説明

射出成形装置

【課題】熱効率を向上させることができる射出成形装置の提供。
【解決手段】金型12を通ってキャビティ11に開口する挿入穴30と、挿入穴30のキャビティ11への開口部を開閉可能な楔形の頭部31を有して挿入穴30に挿入される突出ピン32と、突出ピン32の頭部31とは反対側に固定されるエジェクタプレート33と、エジェクタプレート33を介して突出ピン32をキャビティ11内に突出させる突出機構34とを有し、突出ピン32は、凹部31aが形成された頭部31と頭部31から延びる軸部40とを有するピン本体37と、軸部40が挿入され軸部40との間に頭部31の凹部31aに連通する送風通路47を形成するスリーブ38とが一体化されて構成され、エジェクタプレート33内には送風通路47に連通する連通路57が形成され、連通路57に熱風送風手段60が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置には、成形品をキャビティから離脱させるための突出ピンを相対移動可能な外ピンと内ピンとで構成し、キャビティに樹脂を充填した後、外ピンに対して中ピンを移動させてこれらの隙間から窒素ガスを成形品の裏面とキャビティとの間に充填して成形品の表面をキャビティに押し付けそのひけを防止する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、成形品をキャビティから離脱させるために筒状のエジェクタスリーブを用い、その内側にキャビティを形成するセンターピンを配置し、エジェクタスリーブがセンターピンに対して移動してキャビティ内に突出することで、成形品をキャビティから離脱させた後、エジェクタスリーブとセンターピンとの隙間から圧搾空気を噴出してエジェクタスリーブから成形品を離脱させる技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらは、いずれも内側の部材と外側の部材とが相対移動可能に構成されており、これらが相対移動することで流路を開閉するようになっている。
【0005】
ところで、射出成形装置には、金型を樹脂の充填前に加熱し、樹脂の充填後に冷却してから成形品を離脱させるものがあり、このような射出成形装置において、金型の加熱時にキャビティ内に熱風を導入するものがある(例えば、特許文献3参照)。この射出成形装置では、金型に形成された通路を介してキャビティ内に熱風を送風するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−66946号公報
【特許文献2】特開平5−245888号公報
【特許文献3】特開平8−34038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、金型に形成された通路を介してキャビティ内に熱風を送風する構造であると、熱容量の大きな金型で熱を奪われることから、キャビティ内に導入される熱風の温度が低下してしまうことになり、熱効率が悪いという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、熱効率を向上させることができる射出成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、金型を通って該金型内のキャビティに開口する挿入穴と、該挿入穴の前記キャビティへの開口部を開閉可能な楔形の頭部を有して前記挿入穴に挿入される突出ピンと、該突出ピンの前記頭部とは反対側に固定されるエジェクタプレートと、該エジェクタプレートを介して前記突出ピンを前記キャビティ内に突出させる突出機構とを有する射出成形装置であって、前記突出ピンは、凹部が形成された前記頭部と該頭部から延びる軸部とを有するピン本体と、前記軸部が挿入され該軸部との間に前記頭部の前記凹部に連通する送風通路を形成するスリーブとが一体化されて構成され、前記エジェクタプレート内には前記送風通路に連通する連通路が形成され、該連通路に熱風送風手段が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱効率を向上させることができ、成形サイクル時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の突出ピンの頭部側を示すもので(a)は正断面図、(b)は側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す取出工程の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す要部の断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す図4のA−A断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を示す加熱工程の断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る射出成形装置の射出成形動作を示すタイミングチャート図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置を示す加熱工程の断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る射出成形装置の変形例を示す加熱工程の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態に係る射出成形装置を図1〜図7を参照して以下に説明する。
【0013】
第1実施形態に係る射出成形装置は、合成樹脂や金属を射出成形するものであり、金型を成形サイクル内で加熱および冷却する射出成形装置となっている。この射出成形装置は、図1に示すように、キャビティ11を画成する金型12と、キャビティ11で成形された成形品を離脱(離型)させる製品離脱機構14と、キャビティ11内に溶融樹脂を射出する図示略の樹脂射出装置と、金型12を加熱する図示略の金型加熱装置と、金型12を冷却する図示略の金型冷却装置とを有している。
【0014】
金型12は、凸部20を有する凸型21と、凸部20を覆う凹部22を有する凹型23とから構成されている。これらの凸型21および凹型23は、一方が固定型とされ他方が可動型となっている。これらの凸型21および凹型23は、図1に示すように相互近接方向に相対移動してパーティング面同士を突き合わせることで、凸部20と凹部22との間にキャビティ11を形成する状態になる。また、これらの凸型21および凹型23は、図2に示すように相互離間方向に相対移動してパーティング面同士を離間させることでキャビティ11内に成形された成形品を取り出し可能な状態になる。
【0015】
図1に示すように、凹型23には、凹部22の底面に開口する射出口25が、凸型21および凹型23の相対移動方向に沿って形成されており、この射出口25を介して図示略の樹脂射出装置からキャビティ11内に溶融樹脂が充填される。
【0016】
凸型21には、キャビティ11を形成する凸部20の頂面にこの凸型21を通って開口することで、キャビティ11内に開口する挿入穴30が、射出口25と同軸上に形成されている。
【0017】
製品離脱機構14は、挿入穴30のキャビティ11への開口部を開閉可能な楔形の頭部31を有して挿入穴30に移動可能に挿入される突出ピン32と、この突出ピン32の頭部31とは反対側に固定されるエジェクタプレート33と、このエジェクタプレート33を介して突出ピン32をキャビティ11内に突出させる突出機構34とを有している。エジェクタプレート33は、凸型21の凸部20とは反対の空間35に移動可能に収納されている。
【0018】
突出ピン32は、内側のピン本体37と、外側のスリーブ38との二部品からなっている。
【0019】
ピン本体37は、楔形つまり切頭円錐形状の上記した頭部31と、この頭部31の小径側から頭部31の小径外径と同一径をなして同軸に延びる軸部40とを有するもので、一つの素材から形成されている。頭部31には、図2に示すように、その軸部40との境界位置から軸方向に沿って大径側の途中位置まで延び、外径方向に抜ける形状の凹部31aが形成されている。この凹部31aは、幅が頭部31の小径外径よりも小さくなっている。
【0020】
スリーブ38は、円筒部43と円筒部43の一端から径方向外方に突出するフランジ部44とを有しており、一つの素材から形成されている。スリーブ38には、内周面に全長にわたってその軸方向に沿う溝45が、図4および図5にも示すように形成されている。
【0021】
そして、ピン本体37の軸部40がスリーブ38に挿入されこれらが一体化されて突出ピン32が構成されている。例えば、ピン本体37の軸部40がスリーブ38に圧入されることでこれらが一体化されている。一体化された状態で、ピン本体37は、図1に示すように軸部40の頭部31側の一部がスリーブ38から外側に突出しており、また、軸部40の頭部31とは反対側の端部はスリーブ38内に配置されている。ピン本体37は、スリーブ38内に挿入されない頭部31および軸部40の一部が段付き形状をなしている。
【0022】
このような突出ピン32は、頭部31側を挿入穴30の開口部側に配置して挿入穴30内に移動可能に挿入されることになる。頭部31の大径の先端部の径は挿入穴30の開口部の径より若干大径となっており、よって、突出ピン32が挿入穴30に対し移動することで図1に示すように頭部31が挿入穴30の開口部に当接してこれを閉塞したり、図6に示すように挿入穴30の開口部から離間してこれを開放したりする。
【0023】
また、突出ピン32には、スリーブ38の内周面に形成された溝45とピン本体37の軸部40の外径面とで、一端がスリーブ38から頭部31側に開口し他端がスリーブ38から頭部31とは反対側に開口し頭部31の凹部31aに連通する送風通路47が形成されている。凹部31aと送風通路47とは円周方向の位置つまり位相を合わせている。なお、ピン本体37の軸部40にDカット加工を施して軸方向に延びる平面を形成し、この平面とスリーブ38の内径面とで送風通路47を形成しても良い。
【0024】
エジェクタプレート33は上板48と下板49との二枚で形成されている。
【0025】
上板48は、主板部51と、主板部51の外周縁部の全周にわたって板厚方向一側に突出するように形成された環状壁部52とを有している。主板部51には、中央に板厚方向に貫通する取付穴53が形成されており、取付穴53よりも外側に板厚方向に貫通する導入口54が形成されている。
【0026】
下板49には、板厚方向一側である上板48側に、中央から外側に延在する通気溝56が形成されている。
【0027】
そして、上板48が環状壁部52において下板49に接合されてエジェクタプレート33を構成することになる。このとき、上板48の取付穴53に突出ピン32のスリーブ38が円筒部43において貫通するように嵌合し上板48の主板部51と下板49との間にスリーブ38のフランジ部44が挟持されることになり、エジェクタプレート33と突出ピン32とが一体化される。この状態で、エジェクタプレート33内には、上板48と下板49との間に、導入口54に連通する連通路57が形成されることになり、通気溝56はこの連通路57の一部を構成することになる。通気溝56は、突出ピン32の送風通路47を構成するスリーブ38の頭部31とは反対側に連通しており、よって、連通路57が送風通路47に連通している。連通路57は導入口54および送風通路47以外は閉塞されており、導入口54から導入された後述する熱風を外部に流さずに送風通路47に流すようになっている。なお、連通路57と送風通路47とを連通させる通気溝56を、熱風が通過できるポーラス形状をもつ素材で形成しても良い。また、連通路57と送風通路47とを連通させる通気溝56を、下板49ではなくスリーブ38のフランジ部44に径方向に沿って形成しても良い。
【0028】
連通路57の送風通路47とは反対側となる導入口54が、熱風を送風する熱風送風装置(熱風送風手段)60に配管61を介して接続されている。よって、熱風送風装置60が発生する加温された気体からなる熱風が、配管61を介してエジェクタプレート33内の連通路57に導入され、この連通路57を介して突出ピン32内の送風通路47に導入される。
【0029】
突出機構34は、エジェクタプレート33の凹型23とは反対側に配置されており、エジェクタプレート33を介して突出ピン32を凹型23の方向に移動させる。ここで、突出機構34は、突出ピン32をキャビティ11から退避させて挿入穴30の開口部を閉塞する状態から、突出ピン32をキャビティ11内に突出させて挿入穴30の開口部を開放する状態まで、エジェクタプレート33および突出ピン32を移動させる。つまり、突出機構34は、突出ピン32で挿入穴30を開閉する駆動源となっている。
【0030】
次に、第1実施形態に係る射出成形装置による射出成形の各工程について図7のタイムチャートを参照しつつ説明する。図7(a)は、射出成形装置の成形1サイクルの工程と金型の温度変化を示しており、図7(b)は、成形1サイクルにおける突出ピン32の突出量を示している。
【0031】
図1に示すように型締めされた金型12の温度が、図7(a)に示すように所定の射出成形温度とされた状態で、図示略の樹脂射出装置から金型12のキャビティ11内に溶融樹脂を射出する射出工程を実施する(t0〜t1)。この射出工程後に、図示略の金型冷却装置で金型12を冷却する冷却工程を行う(t1〜t2)。射出工程および冷却工程では、図7(b)に示すように突出ピン32の突出量はゼロ、つまり突出ピン32はキャビティ11から退避して挿入穴30の開口部を閉塞する状態となっており、熱風送風装置60も熱風を送風する状態とはなっていない。
【0032】
そして、冷却工程で金型12の温度が所定の温度まで低下すると(t2)、次に、凸型21および凹型23を離間させて金型12を開くとともに、突出機構34で、図3に示すように突出ピン32をキャビティ11内に最大量突出させて成形品を凸型21から離脱させた後、突出ピン32をキャビティ11から退避させる取出工程を行う(t2〜t3)。この取出工程も、熱風送風装置60は熱風を送風する状態とはなっていない。つまり、熱風送風装置60から送風通路47に熱風を送風しない状態で突出機構34がキャビティ11から突出ピン32を突出させてキャビティ11から成形品を離脱させる。
【0033】
その後、図7(b)に示すように突出量がゼロとなるように突出ピン32をキャビティ11から退避させてから、凸型21および凹型23を近接させて金型12を型締めする。その後、図示略の金型加熱装置で金型12を所定の射出成形温度まで加熱する加熱工程を行う(t3〜t4)。この加熱工程に移行すると、突出機構34で、図6に示すように突出ピン32をキャビティ11内に、最大量よりも小さく、型締めされた金型12に干渉しない所定量突出させることで、挿入穴30の開口部を開放するとともに、熱風送風装置60を熱風を送風する状態とする。すると、熱風送風装置60の熱風が、エジェクタプレート33内の連通路57から突出ピン32のピン本体37とスリーブ38との間の送風通路47を介してスリーブ38の頭部31側に噴出し、ピン本体37の頭部31および軸部40のスリーブ38よりも外側部分と、挿入穴30との隙間を介してキャビティ11内に噴出して、キャビティ11の内面つまり金型12の成形品と接する面を加熱する。このとき、頭部31に所定の外径方向に指向して形成された凹部31aの流路面積が他の部分よりも大きいため、凹部31aから多くの熱風がその指向方向に向けて噴出することになり、凹部31aの向きを、熱風をより多く噴出したい方向に設定することで、この方向により多く噴出できる。キャビティ11内に噴出した熱風は、金型12のパーティング面間の隙間から金型12の外部に排出される。
【0034】
そして、金型12の温度が所定の射出成形温度付近に到達すると、突出機構34で突出ピン32をキャビティ11から退避させるとともに、熱風送風装置60による熱風の送風を停止して加熱工程を終了する(t4)。そして、次の成形サイクルに備える。
【0035】
以上に述べた第1実施形態に係る射出成形装置によれば、突出ピン32が、頭部31と軸部40とを有するピン本体37と、ピン本体37の軸部40が挿入され軸部40との間に頭部31側に開口する送風通路47を形成するスリーブ38とが一体化されて構成されるため、この送風通路47は、金型12に直接面することなく、金型12との間にスリーブ38およびスリーブ38と挿入穴30との移動のための隙間を介在させることになる。よって、キャビティ11の内面の加熱に用いる熱風を、導入途中で熱容量の大きな凸型21に熱が奪われることを抑制しつつ安定した流量でキャビティ11内に導入しキャビティ11の内面つまり金型12の成形品と接する面を加熱することができるため、簡素な構造で熱効率を向上させることができ、成形サイクル時間を短縮できる。
【0036】
また、突出ピン32の一体化されるピン本体37とスリーブ38との間に送風流路47を形成するため、送風流路47を形成するためにガタツキが発生することがない。
【0037】
また、頭部31に凹部31aが形成されているため、凹部31aから多くの熱風がその指向方向に向けて噴出することになり、熱風をより多く噴出したい方向により多く噴出できる。したがって、効率良くキャビティ11の内面を加熱できる。
【0038】
本発明の第2実施形態に係る射出成形装置を図8を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。
【0039】
第2実施形態に係る射出成形装置においては、凸型21に、上記挿入穴30とは別に、凸部20の頂面にこの凸型21を通って開口する挿入穴(第二の挿入穴)70が形成されている。
【0040】
第2実施形態において、製品離脱機構14は、挿入穴70のキャビティ11への開口部を開閉可能な楔形の頭部(第二の頭部)71を有して挿入穴70に移動可能に挿入される突出ピン(第二の突出ピン)72と、この突出ピン72の頭部31とは反対側に固定されるエジェクタプレート73とを有しており、突出機構34は、このエジェクタプレート73を介して突出ピン72をキャビティ11内に突出させる。
【0041】
突出ピン72は、突出ピン32と同様、上記した頭部71と頭部71の小径側から頭部71の小径外径と同一径をなして同軸に延びる軸部(第二の軸部)80とを有する内側のピン本体(第二のピン本体)77と、円筒部83と円筒部83の一端から径方向外方に突出するフランジ部84とを有する外側のスリーブ(第二のスリーブ)78との二部品からなっている。頭部71には、その軸部80との境界位置から軸方向に沿って大径側の途中位置まで延び、外径方向に抜ける形状の凹部(第二の凹部)71aが形成されている。この凹部71aも、幅が頭部71の小径外径よりも小さくなっている。スリーブ78には、内周面に全長にわたってその軸方向に沿う溝85が形成されている。
【0042】
そして、突出ピン32と同様、ピン本体77の軸部80がスリーブ78に挿入されこれらが一体化されて突出ピン72が構成されており、一体化された状態で、ピン本体77は、軸部80の頭部71側の一部がスリーブ78から外側に突出し、軸部80の頭部71とは反対側の端部はスリーブ78内に配置されている。
【0043】
このような突出ピン72も、頭部71側を挿入穴70の開口部側に配置して挿入穴70内に移動可能に挿入されることになり、突出ピン72が挿入穴70に対し移動することで頭部71が挿入穴70の開口部に当接してこれを閉塞したり、挿入穴70の開口部から離間してこれを開放したりする。
【0044】
突出ピン72には、スリーブ78の溝85とピン本体77の軸部80の外径面とで、一端がスリーブ78から頭部71側に開口し頭部71の凹部71aに連通するとともに他端がスリーブ78から頭部71とは反対側に開口する排気通路87が形成されている。凹部71aと排気通路87とは円周方向の位置つまり位相を合わせている。ピン本体77の軸部80にDカット加工を施して軸方向に延びる平面を形成し、この平面とスリーブ78の内径面とで排気通路87を形成しても良い。
【0045】
エジェクタプレート73も、主板部91と、主板部91の外周縁部の全周にわたって板厚方向一側に突出するように形成された環状壁部92とを有する上板88と、下板89の二枚で形成されている。上板88の主板部91には、板厚方向に貫通する取付穴93と排気口94とが形成されており、下板89には、板厚方向一側である上板88側に、取付穴93と対向する位置から外側に延在する通気溝96が形成されている。
【0046】
そして、上板88が環状壁部92において下板89に接合されてエジェクタプレート73を構成することになる。このとき、上板88の取付穴93に突出ピン72のスリーブ78が円筒部83において貫通するように嵌合し上板88の主板部91と下板89との間にスリーブ78のフランジ部84が挟持されることになり、エジェクタプレート73と突出ピン72とが一体化される。この状態で、エジェクタプレート73内には、上板88と下板89との間に、排気口94に連通する連通路(第二の連通路)97が形成されることになり、通気溝96はこの連通路97を形成することになる。通気溝96は、突出ピン72の排気通路87を構成するスリーブ78の頭部71とは反対側に連通しており、よって、連通路97が排気通路87に連通している。なお、連通路97と排気通路87とを連通させる通気溝96を、熱風が通過できるポーラス形状をもつ素材で形成しても良い。また、連通路97と排気通路87とを連通させる通気溝96を、下板89ではなくスリーブ78のフランジ部84に径方向に沿って形成しても良い。
【0047】
エジェクタプレート73は、エジェクタプレート33の突出機構34とは反対側に環状のスペーサ100を介して一体に固定されており、エジェクタプレート33とともに凸型21の空間35に移動可能に収納されている。
【0048】
排気口94が空間35を介して外部の大気に連通しており、エジェクタプレート73内の連通路97は、排気通路87を装置の外部に連通させる。
【0049】
このような第2実施形態に係る射出成形装置によれば、取出工程において、金型12の温度が所定の温度まで低下すると、凸型21および凹型23を離間させて金型12を開くとともに、突出機構34で、一体のエジェクタプレート33,73を介して突出ピン32,72をキャビティ11内に最大量突出させて成形品を凸型21から離脱させた後、突出ピン32,72をキャビティ11から退避させる。
【0050】
その後、加熱工程において、凸型21および凹型23を近接させて金型12を閉じ、図示略の金型加熱装置で金型12を所定の射出成形温度まで加熱する際に、突出機構34で、図8に示すように突出ピン32,72をキャビティ11内に、金型12に干渉しない所定量突出させることで、挿入穴30,70の開口部を開放するとともに、熱風送風装置60を熱風を送風する状態とする。すると、熱風送風装置60の熱風が、エジェクタプレート33内の連通路57から突出ピン32のピン本体37とスリーブ38との間の送風通路47を介してスリーブ38の頭部31側に噴出し、ピン本体37の頭部31および軸部40のスリーブ38よりも外側部分と挿入穴30との隙間を介してキャビティ11内に噴出して、第1実施形態と同様に、キャビティ11の内面つまり金型12の成形品と接する面を加熱する。
【0051】
そして、キャビティ11内に噴出した熱風は、金型12のパーティング面間の隙間を介して金型12から排出されるとともに、ピン本体77の頭部71および軸部80のスリーブ78よりも外側部分と挿入穴70との隙間を介して、スリーブ78の頭部71側から排気通路87およびエジェクタプレート73内の連通路97を通って、排気口94から空間35を通り図示略の外部開放口を介して金型12の外部に排出される。このとき、頭部71に所定の外径方向に指向して形成された凹部71aの流路面積が他の部分よりも大きいため、凹部71aから温度低下後の熱風がより多く排気されることになり、凹部71aの向きを調整することでキャビティ11内の熱風の流れを、効率良くキャビティ11の内面を加熱するように制御できる。
【0052】
そして、金型12の温度が所定の射出成形温度付近に到達すると、突出機構34で突出ピン32,72をキャビティ11から退避させるとともに、熱風送風装置60による熱風の送風を停止して加熱工程を終了する。
【0053】
以上に述べた第2実施形態に係る射出成形装置によれば、金型12のパーティング面間の隙間に加えて、突出ピン72に形成された排気通路87を介して、キャビティ11から熱風を外部に排出することができるため、金型12内に送り込む熱風の量を多くすることができ、第1実施形態よりも早く金型12のキャビティ11の内面を加熱することができ、成形サイクル時間をさらに短縮できる。
【0054】
また、頭部71に凹部71aが形成されているため、凹部71aから多くの温度低下後の熱風が排気されることになり、凹部71aの向きを調整することでキャビティ11内の熱風の流れを、効率良くキャビティ11の内面を加熱するように制御できる。したがって、さらに効率良くキャビティ11の内面を加熱できる。
【0055】
例えば、図9に示すように、矩形状のキャビティ11に対して、その三カ所の隅部近傍それぞれに挿入穴30および突出ピン32を配置し、残りの一カ所の隅部近傍に挿入穴70および突出ピン72を配置して、一の図9左上の突出ピン32の凹部31aが、隣り合う次の図9右上の突出ピン32の方向に向き、この次の突出ピン32の凹部31aが、隣り合うさらに次の図9右下の突出ピン32の方向に向き、このさらに次の突出ピン32の凹部31aが図9左下の突出ピン72に向き、この突出ピン72の凹部71aが前記さらに次の突出ピン32に向くように配置すれば、キャビティ11内の熱風の流れ(図9に矢印で示す)を、効率良くキャビティ11の内面を加熱するように制御できる。
【0056】
また、エジェクタプレート33とエジェクタプレート73とをスペーサ100を介して一体化するため、エジェクタプレート33の熱効率の低下を抑制できる。
【0057】
なお、第1,2実施形態において、凸型21に挿入穴30を複数形成し、これら挿入穴30に挿入される複数の突出ピン32をエジェクタプレート33に接続させて、これらの突出ピン32の送風通路47をエジェクタプレート33内の連通路57に連通させても良い。
【0058】
また、第2実施形態において、凸型21に挿入穴70を複数形成し、これら挿入穴70に挿入される複数の突出ピン72をエジェクタプレート73に接続させて、これらの突出ピン72の排気通路87をエジェクタプレート73内の連通路97に連通させても良い。
【0059】
また、第1,2実施形態において、熱風送風装置60と冷風送風装置と切り替えて連通路57に接続させる機構を設け、取出工程において、冷風送風装置から連通路57および送風通路47を介して成形品に冷風を吹き付けるようにして、成形品に対する冷却効率を向上させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0060】
11 キャビティ
12 金型
30 挿入穴
31 頭部
31a 凹部
32 突出ピン
33 エジェクタプレート
34 突出機構
37 ピン本体
38 スリーブ
40 軸部
47 送風通路
57 連通路
60 熱風送風装置(熱風送風手段)
70 挿入穴(第二の挿入穴)
71 頭部(第二の頭部)
71a 凹部(第二の凹部)
72 突出ピン(第二の突出ピン)
73 エジェクタプレート
77 ピン本体(第二のピン本体)
78 スリーブ(第二のスリーブ)
80 軸部(第二の軸部)
87 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を通って該金型内のキャビティに開口する挿入穴と、
該挿入穴の前記キャビティへの開口部を開閉可能な楔形の頭部を有して前記挿入穴に挿入される突出ピンと、
該突出ピンの前記頭部とは反対側に固定されるエジェクタプレートと、
該エジェクタプレートを介して前記突出ピンを前記キャビティ内に突出させる突出機構とを有する射出成形装置であって、
前記突出ピンは、凹部が形成された前記頭部と該頭部から延びる軸部とを有するピン本体と、前記軸部が挿入され該軸部との間に前記頭部の前記凹部に連通する送風通路を形成するスリーブとが一体化されて構成され、
前記エジェクタプレート内には前記送風通路に連通する連通路が形成され、
該連通路に熱風送風手段が接続されていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記熱風送風手段から前記送風通路に熱風を送風しない状態で前記突出機構が前記キャビティから前記突出ピンを突出させて前記キャビティから成形品を離脱させ、その後、前記金型を加熱する際に前記突出機構が前記キャビティから前記突出ピンを突出させて前記熱風送風手段から前記送風通路に熱風を送風することを特徴とする請求項1記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記金型を通って前記キャビティに開口する第二の挿入穴と、
該第二の挿入穴の前記キャビティへの開口部を開閉可能な楔形の第二の頭部を有して前記第二の挿入穴に挿入されるとともに前記第二の頭部とは反対側が前記エジェクタプレートに固定される第二の突出ピンとを有し、
該第二の突出ピンは、第二の凹部が形成された前記第二の頭部と該第二の頭部から延びる第二の軸部とを有する第二のピン本体と、前記第二の軸部が挿入され該第二の軸部との間に前記第二の頭部の前記第二の凹部に連通する排気通路を形成する第二のスリーブとが一体化されて構成され、
前記エジェクタプレート内には前記排気通路を外部に連通させる第二の連通路が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−66493(P2012−66493A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213360(P2010−213360)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】