説明

導電性ゴムローラ

【課題】容易に永久変形しにくく(低圧縮永久歪み)、低硬度であり、接触する他部材を汚染しにくく、かつ押出し加工性の優れた導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体の外周上に導電性ゴム層を配してなる導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、以下の(A)から(C)成分を含むゴム組成物を用いたものである導電性ゴムローラ。
(A)成分:結晶性ブタジエン樹脂を少なくとも0.5〜15質量%含有するゴム成分100質量部
(B)成分:充填剤10〜60質量部
(C)成分:導電性粉体2〜50質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンター等に組み込まれる帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、まず、電子写真感光体の表面を均一に帯電させ、この電子写真感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する。次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
【0003】
前記電子写真感光体の表面を均一帯電するための手段としては、電圧を印加した帯電部材を電子写真感光体に所定の押圧力で当接させて電子写真感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式の中でも、例えば、帯電ローラは、接触帯電方式による均一帯電のための重要なポイントである電子写真感光体への一様な接触が、二つの回転円筒体同士によりなされる。このため、ブラシ帯電やブレード帯電などの他の接触帯電方式よりも実現容易であり、採用されている。
【0004】
帯電ローラは電子写真感光体との接触帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。従って、帯電ローラは所定の抵抗を有し、かつ電気的に均一であることが要求される。また、電子写真感光体等に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0005】
そして、そのような帯電ローラとしては、例えば、導電体である所定の導電性軸体の外周面上に、低硬度の導電性ゴム層が設けられている。更に必要に応じて、導電性ゴム層の外周面上に塗工などにより抵抗調整層や保護層が順次積層形成されたものが採用されている。
【0006】
ところで、前記帯電ローラとして用いられる導電性ゴムローラを前記電子写真感光体等の他部材と接触したまま長期間放置すると、該導電性ゴムローラは電子写真感光体等の他部材との接触部で永久変形する。これにより、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させることができなくなり、画像の品質が低下する。高品位な画像を形成するためには、電子写真感光体等の他部材と接触している導電性ゴムローラが容易に永久変形しないことが望まれる。
【0007】
また、前記導電性ゴムローラが前記電子写真感光体等の他部材を均一に帯電可能とするためには、導電性ゴム層の低硬度化による他部材への高い密着性が要求される。一般的に、導電性ゴム層の硬度を低下させるためには、導電性ゴム層材料であるゴム組成物に例えば軟化剤や可塑剤等を配合する(特許文献1)。しかし、この軟化剤及び可塑剤等のオイル分が前記導電性ゴムローラの表面に浸出し、接触する他部材を汚染する場合がある。
【0008】
前記導電性ゴムローラの製造方法としては、ゴム組成物をチューブ状に押出した後、加硫缶にて加熱加硫し、該チューブ状のゴムを圧入することで導電性軸体に被覆して作製する方法がある。また、クロスヘッド押出し機にて、導電性軸体にゴム組成物を連続的に被覆しながら、被覆一体物を押出すことで作製する方法などがある。前者の製造方法の場合、バッチ生産となるため、コスト面において不利となる。一方、後者の製造方法の場合、連続熱風炉にて加硫されるため連続生産が可能となり、コスト面において有利となる。
【0009】
しかしながら、前記クロスヘッド押出し機において、スウェル(縮み)の大きいゴム組成物を用いて導電性軸体に被覆すると、ゴム切断部(導電性軸体端部)からゴム組成物が縮み、導電性軸体から浮き上がる不具合が生じる場合がある。
【0010】
一般的に、ゴム組成物のスウェル(縮み)の問題を解決するためには、軟化剤、可塑剤等を配合し、ゴム組成物に可塑性を付与する方法がある。しかしながら、前記の通り、軟化剤及び可塑剤等のオイル分が前記導電性ゴムローラの表面に浸出し、接触する他部材を汚染する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−224501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、容易に永久変形しにくく(低圧縮永久歪み)、低硬度であり、接触する他部材を汚染しにくく、かつ押出し加工性に優れた導電性ゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る導電性ゴムローラは、
導電性軸体の外周上に導電性ゴム層を配してなる導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、以下の(A)から(C)成分を含むゴム組成物を用いたものであることを特徴とする。
(A)成分:結晶性ブタジエン樹脂を少なくとも0.5〜15質量%含有するゴム成分100質量部
(B)成分:充填剤10〜60質量部
(C)成分:導電性粉体2〜50質量部。
【0014】
また、前記(A)成分のゴム成分がブタジエンゴムを含有し、該ブタジエンゴムのシス−1,4−結合含量が90質量%以上であることを特徴とする。
【0015】
また、前記(B)成分の充填剤が、平均粒径が1.0〜3.0μmの炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【0016】
また、前記(C)成分の導電性粉体が、カーボンブラックであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易に永久変形しにくく(低圧縮永久歪み)、低硬度であり、接触する他部材を汚染しにくく、かつ押出し加工性に優れた導電性ゴムローラを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明における導電性ゴム層の作製に用いる押出し機の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る導電性ゴムローラを有するプロセスカートリッジを装着した画像形成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態につき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
(導電性ゴムローラ)
本発明に係る導電性ゴムローラは、導電性軸体の外周上に導電性ゴム層を配してなる導電性ゴムローラにおいて、前記導電性ゴム層は、以下の(A)から(C)成分を含むゴム組成物を用いたものである。
(A)成分:結晶性ブタジエン樹脂を少なくとも0.5〜15質量%含有するゴム成分100質量部
(B)成分:充填剤10〜60質量部
(C)成分:導電性粉体2〜50質量部。
【0021】
本発明に係る導電性ゴムローラの一例を図1に示す。導電性ゴムローラ1は、導電性軸体2の外周上に、導電性ゴム層3を有する。導電性ゴムローラ1は、必要に応じて導電性ゴム層3の外周上にさらに表面層等を設けることで、二層以上の構造を有する導電性ゴムローラとすることもできる。
【0022】
(導電性軸体)
本発明に係る導電性ゴムローラにおける導電性軸体としては、少なくとも表面が導電性であれば、通常のローラにおいて用いるものを支障なく使用することができる。例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプ等が使用可能であり、表面をニッケル等でメッキしたものも使用できる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。
【0023】
((A)成分)
前記ゴム組成物に含まれる(A)成分は、結晶性ブタジエン樹脂を少なくとも含有するゴム成分である。結晶性ブタジエン樹脂とは、結晶化しやすいブタジエン樹脂のことを示し、本発明においてはn−ヘキサン不溶解分を結晶性ブタジエン樹脂とする。
【0024】
(A)成分であるゴム成分は、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等の汎用ゴムやエチレンプロピレンジエンゴム、アクリロニトリルブタジエン等が1種類または2種類以上の混合ゴム成分として使用可能である。この中でもブタジエンゴムが好ましい。
【0025】
(A)成分の結晶性ブタジエン樹脂の含有率は、0.5〜15質量%である。結晶性ブタジエン樹脂の含有率を前記範囲とすることにより、ゴム成分の優れた反撥弾性を損なうことなく、押出し加工時のゴム組成物のスウェル(縮み)を抑制した導電性ゴムローラを得ることができる。また、ゴム成分本来の粘度を損なうことなく、低硬度な導電性ゴムローラが得られる。しかしながら、結晶性ブタジエン樹脂の含有率が0.5質量%未満であると、押出し加工の際に前記ゴム組成物のスウェル(縮み)が大きくなる。このため、導電性軸体に被覆すると、ゴム切断部(導電性軸体端部)からゴム組成物が縮み、導電性軸体から浮き上がる。一方、結晶性ブタジエン樹脂の含有率が15質量%を越えると、導電性ゴムローラの硬度が上昇し、要求特性を満足することが困難となる。好ましい結晶性ブタジエン樹脂の含有率は、3〜10質量%である。なお、(A)成分の結晶性ブタジエン樹脂の含有率はn−ヘキサン不溶解分を結晶量とした値である。
【0026】
また、前記(A)成分のゴム成分がブタジエンゴムを含有する場合、該ブタジエンゴムのシス−1,4−結合含量は、90質量%以上であることが好ましい。前記範囲内とすることにより、反撥弾性に優れた導電性ゴムローラが得られる。一方、前記ブタジエンゴムのシス−1,4−結合含量が90質量%を下回ると、ゴム組成物の架橋密度が低下し、導電性ゴムローラの反撥弾性が低下する場合がある。より好ましくは、前記(A)成分中のブタジエンゴムのシス−1,4−結合含量は95質量%以上である。
【0027】
((B)成分)
前記ゴム組成物には、充填剤((B)成分)が含まれる。本発明において充填剤とは、加工性などの諸性質を改善する、あるいは前記導電性ゴムローラのコストを低減するものとして機能する材料をいう。充填剤の種類としては、特に制限はないが、例えば、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。この中でも、炭酸カルシウムが好ましく、特に、平均粒径が1.0〜3.0μmの炭酸カルシウムを用いることが好ましい。前記充填剤として平均粒径が1.0〜3.0μmの炭酸カルシウムを用いることで、混練り、押出し加工等でゴム組成物中の炭酸カルシウムが凝集し、該ゴム組成物の粘度が上昇するのを抑制することができる。また、導電性ゴムローラが研磨工程を経る場合、表面が平滑な導電性ゴムローラを得ることが可能である。しかしながら、平均粒径が1.0μm未満の場合、炭酸カルシウムが凝集しやすく、かつ、粘度が高くなるため押出し加工性等が低下する場合がある。一方、平均粒径が3.0μmを越える場合、研磨加工後の導電性ゴムローラ表面粗さが大きくなり、該導電性ゴムローラを帯電ローラとして用いた場合、感光体等の他部材を均一に帯電できない場合がある。
【0028】
また、前記炭酸カルシウムとして、重質炭酸カルシウムは、製造工程において原石を乾式粉砕して製造することから、該製造工程中に凝集する可能性が低く、好ましく使用できる。
【0029】
なお、本明細書における「平均粒径」とは、体積分布から算出した体積平均粒子径を意味し、具体的には、レーザー回折法により測定することができる。
【0030】
前記ゴム組成物における(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して10〜60質量部である。前記範囲のゴム組成物を用いることで、押出し加工時のゴム組成物のスウェル(縮み)を抑制することが可能である。その後、研磨工程を経る場合、ゴム組成物中に前記充填剤が含有されていることで、研磨性が向上し、優れた寸法精度の導電性ゴムローラが得られる。しかしながら、(B)成分の配合量が前記(A)成分100質量部に対して10質量部未満であると、押出し加工後に研磨工程を経る場合、研磨加工性が低下し、要求される寸法精度が得られない。一方、前記(A)成分100質量部に対して60質量部を越えると、ゴム組成物の硬度が高くなり、かつ、ゴム組成物の電気抵抗値が上昇するため、前記導電性ゴムローラの要求特性を満足させることが困難となる。好ましくは、前記ゴム組成物における(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して20〜50質量部である。
【0031】
((C)成分)
前記ゴム組成物には、導電性を付与する目的で導電性粉体が含まれる。(C)成分である導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属、導電性の各種金属酸化物(酸化チタン等)等が挙げられる。
【0032】
この中でも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類としては特に制限はないが、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、「ケッチェンブラック」(商品名、ライオン(株)製)、黒鉛化カーボンブラック等が挙げられる。その中でも、比較的ローコストなファーネスブラックが好適に用いられる。また、前記カーボンブラックの平均粒子径としても特に制限はない。しかしながら、例えば、平均粒子径60nm以上のファーネスブラック等を用いる場合、前記導電性ゴムローラに導電性を付与することが困難となる可能性がある。
【0033】
前記ゴム組成物における(C)成分の配合量は、前記(A)成分100質量部に対し2〜50質量部である。前記範囲において、ゴム組成物の電気抵抗値を電子写真装置における帯電ローラとして好ましい102〜108Ω・cmに調整することができる。好ましくは、5〜40質量部である。
【0034】
(その他成分)
前記ゴム組成物には、(A)〜(C)成分以外にも、可塑剤等が含まれてもよい。
【0035】
(導電性ゴムローラの製造方法)
本発明に係る導電性ゴムローラの製造方法について以下に具体的に説明するが、この方法に限定されるものではない。
【0036】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法において、図2に示すようなベント式押出し機により前記ゴム組成物を押出すことができる。図2は押出し途中の押出し機を示す概念図で、黒く塗りつぶしてある部分はゴム組成物が充満している部分である。
【0037】
投入口11よりゴム組成物が投入され、スクリュー12によって可塑化され、クロスヘッド14より押出される。クロスヘッド14は中空の中子14aを備え、導電性軸体2は中子14aを通りクロスヘッド14へ供給され、ゴム組成物が被覆される。シリンダー10の中間部にベント13が開いており、ここから真空ポンプ15によりシリンダー10内部を真空状態にする。ベント13付近は、スクリュー12の形状により、ゴム組成物が充満しないように調整されている。スクリュー12のベント13手前には溝の深さを極端に狭くしたダム部12aがあり、真空状態のシリンダー10内へゴム組成物を送り込むことで、より水分の除去効果を高めている。
【0038】
導電性軸体2にゴム組成物を被覆した後、無加圧下で加熱により加硫を行う。無加圧下での加硫工程の加熱方法は、特に限定されるものではなく、電気ヒーターを用いた加熱、燃焼ガスによる加熱等が挙げられる。加硫温度や加硫時間も特に限定されるものではないが、100℃から250℃程度の温度で2分から120分程度加硫すればよい。その後、研磨機よりに所望の外径となるように研削し、本発明に係る導電性ゴムローラを作製することができる。
【0039】
(プロセスカートリッジ、画像形成装置)
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明の導電性ゴムローラを具備する。本発明の導電性ゴムローラを帯電ローラとして具備するプロセスカートリッジの実施形態の一例を図3に示す。図3に示すプロセスカートリッジ30は、本発明の導電性ゴムローラを帯電ローラ20として具備することを特徴とするものである。電子写真感光体22、露光手段(不図示)、現像手段24、転写手段25及びクリーニング手段28等は、特に限定されるものではない。
【0040】
プロセスカートリッジ30において、電子写真感光体22は、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体22は回転過程において、一次帯電手段としての本発明の帯電ローラ20によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光23を受ける。こうして電子写真感光体22の周面に静電潜像が順次形成される。
【0041】
形成された静電潜像は、次に現像手段24によりトナー現像され、現像されたトナー像は電子写真感光体22と転写手段25との間に電子写真感光体22の回転と同期取りされて不図示の給紙部から給紙された転写材26に、転写手段25によって順次転写される。
【0042】
像転写を受けた転写材26は、電子写真感光体22面から分離されて像定着手段27へ導入されて像定着を受け、複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0043】
像転写後の電子写真感光体22の表面は、クリーニング手段28によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0044】
前記例示では、本発明の導電性ゴムローラを帯電ローラ20として用いた例を示した。しかし、本発明の導電性ゴムローラは、現像手段24内に設けた現像ローラ、転写手段25内に設けた転写ローラ、現像手段24内に現像ローラに当接して設けられた現像剤規制ローラ等にも使用することができる。この中でも本発明の導電性ゴムローラは、特に帯電ローラとして好適に用いることができる。
【0045】
本発明に係る画像形成装置は、本発明の導電性ゴムローラを具備する。前記画像形成装置に具備される導電性ゴムローラは、前記プロセスカートリッジ同様、帯電ローラに限らず、他のローラ部材にも使用できる。また、前記画像形成装置は、前記プロセスカートリッジを組み込むものでもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−BR150L」、宇部興産(株)製、結晶性ブタジエン樹脂含有率:0質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%] 60質量部
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−VCR450」、宇部興産(株)製、結晶性ブタジエン樹脂含有率:3.8質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%] 40質量部
(上記2種のブタジエンゴム混合物の結晶性ブタジエン樹脂含有率:1.5質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%)
酸化亜鉛[商品名:「亜鉛華2種」、ハクスイテック(株)製] 5質量部
ステアリン酸[商品名:「ステアリン酸S」、花王(株)製] 1質量部
炭酸カルシウム[商品名:「スーパー#1700」、丸尾カルシウム(株)製] 30質量部
カーボンブラック[商品名:「#5500」、東海カーボン(株)製] 30質量部
ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名:「ノクセラーDM」、大内振興化学工業(株)製] 1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)[商品名:「ノクセラーTS」、大内振興化学工業(株)製] 1質量部
イオウ[商品名:「サルファックスPMC」、鶴見化学工業(株)製] 0.8質量部。
【0048】
上記化合物を混錬りし、未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。次いで、未加硫のゴム組成物をφ70クロスヘッドダイ付き押出し機に投入し、あらかじめ接着剤を塗布した導電性軸体とともに外径が約φ13mmになるように押出し、導電性軸体外周上に未加硫ゴム組成物を被覆した。このときゴムの押出し速度はスクリュー回転数が14rpm、導電性軸体送り速度は2.5m/分の一定速度で供給し続けた。またクロスヘッド内の導電性軸体ガイドの内径はφ6.1mmのものを使用した。この成形体を170℃、1時間電気炉で加硫し、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットした。研削条件として回転速度2000rpm、送り速度0.3m/分で外径がφ12mmになるように研削し、導電性ゴムローラを作製した。
【0049】
(実施例2)
前記2種のブタジエンゴムの代わりに、
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−VCR412」、宇部興産(株)製、結晶性ブタジエン樹脂含有率:12.0質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%] 100質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0050】
(実施例3)
前記2種のブタジエンゴムの代わりに、
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−BR150L」、宇部興産(株)製] 80質量部
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−VCR450」、宇部興産(株)製] 20質量部
(上記2種のブタジエンゴム混合物の結晶性ブタジエン樹脂含有率:0.8質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%)
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0051】
(実施例4)
前記炭酸カルシウム及びカーボンブラックの代わりに、
炭酸カルシウム[商品名:「スーパー#1700」、丸尾カルシウム(株)製] 60質量部
カーボンブラック[商品名:「#5500」、東海カーボン(株)製] 40質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0052】
(実施例5)
前記炭酸カルシウム及びカーボンブラックの代わりに、
炭酸カルシウム[商品名:「スーパー#1700」、丸尾カルシウム(株)製]10質量部
カーボンブラック[商品名:「#5500」、東海カーボン(株)製]25質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0053】
(比較例1)
前記2種のブタジエンゴムの代わりに、
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−BR150L」、宇部興産(株)製] 90質量部
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−VCR450」、宇部興産(株)製] 10質量部
(上記2種のブタジエンゴム混合物の結晶性ブタジエン樹脂含有率:0.4質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%)
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0054】
(比較例2)
前記2種のブタジエンゴムの代わりに、
ブタジエンゴム[商品名:「UBEPOL−VCR617」、宇部興産(株)製、結晶性ブタジエン樹脂含有率:17.0質量%、シス−1,4−結合含量:98質量%] 100質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0055】
(比較例3)
前記炭酸カルシウム及びカーボンブラックの代わりに、
炭酸カルシウム[商品名:「スーパー#1700」、丸尾カルシウム(株)製] 70質量部
カーボンブラック[商品名:「#5500」、東海カーボン(株)製] 30質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0056】
(比較例4)
前記炭酸カルシウム及びカーボンブラックの代わりに、
炭酸カルシウム[商品名:「スーパー#1700」、丸尾カルシウム(株)製] 5質量部
カーボンブラック[商品名:「#5500」、東海カーボン(株)製] 25質量部
を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
(マイクロ硬度MD−1評価)
得られた導電性ゴムローラのマイクロ硬度は、硬さ測定器「マイクロ硬度計MD−1型」(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて、23.5℃/60%RH環境において測定した。測定方法としては、導電性ゴムローラを金属製の板の上に置き、金属製のブロックにて導電性ゴムローラが転がらないように簡単に固定した。測定端子が金属板に対して垂直方向から導電性ゴムローラの中心に正確に当たるようにし、ピークホールドモードで示された値を読み取ることによって行った。なお、導電性ゴムローラの被覆層端部から30mmの位置(2箇所)及び中央部をそれぞれ周方向に3箇所ずつ、計9箇所を測定し、得られた測定値の平均値を導電性ゴムローラのマイクロ硬度とした。
【0058】
(押出し形状評価)
得られた50本の導電性ゴムローラの端部形状を目視により観察し、端部のゴム組成物が導電性軸体から浮いているか否かを調べた。導電性軸体からの浮きが確認されないものを○、浮きが確認されるものは×で評価した。
【0059】
<画像評価>
実施例及び比較例のゴム組成物を用いて得られた外径φ12mmに研削した、導電性ゴムローラに以下に示すような表層面を塗工した。
・アクリルポリオール溶液(商品名:「PLACCEL DC2016」、ダイセル化学社製)
(有効成分70質量%、希釈溶剤としてキシレン30質量%を含有) 100質量部
・イソシアネートA(IPDI)(商品名:「VESTANAT B1370」、デグサ社製)
(有効成分60質量%、希釈溶剤としてn−酢酸ブチルを15質量%、キシレン25質量%を含有) 40質量部
・イソシアネートB(HDI)(商品名:「DURANATE TPA−B80E」、旭化成ケミカルズ社製)
(有効成分80質量%、希釈剤として酢酸エチル20質量%を含有) 30質量部
・カーボンブラック(商品名:「CS−Bk100Y」、戸田工業社製) 30質量部
・表面処理酸化チタン(商品名:「SMT−150IB」、テイカ社製) 25質量部
・PMMA樹脂粒子(商品名:「MAX−12」、積水化成品工業社製) 50質量部
・変性ジメチルシリコーンオイル(商品名:「SH28PA」、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製) 0.08質量部
・メチルイソブチルケトン 400質量部。
【0060】
上記化合物を、ミキサーを用いて撹拌し、混合溶液を作製した。次いで、その混合溶液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理(処理速度500ml/min)を行い、浸漬塗工用塗料を作製した。なお、この塗料の粘度は8.0mPasであった。
【0061】
以上のようにして得られた導電性ゴムローラに対し、以下に示す評価を行った。
【0062】
(C−SET評価)
前記導電性ゴムローラを帯電ローラとして電子写真装置(商品名:「HP Color LaserJet 3000」、ヒューレットパッカード社製)に装着した。40℃95%RHの過酷環境下に1ヶ月放置した後に23℃53%RH環境下に戻し、速やかにプリンタでハーフトーンの画像出力を行うことで出力画像に画像形成体との当接跡が現れるか否かを調べた。当接跡が現れないものを○、当接跡が確認できるものを×で評価した。
【0063】
(感光ドラム表面評価)
前記C−SET評価後に、電子写真装置内から感光体ドラムを取り出し、レーザー顕微鏡にて感光ドラム表面の汚染有無を確認した。表面に汚染が確認されないものを〇、表面に汚染が確認できるものを×で表した。
【0064】
評価結果を表1に示す。なお、各原料の配合量の単位は質量部である。
【0065】
【表1】

【0066】
上記結果から明らかなように、実施例1〜5において作製した導電性ゴムローラは、容易に永久変形しにくく(低圧縮永久歪み)、低硬度で、接触する他部材を汚染しにくく、かつ押出し加工性の優れていることが分かる。
【0067】
一方、比較例1では、結晶性ブタジエン樹脂含有率が低いため、硬度は低下する。しかし、押出し加工の際に、スウェル(縮み)が大きくなる。このため、ゴム材料を導電性軸体に被覆すると、ゴム切断部(導電性軸体端部)からゴム材料が縮み、導電性軸体から浮き上がった。また、圧縮永久歪みが大きくなり、他部材との当接跡が確認された。
【0068】
比較例2では、結晶性ブタジエン樹脂含有率が高いため、硬度が高くなり、押出し加工時の押出し機内圧力が高くなった。このため、均一にゴム材料が導電性軸体に被覆されず、ゴム材料が導電性軸体から浮き上がった。
【0069】
比較例3では、炭酸カルシウムの配合量が多いため、圧縮永久歪みが大きくなり、他部材との当接跡が確認された。
【0070】
比較例4では、炭酸カルシウムの配合量が少ないため、押出し加工の際に、スウェル(縮み)が大きくなり、ゴム材料を導電性軸体に被覆すると、ゴム切断部(導電性軸体端部)からゴム材料が縮み、導電性軸体から浮き上がった。
【0071】
以上より、本発明によれば、容易に永久変形しにくく(低圧縮永久歪み)、低硬度で、接触する他部材を汚染しにくく、かつ押出し加工性の優れた導電性ゴムローラを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 導電性ゴムローラ
2 導電性軸体
3 導電性ゴム層
10 シリンダー
11 投入口
12 スクリュー
12a ダム部
13 ベント
14 クロスヘッド
14a 中子
15 真空ポンプ
20 帯電ローラ
21 電源
22 電子写真感光体
23 画像露光
24 現像手段
25 転写手段
26 転写材
27 像定着手段
28 クリーニング手段
29 レール
30 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周上に導電性ゴム層を配してなる導電性ゴムローラにおいて、
前記導電性ゴム層は、以下の(A)から(C)成分を含むゴム組成物を用いたものである導電性ゴムローラ。
(A)成分:結晶性ブタジエン樹脂を少なくとも0.5〜15質量%含有するゴム成分100質量部
(B)成分:充填剤10〜60質量部
(C)成分:導電性粉体2〜50質量部。
【請求項2】
前記(A)成分のゴム成分がブタジエンゴムを含有し、該ブタジエンゴムのシス−1,4−結合含量が90質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記(B)成分の充填剤が、平均粒径が1.0〜3.0μmの炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記(C)成分の導電性粉体が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−262160(P2010−262160A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113426(P2009−113426)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】