説明

導電性ペースト、その製造方法及び用途

【課題】従来のものよりもアスペクト比が大きく、分散性に優れ、より少ない添加量で導電性、熱伝導性を付与できる気相法炭素繊維を用いた導電性ペースト及びその用途を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物に、気相法炭素繊維を含む少なくとも1種の導電性粒子が混合されている導電性ペーストであって、気相法炭素繊維2000℃以上で黒鉛化されものであり、その平均繊維径が80〜500nm、アスペクト比が100〜200で、平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の65%(本数基準)以上が含まれ、嵩密度が0.015g/cm3以下であり、嵩密度を0.8g/cm3に圧縮したときの比抵抗が0.015Ωcm以下である導電性ペースト、その製造方法、及びその導電性ペーストを用いて形成された導電層を有する、固体電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ並びに電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子として、繊維長が長く、アスペクト比の大きい微細な気相法炭素繊維を用いることにより、樹脂等のマトリックス中に分散させペーストとしたときに、これまでの導電性粒子に比べて少ない使用量で同等の導電性を示し、コンデンサ等の電子部品の電極形成や電気回路形成に好適な材料となる導電性ペースト、その製造方法、その導電性ペーストで形成される導電層を用いた電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、積層コンデンサ等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の分野では、金属粉をはじめとする導電性粒子をフィラーとして樹脂等のマトリックス中に分散しペースト状とし、これら導電性ペーストを電気回路や電極の形成に利用することが一般的に行われている。銀粉や銅粉はその中でも最も代表的な導電性ペースト用導電性粒子であるが、導電性ペーストより形成される導電層の抵抗を下げるためには、導電性物質をマトリックス等の樹脂中に高濃度に充填(高充填)しなければならない。しかし、樹脂中に従来の金属粉等の導電性粒子を高充填すると、構成される導電性ペーストの導電性粒子フィラー沈降に伴う導電性ペーストの不均一化及び形成される導電層の厚膜化等の問題が生じてくる。導電性粒子フィラー沈降に伴う導電性ペーストの不均一化は、ペースト塗膜時の作業性や生産性悪化の原因となり、塗膜後の導電層の厚膜化は、各種電子部品の小型化、寸法精度向上の妨げとなる。
【0003】
上記、問題点を解決するために特開平5−242725号公報(特許文献1)、特開平6−223615号公報(特許文献2)、特開平10−134637号公報(特許文献3)等に開示されているように、導電性粒子の小粒径化や、各種導電性粒子の組み合わせや添加剤の検討がなされてきた。しかしながら、抵抗、塗膜厚さ、信頼性等を同時に満足するものは得られていない。
【0004】
特開2004−168966号公報(特許文献4)では、導電性粒子に金属粉とアスペクト比600程度のカーボンナノチューブを用いることにより、上記問題を改善する試みがなされている。しかしながら、カーボンナノチューブは繊維径が10nm程度と細いため、ペースト作製時の樹脂や他の導電性粒子等との混合時に繊維が破断しやすく、導電層の信頼性にかけ、また混合法にも制限がある。また、カーボンナノチューブの場合、その結晶性を高め、導電性や安定性を高めるためや合成時の不純物を除去するために、2000℃以上の高温で処理して黒鉛化を進めようとすると、繊維径が細すぎるために焼失し、非常に低収率となる問題があり、したがって、高温処理ができず、得られる導電性ペーストの安定性、抵抗等も用途によっては不十分であった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−242725号公報
【特許文献2】特開平6−223615号公報
【特許文献3】特開平10−134637号公報
【特許文献4】特開2004−168966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記導電性ペーストの課題を解決し、高導電性、高安定性で、取り扱い性、生産性に優れた導電性ペーストを提供することにある。さらに本発明はこれら導電性ペーストを導電層とした低抵抗で信頼性、安定性に優れた各種電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、導電性粒子として特定の繊維径を有し、繊維長が長く、高アスペクト比、高結晶性の気相法炭素繊維を用いることにより、高導電性、高安定性で、取り扱い性、生産性に優れた導電性ペーストを得ることができることを見出した。さらに本発明者らは、この導電性ペーストを導電層とすることにより、低抵抗で安定性、信頼性の優れた電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等の各種電子部品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の導電性ペースト、その製造方法、それを用いた電子部品等を提供するものである。
[1]少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物に、気相法炭素繊維が少なくとも1種の導電性粒子として混合されている導電性ペーストであって、気相法炭素繊維の平均繊維径が80〜500nm、アスペクト比が100〜200であり、平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の65%(本数基準)以上が含まれ、嵩密度が0.015g/cm3以下であることを特徴とする導電性ペースト。
[2]気相法炭素繊維が2000℃以上で黒鉛化されたものであり、かつ嵩密度0.8g/cm3に圧縮したときの比抵抗が0.015Ωcm以下である前記1に記載の導電性ペースト。
[3]気相法炭素繊維の表面が酸化処理されている前記1または2に記載の導電性ペースト。
[4]導電性粒子として金属粉を含む前記1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[5]導電性粒子中の金属粉と気相法炭素繊維との質量比が99〜60:1〜40の範囲である前記4に記載の導電性ペースト。
[6]金属粉が、金、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケル及びそれらの合金粉あるいは共晶粉から選択される少なくとも1種である前記4または5に記載の導電性ペースト。
[7]導電性粒子として平均粒径5μm以下のカーボン粒子を含む前記1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[8]導電性粒子中のカーボン粒子と気相法炭素繊維との質量比が95〜60:5〜40の範囲である前記7に記載の導電性ペースト。
[9]少なくとも1種の樹脂が熱可塑性樹脂である前記1〜8のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[10]熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリカーボネート、イミド系樹脂、アミド系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコン系樹脂から選択される少なくとも1種である前記9に記載の導電性ペースト。
[11]熱可塑性樹脂がフッ素系樹脂である前記9に記載の導電性ペースト。
[12]少なくとも1種の樹脂が熱硬化性樹脂である前記1〜11のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[13]熱硬化性樹脂が、アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂及びウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種である前記12に記載の導電性ペースト。
[14]少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物に気相法炭素繊維を予め高粘度で混合分散させた後、少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物及び/または該液状物と他の導電性微粉との混合物をさらに加え混合分散することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
[15]前記1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて形成された導電層を有することを特徴とする電子部品。
[16]弁作用金属を用いた陽極と、前記1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストから形成された陰極とを有することを特徴とする固体電解コンデンサ。
[17]金属製集電体上にカーボン材料からなる分極性材料を形成させた電気二重層コンデンサ用分極性電極シートにおいて、分極性材料と金属集電体間に前記1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストで形成した導電層を有することを特徴とする電気二重層コンデンサ用分極性電極シート。
[18]一対の分極性電極シートの間にイオン伝導性電解質材料が配置された電気二重層コンデンサにおいて、分極性電極シートの少なくともいずれか一方に前記17に記載の分極性電極シートが用いられていることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平均繊維径80〜500nm、アスペクト比100〜200の繊維長の長い気相法炭素繊維を溶剤、樹脂、場合によってはさらに金属粉、分散剤等を添加することにより、高導電性で高耐久性の導電性ペーストを得ることができる。
本発明の導電性ペーストを用いてアノード導電層を形成することにより、高周波数特性、安定性に優れた固体電解コンデンサが得られる。
本発明の導電性ペーストを分極性電極と金属箔集電体の導電性接着層に用いることにより、高負荷特性でサイクル性の良好な電気二重層コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)導電性ペースト
本発明の導電性ペーストはマトリックスとなる樹脂とフィラーとなる導電性粒子と少なくとも1種以上の溶剤で構成される。また、これらに第3成分として分散剤やカップリング剤等の各種添加剤が添加されてもよい。
【0011】
本発明の導電性ペーストは導電性粒子として気相法炭素繊維を含むことを特徴とする。本発明で使用する気相法炭素繊維は、その平均繊維径が80〜500nm、好ましくは80〜140nm、さらに好ましくは80〜110nmで、繊維径のバラツキが平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の65%(本数基準)以上、好ましくは70%(本数基準)以上、さらに好ましくは75%以上(本数基準)含まれるものである。この繊維径のバラツキの定義は、例えば平均繊維径が100nmの場合、80〜120nmの繊維径を有する炭素繊維の本数が全体の繊維の本数の65%以上であることを示す。本発明で使用する気相法炭素繊維は、この特性を有した上で、平均のアスペクト比が100〜200の範囲にあるものである。
【0012】
本発明で使用する気相法炭素繊維は、嵩密度が0.015g/cm3以下であることが望ましい。嵩密度が0.015g/cm3以下の炭素繊維によれば、ペースト作製時の樹脂との複合において、2質量%程度の添加で電気伝導性が向上するが、0.015g/cm3を超える炭素繊維では電気伝導性が向上しないことがある。ここで嵩密度は、製造した炭素繊維を1000℃にて15分間アルゴン雰囲気中で加熱した後、ミキサー(ナショナル製MX−X62)にて1分間解砕し、メスシリンダーに入れ、震動機(ヤマト製試験管タッチミキサーMT−31)で1分間震動させた後に体積を測定し、それから算出した値である。
【0013】
本発明で使用する気相法炭素繊維は、繊維を嵩密度0.8g/cm3に圧密したときの圧密体について測定した比抵抗が0.015Ωcm以下であることが望ましい。比抵抗が0.015Ωcm以下の炭素繊維では、ペースト作製時の樹脂との複合において、2質量%程度の添加で電気伝導性が向上するが、0.015Ωcmを超える炭素繊維では電気伝導性が向上しないことがある。
【0014】
本発明で使用する気相法炭素繊維は、繊維間でネットワークを形成しやすく、また分散性に優れるので、樹脂等のマトリックス中に少量添加しただけで導電性が向上する。
【0015】
本発明で使用する炭素繊維を圧密体にしたときの比抵抗は、強固な繊維ネットワークのため低い値を示す。また、本発明の気相法炭素繊維は嵩密度が低く、繊維の毛玉が強固ではなく、ペースト作成時に樹脂等と混合する場合の分散性に優れている。
【0016】
上記の特性を有する気相法炭素繊維は、触媒である遷移金属化合物の存在下、炭素源を熱分解する方法において、炭素源及び遷移金属化合物を気化した状態で反応器の内壁に向けて噴射し熱分解反応に付すことにより製造することができる。
【0017】
炭素繊維の原料となる炭素源(有機化合物)は、気化するものならいずれも使用可能であるが、より低温で気化するものが望ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖状の炭化水素類、シクロヘキサン等の環式炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、揮発油、灯油等を使用できる。これらの中でも芳香族化合物が望ましく、ベンゼンが最も望ましい。これらの炭素源は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
触媒となる遷移金属化合物としては、第4〜10族の遷移金属を含む有機金属化合物や無機化合物が適する。中でもFe、Ni、Coなどの遷移金属を有する有機金属化合物が好ましい。
【0019】
本発明では、気化した状態で反応させるため、蒸気圧の高いもの、具体的には150℃での蒸気圧が133Pa(1mmHg)以上のものを用いる。具体的には、フェロセン、ニッケロセン等が挙げられる。
【0020】
原料中の遷移金属化合物の濃度を調整して繊維形成に必要な触媒粒子濃度を制御することにより、生成する繊維の径、長さ、粒子の含有量を制御することが可能である。繊維径80nm以上の繊維を製造するためには、フェロセン濃度で炭素源の1〜5質量%とすることが好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。これらの濃度を超えて触媒を使用すると、繊維径が細くなりすぎ樹脂等に練りこみにくくなる。また、これらの濃度未満では、粒子状の炭素が大量に生成してしまう。
【0021】
また、原料に硫黄源を添加することにより生産性を更に向上させることが可能である。硫黄源としては、気化するものならいずれも使用可能であるが、蒸気圧の高いものが望ましく、50℃での蒸気圧が10mmHg以上のものが望ましい。例えば、チオフェン等の有機硫黄化合物、硫化水素等の無機硫黄化合物が挙げられ、特にチオフェンが望ましい。これらの硫黄源は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
上記の炭素源、遷移金属化合物及び任意成分としての硫黄源を気化した状態で反応器に送り反応させる。この際、炭素源、遷移金属化合物及び硫黄源をそれぞれ個別に気化した後、反応器に導入する前に混合することも可能であるが、好ましくは、炭素源、遷移金属化合物及び硫黄源からなる原料反応液を調製し、これを気化して反応器に導入する。
【0023】
原料ガスは、反応器内壁に向けて噴射する。これにより、加熱効率が良く原料の熱分解が促進され収率が向上し、またバラツキの小さな繊維径を有する炭素繊維を得ることができる。
【0024】
本発明で使用する炭素繊維の製造方法のフローを図1に示す。
原料反応液(1)は、送液ポンプ(図示せず)により、気化器(3)に導入され、原料ガスとされる。原料ガスの組成を安定させるためには原料液の全量を気化することが望ましい。気化器は原料が完全に蒸発するよう、また原料液が分解しない温度に加熱する。好ましくは200〜700℃、更に好ましくは350〜550℃である。原料液をスプレーノズルにより気化器壁に吹き付けるようにする原料の気化が効率的である。気化器内へは原料ガスの供給速度を調整するためにキャリアガス(2a)を導入できるが、キャリアガスの流量はできるだけ少ない方が気化器のヒーターにかかる負担が少なく好ましい。
【0025】
気化された原料ガスは、加熱反応する前にキャリアガス(2b)と混合する。キャリアガスは、水素ガスをはじめとする還元性のガスを含んでいることが好ましく、遷移金属の触媒としての活性発現、維持のために原料及び触媒を熱分解帯域に供給する際に用いる。キャリアガスの量は炭素源である有機化合物1.0モルに対して1〜100モルが適当である。熱分解帯域(反応器)(5)に導入される前に、原料ガスをいかに均一にするかが、分散性の良い炭素繊維を製造するポイントである。均一性を向上させるためには、気化器で原料液を完全に気化すること、及び原料ガスとキャリアガスとの混合を十分に行うことが重要である。気化の面から炭素源、遷移金属化合物及び硫黄化合物の選定、混合の面からスタティックミキサ(STP)(4)を用いる等の措置を行うことが望ましい。
【0026】
反応器(5)内へ原料ガスを導入することにより、原料ガスが熱分解され、炭素繊維が生成する。反応器内の温度は800〜1300℃であり、好ましくは900〜1250℃である。反応器は1300℃の反応熱に耐える材質、例えばアルミナ、ジルコニア、マグネシア、窒化珪素、炭化珪素などからなるものを用いることができる。反応器としては管状のものが好ましい。管状反応器(反応管)の加熱は、管の外側にヒーターを設置して行う。原料の滞留時間は、原料が充分に分解するまで長くすることで収率が向上する。具体的には1250℃で2〜10秒、好ましくは4〜6秒が望ましい。
【0027】
反応により得られた炭素繊維は、そのままでも使用できるが、800〜2000℃程度で加熱して不純物を除去したり、2000℃以上で加熱して結晶性を向上させ、黒鉛化させることもできる。本発明に用いる場合、2000℃以上で処理することにより、黒鉛化した気相法炭素繊維を用いた方が、高導電性となり、また不純物も少なく、安定性も増すため好ましい。
【0028】
また、炭素繊維のマトリックスに対する濡れ性を向上させて、繊維とマトリックスとの分散性を向上させ、かつ界面強度を強化するために、炭素繊維の表面を改質することができる。表面改質としては、表面酸化が好ましい。炭素繊維の表面酸化は、例えば酸化性ガスを共存させて加熱したり、酸化性液体に浸漬しあるいはその状態で加熱するなどの方法により行うことができるが、空気中で300〜800℃で加熱する方法が簡便であることから望ましい。
【0029】
本発明においては、導電性ペーストに用いることのできる導電性粒子としては上記気相法炭素繊維を単独で用いてもよいが、他の導電性粒子を添加してもよい。上記気相法炭素繊維は比較的少ない添加量で十分に分散し、高導電性を発現することができるが、嵩高いため高添加量では分散しにくくなる。金属に近い導電性を要求される導電性ペーストの用途によっては、導電性粒子を高濃度で用いる必要がある。その場合、気相法炭素繊維のみでは不十分であり、他の嵩の低い塊状や球状の導電性粒子を用いることができる。このように気相法炭素繊維と塊状、球状の導電性粒子との併用は塊状・球状粒子を高濃度で用いる場合の沈降も抑えることができ、両者の特徴が効果的に発揮されるため好ましい。
【0030】
本発明において気相法炭素繊維と併用できる塊状、球状の導電性粒子は特に限定されるものではないが、例えばカーボン粒子、金属粒子等が使用できる。カーボン粒子の例としてはカーボンブラック、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子等が挙げられる。また金属粒子としては、導電性ペーストとして一般的に使用されている金、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケル、及びこれらの合金、メッキ、複合金属等の粒子が使用できる。これらカーボン粒子、金属粒子は数種を併用して用いることもできる。
【0031】
これら導電性粒子の平均粒径は、導電性ペーストの特性だけでなく、分散、粘度、作業性を考慮すると、0.2〜12μmが好ましく、さらには、1〜10μmが好ましく、1.5〜8μmがより好ましい。平均粒径が0.2μm未満であると導電性樹脂ペーストが凝集しやすくなり、12μmを超えると塗膜の薄膜化を妨げる傾向にある。導電性粒子としてカーボン粒子を使用する場合は、平均粒径5μm以下の粒子を使用するのが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ散乱型粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0032】
本発明においてはペーストの取り扱い性、できるだけ多くの導電性粒子を添加して、ペーストの導電性を高くするという観点から考えると、気相法炭素繊維と他の塊状、球状の導電性粒子とを併用する方が好ましい。この場合の比率は特に限定されないが、例えば、金属粒子と気相法炭素繊維とを併用する場合の質量比は99〜60:1〜40が好ましく、94〜80:6〜20がさらに好ましい。また、カーボン粒子と気相法炭素繊維とを併用する場合の質量比は95〜60:5〜40が好ましい。気相法炭素繊維が少なすぎると、ペーストを塗膜にした際の導電性が不十分であり、気相法炭素繊維が多すぎると気相法炭素繊維と導電性粒子添加量を増やすことができず、結果として塗膜の導電性が低下する。
【0033】
本発明の導電性ペーストに用いる樹脂は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリカーボネート、イミド系樹脂、アミド系樹脂、フッ素系樹脂及び/またはシリコン系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂及び/またはウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0034】
本発明の気相法炭素繊維を含む導電性ペーストの製造方法は特に限定されない。但し、気相法炭素繊維は分散しにくいため、気相法炭素繊維を予め少なくとも一種の樹脂及び/または少なくとも一種の溶剤からなる液状物に高粘度、例えば500〜50000mPas・sec、好ましくは1000〜20000mPas・secで混合分散させた後、さらに少なくとも一種の樹脂及び/または少なくとも一種の溶剤からなる液状物を混合分散することにより、気相法繊維が高度に分散した導電性ペーストを得ることができる。導電性粒子として気相法炭素繊維以外の他の導電性粒子を併用する場合は、気相法炭素繊維を予め少なくとも一種の樹脂及び/または少なくとも一種の溶剤からなる液状物に高粘度で混合分散させた後、さらに少なくとも一種の樹脂及び/または少なくとも一種の溶剤からなる液状物及び/または該液状物と他の導電性微粉との混合物をさらに加え混合分散することにより、気相法炭素繊維と他の導電性微粒子が高度に分散した導電性ペーストを得ることができる。
【0035】
分散、混合の方法は特に限定されないが、例えば、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ディスパー等で混練分散することにより製造することができる。
【0036】
本発明の導電性ペーストを製造する際に、気相法炭素繊維及び/または他の導電性粒子の分散性を向上させるために分散剤やカップリング剤を添加使用してもよい。
【0037】
分散剤は特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸等の高炭素数飽和脂肪酸及びその金属塩、オレイン酸、リノレン酸等の高炭素数不飽和脂肪酸及びその金属塩が挙げられる。これら分散剤の配合量は、樹脂100質量部に対して一般に1〜200質量部であり、1〜100質量部が好ましい。分散剤の配合量が0.1質量部未満の場合は、気相法炭素繊維及び/または他の導電性粒子の分散性が著しく低下する傾向があり、また、200質量部を超えると、塗膜の導電性が低下し、基材との密着性が低下する傾向にある。また、場合によってはコンデンサ等、使用する電子部品の安定性を損なう場合もある。
【0038】
カップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が使用できる。これらカップリング剤の配合量としては、樹脂100質量部に対して、30質量部以下の添加量で添加することが好ましい。添加量が多すぎると、分散剤同様、固体電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ等、使用する電子部品の安定性を損なう場合がある。
【0039】
本発明の導電性ペーストに使用される溶剤特に限定されず、水及び有機溶剤が用いられる。有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノメチルアセテート、γ―ブチルラクトン等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、導電性樹脂組成物作成時の樹脂の溶解または導電性樹脂組成物の粘度調整に用いられる。これらの溶剤は単独、または2種以上組み合わせた溶剤として用いることができる。溶剤はペーストの粘度を制御する目的で使用するので特に限定されないが、使用量としては樹脂100質量部に対して、50〜5000質量部、好ましくは100〜3000質量部である。
【0040】
本発明の導電性ペーストを用いて例えば、塗布、浸漬等により膜形成し、加熱等で乾燥して薄膜形成性及び導電性に優れる導電性膜を得ることができる。本発明の電子部品は、上記のような本発明の導電性ペーストを用いて形成した導電層を有するもので、例えば固体電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等の小型薄膜化、低内部抵抗、高周波数特性に優れた特徴を有する。本発明の電子部品としては、電極材料として本発明の導電性ペーストを用いたアルミ固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ、ニオブ固体電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ等、分極性電極と集電体との導電性接着剤として本発明の導電性ペーストを用いた電気二重層キャパシタ等、印刷によって本発明の導電性ペーストからなる導電回路が形成された各種基板、本発明の導電性ペーストからなる導電回路が電磁波シールド材やアンテナ用回路として形成されたICカード等が挙げられる。
【0041】
電子部品の中でも、本発明の導電性ペーストをアノード形成に用い、カソードにアルミニウム等の弁作用(バルブ)金属を用いた固体電解コンデンサは、アノード層中の電極層の厚さを10μm以下とすることができ、かつ低内部抵抗、高周波数特性等のコンデンサ特性が優れる特徴を有する。ここでいうアノード層中の電極層の厚さとは、本発明の導電性ペーストより形成される導電層塗膜厚の平均値を示す。電極層の厚さを薄くすることにより、コンデンサの小型化だけでなく、低内部抵抗等の特性向上、生産時歩留まり向上が達成される。
【0042】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は特に限定されないが、一例について説明する。まず、タンタル等のバルブ金属を、タンタル等のリード線の一端に埋め、他端を引き出してプレスで圧縮成形し、真空中、高温で処理することにより、タンタル焼結体を形成する。次にこの焼結体をリード線部でSUS等の金属製端子に溶接した後、焼結体を硝酸やリン酸等の化成液中で電圧を印加してタンタル酸化物よりなるカソード酸化被膜を形成する。カソード酸化被膜を形成後、焼結体を硝酸マンガン溶液等の半導体母液中に浸漬し、液を含浸させ、高温焼成して熱分解することにより、焼結体内部に半導体層(固体電解質層)として二酸化マンガン層を形成するか、または電解酸化重合法や化学酸化重合法により、焼結体内部に半導体層(固体電解質層)として導電性高分子層を形成する。以上の半導体層作成工程を目的の半導体層厚さになるまで繰り返し行う。次いで、半導体層形成後に、カーボンペーストを塗布後乾燥したカーボン(グラファイト)層を形成し、さらに、本発明の導電性ペーストを塗布後乾燥した導電層を順次形成してアノードを形成し、アノードにリード線を接着銀またははんだで接着させる。最後に、樹脂ディップ法や樹脂モールド法等によりモールド樹脂で外層を形成してタンタル固体電解コンデンサが得られる。
【0043】
本発明の導電性ペーストを用いた電気二重層コンデンサは公知の方法にしたがって製造することができる。すなわち、分極性電極は活性炭に導電剤及び結合剤を加えて混練圧延する方法や活性炭に未炭化樹脂類を混合して焼結する方法などで作成する。この分極性電極に金属箔製集電体を本発明の導電性ペーストで接着する。例えば平均粒径5〜100μm程度の活性炭の粉末に、必要により導電剤としてカーボンブラック等を加え、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン等の結合剤を加え、厚さ0.1〜0.5mm程度のシートに成形した後、100〜200℃程度の温度で真空乾燥する。このシートを所定の形状に打ち抜き電極とする。この電極を本発明の導電性ペーストを介してアルミニウム箔製集電体に接着後、加熱乾燥することにより、積層する。次いでセパレータを介し、アルミニウム箔を外側にして2枚重ね、電解液に浸して電気二重層キャパシタとする。
【0044】
電気二重層キャパシタの電解液としては特に限定されず、公知の非水系電解質、水系電解質のいずれも使用可能である。本発明で用いる非水系電解質の例としては公知の有機電解液、高分子固体電解質及び高分子ゲル電解質、イオン性液体が挙げられる。
【0045】
有機電解液に用いられる有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド等のアミド;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン;N−メチルピロリドン;アセトニトリル、ニトロメタン等の有機溶媒が挙げられる。好ましくはエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネートのカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
高分子固体電解質や高分子ゲル電解質に用いられる高分子としては、ポリエチレンオキサイド誘導体及び該誘導体を含む重合体、ポリプロピレンオキサイド誘導体及び該誘導体を含む重合体、リン酸エステル重合体、ポリカーボネート誘導体及び該誘導体を含む重合体等が挙げられる。
【0047】
これらの溶質(電解質塩)には、4級アンモニウム塩、4級イミダゾリウム塩、4級ピリジニウム塩、4級ホスホニウム塩等が単独または2種以上の混合物として使用される。イオン性液体はこれらの溶質の中で溶媒に溶解していなくとも、液状であるものが挙げられる。
【0048】
セパレータはガラスフィルター、不織布、多孔質抄紙、ポリオレフィン系マイクロポーラスフィルム等、公知のものが使用できるが、非水系電解質系では特にポリエチレンやポリプロピレン性の厚み5〜50μmで開孔率40%以上のポリオレフィン製マイクロポーラスフィルムが、薄くでき、また薄くした場合にも短絡が起こらず、強度的にも良好で電解液とのなじみも良好で好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の具体例を挙げてさらに詳細に説明するが、以下の例により本発明は限定されるものではない。
【0050】
実施例1:
フローを図1に示す装置を用いて気相法炭素繊維を製造した。反応管(5)としては、頂部に原料ガス供給ノズルを取り付けた縦型加熱炉(内径370mm、長さ2000mm)を用いた。気化器(3)の温度は500℃に設定した。そして系内に窒素ガスを流通し、酸素ガスを追い出した後、水素ガスを流通して水素ガス雰囲気に置換した。その後、反応管の昇温を開始し1250℃まで温度を上げた。反応の開始は、ポンプで気化器に原料液30g/minを供給することにより行い、気化した原料ガスはキャリアガスとしての水素ガス50L/minにより経路に導入した。また原料ガスが反応管に入る前にさらに水素ガス400L/minをスタティックミキサー(4)により混合した。原料液は、フェロセン0.5kgとチオフェン0.13kgをベンゼン14kgに溶解して調製した。原料液中のフェロセンの割合は3.5質量%、チオフェンの割合は0.9質量%であった。
この状態で1時間反応を行い、気相法炭素繊維を得た。得られた炭素粒子をアルゴン雰囲気中で2800℃で30分加熱して所望の炭素繊維を得た。
【0051】
生成した炭素繊維の嵩密度を測定すると、0.012g/m3であり、嵩密度0.8g/cm3に圧縮したときの比抵抗は、0.007Ωcmであった。また、走査型電子顕微鏡観察により繊維100本の平均をとったところ、繊維径は平均96.9nm、繊維径の標準偏差は23.4nm、繊維長は平均13μmであった(平均アスペクト比=130)。図2に繊維径分布を示す。平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の75%(本数基準)が含まれていた。また、炭化回収率(=得られた炭素繊維の質量/供給したベンゼンの質量)は50%であった。
【0052】
上記で製造した気相法炭素繊維と銀粉(デグサ社製、SF#7、鱗片状、平均粒径6.8μm)と呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#9210(ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を10質量%含有したN−メチルピロリドン(NMP)溶液)を気相法炭素繊維、銀粉、PVDFが質量比10:90:30となるように混合し、プラネタリーミキサーにて混練りし、導電性ペーストとした。
【0053】
このペーストを減圧で脱泡した後、スクリーン印刷法にて、一定量スライドガラス上に塗布後、150℃で2時間真空乾燥し、乾燥塗膜を得た。この塗膜の25℃の体積抵抗率を4端針法にて測定したところ、1.0×10-5Ωcmであった。
【0054】
比較例1:
反応管として、頂部に2流体式ホロコーン原料供給ノズルを取り付けた縦型加熱炉(内径370mm、長さ2000mm)を用いた。系内に窒素ガスを流通し、酸素ガスを追い出した後、水素ガスを流通して水素ガス雰囲気に置換した。その後、反応器の昇温を開始し1250℃まで温度を上げた。反応は、ポンプを用いてノズルより原料液を130g/min、水素ガスを20L/min、反応管上部フランジより水素ガスを400L/min流通させることにより行い、原料液を壁に吹き付けた。原料液は、フェロセン0.83kgと硫黄0.059kgをベンゼン14kgに溶解して調製した。原料液中のフェロセンの割合は5.5質量%、硫黄の割合は0.39質量%であった。
【0055】
この状態で1時間反応を行い、炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の嵩密度は0.04g/cm3であった。嵩密度0.8g/cm3に圧縮したときの比抵抗が0.03Ωcmであった。
生成した炭素繊維を電子顕微鏡で観察したところ、平均繊維径約180nm、繊維径の標準偏差は37.4nm、繊維長は7μmであった(アスペクト比=47)。図3に繊維径分布を示す。平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の60%(本数基準)が含まれていた。また、炭化回収率(=得られた炭素繊維の質量/供給したベンゼンの質量)は60%であった。
上記で製造した気相法炭素繊維を用いた以外は実施例1と同様の方法で導電性ペーストを得、実施例1と同様に塗膜の25℃の体積抵抗率を測定したところ、8.0×10-5Ωcmであった。
【0056】
実施例2:
実施例1で製造した導電性ペーストをアノード導電層塗膜材料としてタンタルコンデンサ(設計静電容量30μF)を作製した。電子顕微鏡観察からの10箇所平均導電層塗膜膜厚は4.5μmであった。
25℃の静電容量、等価直列抵抗(ESR:100kHz)をヒューレットパッカー社製LCRメーター(4284A)で測定したところ、30μF、0.4Ωであった。
【0057】
比較例2:
比較例1で製造した導電性ペーストをアノード導電層塗膜材料として用いた以外は実施例3と同様にして、タンタルコンデンサ(設計静電容量30μF)を作製した。電子顕微鏡観察からの10箇所平均導電層塗膜膜厚は4.8μmであった。
25℃の静電容量、等価直列抵抗(ESR:100kHz)をヒューレットパッカー社製LCRメーター(4284A)で測定したところ、25μF、0.8Ωであった。
【0058】
実施例3:
実施例1で製造した気相法炭素繊維と炭素粉UFG10(昭和電工(株)製、平均粒径5.0μm)と呉羽化学工業(株)製KFポリマーL#9210(ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を10質量%含有したN−メチルピロリドン(NMP)溶液)を気相法炭素繊維、炭素粉、PVDFが質量比15:85:30となるように混合し、プラネタリーミキサーにて混練りし、導電性ペーストとした。
このペーストを減圧で脱泡した後、スクリーン印刷法にて、一定量スライドガラス上に塗布後、150℃で2時間真空乾燥し、乾燥塗膜を得た。この塗膜の25℃の体積抵抗率を4端針法にて測定したところ、1.8×10-4Ωcmであった。
【0059】
比較例3:
比較例1で製造した気相法炭素繊維を用いた以外は実施例4と同様の方法で導電性ペーストを得、実施例4と同様に塗膜の25℃の体積抵抗率を測定したところ、8.3×10-4Ωcmであった。
【0060】
実施例4:
1)活性炭の製造
軟化点86℃の石炭ピッチを500℃で炭化を行った。得られた炭材に、質量比で2.5倍量のKOHを混合し、ルツボに充填した。これを750℃まで3℃/hrで昇温した後、750℃で60分保持して賦活した。賦活した炭素材料は1N塩酸で洗浄した後、蒸留水で洗浄し、残留KOH及び金属不純物を除去した。これを200℃で真空乾燥して活性炭とした。この活性炭のBET法比表面積及びBJH法細孔容積をQuantachrome社製、NOVA1200を使用し、液体窒素温度における窒素の吸着等温線より算出した。その結果、比表面積は1230m2/g、BJH法による20〜50Åの細孔容積は0.0516cc/gであった。また、ラマンスペクトルより、Gピーク高さに対するDピーク高さの比は0.92であった。
【0061】
2)電極の作製
上記1)で製造した平均粒径30μmの活性炭80質量部、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、三井・デュポンフロロケミカル(株)製、型番7J)10質量部、アセチレンブラック(ABと略す、電気化学工業(株)製)10質量部を添加し、トルエンを分散媒として、混練した。この混練物を厚さ約0.5mmのシート状に圧延後、ロールプレスすることにより、活性炭電極シートを得た。平均厚み20μmのアルミニウム箔(昭和電工(株)製 JIS 1100)上に実施例3で作製した導電性ペーストをスクリーン印刷で厚み20μmとなるように塗布後、すぐに前記活性炭電極シートを積層後、150℃で約1時間加熱乾燥した。この活性炭・ペースト・アルミニウム箔積層物を直径20mmの円板に打ち抜き、200℃で一昼夜真空乾燥して分極性電極として使用した。
【0062】
3)電気二重層コンデンサの組立
前記の電極を、高純度アルゴンを循環させているグローブボックス内において、図4に示すような評価用セルを組立てて使用した。図4において、11はアルミニウム製の上蓋、12はフッ素ゴム製Oリング、13はアルミニウムからなる集電体、14はテトラフルオロエチレンからなる絶縁材、15はアルミニウム製容器、16はアルミニウム製板バネ、17は分極性電極、18はガラス繊維からなる厚さ1mmのセパレータである。電解液にはPC(プロピレンカーボネート)を溶媒とし、(C254NBF4を電解質とする富山薬品工業(株)製の商品名LIPASTE−P/EAFIN(1モル/リットル)を使用した。
【0063】
充放電測定は北斗電工(株)製充放電試験装置HJ−101SM6を使用し、5mAで0〜2.5Vで充放電を行い、2回目の定電流放電によって得られた放電曲線から、電気二重層コンデンサの両極活性炭(気相法炭素繊維を添加した場合は活性炭と気相法炭素繊維の和)の質量あたりの静電容量(F/g)と体積あたりの静電容量(F/ml)を算出した。
【0064】
また、耐久性は200回の充放電サイクル試験による電気容量の容量保持率(サイクル試験後の電気容量/2回目の充放電後の電気容量)により評価した。
電極膨張率は上記充放電測定評価セルと同じものを別に作成し、2回目の2.5V充電時に解体し、評価前の厚みに対する増加割合(%)を調べた。
【0065】
上記活性炭及び気相法炭素繊維を含む本発明の導電性ペーストを用いた電気二重層キャパシタを評価した結果、2.5V充放電時での電気容量39.5F/g、32.5F/ml、200サイクル充放電後の容量保持率は97%、及び電極膨張率18%であった。
【0066】
比較例4:
比較例3で作製した導電性ペーストを電極の導電層に用いた以外は、実施例4と同様にして電気二重層キャパシタを作製し評価した。その結果、2.5V充放電時での電気容量35.0F/g、29.0F/ml、200サイクル充放電後の容量保持率は80%、及び電極膨張率25%であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の気相法炭素繊維を製造するための装置フロー図。
【図2】実施例1で得た炭素繊維の繊維径分布である。
【図3】比較例1で得た炭素繊維の繊維径分布である。
【図4】実施例4及び比較例5で作製した電気二重層コンデンサの断面図。
【符号の説明】
【0068】
1 原料
2a,2b キャリアガス
3 気化器
4 撹拌装置
5 反応管
11 上蓋
12 Oリング
13 集電体
14 絶縁体
15 容器
16 板ばね
17 電極
18 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物に、気相法炭素繊維が少なくとも1種の導電性粒子として混合されている導電性ペーストであって、気相法炭素繊維の平均繊維径が80〜500nm、アスペクト比が100〜200であり、平均繊維径の±20%の範囲に全繊維の65%(本数基準)以上が含まれ、嵩密度が0.015g/cm3以下であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
気相法炭素繊維が2000℃以上で黒鉛化されたものであり、かつ嵩密度0.8g/cm3に圧縮したときの比抵抗が0.015Ωcm以下である請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
気相法炭素繊維の表面が酸化処理されている請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
導電性粒子として金属粉を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
導電性粒子中の金属粉と気相法炭素繊維との質量比が99〜60:1〜40の範囲である請求項4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
金属粉が、金、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケル及びそれらの合金粉あるいは共晶粉から選択される少なくとも1種である請求項4または5に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
導電性粒子として平均粒径5μm以下のカーボン粒子を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
導電性粒子中のカーボン粒子と気相法炭素繊維との質量比が95〜60:5〜40の範囲である請求項7に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
少なくとも1種の樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項10】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリカーボネート、イミド系樹脂、アミド系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコン系樹脂から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
熱可塑性樹脂がフッ素系樹脂である請求項9に記載の導電性ペースト。
【請求項12】
少なくとも1種の樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項13】
熱硬化性樹脂が、アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂及びウレタン系樹脂から選択される少なくとも1種である請求項12に記載の導電性ペースト。
【請求項14】
少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物に気相法炭素繊維を予め高粘度で混合分散させた後、少なくとも1種の樹脂及び少なくとも1種の溶剤からなる液状物及び/または該液状物と他の導電性微粉との混合物をさらに加え混合分散することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて形成された導電層を有することを特徴とする電子部品。
【請求項16】
弁作用金属を用いた陽極と、請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストから形成された陰極とを有することを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項17】
金属製集電体上にカーボン材料からなる分極性材料を形成させた電気二重層コンデンサ用分極性電極シートにおいて、分極性材料と金属集電体間に請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性ペーストで形成した導電層を有することを特徴とする電気二重層コンデンサ用分極性電極シート。
【請求項18】
一対の分極性電極シートの間にイオン伝導性電解質材料が配置された電気二重層コンデンサにおいて、分極性電極シートの少なくともいずれか一方に請求項17に記載の分極性電極シートが用いられていることを特徴とする電気二重層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−140142(P2006−140142A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299507(P2005−299507)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】