説明

対象物の表面の表示方法

【課題】対象物の表面の表示方法について改良を行う。
【解決手段】対象物の表面を表示する方法として、対象物の表面の実測3Dデータ(7)が求められる。次に、対象物の表面の所期3Dデータ(5)が実測3Dデータ(7)を基にして修正される。そして、対象物の表面の所期3Dデータ(5)と修正された所期3Dデータ(5)が3D表示用データとして使われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面の表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スキャナによって対象物の表面を測定し、対象物の表面の3D座標を決定する方法が記載されている。スキャナを用いた照合システムを用いて測定するシステムにより、対象物の表面の3D座標を決定している。さらに、スキャナの位置と方向を決めることができる追跡システムが存在する。スキャナによる照合システムでの3D座標や絶対的な照合システムでスキャナの位置及び方向のデータによる評価システムによって、絶対的に対象物の表面の3D座標は決められている。これらのデータは、記録することや表示することが可能である。
【0003】
特許文献2には、自動車車両のボディーシェルの表面欠陥を自動認識し、投影装置によりボディーシェル上に格子構造で映し出す方法について記載されている。ボディーシェルの表面から反射された光は光学測定装置に受け取られ、被測定信号としてコンピュータシステムに送られる。表面欠陥はマーキング装置によってマークできるコンピュータシステムにより識別される。
【0004】
とりわけ自動車業界及び関連業界において、部品検査により、対象物の表面を表示する方法は用いられている。3D測定装置により対象物の表面の実測3Dデータを定めることができ、定められた実測3Dデータは、目で見てわかるよう、特にコンピューターやPCの画面に表示することができる。この実測3Dデータは、例えば散布図で表示することができる。このように表示された対象物の表面を、人間が観察し、評価することができる。
【0005】
製品の目で見える部分である表面が美しく欠陥のないように仕上げることは品質における決定的な特徴である。そのような仕上げができることが、製品の品質と評価の観点から製品の完成といえる。自動車業界その他の業界において、品質面において製品の表面が高品質であることが重要な意味をもつことになり、とりわけ、自動車業界では重要である。
【0006】
しかしながら、表面が光ったり、周辺環境により表面が反射したときには、存在する多くの表面欠陥は目に見えてわかるようになる。通常、表面を加工することにより、表面が光るようになる。表面の加工方法は、例えば、ニスを塗ったり、陽極酸化したり、クロムメッキをしたりする等の方法による。しかし、この工程は一連の工程のほぼ最終工程にあたるので、この段階で見つかった表面欠陥を取り除くことはもはやほとんど不可能であり、取り除ける場合でも、それ相応の高いコストを費やし労力をかけない限り取り除くことができない。
【0007】
それゆえ、コスト面からも製造の一連の工程のできるだけ早い段階で、表面欠陥が認識できることが望まれている。しかしながら、表面に光沢のない状況では、表面欠陥を認識し評価することは困難である。
【0008】
自動車車両のボディーのパーツで例を挙げると、プレス工場での第一工程で、無光沢の表面である構成部品が作られ、第二工程では、ボディーシェルが作られるが、第一段階同様に表面はまだ光沢がない。そして、第三工程で、構成部品に塗装をすることにより、光沢のある表面となり、この段階になってはじめて十分に表面欠陥が認識でき、評価できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許EP553266B1号
【特許文献2】欧州特許EP995108B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複雑な品質管理の一助となるべく、最終製品となったときに見える表面欠陥をあらかじめもっと早い製造工程において評価できるようにする試みは以前から行われている。この試みを実行するのに様々なやり方で行っている。例えば、ウェットストーン(whetstones)、輝きを生み出すオイル、特殊光源などである。一方で、これらの方法で行うにはまとまった時間が必要となり、また、使用者には多くの経験が欠かせない。他方では、これらの方法は、表面欠陥について非常に主観的な評価となってしまう点についても問題がある。
【0011】
もう一つの可能性としては、塗装までの製造工程を終了した上で製品を運び込んで最終製品の外観から表面欠陥を調べる方法がある。しかし、この方法は時間がかかる上にとてもコストが高くついてしまう。
【0012】
本発明は、対象物の表示方法について改良した方法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記課題は、請求項1の特徴によって解決される。まず、対象物の表面を表示する方法として、対象物の表面の実測3Dデータが決定される。次に、対象物の表面の所期3Dデータが実測3Dデータを基にして修正される。そして、対象物の表面の所期3Dデータと修正された所期3Dデータが3D表示用データとして用いられる。
【0014】
対象物表面の所期3Dデータは、その対象物の一以上の特定部分について修正されて、3D表示データとして用いられることが好ましい。対象物の表面の修正されなかった所期3Dデータは、対象物の他の部分の3D表示データとして使用される。
【0015】
適切な方法や適切な装置によって、対象物の表面の実測3Dデータを定めることができる。光学式3D測定装置、特にレーザ測定装置又は白色光投射システムが適しており、触覚動作方式の測定装置も使用することができる。対象物の3Dへのデジタル化や測定値により、対象物の表面の実測3Dデータが決定されることになる。
【0016】
対象物の所期3Dデータは、評価システムに蓄積される。評価システムとは、例えばコンピューターやPCによるものである。ソフトウェアを用いたり、対象物からサンプリングしたり、またはその他の方法により、所期3Dデータを生成している。
【0017】
評価システム、特にコンピュータやPCにより、対象物の表面を表示することができる。この点において、3D表示用データを基にして、対象物の表面は表示されている。コンピューターやPCの画面に3D用表示データを出力し、人間が観察し、評価する。対象物の表面の表示に関しては、別の方法を用いて、表示し、目で見えるようにすることもできる。
【0018】
本発明のその他の利点については従属項に記載する。
【0019】
1以上の特定の部分において、対象物の表面の所期3Dデータを3D表示用データとして使うことができる。
【0020】
この点に関しては、あらかじめ特定の部分を定めておくこともできる。特定の部分は観察者、評価者といった人間によってあらかじめ定めることができる。特定の部分は変更することもできるし、追加することもできる。
【0021】
特定の部分は、実測3Dデータの表面欠陥を検査することによって、変更や追加をすることができる。この調査は自動的に実行することができ、特にソフトウェアによる評価アルゴリズムを基にして決めることができる。実測3Dデータは、仮想のウェットストーン(whetstone)を対象物の表面として表示される実測3Dデータ上を動かすような方法で、表面欠陥を決めるのに使われている。局所的な表面欠陥はこのようにして見つけることができる。局所的な湾曲は局所的な表面欠陥のある部分で実測3Dデータから決定され評価することができる。他の方法としては、表面欠陥を表面欠陥の存在しない部分の測定により決めることもできる。このようにして定められた表面欠陥のない部分の実測3Dデータは、実測3Dデータが参照データとして使用されることとなり、必要に応じて保存される。引き続き対象物を測定し得られた実測3Dデータは、参照データと比較されたうえで、表面欠陥を定めることとなる。
【0022】
所期3Dデータは表面欠陥の存在しない部分において、3D表示用データとして使用することができる。対象物は全体としては、所期3Dデータを3D表示用データとして用いられ表示された部分と、修正された所期3Dデータを3D表示用データとして用いられ表示された部分からなる。
【0023】
所期3Dデータは、該所期3Dデータをリファインする、又は該所期3Dデータの法線ベクトルの変更を行うことにより修正することができる。このようにして修正された所期3Dデータは、3D表示用データとして使うことができる。
【0024】
所期3Dデータ、実測3Dデータ、及び修正された所期3DデータはCADデータとして提供することが好ましい。そうすることにより、容易にデータや図を加工したり処理したりすることができるからである。
【0025】
対象物の表面の表示において3D表示用データを直接使うことができる。しかし、表示前に3D表示用データを加工したり処理したりすることもできる。
【0026】
対象物の表示に際して、対象物に対する観察者の視点の位置を選択できることが好ましい。対象物から観察者までの距離や角度を選択できることが特に好ましい。そうすることにより対象物の表面欠陥をより認識し評価しやすくすることができる。
【0027】
対象物の表示は表面の特性の選択ができることが好ましい。特に、表面の材質(塗装、陽極酸化、クロムメッキなど)、表面の色や輝きの度合いを選択できることが好ましい。
【0028】
さらに対象物の表示は照明の特性を選択して行うのが好ましい。照明光源の数や種類、位置、光度、向き、照射などの特性を選択できるのが好ましい。
【0029】
対象物の表示は環境特性を選択できるのが好ましい。特に、周囲の壁、壁の色や反射率を選択できるのが好ましい。
【0030】
さらに欠陥の表示は対象物の表示に重ね合わせるのが好ましい。欠陥の表示を特別に取り上げることもできる。重ね合わせて表示することにより、欠陥データを定め、表示することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る対象物のCADモデルの断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1に三角網が記載されたCADモデルの断面図である。
【図4】特定部分について図3の三角網を修正したCADモデルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1に対象物1のCADモデルの断面図を示す。線2はCADモデルにおける構造表面(construction faces)のエッジである。CADモデルには対象物1の所期3Dデータが含まれている。
【0034】
表面欠陥3は対象物1の一部分を示したものであり、表面欠陥3の外郭を表面欠陥の外郭4で示している。表面欠陥の外郭4はあらかじめ決めておくことができる。しかし、表面欠陥の実測3Dデータを検討することにより表面欠陥の外郭4を決定することもできる。この検討は人間によって手動で行うことができるが、ソフトウェアによる評価アルゴリズムを基にした検討を実行することもできる。
【0035】
図2は図1のA−Aの線に沿った断面図である。所期3Dデータの曲線は立体的に描かれており、その曲線は所期3Dデータ5として示されている。点線で描かれている測定当初の実測3Dデータ6は所期3Dデータ5の曲線から逸れている。破線で描かれている実測3Dデータ7は測定当初の実測3Dデータ6を平均化して構成される。実測3Dデータ7は測定当初の実測3Dデータ6と比べて円滑な曲線となっている。
【0036】
表面欠陥3が存在する部分については、所期3Dデータ5は実測3Dデータ7に基づいて修正される。表面欠陥3の存在する部分については、このように修正された所期3Dデータを、3D表示用データとして用いる。図2の中央部から外れた領域の実測3Dデータ7は所期3Dデータ5とごくわずかだけ異なっている。このような部分については、3D表示用データとして所期3Dデータを用いる。表面欠陥3の外郭4(図1を参照)の内部にあたる図2の中央部については、修正された所期3Dデータを3D表示用データとして用いる。このように対象物1全体としては、各部分ごとに所期3Dデータ5、又は、修正された所期3Dデータのいずれかを3D表示用データとして用い、そして視覚的に表す。
【0037】
3D表示用データとして用いられている所期3Dデータ5及び修正された所期3Dデータは、各々CADデータとして提供される。これは、図3、図4に見ることができる。図3は、所期データのCADモデルにおける三角網を描いたものである。CADモデルの三角網への変換については精度面で調整(chord error)が可能となっている。表面欠陥3の外郭4は、図3及び図4に破線で描かれている。
【0038】
表面欠陥3の存在する部分では、所期3Dデータは実測3Dデータを基に修正され、3D表示用データとして用いられている。図4に示すように、所期3Dデータは、表面欠陥3の存在する部分ではリファインされている。その上、表面欠陥3の外側において3D表示用データとして利用される所期3Dデータへの移行部分では、表面欠陥3の部分の3D表示用データに利用される修正された所期データが、表面欠陥3の外側の所期3Dデータに適合するようにされる。修正された所期3Dデータから当初の所期データへとできるだけスムーズに移行するためにはこのようにするのが望ましい。図4に示すように、表面欠陥3の位置や範囲や外郭4に応じてCADモデルの三角網は、表面欠陥3近傍で局所的に変更する。その変更は、表面欠陥3の部分において、表面欠陥3の3D曲線の広がりに合うように三角網を変更するような方法で行う。
【0039】
本発明では、実際に表面コーティングを行う前に表面欠陥がどのように見えるかについてのシュミレーションをすることができる。表面欠陥の外郭を含めて測定された実測3DデータとCADモデルから得られる所期3Dデータとの組み合わせから、表面コーティング(塗装、陽極酸化、クロムメッキ等)を行った後に表れる外観を予測することができる。3D測定装置、とりわけ光学3D測定装置によって記録された表面の実測3Dデータが用いられる。当該表面上で検出された表面欠陥の位置と特徴を利用することができる。
【0040】
シミュレーションコーティングの表面は、3Dコンピュータグラフィックスのモデルに基づいて視覚化される。観察者の位置は、例えば表面の周りを移動するというように任意に変更できることが好ましい。表面の塗装の色や輝きの度合い、照明の特性、表面の反射する状況がソフトウェアによって、自由に選択できる。
【0041】
まるでその環境下に本当に対象物が存在するかのように、利用者は表面欠陥の視認可能性に関して、求められるいずれの環境下についても調べることができる。例えば、販売業者としての展示室、都会での環境、田舎での環境、または特殊光源があたる部屋(グリーンルーム)が環境として選択することができる。
【0042】
欠陥情報の重ね表示が可能である。欠陥情報として、関連のある欠陥を色分けして表したり、欠陥のタイプ、欠陥の大きさ、欠陥の深さなどを表すことができる。より見やすくするため、欠陥部分を取り上げて図示することもできる。そのうえ、視覚的に直接2つの表面を比較することもできる。特に異なる生産状況での比較や限度見本との比較を行うことができる。さらに、CADモデル(所期の表面)と実測の表面とを直接見比べて比較することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 対象物
3 表面欠陥
4 表面欠陥の外郭
5 所期3Dデータ
6 測定当初の3Dデータ
7 実測3Dデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(1)の表面の表示方法において、
上記対象物(1)の上記表面の実測3Dデータ(7)が求められ、
上記対象物(1)の上記表面の所期3Dデータ(5)が上記実測3Dデータ(7)を基にして修正され、
上記対象物(1)の上記表面の上記所期3Dデータ(5)と修正された上記所期3Dデータ(5)が3D表示用データとして使われる
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項2】
請求項1に記載の対象物の表面の表示方法において、
上記対象物(1)の表面の上記所期3Dデータ(5)は、上記対象物(1)の1以上の特定の部分で修正され、3Dの表示データとして使われている
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項3】
請求項2に記載の対象物の表面の表示方法において、
上記特定の部分はあらかじめ定められる、又は他の部分との関係で定められる
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の対象物の表面の表示方法において、
表面欠陥について上記実測3Dデータ(7)の検査によって上記特定の部分を定める
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記所期3Dデータ(5)をリファインする、又は上記所期3Dデータ(5)の法線ベクトルの変更を行うことにより、上記所期3Dデータ(5)を修正する
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記所期3Dデータ(5)、上記実測3Dデータ(7)、及び上記修正された所期3DデータはCADデータとして提供する
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記3D表示用データは表示前に加工される
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記対象物(1)の表示は、上記対象物(1)に対する選択された視点で行う
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記対象物(1)の表示は、上記対象物(1)の選択された表面の特性で行う
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記対象物(1)の表示は、上記対象物(1)を照らす選択された照明特性で行う
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
対象物(1)の表示は、上記対象物(1)の置かれる選択された周辺環境で行う
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の対象物の表面の表示方法において、
上記欠陥は上記対象物(1)の表示に重ね合わせて表示される
ことを特徴とする対象物の表面の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−22147(P2011−22147A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163283(P2010−163283)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(501461966)シュタインビフラー オプトテヒニク ゲーエムベーハー (17)
【Fターム(参考)】