説明

射出成形機

【課題】使用する原料樹脂の粘度によらず、起動時におけるスクリュの回転制御を適正化できて、高品質の成形品を成形可能な射出成形機を提供する。
【解決手段】製品の射出成形を開始する前に実行される原料樹脂のオートパージ中又は試し打ち期間中において、計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧、計量用サーボモータ3の負荷トルク、若しくはスクリュ2の後退速度等を求め、求められたこれら装置各部の駆動状態が、対応するそれぞれの設定値P0,T0,S0をオーバーシュートする場合には、起動時におけるスクリュ2の回転角加速度をより低い値に切り替えて、設定値P0,T0,S0をオーバーシュートしない駆動状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュを回転駆動することによって加熱筒内に供給された原料樹脂の可塑化、混練及び計量を行う射出成形機に係り、特に、起動時におけるスクリュの回転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機で実行される成形サイクルは、スクリュを回転制御して加熱筒内に供給された原料樹脂を可塑化、混練及び計量する計量工程と、スクリュを前進制御して可塑化、混練及び計量された原料樹脂を金型キャビティ内に射出充填する射出工程を繰り返すことにより行われる。
【0003】
前回の成形サイクルの射出工程が完了した後は、次の成形サイクルの計量工程に移行してスクリュの回転制御が行われるが、スクリュの起動時には、スクリュ溝と加熱筒内壁との間に次回射出される原料樹脂が充填されているので、スクリュを起動すると、スクリュ溝と加熱筒内壁との間に充填されている原料樹脂からの反力を受けてネジ作用によりスクリュが後退する。この原料樹脂から受ける反力を、本明細書では「背圧」という。原料樹脂の計量は、スクリュを回転駆動することによって加熱筒の前方に可塑化及び混練された順次原料樹脂を移送し、この加熱筒の前方に移送された原料樹脂の圧力によってスクリュが後退するので、スクリュの後方に配置された圧力検出器にてスクリュに作用する樹脂圧を検出し、その検出値が予め設定された樹脂圧になるように制御装置にてスクリュの後退速度を制御し、スクリュが予め定められた所定の後退位置に達したときに、制御装置にて所定量の原料樹脂が計量されたと判定することにより行われる。したがって、スクリュの起動時に、原料樹脂からの反力を受けてスクリュが加熱筒の前方に移送された原料樹脂の樹脂圧に関わりなく後退すると、制御装置は、そのスクリュの後退時に圧力検出器にて検出される圧力を樹脂圧としてスクリュの位置制御を行うことになる。一般に、スクリュに作用する背圧は、加熱筒の前方に移送された原料樹脂の樹脂圧よりも格段に大きいので、スクリュがその起動時に、原料樹脂からの反力を受け、制御装置は、スクリュを後退位置よりもさらに後退させる方向に駆動することになる。このため、樹脂中に気泡を巻き込んだり、樹脂密度が低下するという不都合を生じ、その結果、成形品にショートショットやバリなどの成形不良が生じやすくなる。かかる不都合は、使用する原料樹脂の粘度が高いほど、顕著になる。
【0004】
従来、スクリュの起動時に発生する技術的な課題としては、スクリュに過負荷が作用して、スクリュやスクリュヘッドが破損するというものが知られており、これを解決するための手段としては、計量用モータの立上り速度を抑制して第1設定回転数に到達させ、しかる後に、計量用モータの回転数を設計回転数まで急激に立ち上げるもの(例えば、特許文献1参照。)、及び計量用モータの負荷トルクを定常時における正規トルクよりも小さい初期トルクにより起動を開始し、しかる後に、初期トルクから正規トルクまで順次上昇させるもの(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【特許文献1】特許第3415190号公報
【特許文献2】特許第2606762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来におけるこれらの課題解決手段は、いずれも、使用する原料樹脂の粘度に関係なく、計量用モータの起動時における駆動条件(回転数又は負荷トルク)及びその後の駆動条件を予め定められた所定の条件に固定しておくというものであるので、スクリュやスクリュヘッドの破損対策としては有効であるとしても、成形品質の改善を図るためには、そのままでは適用することができない。
【0006】
本発明は、かかる要請に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用する原料樹脂の粘度によらず、起動時におけるスクリュの回転制御を適正化できて、高品質の成形品を成形可能な射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この目的を達成するため、第1に、計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、前記制御装置は、製品の射出成形を開始する前に、前記スクリュの回転駆動と前記センサ群からの出力信号の取り込みとを行って、前記加熱筒内に供給された原料樹脂の粘度に応じた装置各部の駆動状態と前記制御装置に予め設定された設定値との関係を求め、しかる後に、製品の射出成形を開始して、各ショット毎の計量工程における前記装置各部の駆動状態が前記設定値を超えないように、前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0008】
計量工程におけるスクリュの回転制御は、成形サイクルの短縮化を図るため、例えば特許文献1に記載されているように、計量用サーボモータの起動から制御装置に記憶された設定回転数に達するまでの時間が、約0.1秒間という短時間に設定される。このような短時間でモータ回転数を設定回転数まで上昇すると、図5(a)に示すように、装置各部の駆動状態、例えばスクリュに作用する背圧、計量用サーボモータの負荷トルク又はスクリュの後退速度などの立上りの傾斜が急峻になり、その波形は各設定値P0,T0,S0をオーバーシュートしたものになる。そして、装置各部の駆動状態が設定値をオーバーシュートすると、スクリュが加熱筒内に供給された原料樹脂からの反力を受けて過度に後退し、気泡を巻き込むなどの不都合を生じる。そこで、上述のように、製品の射出成形を開始する前に、スクリュの回転駆動とセンサ群からの出力信号の取り込みとを行って、加熱筒内に供給された原料樹脂の粘度に応じた装置各部の駆動状態と制御装置に予め設定された各設定値との関係を求めておき、製品の射出成形を開始した後においては、図5(b)に示すように、装置各部の駆動状態が設定値を超えないように、計量用サーボモータの起動から装置各部の駆動状態が設定値に達するまでの間のスクリュの回転角加速度を低下すると、スクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0009】
本発明は第2に、前記第1の構成の射出成形機において、前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、原料樹脂のオートパージ中に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記スクリュの背圧であり、前記制御装置は、このオートパージ中における前記背圧の立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0010】
原料樹脂のオートパージは、原料樹脂の変更或いは色替えなどのために加熱筒内の原料樹脂を自動的に入れ換える操作であって、ノズルを金型にタッチしない状態で、スクリュを回転駆動することにより行われる。したがって、このオートパージ中においても、スクリュに作用する背圧及び樹脂圧の変化を求めることができ、オートパージ中に求められた背圧の立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後における背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるようにスクリュの回転角加速度を決定することにより、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0011】
本発明は第3に、前記第1の構成の射出成形機において、前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、原料樹脂のオートパージ中に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記計量用サーボモータの負荷トルクであり、前記制御装置は、このオートパージ中における前記負荷トルクの立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0012】
オートパージは、上述の通りの操作であるので、スクリュの回転駆動に伴う計量用サーボモータの負荷トルクの変化を求めることができる。したがって、オートパージ中に求められた負荷トルクの立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後における負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるようにスクリュの回転角加速度を決定することにより、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0013】
本発明は第4に、前記第1の構成の射出成形機において、前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記スクリュの背圧であり、前記制御装置は、この所定回数のショットにおける前記背圧の立上りの傾斜よりも、前記所定回数のショットが終了した後に行われる製品の射出成形で実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0014】
射出成形機のユーザは、原料樹脂のオートパージを終了した後、直ちに自動運転に移行して製品の成形を開始するのではなく、通常、自動運転に移行直後の予め定められた所定回数のショットを試し打ち期間とし、製品に不都合が生じていないか否かを検査する。この試し打ち期間における計量も、製品の成形時と同様に、ノズルを金型にタッチした状態で、スクリュを回転駆動することにより行われる。したがって、この試し打ち期間中においても、スクリュに作用する背圧及び樹脂圧の変化を求めることができ、試し打ち期間中に求められた背圧の立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後における背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるようにスクリュの回転角加速度を決定することにより、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0015】
本発明は第5に、前記第1の構成の射出成形機において、前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記計量用サーボモータの負荷トルクであり、前記制御装置は、この所定回数のショットにおける前記負荷トルクの立上りの傾斜よりも、前記所定回数のショットが終了した後に行われる製品の射出成形で実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0016】
成形品の試し打ちは、上述の通りの操作であるので、スクリュの回転駆動に伴う計量用サーボモータの負荷トルクの変化を求めることができる。したがって、試し打ち期間中に求められた負荷トルクの立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後における負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるようにスクリュの回転角加速度を決定することにより、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0017】
本発明は第6に、計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、前記制御装置は、使用する原料樹脂の粘度と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記装置各部の駆動状態の設定値と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しており、操作者が前記入力装置に使用する原料樹脂の粘度を入力したとき、この入力された原料樹脂の粘度に応じた前記最適なスクリュの回転角加速度を読み出して、計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0018】
上述のように、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退は、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの回転角加速度が原料樹脂の粘度に対して高すぎることにより起こる。したがって、制御装置に、使用する原料樹脂の粘度と、これに応じた計量工程における装置各部の駆動状態の設定値と、最適なスクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しておき、操作者が入力装置に使用する原料樹脂の粘度を入力することにより、最適なスクリュの回転角加速度が読み出されるようにすると、自動的に計量工程における最適なスクリュの回転角加速度を決定することができるので、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。なお、本明細書において、「最適なスクリュの回転角加速度」とは、計量用サーボモータの起動時に装置各部の駆動状態が設定値をオーバーシュートせず、かつ装置各部の駆動状態が最短で設定値に達する大きさを言う。
【0019】
本発明は第7に、計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、前記制御装置は、使用する原料樹脂の粘度算出に必要な数式及び定数と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記装置各部の駆動状態の設定値と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しており、前記予め記憶された数式及び定数と前記センサ群の出力信号とから使用する原料樹脂の粘度を算出した後、その算出された原料樹脂の粘度に応じた前記最適なスクリュの回転角加速度を読み出して、計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度を決定するという構成にした。
【0020】
本願出願人らが先に提案したように、加熱筒内に供給された原料樹脂の粘度は、制御装置に予め記憶された数式及び定数とセンサ群の出力信号とから算出することができる(特開2004−142204号公報参照)。したがって、制御装置に原料樹脂の粘度算出に要する数式及び定数と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における装置各部の駆動状態の設定値と、最適なスクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しておき、算出された原料樹脂の粘度に応じた最適なスクリュの回転角加速度が読み出されるようにすると、原料樹脂の粘度算出を行うことによって自動的に計量工程における最適なスクリュの回転角加速度を決定することができるので、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の射出成形機は、製品の射出成形を開始する前に、使用する原料樹脂の粘度に関する情報を制御装置に取り込んで、その使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における最適なスクリュの回転角加速度を決定するので、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する気泡の巻き込みや樹脂粘度の低下及び不均一化を防止でき、高品質の成形品を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る射出成形機の第1実施形態を、図1乃至図5を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る射出成形機の要部構成図、図2は第1実施形態に係る射出成形機のスクリュ回りの詳細構成図、図3は第1実施形態に係る射出成形機に備えられる制御装置のブロック図、図4は第1実施形態に係る制御装置及びドライバ群の内部構成を示す図、図5は第1実施形態に係る射出成形機の動作を従来例に係る射出成形機の動作と比較して示すグラフ図である。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本例の射出成形機は、加熱筒1と、加熱筒1内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュ2と、スクリュ2を回転駆動する計量用サーボモータ3と、スクリュ2を前後進駆動する射出用サーボモータ4と、計量用サーボモータ3の回転運動をスクリュ2に伝達する計量用タイミングベルト5と、射出用サーボモータ4の回転運動をスクリュ2の前後進運動に変換するボールネジ機構等の回転→直線運動変換メカニズム6と、射出用サーボモータ4の回転運動を回転→直線運動変換メカニズム6に伝達する射出用タイミングベルト7と、計量用サーボモータ3の回転を検出する計量用エンコーダ8と、射出用サーボモータ4の回転を検出する射出用エンコーダ9と、スクリュ2に作用する圧力を検出するロードセル10と、計量用サーボモータ3及び射出用サーボモータ4の駆動を制御する制御装置11と、制御装置11から出力される制御信号に応じた計量用サーボモータ3及び射出用サーボモータ4の駆動信号を出力するドライバ群12と、制御装置11に付設された入力装置13及び表示装置14とを備えている。なお、計量用タイミングベルト5は、スクリュ2の後端に備えられたプーリ2aと計量用サーボモータ3の出力軸に備えられたプーリ3aとに輪掛けされ、射出用タイミングベルト7は、射出用サーボモータ4の出力軸に備えられたプーリ4aと回転→直線運動変換メカニズム6に備えられたプーリ6aとに輪掛けされる。
【0024】
図2に示すように、加熱筒1の先端部には、図示しない金型にタッチされるノズル15が設けられると共に、これら加熱筒1及びノズル15の外面には、バンドヒータ16a,16b,16c,16dが設けられている。また、加熱筒1の後部には、加熱筒1内に原料樹脂を供給するホッパ等の原料供給装置(図示省略)が取り付けられており、スクリュ2を特定の一方向に回転することにより、原料供給装置内の原料樹脂が、加熱筒1内に順次供給されるようになっている。一方、スクリュ2の表面には、後部から先端部分に行くにしたがって、溝深さが浅くなる螺旋溝17が形成されている。よって、計量用サーボモータ3を起動してスクリュ2を特定の一方向に回転すると、加熱筒1の後部に備えられた原料供給装置から加熱筒1内に供給された原料樹脂が、可塑化及び混練されながら後部の深溝部分から前方の浅溝部分に順次送られ、加熱筒1の先端部に設けられた貯留部1aに貯留される。貯留部1aに貯留された原料樹脂の樹脂圧は、ロードセル10によって検出される。なお、図3に表示の符号r、L、Dは、それぞれノズル孔の直径、ノズル15のランド長、スクリュ2の直径を示している。
【0025】
制御装置11は、製品の射出成形開始前に行われる装置各部の駆動状態の検出動作、計量動作、サックバック動作、射出(1次射出及び保圧)動作、型開閉動作、エジェクト動作等の成形工程全体の制御や、成形運転中の実測データの演算・格納処理、良品/不良品の判定処理、異常判定処理、及び表示装置の出力画像の表示制御処理等々の各種処理を実行する。この制御装置11は、実際には、各種I/Oインターフェイス、ROM、RAM、CPU等を具備したもので構成され、予め作成された各種プログラムにより各種処理を実行するものであって、本例においては、図3に示すように、成形条件設定記憶部21、成形プロセス制御部22、実測値記憶部23、スクリュ起動条件判定部24及び表示処理部25を備えている。なお、図1及び図3においては、センサとして、計量用エンコーダ8、射出用エンコーダ9及びロードセル10だけしか表示されていないが、射出成形機の各部に備えられた全てのセンサが制御装置11に接続される。
【0026】
成形条件設定記憶部21には、入力装置13や図示しないメモリカードなどによって入力された各種運転条件値が、書き替え可能な形で記憶されている。この運転条件の項目としては、例えば、計量制御条件、サックバック制御条件、射出(1次射出及び保圧)制御条件、型閉じ(型締め)制御条件、型開き制御条件、エジェクト制御条件、各部のバンドヒータの温度制御条件、製品自動取り出し機の制御条件等が挙げられる。計量制御条件には、スクリュ2に作用する樹脂圧の設定値及び起動時におけるスクリュ2の回転角加速度が含まれており、粘度が異なる各種の原料樹脂に対応できるようにするため、複数の起動時におけるスクリュ2の回転角加速度が記憶されている。
【0027】
成形プロセス制御部22は、予め作成された成形プロセス制御プログラムと、成形条件設定記憶部21に格納された設定条件値とに基づき、射出成形機の各部に配設されたセンサ群(位置センサ、圧力センサ、回転数センサ、温度センサ等々)からの計測情報及び自身に内蔵されたクロックからの計時情報を参照しつつ、前記ドライバ群12を介して対応する計量用サーボモータ3及び射出用サーボモータ4等の駆動源を駆動制御し、一連の成形行程を実行させる。
【0028】
実測値記憶部23には、予め設定されたモニタ項目について、射出成形機の運転時における総べての実測データが取り込まれる。特に、連続自動運転時には、連続する所定回数のショットにわたって所定の実測データが取り込まれる。取り込まれるモニタ項目としては、時間監視項目、位置監視項目、回転数監視項目、速度監視項目、圧力監視項目、温度監視項目、電力監視項目等が挙げられ、各ショット毎に成形運転条件設定項目の重要項目がほぼオーバーラップするようになっている。
【0029】
スクリュ起動条件判定部24は、製品の射出成形を開始する前に実行される原料樹脂のオートパージ中において、計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧及び加熱筒1内の樹脂圧をロードセル10の出力信号から求め、スクリュ2の背圧が図5(a)に示すように樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートする場合には、成形条件設定記憶部21に記憶された起動時におけるスクリュ2の回転角加速度をより低い値に切り替える。これにより、製品の射出成形開始後における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュの背圧を、図5(b)に示すように樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしない値に抑制できる。
【0030】
表示処理部25は、入力装置13を操作することによるオペレータの所望表示画像の呼び出し指令によって、予め作成された表示画像作成・制御プログラムに基づき、指定された表示モードの表示画像データを作成する。この作成された画像データは、図示しないフレームバッファに転送されて一時記憶され、表示処理部25の指令によってこのフレームバッファの出力が表示装置14に送出されて、表示装置14の表示画面上に画像データが表示される。
【0031】
図4に示すように、制御装置11の成形プロセス制御部22には、スクリュ回転数フィードバック制御部31、速度フィードバック制御部32、圧力フィードバック制御部33と、速度フィードバック制御部32の出力と圧力フィードバック制御部33の出力の切り替えを行うスイッチ部34が設けられ、ドライバ群12には、計量用サーボモータ3を駆動制御するサーボアンプ35と、射出用サーボモータ4を駆動制御するサーボアンプ36とが設けられている。
【0032】
以下、第1実施形態に係る射出成形機の動作について説明する。
【0033】
まず、製品の射出成形を開始する前に、加熱筒1内の原料樹脂をオートパージする。原料樹脂のオートパージは、原料樹脂の変更或いは色替えなどのために加熱筒1内の原料樹脂を自動的に入れ換える操作であって、ノズル15を金型にタッチしない状態で、スクリュ2を回転駆動することにより行われる。オートパージを実行するために計量用サーボモータ3を起動すると、スクリュ2は加熱筒1内に供給された原料樹脂からの反力を受けて、その背圧により急速に後退し、ロードセル10によって検出される背圧が上昇する。このときの背圧の変化は、実測値記憶部23に継続的に記憶されると共に、表示装置14に表示される。
【0034】
オートパージの完了後は、自動運転に移行し、製品の射出成形が行われる。自動運転は、計量工程と射出工程とを繰り返すことにより行われる。計量工程時には、計量工程の指令値を受けるスクリュ回転数フィードバック制御部31により、サーボアンプ35を介して計量用サーボモータ3が駆動制御され、スクリュ2が回転して、スクリュ2の先端側に溶融樹脂が蓄えられると共に、その樹脂圧を受けてスクリュ2が後退する。このとき、スクリュ回転数フィードバック制御部31は、射出用エンコーダ9の出力信号A3から得られる実測スクリュ位置を監視すると共に、設定スクリュ回転数データと、計量用エンコーダ8の出力信号A1から得られる実測スクリュ回転数データとを対比し、計量開始位置からスクリュ2が所定の後退位置に至るまでの区間を、設定されたスクリュ回転数となるように制御信号を生成して、これをサーボアンプ35に出力し、計量用サーボモータ3を駆動制御する。また、計量工程時には、計量工程の指令値を受ける圧力フィードバック制御部33によって、サーボアンプ36を介して圧力フィードバック制御により射出用サーボモータ4が駆動制御されて、これにより、設定された樹脂圧力となるようにスクリュ2に押圧力が付与される。このとき、圧力フィードバック制御部33は、射出用エンコーダ9の出力信号A3から得られる実測スクリュ位置を監視すると共に、設定圧力データと、ロードセル10の出力信号A2から得られる実測圧力データとを対比して、計量開始位置からのスクリュ後退位置に対応して設定された樹脂圧力となるように制御信号を生成して、これをサーボアンプ36に出力し、射出用サーボモータ4を駆動制御する。
【0035】
また、射出工程の1次射出工程を速度フィードバック制御で行う場合には、1次射出工程の指令値を受ける速度フィードバック制御部32によって、サーボアンプ36を介して速度フィードバック制御により射出用サーボモータ4が駆動制御されて、これにより、設定された射出速度となるようにスクリュ2の前進速度が制御される。このとき、速度フィードバック制御部32は、射出用エンコーダ9の出力信号A3から得られる実測スクリュ位置を監視すると共に、位置に応じて設定された設定速度データと、射出用エンコーダ9の出力信号A3から得られる位置データを算出して得られる実測速度データとを対比して、射出開始位置からスクリュ前進位置に対応して設定された射出速度となるように制御信号を生成して、これをサーボアンプ36に出力し、射出用サーボモータ4を駆動制御する。
【0036】
上述のように、第1実施形態に係る射出成形は、製品の射出成形を開始する前に実行される原料樹脂のオートパージ中において、計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧及び加熱筒1内の樹脂圧をロードセル10の出力信号A2から求め、スクリュ2の背圧が設定値P0をオーバーシュートする場合には、起動時におけるスクリュ2の回転角加速度をより低い値に切り替えて、設定値P0をオーバーシュートしない値に抑制するので、スクリュ2の不正な後退、ひいてはこれに起因する樹脂内への気泡の混入や樹脂密度の低下及び不均一化を防止することができる。よって、ショートショットやバリなどの成形不良の発生を防止でき、高品質の成形品を成形することができる。
【0037】
なお、前記第1実施形態においては、オートパージ中における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧が、樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替えたが、かかる構成に代えて、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧を監視し、この背圧が樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替える構成にすることもできる。
【0038】
射出成形機のユーザは、原料樹脂のオートパージを終了した後、直ちに自動運転に移行して製品の成形を開始するのではなく、通常、自動運転に移行直後の予め定められた所定回数のショットを試し打ち期間とし、製品に不都合が生じていないか否かを検査する。この試し打ち期間における計量も、製品の成形時と同様に、ノズルを金型にタッチした状態で、スクリュを回転駆動することにより行われる。したがって、この試し打ち期間中においても、スクリュに作用する背圧及び樹脂圧の変化を求めることができるので、試し打ち期間中における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧が樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替えることにより、第1実施形態に係る射出成形機と同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、前記第1実施形態においては、オートパージ中における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧が、樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替えたが、かかる構成に代えて、オートパージ中における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がる計量用サーボモータ3の負荷トルクを監視し、この負荷トルクが負荷トルクの設定値T0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替える構成にすることもできる。
【0040】
オートパージ中において、計量用サーボモータ3の起動に伴ってスクリュ2が原料樹脂からの反力を受けて急速に後退すると、それに応じて計量用サーボモータ3には大きな負荷トルクが作用する。したがって、オートパージ中に求められた負荷トルクの立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後における負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるようにスクリュの回転角加速度を決定することにより、計量用サーボモータ3の起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。なお、計量用サーボモータ3の負荷トルクは、計量用サーボモータ3の実測駆動電流値から求めることができる。
【0041】
さらに、前記第1実施形態においては、オートパージ中における計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の背圧が、樹脂圧の設定値P0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替えたが、かかる構成に代えて、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がる計量用サーボモータ3の負荷トルクを監視し、この負荷トルクが負荷トルクの設定値T0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替える構成にすることもできる。
【0042】
その他、オートパージ中又は自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される計量用サーボモータ3の起動と同時に立ち上がるスクリュ2の後退速度を監視し、この後退速度が後退速度の設定値S0をオーバーシュートしないように、スクリュ2の回転角加速度を切り替える構成にすることもできる。かかる構成によっても、前述した第1実施形態に係る各射出成形機と同様の効果を奏することができる。
【0043】
次に、本発明に係る射出成形機の第2実施形態を、図6を用いて説明する。図6は第2実施形態に係る射出成形機の制御装置に記憶されるテーブルを示す図である。
【0044】
本例の射出成形機は、制御装置11の成形条件設定記憶部21に、使用する原料樹脂の粘度(溶融粘度)η,η,η・・・と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における樹脂圧の設定値P0,P0,P0・・・と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における計量用サーボモータ3の起動からスクリュ2に作用する背圧が樹脂圧の設定値P0,P0,P0・・・に達するまでの間の最適なスクリュの回転角加速度α,α,α・・・との関係が、図6に示すテーブルの形で記憶されている。その他については、第1実施形態に係る射出成形機と同じである。
【0045】
本例の射出成形機においては、操作者が入力装置13を操作して、使用する原料樹脂の粘度を入力すると、図6のテーブルに基づいて、入力された原料樹脂の粘度に応じた最適なスクリュ2の回転角加速度が選択され、この選択されたスクリュ2の回転角加速度に基づいて、計量工程における計量用サーボモータ3の回転制御が行われる。したがって、図5(b)に示すように、計量工程における計量用サーボモータ3の起動時において、スクリュ2に作用する背圧が樹脂圧の設定値P0を超えないので、スクリュ2の過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0046】
なお、前記第2実施形態においては、制御装置11の成形条件設定記憶部21に、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における樹脂圧の設定値P0と、これに応じた最適なスクリュの回転角加速度との関係を記憶したが、かかる構成に代えて、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量用サーボモータ3の負荷トルクと、これに応じた最適なスクリュの回転角加速度との関係、又は、使用する原料樹脂の粘度に応じたスクリュ2の後退速度と、これに応じた最適なスクリュの回転角加速度との関係を記憶することもできる。
【0047】
次に、本発明に係る射出成形機の第3実施形態を、図7及び図8を用いて説明する。図7は第3実施形態に係る射出成形機に備えられる制御装置のブロック図、図8は樹脂粘度と剪断速度との関係を示す説明図である。
【0048】
本例の射出成形機は、スクリュ2の回転駆動中に、使用する原料樹脂の粘度を自ら算出し、算出された原料樹脂の粘度に応じた最適なスクリュ2の回転角加速度を選択して、計量工程における計量用サーボモータ3の起動を行うことを特徴とする。即ち、本例の射出成形機に備えられた制御装置11には、図8に示すように、樹脂粘度算出部41と計測樹脂粘度記憶部42とが設けられる。また、成形条件設定記憶部21には、第1実施形態に係る射出成形機と同様に、各種の設定値P0,T0,S0と、原料樹脂の粘度に応じたスクリュ2の最適な回転角加速度とが記憶されると共に、樹脂粘度の算出に必要な数式及び定数が記憶される。そして、樹脂粘度算出部41によって使用する原料樹脂の粘度が算出されたとき、成形条件設定記憶部21に記憶されたデータから、算出された原料樹脂の粘度に応じたスクリュ2の回転角加速度を選択し、スクリュ2の回転角加速度がこの選択された回転角加速度になるように、計量用サーボモータ3の回転制御を行う。その他については、第1実施形態に係る射出成形機と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して、説明を省略する。
【0049】
樹脂粘度の算出は、本願出願人らが先に提案した特開2004−142204号に記載の方法によって行うことができる。この方法を簡単に説明すると、加熱筒1内に供給された原料樹脂に作用する 剪断応力τ(Pa)は、粘度をη(Pa・sec)、剪断速度をγ(sec−1)としたとき、
τ=η×γ ……(1)式
で表される。
【0050】
ここで、(1)式で示される剪断速度γ(インラインスクリュ式の射出成形機においてはスクリュの前進速度で示される射出速度に相当)と粘度η(溶融樹脂の粘度)との関係には、図8に示すような挙動を示すことが確認されており、剪断速度γが10〜10の範囲内にあれば、剪断速度γの変化に伴って、粘度ηも変化することが確認されている。これに対して、剪断速度γが10未満もしくは10を超えるときには、剪断速度γの変化の如何にかかわらず、粘度ηはほぼ一定の値を示す。したがって、剪断速度(射出速度)が10〜10の範囲内におけるある所定の一定値を保っているときには、(1)式から溶融樹脂の粘度を算出することが可能となる。例えば、射出速度10mm/secより得られる剪断速度γは、射出成形機のサイズに関係なく、おおむねγ=10〜10程度の値となって、上述した粘度の算出条件を良好に満たすものとなる。一方、射出速度100mm/secより得られる剪断速度γは、100トン以上の射出成形機ではγ=10近傍の値を示すこともあり、適切な速度設定のパラメータではなくなる。よって、本発明では、射出速度(スクリュの前進速度)が5〜50mm/secの範囲内のある一定値を保つように制御して、上述した粘度の算出条件を良好に満たす範囲において、樹脂粘度の計測を行うようにしている。
【0051】
インラインスクリュ式の射出成形機においては、JIS K7199より、前記した剪断応力τと剪断速度γは、射出圧力をP(Pa)、ノズル孔の直径をr(mm)、ノズルのランド長をL(mm)、流量をQ(mm/sec)としたとき、
τ=(P×r)/(4×L) ……(2)式
γ=(32×Q)/(π×r) ……(3)式
でそれぞれ表される。
【0052】
ここで、流量Qは、スクリュ断面積をA(mm)、射出速度(スクリュの前進速度)をV(mm/sec)とすると、
Q=A×V ……(4)式
で表されるから、スクリュの直径をDとすると、(4)式は、
Q=(π×D×V)/4 ……(5)式
で表され、(5)式を(3)式に代入すると、
γ=(8×D×V)/r ……(6)式
となる。
【0053】
したがって、結局のところ、溶融樹脂の粘度ηは、
η=(r×P)/(32×L×D×V) ……(7)式
によって、求められることになる。つまり、射出速度が一定の条件であれば、射出圧力Pさえ実測すれば、一定に制御する射出速度の値やメカ寸法の値は既知であるので、実測射出圧力値に基づき樹脂粘度を算出することが可能となる。
【0054】
このような計算式を用いる樹脂粘度の計測手法によれば、計測された樹脂粘度は、樹脂材料メーカの提示する値とほぼ同等の、精度のよい値が得られることが実験によって確認されている。
【0055】
このように、第3実施形態に係る射出成形機は、使用する原料樹脂の粘度を自ら算出し、算出されて樹脂粘度に応じた最適なスクリュ2の角加速度を選択するので、計量用サーボモータの起動時におけるスクリュの過度の後退を防止することができて、これに起因する不都合の発生を防止できる。
【0056】
なお、第1乃至第3実施形態に記載した最適なスクリュの回転角加速度の決定方法は、単独で適用できるだけでなく、適宜組合わせて適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る射出成形機の要部構成図である。
【図2】第1実施形態に係る射出成形機のスクリュ回りの詳細構成図である。
【図3】第1実施形態に係る射出成形機に備えられる制御装置のブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る制御装置及びドライバ群の内部構成を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る射出成形機の動作を従来例に係る射出成形機の動作と比較して示すグラフ図である。
【図6】第2実施形態に係る射出成形機の制御装置に記憶されるテーブルを示す図である。
【図7】第3実施形態に係る射出成形機に備えられる制御装置のブロック図である。
【図8】樹脂粘度と剪断速度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 加熱筒
2 スクリュ
3 計量用サーボモータ
4 射出用サーボモータ
8 計量用エンコーダ
9 射出用エンコーダ
10 ロードセル
11 制御装置
12 ドライバ群
13 入力装置
14 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、
前記制御装置は、製品の射出成形を開始する前に、前記スクリュの回転駆動と前記センサ群からの出力信号の取り込みとを行って、前記加熱筒内に供給された原料樹脂の粘度に応じた装置各部の駆動状態と前記制御装置に予め設定された設定値との関係を求め、しかる後に、製品の射出成形を開始して、各ショット毎の計量工程における前記装置各部の駆動状態が前記設定値を超えないように、前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、原料樹脂のオートパージ中に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記スクリュの背圧であり、前記制御装置は、このオートパージ中における前記背圧の立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、原料樹脂のオートパージ中に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記計量用サーボモータの負荷トルクであり、前記制御装置は、このオートパージ中における前記負荷トルクの立上りの傾斜よりも、製品の射出成形を開始した後に実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記スクリュの背圧であり、前記制御装置は、この所定回数のショットにおける前記背圧の立上りの傾斜よりも、前記所定回数のショットが終了した後に行われる製品の射出成形で実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記背圧の立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記製品の射出成形を開始する前に求められる装置各部の駆動状態が、自動運転開始直後の予め定められた所定回数のショットにおいて実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記計量用サーボモータの負荷トルクであり、前記制御装置は、この所定回数のショットにおける前記負荷トルクの立上りの傾斜よりも、前記所定回数のショットが終了した後に行われる製品の射出成形で実行される前記計量用サーボモータの起動と同時に立ち上がる前記負荷トルクの立上りの傾斜の方が緩やかになるように、製品の射出成形を開始した後の前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項6】
計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、
前記制御装置は、使用する原料樹脂の粘度と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記装置各部の駆動状態の設定値と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しており、操作者が前記入力装置に使用する原料樹脂の粘度を入力したとき、この入力された原料樹脂の粘度に応じた前記最適なスクリュの回転角加速度を読み出して、計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする射出成形機。
【請求項7】
計量用サーボモータと、該計量用サーボモータにより回転駆動されるスクリュと、該スクリュを回転可能に収納する加熱筒と、該加熱筒内に原料樹脂を供給する原料供給装置と、前記計量用サーボモータの駆動を制御する制御装置と、該制御装置による前記計量用サーボモータの駆動条件を設定する入力装置と、前記計量用サーボモータ及び前記スクリュを含む装置各部の駆動状態を検出するセンサ群とを備えた射出成形機において、
前記制御装置は、使用する原料樹脂の粘度算出に必要な数式及び定数と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記装置各部の駆動状態の設定値と、使用する原料樹脂の粘度に応じた計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が前記設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度との関係を予め記憶しており、前記予め記憶された数式及び定数と前記センサ群の出力信号とから使用する原料樹脂の粘度を算出した後、その算出された原料樹脂の粘度に応じた前記最適なスクリュの回転角加速度を読み出して、計量工程における前記計量用サーボモータの起動から前記装置各部の駆動状態が設定値に達するまでの間の最適な前記スクリュの回転角加速度を決定することを特徴とする射出成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−83074(P2010−83074A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256404(P2008−256404)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】