説明

導電性ペースト、電子部品、及び電子機器

【課題】 高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制することが可能な導電性ペースト、電子部品、及び電子機器を提供すること。
【解決手段】 一対の端子電極11,13は、第1の電極層11a,13a、第2の電極層11b,13b、及び、第3の電極層11c,13cをそれぞれ有している。第1の電極層11a,13aは、コンデンサ素体3の外表面に形成されており、且つ導電性ペーストの焼付により形成されている。第2の電極層11b,13bは、第1の電極層11a,13a上に電気めっきにより形成されている。第3の電極層11c,13cは、第2の電極層11b,13b上に電気めっきにより形成されている。導電性ペーストは、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、ZnOとを含み、当該ZnOの添加量は金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、電子部品、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品として、素体と当該素体に形成された端子電極とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された電子部品は積層セラミックコンデンサであって、端子電極が、素体の外表面に形成されており、且つ導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、第1の電極層上に金属めっきにより形成された第2の電極層と、第2の電極層上に金属めっきにより形成された第3の電極層とを有している。
【0003】
また、第1の電極層の形成に用いる導電性ペーストとして、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含むものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載された導電性ペーストでは、金属粉末としてCu粉末が開示されている。
【特許文献1】特開2002−203736号公報
【特許文献2】特開平5−234415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制することが可能な導電性ペースト、電子部品、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
近年、環境保護の要請から、電子部品をはんだ付けにより基板に実装する場合、鉛を含有しないはんだ、いわゆる鉛フリーはんだが使用されるようになっている。この鉛フリーはんだは、Snを主成分としたもが主流であり、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Zn−Al系及びSn−Zn−Bi系のはんだが使用されているが、最近になり、はんだ付け性(はんだ濡れ性)及びはんだ付け強度等に優れたSn−Zn系のはんだが多く採用されるようになっている。
【0006】
そこで、本発明者等が、Znを含む鉛フリーはんだを使用して基板に実装した電子部品の各種特性を実験調査したところ、高温高湿環境下において絶縁抵抗が大きく劣化してしまうという事実を新たに判明した。
【0007】
本発明者等は、積層セラミックコンデンサがSn−Zn−Al系のはんだにより基板に実装された電子機器を作製し、当該電子機器に対して加速試験を行った。加速試験の対象とした積層セラミックコンデンサは、2012タイプ(長さ2.0mm、幅1.2mm及び高さ1.0mm)の積層セラミックコンデンサであって、特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサと同じく、端子電極が、Cuを含む導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、第1の電極層上にNiめっきにより形成された第2の電極層と、第2の電極層上にSnめっきにより形成された第3の電極層とを有している。
【0008】
加速試験では、電子機器(積層セラミックコンデンサ)に、恒温恒湿環境(温度:121℃、相対湿度:95%、圧力:2気圧)中で4.0VのDC電圧を40時間連続して印加した。加速試験前の積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗が1×10Ωであったのに対し、加速試験から所定時間(2時間以上)経過した後の積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗が1×10Ωであり、絶縁抵抗の劣化が生じていた。なお、加速試験の対象とした積層セラミックコンデンサのB特性は、10μFである。
【0009】
本発明者等が、加速試験により絶縁抵抗の劣化が生じた積層セラミックコンデンサを解析したところ、鉛フリーはんだに含まれているZn原子が第2の電極層と第3の電極層との境界領域に存在しているという事実が確認された。この事実から推測すると、鉛フリーはんだに含まれているZn原子が何らかの要因により積層セラミックコンデンサの素体内に移動して、絶縁抵抗を劣化させていると考えられる。したがって、鉛フリーはんだに含まれているZn原子の素体内への移動を抑制することができれば、絶縁抵抗劣化の防止も可能であると考えられる。
【0010】
そこで、本発明者等は、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制し得る電子部品についても鋭意研究を行った。本発明者等は、第1の電極層の形成に用いられる導電性ペーストに着目し、当該導電性ペーストに添加物としてZnOを含ませることにより、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できるという新たな事実を見出すに至った。すなわち、第1の電極層がZnOを含むことにより、鉛フリーはんだに含まれているZn原子が素体内に移動するのが抑制されると考えられる。
【0011】
ところで、第2の電極層は電気めっきにより形成されている。第1の電極層を形成するための導電性ペーストにおけるZnOの添加量を多くしたのでは、めっき付き性が悪くなってしまう。すなわち、第1の電極層を導電性ペーストの焼付により形成した際に、ZnOが第1の電極層の表面に移動し、表面に移動したZnOが電気めっきによる第2の電極層の形成を阻害する懼れがある。
【0012】
かかる事実を踏まえ、本発明に係る導電性ペーストは、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、添加剤とを含む導電性ペーストであって、添加剤がZnOであり、その添加量は金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る導電性ペーストでは、添加剤がZnOであり、その添加量は金属粉末に対して5wt%以上に設定されているので、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できる。また、ZnOの添加量が金属粉末に対して15wt%以下に設定されているので、めっき付き性の悪化を抑制することができる。
【0014】
また、上記金属粉末は、Cu粉末であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る電子部品は、素体と、当該素体に形成された端子電極と、を備える電子部品であって、端子電極が、素体の外表面に導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、第1の電極層上に電気めっきにより形成された第2の電極層と、第2の電極層上に電気めっきにより形成された第3の電極層と、を有しており、導電性ペーストが、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、添加剤とを含み、添加剤がZnOであり、その添加量は金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る電子部品では、導電性ペーストに含まれる添加剤がZnOであり、その添加量は金属粉末に対して5wt%以上に設定されているので、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できる。また、ZnOの添加量が金属粉末に対して15wt%以下に設定されているので、第2の電極層を電気めっきで形成する際のめっき付き性の悪化を抑制することができる。
【0017】
また、上記金属粉末は、Cu粉末であることが好ましい。
【0018】
また、第2の電極層を形成するための電気めっきが、Niめっきであることが好ましい。また、第3の電極層を形成するための金属めっきが、SnめっきあるいはSn合金めっきであることが好ましい。
【0019】
本発明に係る電子部品は、素体と、当該素体に形成された端子電極と、を備える電子部品であって、端子電極が、素体の外表面にCuを含む導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、第1の電極層上に電気めっきにより形成された第2の電極層と、第2の電極層上に電気めっきにより形成された第3の電極層と、を有しており、第1の電極層がZnOを含んでおり、当該ZnOの含有量はCuに対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る電子部品では、第1の電極層がZnOを含んでおり、当該ZnOの含有量はCuに対して5wt%以上に設定されているので、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できる。また、ZnOの含有量はCuに対して15wt%以下に設定されているので、第2の電極層を電気めっきで形成する際のめっき付き性の悪化を抑制することができる。
【0021】
本発明に係る電子機器は、上記電子部品と、配線パターンが形成された基板と、を備えており、電子部品の端子電極と基板に形成された配線パターンとが、Znを含む鉛フリーはんだを用いて電気的及び機械的に接合されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る電子機器では、上述したように、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できると共に、第2の電極層を電気めっきで形成する際のめっき付き性の悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制することが可能な導電性ペースト、電子部品、及び電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。本実施形態は、本発明を積層セラミックコンデンサに適用した例である。
【0025】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る電子機器EDの構成を説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器の構成を示す模式図である。図2は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面構成を示す模式図である。
【0026】
電子機器EDは、図1に示されるように、電子部品としての積層セラミックコンデンサ1と、配線パターンWPが形成された基板Bとを備えている。積層セラミックコンデンサ1は、直方体形状のコンデンサ素体3と、一対の端子電極11,13とを備えている。積層セラミックコンデンサ1は、2012タイプ(長さ2.0mm、幅1.2mm及び高さ1.0mm)の積層セラミックコンデンサである。
【0027】
積層セラミックコンデンサ1は、一対の端子電極11,13を配線パターンWPにはんだ付けすることにより、一対の端子電極11,13と配線パターンWPとが電気的及び機械的に接合された状態で基板Bに実装されている。このとき、各端子電極11,13と配線パターンWPとにわたって、はんだフィレットSFが形成される。はんだ付けに用いるはんだは、Znを含む鉛フリーはんだが用いられている。本実施形態では、Sn−Zn系のはんだ、特にSn−Zn−Bi系のはんだが用いられている。Sn−Zn−Bi系のはんだの換わりに、Sn−Zn−Al系のはんだを用いてもよい。
【0028】
はんだ付けは、予め基板B上の配線パターンWPに塗布しておいたはんだペースト上に積層セラミックコンデンサ1を載せた後に、電子機器ED全体をはんだ溶融温度以上に加熱してはんだを溶融させて固定する、いわゆるリフローにより行うことができる。
【0029】
コンデンサ素体3は、図2に示されるように、誘電体層21を介在させて第1の内部電極23と第2の内部電極25とが交互に積層されることにより構成される。すなわち、コンデンサ素体3にあっては、複数の誘電体層21と複数の内部電極23,25とが交互に積層されている。実際の積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。本実施形態においては、第1の内部電極23、第2の内部電極25及び誘電体層21により構成されるコンデンサが内部回路要素となる。
【0030】
一対の端子電極11,13は、コンデンサ素体3の外表面に形成されている。詳細に説明すると、一方の端子電極11は、コンデンサ素体3の端面のうち、コンデンサ素体3の厚さ方向(第1の内部電極23と第2の内部電極25との積層方向)に延在し且つ互いに対向する一対の端面のうち一方の端面に、当該端面の全領域を覆うように形成されている。 他方の端子電極13は、コンデンサ素体3の端面のうち、コンデンサ素体3の厚さ方向に延在し且つ互いに対向する一対の端面のうち他方の端面に、当該端面の全領域を覆うように形成されている。
【0031】
第1の内部電極23は、長方形状を呈している。第1の内部電極23は、上記他方の端面とは所定の間隔を有した位置に形成され、上記一方の端面に臨むように伸びている。これにより、第1の内部電極23は、一方の端面に引き出されることとなり、一方の端子電極11に電気的に接続される。
【0032】
第2の内部電極25は、長方形状を呈している。第2の内部電極25は、上記一方の端面とは所定の間隔を有した位置に形成され、上記他方の端面に臨むように伸びている。これにより、第2の内部電極25は、他方の端面に引き出されることとなり、他方の端子電極13に電気的に接続される。
【0033】
誘電体層21は、BaTiOを主成分とする層であり、BaTiOを含むセラミックグリーンシートを焼成して形成される。第1及び第2の内部電極23,25は、Niを主成分として含む電極層である。第1及び第2の内部電極23,25は、Pd、Ag−Pd、CuあるいはCu合金を主成分として含む電極層であってもよい。
【0034】
一対の端子電極11,13は、第1の電極層11a,13a、第2の電極層11b,13b、及び、第3の電極層11c,13cをそれぞれ有している。
【0035】
第1の電極層11a,13aは、コンデンサ素体3の外表面に形成されており、且つ導電性ペーストの焼付により形成されている。第1の電極層11a,13aの厚みは5〜200μmであり、本実施形態においては、9μm程度に設定されている。
【0036】
ここで、第1の電極層11a,13aの形成に用いる上記導電性ペーストについて説明する。第1の電極層11a,13aの形成に用いる導電性ペーストは、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、添加剤とを含んでいる。
【0037】
金属粉末には、Cu粉末、あるいはCuを主成分とする金属粉末を用いることができる。本実施形態では、金属粉末としてCu粉末を用いている。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とする金属粉末であってもよい。
【0038】
ガラスフリットには、Sr−Si−Zn−B系のガラスフリットを用いることができる。Sr−Si−Zn−B系のガラスフリットは、主成分として、SrO、SiO、ZnO及びBを含む。本実施形態に用いたSr−Si−Zn−B系のガラスフリットの組成は、例えば、
SrO:35〜55wt%
SiO:5〜20wt%
ZnO:5〜15wt%
:5〜30wt%
である。Cu粉末100質量部に対するガラスフリットの含有量は、例えば3〜10質量部である。ガラスフリットには、Sr−Si−Zn−B系のガラスフリット以外のものを用いてもよい。
【0039】
有機ビヒクルは、金属粉末及びガラスフリットといった無機成分をペースト化するためのものである。この有機ビヒクルとしては、導電性ペーストに対して印刷性を付与し得る有機質樹脂であればよく、一般に市販されかつ入手しやすい、エチルセロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂等を溶剤(例えば、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート等)に溶解したものが好適に用いられる。Cu粉末100質量部に対する有機ビヒクルの含有量は、例えば3〜15質量部である。
【0040】
添加剤は、ZnOである。ZnOは、粉末状として添加されている。ZnOの添加量は、金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されている。本実施形態においては、ZnOの添加量は、金属粉末に対して10wt%に設定されている。
【0041】
導電性ペーストには上述したようにZnOが添加されているので、当該導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層11a,13aは、ZnOを含むこととなる。導電性ペーストの焼付の際にCu及びZnOが消失する可能性は極めて低いため、第1の電極層11a,13aにおけるZnOの含有量は導電性ペーストでのZnOの添加量が反映されることとなる。したがって、第1の電極層11a,13aにおけるZnOの含有量は、Cuに対して5wt%以上15wt%以下となる。
【0042】
第2の電極層11b,13bは、第1の電極層11a,13a上に電気めっきにより形成されている。本実施形態では、第2の電極層11b,13bを形成するための上記電気めっきとして、Niめっきが用いられている。第2の電極層11b,13bの厚みは1〜3μmであり、本実施形態においては、2μm程度に設定されている。Niめっきは、Niめっき浴(例えば、ワット浴)を用いたバレルめっき法にて行うことができる。
【0043】
第3の電極層11c,13cは、第2の電極層11b,13b上に電気めっきにより形成されている。本実施形態では、第3の電極層11c,13cを形成するための上記電気めっきとして、Snめっきが用いられている。本実施形態においては、第3の電極層11c,13cの厚みは、3μm程度に設定されている。Snめっきは、Snめっき浴(例えば、中性Snめっき浴)を用いたバレルめっき法にて行うことができる。第3の電極層11c,13cは、Sn合金めっきにより形成してもよい。
【0044】
ここで、第1の電極層11a,13aの形成に用いる上記導電性ペーストにおけるZnOの添加量と、積層セラミックコンデンサ1の絶縁抵抗劣化との関係について、詳細に説明する。
【0045】
本発明者等は、第1の電極層11a,13aの形成に用いる導電性ペーストにおけるZnOの添加量と、絶縁抵抗IRとの関係を明らかにするために、以下のような実験をおこなった。すなわち、ZnOの添加量が異なる導電性ペーストを用いて作製した積層セラミックコンデンサのサンプルを8個(サンプル1〜8)準備して、各サンプル1〜8をはんだ付け(リフロー)により基板に実装した状態で加速試験を行い、各サンプル1〜8の加速試験前後における絶縁抵抗IRをそれぞれ測定した。その測定結果を、図3の表に示す。本実験では、ZnOの添加量を、Cu粉末に対して2.0wt%〜17.0wt%の範囲で異ならせている。
【0046】
加速試験では、恒温恒湿環境(温度:121℃、相対湿度:95%、圧力:2気圧)中で、各サンプル1〜6に4.0VのDC電圧を40時間連続して印加した。加速試験後の絶縁抵抗は、加速試験から所定時間(2時間以上)経過した後に測定した値とした。第1の電極層11a,13aの形成に用いる導電性ペーストにおけるZnOの添加量が異なる点を除いては、各サンプル1〜15とも上述した実施形態の積層セラミックコンデンサ1と同じ構成であり、B特性が10μFとなるように設計されている。本実験に用いた導電性ペーストでは、Cu粉末100質量部に対するSr−Si−Zn−B系のガラスフリットの含有量は5質量部であり、Cu粉末100質量部に対する有機ビヒクルの含有量は10質量部である。本実験に用いたSr−Si−Zn−B系のガラスフリットの組成は、
SrO:50wt%
SiO:15wt%
ZnO:10wt%
:25wt%
である。はんだ付けに用いたSn−Zn−Bi系のはんだの組成は、Sn:89wt%、Zn:8wt%、Bi:3wt%とした。リフローは、リフロー炉を用いて行い、炉内雰囲気温度を230〜250℃に設定し、炉通過時間を4〜6分に設定した。
【0047】
図3に示される測定結果から、第1の電極層11a,13aの形成に用いる導電性ペーストにおけるZnOの添加量度を大きくするにより、絶縁抵抗劣化の発生が抑制されていることがわかる。ZnOの添加量がCu粉末に対して5.0wt%未満であるサンプル1,2は、加速試験後の絶縁抵抗IRが5.0×10〜5.0×10Ωであり、加速試験前の絶縁抵抗IRである1.3×10Ωよりも著しく小さくなっている。これに対して、ZnOの添加量がCu粉末に対して5.0wt%以上であるサンプル3〜8は、加速試験後の絶縁抵抗IRが1.0×10〜1.3×10Ωであり、加速試験前の絶縁抵抗IRである1.3×10Ωと殆ど変化していない。したがって、ZnOの添加量の下限は5μmとなる。
【0048】
ところで、第2の電極層11b,13bは電気めっきにより形成されている。第1の電極層11a,13aを形成するための上記導電性ペーストにおけるZnOの添加量をCu粉末に対して15.0wt%より多くすると、めっき付き性が悪くなってしまう。すなわち、第1の電極層11a,13aを導電性ペーストの焼付により形成した際に、多くのZnOが第1の電極層11a,13aの表面に移動し、表面に移動したZnOが電気めっきによる第2の電極層11b,13bの形成を阻害してしまう。これに対して、本実施形態では、ZnOの添加量がCu粉末に対して15.0wt%以下に設定されているので、表面に移動するZnOの量は少なく、電気めっきによる第2の電極層11b,13bの形成を阻害する可能性は極めて低い。
【0049】
以上のように、本実施形態においては、第1の電極層11a,13aの形成に用いる導電性ペーストに含まれる添加剤がZnOであり、その添加量はCu粉末に対して5wt%以上に設定されているので、高温高湿環境下における絶縁抵抗劣化の発生を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態においては、ZnOの添加量が金属粉末に対して15wt%以下に設定されているので、第2の電極層11b,13bを電気めっきで形成する際のめっき付き性の悪化を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、誘電体層21、第1の内部電極23及び第1の内部電極25の層数は、図示された数に限られるものではない。また、積層セラミックコンデンサ1は、上述した2012タイプに限られることなく、2012タイプよりも大きい積層セラミックコンデンサであってもよく、2012タイプよりも小さい積層セラミックコンデンサであってもよい。
【0052】
本発明は、積層セラミックコンデンサに限られることなく、素体と、当該素体に形成された端子電極と、を備える電子部品であれば、コンデンサ、サーミスタ、バリスタ、これらを含む複合電子部品に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る電子機器の構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面構成を示す模式図である。
【図3】加速試験前後における絶縁抵抗の測定結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0054】
1…積層セラミックコンデンサ、3…コンデンサ素体、11,13…端子電極、11a,13a…第1の電極層、11b,13b…第2の電極層、11c,13c…第3の電極層、21…誘電体層、23…第1の内部電極、25…第2の内部電極、B…基板、ED…電子機器、WP…配線パターン。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、添加剤とを含む導電性ペーストであって、
前記添加剤がZnOであり、その添加量は前記金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記金属粉末が、Cu粉末であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
素体と、当該素体に形成された端子電極と、を備える電子部品であって、
前記端子電極が、
前記素体の外表面に導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、
前記第1の電極層上に電気めっきにより形成された第2の電極層と、
前記第2の電極層上に電気めっきにより形成された第3の電極層と、を有しており、
前記導電性ペーストが、金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、添加剤とを含み、
前記添加剤がZnOであり、その添加量は前記金属粉末に対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする電子部品。
【請求項4】
前記金属粉末が、Cu粉末であることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2の電極層を形成するための前記電気めっきが、Niめっきであることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第3の電極層を形成するための前記金属めっきが、SnめっきあるいはSn合金めっきであることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項7】
素体と、当該素体に形成された端子電極と、を備える電子部品であって、
前記端子電極が、
前記素体の外表面にCuを含む導電性ペーストの焼付により形成された第1の電極層と、
前記第1の電極層上に電気めっきにより形成された第2の電極層と、
前記第2の電極層上に電気めっきにより形成された第3の電極層と、を有しており、
前記第1の電極層がZnOを含んでおり、当該ZnOの含有量はCuに対して5wt%以上15wt%以下に設定されていることを特徴とする電子部品。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の電子部品と、
配線パターンが形成された基板と、を備えており、
前記電子部品の前記端子電極と前記基板に形成された前記配線パターンとが、Znを含む鉛フリーはんだを用いて電気的及び機械的に接合されていることを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−248859(P2006−248859A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69667(P2005−69667)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】