説明

導電性パターニング材料及びタッチパネル

【課題】表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低い導電性パターニング材料、及び該導電性パターニング材料を有するタッチパネルの提供。
【解決手段】平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤー及びシリカ微粒子を含有する導電層を有する導電性パターニング材料であって、前記シリカ微粒子の平均粒径Bnmと、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さAnmとの比(B/A)が、0.9以上5以下であり、前記導電層における前記金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m〜0.07g/mであり、表面抵抗率が300Ω/□以下であり、ヘイズ率が2%以下である導電性パターニング材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性パターニング材料、及び該導電性パターニング材料を用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性材料は、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスに広く利用されており、電気、電子分野における部材として重要である。
【0003】
近年、錫をドープした酸化インジウム(ITO)等の透明導電性材料の代わりに、透明性が高く、表面抵抗率が低く、導電性が良好な金属ナノワイヤーを含む透明導電層を有する透明導電膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
透明導電性材料を電子デバイスの透明電極として使用する場合は、パターン処理が不可欠である。このパターン形成工程において、透明電極が破損することなく、高い導電性を得るためには、耐久性が要求される。また、透明導電性材料をタッチパネルに使用する場合、タッチパネルは、操作面を手で触れたり、布で擦ったり、ペン先でなぞったりする頻度が高いため、操作面に擦傷がつきやすく、視認性が悪くなるという問題があり、表面硬度を高めることが強く求められている。
透明導電性材料からなる透明導電膜上にハードコート層を設けることも試みられているが(例えば、特許文献2参照)、ハードコート層を設ける場合、製造工程でクラックが発生することや、透明導電膜との密着性が悪いとハンドリング性が低くなるなどの問題がある。
【0004】
この問題に対し、硬度を高めた導電性組成物をコートした導電体として、ガラス基板に、シリカ微粒子を含有した導電性組成物をコートした導電体が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、この提案の導電体は、表面抵抗率が10Ω/□以上であり、通電時に発生するジュール熱による断線を生じやすくなることや、配線の上流と下流とで電圧降下が生じ、タッチパネルに用いる際の面積が制限されるという問題がある。
【0005】
また、平均短軸径が0.1μm〜50μmの導電性繊維と、平均粒子径が0.4μm〜100μmのシリカ等の微粒子を含有する導電性組成物が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、この提案の導電性組成物は、導電性繊維の平均短軸径及び微粒子の平均粒子径が大きいため、導電性繊維に起因する散乱が生じるため透明性に劣り、またヘイズ率が高くなるという問題がある。
【0006】
また、金属ナノワイヤーと、シリカ等の粒子と、を含有する透明導電膜を備えた透明導電膜付き基材が提案されている(特許文献5及び6参照)。
しかし、この提案の透明導電膜は、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(A)に対する屈折率制御用の粒子の平均粒径(B)の比(B/A)が小さい。このような透明導電膜は、表面抵抗率やヘイズ率が高く、更に表面硬度を高めることができないという問題がある。
【0007】
したがって、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低い導電性パターニング材料、及び該導電性パターニング材料を有するタッチパネルの提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−215594号公報
【特許文献2】特開2009−70660号公報
【特許文献3】特開2005−82768号公報
【特許文献4】特開2004−224829号公報
【特許文献5】特開2011−29037号公報
【特許文献6】特開2011−29099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低い導電性パターニング材料、及び該導電性パターニング材料を有するタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤー及びシリカ微粒子を含有する導電層を有する導電性パターニング材料であって、前記シリカ微粒子の平均粒径Bnmと、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さAnmとの比(B/A)が、0.9以上5以下であり、前記導電層における、前記金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m〜0.07g/mである導電性パターニング材料は、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、表面抵抗率が300Ω/□以下の高い透明性及び高い導電性を有し、ヘイズ率が2%以下と低く、表面抵抗率が低いことを知見し、本発明の完成に至った。
【0011】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤー及びシリカ微粒子を含有する導電層を有する導電性パターニング材料であって、前記シリカ微粒子の平均粒径Bnmと、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さAnmとの比(B/A)が、0.9以上5以下であり、前記導電層における前記金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m〜0.07g/mであり、表面抵抗率が300Ω/□以下であり、ヘイズ率が2%以下であることを特徴とする導電性パターニング材料である。
<2> 比(B/A)が1.1以上4.5以下である前記<1>に記載の導電性パターニング材料である。
<3> シリカ微粒子の平均粒径が60nm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電性パターニング材料である。
<4> シリカ微粒子の平均粒径の下限値が(金属ナノワイヤーの平均短軸長さ−2)nmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電性パターニング材料である。
<5> 導電層の平均厚みが0.01μm〜0.3μmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電性パターニング材料である。
<6> 導電層の透過率が80%以上であり、かつ導電層の表面抵抗率が10Ω/□〜150Ω/□である前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電性パターニング材料である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の導電性パターニング材料を有することを特徴とするタッチパネルである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低い導電性パターニング材料、及び該導電性パターニング材料を有するタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の前記導電性パターニング材料の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2(A)〜(C)は、本発明の導電性パターニング材料を用いた転写方法の一例を説明するための説明図である。
【図3】図3は、本発明のタッチパネル(表面型静電容量方式)の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明のタッチパネル(表面型静電容量方式)の別の一例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明のタッチパネル(投影型静電容量方式)の一例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明のタッチパネル(抵抗膜式)の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(導電性パターニング材料)
本発明の導電性パターニング材料は、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤー及びシリカ微粒子を含有する導電層を少なくとも有し、更に、転写基材、クッション層を有することが好ましく、更に必要に応じて、感光層、防汚層、UVカット層、反射防止層等のその他の層を有する。また、最表面に保護フィルムを積層していてもよい。
【0015】
前記導電性パターニング材料の形状、構造、大きさなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記導電性パターニング材料は、可撓性を有し、透明であることが好ましく、前記透明には、無色透明の他、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
【0016】
<導電層>
前記導電層は、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーと、シリカ微粒子とを少なくとも含有し、更にバインダー、感光性化合物を含有することが好ましく、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
【0017】
<<金属ナノワイヤー>>
前記金属ナノワイヤーは、平均短軸長さが50nm以下の金属ナノワイヤーである。本発明において、「ワイヤー」とは、中実構造の繊維のことを意味する。
【0018】
−形状−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、中実構造であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状等の任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
前記金属ナノワイヤーの断面の角とは、断面の各辺を延長し、隣り合う辺から降ろされた垂線と交わる点の周辺部を意味する。また、「断面の各辺」とは、これらの隣り合う角と角を結んだ直線とする。この場合、前記「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との割合を鋭利度とした。この鋭利度が75%以下の断面形状を角の丸い断面形状と定義する。前記鋭利度は、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。前記鋭利度が75%を超えると、該角に電子が局在し、プラズモン吸収が増加するためか、黄色みが残るなどして透明性が悪化してしまうことがある。
前記鋭利度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%以上好ましい。前記鋭利度が10%未満であると、ナノワイヤー同士の接触確率が低下するためか、高抵抗化しやすい傾向がある。
【0019】
−平均短軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することもある。)は、50nm以下であるが、40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が特に好ましい。前記平均短軸長さが、50nmを超えると、金属ナノワイヤーに起因する散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことや、ヘイズ率が高くなることがある。
また、前記平均短軸長さの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。前記平均短軸長さの下限値が、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがある。
したがって、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、1nm〜50nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、10nm〜30nmが更に好ましく、10nm〜25nmが特に好ましい。
なお、本発明において、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、金属ナノワイヤーを観察して短軸長さを測定し、少なくとも300個の金属ナノワイヤーの短軸長さの平均値を求めた値である。
【0020】
−平均長軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(以下、「平均長さ」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm以上が好ましく、2μm〜40μmがより好ましく、3μm〜35μmが更に好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。
前記平均長軸長さが、2μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
本発明において、前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、金属ナノワイヤーを観察して長軸長さを測定し、少なくとも300個の金属ナノワイヤーの長軸長さの平均値を求めた値である。
ここで、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合は、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとする。
【0021】
−材料−
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が特に好ましい。また、これらの材料を主成分として含むことが特に好ましい。
【0022】
−金属−
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、前記金属は、導電性に優れる点で、銀又は銀と他の金属との合金が好ましい。
前記合金における他の金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
−製造方法−
前記金属ナノワイヤーの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、分散添加剤と、ハロゲン化合物とを溶解した溶媒中に金属錯体溶液を添加して、加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることもできる。
【0024】
−−金属錯体−−
前記金属錯体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、銀錯体が特に好ましい。前記銀錯体の配位子としては、例えば、CN−、SCN−、SO32−、チオウレア、アンモニアなどが挙げられる。これらについては、“The Theory of the Photographic Process 4th Edition”Macmillan Publishing、T.H.James著の記載を参照することができる。これらの中でも、銀アンモニア錯体が特に好ましい。
前記金属錯体の添加は、前記分散添加剤とハロゲン化合物の後に添加することが好ましい。ワイヤー核を高い確率で形成できるためか、本発明における適切な径や長さの金属ナノワイヤーの割合を高める効果がある。
【0025】
−−分散添加剤−−
前記分散添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、合成高分子、これらに由来するゲルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記分散添加剤は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が特に好ましい。
前記分散添加剤として使用可能な構造については、例えば、「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
また、使用する分散添加剤の種類によって、得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることもできる。
【0026】
−−ハロゲン化合物−−
前記ハロゲン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物が好ましく、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドや前記分散添加剤と併用できる化合物がより好ましい。
前記ハロゲン化合物の種類によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0027】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を併用してもよい。
【0028】
前記分散添加剤と前記ハロゲン化合物とは、同一物質であってもよく、これらを併用してもよい。前記分散添加剤と前記ハロゲン化合物とを併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含む、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0029】
−−溶媒−−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
【0030】
前記加熱時の加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、250℃以下が好ましく、20℃〜200℃がより好ましく、30℃〜180℃が更に好ましく、40℃〜170℃が特に好ましい。前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎるため、前記加熱温度が20℃未満であると、金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがある。また、前記加熱温度が250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になり、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。
必要に応じて、金属ナノワイヤーの形成過程で適宜温度を変更してもよい。金属ナノワイヤーの形成過程での温度変更により、金属ナノワイヤーの核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果を向上させることができる。
【0031】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記還元剤は、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
【0032】
前記水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。
前記水素化アルミニウム塩としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムなどが挙げられる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどが挙げられる。
前記ヘテロ環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリンなどが挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなどが挙げられる。
前記アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
前記還元糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
前記糖アルコール類としては、例えば、ソルビトールなどが挙げられる。
【0033】
前記還元剤の種類によっては、機能として分散添加剤や溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
【0034】
前記金属ナノワイヤーの製造の際の、分散添加剤と、ハロゲン化合物の添加の段階としては、前記還元剤の添加前であっても、添加後であってもよく、核となる金属粒子あるいはハロゲン化金属微粒子の添加前であっても、添加後であってもよいが、単分散性のよりよい金属ナノワイヤーを得るためには、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
前記分散添加剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は、必要とする金属ナノワイヤーの長さにより変更する必要がある。これは核となる金属粒子量の制御による金属ナノワイヤーの長さに起因しているためと考えられる。
【0035】
前記金属ナノワイヤーを形成した後、更に脱塩処理を行うことが好ましい。前記脱塩処理としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などが挙げられる。
【0036】
−−含有量−−
前記導電層における前記平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーの含有量は、0.01g/m〜0.07g/mであるが、0.02g/m〜0.05g/mが好ましく、0.02g/m〜0.03g/mが特に好ましい。
前記金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下することや、表面抵抗率が高くなることがある。更に、金属ナノワイヤー以外に導電性に大きく寄与しない成分を含む場合、該成分が吸収を持つこともあり好ましくない。特に金属ナノワイヤー以外の成分が金属の場合で、球形等のプラズモン吸収が強い場合には、透明度が悪化してしまうことがある。
また、金属ナノワイヤーの含有量が0.07g/mを超えると、表面硬度を高めることができず、ヘイズ率が高くなり、透過率が低下することがある。
一方、前記金属ナノワイヤーの含有量が前記特に好ましい範囲内であると、表面硬度、透過率、及び導電率に優れ、表面抵抗率やヘイズ率が低い点で有利である。
前記導電層における前記金属ナノワイヤーの含有量は、金属ナノワイヤーを含む分散液を対象基材に配する際の、該分散液の配設量及び該分散液に含有される金属ナノワイヤーの濃度などを変えることで調整することができる。
前記導電層における前記金属ナノワイヤーの含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(ICP発光分析装置)などにより測定することができる。
【0037】
なお、本発明において、前記導電層には、平均短軸長さ50nmを超える金属ナノワイヤーが含まれていてもよいが、平均短軸長さ50nmを超える金属ナノワイヤーの含有量は少ない方が好ましい。
金属ナノワイヤー総量に対する、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。金属ナノワイヤー総量に対する、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーの含有量が50%未満であると、透明度が悪くなることや、ヘイズ率が高くなることがある。
【0038】
前記平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーの含有量は、例えば、金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーと、平均短軸長さ50nmを超える金属ナノワイヤーとを分離し、前記同様の方法で蛍光X線分析装置を用いて濾紙に残っているAg量と、濾紙を透過したAg量とを各々測定することで求めることができる。
濾紙を透過した金属ナノワイヤーをTEMで観察し、少なくとも300個の金属ナノワイヤーの平均短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーであることを確認する。
なお、濾紙は、平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤーを選択的に透過できるようなものが好ましい。
【0039】
<<シリカ微粒子>>
前記シリカ微粒子としては、後述する比(B/A)を満たすものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コロイダルシリカ、気相法シリカ等の無水シリカ、含水シリカなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記シリカ微粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、球形であってもよく、不定形であってもよいが、球形が好ましい。また、中空粒子であってもよい。前記シリカ微粒子は、結晶質であってもよく、アモルファスであってもよい。
【0041】
前記シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液等の配設液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理が施されたものが好ましく、カップリング剤による化学的表面処理が施されたものがより好ましい。
【0042】
前記カップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等のアルコキシメタル化合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に好ましい。
なお、前記シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0043】
これらの中でも、前記シリカ微粒子は、コロイダルシリカが好ましく、シリカ表面が、化学的に結合したアルコールやオルガノシリル基で疎水化されたコロイダルシリカが特に好ましい。
【0044】
前記コロイダルシリカとは、溶媒に分散させた無水ケイ酸の超微粒子からなるコロイド状のシリカである。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルコール性有機溶媒が好ましい。
前記アルコール性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、γブチルラクトン、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記コロイダルシリカの主成分は、二酸化ケイ素であるが、少量成分としてアルミナあるいはアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよく、更に安定剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基やテトラメチルアンモニウムのような有機塩基が含まれていてもよい。
【0046】
前記コロイダルシリカの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゾル−ゲル法で調製する方法、水ガラス法で調製する方法などが挙げられる。また、市販品を用いてもよい。
前記ゾル−ゲル法で調製する方法としては、例えば、Werner Stober et al.,J.Colloid and Interface Sci.,26,62−69(1968)、Ricky D.Badley et al.,Langmuir 6,792−801(1990)、色材協会誌,61〔9〕488−493(1988)等の記載を参考にすることができる。
【0047】
前記コロイダルシリカとしては、例えば、特開昭53−112732号公報、特公昭57−009051号公報、特公昭57−51653号公報などに記載のものを用いることができる。また、特開平10−268464号公報に記載の、太さ1nm〜50nm、長さ10nm〜1,000nmの細長い形状を有するコロイド状シリカ、特開平9−218488号公報あるいは特開平10−111544号公報に記載のコロイド状シリカと有機ポリマーとの複合粒子を用いることもできる。
【0048】
市販品を使用する場合は、商品名で、MEK−ST−L(平均粒径:45nm)等のメチルエチルケトン分散シリカゾル(日産化学工業株式会社製);MA−ST−M(平均粒径:25nm)等のメタノール分散シリカゾル(日産化学工業株式会社製);IPA−ST−ZL(平均粒径:100nm)等のイソプロパノール分散シリカゾル(日産化学工業株式会社製);オスカル105(平均粒径:60nm)等のγブチルラクトン分散シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、市販品を使用する場合は、オスカル105、MEK−ST−L、MA−ST−Mが好ましく、MEK−ST−L、MA−ST−Mがより好ましく、MA−ST−Mが特に好ましい。
【0049】
前記シリカ微粒子の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均粒径が、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。前記シリカ微粒子の平均粒径が、100nmを超えると、表面硬度を高めることができないことや、ヘイズ率が高くなること、透過率が低下することなどがある。また、銀ナノワイヤー同士の接触を阻害し、平坦性を悪化させることもある。また、前記シリカ微粒子は、単分散粒子であることが好ましい。
【0050】
また、前記シリカ微粒子の平均粒径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(金属ナノワイヤーの平均短軸長さ−2)nmを満たすことが好ましい。前記シリカ微粒子の平均粒径の下限値が、(金属ナノワイヤーの平均短軸長さ−2)nm未満であると、表面硬度を高めることができないことや、表面抵抗率やヘイズ率が高くなること、導電率を高めることができないことなどがある。
したがって、前記シリカ微粒子の平均粒径の上限値と下限値とは、任意の上限値と任意の下限値とを、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さに応じて、適宜組み合わせた数値範囲を採用することができる。
【0051】
ここで、前記シリカ微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、シリカ微粒子を観察して粒径を測定し、少なくとも300個のシリカ微粒子の粒径の平均値を求めた値であり、本発明において、シリカ微粒子の平均粒径は、数平均粒径である。
【0052】
前記導電層におけるシリカ微粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属ナノワイヤー100質量部に対して、0.1質量部〜500質量部が好ましく、50質量部〜300質量部がより好ましく、80質量部〜200質量部が特に好ましい。前記シリカ微粒子の含有量が金属ナノワイヤー100質量部に対して、0.1質量部未満であると、表面硬度が著しく低下することがあり、500質量部を超えると表面抵抗率やヘイズ率が高くなることがある。一方、前記シリカ微粒子の含有量が前記好ましい範囲内であると、表面抵抗率やヘイズ率を高めることなく表面硬度を高めることができる点で有利である。
前記導電層における前記シリカ微粒子の含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)などにより測定することができる。
【0053】
<シリカ微粒子の平均粒径Bnm/金属ナノワイヤーの平均短軸長さAnmの比(B/A)>>
前記導電性パターニング材料において、前記シリカ微粒子の平均粒径をBnmとし、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さをAnmとしたとき、これらの比(B/A)は、0.9以上5以下であるが、1.1以上4.5以下が好ましく、2.5以上4.5以下がより好ましい。前記比(B/A)が、0.9未満であると、表面硬度を高めることができないことや、表面抵抗率やヘイズ率が高くなることがあり、5を超えると、表面硬度を高めることができないことや、ヘイズ率が高くなること、透過率が低下することなどがある。
一方、前記比(B/A)が、0.9以上5以下であると、表面硬度、透過率、及び導電率に優れ、表面抵抗率やヘイズ率が低い点で有利である。
【0054】
<<バインダー>>
前記バインダーとしては、有機高分子重合体であって、分子中、好ましくは、アクリル系共重合体を主鎖とする分子中に、少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
前記少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基としては、例えば、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。
ここで、前記酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0055】
前記バインダーの製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0056】
前記有機高分子重合体としては、酸性基を有する感光性樹脂等の側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、特開昭59−71048号公報などに記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに、側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等などが好ましく、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0057】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0058】
前記有機高分子重合体以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などを用いることもできる。
【0059】
前記アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
【0060】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子が、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記バインダーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が特に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0063】
前記バインダーの含有量は、前記導電層全体に対し、25質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜75質量%がより好ましく、40質量%〜70質量%が特に好ましい。前記バインダーの含有量が、前記好ましい範囲内であると、現像性と金属ナノワイヤーの導電性の両立が図れる点で有利である。
【0064】
<<感光性化合物>>
前記感光性化合物とは、露光により画像を形成する機能を導電層に付与するか、又はそのきっかけを与える化合物を意味する。具体的には、(1)露光による酸を発生する化合物(光酸発生剤)、(2)感光性のキノンジアジド化合物、(3)光ラジカル発生剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、感度調整のために、増感剤などを併用して用いることもできる。
【0065】
−(1)光酸発生剤−
前記(1)光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0066】
前記(1)光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。
これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物である、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
【0067】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0068】
−−(2)キノンジアジド化合物−−
前記(2)キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0069】
前記(1)光酸発生剤、及び前記(2)キノンジアジド化合物の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、前記バインダー100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、3質量部〜80質量部がより好ましい。
なお、前記(1)光酸発生剤と、前記(2)キノンジアジド化合物とを併用してもよい。
【0070】
これらの中でも、前記感光性化合物は、前記(1)光酸発生剤の中でもスルホン酸を発生する化合物が好ましく、下記のようなオキシムスルホネート化合物が高感度である観点から特に好ましい。
【化1】

【0071】
また、前記(2)キノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物を用いると高感度で現像性が良好である。
前記(2)キノンジアジド化合物の中でも、下記の化合物でDが独立して水素原子又は1,2−ナフトキノンジアジド基であるものが高感度である観点から好ましい。
【化2】

【0072】
−−(3)光ラジカル発生剤−−
前記光ラジカル発生剤は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する。前記光ラジカル発生剤は波長300nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
【0073】
前記光ラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記光ラジカル発生剤の含有量は、前記導電層の全固形分に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が特に好ましい。前記光ラジカル発生剤の含有量が前記好ましい範囲内であると、良好な感度とパターン形成性が得られる点で有利である。
【0074】
前記光ラジカル発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−268884号公報に記載の化合物群などが挙げられる。これらの中でも、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルホスフィン(オキシド)系化合物、オキシム系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0075】
前記光ラジカル発生剤としては、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]が好適である。
【0076】
前記導電層を配する際の配設液は、露光感度向上のために、光ラジカル発生剤と連鎖移動剤を併用してもよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等の複素環を有するメルカプト化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記連鎖移動剤の含有量は、前記導電層の全固形分に対し、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が特に好ましい。
【0077】
<<その他の成分>>
前記導電層中のその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、架橋剤、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤、溶媒等の各種添加剤などが挙げられる
【0078】
−分散剤−
前記分散剤は、前記金属ナノワイヤーの凝集を防ぎ、分散させるために用いる。
前記分散剤としては、前記金属ナノワイヤーを分散させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で金属ナノワイヤーに吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、ポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
【0079】
前記分散剤の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、分散液中で金属ナノワイヤーが凝集してしまうことがあり、50質量部を超えると、配設工程において安定な配設膜(例えば、塗布膜)が形成できず、配設ムラが発生してしまうことがある。
【0080】
−架橋剤−
前記架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、導電層を硬化させる化合物であり、例えば、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物若しくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物又はアジド系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基等を含むエチレン性不飽和基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
また、前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
【0081】
前記架橋剤の含有量は、前記バインダー100質量部に対して、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0082】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブタノール、水、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアセテート、乳酸メチル、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
−−金属腐食防止剤−−
前記金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
前記金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。前記金属腐食防止剤は、導電層を配する際の配設液に溶解した中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、導電層を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
【0084】
前記導電層における前記金属ナノワイヤー以外の成分の合計含有量X(1種のみの場合は単独の含有量)と、前記金属ナノワイヤーの含有量Yとの質量比(X/Y)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜5が好ましく、0.5〜3がより好ましい。前記質量比(X/Y)が、0.1未満であると、金属ナノワイヤーの凝集による導電性や透過率やヘイズ率等の光学特性の劣化、導電層の力学強度や転写基材との密着性の劣化、特にフォトリソグラフィを用いたパターニングで得られるパターンの品質(露光パターンの忠実再現性)の劣化等の問題が生じることがある。また、前記質量比(X/Y)が、5を超えると、金属ナノワイヤー間の接触点数の減少による導電性の低下や、ヘイズ率、光透過率等の光学特性の劣化が生じることがある。
【0085】
<<導電層の配設方法>>
前記導電層を配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法、散布法、インクジェット法などが挙げられる。
前記塗布法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などが挙げられる。
前記印刷法としては、例えば、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、などが挙げられる。
【0086】
<<導電層の厚み>>
前記導電層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均厚みで、0.01μm〜0.3μmが好ましく、0.01μm〜0.15μmがより好ましく、0.05μm〜0.15μmが更に好ましく、0.01μm〜0.08μmが特に好ましい。前記導電層の平均厚みが、0.01μm未満であると、導電性の面内分布が不均一になることがあり、0.3μmを超えると、透過率が低くなり、透明性が損なわれることがある。
前記導電層の平均厚みは、金属ナノワイヤーを含む分散液を対象基材に配する際の、該分散液の配設量及び該分散液に含有される金属ナノワイヤーの濃度などを変えることで調整することができる。
ここで、前記導電層の平均厚みは、例えば、ミクロトーム切削で前記導電性パターニング材料の断面を出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する、あるいは前記導電性パターニング材料をエポキシ樹脂で包埋した後、ミクロトームで作製した切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
なお、前記平均厚みとは、前記導電性パターニング材料における任意の10箇所以上で測定した厚みの平均値をいう。
【0087】
<転写基材>
前記転写基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0088】
前記転写基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
【0089】
前記透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。また、近年開発された平均厚みが10μm〜数百μmの薄層ガラス基板を用いることもできる。
【0090】
前記合成樹脂製シート(フィルム)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシート、ポリエーテルスルホンシート、ポリエステルシート、アクリル樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、芳香族ポリアミド樹脂シート、ポリアミドイミドシート、ポリイミドシートなどが挙げられる。
【0091】
前記金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
【0092】
これらの中でも、前記転写基材は、合成樹脂製シートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートが特に好ましい。前記転写基材に合成樹脂製シートを用いると、割れることがなく、屈曲性に優れ、薄型にすることができ軽量であり、大面積化が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0093】
前記転写基材の全可視光透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。前記全可視光透過率が、80%未満であると、透過率が低く実用上問題となることがある。
なお、本発明では、転写基材として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0094】
前記転写基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均厚みで、1μm〜500μmが好ましく、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが特に好ましい。前記平均厚みが、1μm未満であると、前記導電層の配設工程でのハンドリングの困難さに起因して、歩留まりが低下することがあり、500μmを超えると、ポータブルなアプリケーションにおいては厚みや質量が問題となることがある。
ここで、前記転写基材の平均厚みは、例えば、ミクロトーム切削で前記導電性パターニング材料の断面を出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する、あるいは前記導電性パターニング材料をエポキシ樹脂で包埋した後、ミクロトームで作製した切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
なお、前記平均厚みとは、前記導電性パターニング材料における任意の10箇所以上で測定した厚みの平均値をいう。
【0095】
<クッション層>
前記クッション層は、被転写体への転写の均一性を向上させることができる層である。
前記クッション層の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0096】
前記クッション層を形成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマーを含有することが好ましい。
【0097】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱時に軟化する熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ゼラチン、セルロースナイトレート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、、アルキル(炭素数1〜4)アクリレート、アルキル(炭素数1〜4)メタクリレート、ビニルピロリドン等を含むホモポリマー又は共重合体、可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ポリアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリマーは、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体を含むことが好ましい。
【0098】
前記クッション層のガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜150℃が好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃未満であると、室温で軟らかすぎてハンドリング性に劣ることがあり、150℃を超えると、熱ラミネート方式でクッション層が軟化せず導電層の転写性が劣ることがある。また可塑剤等の添加により、ガラス転移温度を調整してもよい。
なお、前記ガラス転移温度は、JIS K7121−1987に記載の示差熱分析(DSC)法により測定することができる。
【0099】
前記クッション層には、前記ポリマー以外のその他の成分を含有していてもよく、該その他の成分としては、例えば、特開平5−72724号公報の段落〔0007〕以降に記載されている有機高分子物質、前記転写基材との接着力を調節するための各種可塑剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、離型剤、熱重合禁止剤、フィラー、溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
前記クッション層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリマーや前記その他の成分を含有するクッション層用の配設液を調製し、これを前記転写基材上に配設し、乾燥させることにより形成することができる
【0101】
前記クッション層を配する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法、散布法、インクジェット法などが挙げられる。
【0102】
前記クッション層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均厚みで、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、5μm〜20μmが特に好ましい。前記平均厚みが、1μm未満であると、被転写体への転写の均一性が低くなることがあり、50μmを超えると、転写材料のカールバランスが低くなることがある。
また、前記クッション層の厚みは、前記導電層と前記クッション層との合計平均厚みNと、前記転写基材の平均厚みMとの比(N/M)が、0.01〜0.7が好ましく、0.02〜0.6がより好ましい。前記比(N/M)が、0.01未満であると、被転写体への転写の均一性が低くなることがあり、0.7を超えると、カールバランスが崩れてしまうことがある。
ここで、前記クッション層の平均厚みは、例えば、ミクロトーム切削で前記導電性パターニング材料の断面を出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する、あるいは前記導電性パターニング材料をエポキシ樹脂で包埋した後、ミクロトームで作製した切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができる。
なお、前記平均厚みとは、前記導電性パターニング材料における任意の10箇所以上で測定した厚みの平均値をいう。
【0103】
<感光層>
本発明においては、前記導電層が感光性材料(バインダー、感光性化合物)を含有しない場合には、前記転写基材と前記導電層の間、あるいは前記導電層上に感光層を有することが好ましい。
前記感光層は、バインダーを少なくとも含み、感光性化合物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダー及び感光性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば前記導電層と同様なものを用いることができる。
前記感光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均厚みで、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜10μmがより好ましい。
【0104】
<保護フィルム>
前記保護フィルムは、前記導電性パターニング材料を被転写体に転写するときには剥離される。
前記保護フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、シリコーン紙、ポリエチレンやポリプロピレンがラミネートされた紙、ポリオレフィンシート、ポリテトラフルオルエチレンシート、などが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0105】
<特性>
<<表面硬度>>
前記導電性パターニング材料の表面硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬い方が、タッチパネル等に用いた場合に操作面に擦傷がつきにくい点で好ましく、JIS K5400に準拠し、斜め45度に固定した鉛筆の真上から1kgの荷重をかけ引っ掻き試験を行った場合の鉛筆硬度で、H以上がより好ましく、2H以上が更に好ましく、3H以上が特に好ましい。
【0106】
<<表面抵抗率>>
前記導電性パターニング材料の表面抵抗率は、300Ω/□以下であるが、10Ω/□〜150Ω/□が好ましく、10Ω/□〜70Ω/□がより好ましく、10Ω/□〜65Ω/□が特に好ましい。前記表面抵抗率が、300Ω/□を超えると、通電時に発生するジュール熱による断線を生じやすくなることや、配線の上流と下流とで電圧降下が生じ、タッチパネルに用いる際の面積が制限されるなどの問題を生じることがある。前記表面抵抗率が低いこと自体に弊害はないが、10Ω/□未満であると、光透過率の高い導電体を得るのが困難になることがある。
前記表面抵抗率は、例えば、表面抵抗計(Loresta−GP MCP−T600;三菱化学株式会社製)を用いて測定することができる。
【0107】
<<ヘイズ率>>
前記導電性パターニング材料のヘイズ率は、2%以下であるが、1.6%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。前記ヘイズ率が、2%を超えると、不透明になり、タッチパネル等に用いた場合に視認性が悪くなることがある。
前記ヘイズ率は、例えば、積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス;ガードナー社製)を用いて測定することができる。
【0108】
<<透過率>>
前記導電性パターニング材料の透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。前記透過率が、80%未満であると、タッチパネル等の画像表示媒体に用いる際に導電パターンが目立ってしまい、画像の品質を損ねたり、輝度低下を補償するために消費電力を増加させる必要が生じる等の弊害が生じることがある。
前記透過率は、例えば、積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス;ガードナー社製)を用いて測定することができる。
【0109】
<<導電率>>
前記導電性パターニング材料の導電率とは、抵抗率の逆数であり、相対値で比較する場合は、表面抵抗率の逆数を比較することで導電率を比較することができる。
本発明の導電性パターニング材料の100μm線幅の導電率は、シリカ微粒子を添加していない場合の表面抵抗率の逆数を100としたとき、これに対する相対値で、65以上が好ましく、75以上がより好ましく、80以上が特に好ましい。前記導電率が65未満ということは、パターニング性が著しく低下していることを意味する。
前記表面抵抗率は、例えば、表面抵抗計(Loresta−GP MCP−T600;三菱化学株式会社製)を用いて測定することができる。
【0110】
以下に、図面を用いて本発明の前記導電性パターニング材料の一例について説明するが、本発明の前記導電性パターニング材料は、これに限られるものではない。
図1は、本発明の前記導電性パターニング材料の層構成の一例を示す概略断面図である。
図1の導電性パターニング材料6は、転写基材1と、該転写基材1における一の面にクッション層2及び導電層3をこの順に有している。
なお、図示を省略しているが、導電性パターニング材料6における導電層3は、パターニングされていてもよく、パターニングされてなくてもよい。前記パターニングとしては、既存のITO透明導電膜で施されている電極形状が挙げられる。具体的には、WO2005/114369号パンフレット、WO2004/061808号パンフレット、特開2010−33478号公報、特開2010−44453号公報に開示されているストライプ形状のパターン、ダイヤモンドパターンと呼ばれているものなどが挙げられる。
【0111】
<パターニング処理>
前記導電性パターニング材料を用いてパターニング処理を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記導電性パターニング材料における導電層、あるいは被転写体に転写された本発明の前記導電性パターニング材料の導電層に対し、露光する工程(露光工程)と、現像する工程(現像工程)とを含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0112】
−露光工程−
前記露光工程は、本発明の前記導電性パターニング材料における導電層、あるいは被転写体に転写された本発明の前記導電性パターニング材料の導電層を露光する工程である。
前記露光する方法としては、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることもできる。
【0113】
−現像工程−
前記現像工程は、少なくとも前記導電層における露光部及び非露光部のいずれかを、溶媒を付与して現像する工程である。
前記現像工程において、更に感光層を有する場合には、前記感光層における露光部及び非露光部のいずれかを除去する。
【0114】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルカリ溶液が好ましい。
前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記アルカリ溶液を前記導電層に付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布、浸漬、噴霧などが挙げられる。具体的には、アルカリ溶液中に本発明の前記導電性パターニング材料を浸漬する方法、本発明の前記導電性パターニング材料にシャワーやスプレーを用いて前記アルカリ溶液をかけ流す方法、本発明の前記導電性パターニング材料にアルカリ溶液を浸したナプキン等で塗りつける方法などが挙げられる。
これらの中でも、前記アルカリ溶液を前記導電層に付与する方法は、アルカリ溶液中に本発明の前記導電性パターニング材料を浸漬する方法が特に好ましい。
前記アルカリ溶液の浸漬時間として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10秒間〜5分間が好ましい。
【0116】
<転写方法>
次に、本発明の前記導電性パターニング材料の転写方法について説明する。
まず、本発明の導電性パターニング材料における導電層を加圧し、加温下で被転写体上に貼り合わせる。貼り合わせには、従来公知のラミネーター、真空ラミネーターを使用することができ、より生産性を高めるためには、オートカットラミネーターの使用も可能である。その後、転写基材を剥がして、前記導電層が被転写体に転写される。
前記被転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば基材、液晶セルなどが挙げられる。これらの中でも、透明ガラス基板、液晶セルが特に好ましい。
【0117】
以下に、図面を用いて本発明の前記導電性パターニング材料を用いた転写方法の一例について説明するが、本発明の前記導電性パターニング材料を用いた転写方法は、これに限られるものではない。
ここで、図2(A)〜図2(C)は、本発明の導電性パターニング材料を用いた転写方法の一例を説明するための説明図である。
図2(A)に示す転写基材1と、該転写基材1における一の面にクッション層2及び導電層3をこの順に有している導電性パターニング材料6のクッション層2及び導電層3を、図2(B)に示すように、被転写体としての透明基板8にラミネーターを用いて加圧、加熱して貼り合わせる。続いて、図2(C)に示すように、転写基材1を剥離することにより、クッション層2及び導電層3が透明基板8に転写される。
【0118】
<用途>
本発明の導電性パターニング材料は、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低いので、例えば、後述する本発明のタッチパネルの他、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル、タッチパネル機能付表示装置に特に好適に利用される。
【0119】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、少なくとも本発明の前記導電性パターニング材料を有し、更に基材を有することが好ましく、必要に応じて、更にその他の部材を有する。
【0120】
<基材>
前記基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0121】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記基材には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板、前記合成樹脂製シート、前記金属基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記導電性パターニング材料の転写基材と同じものなどが挙げられる。
【0122】
前記タッチパネルの方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抵抗膜式タッチパネル、表面型静電容量方式タッチパネル、投影型静電容量方式タッチパネル、電磁誘導方式タッチパネル、超音波表面弾性波方式タッチパネル、赤外線走査方式タッチパネルなどが挙げられる。
なお、本発明において、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
【0123】
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2枚の前記導電性パターニング材料を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に前記導電性パターニング材料を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
【0124】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図3を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図3において、タッチパネル10は、透明基板11の表面を一様に覆うように導電性パターニング材料12が配されており、透明基板11の端部の導電性パターニング材料12上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子18が形成されている。
なお、図3において、13は、シールド電極となる導電性パターニング材料を示し、14及び17は、保護膜を示し、15は、中間保護膜を示し、16は、グレア防止膜を示す。
導電性パターニング材料12上の任意の点を指でタッチ等すると、前記導電性パターニング材料12は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子18と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0125】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの別の一例について図4を参照して説明する。
図4において、タッチパネル20は、透明基板21の表面を覆うように配された導電性パターニング材料22及び導電性パターニング材料23と、該導電性パターニング材料22と該導電性パターニング材料23とを絶縁する絶縁層24と、指等の接触対象と導電性パターニング材料22又は導電性パターニング材料23との間に静電容量を生じる絶縁カバー層25と、からなり、指等の接触対象に対して位置検知する。構造によっては、導電性パターニング材料22及び導電性パターニング材料23を一体として形成することもでき、また、絶縁層24又は絶縁カバー層25を空気層として形成してもよい。
絶縁カバー層25を指等でタッチすると、指等と導電性パターニング材料22又は導電性パターニング材料23との間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0126】
前記投影型静電容量方式タッチパネルの一例について図5を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図5は、投影型静電容量方式タッチパネルとしてのタッチパネル20を、導電性パターニング材料22と導電性パターニング材料23とを平面から視た配置を通じて模式的に説明した図である。
タッチパネル20は、X軸方向の位置を検出可能とする複数の導電性パターニング材料22と、Y軸方向の複数の導電性パターニング材料23とが、外部端子に接続可能に配されている。導電性パターニング材料22と導電性パターニング材料23とは、指先等の接触対象に対し複数接触して、接触情報が多点で入力されることを可能とされる。
このタッチパネル20上の任意の点を指でタッチ等すると、X軸方向及びY軸方向の座標が位置精度よく特定される。
なお、透明基板、保護層等のその他の構造としては、前記表面型静電容量方式タッチパネルの構造を適宜選択して適用することができる。また、タッチパネル20において、複数の導電性パターニング材料22と、複数の導電性パターニング材料23とによる導電性パターニング材料のパターンの例を示したが、その形状、配置等としては、これらに限られない。
【0127】
前記抵抗膜式タッチパネルの一例について、図6を参照して説明するが、本発明のタッチパネルはこれに限られるものではない。
図6において、タッチパネル30は、導電性パターニング材料32が配された透明基板31と、該導電性パターニング材料32上に複数配されたスペーサ36と、空気層34を介して、導電性パターニング材料32と接触可能な導電性パターニング材料33と、該導電性パターニング材料33上に配される透明フィルム35とが支持されて構成される。
このタッチパネル30に対して、透明フィルム35側からタッチすると、透明フィルム35が押圧され、押し込まれた導電性パターニング材料32と導電性パターニング材料33とが接触し、この位置での電位変化を図示しない外部検知回路で検出することで、タッチした点の座標が特定される。
【0128】
<用途>
本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電性パターニング材料を有するため、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低いため、銀行のATM、自動販売機、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、携帯ゲーム機、複写機、カーナビゲーション、マルチメディアステーション、案内板等の各種電子デバイスに好適に利用可能である。
【実施例】
【0129】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0130】
(調製例1:銀ナノワイヤー水分散液1の調製)
−添加剤の調製−
予め、下記に示す方法で、添加剤A、添加剤G、及び添加剤Hを調製した。
[添加剤Aの調製]
硝酸銀粉末2.1gを純水に溶解し、次いで1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した後、全量が200mLになるように純水を添加した。
[添加剤Gの調製]
グルコース粉末1.2gを200mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
[添加剤Hの調製]
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを87.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0131】
−銀ナノワイヤー水分散液の調製−
次に、以下に示す方法で銀ナノワイヤー水分散液1を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加剤H 87.5mL及び添加剤G 200mLを添加した。次いで、この液に、添加剤Aを0.3mL/分間で合計200mL滴下した。添加剤Aを滴下した後、10分間撹拌し、更に添加剤H 87.5mLを一気に添加した。次いで、5℃/分間で内温70℃まで昇温し、5時間撹拌を続け、銀ナノワイヤーアンモニア分散液を得た。
得られた銀ナノワイヤーアンモニア分散液を、限外濾過モジュール(限外濾過モジュールSIP1013、分画分子量6,000;旭化成株式会社製)を用いて限外濾過し、濃縮した。50mLまで濃縮した後、前記限外濾過モジュール内に950mLの純水を入れ洗浄した。この洗浄の操作を合計10回行い、銀ナノワイヤー水分散液1を得た。
この銀ナノワイヤー水分散液1中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さを以下の方法で測定したところ、22nmであった。
【0132】
<銀ナノワイヤーの平均短軸長さの測定>
銀ナノワイヤー水分散液中の銀ナノワイヤーを透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM−2000FX;日本電子株式会社製)で観察して短軸長さを測定し、300個の銀ナノワイヤーの短軸長さの平均値を求め、これを銀ナノワイヤーの平均短軸長さとした。
【0133】
(調製例2:銀ナノワイヤー水分散液2の調製)
調製例1において、銀ナノワイヤーアンモニア分散液を得る際に、内温を、5℃/分間で70℃まで昇温したことに変えて、5℃/分間で75℃まで昇温したこと以外は、調製例1と同様の方法で銀ナノワイヤー水分散液2を調製した。
銀ナノワイヤー水分散液2中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さを、調製例1と同様の方法で測定したところ、30nmであった。
【0134】
(調製例3:銀ナノワイヤー水分散液3の調製)
調製例1において、銀ナノワイヤーアンモニア分散液を得る際に、内温を、5℃/分間で70℃まで昇温したことに変えて、5℃/分間で80℃まで昇温したこと以外は、調製例1と同様の方法で銀ナノワイヤー水分散液3を調製した。
銀ナノワイヤー水分散液3中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さを、調製例1と同様の方法で測定したところ、40nmであった。
【0135】
(調製例4:銀ナノワイヤー水分散液4の調製)
調製例1において、銀ナノワイヤーアンモニア分散液を得る際に、内温を、5℃/分間で70℃まで昇温したことに変えて、5℃/分間で85℃まで昇温したこと以外は、調製例1と同様の方法で銀ナノワイヤー水分散液4を調製した。
銀ナノワイヤー水分散液4中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さを、調製例1と同様の方法で測定したところ、50nmであった。
【0136】
(調製例5:銀ナノワイヤー水分散液5の調製)
調製例1において、添加剤Hの調製の際に、HTAB粉末0.5gを87.5mLの純水で溶解したことに変えて、HTAB粉末0.1gを87.5mLの純水で溶解したこと以外は、調製例1と同様の方法で銀ナノワイヤー水分散液5を調製した。
銀ナノワイヤー水分散液5中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さを、調製例1と同様の方法で測定したところ、100nmであった。
【0137】
(合成例1:バインダー(A−1)の合成)
共重合体を構成するモノマー成分として、メタクリル酸(MAA)7.79g及びベンジルメタクリレート(BzMA)37.21gを使用し、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを使用し、前記モノマー成分と前記ラジカル重合開始剤とを、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55.00g中で重合反応させることにより、下記構造式(1)で表されるバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
バインダー(A−1)の分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は、30,000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.21であった。
【化3】

【0138】
(実施例1:導電性パターニング材料1の作製)
<クッション層の形成>
転写基材としての平均厚み30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面上に、下記組成のクッション層用塗布液を塗布し、乾燥させて、平均厚み10μmのクッション層を形成した。
[クッション層用塗布液の組成]
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(*1) ・・・6.0質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(*2) ・・・14.0質量部
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ〕フェニル〕プロパン(*3)
・・・9.0質量部
・フッ素系界面活性剤(*4) ・・・0.5質量部
・メタノール ・・・10.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート ・・・5.0質量部
・メチルエチルケトン ・・・55.5質量部
(*1):メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体[共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、重量平均分子量=10万、Tg≒70℃]
(*2):スチレン/アクリル酸共重合体[共重合組成比(モル比)=65/35、重量平均分子量=1万、Tg≒100℃]
(*3):BPE−500(新中村化学工業株式会社製)
(*4):メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業株式会社製)
【0139】
<導電層の作製>
−銀ナノワイヤーのMFG分散液1の調製−
銀ナノワイヤー水分散液1に、ポリビニルピロリドン(K−30;和光純薬工業株式会社製)及び1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)を添加し、遠心分離した後、デカンテーションにて上澄みの水を除去した。次いで、MFGを添加して再分散させた。この遠心分離及び再分散の操作を合計3回行い、銀ナノワイヤーのMFG分散液1を得た。なお、3回目の再分散の操作において、MFGの添加量は、銀の含有量が、MFG分散液中に1質量%となるように調節した。
【0140】
−導電性パターニング材料の塗布液の調製−
下記に示す組成を攪拌し、導電層用の塗布液を調製した。
[導電層用の塗布液の組成]
・合成例1のバインダー(A−1) ・・・0.241質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(*5) ・・・0.252質量部
・2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(アルキルフェノン系光重合開始剤、*6)
・・・0.0252質量部
・2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(架橋剤、*7) ・・・0.0237質量部
・UV反応型フッ素系表面改質剤(*8) ・・・0.0003質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
・・・0.9611質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール(MFG) ・・・41.7質量部
・銀ナノワイヤーのMFG分散液1 ・・・54.1質量部
・下記表1に示すシリカ微粒子2(平均粒径:25nm) ・・・2.705質量部
(*5)KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)
(*6)IRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
(*7)EHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)
(*8)メガファックF781F(大日本インキ化学工業株式会社製)
【0141】
−導電層の形成−
クッション層を形成したPETフィルムのクッション層上に、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように前記導電用の塗布液を塗布し、乾燥させて、平均厚み0.08μmの導電層を形成した。これにより、実施例1の導電性パターニング材料1を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、蛍光X線分析装置(SEA1100;SII社製)により測定して確認した。
また、導電層の平均厚みは、ミクロトーム切削で前記導電性パターニング材料の断面を出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して測定して確認した。
【0142】
(実施例2:導電性パターニング材料2の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料2を作製した。
【0143】
(実施例3:導電性パターニング材料3の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料3を作製した。
【0144】
(実施例4:導電性パターニング材料4の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料4を作製した。
【0145】
(実施例5:導電性パターニング材料5の作製)
実施例2において、銀ナノワイヤー水分散液1に代えて、銀ナノワイヤー水分散液2を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で導電性パターニング材料5を作製した。
【0146】
(実施例6:導電性パターニング材料6の作製)
実施例2において、銀ナノワイヤー水分散液1に代えて、銀ナノワイヤー水分散液3を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で導電性パターニング材料6を作製した。
【0147】
(実施例7:導電性パターニング材料7の作製)
実施例3において、銀ナノワイヤー水分散液1に代えて、銀ナノワイヤー水分散液4を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で導電性パターニング材料7を作製した。
【0148】
(実施例8:導電性パターニング材料8の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.01g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料8を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0149】
(実施例9:導電性パターニング材料9の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.02g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料9を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0150】
(実施例10:導電性パターニング材料10の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.05g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料10を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0151】
(実施例11:導電性パターニング材料11の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.07g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料11を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0152】
(実施例12:導電性パターニング材料12の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層の平均厚みが0.08μmとなるように塗布したことに変えて、導電層の平均厚みが0.01μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料12を作製した。
なお、導電層の平均厚みは、実施例1と同様の方法で確認した。
【0153】
(実施例13:導電性パターニング材料13の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層の平均厚みが0.08μmとなるように塗布したことに変えて、導電層の平均厚みが0.15μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料13を作製した。
なお、導電層の平均厚みは、実施例1と同様の方法で確認した。
【0154】
(実施例14:導電性パターニング材料14の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層の平均厚みが0.08μmとなるように塗布したことに変えて、導電層の平均厚みが0.3μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料14を作製した。
なお、導電層の平均厚みは、実施例1と同様の方法で確認した。
【0155】
(比較例1:導電性パターニング材料15の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子6を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料15を作製した。
【0156】
(比較例2:導電性パターニング材料16の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子1を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料16を作製した。
【0157】
(比較例3:導電性パターニング材料17の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中にシリカ微粒子を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料17を作製し、実施例1と同様の方法でパターニング処理を施した。
【0158】
(比較例4:導電性パターニング材料18の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.08g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料18を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0159】
(比較例5:導電性パターニング材料19の作製)
実施例1において、導電層の形成時に、導電性パターニング材料の塗布液を、導電層における銀ナノワイヤーの含有量が0.03g/mとなるように塗布したことに変えて、銀ナノワイヤーの含有量が0.005g/mとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料19を作製した。
なお、導電層における銀ナノワイヤーの含有量は、実施例1と同様の方法で確認した。
【0160】
(比較例6:導電性パターニング材料20の作製)
実施例1において、導電性パターニング材料の塗布液中のシリカ微粒子2に代えて、下記表1に示すシリカ微粒子5を用い、銀ナノワイヤー水分散液1に代えて、銀ナノワイヤー水分散液5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性パターニング材料20を作製した。
【0161】
<パターニング処理>
実施例1〜14及び比較例1〜6で作製した導電性パターニング材料1〜20について、下記に示す方法でラインアンドスペース(以下、「L/S」と称することがある。)が100μm/100μmのストライプ状パターンを作製した。
各導電性パターニング材料上のマスク上から、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)で露光した。露光後の各導電性パターニング材料を、下記に示す方法で調製した現像液で30秒間シャワー現像を行った。シャワー圧は、0.04MPa、ストライプパターンが出現するまでの時間は、15秒間であった。次いで、純水のシャワーでリンスした。
[現像液の調製]
炭酸水素ナトリウム 5g及び炭酸ナトリウム 2.5gを、純水5,000gに溶解した。
【0162】
<評価>
パターニング処理後の導電性パターニング材料1〜20の導電層について、下記に示す方法で、全光透過率、表面抵抗率、100μm線幅の導電率、鉛筆硬度、及びヘイズ率を測定した。結果を下記表2に示す。
【0163】
−全光透過率及びヘイズ率の測定−
全光透過率(%)及びヘイズ率(%)は、積分球式光線透過率測定装置(ヘイズガードプラス;ガードナー社製)を用いて測定した。
なお、ヘイズ率は、2%以下が許容範囲である。また、全光透過率は、80%以上が好ましい。
【0164】
−表面抵抗率の測定−
表面抵抗率(Ω/□)は、表面抵抗計(Loresta−GP MCP−T600;三菱化学株式会社製)を用いて測定した。
なお、表面抵抗率は、300Ω/□以下が許容範囲である。
【0165】
−100μm線幅の導電率−
各導電性パターニング材料の100μm線幅の導電率は、抵抗率の逆数で表される。そのため、前記表面抵抗率の測定で得られた、シリカ微粒子を添加していない比較例3の表面抵抗率の逆数を基準値とし、この基準値を100としたときの、該基準値に対する相対値を算出し、100μm線幅の導電率を比較した。
なお、導電率は、相対値65以上が許容範囲である。
【0166】
−鉛筆硬度−
鉛筆硬度は、JIS K5400に準拠し、斜め45度に固定した鉛筆の真上から1kgの荷重をかけ引っ掻き試験を行うことで測定した。
なお、鉛筆硬度は、H以上が許容範囲である。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
実施例1〜14の結果より、本発明の導電性パターニング材料は、パターニング性が良好であり、表面硬度が高く、ヘイズ率及び表面抵抗率が低く、高い透明性及び導電性を有することがわかった。
一方、比較例1〜6は、表面硬度、ヘイズ率、表面抵抗率、透明度、及び導電性の少なくともいずれかが、タッチパネル等に使用できないレベルのものであった。比較例5については、導電層における金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m以下であるため、導電性が検出限界以下であり測定することができなかった。
【0170】
(実施例17)
<タッチパネルの作製>
実施例3の導電性パターニング材料を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、表面硬度が高いため耐擦傷性に優れ、傷がつきにくかった。また、透明性が高いため視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも1つによる、文字等の入力又は画面操作に対し、応答性に優れるタッチパネルを製作できた。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の導電性パターニング材料は、表面硬度が高く耐擦傷性に優れ、パターニング性が良好であり、高い透明性及び導電性を有し、ヘイズ率及び表面抵抗率が低いため、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。
また、本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電性パターニング材料を有するため、銀行のATM、自動販売機、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、携帯ゲーム機、複写機、カーナビゲーション、マルチメディアステーション、案内板等の各種電子デバイスに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0172】
1 転写基材
2 クッション層
3 導電層
6 導電性パターニング材料
8 透明基板
10 タッチパネル
11 透明基板
12 導電性パターニング材料
13 導電性パターニング材料
14 保護膜
15 中間保護膜
16 グレア防止膜
17 保護膜
18 電極端子
20 タッチパネル
21 透明基板
22 導電性パターニング材料
23 導電性パターニング材料
24 絶縁層
25 絶縁カバー層
30 タッチパネル
31 透明基板
32 導電性パターニング材料
33 導電性パターニング材料
34 空気層
35 透明フィルム
36 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均短軸長さ50nm以下の金属ナノワイヤー及びシリカ微粒子を含有する導電層を有する導電性パターニング材料であって、
前記シリカ微粒子の平均粒径Bnmと、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さAnmとの比(B/A)が、0.9以上5以下であり、
前記導電層における、前記金属ナノワイヤーの含有量が0.01g/m〜0.07g/mであり、表面抵抗率が300Ω/□以下であり、ヘイズ率が2%以下であることを特徴とする導電性パターニング材料。
【請求項2】
比(B/A)が1.1以上4.5以下である請求項1に記載の導電性パターニング材料。
【請求項3】
シリカ微粒子の平均粒径が60nm以下である請求項1から2のいずれかに記載の導電性パターニング材料。
【請求項4】
シリカ微粒子の平均粒径の下限値が(金属ナノワイヤーの平均短軸長さ−2)nmである請求項1から3のいずれかに記載の導電性パターニング材料。
【請求項5】
導電層の平均厚みが0.01μm〜0.3μmである請求項1から4のいずれかに記載の導電性パターニング材料。
【請求項6】
導電層の透過率が80%以上であり、かつ導電層の表面抵抗率が10Ω/□〜150Ω/□である請求項1から5のいずれかに記載の導電性パターニング材料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の導電性パターニング材料を有することを特徴とするタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−209232(P2012−209232A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76132(P2011−76132)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】