説明

導電性ゴムローラの製造方法、導電性ゴムローラ及び画像形成装置

【課題】導電性ゴムローラのゴム層を成型する前工程である予備成型において、熱履歴によるゴム物性の変化、特に硬度低下の無い導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム層材料が、ゴム成分として少なくともアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムを含み、前記ゴム成分の合計を100質量部としたとき、カーボンブラックを5〜30質量部含有するゴム組成物であって、前記押出成型の前工程として、2軸押出し機による前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃であり、予備成型時間が2〜10分で、前記ゴム層材料を連続成型し、かつ、前記押出成型で用いる押出し機に連続的に該リボン状ゴムを供給する予備成型工程を有する導電性ゴムローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラ及び該導電性ゴムローラの製造方法に関する。更には、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる転写装置の転写ローラとして該導電性ゴムローラを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
これらの導電性ゴムローラの製造方法としては、ゴムやプラスチック等を円筒状に押し出す押出成型機が知られている。導電性ゴムローラでは均一な導電性を発現させるためにゴム中の水分や気泡を除去する必要があるため、ベント式を備えた押出成型機が特に用いられる。
【0004】
前記押出成型機へのゴムの供給方法については、一般的には、前記押出成型機のゴム投入口の形状にあわせた形状にゴムを予備成型して供給する(例えば、特許文献1)。予備成型の方法としては、ゴム混練後に任意のカッター等を用いて短冊状に切断する方法や、混練後のゴムを予備成型機によりリボン状に成型する方法などが知られている。このように予備成型したゴムを、前記押出成型機に投入する(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、UHF加硫のような連続加硫において、前記予備成型を別途行う場合には、成型後のゴムを連続的に押出成型機に投入する必要があり、人手がかかるなど経済的に不都合がある。また、連続加硫ライン内で予備成型を行い、予備成型直後に連続的に押出成型機にゴムを供給し、円筒状に押出成型、次いで加硫発泡を行う製造方法においては、前記課題は解決される。しかし、予備成型時の熱履歴によりゴム物性の変化、特に硬度低下が発生する場合がある。
【特許文献1】特開平08−025370号公報
【特許文献2】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、導電性ゴムローラの製造方法において、特にはマイクロ波加硫炉を用いた連続加硫工程での予備成型方法に関して、熱履歴によるゴム物性の変化、特に硬度低下の無い導電性ゴムローラの製造方法を提供することを目的とする。また、該製造方法により製造された導電性ゴムローラ、及び該導電性ゴムローラを転写ローラとして備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る導電性ゴムローラの製造方法は、ゴム層材料を円筒状に押出成型し、成型された成型された該ゴム層材料を加硫・発泡して円筒状ゴム層を成型し、該円筒状ゴム層を導電性芯材に嵌合して導電性ゴムローラを製造する方法において、
前記ゴム層材料は、ゴム成分として少なくともアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムを含み、前記ゴム成分の合計を100質量部としたとき、カーボンブラックを5〜30質量部含有するゴム組成物であって、
前記押出成型の前工程として、2軸テーパースクリューと、長方形状の口金からなるゴム吐出口と、を備えた2軸押出し機により、予備成型における前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃であり、前記ゴム層材料を該2軸押出し機に投入してから該ゴム吐出口を通じて断面が長方形のリボン状ゴムに成型されるまでの予備成型時間が2〜10分で、前記ゴム層材料を連続成型し、かつ、前記押出成型に用いる押出し機に連続的に該リボン状ゴムを供給する予備成型工程を有し、
前記ゴム組成物のJIS K6300のムーニースコーチ試験における125℃のスコーチT5(分)をAn、及び100℃のムーニー粘度ML(1+4)をBnとしたとき、前記予備成型工程によりリボン状に成型されたゴム組成物のA1、B1が、予備成型前のA0、B0に対し、その各々の変化率(A0−A1)/A0×100(%)、(B0−B1)/B0×100(%)が、20%以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る導電性ゴムローラは、前記導電性ゴムローラの製造方法により製造された導電性ゴムローラである。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、少なくとも転写ローラを有する転写装置を備えた画像形成装置において、該転写ローラが前記導電性ゴムローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る導電性ゴムローラの製造方法により、予備成型工程における熱履歴によるゴム物性の変化、特に硬度低下の無い導電性ゴムローラを提供することができる。また、該導電性ゴムローラを転写ローラとして備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法は、ゴム層材料を円筒状に押出成型し、成型された成型された該ゴム層材料を加硫・発泡して円筒状ゴム層を成型し、該円筒状ゴム層を導電性芯材に嵌合して導電性ゴムローラを製造する方法において、前記ゴム層材料は、ゴム成分として少なくともアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムを含み、前記ゴム成分の合計を100質量部としたとき、カーボンブラックを5〜30質量部含有するゴム組成物であって、前記押出成型の前工程として、2軸テーパースクリューと、長方形状の口金からなるゴム吐出口と、を備えた2軸押出し機により、予備成型における前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃であり、前記ゴム層材料を該2軸押出し機に投入してから該ゴム吐出口を通じて断面が長方形のリボン状ゴムに成型されるまでの予備成型時間が2〜10分で、前記ゴム層材料を連続成型し、かつ、前記押出成型に用いる押出し機に連続的に該リボン状のゴム層材料を供給する予備成型工程を有し、前記ゴム組成物のJIS K6300のムーニースコーチ試験における125℃のスコーチT5(分)をAn、及び100℃のムーニー粘度ML(1+4)をBnとしたとき、前記予備成型工程によりリボン状に成型されたゴム組成物のA1、B1が、予備成型前のA0、B0に対し、その各々の変化率(A0−A1)/A0×100(%)、(B0−B1)/B0×100(%)が、20%以下であることを特徴とする。
【0012】
(導電性ゴムローラ)
本発明に係る導電性ゴムローラの製造方法により得られる導電性ゴムローラは、図1に示すように、導電性芯材1上にゴム層2を有する。
【0013】
(ゴム成分)
前記ゴム層の原料であるゴム層材料は、ゴム成分として、少なくともアクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリンゴムを含む。さらに、ポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料、ポリウレタン系高分子材料、RVCなどの熱可塑性エラストマー、アクリル系樹脂、スチレン酢酸ビニル共重合体、ブタジエン―アクリロニトリル共重合体などの高分子材料、これらゴム、エラストマー、樹脂の混合物をゴム成分として含んでもよい。
【0014】
(カーボンブラック)
前記ゴム層材料は、該ゴム層材料中のゴム成分の含有量を100質量部としたとき、カーボンブラックを5〜30質量部含む。
【0015】
カーボンブラックは補強性や導電性の付与を目的に添加している。カーボンブラックの種類は特に限定されず、例えばHAF級、MT級、SRF級、GPF級、FT級等を用いることができる。本発明ではSRF級のカーボンブラックが、低配合量で補強性に効果があるため好ましい。
【0016】
カーボンブラックの含有量が5質量部未満では、添加する目的である補強性が得られない。一方、30質量部を超えると、導電性ゴムローラを作製したときにゴム層の硬度が高くなり過ぎるだけでなく、カーボンブラックによる導電性の寄与が顕著となり、その結果、抵抗ムラが発生するため好ましくない。さらに、マイクロ波を用いた連続加硫においては、30質量部超含む場合ではカーボンブラックによる発熱が大きくなり、過加熱となる場合があり好ましくない。
【0017】
また、カーボンブラック以外にも補強性や導電性を付与する他の材料は、種々知られている。導電性を付与する材料としては、例えば、導電性粒子として、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiCIO4、NaSCN等が挙げられる。しかし、マイクロ波加硫を行う場合、金属酸化物は凝集した際に偏熱する場合がある。また、イオン導電剤はブルーム等により感光ドラム等を汚染する場合があるため、好ましくない。一方、補強性を付与する材料としては、炭酸カルシウム等の充填材等があるが、エピクロルヒドリンゴムとの併用では塩化物が副生する場合があり、製品物性に影響を与える場合があるため、好ましくない。
【0018】
(発泡剤・発泡助剤)
本発明に用いられる発泡剤としては、有機発泡剤、例えばADCA(アゾジカルボンアミド)系、DPT(ジニトロソペンタメチレンテトラアミン)系、TSH(p−トルエンスルホニルヒドラジド)系、OBSH(オキシビスベンゼンスルフェニルヒドラジド)系などを単独で若しくは混合して用いることが可能である。発泡剤の分解温度は、尿素樹脂や酸化亜鉛などの発泡助剤などを加えて低下させることもできる。
【0019】
前記発泡助剤としては、尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸などを主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して添加することができる。
【0020】
(加硫剤・加硫促進剤)
本発明に用いられる加硫剤としては、硫黄、金属酸化物などが挙げられる。加硫促進剤としては各種知られているが、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤を用いることができる。チアゾール系促進剤及びチウラム系促進剤の併用は、Cセット性に効果があることが一般的に知られている。
【0021】
具体的なチアゾール系促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があるが、スコーチ性が少なく、チウラム系促進剤との併用が賞用されるジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。また、チウラム系促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等を用いることができるが、スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。なお、その他のチアゾール系促進剤及びチウラム系促進剤においても、使用条件を整えることで本発明に適用可能である。
【0022】
(導電性芯材)
前記導電性芯材としては、円柱状や円筒状の形態を有し、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等の材料からなるものを用いることができる。
【0023】
(予備成型工程)
本発明において、予備成型工程は、前記押出成型の前工程であり、2軸テーパースクリューと、長方形状の口金からなるゴム吐出口と、を備えた2軸押出し機により、予備成型における前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃であり、前記ゴム層材料を該2軸押出し機に投入してから該ゴム吐出口を通じて断面が長方形のリボン状ゴムに成型されるまでの予備成型時間が2〜10分で、前記ゴム層材料を連続成型し、かつ、前記押出成型で用いる押出し機に連続的に該リボン状ゴムを供給する工程である。
【0024】
前記予備成型工程に使用される2軸押出し機は、通常用いられる2軸押出し機が使用できるが、投入するゴム層材料の形状に左右されにくい開放式の2軸押出し機が好ましい。ゴム層材料の投入にはベルトコンベア等を用いて、自動投入を行ってもよい。また、前記開放式の2軸押出し機のスクリューは、テーパー形状のスクリューを用い、テーパーの角度は任意に設定できる。なお、ゴム層材料投入時のスクリューに係る負荷により、偏った磨耗などが発生しないようにするため、2本のスクリューの長さは同程度にすることが好ましい。
【0025】
また、リボン状に予備成型するためのゴム吐出口であって、長方形状の口金は、後工程の押出成型に使用される押出し機のゴム投入口の形状、大きさに併せて設定が可能である。具体的には、予備成型工程後のリボン状ゴムの断面積が、前記押出成型に使用される押出し機のゴム投入口断面積の60%以下になるように、前記口金の形状を設定するのが好ましい。60%をこえる断面積であると、前記押出成型に使用される押出し機のゴム投入口で詰まりが生じたり、押出し機のスクリューへの食い込みが低下したりするため好ましくない。
【0026】
前記2軸押出し機により、ゴム層材料をリボン状ゴムに予備成型する際の前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度は40℃〜80℃である。40℃未満の場合では、前記ゴム層材料が硬いため、予備成型時のリボン形状が歪みやすく、押出し機のゴム投入口への供給の安定性が損なわれるため好ましくない。また、80℃を超える温度では、熱履歴が大きいため、ゴム物性の変化が生じ、ゴム層の硬度が低下するため好ましくない。なお、予備成型温度は、20〜40℃で行うことが好ましい。
【0027】
また、本発明では、前記ゴム層材料を前記2軸押出し機に投入してから、ゴム吐出口を通じて断面が長方形のリボン状ゴムに成型されるまでの予備成型時間が2〜10分となるようにする。予備成型時間が2分未満では、スクリュー回転によるせん断が大きく、スコーチしやすくなり、硬度低下が生じるため好ましくない。また、10分をこえる予備成型時間では、ゴム成分の分子鎖の切断が多くなり、その結果ムーニー粘度の低下、硬度の低下が生じるため好ましくない。
【0028】
前記予備成型工程を行うことにより、熱履歴によるゴム物性変化の少ない製造方法を提供することができる。本発明の製造方法では、ゴム層材料であるゴム組成物のJIS K6300のムーニースコーチ試験における125℃のスコーチT5(分)をAn、及び100℃のムーニー粘度ML(1+4)をBnとしたとき、前記予備成型工程によりリボン状に成型されたゴム組成物のA1、B1が、予備成型前のA0、B0に対し、その各々の変化率(A0−A1)/A0×100(%)、(B0−B1)/B0×100(%)は20%以下である。スコーチT5の変化率が20%をこえる、即ち予備成型時間が本発明で規定する時間より短い場合等では、より高い熱履歴がかかるため、スコーチ時間が短くなり、加硫先行気味になるため硬度低下が生じやすい。また、ムーニー粘度が20%をこえる、即ち予備成型時間が本発明で規定する時間より長い場合等では、ゴムの分子鎖の切断が多くなるため分子量が低下し、ゴム強度の低下、硬度低下が生じる。
【0029】
また、連続加硫ライン内で予備成型を連続的に行い、予備成型直後に前記リボン状ゴムを円筒状に成型し、加硫・発泡させることにより、より安定した製造方法を提供することができる。さらに、従来混練後に人手により行っていた予備成型をインライン化すれば、要員削減も期待でき、コストダウンの効果がある。また、予備成型工程を押出成型の直前に行うことは、ゴム層材料の混練のバラツキがあった場合でも、予備成型によって混練をある程度促進し、ゴム層材料としての安定化も期待できる。
【0030】
(導電性ゴムローラの製造方法)
次に、本発明の導電性ゴムローラの製造方法の一例を以下に示す。
【0031】
図2は、本発明の製造方法で用いるマイクロ波を用いた導電性ゴムローラの連続加硫による製造装置の一例を示す。前記製造装置は、全長13mからなり、押出機11、マイクロ波加硫装置12(以下、UHFとする)、熱風加硫装置13(以下、HAVとする)、引取機14、定尺切断機15で構成される。また、16は予備成型機である。予備成型機16は、2軸テーパースクリューを備えた2軸押出し機を用いる。
【0032】
UHF12は、テフロン(登録商標)でコーティングされたメッシュのベルト、又はテフロン樹脂(登録商標)を被覆したコロで押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13はテフロン樹脂(登録商標)を被覆したコロで搬送を行う。UHF12とHAV13間は、テフロン樹脂(登録商標)を被覆したコロで連結されている。
【0033】
UHF12、HAV13、引取機14の長さは、本実施形態では、順に、4m、6m、1mとなっている。UHF12とHAV13間、及びHAV13と引取機14間は0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0034】
ゴム層材料のゴム成分を、混練機を用い混練した後、オープンロールにより加硫剤・加硫助剤、発泡剤・発泡助剤を添加し、さらに混練する。その後、予備成型機16により前述した条件でゴム層材料をリボン状に予備成型し、押出機11に連続的に供給する(予備成型工程)。
【0035】
供給されたリボン状に予備成型されたゴム層材料は、押出機11により円筒状に成型、押出され、ゴムチューブを得る(押出成型)。該押出機11より押し出された直後にUHF12内に搬送され、マイクロ波の照射により連続的に加硫発泡され、続いて、HAV13に搬送し、加硫を完了させる(加硫発泡工程)。
【0036】
加硫、発泡を行ったゴムチューブは、引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断される。これにより、チューブ状の導電性ゴム成型物を得る。次いで、接着剤を所望の領域に塗布した導電性芯材を前記チューブ状の導電性ゴム成型物の内径部に圧入し、ローラ状の成型体を作製する。この成型体を、研磨機(不図示)にセットし、研磨することにより導電性ゴムローラを作製することができる。
【0037】
(画像形成装置)
図3に、本発明に係る導電性ゴムローラを画像形成装置に利用した一例を示す。同図に示す画像形成装置は、プロセスカートリッジを使用した電子写真方式のレーザプリンタであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、本発明に係る導電性ゴムローラを転写ローラとして有する転写装置が装着されている。なお、本発明の係る導電性ゴムローラは、転写ローラ以外にも、帯電ローラ、現像ローラ等にも用いることができる。
【0038】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)21を備えている。感光ドラム21は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0039】
感光ドラム21表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は、感光ドラム21表面に接触配置されており、感光ドラム21の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム21表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム21表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光23により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム21表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。その静電潜像は、現像装置24の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー25が付着され、トナー像として反転現像される。
【0040】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27は、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光ドラム21表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニングブレード28によって除去され、廃トナー用容器29に回収される。転写部Tを通った転写材27は、感光ドラム21から分離されて定着装置30へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(ムーニースコーチ試験)
JIS K6300に記載される未加硫ゴム物理試験方法に準拠し、125℃におけるスコーチT5(分)及び100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)において、予備成型前のゴム及び、リボン状に成型後のゴムを採取し、各測定を行った。125℃のスコーチT5(分)をAn、及び100℃のムーニー粘度ML(1+4)をBnとしたとき、
予備成型後の測定値をA1、B1とし、予備成型前の測定結果をA0、B0として、予備成型による変化率を(A0−A1)/A0×100(%)、(B0−B1)/B0×100(%)と定義し、各変化率(%)を算出した。
【0043】
(硬度、硬度差の測定方法)
硬度計(アスカーC型、4.9N荷重)を用い、導電性ゴムローラのゴム層の任意の場所を周方向に90°毎4箇所測定し、平均値を硬度とした。なお、本発明で用いられる導電性ゴムローラの適正硬度は25°〜35°である。
【0044】
(画像評価)
本発明の製造方法により得られた導電性ゴムローラを、転写ローラとして電子写真装置(商品名:「レーザージェット5100」、ヒューレット・パッカード社製)に組み込んで印字し、目視にて画像評価を行った。評価は、以下の基準で行った。
○:得られた画像が実用可能なレベル
×:画像不良。
【0045】
(実施例1)
本実施例では、ゴム層材料として以下のものを用いた。
【0046】
アクリロニトリルブタジエンゴム(商品名:「DN401LL」、日本ゼオン(株)社製)70質量部
エピクロルヒドリンゴム(商品名:「ゼクロン3106」、日本ゼオン(株)社製) 30質量部
導電性カーボンブラック(商品名:「旭#35」、旭カーボン(株)社製)5質量部
酸化亜鉛(商品名:「亜鉛華2種」、ハクスイテック(株)社製)10質量部
ステアリン酸(商品名:「ルナックS」、花王(株)社製)1重量部
チアゾール系促進剤:ジベンゾチアジルジスルフィド(商品名:「ノクセラーDM−P」、大内新興化学(株)社製)2質量部
チウラムジスルフィド系促進剤:テトラエチルチウラムジスルフィド(商品名:「ノクセラーTET−G」、大内新興化学(株)社製)2質量部
硫黄(商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学(株)社製)2質量部
オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(商品名:「ネオセルボン#1000」、永和化成工業(株)社製)6質量部
また、本実施例では図2に示すマイクロ波を用いた連続加硫による導電性ゴムローラの製造装置を用いた。本実施例で使用した製造装置は全長13mからなる。UHF12、HAV13、引取機14の長さは、順に、4m、6m、1mであり、UHF12とHAV13間、及びHAV13と引取機14間は0.1mである。
【0047】
また、予備成型機16には、2軸テーパースクリューを備えた2軸押出し機(商品名:「コニカルフィーダー10型」、(株)トーシン社製)を用いた。また、予備成型機16のゴム吐出口の口金は、縦10mm、横40mmの長方形の形状であり、押出成型において使用される押出し機のゴム投入口断面積の40%である。
【0048】
まず、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、導電性カーボンブラックを、密閉式混練機を用い混練した。その後、オープンロールにより、酸化亜鉛、ステアリン酸、チアゾール系促進剤、チウラムジスルフィド系促進剤、硫黄及びオキシビズ(ベンゼンスルホニドヒドラジド)を添加し、さらに混練した。
【0049】
次に、前記混合物(ゴム組成物)を予備成型機16により押出し、リボン状に予備成型した。予備成型は25℃で行い、予備成型時間を2分とした。これにより、リボン状に成型されたゴム層材料を得た。このとき、押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃の範囲内であった。また、予備成型前後でのゴム組成物の125℃スコーチT5変化率は6%であり、ML1+4(100℃)変化率は5%であった。
【0050】
次に、前記リボン上に成型されたゴム層材料を、連続的に押出機11に投入した。押出機11よりチューブ状に成型されたゴムチューブを、該押出機11より押し出された直後にUHF12内に搬送した。該ゴムチューブにマイクロ波を照射して、該ゴムチューブを加熱して加硫発泡し、続いて、HAV13に搬送し、加硫を完了した。
【0051】
加硫、発泡を行ったゴムチューブは、引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成型物を作製した。次いで、ホットメルト接着剤又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した快削鋼材からなるφ4〜10mmの導電性芯材を前記チューブ状の導電性ゴム成型物の内径部に圧入し、ローラ状の成型体を得た。この成型体を、研磨砥石「GC80」(商品名、(株)テイケン社製)を取り付けた研磨機(不図示)にセットした。研磨条件として、回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で外径がφ15mmになるように研磨し、導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラの硬度、及び該導電性ゴムローラを転写ローラに用いた画像形成装置による画像評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
ゴム組成物中の導電性カーボンブラックの量を20質量部とし、予備成型時間を3分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。表1より、スコーチT5、ムーニー粘度の変化率が適正な範囲にあり、その結果、ローラ硬度も適正範囲であり、画像評価も良好であった。
【0053】
(実施例3)
ゴム組成物中の導電性カーボンブラックの量を30質量部とし、予備成型時間を10分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。表1より、スコーチT5、ムーニー粘度の変化率が適正な範囲にあり、その結果、ローラ硬度も適正範囲であり、画像評価も良好であった。
【0054】
(比較例1)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を20質量部とし、予備成型時間を1分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を3質量部とし、予備成型時間を0.5分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を45質量部とし、予備成型時間を1.5分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を20質量部とし、予備成型時間を15分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例5)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を3質量部とし、予備成型時間を15分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例6)
ゴム組成物における導電性カーボンブラックの量を45質量部とし、予備成型時間を15分とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0060】
実施例1から3では、スコーチT5、ムーニー粘度(ML(1+4))の変化率が適正な範囲にあり、その結果、ローラ硬度も適正範囲であり、画像評価も良好であった。
【0061】
一方、比較例1、2では予備成型時間が短いため、その結果、スコーチT5の低下率の増加が見られ、ローラ硬度が低下した。比較例3、6ではカーボンブラックの量が本発明で規定する範囲より多いため、適正なローラ硬度とはならなかった。比較例4、5では、予備成型時間が長いため、ムーニー粘度の低下率が著しく、比較例1、2同様にローラ硬度低下が見られた。また、比較例ではいずれの画像評価においても、画像不良が認められた。
【0062】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの斜視図である。
【図2】本発明に係るマイクロ波を用いた導電性ゴムローラの連続加硫による製造装置の全体断面図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の全体断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 導電性芯材
2 ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
16 予備成型機
21 電子写真感光体(感光ドラム)
22 帯電ローラ
23 レーザ光
24 現像装置
25 トナー
26 転写ローラ
27 転写材
28 クリーニングブレード
29 廃トナー容器
30 定着装置
T 転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層材料を円筒状に押出成型し、成型された該ゴム層材料を加硫・発泡して円筒状ゴム層を成型し、該円筒状ゴム層を導電性芯材に嵌合して導電性ゴムローラを製造する方法において、
前記ゴム層材料は、ゴム成分として少なくともアクリロニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムとを含み、前記ゴム成分の合計を100質量部としたとき、カーボンブラックを5〜30質量部含有するゴム組成物であって、
前記押出成型の前工程として、2軸テーパースクリューと、長方形状の口金からなるゴム吐出口と、を備えた2軸押出し機により、予備成型における前記ゴム層材料の押し出し直後の表面温度が40℃〜80℃であり、前記ゴム層材料を該2軸押出し機に投入してから該ゴム吐出口を通じて断面が長方形のリボン状ゴムに成型されるまでの予備成型時間が2〜10分で、前記ゴム層材料を連続成型し、かつ、前記押出成型に用いる押出し機に連続的に該リボン状ゴムを供給する予備成型工程を有し、
前記ゴム組成物のJIS K6300のムーニースコーチ試験における125℃のスコーチT5(分)をAn、及び100℃のムーニー粘度ML(1+4)をBnとしたとき、前記予備成型工程によりリボン状に成型されたゴム組成物のA1、B1が、予備成型前のA0、B0に対し、その各々の変化率(A0−A1)/A0×100(%)、(B0−B1)/B0×100(%)が、20%以下であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法により製造された導電性ゴムローラ。
【請求項3】
少なくとも転写ローラを有する転写装置を備えた画像形成装置において、該転写ローラが請求項2に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−46982(P2010−46982A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215261(P2008−215261)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】