射出成形用金型の温度制御装置
【課題】ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段52を設ける場合に、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないときに、ホットランナー部での滞留樹脂の過加熱を防止する。
【解決手段】ヒータ制御部41が、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されているときには、樹脂温度検出手段52により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるようにヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御する一方、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されていないときには、ヒータ51に対して、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行する。
【解決手段】ヒータ制御部41が、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されているときには、樹脂温度検出手段52により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるようにヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御する一方、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されていないときには、ヒータ51に対して、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホットランナー部を有する射出成形用金型はよく知られており、そのホットランナー部における樹脂(溶融樹脂)の温度が所定温度に制御されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、ホットランナー部には、通常、該ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、該樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出センサとが設けられており、その樹脂温度検出センサにより検出される樹脂温度が所定温度になるように、上記ヒータが制御(フィードバック制御)される。上記所定温度は、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金型のキャビティ内に射出される樹脂の温度を出来る限り正確に所定温度に維持して、成形品の品質を向上させるためには、上記樹脂温度検出センサを、ホットランナー部においてキャビティに最も近い出口部に設けて、該出口部における樹脂温度が所定温度になるように上記ヒータを制御することが好ましい。
【0005】
しかし、樹脂温度検出センサをホットランナー部の出口部に設けた場合、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないときに、ホットランナー部における溶融樹脂を加熱し過ぎる可能性が高くなる。すなわち、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度は、キャビティ内の溶融樹脂が固化したときや、型開きにより成形品を取り出したときに、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなる傾向にあり、この出口部における樹脂の温度に基づいてヒータの制御を行うと、ホットランナー部で溶融樹脂が滞留していることと相俟って、溶融樹脂を加熱し過ぎることになる。このような溶融樹脂の過加熱は、溶融樹脂が気化することになり、成形品の品質低下を招く。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段を設ける場合に、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないときに、ホットランナー部での滞留樹脂の過加熱を防止し、これにより、成形品の品質を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置を対象として、上記ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段と、上記ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、上記ヒータを制御するヒータ制御部とを備え、上記ヒータ制御部は、上記ホットランナー部における樹脂が上記金型のキャビティ内に射出されているときには、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるように上記ヒータに対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータをフィードバック制御する一方、上記ホットランナー部における樹脂が上記キャビティ内に射出されていないときには、上記ヒータに対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するよう構成されている、という構成とした。
【0008】
上記の構成により、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されているときには、ホットランナー部においてキャビティに最も近い出口部における樹脂の温度に基づいてヒータがフィードバック制御されるので、キャビティ内に射出される樹脂の温度が正確に第1の所定温度(キャビティ内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度)に維持される。一方、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないとき(非射出時)には、非射出時制御によって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が所定範囲内になるように制御される。この所定範囲は、ホットランナー部の出口部以外の部分における溶融樹脂が気化したり固化したりしない範囲とすればよい。これにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、出口部以外の部分における樹脂の過加熱が防止され、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持される。よって、成形品の品質を向上させることができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が、上記第1の所定温度よりも低い第2の所定温度となるように第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0010】
このことにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、制御目標温度も低く設定されることになるので、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が上記第1の所定温度となるように上記ヒータに対する上記第1の制御量を算出するとともに、該第1の制御量に対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正した制御量でもって、上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0012】
すなわち、非射出時に、第1の制御量でもってヒータを制御したのでは、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになるが、第1の制御量に対して補正した制御量でもってヒータを制御することで、ヒータによる溶融樹脂の加熱を制限することができる。したがって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもって上記ヒータを制御するよう構成されている。
【0014】
こうすることで、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、一定の制御量でもって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記第1の所定温度となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0016】
このことにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、出口部における樹脂の温度が所定値(非射出時において、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度と出口部以外の部分における樹脂の温度との差)だけ高いものと見做すことになるので、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の射出成形用金型の温度制御装置によると、ヒータ制御部が、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されているときには、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度に基づいてヒータをフィードバック制御する一方、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されていないときには、ヒータに対して、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するようにしたので、金型のキャビティ内に射出される樹脂の温度を正確に第1の所定温度にすることができるとともに、ホットランナー部での滞留樹脂の過加熱を防止することができ、よって、成形品の品質を出来る限り向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る金型温度制御装置によりホットランナー部における樹脂の温度が制御される射出成形用金型と該金型が取り付けられる成形機本体とを有する射出成形機を概略的に示す側面図である。
【図2】金型のホットランナー部を示す断面図である。
【図3】金型温度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】コントローラの制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図5】図4に続く制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図6】射出成形機運転終了処理の具体例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態2を示す図3相当図である。
【図8】実施形態2におけるコントローラの制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図9】図8に続く制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2における射出成形機運転終了処理の具体例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態3を示す図3相当図である。
【図12】本発明の実施形態4を示す図3相当図である。
【図13】本発明の実施形態5を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る金型温度制御装置A(図3参照)によりホットランナー部21d(図2参照)における樹脂の温度が制御される射出成形用金型21と該金型21が取り付けられる成形機本体2とを有する射出成形機1の概略を示す。成形機本体2は、溶融樹脂を金型21のキャビティ21c内に射出する射出装置10と、型締装置20とを含む。
【0021】
上記射出装置10は、金型21における後述の固定型21aに接続される加熱シリンダ11を有し、この加熱シリンダ11には、該加熱シリンダ11内に供給する樹脂材料たるペレットを貯留するホッパ12が接続されている。ホッパ12から加熱シリンダ11内に供給されたペレットは、加熱シリンダ11内で、不図示のヒータにより溶融する。
【0022】
上記加熱シリンダ11内には、スクリュー13が前後方向に進退自在にかつ回転自在に設けられ、このスクリュー13の後端部(図1の右側端部)が、前後方向に移動可能に設けられた支持部材14によって支持されている。この支持部材14には、サーボモータ等の計量モータ15が取り付けられている。この計量モータ15の出力軸の回転がタイミングベルト16を介してスクリュー13に伝達されて、スクリュー13が回転する。
【0023】
また、射出装置10は、スクリュー13と平行に前後方向に延びるねじ軸17を更に有する。このねじ軸17の後端部は、タイミングベルト18を介して、射出モータ19の出力軸に連結されている。一方、ねじ軸17の前端部は、支持部材14に形成された不図示の雌ねじ部に螺合している。これにより、射出モータ19が駆動されると、射出モータ19の出力軸の回転がタイミングベルト18を介してねじ軸17に伝達され、ねじ軸17及び上記雌ねじ部によって、ねじ軸17の回転が支持部材14が前後方向の移動に変換され、この結果、スクリュー13が前後方向に移動することになる。
【0024】
上記金型21は、複数の分割型(本実施形態では、2分割型)からなる。すなわち、本実施形態では、金型21は、固定型21aと可動型21bとからなり、これら固定型21aと可動型21bとが、後述の如く型締装置20により型締めされた状態で、これらの互いの合わせ面間にキャビティ21cが形成される。そして、スクリュー13が計量モータ15によって回転しながら、射出モータ19によって前進することで、予め決められた量の溶融樹脂が上記キャビティ21c内に射出される。1回の溶融樹脂の射出を1ショットとして、通常は、複数のショットが繰り返し行われ、そのショットの時間間隔は、予め決められた一定時間に設定されている。
【0025】
上記型締装置20は、上記固定型21aが着脱自在に取り付けられた固定プラテン22と、上記可動型21bが着脱自在に取り付けられた可動プラテン23とを有する。固定プラテン22と可動プラテン23とは、タイバー25によって互いに連結されている。可動プラテン23は、タイバー25に沿って摺動可能に構成されていて、固定プラテン22に対して接近したり離れたりする。
【0026】
また、型締装置20は、一端部が可動プラテン23に連結されかつ他端部がトグルサポート26に連結されたトグル機構27を更に有する。トグルサポート26の中央部には、ボールねじ軸29が回転自在に支持されている。このボールねじ軸29のトグル機構27側の端部(図1の右側端部)は、トグル機構27に設けられたクロスヘッド30に形成された雌ねじ部31に螺合している。一方、ボールねじ軸29のトグル機構27とは反対側の端部(図1の左側端部)は、タイミングベルト34を介して、型締モータ35の出力軸に連結されている。
【0027】
上記型締モータ35が駆動されると、型締モータ35の出力軸の回転がタイミングベルト34を介してボールねじ軸29に伝達され、ボールねじ軸29及び雌ねじ部31によって、ボールねじ軸29の回転がクロスヘッド30の直線移動に変換されて、トグル機構27が作動する。このトグル機構27の作動により、可動プラテン23がタイバー25に沿って移動して、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0028】
上記計量モータ15、射出モータ19及び型締モータ35の駆動は、後述のコントローラ40(詳しくは、後述の射出成形機制御回路部46)によって制御されて、射出成形機1(金型21)により製品が成形されることになる。
【0029】
図2に示すように、上記金型21(固定型21a)は、ホットランナー部21dを有しており、このホットランナー部21dから溶融樹脂がキャビティ21c内に射出される。ホットランナー部21dを構成する周壁部21eの外側には、ホットランナー部21dにおける樹脂(溶融樹脂)を加熱する円筒状のヒータ51が設けられている。このヒータ51は、ホットランナー部21dの長さ方向略全体に亘って延びていて、ホットランナー部21dの樹脂の略全体を加熱する。
【0030】
上記周壁部21eには、樹脂温度検出手段としての樹脂温度検出センサ52が設けられている。この樹脂温度検出センサ52は、ホットランナー部21dの出口部(ノズル部)における樹脂の温度を検出するためのものである。本実施形態では、樹脂温度検出センサ52は、ホットランナー部21dの出口部における上記周壁部21eに設けられて、該出口部における周壁部21eの温度を検出することにより、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を間接的に検出する。
【0031】
図3に示すように、金型温度制御装置Aは、上記金型21のホットランナー部21dの樹脂の温度(つまり上記ヒータ51)を制御するコントローラ40を備えている。このコントローラ40は、周知のマイクロコンピュータをベースとするものであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラムおよびデータを格納するメモリと、種々の信号の入出力を行うための入出力(I/O)バスとを含む。
【0032】
上記ヒータ51は、コントローラ40のヒータ制御部41により制御されるようになっている。このヒータ制御部41には、樹脂温度検出センサ52により検出された樹脂温度が入力され、該入力された樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度に基づいて、後述の如くヒータ51(詳しくは、ヒータ51への供給電力を調節する、例えば図示省略のインバータ等からなる電力調整部)を制御する。
【0033】
コントローラ40には、ヒータ制御部41の他に、更にカレンダタイマ45、射出成形機制御回路部46及び制御目標値信号発生部47が設けられている。
【0034】
コントローラ40の上記メモリには、予め、射出成形機1を運転する曜日と、運転開始時刻と、運転停止時刻とが入力されて記憶されている。そして、カレンダタイマ45は、射出成形機1を運転する曜日の運転開始時刻になったときに、成形機停止信号の出力を停止して、成形機運転信号を射出成形機制御回路部46へ出力する。この成形機運転信号の出力は、同じ曜日の運転停止時刻になるまで継続し、運転停止時刻になったときに、成形機運転信号の出力を停止して、成形機停止信号を射出成形機制御回路部46へ出力する。この成形機停止信号の出力は、次の、射出成形機1を運転する曜日の運転開始時刻になるまで継続する。
【0035】
射出成形機制御回路部46は、カレンダタイマ45からの成形機運転信号を入力している間は、その成形機運転信号を射出成形機1へ出力して射出成形機1を運転状態とし、上記の如く、計量モータ15、射出モータ19及び型締モータ35の駆動を制御する。一方、成形機停止信号を入力している間は、その成形機停止信号を射出成形機1へ出力して射出成形機1を停止状態とする。また、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき(つまり、射出モータ19によってスクリュー13を前進させているとき)には、射出運転信号を制御目標値信号発生部47へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないとき(非射出時)には、射出停止信号を制御目標値信号発生部47へ出力する。
【0036】
制御目標値信号発生部47は、射出成形機制御回路部46からの射出運転信号を入力しているときには、予めコントローラ40の上記メモリに入力して記憶しておいた射出運転時制御目標値(第1の所定温度に相当)に対応する信号を発生して、該信号(つまり射出運転時制御目標値)をヒータ制御部41へ出力し、射出停止信号を入力しているときには、予めコントローラ40の上記メモリに入力して記憶しておいた射出停止時制御目標値(第2の所定温度に相当)に対応する信号を発生して、その該信号(つまり射出停止時制御目標値)を、ヒータ制御部41へ出力する。
【0037】
ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき(制御目標値信号発生部47から上記射出運転時制御目標値を入力しているとき)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する(本実施形態では、PID制御を行う)。上記射出運転時制御目標値は、キャビティ21c内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ21c全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度である。
【0038】
一方、ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時(制御目標値信号発生部47から上記射出停止時制御目標値を入力しているとき)には、ヒータ51に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記射出運転時制御目標値を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行する。上記所定範囲は、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における溶融樹脂が気化したり固化したりしない範囲である。
【0039】
すなわち、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時に、上記第1の制御量でもってヒータ51を制御したのでは、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになる。そこで、ヒータ制御部41は、上記非射出時制御を実行する。具体的には、ヒータ制御部41は、上記非射出時制御において、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出停止時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する(本実施形態では、PID制御を行う)。ヒータ制御部41の制御自体は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときも非射出時も同様であるが、制御目標温度が変わることで、第1の制御量と第2の制御量とが異なることになる。
【0040】
上記射出停止時制御目標値は、上記射出運転時制御目標値よりも低い温度であって、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度を上記所定範囲内にすることが可能な値である。
【0041】
ここで、コントローラ40の制御動作について、図4及び図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
最初のステップS1で、作業者の操作により起動ボタンがONになったか否かを判定する。この起動ボタンがONになることで、コントローラ40の以下の処理動作が行われ、起動ボタンがONになるまでは、ステップS1の処理動作を繰り返す。
【0043】
起動ボタンがONになってステップS1の判定がYESになると、ステップS2に進んで、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する曜日であるか否かを判定する。このステップS2の判定がNOであるときには、ステップS2の処理動作を繰り返し、ステップS2の判定がYESになると、ステップS3に進む。
【0044】
ステップS3では、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する時刻(上記運転開始時刻と上記運転停止時刻との間の時刻)であるか否かを判定する。このステップS3の判定がNOであるときには、ステップS3の処理動作を繰り返し、ステップS3の判定がYESになると、ステップS4に進む。
【0045】
ステップS4では、カレンダタイマ45が成形機停止信号の出力を停止し、次のステップS5では、射出成形機制御回路部46が成形機停止信号の出力を停止する。
【0046】
次のステップS6では、カレンダタイマ45が成形機運転信号を出力し、次のステップS7では、射出成形機制御回路部46が成形機運転信号を出力し、次のステップS8では、射出成形機制御回路部46が射出成形機1の運転動作を開始する。
【0047】
次のステップS9では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであるか否か(射出運転信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS9の判定がNOであるときには、ステップS12に進む一方、ステップS9の判定がYESであるときには、ステップS10に進む。
【0048】
ステップS10では、制御目標値信号発生部47が射出運転時制御目標値をヒータ制御部41へ出力し、次のステップS11で、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出運転時制御目標値に設定し、しかる後、ステップS12に進む。
【0049】
ステップS12では、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときであるか否か(射出停止信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS12の判定がNOであるときには、ステップS15に進む一方、ステップS12の判定がYESであるときには、ステップS13に進む。
【0050】
ステップS13では、制御目標値信号発生部47が射出停止時制御目標値をヒータ制御部41へ出力し、次のステップS14で、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出停止時制御目標値に設定し、しかる後、ステップS15に進む。
【0051】
ステップS15では、ヒータ制御部41が、樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度を入力し、次のステップS16で、ヒータ制御部41が、ステップS15で入力した検出樹脂温度と上記制御目標値とに基づいて、制御量(上記第1又は第2の制御量)を演算し、次のステップS17で、ヒータ制御部41が、その制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。
【0052】
次のステップS18では、作業者が操作して射出成形機1を強制的に停止させるための停止ボタンがONになったか否かを判定し、このステップS18の判定がNOであるときには、ステップS19に進む一方、ステップS18の判定がYESであるときには、ステップS21に進む。
【0053】
ステップS19では、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する時刻(上記運転開始時刻と上記運転停止時刻との間の時刻)であるか否かを判定する。このステップS19の判定がYESであるときには、上記ステップS9に戻って、ステップS9〜S19の処理動作を繰り返す。一方、ステップS19の判定がNOであるときには、ステップS20に進んで、射出成形機運転終了処理を実行し、しかる後に、上記ステップS2に戻る。
【0054】
上記ステップS18の判定がYESであるときに進むステップS21においても、射出成形機運転終了処理を実行し、しかる後に、コントローラ40の制御動作を終了する。
【0055】
上記ステップS20及びS21における射出成形機運転終了処理の詳細を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
すなわち、ステップS41で、カレンダタイマ45が成形機運転信号の出力を停止し、次のステップS42では、射出成形機制御回路部46が成形機運転信号の出力を停止する。
【0057】
次のステップS43では、カレンダタイマ45が成形機停止信号を出力し、次のステップS44では、射出成形機制御回路部46が成形機停止信号を出力し、次のステップS45では、射出成形機制御回路部46が、射出成形機1の運転動作を停止する。
【0058】
次のステップS46では、射出成形機制御回路部46が、射出停止信号を制御目標値信号発生部47へ出力し、次のステップS47では、制御目標値信号発生部47が射出停止時制御目標値をヒータ制御部41へ出力する。
【0059】
次のステップS48では、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出停止時制御目標値に設定し、しかる後にリターンする。
【0060】
射出成形機1の運転を停止しているときも、ヒータ制御部41によりホットランナー部21dにおける樹脂の温度が制御される。その際、ヒータ制御部41は、射出成形機1の運転中における非射出時と同様に、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出停止時制御目標値となるようにヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する。
【0061】
上記コントローラ40の制御動作により、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、ホットランナー部21dにおいてキャビティ21cに最も近い出口部における樹脂温度が射出運転時制御目標値となるようにヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御するので、キャビティ21c内に射出される樹脂の温度が正確に射出運転時制御目標値に維持される。
【0062】
一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時(射出成形機1の運転を停止しているときも含む)に、上記第1の制御量でもってヒータ51を制御したのでは、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになる。しかし、本実施形態では、ヒータ制御部41は、非射出時には、ヒータ51に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記射出運転時制御目標値を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するので、ホットランナー部21dの樹脂を加熱し過ぎるようなことはなくなる。具体的に、本実施形態では、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値よりも低い温度である射出停止時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御するので、非射出時に、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、制御目標温度も低く設定されることで、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することができる。
【0063】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態1とは異ならせたものである。尚、図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、制御量演算部48と、補正部49とが設けられている。コントローラ40の上記メモリには、予め射出運転時制御目標値が入力されて記憶されている。そして、ヒータ制御部41の制御量演算部48は、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する制御量(第1の制御量)を算出する。この制御量の算出は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであっても非射出時であっても同様に行われる。
【0065】
上記補正部49は、非射出時に、上記制御量演算部48にて算出された制御量に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正して、該補正した制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力するものである。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記補正した制御量でもって、ヒータ51をフィードバック制御することになる。
【0066】
また、本実施形態では、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記実施形態1と同様に、射出運転信号を出力するが、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、射出運転信号の出力を停止するだけであり、射出停止信号を出力するものではない。そして、上記射出運転信号は、補正部49に入力される。尚、本実施形態では、コントローラ40に制御目標値信号発生部47は設けられていない。
【0067】
そして、補正部49は、上記射出運転信号が入力されていないとき(非射出時)に、制御量演算部48にて算出された上記制御量に対する上記補正を行う一方、上記射出運転信号が入力されているとき(ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき)には、上記補正を行わず、制御量演算部48にて算出された制御量をそのままヒータ51へ出力する。
【0068】
上記補正部49における補正は、例えば、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、予め設定された設定温度よりも低いときに、制御量演算部48にて算出された上記制御量を一定の制御量に制限する補正(つまり溶融樹脂の加熱を制限する補正)とし、該設定温度以上であるときには、その補正量を0にするような補正とすればよい。
【0069】
上記コントローラ40の制御動作について、図8及び図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0070】
ステップS101〜S108では、上記実施形態1におけるフローチャートのステップS1〜S8とそれぞれ同様の処理動作を実行し、次のステップS109で、ヒータ制御部41の制御量演算部48が、樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度を入力する。
【0071】
次のステップS110で、ヒータ制御部41の制御量演算部48が、ステップS109で入力した検出樹脂温度と射出運転時制御目標値とに基づいて、制御量(第1の制御量)を演算し、次のステップS111で、制御量演算部48が、その制御量を補正部49へ出力する。
【0072】
次のステップS112では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであるか否か(射出運転信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS112の判定がNOであるときには、ステップS115に進む一方、ステップS112の判定がYESであるときには、ステップS113に進む。
【0073】
ステップS113では、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号を補正部49へ出力し、次のステップS114では、ヒータ制御部41の補正部49が、制御量演算部48にて算出された制御量をそのままヒータ51(電力調整部)へ出力し、しかる後にステップS115へ進む。
【0074】
上記ステップS115では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときであるか否か(射出運転信号の出力停止中であるか否か)を判定し、このステップS115の判定がNOであるときには、ステップS118に進む一方、ステップS115の判定がYESであるときには、ステップS116に進む。
【0075】
ステップS116では、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号の補正部49への出力を停止し、次のステップS117で、補正部49が、制御量演算部48にて算出された制御量に対して補正した制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力し、しかる後にステップS118へ進む。
【0076】
ステップS118〜S121では、上記実施形態1におけるフローチャートのステップS18〜S21とそれぞれ同様の処理動作を実行し、ステップS121の、射出成形機運転終了処理の実行後、コントローラ40の制御動作を終了する。
【0077】
上記射出成形機運転終了処理は、図10に示すように、基本的に、上記実施形態1における射出成形機運転終了処理と同様である。すなわち、ステップS141〜S145で、ステップS41〜S45とそれぞれ同様の処理動作を行い、次のステップS146で、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号の補正部49への出力を停止し、しかる後にリターンする。
【0078】
射出成形機1の運転を停止しているときに、射出運転信号が入力されない補正部49が、射出成形機1の運転中における非射出時と同様に、上記補正した制御量をヒータ51へ出力することになる。
【0079】
したがって、本実施形態では、非射出時に、制御量演算部48にて算出された制御量に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正して、該補正した制御量でもって、ヒータ51をフィードバック制御するので、上記実施形態1と同様に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0080】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態2とは異ならせたものである。尚、図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41において、上記実施形態2の補正部49に代えて、切換スイッチ61と、制御信号を発生する制御信号発生部62が設けられている。切換スイッチ61には、射出成形機制御回路部46からの射出運転信号が入力される。すなわち、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、射出運転信号を切換スイッチ61へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、切換スイッチ61への射出運転信号の出力を停止する。
【0082】
切換スイッチ61は、ヒータ51(電力調整部)と接続されたc端子を、a端子に接続するか又はb端子に接続するかを切り換える。切換スイッチ61のa端子には、制御量演算部48からの制御量(第1の制御量)が入力され、b端子には、制御信号発生部62からの制御信号が入力される。そして、切換スイッチ61は、上記射出成形機制御回路部46から射出運転信号を入力しているときには、c端子をa端子に接続した状態に切り換え、射出運転信号を入力していないときには、c端子をb端子に接続した状態に切り換える。これにより、ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、制御量演算部48にて算出された制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、制御信号発生部62にて発生した制御信号をヒータ51(電力調整部)へ出力することになる。尚、切換スイッチ61は、ハードで構成したものに限らず、ソフトウエアで構成することも可能である。
【0083】
上記制御信号は、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量に対応する信号である。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度に関係なく、一定の制御量でもってヒータ51を制御することになる。
【0084】
本実施形態におけるコントローラ40の制御動作は、基本的に上記実施形態2のフローチャートと同様であり、これと異なるステップは、以下の通りである。すなわち、図9のステップS114は、ヒータ制御部41が、制御量演算部48にて算出された制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力するステップとなり、ステップS117は、ヒータ制御部41が、制御信号発生部62にて発生した制御信号をヒータ51(電力調整部)へ出力するステップとなる。
【0085】
したがって、本実施形態では、非射出時に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもってヒータ51を制御するので、上記実施形態1及び2と同様に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0086】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態2及び3とは異ならせたものである。尚、図7及び図11と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、上記実施形態2及び3と同様の制御量演算部48と、入力値指示部65とを設けたものである。制御量演算部48及び入力値指示部65には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそれぞれ入力される。入力値指示部65は、その入力された樹脂温度を、作業者が見える箇所に設けられた表示器53に表示させるように指示する。これにより、作業者は、上記樹脂温度に異常がないかどうかを確認することができる。
【0088】
制御量演算部48には、上記樹脂温度に加えて、射出成形機制御回路部46から、上記実施形態2及び3と同様の射出運転信号も入力される。そして、制御量演算部48は、上記射出運転信号が入力されているとき(ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、コントローラ40の上記メモリに予め入力されて記憶された射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。一方、制御量演算部48は、上記射出運転信号が入力されていないとき(非射出時)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記射出運転時制御目標値となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記第3の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御することになる。
【0089】
上記所定値は、非射出時において、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度と出口部以外の部分における樹脂の温度との差とすればよい。非射出時に、このような所定値の分だけ、出口部における樹脂の温度が高いものと見做すことになるので、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0090】
ここで、上記入力値指示部65には、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときも射出されていないときも常に、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそのまま入力されるので、表示器53には常に、上記樹脂温度が表示され、作業者が異常の有無の確認を容易に行える(後述の実施形態5においても同様)。
【0091】
(実施形態5)
図13は、本発明の実施形態5を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態4とは異ならせたものである。尚、図12と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0092】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、上記実施形態4と同様の制御量演算部48及び入力値指示部65に加えて、入力補正信号発生部66、入力信号補正加算演算部67及び切換スイッチ68が設けられている。切換スイッチ68は、上記実施形態3における切換スイッチ61と同様の構成のものである。入力値指示部65、入力信号補正加算演算部67、及び、切換スイッチ68のa端子には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそれぞれ入力される。
【0093】
入力補正信号発生部66は、上記実施形態4で説明した所定値に相当する入力補正信号(補正値)を発生して、その入力補正信号を入力信号補正加算演算部67へ出力する。入力信号補正加算演算部67は、上記補正値を上記樹脂温度に加算して、該補正値を加算した樹脂温度を切換スイッチ68のb端子へ出力する。切換スイッチ68のc端子は、制御量演算部48と接続されており、c端子がb端子に接続された状態では、上記補正値を加算した樹脂温度が制御量演算部48に入力されることになる。一方、c端子がa端子に接続された状態では、上記樹脂温度がそのまま制御量演算部48に入力される。
【0094】
切換スイッチ68は、上記射出成形機制御回路部46から射出運転信号を入力しているときには、c端子をa端子に接続した状態に切り換え、射出運転信号を入力していないときには、c端子をb端子に接続した状態に切り換える。これにより、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記樹脂温度が制御量演算部48に入力される一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、上記補正値を加算した樹脂温度が制御量演算部48に入力される。
【0095】
制御量演算部48は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記樹脂温度が射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、上記補正値を加算した樹脂温度が射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第3の制御量を算出して、該第3の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。すなわち、本実施形態においても、上記実施形態4と同様に、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記第3の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御することになる。この結果、上記実施形態4と同様の作用効果が得られる。
【0096】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0097】
例えば、上記各実施形態では、樹脂温度検出センサ52が、ホットランナー部21dの出口部における周壁部21eに設けられて、該出口部における周壁部21eの温度を検出することにより、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を間接的に検出するように構成されているが、樹脂温度検出センサ52を、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を直接検出する構成にしてもよい。
【0098】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0100】
A 金型温度制御装置
21 金型
21d ホットランナー部
41 ヒータ制御部
51 ヒータ
52 樹脂温度検出センサ(樹脂温度検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホットランナー部を有する射出成形用金型はよく知られており、そのホットランナー部における樹脂(溶融樹脂)の温度が所定温度に制御されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、ホットランナー部には、通常、該ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、該樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出センサとが設けられており、その樹脂温度検出センサにより検出される樹脂温度が所定温度になるように、上記ヒータが制御(フィードバック制御)される。上記所定温度は、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金型のキャビティ内に射出される樹脂の温度を出来る限り正確に所定温度に維持して、成形品の品質を向上させるためには、上記樹脂温度検出センサを、ホットランナー部においてキャビティに最も近い出口部に設けて、該出口部における樹脂温度が所定温度になるように上記ヒータを制御することが好ましい。
【0005】
しかし、樹脂温度検出センサをホットランナー部の出口部に設けた場合、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないときに、ホットランナー部における溶融樹脂を加熱し過ぎる可能性が高くなる。すなわち、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度は、キャビティ内の溶融樹脂が固化したときや、型開きにより成形品を取り出したときに、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなる傾向にあり、この出口部における樹脂の温度に基づいてヒータの制御を行うと、ホットランナー部で溶融樹脂が滞留していることと相俟って、溶融樹脂を加熱し過ぎることになる。このような溶融樹脂の過加熱は、溶融樹脂が気化することになり、成形品の品質低下を招く。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段を設ける場合に、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないときに、ホットランナー部での滞留樹脂の過加熱を防止し、これにより、成形品の品質を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置を対象として、上記ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段と、上記ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、上記ヒータを制御するヒータ制御部とを備え、上記ヒータ制御部は、上記ホットランナー部における樹脂が上記金型のキャビティ内に射出されているときには、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるように上記ヒータに対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータをフィードバック制御する一方、上記ホットランナー部における樹脂が上記キャビティ内に射出されていないときには、上記ヒータに対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するよう構成されている、という構成とした。
【0008】
上記の構成により、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されているときには、ホットランナー部においてキャビティに最も近い出口部における樹脂の温度に基づいてヒータがフィードバック制御されるので、キャビティ内に射出される樹脂の温度が正確に第1の所定温度(キャビティ内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度)に維持される。一方、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されていないとき(非射出時)には、非射出時制御によって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が所定範囲内になるように制御される。この所定範囲は、ホットランナー部の出口部以外の部分における溶融樹脂が気化したり固化したりしない範囲とすればよい。これにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、出口部以外の部分における樹脂の過加熱が防止され、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持される。よって、成形品の品質を向上させることができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が、上記第1の所定温度よりも低い第2の所定温度となるように第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0010】
このことにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、制御目標温度も低く設定されることになるので、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が上記第1の所定温度となるように上記ヒータに対する上記第1の制御量を算出するとともに、該第1の制御量に対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正した制御量でもって、上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0012】
すなわち、非射出時に、第1の制御量でもってヒータを制御したのでは、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになるが、第1の制御量に対して補正した制御量でもってヒータを制御することで、ヒータによる溶融樹脂の加熱を制限することができる。したがって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもって上記ヒータを制御するよう構成されている。
【0014】
こうすることで、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、一定の制御量でもって、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記第1の所定温度となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されている。
【0016】
このことにより、非射出時に、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、出口部における樹脂の温度が所定値(非射出時において、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度と出口部以外の部分における樹脂の温度との差)だけ高いものと見做すことになるので、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することが容易にできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の射出成形用金型の温度制御装置によると、ヒータ制御部が、ホットランナー部における樹脂が金型のキャビティ内に射出されているときには、ホットランナー部の出口部における樹脂の温度に基づいてヒータをフィードバック制御する一方、ホットランナー部における樹脂がキャビティ内に射出されていないときには、ヒータに対して、ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するようにしたので、金型のキャビティ内に射出される樹脂の温度を正確に第1の所定温度にすることができるとともに、ホットランナー部での滞留樹脂の過加熱を防止することができ、よって、成形品の品質を出来る限り向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る金型温度制御装置によりホットランナー部における樹脂の温度が制御される射出成形用金型と該金型が取り付けられる成形機本体とを有する射出成形機を概略的に示す側面図である。
【図2】金型のホットランナー部を示す断面図である。
【図3】金型温度制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】コントローラの制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図5】図4に続く制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図6】射出成形機運転終了処理の具体例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態2を示す図3相当図である。
【図8】実施形態2におけるコントローラの制御動作の前半部を示すフローチャートである。
【図9】図8に続く制御動作の後半部を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2における射出成形機運転終了処理の具体例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態3を示す図3相当図である。
【図12】本発明の実施形態4を示す図3相当図である。
【図13】本発明の実施形態5を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る金型温度制御装置A(図3参照)によりホットランナー部21d(図2参照)における樹脂の温度が制御される射出成形用金型21と該金型21が取り付けられる成形機本体2とを有する射出成形機1の概略を示す。成形機本体2は、溶融樹脂を金型21のキャビティ21c内に射出する射出装置10と、型締装置20とを含む。
【0021】
上記射出装置10は、金型21における後述の固定型21aに接続される加熱シリンダ11を有し、この加熱シリンダ11には、該加熱シリンダ11内に供給する樹脂材料たるペレットを貯留するホッパ12が接続されている。ホッパ12から加熱シリンダ11内に供給されたペレットは、加熱シリンダ11内で、不図示のヒータにより溶融する。
【0022】
上記加熱シリンダ11内には、スクリュー13が前後方向に進退自在にかつ回転自在に設けられ、このスクリュー13の後端部(図1の右側端部)が、前後方向に移動可能に設けられた支持部材14によって支持されている。この支持部材14には、サーボモータ等の計量モータ15が取り付けられている。この計量モータ15の出力軸の回転がタイミングベルト16を介してスクリュー13に伝達されて、スクリュー13が回転する。
【0023】
また、射出装置10は、スクリュー13と平行に前後方向に延びるねじ軸17を更に有する。このねじ軸17の後端部は、タイミングベルト18を介して、射出モータ19の出力軸に連結されている。一方、ねじ軸17の前端部は、支持部材14に形成された不図示の雌ねじ部に螺合している。これにより、射出モータ19が駆動されると、射出モータ19の出力軸の回転がタイミングベルト18を介してねじ軸17に伝達され、ねじ軸17及び上記雌ねじ部によって、ねじ軸17の回転が支持部材14が前後方向の移動に変換され、この結果、スクリュー13が前後方向に移動することになる。
【0024】
上記金型21は、複数の分割型(本実施形態では、2分割型)からなる。すなわち、本実施形態では、金型21は、固定型21aと可動型21bとからなり、これら固定型21aと可動型21bとが、後述の如く型締装置20により型締めされた状態で、これらの互いの合わせ面間にキャビティ21cが形成される。そして、スクリュー13が計量モータ15によって回転しながら、射出モータ19によって前進することで、予め決められた量の溶融樹脂が上記キャビティ21c内に射出される。1回の溶融樹脂の射出を1ショットとして、通常は、複数のショットが繰り返し行われ、そのショットの時間間隔は、予め決められた一定時間に設定されている。
【0025】
上記型締装置20は、上記固定型21aが着脱自在に取り付けられた固定プラテン22と、上記可動型21bが着脱自在に取り付けられた可動プラテン23とを有する。固定プラテン22と可動プラテン23とは、タイバー25によって互いに連結されている。可動プラテン23は、タイバー25に沿って摺動可能に構成されていて、固定プラテン22に対して接近したり離れたりする。
【0026】
また、型締装置20は、一端部が可動プラテン23に連結されかつ他端部がトグルサポート26に連結されたトグル機構27を更に有する。トグルサポート26の中央部には、ボールねじ軸29が回転自在に支持されている。このボールねじ軸29のトグル機構27側の端部(図1の右側端部)は、トグル機構27に設けられたクロスヘッド30に形成された雌ねじ部31に螺合している。一方、ボールねじ軸29のトグル機構27とは反対側の端部(図1の左側端部)は、タイミングベルト34を介して、型締モータ35の出力軸に連結されている。
【0027】
上記型締モータ35が駆動されると、型締モータ35の出力軸の回転がタイミングベルト34を介してボールねじ軸29に伝達され、ボールねじ軸29及び雌ねじ部31によって、ボールねじ軸29の回転がクロスヘッド30の直線移動に変換されて、トグル機構27が作動する。このトグル機構27の作動により、可動プラテン23がタイバー25に沿って移動して、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0028】
上記計量モータ15、射出モータ19及び型締モータ35の駆動は、後述のコントローラ40(詳しくは、後述の射出成形機制御回路部46)によって制御されて、射出成形機1(金型21)により製品が成形されることになる。
【0029】
図2に示すように、上記金型21(固定型21a)は、ホットランナー部21dを有しており、このホットランナー部21dから溶融樹脂がキャビティ21c内に射出される。ホットランナー部21dを構成する周壁部21eの外側には、ホットランナー部21dにおける樹脂(溶融樹脂)を加熱する円筒状のヒータ51が設けられている。このヒータ51は、ホットランナー部21dの長さ方向略全体に亘って延びていて、ホットランナー部21dの樹脂の略全体を加熱する。
【0030】
上記周壁部21eには、樹脂温度検出手段としての樹脂温度検出センサ52が設けられている。この樹脂温度検出センサ52は、ホットランナー部21dの出口部(ノズル部)における樹脂の温度を検出するためのものである。本実施形態では、樹脂温度検出センサ52は、ホットランナー部21dの出口部における上記周壁部21eに設けられて、該出口部における周壁部21eの温度を検出することにより、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を間接的に検出する。
【0031】
図3に示すように、金型温度制御装置Aは、上記金型21のホットランナー部21dの樹脂の温度(つまり上記ヒータ51)を制御するコントローラ40を備えている。このコントローラ40は、周知のマイクロコンピュータをベースとするものであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラムおよびデータを格納するメモリと、種々の信号の入出力を行うための入出力(I/O)バスとを含む。
【0032】
上記ヒータ51は、コントローラ40のヒータ制御部41により制御されるようになっている。このヒータ制御部41には、樹脂温度検出センサ52により検出された樹脂温度が入力され、該入力された樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度に基づいて、後述の如くヒータ51(詳しくは、ヒータ51への供給電力を調節する、例えば図示省略のインバータ等からなる電力調整部)を制御する。
【0033】
コントローラ40には、ヒータ制御部41の他に、更にカレンダタイマ45、射出成形機制御回路部46及び制御目標値信号発生部47が設けられている。
【0034】
コントローラ40の上記メモリには、予め、射出成形機1を運転する曜日と、運転開始時刻と、運転停止時刻とが入力されて記憶されている。そして、カレンダタイマ45は、射出成形機1を運転する曜日の運転開始時刻になったときに、成形機停止信号の出力を停止して、成形機運転信号を射出成形機制御回路部46へ出力する。この成形機運転信号の出力は、同じ曜日の運転停止時刻になるまで継続し、運転停止時刻になったときに、成形機運転信号の出力を停止して、成形機停止信号を射出成形機制御回路部46へ出力する。この成形機停止信号の出力は、次の、射出成形機1を運転する曜日の運転開始時刻になるまで継続する。
【0035】
射出成形機制御回路部46は、カレンダタイマ45からの成形機運転信号を入力している間は、その成形機運転信号を射出成形機1へ出力して射出成形機1を運転状態とし、上記の如く、計量モータ15、射出モータ19及び型締モータ35の駆動を制御する。一方、成形機停止信号を入力している間は、その成形機停止信号を射出成形機1へ出力して射出成形機1を停止状態とする。また、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき(つまり、射出モータ19によってスクリュー13を前進させているとき)には、射出運転信号を制御目標値信号発生部47へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないとき(非射出時)には、射出停止信号を制御目標値信号発生部47へ出力する。
【0036】
制御目標値信号発生部47は、射出成形機制御回路部46からの射出運転信号を入力しているときには、予めコントローラ40の上記メモリに入力して記憶しておいた射出運転時制御目標値(第1の所定温度に相当)に対応する信号を発生して、該信号(つまり射出運転時制御目標値)をヒータ制御部41へ出力し、射出停止信号を入力しているときには、予めコントローラ40の上記メモリに入力して記憶しておいた射出停止時制御目標値(第2の所定温度に相当)に対応する信号を発生して、その該信号(つまり射出停止時制御目標値)を、ヒータ制御部41へ出力する。
【0037】
ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき(制御目標値信号発生部47から上記射出運転時制御目標値を入力しているとき)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する(本実施形態では、PID制御を行う)。上記射出運転時制御目標値は、キャビティ21c内に射出された溶融樹脂が気化したり早期に(キャビティ21c全体に行き渡る前に)固化したりしないような温度である。
【0038】
一方、ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時(制御目標値信号発生部47から上記射出停止時制御目標値を入力しているとき)には、ヒータ51に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記射出運転時制御目標値を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行する。上記所定範囲は、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における溶融樹脂が気化したり固化したりしない範囲である。
【0039】
すなわち、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時に、上記第1の制御量でもってヒータ51を制御したのでは、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになる。そこで、ヒータ制御部41は、上記非射出時制御を実行する。具体的には、ヒータ制御部41は、上記非射出時制御において、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出停止時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する(本実施形態では、PID制御を行う)。ヒータ制御部41の制御自体は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときも非射出時も同様であるが、制御目標温度が変わることで、第1の制御量と第2の制御量とが異なることになる。
【0040】
上記射出停止時制御目標値は、上記射出運転時制御目標値よりも低い温度であって、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度を上記所定範囲内にすることが可能な値である。
【0041】
ここで、コントローラ40の制御動作について、図4及び図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0042】
最初のステップS1で、作業者の操作により起動ボタンがONになったか否かを判定する。この起動ボタンがONになることで、コントローラ40の以下の処理動作が行われ、起動ボタンがONになるまでは、ステップS1の処理動作を繰り返す。
【0043】
起動ボタンがONになってステップS1の判定がYESになると、ステップS2に進んで、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する曜日であるか否かを判定する。このステップS2の判定がNOであるときには、ステップS2の処理動作を繰り返し、ステップS2の判定がYESになると、ステップS3に進む。
【0044】
ステップS3では、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する時刻(上記運転開始時刻と上記運転停止時刻との間の時刻)であるか否かを判定する。このステップS3の判定がNOであるときには、ステップS3の処理動作を繰り返し、ステップS3の判定がYESになると、ステップS4に進む。
【0045】
ステップS4では、カレンダタイマ45が成形機停止信号の出力を停止し、次のステップS5では、射出成形機制御回路部46が成形機停止信号の出力を停止する。
【0046】
次のステップS6では、カレンダタイマ45が成形機運転信号を出力し、次のステップS7では、射出成形機制御回路部46が成形機運転信号を出力し、次のステップS8では、射出成形機制御回路部46が射出成形機1の運転動作を開始する。
【0047】
次のステップS9では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであるか否か(射出運転信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS9の判定がNOであるときには、ステップS12に進む一方、ステップS9の判定がYESであるときには、ステップS10に進む。
【0048】
ステップS10では、制御目標値信号発生部47が射出運転時制御目標値をヒータ制御部41へ出力し、次のステップS11で、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出運転時制御目標値に設定し、しかる後、ステップS12に進む。
【0049】
ステップS12では、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときであるか否か(射出停止信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS12の判定がNOであるときには、ステップS15に進む一方、ステップS12の判定がYESであるときには、ステップS13に進む。
【0050】
ステップS13では、制御目標値信号発生部47が射出停止時制御目標値をヒータ制御部41へ出力し、次のステップS14で、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出停止時制御目標値に設定し、しかる後、ステップS15に進む。
【0051】
ステップS15では、ヒータ制御部41が、樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度を入力し、次のステップS16で、ヒータ制御部41が、ステップS15で入力した検出樹脂温度と上記制御目標値とに基づいて、制御量(上記第1又は第2の制御量)を演算し、次のステップS17で、ヒータ制御部41が、その制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。
【0052】
次のステップS18では、作業者が操作して射出成形機1を強制的に停止させるための停止ボタンがONになったか否かを判定し、このステップS18の判定がNOであるときには、ステップS19に進む一方、ステップS18の判定がYESであるときには、ステップS21に進む。
【0053】
ステップS19では、カレンダタイマ45が、射出成形機1を運転する時刻(上記運転開始時刻と上記運転停止時刻との間の時刻)であるか否かを判定する。このステップS19の判定がYESであるときには、上記ステップS9に戻って、ステップS9〜S19の処理動作を繰り返す。一方、ステップS19の判定がNOであるときには、ステップS20に進んで、射出成形機運転終了処理を実行し、しかる後に、上記ステップS2に戻る。
【0054】
上記ステップS18の判定がYESであるときに進むステップS21においても、射出成形機運転終了処理を実行し、しかる後に、コントローラ40の制御動作を終了する。
【0055】
上記ステップS20及びS21における射出成形機運転終了処理の詳細を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
すなわち、ステップS41で、カレンダタイマ45が成形機運転信号の出力を停止し、次のステップS42では、射出成形機制御回路部46が成形機運転信号の出力を停止する。
【0057】
次のステップS43では、カレンダタイマ45が成形機停止信号を出力し、次のステップS44では、射出成形機制御回路部46が成形機停止信号を出力し、次のステップS45では、射出成形機制御回路部46が、射出成形機1の運転動作を停止する。
【0058】
次のステップS46では、射出成形機制御回路部46が、射出停止信号を制御目標値信号発生部47へ出力し、次のステップS47では、制御目標値信号発生部47が射出停止時制御目標値をヒータ制御部41へ出力する。
【0059】
次のステップS48では、ヒータ制御部41が、制御目標値を、制御目標値信号発生部47から入力した射出停止時制御目標値に設定し、しかる後にリターンする。
【0060】
射出成形機1の運転を停止しているときも、ヒータ制御部41によりホットランナー部21dにおける樹脂の温度が制御される。その際、ヒータ制御部41は、射出成形機1の運転中における非射出時と同様に、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出停止時制御目標値となるようにヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御する。
【0061】
上記コントローラ40の制御動作により、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、ホットランナー部21dにおいてキャビティ21cに最も近い出口部における樹脂温度が射出運転時制御目標値となるようにヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御するので、キャビティ21c内に射出される樹脂の温度が正確に射出運転時制御目標値に維持される。
【0062】
一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていない非射出時(射出成形機1の運転を停止しているときも含む)に、上記第1の制御量でもってヒータ51を制御したのでは、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなるために、出口部以外の部分における樹脂を加熱し過ぎることになる。しかし、本実施形態では、ヒータ制御部41は、非射出時には、ヒータ51に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記射出運転時制御目標値を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するので、ホットランナー部21dの樹脂を加熱し過ぎるようなことはなくなる。具体的に、本実施形態では、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値よりも低い温度である射出停止時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって該ヒータ51をフィードバック制御するので、非射出時に、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、制御目標温度も低く設定されることで、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止して、該樹脂の温度を適切な温度範囲内に維持することができる。
【0063】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態1とは異ならせたものである。尚、図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、制御量演算部48と、補正部49とが設けられている。コントローラ40の上記メモリには、予め射出運転時制御目標値が入力されて記憶されている。そして、ヒータ制御部41の制御量演算部48は、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、上記射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する制御量(第1の制御量)を算出する。この制御量の算出は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであっても非射出時であっても同様に行われる。
【0065】
上記補正部49は、非射出時に、上記制御量演算部48にて算出された制御量に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正して、該補正した制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力するものである。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記補正した制御量でもって、ヒータ51をフィードバック制御することになる。
【0066】
また、本実施形態では、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記実施形態1と同様に、射出運転信号を出力するが、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、射出運転信号の出力を停止するだけであり、射出停止信号を出力するものではない。そして、上記射出運転信号は、補正部49に入力される。尚、本実施形態では、コントローラ40に制御目標値信号発生部47は設けられていない。
【0067】
そして、補正部49は、上記射出運転信号が入力されていないとき(非射出時)に、制御量演算部48にて算出された上記制御量に対する上記補正を行う一方、上記射出運転信号が入力されているとき(ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき)には、上記補正を行わず、制御量演算部48にて算出された制御量をそのままヒータ51へ出力する。
【0068】
上記補正部49における補正は、例えば、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、予め設定された設定温度よりも低いときに、制御量演算部48にて算出された上記制御量を一定の制御量に制限する補正(つまり溶融樹脂の加熱を制限する補正)とし、該設定温度以上であるときには、その補正量を0にするような補正とすればよい。
【0069】
上記コントローラ40の制御動作について、図8及び図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0070】
ステップS101〜S108では、上記実施形態1におけるフローチャートのステップS1〜S8とそれぞれ同様の処理動作を実行し、次のステップS109で、ヒータ制御部41の制御量演算部48が、樹脂温度検出センサ52による検出樹脂温度を入力する。
【0071】
次のステップS110で、ヒータ制御部41の制御量演算部48が、ステップS109で入力した検出樹脂温度と射出運転時制御目標値とに基づいて、制御量(第1の制御量)を演算し、次のステップS111で、制御量演算部48が、その制御量を補正部49へ出力する。
【0072】
次のステップS112では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときであるか否か(射出運転信号を出力中であるか否か)を判定し、このステップS112の判定がNOであるときには、ステップS115に進む一方、ステップS112の判定がYESであるときには、ステップS113に進む。
【0073】
ステップS113では、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号を補正部49へ出力し、次のステップS114では、ヒータ制御部41の補正部49が、制御量演算部48にて算出された制御量をそのままヒータ51(電力調整部)へ出力し、しかる後にステップS115へ進む。
【0074】
上記ステップS115では、射出成形機制御回路部46が、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときであるか否か(射出運転信号の出力停止中であるか否か)を判定し、このステップS115の判定がNOであるときには、ステップS118に進む一方、ステップS115の判定がYESであるときには、ステップS116に進む。
【0075】
ステップS116では、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号の補正部49への出力を停止し、次のステップS117で、補正部49が、制御量演算部48にて算出された制御量に対して補正した制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力し、しかる後にステップS118へ進む。
【0076】
ステップS118〜S121では、上記実施形態1におけるフローチャートのステップS18〜S21とそれぞれ同様の処理動作を実行し、ステップS121の、射出成形機運転終了処理の実行後、コントローラ40の制御動作を終了する。
【0077】
上記射出成形機運転終了処理は、図10に示すように、基本的に、上記実施形態1における射出成形機運転終了処理と同様である。すなわち、ステップS141〜S145で、ステップS41〜S45とそれぞれ同様の処理動作を行い、次のステップS146で、射出成形機制御回路部46が、射出運転信号の補正部49への出力を停止し、しかる後にリターンする。
【0078】
射出成形機1の運転を停止しているときに、射出運転信号が入力されない補正部49が、射出成形機1の運転中における非射出時と同様に、上記補正した制御量をヒータ51へ出力することになる。
【0079】
したがって、本実施形態では、非射出時に、制御量演算部48にて算出された制御量に対して、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正して、該補正した制御量でもって、ヒータ51をフィードバック制御するので、上記実施形態1と同様に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0080】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態2とは異ならせたものである。尚、図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41において、上記実施形態2の補正部49に代えて、切換スイッチ61と、制御信号を発生する制御信号発生部62が設けられている。切換スイッチ61には、射出成形機制御回路部46からの射出運転信号が入力される。すなわち、射出成形機制御回路部46は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、射出運転信号を切換スイッチ61へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、切換スイッチ61への射出運転信号の出力を停止する。
【0082】
切換スイッチ61は、ヒータ51(電力調整部)と接続されたc端子を、a端子に接続するか又はb端子に接続するかを切り換える。切換スイッチ61のa端子には、制御量演算部48からの制御量(第1の制御量)が入力され、b端子には、制御信号発生部62からの制御信号が入力される。そして、切換スイッチ61は、上記射出成形機制御回路部46から射出運転信号を入力しているときには、c端子をa端子に接続した状態に切り換え、射出運転信号を入力していないときには、c端子をb端子に接続した状態に切り換える。これにより、ヒータ制御部41は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、制御量演算部48にて算出された制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力し、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、制御信号発生部62にて発生した制御信号をヒータ51(電力調整部)へ出力することになる。尚、切換スイッチ61は、ハードで構成したものに限らず、ソフトウエアで構成することも可能である。
【0083】
上記制御信号は、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量に対応する信号である。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度に関係なく、一定の制御量でもってヒータ51を制御することになる。
【0084】
本実施形態におけるコントローラ40の制御動作は、基本的に上記実施形態2のフローチャートと同様であり、これと異なるステップは、以下の通りである。すなわち、図9のステップS114は、ヒータ制御部41が、制御量演算部48にて算出された制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力するステップとなり、ステップS117は、ヒータ制御部41が、制御信号発生部62にて発生した制御信号をヒータ51(電力調整部)へ出力するステップとなる。
【0085】
したがって、本実施形態では、非射出時に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもってヒータ51を制御するので、上記実施形態1及び2と同様に、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0086】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態2及び3とは異ならせたものである。尚、図7及び図11と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、上記実施形態2及び3と同様の制御量演算部48と、入力値指示部65とを設けたものである。制御量演算部48及び入力値指示部65には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそれぞれ入力される。入力値指示部65は、その入力された樹脂温度を、作業者が見える箇所に設けられた表示器53に表示させるように指示する。これにより、作業者は、上記樹脂温度に異常がないかどうかを確認することができる。
【0088】
制御量演算部48には、上記樹脂温度に加えて、射出成形機制御回路部46から、上記実施形態2及び3と同様の射出運転信号も入力される。そして、制御量演算部48は、上記射出運転信号が入力されているとき(ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているとき)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度が、コントローラ40の上記メモリに予め入力されて記憶された射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。一方、制御量演算部48は、上記射出運転信号が入力されていないとき(非射出時)には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記射出運転時制御目標値となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。すなわち、本実施形態では、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記第3の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御することになる。
【0089】
上記所定値は、非射出時において、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度と出口部以外の部分における樹脂の温度との差とすればよい。非射出時に、このような所定値の分だけ、出口部における樹脂の温度が高いものと見做すことになるので、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度が出口部以外の部分における樹脂の温度よりも低くなっても、ホットランナー部21dの出口部以外の部分における樹脂の過加熱を防止することができる。
【0090】
ここで、上記入力値指示部65には、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときも射出されていないときも常に、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそのまま入力されるので、表示器53には常に、上記樹脂温度が表示され、作業者が異常の有無の確認を容易に行える(後述の実施形態5においても同様)。
【0091】
(実施形態5)
図13は、本発明の実施形態5を示し、コントローラ40の構成及びコントローラ40における非射出時制御を上記実施形態4とは異ならせたものである。尚、図12と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0092】
本実施形態では、コントローラ40のヒータ制御部41に、上記実施形態4と同様の制御量演算部48及び入力値指示部65に加えて、入力補正信号発生部66、入力信号補正加算演算部67及び切換スイッチ68が設けられている。切換スイッチ68は、上記実施形態3における切換スイッチ61と同様の構成のものである。入力値指示部65、入力信号補正加算演算部67、及び、切換スイッチ68のa端子には、樹脂温度検出センサ52により検出される樹脂温度がそれぞれ入力される。
【0093】
入力補正信号発生部66は、上記実施形態4で説明した所定値に相当する入力補正信号(補正値)を発生して、その入力補正信号を入力信号補正加算演算部67へ出力する。入力信号補正加算演算部67は、上記補正値を上記樹脂温度に加算して、該補正値を加算した樹脂温度を切換スイッチ68のb端子へ出力する。切換スイッチ68のc端子は、制御量演算部48と接続されており、c端子がb端子に接続された状態では、上記補正値を加算した樹脂温度が制御量演算部48に入力されることになる。一方、c端子がa端子に接続された状態では、上記樹脂温度がそのまま制御量演算部48に入力される。
【0094】
切換スイッチ68は、上記射出成形機制御回路部46から射出運転信号を入力しているときには、c端子をa端子に接続した状態に切り換え、射出運転信号を入力していないときには、c端子をb端子に接続した状態に切り換える。これにより、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記樹脂温度が制御量演算部48に入力される一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、上記補正値を加算した樹脂温度が制御量演算部48に入力される。
【0095】
制御量演算部48は、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されているときには、上記樹脂温度が射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する一方、ホットランナー部21dにおける樹脂がキャビティ21c内に射出されていないときには、上記補正値を加算した樹脂温度が射出運転時制御目標値となるように、ヒータ51に対する第3の制御量を算出して、該第3の制御量をヒータ51(電力調整部)へ出力する。すなわち、本実施形態においても、上記実施形態4と同様に、ヒータ制御部41が、上記非射出時制御において、上記第3の制御量でもってヒータ51をフィードバック制御することになる。この結果、上記実施形態4と同様の作用効果が得られる。
【0096】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0097】
例えば、上記各実施形態では、樹脂温度検出センサ52が、ホットランナー部21dの出口部における周壁部21eに設けられて、該出口部における周壁部21eの温度を検出することにより、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を間接的に検出するように構成されているが、樹脂温度検出センサ52を、ホットランナー部21dの出口部における樹脂の温度を直接検出する構成にしてもよい。
【0098】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0100】
A 金型温度制御装置
21 金型
21d ホットランナー部
41 ヒータ制御部
51 ヒータ
52 樹脂温度検出センサ(樹脂温度検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置であって、
上記ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段と、
上記ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、
上記ヒータを制御するヒータ制御部とを備え、
上記ヒータ制御部は、上記ホットランナー部における樹脂が上記金型のキャビティ内に射出されているときには、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるように上記ヒータに対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータをフィードバック制御する一方、上記ホットランナー部における樹脂が上記キャビティ内に射出されていないときには、上記ヒータに対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が、上記第1の所定温度よりも低い第2の所定温度となるように第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が上記第1の所定温度となるように上記ヒータに対する上記第1の制御量を算出するとともに、該第1の制御量に対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正した制御量でもって、上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもって上記ヒータを制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記第1の所定温度となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項1】
ホットランナー部を有する射出成形用金型の該ホットランナー部における樹脂の温度を制御する、射出成形用金型の温度制御装置であって、
上記ホットランナー部の出口部における樹脂の温度を検出するための樹脂温度検出手段と、
上記ホットランナー部における樹脂を加熱するヒータと、
上記ヒータを制御するヒータ制御部とを備え、
上記ヒータ制御部は、上記ホットランナー部における樹脂が上記金型のキャビティ内に射出されているときには、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が第1の所定温度となるように上記ヒータに対する第1の制御量を算出して、該第1の制御量でもって該ヒータをフィードバック制御する一方、上記ホットランナー部における樹脂が上記キャビティ内に射出されていないときには、上記ヒータに対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が、上記第1の所定温度を含む所定範囲内になるように制御する非射出時制御を実行するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が、上記第1の所定温度よりも低い第2の所定温度となるように第2の制御量を算出して、該第2の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度が上記第1の所定温度となるように上記ヒータに対する上記第1の制御量を算出するとともに、該第1の制御量に対して、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるように補正した制御量でもって、上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記ホットランナー部の出口部以外の部分における樹脂の温度が上記所定範囲内になるような一定の制御量でもって上記ヒータを制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の射出成形用金型の温度制御装置において、
上記ヒータ制御部は、上記非射出時制御において、上記樹脂温度検出手段により検出される樹脂温度に対して所定値だけ高くした温度が上記第1の所定温度となるように第3の制御量を算出して、該第3の制御量でもって上記ヒータをフィードバック制御するよう構成されていることを特徴とする射出成形用金型の温度制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−218409(P2012−218409A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89565(P2011−89565)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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