンズ311に倍率Mで光ビームが入射している様子を示したものである。倍率Mの値が変わると(数5)に示すレンズの公式に従って像点位置が変化する。
【0043】
【数5】

【0044】
ここでaは像側距離,bは物体側距離、fは対物レンズの焦点距離である。なお、倍率Mが無限大、いわゆる平行光入射の状態と、倍率M=b/aの場合における像点位置の差分a−fは(数5)を用いて(数6)のように表す事ができる。
【0045】
【数6】

【0046】
つまり、対物レンズに平行光を入射した際に光ディスク102内にて集光する光ビームの球面収差量が最小となる基板厚からδだけ異なる厚さに位置する記録層を記録または再生する際は、基板の屈折率をnとすると、空気換算距離であるδ/nが(数6)と等しければ、つまり(数2)が成り立てば、記録または再生する記録層の位置によらず対物レンズの作動距離は同じとなる。もちろん、厳密に(数2)、(数6)を満たす必要はなく、誤差を含めた範囲でこれらを満たせばよい。
【0047】
【数2】

【0048】
この際、基板厚δに相当する球面収差が新たに発生するので、例えば(数2)を満足する倍率Mにて、該球面収差量と略同等の逆向きの球面収差が対物レンズにて発生すれば、基板厚δに相当する球面収差を補正できる。例えば対物レンズの開口数が0.85の時、波長をλとすると、基板厚10マイクロメートルに相当する球面収差量のRMS値(Root Mean Square)は、略0.1λである。よって図7に示すように、対物レンズに平行光を入射した際に対物レンズにて発生する球面収差量のRMS値に対して、対物レンズの倍率がMの場合に発生する球面収差量のRMS値との差分を入射光の波長で規格化した値ΔWが(数3)を満足するような対物レンズを用いる事で、第1の記録層および第2の記録層に対して作動距離を略等しくする事ができる。なお(数3)において焦点距離fの単位は、マイクロメートルとする。
【0049】
【数3】

【0050】
また、ガイド層に集光する光ビームは、対物レンズに対して略平行光で入射することを特徴の一つとしている。略平行光で入射することで、光ディスク102の面振れによって対物レンズの光軸方向位置が変化しても、対物レンズに対する収束・発散具合をほぼ変えることなく、つまり可動レンズ321をほぼ駆動することなく、ガイド層に合焦させる事ができる。
【0051】
もちろん、厳密に(数3)を満たす必要はなく、誤差を含めた範囲でこれを満たせばよい。
【符号の説明】
【0052】
101 光ディスク装置
102 光ディスク
103 ホスト
201 コントローラ
202 信号処理部
203 光ピックアップ
204 スライダモータ
205 スライダ駆動手段
206 収差補正駆動手段
207 スピンドルモータ
208 回転信号生成手段
209 スピンドル制御手段
210 スピンドル駆動手段
211 フォーカス誤差信号生成手段
212 フォーカス制御手段
213 フォーカス駆動手段
214 トラッキング誤差信号生成手段
215 トラッキング制御手段
216 トラッキング駆動手段
217 レンズ
218 レンズ
301 レーザドライバ
302 レーザダイオード
303 コリメータレンズ
304 ビームスプリッタ
305 レンズ
306 パワーモニタ
307 偏光ビームスプリッタ
308 ダイクロイックミラー
309 可動レンズ
310 1/4波長板
311 対物レンズ
312 アクチュエータ
313 レンズ
314 ディテクタ
315 レーザダイオード
316 コリメータレンズ
317 ビームスプリッタ
318 レンズ
319 パワーモニタ
320 偏光ビームスプリッタ
321 可動レンズ
322 レンズ
323 ディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源と第2の光源と、
前記第1の光源を出射した第1の光ビームおよび前記第2の光源を出射した第2の光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、
前記対物レンズに入射する前記第1の光ビームの収束・発散の制御を行う第1の可動レンズと、
前記対物レンズに入射する前記第2の光ビームの収束・発散の制御を行う第2の可動レンズと、を備えた光ディスク装置において、
前記光ディスクはトラッキング制御を行うためのガイド層と複数の記録層を備えており、
前記第1の光ビームは前記記録層に集光し、
前記第2の光ビームは前記ガイド層に集光し、
前記光ディスクの第1の記録層を記録または再生している時の前記対物レンズの作動距離と、前記光ディスクの第2の記録層を記録または再生している時の前記対物レンズの作動距離が略等しい事を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記第1の記録層を記録または再生している時の前記第1の可動レンズの光軸方向の位置をA1、
前記第1の記録層を記録または再生している時の前記第2の可動レンズの光軸方向の位置をB1、
前記第2の記録層を記録または再生している時の前記第1の可動レンズの光軸方向の位置をA2、
前記第2の記録層を記録または再生している時の前記第2の可動レンズの光軸方向の位置をB2、とした場合、
【数1】

を満足する事を特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスク装置において、前記第2の光ビームは、前記対物レンズに対して略平行光で入射する事を特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記第1の光ビームが平行光で前記対物レンズに入射した際に前記第1の光ビームの球面収差量が最小となる基板厚さに対してδ異なる厚さに位置する記録層を記録または再生する際は、前記対物レンズの焦点距離をf、前記光ディスクの基板の屈折率をnとした場合、前記対物レンズの倍率Mが概ね数2を満足するように前記第1の光ビームを前記対物レンズに入射する事を特徴とする光ディスク装置。
【数2】

【請求項5】
対物レンズに平行光を入射した際に発生する球面収差量のRMS値に対して前記対物レンズの倍率がMの場合に発生する球面収差量のRMS値との差分を該入射光の波長で規格化した値ΔWは、前記対物レンズの焦点距離をマイクロメートルの単位で表した際の焦点距離をf、前記対物レンズが対応する光ディスクの基板の屈折率をnとした場合、概ね数3を満足する対物レンズ。
【数3】

【請求項6】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記対物レンズは、当該対物レンズに平行光を入射した際に発生する球面収差量のRMS値に対して前記対物レンズの倍率がMの場合に発生する球面収差量のRMS値との差分を該入射光の波長で規格化した値ΔWは、前記対物レンズの焦点距離をマイクロメートルの単位で表した際の焦点距離をf、前記対物レンズが対応する光ディスクの基板の屈折率をnとした場合、概ね数3を満足する対物レンズであることを特徴とする光ディスク装置。
【数3】

【請求項7】
第1の光ビームを出射する第1の光源と前記第1の光ビームの波長よりも長い波長の第2の光ビームを出射する第2の光源を有する光ディスク装置であって、
前記第1の光源を出射した第1の光ビームおよび前記第2の光源を出射した第2の光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、
前記対物レンズに入射する前記第1の光ビームの収束・発散の制御を行う第1の可動レンズと、
前記対物レンズに入射する前記第2の光ビームの収束・発散の制御を行う第2の可動レンズと、を備え、
前記光ディスクは、トラッキング制御を行うためのガイド層と、複数の記録層を備えており、
前記第1の光ビームは前記記録層に集光され、
前記第2の光ビームは前記ガイド層に集光され、
前記第1の記録層を記録または再生している時の前記第1の可動レンズの光軸方向の位置をA1、
前記第1の記録層を記録または再生している時の前記第2の可動レンズの光軸方向の位置をB1、
前記第2の記録層を記録または再生している時の前記第1の可動レンズの光軸方向の位置をA2、
前記第2の記録層を記録または再生している時の前記第2の可動レンズの光軸方向の位置をB2、とした場合、
【数1】

を満足する事を特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−226813(P2012−226813A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95668(P2011−95668)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】