説明

射出成形方法および射出成形型

【課題】ホットランナー構造を有する射出成形型において、成形生産開始当初の1ショット目の成形不良を良品にするための射出成形方法および射出成形型を提供する。
【解決手段】射出成形型において、固定型1のホットランナーの樹脂流入口6に逆流防止弁7を設け、ホットランナーの樹脂流出口8にバルブゲート9又は逆流防止弁を設け、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、固定型1のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じた後、樹脂流入口6のすべてを逆流防止弁7により閉じ、樹脂押出機によりホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保圧し、樹脂押出機を射出成形型より分離し射出成形型を冷却することによりホットランナー内を減圧し、ホットランナー内に残存する仕掛かり樹脂の体積収縮を縮小し、ホットランナー内に発生するスキマを少なくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形不良を解消した射出成形方法および射出成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用の樹脂バンパは射出成形によっての製造している。従来一般的な射出成形は図3で示すように、ホットランナーブロック4と樹脂流出口8をバルブピン10で開閉するバルブゲート9を有するホットランナーノズル5とを備えた固定型1と、この固定型1に合わさって成形品の形状に対応するキャビティ3を形成する可動型2とからなる射出成形型によって成形している。
【0003】
上記従来の射出成形型では、成形生産を開始した当初の1本目の成型品にスジ状の不エアを巻き込良が発生する問題がある。その原因は、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させ前記射出成形型を機外にり出して冷却するが、この機外での冷却時にホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂が体積収縮して図3の符号Gで示すようにスキマができる。このスキマGによるエアを巻き込むため、このエアの影響で成型品にスジ状の不良が発生しているものである。従って、成形生産を開始した当初の1本目の成型品は不良品となる無駄があった。尚、2本目以降の成形品はホットランナー内は樹脂がホットランナー内にスキマなく充満されるので、エアを巻き込みはなくスジ状の不良は発生しない。
【0004】
この問題を解消するためには、射出成形生産の終了後の機外に搬出した射出成形型へ電気を流して加熱を続けることによりホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂の体積収縮がおきないため前記のような不良品は発生しないが、機外に搬出した射出成形型に電気を流して加熱を続けることは電気の無駄な使用となる他安全上の観点から現実的に無理なことである。また、ホットランナーブロックを分解可能な構造とし、射出成形生産の終了後の機外に搬出した射出成形型のホットランナーブロックを分解してホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂を抜き取り清掃する方法もあるが、これは日常扱えるものではなく、生産現場の仕組みとして不十分であり実用には至っていないのが現状である。
【特許文献1】特開平6−143356公報
【特許文献2】特開2002−307493公報
【特許文献3】特開2004−160899公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ホットランナー構造を有する射出成形型において、慢性的に発生する成形生産開始当初の1ショット目の成形不良を、安全で無駄なく簡単な手法により良品にするための射出成形方法および射出成形型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の射出成形方法は、請求項1に記載の通り、ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持する工程を含むことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の射出成形方法は、請求項2に記載の通り、ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持した後、前記固定型を降温させ、次に前記固定型を昇温して、次回の射出成形に用いる工程を含むことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の射出成形型は、請求項3に記載の通り、ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持する工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、射出成形生産の終了で樹脂押出機と分離して機外に搬出した射出成形型を電流を流して加熱する必要もなく、また、実用的でない分解構造のホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂を抜き取り清掃作業を行うことなく、ホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂の体積収縮を縮小し、ホットランナー内に発生するスキマを少なくしてスキマによるエアの巻き込みで成形生産を開始した当初の1本目の成型品の不良品の発生を無くし、常に良品を生産可能とした効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1において、1は固定型であり、2は前記固定型1に合わさって成形品の形状に対応するキャビティ3を形成する可動型である。前記固定型1にはホットランナーブロック4とホットランナーノズル5とを備えいる。
【0011】
そこで、本発明は、前記固定型1のホットランナーの樹脂流入口6と樹脂流出口8とに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保圧し、前記樹脂押出機を射出成形型より分離して射出成形型を冷却(自然冷却が適当)することによりホットランナー内を減圧し、ホットランナー内に残存する仕掛かり樹脂の体積収縮を縮小し、ホットランナー内に発生するスキマを少なくするようにしたことを特徴とするものである。また、前記固定型1のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持した後、前記固定型1を降温させ、次に前記固定型1を昇温して、次回の射出成形に備えることを特徴とするものである。
【0012】
前記ホットランナーの樹脂流入口6と樹脂流出口8との開閉手段の具体的な構造例について説明する。ホットランナーの樹脂流入口6については、図2で示すような逆流防止弁7を設ける。この逆流防止弁7は樹脂流通路12を形成する流線型の保持部材11にピストン弁体13が進退軸移動可能に、かつスプリング14により常に樹脂流入口6を閉鎖するよう前進付勢した構造である。
【0013】
この逆流防止弁7は樹脂押出機から樹脂流入口6に流入する圧力ではピストン弁体13はスプリング14の押圧力に抗して後退軸移動し、樹脂流入口6より樹脂を流線型の保持部材11の外周に形成されている樹脂流通路12よりホットランナー内に流れる。また、樹脂押出機から樹脂流入口6に流れないときは、ピストン弁体13はスプリング14の押圧力により前進軸移動して樹脂流入口6を閉鎖する。
【0014】
前記ホットランナーのと樹脂流出口8については、バルブゲート9により進退軸移動するバルブピン10によって樹脂流出口8を開閉する。尚、バルブゲート9も他に前記逆流防止弁7を樹脂流出口8に設けてもよい。
【0015】
本発明は上記の通りの構成であるから、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型1のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に40Mpa〜80Mpaの樹脂圧力をかけ、前記樹脂押出機を射出成形型より分離することにより前記樹脂流入口6を逆流防止弁7により閉じ、また、前記樹脂流出口をバルブゲート9又は逆流防止弁7により閉じてホットランナー内を保圧する。そして、機外に搬出した射出成形型を冷却することによりホットランナー内は減圧される。これにより、ホットランナー内に残存する仕掛かり樹脂の体積収縮を縮小し、ホットランナー内に発生するスキマは少なくなる。
【0016】
前記射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型1のホットランナー樹脂流入口6をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持させる数値は、成形実験の結果、40Mpa以下及び80Mpa以上では1本目の成型品外観不良となり、ホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaの範囲では1本目の成型品外観不良がなく、良好な成型品が得られるので、ホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaの範囲の数値特定をした。
【0017】
因みに図4で従来の射出成形型による射出成形方法と本発明による射出成形型による射出成形方法との比較を説明する。加温時(成形時)についてはAで示すように従来の射出成形型による射出成形方法も本発明による射出成形型による射出成形方法もホットランナー内の樹脂体積はホットランナー体積Dと同一状態を示すが、従来の射出成形型による射出成形方法では樹脂固化時(型は機外)にはBで示すようにホットランナー内の樹脂は収縮してホットランナー内にスキマGを発生する。しかし、本発明の射出成形型による射出成形方法ではCで示すようにホットランナー内り樹脂の体積収縮は縮小し、ホットランナー内に発生するスキマは少なくなるのである。
【0018】
上記のようにホットランナー内に発生するスキマが少なくなるということは、スキマGによるエアを巻き込むことがなくなり、エアの影響で成型品にスジ状の不良品を発生することが解消されるのである。
【0019】
このように本発明は、従来一般的に用いられている射出成形型に簡単な構造を付加することにより、成形生産を開始した当初の1本目の成型品の不良の発生をなくし、従来の無駄を解消する。また、射出成形生産の終了後の機外に搬出した射出成形型のホットランナーブロックを分解してホットランナー内に残っている仕掛かり樹脂を抜き取りするような面倒な清掃作業を不要とし実用的であり、かつ型設備費の低廉化が図れる利点を有している。
【0020】
尚、本発明は自動車用バンパの射出成形に限らず、各種の樹脂成形品に応用することができることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による射出成形型の断面図
【図2】逆流防止弁の断面図
【図3】従来一般的な射出成形型を示す断面図
【図4】従来の射出成形型と本発明による射出成形型とのホットランナー内樹脂体積の比較図
【符号の説明】
【0022】
1 固定型
2 可動型
3 キャビティ
4 ホットランナーブロック
5 ホットランナーノズル
6 樹脂流入口
7 逆流防止弁
8 樹脂流出口
9 バルブゲート
10 バルブピン
11 保持部材
12 樹脂流通路
13 ピストン弁体
14 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持する工程を含むことを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持した後、前記固定型を降温させ、次に前記固定型を昇温して、次回の射出成形に用いる工程を含むことを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
ホットランナーブロックとホットランナーノズルとを備えた固定型と、この固定型に合わさって成形品の形状に対応するキャビティを形成する可動型とからなる射出成形型において、前記固定型のホットランナー樹脂流入口と樹脂流出口とのすべてに開閉手段を備え、射出成形生産の終了で樹脂押出機を射出成形型より分離させる前に、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じた後、前記樹脂押出機によりホットランナー内に圧力をかけ、前記固定型のホットランナー樹脂流入口をすべて閉じることによってホットランナー内の樹脂圧力を40Mpa〜80Mpaに保持する工程を含むことを特徴とする射出成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113257(P2009−113257A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286895(P2007−286895)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】