説明

導電性ポリマー組成物

本発明は、導電性組成物、およびそれらの電子デバイス中での使用に関する。本発明の組成物は、(1)高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーと;(2)(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーおよび(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーとのいずれかを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、導電性ポリマーを含む組成物、およびそれらの電子デバイス中での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、活性層を含む製品の分類の1つである。有機電子デバイスは少なくとも1つの有機活性層を有する。このようなデバイスは、発光ダイオードなどのように電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、光起電力セルなどのように放射線を電気エネルギーに変換したり、1つ以上の有機半導体層を含んだりする。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンスが可能な有機層を含む有機電子デバイスである。導電性ポリマーを含有するOLEDは、以下の構成を有することができ:
アノード/緩衝層/EL材料/カソード
電極の間に追加の層を有する。通常、アノードは、たとえば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの、EL材料中に正孔を注入する能力を有するあらゆる材料である。場合により、アノードは、ガラスまたはプラスチックの基体上に支持されている。EL材料としては、蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。通常、カソードは、EL材料中に電子を注入する能力を有するあらゆる材料(たとえばCaまたはBaなど)である。ITOなどの導電性アノードと直接接触する緩衝層としては、10-3〜10-7S/cmの範囲内の低導電率を有する導電性ポリマーが一般に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子デバイス用の改善された材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の(1)または(2)のいずれかを含む組成物を提供する:
(1)高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマー;あるいは
(2)(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマー;および
(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマー。
【0006】
以下の(1)または(2)を含む液体組成物も提供する::
(1)(a)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーでドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマー;および
(b)重水素化液体媒体;あるいは
(2)(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマー;
(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマー;および
(c)重水素化液体媒体。
【0007】
上記組成物を含む少なくとも1つの活性層を含む電子デバイスも提供する。
【0008】
本発明を、添付の図面において例として説明するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】有機電界効果トランジスタ(OTFT)の概略図であり、ボトムコンタクト方式におけるそのようなデバイスの活性層の相対位置を示している。
【図1B】OTFTの概略図であり、トップコンタクト方式におけるそのようなデバイスの活性層の相対位置を示している。
【図1C】有機電界効果トランジスタ(OTFT)の概略図であり、ゲートを上部に有するボトムコンタクト方式におけるそのようなデバイスの活性層の相対位置を示している。
【図1D】有機電界効果トランジスタ(OTFT)の概略図であり、ゲートを上部に有するボトムコンタクト方式におけるそのようなデバイスの活性層の相対位置を示している。
【図2】有機電子デバイスの別の一例の概略図である。
【図3】有機電子デバイスの別の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【0011】
多数の態様および実施形態が本明細書で説明されるが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0012】
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明は、最初に用語の定義および説明を扱い、続いて、重水素化導電性ポリマー、高フッ素化酸ポリマー、導電性組成物、電子デバイス、および最後に実施例を扱う。
【0013】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0014】
用語「酸ポリマー」は、酸性基を有するポリマーを意味する。
【0015】
用語「酸性基」は、イオン化することによって水素イオンをブレンステッド塩基に供与することができる基を意味する。
【0016】
用語「導体」およびその変形は、電位が実質的に降下することなく層材料、部材、または構造に電流が流れるような電気的性質を有する層材料、部材、または構造を意味することを意図している。この用語は、半導体を含むことを意図している。ある実施形態においては、導体は、少なくとも10-7S/cmの導電率を有する層を形成する。
【0017】
用語「重水素化された」は、は、少なくとも1つの水素がジュウテリウムで置換されていることを意味することを意図している。このジュウテリウムは天然存在量の少なくとも100倍で存在する。化合物Xの「重水素化誘導体」は、化合物Xと同じ構造を有するが、少なくとも1つのDでHが置換されている。Y%が重水素化された材料は、水素のY%がジュウテリウムで重水素化されている。
【0018】
導電性ポリマーに言及する場合の用語「ドープした」は、導電性ポリマーが、そのポリマー上の電荷のバランスをとるためのポリマー対イオンを有することを意味することを意図している。
【0019】
用語「ドープした導電性ポリマー」は、導電性ポリマーとそれに会合したポリマー対イオンとを意味することを意図している。
【0020】
材料に言及する場合の用語「導電性」は、カーボンブラックまたは導電性金属粒子を加えなくても、本来または本質的に導電性となることができる材料を意味することを意図している。
【0021】
層または材料に関して言及する場合、用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電子デバイス中、電気活性材料は、デバイスの動作を電子的に促進する。電気活性材料の例としては、電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する材料であって、電荷が電子または正孔のいずれであってもよい材料、あるいは放射線を受けたときに放射線を放出する、または電子−正孔対の濃度変化を示す材料があるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料があるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
層、材料、部材、または構造に言及する場合の用語「電子輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、そのような層、材料、部材、または構造から、別の層、材料、部材、または構造への負電荷の移動を推進または促進することを意味する。
【0023】
用語「完全フッ素化」および「過フッ素化」は、同義に使用され、炭素に結合した利用可能なすべての水素がフッ素で置換されている化合物を意味する。
【0024】
用語「高フッ素化」は、炭素に結合した利用可能な水素の少なくとも90%がフッ素で置換されている化合物を意味する。
【0025】
用語「正孔注入層」または「正孔注入材料」は、導電性または半導体の層または材料であって、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる層または材料を意味することを意図している。
【0026】
層、材料、部材、または構造に言及する場合の用語「正孔輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の移動を促進することを意味することを意図している。
【0027】
用語「層」は、用語「フィルム」と同義に使用され、希望する領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊な機能の領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。特にそうでないことが示されない限り、層およびフィルムは、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。
【0028】
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の有機層または有機材料を含むデバイスを意味することを意図している。
【0029】
用語「ポリマー」は、少なくとも1種類の繰り返しモノマー単位を有する材料を意味することを意図している。この用語は、1つのみの種類または化学種のモノマー単位を有するホモポリマー、および、異なる化学種のモノマー単位から形成されるコポリマーなどの2つ以上の異なるモノマー単位を有するコポリマーを含んでいる。
【0030】
発光材料も、ある程度の電荷輸送特性を有する場合があるが、用語「正孔輸送」および「電子輸送」は、主要な機能が発光である層、材料、部材、または構造を含むことを意図していない。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的な「または」を意味するのであって、排他的な「または」を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0032】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0033】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第81版(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0034】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。式中、文字Q、R、T、W、X、Y、およびZは、それらに定義されている原子または基を表すために使用されている。他のすべての文字は、従来の原子記号を表すために使用されている。元素周期表中の縦列に対応する族の番号には、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第81版(2000)中に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0035】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光源、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0036】
2.重水素化導電性ポリマー
本発明の重水素化導電性ポリマーは、少なくとも1つのDを有する。「重水素化導電性ポリマー」は、関連するポリマー酸を含まずに、導電性ポリマー自体が重水素化されていることを意味する。ある実施形態においては、導電性ポリマーは少なくとも10%が重水素化されている。これは、Hの少なくとも10%がDで置換されていることを意味する。ある実施形態においては、ポリマーは、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。ある実施形態においては、導電性のポリマー100%が重水素化されている。
【0037】
あらゆる重水素化導電性ポリマーを新規組成物中に使用できる。ある実施形態においては、重水素化導電性ポリマーは、10-7S/cmを超える導電率を有する膜を形成する。
【0038】
新規組成物に好適な重水素化導電性ポリマーは、単独で重合した場合に導電性ホモポリマーを形成する少なくとも1種類のモノマーから製造される。このようなモノマーを本明細書では「導電性前駆体モノマー」と呼ぶ。単独で重合させた場合に導電性ではないホモポリマーを形成するモノマーは、「非導電性前駆体モノマー」と呼ぶ。重水素化導電性ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであってよい。新規組成物に好適な重水素化導電性コポリマーは、2種類以上の導電性前駆体モノマーから製造することができ、または1つまたは複数の導電性前駆体モノマーと1つまたは複数の非導電性前駆体モノマーとの組み合わせから製造することもできる。
【0039】
重水素化導電性ポリマーは、重水素化導電性前駆体モノマーから製造することができる。あるいは、重水素化導電性ポリマーは、非重水素化導電性前駆体モノマーから製造し、重合後に重水素化することができる。
【0040】
ある実施形態においては、重水素化導電性ポリマーは、チオフェン類、セレノフェン類、テルロフェン類、ピロール類、アニリン類、4−アミノ−インドール類、7−アミノ−インドール類、多環式芳香族類、およびそれらの重水素化類似体から選択される少なくとも1種類の前駆体モノマーから製造される。これらのモノマーから製造されたポリマーを、本明細書において、それぞれポリチオフェン類、ポリ(セレノフェン)類、ポリ(テルロフェン)類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリ(4−アミノ−インドール)類、ポリ(7−アミノ−インドール類)、および多環式芳香族ポリマー類と呼ぶ。用語「多環式芳香族」は、2つ以上の芳香環を有する化合物を意味する。これらの環は、1つまたは複数の結合によって連結している場合もあるし、互いに縮合している場合もある。用語「芳香環」は、複素環式芳香環を含むことを意図している。「多環式複素環式芳香族」化合物は、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する。ある実施形態においては、多環式芳香族ポリマーはポリ(チエノチオフェン)類である。
【0041】
ある実施形態においては、重水素化導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるモノマーは、以下の式Iを含み:
【0042】
【化1】

【0043】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、セレン原子、テルル原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよく、かつR2はHまたはDである。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルキル基を意味することを意図している。用語「アルキレン」は、2つの結合点を有するアルキル基を意味する。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルケニル基を意味することを意図している。用語「アルケニレン」は、2つの結合点を有するアルケニル基を意味する。
【0046】
本明細書において使用される場合、置換基に関する以下の用語は、以下に示す式を意味する:
「アルコール」 −R3−OH
「アミド」 −R3−C(O)N(R6)R6
「アミドスルホネート」 −R3−C(O)N(R6)R4−SO3
「ベンジル」 −CH2−C65
「カルボキシレート」 −R3−C(O)O−Zまたは−R3−O−C(O)−Z
「エーテル」 −R3−(O−R5p−O−R5
「エーテルカルボキシレート」 −R3−O−R4−C(O)O−Zまたは−R3−O−R4−O−C(O)−Z
「エーテルスルホネート」 −R3−O−R4−SO3
「エステルスルホネート」 −R3−O−C(O)−R4−SO3
「スルホンイミド」 −R3−SO2−NH−SO2−R5
「ウレタン」 −R3−O−C(O)−N(R62
式中、すべての「R」基はそれぞれ同じかまたは異なるものであり
3は単結合またはアルキレン基であり:
4はアルキレン基であり
5はアルキル基であり
6は水素、ジュウテリウムまたはアルキル基であり
pは0または1〜20の整数であり
Zは、H、D、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(R54、またはR5である。
上記基のいずれにおいても、1つまたは複数のHがDで置換されていてもよい。上記基はいずれも、さらに非置換の場合も置換されている場合もあり、いずれの基も、過フッ素化基などのように、1つまたは複数の水素がFで置換されていてもよい。ある実施形態においては、アルキル基およびアルキレン基は1〜20個の炭素原子を有する。ある実施形態においては、アルキル基およびアルキレン基は重水素化されている。
【0047】
ある実施形態においては、モノマー中で、両方のR1が一緒になって−W−(CY12m−W−(式中、mは2または3であり、WはO、S、Se、PO、NR6であり、Y1は出現ごとに同種または異種であり、水素、ジュウテリウム、またはフッ素であり、Y2は、出現ごとに同種または異種であり、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、Y基は、部分または完全重水素化されていてもよいし、あるいは部分または完全フッ素化されていてもよい)を形成する。ある実施形態においては、すべてのYが水素またはジュウテリウムである。
【0048】
ある実施形態においては、導電性前駆体モノマーは3,4−エチレンジオキシチオフェン(「EDOT」)である。ある実施形態においては、導電性前駆体モノマーは以下に示すD4−EDOTまたはD6−EDOTである。
【0049】
【化2】

【0050】
これらの材料から製造されたポリマーを、それぞれポリ(D4−EDOT)およびポリ(D6−EDOT)と略記する。
【0051】
ある実施形態においては、上記モノマーは式I(a)を含む。
【0052】
【化3】

【0053】
式中:
Qは、S、Se、およびTeからなる群から選択され;
2は、HまたはDであり、
7それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、ジュウテリウム、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのR7が水素ではなく、
mは2または3である。
【0054】
式I(a)のある実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、5個を超える炭素原子のアルキル基であり、他のすべてのR7が水素またはジュウテリウムである。式I(a)のある実施形態においては、少なくとも1つのR7基がフッ素化されている。ある実施形態においては、少なくとも1つのR7基が、少なくとも1つのフッ素置換基を有する。ある実施形態においては、そのR7基が完全フッ素化されている。
【0055】
式I(a)のある実施形態においては、モノマー上の縮合脂環式環上のR7置換基によって、モノマーの水に対する溶解性が改善され、フッ素化酸ポリマーの存在下での重合が促進される。
【0056】
式I(a)のある実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレンであり、他のすべてのR7が水素またはジュウテリウムである。ある実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、プロピル−エーテル−エチレンであり、他のすべてのR7が水素またはジュウテリウムである。ある実施形態においては、mが2であり、1つのR7がメトキシであり、他のすべてのR7が水素またはジュウテリウムである。ある実施形態においては、1つのR7が、スルホン酸ジフルオロメチレンエステルメチレン(−CH2−O−C(O)−CF2−SO3H)であり、他のすべてのR7が水素またはジュウテリウムである。
【0057】
ある実施形態においては、新規複合分散体中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮されるピロールモノマーは以下の式IIを含む。
【0058】
【化4】

【0059】
式IIにおいて:
1は、出現ごとに同種または異種となるように独立して選択され、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成してもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよく;
2は、出現ごとに同種または異種となるように独立して選択され、水素およびジュウテリウムからなる群から選択され;
8は、出現ごとに同種または異種となるように独立して選択され、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択される。
【0060】
ある実施形態においては、R1は、出現ごとに同種または異種であり、独立して、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、アミドスルホネート、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、ならびにアルキルであって、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。上記基はいずれも重水素化されていてもよい。
【0061】
ある実施形態においては、R8は、水素、アルキル、ならびにアルキルであって、1つまたは複数のスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、またはシロキサン部分で置換されたアルキルから選択される。
【0062】
ある実施形態においては、ピロールモノマーは非置換であり、R1、R2、およびR8は水素である。非置換の非重水素化ピロールは、本明細書において「Py」と略記される。ある実施形態においては、R1、R2、およびR8はジュウテリウムである。完全重水素化ピロールモノマーは「D5−Py」と略記される。このモノマーから製造されたポリマーは「ポリ(D5−Py)」と略記される。
【0063】
式IIのある実施形態においては、両方のR1が一緒になって6または7員の脂環式環を形成し、この環は、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択される基でさらに置換されている。これらの基は、モノマーおよび結果として得られるポリマーの溶解性を改善することができる。ある実施形態においては、両方のR1が一緒になって6または7員の脂環式環を形成し、この環はアルキル基でさらに置換されている。ある実施形態においては、両方のR1が一緒になって6または7員の脂環式環を形成し、この環は、少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換されている。
【0064】
ある実施形態においては、両方のR1が一緒になって−O−(CY2m−O−(式中mは2または3であり、Yは、出現ごとに同種または異種であり、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、アミドスルホネート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択される)を形成する。ある実施形態においては、少なくとも1つのY基がジュウテリウムである。ある実施形態においては、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。ある実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
【0065】
ある実施形態においては、新規複合分散体中の導電性ポリマーの形成への使用が考慮されるアニリンモノマーは以下の式IIIを含む。
【0066】
【化5】

【0067】
式中:
1は、出現ごとに同種または異種となるように独立して選択され、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体辛なる群から選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成してもよく、その環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、または酸素原子を含んでもよく;
2は、出現ごとに同種または異種となるように独立して選択され、水素およびジュウテリウムからなる群から選択される。
【0068】
重合される場合、アニリンモノマー単位は、以下に示す式IV(a)または式IV(b)、あるいは両方の式の組み合わせで表すことができる。
【0069】
【化6】

【0070】
式中、R1およびR2は前述の定義の通りである
【0071】
式IIIのある実施形態においては、アニリンモノマーは非置換であり、R1およびR2はHまたはDである。非重水素化非置換アニリンモノマーは、本命最初において「ani」と略記される。ある実施形態においては、モノマーは、以下に示すようなD5−aniまたはD7−aniである。
【0072】
【化7】

【0073】
これらのモノマーから製造されたポリマーは、それぞれポリ(D5−ani)およびポリ(D7−ani)と略記される。
【0074】
式IIIのある実施形態においては、少なくとも1つのR1がフッ素化されている。ある実施形態においては、少なくとも1つのR1が過フッ素化されている。
【0075】
ある実施形態においては、新規複合分散体中の導電性ポリマーを形成するために使用が考慮される縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、2つ以上の縮合芳香環を有し、その環の少なくとも1つが複素環式芳香族である。ある実施形態においては、この縮合多環式複素環式芳香族モノマーは式Vを有し:
【0076】
【化8】

【0077】
式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
6は、水素、ジュウテリウム、またはアルキルであり;
9、R10、R11およびR12は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
9とR10、R10とR11、およびR11とR12のうち少なくとも1つがアルケニレン鎖を形成して5または6員の芳香環を完成させ、その環は、場合により1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
【0078】
ある実施形態においては、縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、式V(a)、V(b)、V(c)、V(d)、V(e)、V(f)、V(g)、V(h)、V(i)、V(j)、およびV(k):
【0079】
【化9】

【0080】
【化10】

【0081】
(式中:
Qは、S、Se、Te、NH、またはNDであり;
Tは、出現ごとに同種または異種であり、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
YはNであり;
6は、H、D、またはアルキルであり;
少なくとも1つのジュウテリウムが存在する)
からなる群から選択される式で表される。
【0082】
縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択される基でさらに置換されていてもよい。ある実施形態においては、置換基が完全重水素化されている。ある実施形態においては、置換基がフッ素化されている。ある実施形態においては、置換基が完全フッ素化されている。
【0083】
ある実施形態においては、縮合多環式複素環式芳香族モノマーは、重水素化チエノ(チオフェン)である。このような化合物の非重水素化類似体は、たとえば、Macromolecules,34,5746−5747(2001);およびMacromolecules,35,7281−7286(2002)において議論されている。ある実施形態においては、チエノ(チオフェン)は、チエノ(2,3−b)チオフェン、チエノ(3,2−b)チオフェン、およびチエノ(3,4−b)チオフェンから選択され、これらのそれぞれが1〜4個のジュウテリウム原子を有することができる。ある実施形態においては、チエノ(チオフェン)モノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されている。ある実施形態においては、置換基が完全重水素化されている。ある実施形態においては、置換基がフッ素化されている。ある実施形態においては、置換基葉完全フッ素化されている。
【0084】
ある実施形態においては、新規複合分散体中のポリマーの形成への使用が考慮される多環式複素環式芳香族モノマーは式VI:
【0085】
【化11】

【0086】
(式中:
Qは、S、Se、Te、またはNR6であり;
Tは、S、NR6、O、SiR62、Se、Te、およびPR6から選択され;
Eは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
2は、水素またはジュウテリウムであり;
6は、水素、ジュウテリウム、またはアルキルであり;
13は、出現ごとに同種または異種であり、水素、ジュウテリウム、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、ウレタン、およびそれらの重水素化類似体から選択されるか;あるいは両方のR13基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を形成することができ、この環は場合により、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい)
を含む。
【0087】
ある実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、前駆体モノマーと少なくとも1つの第2のモノマーとのコポリマーである。コポリマーに望まれる性質に悪影響を及ぼさないのであれば、あらゆる種類の第2のモノマーを使用することができる。ある実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にしてポリマーの50%以下を構成する。ある実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして30%以下を構成する。ある実施形態においては、第2のモノマーが、モノマー単位の総数を基準にして10%以下を構成する。
【0088】
第2のモノマーの代表的な種類としては、アルケニル、アルキニル、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびそれらの重水素化類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第2のモノマーの例としては、限定するものではないが、フルオレン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、ピリジン、ジアジン類、トリアジン類およびそれらの重水素化類似体が挙げられ、これらすべてがさらに置換されていてもよい。
【0089】
ある実施形態においては、本発明のコポリマーは、最初に構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを形成することによって製造され、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい前駆体モノマーを表し、Bは第2のモノマーを表す。このA−B−C中間前駆体モノマーは、ヤマモト(Yamamoto)、スティル(Stille)、グリニャール(Grignard)メタセシス、スズキ(Suzuki)、およびネギシ(Negishi)カップリングなどの標準的な合成有機技術を使用して調製することができる。次に、この中間前駆体モノマー単独で酸化重合させる、または1つまたは複数の別の前駆体モノマーとともに酸化重合させることによって、本発明のコポリマーが形成される。
【0090】
ある実施形態においては、導電性ポリマーは、重水素化ポリチオフェン、重水素化ポリアニリン、重水素化ポリピロール、重水素化縮合多環式複素環式芳香族ポリマー、重水素化ポリ(アミノインドール)、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0091】
ある実施形態においては、導電性ポリマーは、ポリ(D6−EDOT)、ポリ(D5−Py)、ポリ(D7−ani)、ポリ(パージュウテロ−4−アミノインドール)、ポリ(パージュウテロ−7−アミノインドール)、ポリ(パージュウテロ−チエノ(2,3−b)チオフェン)、ポリ(パージュウテロ−チエノ(3,2−b)チオフェン)、およびポリ(パージュウテロ−チエノ(3,4−b)チオフェン)からなる群から選択される。
【0092】
3.高フッ素化酸ポリマー
高フッ素化酸ポリマー(「HFAP」)は、高フッ素化されており酸性基を有するあらゆるポリマーであってよい。酸性基は、イオン化可能なプロトンH+または重陽子D+を供給する。ある実施形態においては、酸性基は3未満のpKaを有する。ある実施形態においては、酸性基は0未満のpKaを有する。ある実施形態においては、酸性基は−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、ポリマー主鎖上の側鎖に結合していてもよい。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基はすべてが同じものである場合もあるし、ポリマーが2種類以上の酸性基を有することもできる。ある実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基、スルホンアミド基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0093】
ある実施形態においては、HFAPは、酸性重陽子を有する重水素酸(deutero−acid)である。
【0094】
ある実施形態においては、HFAPは少なくとも95%がフッ素化されており;ある実施形態においては、完全フッ素化されている。ある実施形態においては、HFAPが完全フッ素化されていない場合、非フッ素化部位は重水素化されており、そのため水素は存在しない。ある実施形態においては、HFAPは完全フッ素化されており、酸性重陽子を有する重水素酸である。
【0095】
ある実施形態においては、HFAPは水溶性である。ある実施形態においては、HFAPは水に対して分散性である。ある実施形態においては、HFAPは有機溶媒に対してぬれ性である。用語「有機溶媒に対してぬれ性」は、フィルムに成形した場合に、有機溶媒と60℃以下の接触角を有する材料を意味する。ある実施形態においては、ぬれ性材料は、55°以下の接触角でフェニルヘキサンによってぬれ性となるフィルムを形成する。接触角の測定方法は周知である。ある実施形態においては、ぬれ性材料は、それ自体は非ぬれ性であるポリマー酸から製造することができ、選択的添加剤を使用することでぬれ性にすることができる。
【0096】
好適なポリマー主鎖の例としては、限定するものではないが、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリイミド類、ポリアミド類、ポリアラミド類、ポリアクリルアミド類、ポリスチレン類、およびそれらのコポリマー、およびそれらの重水素化類似体が挙げられ、これらすべてが高フッ素化されており;ある実施形態においては、完全フッ素化されている。
【0097】
一実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基またはスルホンイミド基である。スルホンイミド基は式:
−SO2−NH−SO2−R
(式中、Rはアルキル基である)
で表される。ジュウテロ−スルホンイミド基は式:
−SO2−ND−SO2−R
(式中、Rはアルキル基である)
で表される。
【0098】
一実施形態においては、酸性基はフッ素化側鎖上にある。一実施形態においては、フッ素化側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびそれらの組み合わせから選択され、それらすべては完全フッ素化される。
【0099】
一実施形態においては、HFAPは、高フッ素化オレフィン主鎖を有し、高フッ素化アルキルスルホネート基、高フッ素化エーテルスルホネート基、高フッ素化エステルスルホネート基、または高フッ素化エーテルスルホンイミド基のペンダント基を有する。一実施形態においては、HFAPは、パーフルオロ−エーテル−スルホン酸側鎖を有するパーフルオロオレフィンである。一実施形態においては、このポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。一実施形態においては、このポリマーは、エチレンと、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、対応するフッ化スルホニルポリマーとして製造することができ、後にスルホン酸形態に変換することができる。
【0100】
一実施形態においては、本発明のHFAPは、フッ素化および部分フッ素化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)のホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーはブロックコポリマーであってよい。
【0101】
一実施形態においては、本発明のHFAPは、式IXを有するスルホンイミドポリマーであり:
【0102】
【化12】

【0103】
式中:
2はHまたはDであり、
fは、高フッ素化アルキレン、高フッ素化ヘテロアルキレン、高フッ素化アリーレン、および高フッ素化ヘテロアリーレンから選択され、1つ以上のエーテル酸素で置換されていてもよく;
nは少なくとも4である。
【0104】
式IXの一実施形態においては、Rfはパーフルオロアルキル基である。一実施形態においては、Rfはパーフルオロブチル基である。一実施形態においては、Rfはエーテル酸素を含有する。一実施形態においては、nは10を超える。
【0105】
一実施形態においては、本発明のHFAPは、高フッ素化ポリマー主鎖および式Xを有する側鎖を含み:
【0106】
【化13】

【0107】
式中:
15は、高フッ素化アルキレン基または高フッ素化ヘテロアルキレン基であり;
16は、高フッ素化アルキル基または高フッ素化アリール基であり;
aは0または1〜4の整数である。
【0108】
一実施形態においては、本発明のHFAPは式XIを有し:
【0109】
【化14】

【0110】
式中:
16は、高フッ素化アルキル基または高フッ素化アリール基であり;
cは独立して0または1〜3の整数であり;
nは少なくとも4である。
【0111】
HFAPの非重水素化類似体の合成は、たとえば、Feiringら,J.Fluorine Chemistry 2000,105,129−135;Feiringら,Macromolecules 2000,33,9262−9271;Desmarteau),J.Fluorine Chem.1995,72,203−208;Applebyら,J.Electrochem.Soc.1993,140(1),109−111;およびDesmarteauの米国特許第5,463,005号明細書に記載されている。
【0112】
一実施形態においては、HFAPは、少なくとも1種類の高フッ素化エチレン系不飽和化合物から誘導される繰り返し単位も含む。パーフルオロオレフィンは2〜20個の炭素原子を含む。代表的なパーフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、CF2=CFO(CF2tCF=CF2(式中、tは1または2である)、およびRf’’OCF=CF2(式中Rf’’は1〜約10個の炭素原子の飽和パーフルオロアルキル基である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、コモノマーはテトラフルオロエチレンである。
【0113】
一実施形態においては、本発明のHFAPはコロイド形成性ポリマー酸である。本明細書において使用される場合、用語「コロイド形成性」は、水に対して不溶性であり、水性媒体中に分散させた場合にコロイドを形成する材料を意味する。コロイド形成性ポリマー酸は、通常、約10,000〜約4,000,000の範囲内の分子量を有する。一実施形態においては、このポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒度は、通常2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲内である。一実施形態においては、このコロイドは2nm〜約30nmの粒度を有する。酸性プロトンを有するあらゆる高フッ素化コロイド形成性ポリマー材料を使用することができる。本明細書において前述したポリマーの一部は、非酸形態、たとえば、塩、エステル、またはフッ化スルホニルとして形成することができる。後述するように、これらは、導電性組成物を調製するために酸形態に変換される。
【0114】
ある実施形態においては、HFAPは高フッ素化炭素主鎖と、式
−(O−CF2CFRf3a−O−CF2CFRf4SO35
(上式中、Rf3およびRf4は独立に、F、Cl、または1〜10個の炭素原子を有する高フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2であり、E5
によって表される側鎖とを含む。場合により、E5はLi、Na、またはKなどの陽イオンであってよく、酸の形態に変換することができる。
【0115】
ある実施形態においては、HFAPは、米国特許第3,282,875号明細書、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および第4,940,525号明細書に開示されるポリマーであってよい。ある実施形態においては、HFAPは、パーフルオロカーボン主鎖と、式
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO35
(式中、E5は前出の定義の通りである)
によって表される側鎖とを含む。この種類のHFAPは、米国特許第3,282,875号明細書に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF))との共重合の後、スルホニルフルオリド基の加水分解によってスルホネート基に変換し、必要に応じてイオン交換することによってそれらを所望のイオン形態に変換することによって製造することができる。米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されている種類のポリマーの一例は、側鎖−O−CF2CF2SO35を有し、式中のE5は前出の定義の通りである。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF))との共重合の後、加水分解し、さらに必要に応じてイオン交換することによって製造することができる。
【0116】
HFAPの一種は、水性Nafion(登録商標)分散体としてE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)より市販されている。
【0117】
重水素酸は、プロトン性HFAPから、固体酸物質を単離し、高温高圧においてD2Oで処理することによって製造することができる。ある実施形態においては、密閉圧力容器中、固体HFAPがD2O中で100〜300℃の間の温度に加熱される。
【0118】
4.導電性組成物
新規導電性組成物は:
(1)高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーを含む組成物;または
(2)(a)フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと;
(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーとを含む組成物
を含む。
【0119】
ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとを含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとから実質的になる。
【0120】
ある実施形態においては、導電性組成物は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーから実質的になる。
【0121】
ある実施形態においては、導電性組成物は:
(1)(a)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーでドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーと;
(b)重水素化液体媒体と
を含む液体組成物;または
(2)(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーと;
(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーと;
(c)重水素化液体媒体とを含む液体組成物
を含む。
【0122】
ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとが分散した重水素化液体媒体を含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとが分散したD2Oを含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとが分散した重水素化液体媒体から実質的になる。ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとが分散したD2Oから実質的になる。
【0123】
ある実施形態においては、導電性組成物は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーが分散した重水素化液体媒体を含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーが分散したD2Oを含む。ある実施形態においては、導電性組成物は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーが分散した重水素化液体媒体から実質的になる。ある実施形態においては、導電性組成物は、(a)高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーが分散したD2Oから実質的になる。
【0124】
ある実施形態においては、場合により添加剤が組成物中に存在する。加えることができる材料の種類の例としては、ポリマー、染料、コーティング助剤、有機および無機の導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、架橋剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤は、重水素化液体媒体に対して可溶性または分散性である材料であるべきであり、単純分子またはポリマーであってよい。
【0125】
a.非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマー
導電性ポリマーにドープすることができるあらゆる非フッ素化ポリマー酸を、新規複合分散体の製造に使用することができる。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー酸は10%未満がフッ素化されており;ある実施形態においては1%未満がフッ素化されている。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー酸はフッ素を全く有さない。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー酸は重水素酸である。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー重水素酸は、少なくとも10%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも20%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも30%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも40%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも50%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも60%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも80%が重水素化されており;ある実施形態においては、少なくとも90%が重水素化されている。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー酸は100%が重水素化されている。
【0126】
酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、それらの重水素化類似体、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基は全てが同じであってもよいし、ポリマーが2種類以上の酸性基を有してもよい。
【0127】
一実施形態においては、酸は非フッ素化ポリマースルホン酸である。酸の一部の非限定的な例は、ポリ(スチレンスルホン酸)(「PSSA」)、ポリ(パージュウテロ−スチレンスルホン酸)(「D8−PSSA」)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)、ポリ(パージュウテロ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「D13−PAAMPSA」)、およびそれらの混合物である。
【0128】
存在する非フッ素化ポリマー酸の量は、導電性ポリマー上の電荷と釣り合わせるために必要な量よりも一般に過剰となる。ある実施形態においては、非フッ素化ポリマー酸の酸当量の、導電性ポリマーのモル当量に対する比は1〜5の範囲内である。
【0129】
ドープした導電性ポリマーは、D2O中、非フッ素化ポリマー酸の存在下での前駆体モノマーの酸化重合によって形成することができる。このようなモノマーの酸化重合は周知となっている。過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウムなどの酸化剤を使用することができる。場合により、硫酸第二鉄などの触媒を使用することもできる。得られる生成物は、D2O中の非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーの分散体となる。
【0130】
ある実施形態においては、ドープした導電性ポリマーは、D8−PSSAでドープしたポリ(D6−EDOT)、D8−PSSAでドープしたポリ(D5−Py)、およびD13−PAAMPSAでドープしたD7−Paniからなる群から選択される。これらの導電性ポリマーは、ポリ(D6−EDOT)/D8−PSSA、ポリ(D5−Py)/D8−PSSA、およびD7−Pani/D13−PAAMPSAと略記される。
【0131】
以下の議論において、重水素化導電性ポリマーおよびHFAPは単数形で言及される。しかし、これらのいずれ両方の2種類以上を使用できることを理解されたい。
【0132】
導電性組成物は、最初にドープした重水素化導電性ポリマーを形成し、次にHFAPおよび場合による添加剤を任意の順序で加えることによって調製される。HFAPの酸当量の、ドープ用の非フッ素化酸の酸当量に対する比は、少なくとも0.1で4以下であり;ある実施形態においては2以下である。
【0133】
ドープした重水素化導電性ポリマーは、重水素化液体媒体中、非フッ素化ポリマー酸の存在下での重水素化前駆体モノマーの酸化重合によって一般に形成される。重水素化液体媒体は、一般にD2O、またはD2Oと化重水素化有機溶媒との混合物である。これらの材料の多くは市販されている。
【0134】
最初にHFAPを重水素化液体媒体中に溶解または分散させることができる。次にこれを重水素化液体媒体中の重水素化導電性ポリマーの分散体を加えることができる。
【0135】
場合による添加剤が存在する場合、それは任意の時点で加えることができる。添加剤は、重水素化液体媒体中の溶液または分散体として加えることができ、または固体として直接加えることもできる。
【0136】
あるいは、ドープした導電性ポリマーの非重水素化類似体を最初に形成し,続いてその材料を重水素化することができる。ある実施形態においては、部分重水素化材料を処理して、重水素化のレベルを増加させる。重水素化方法は周知となっている。重水素化は、一般に、三塩化アルミニウムまたは塩化エチルアルミニウムなどのルイス酸H/D交換触媒の存在下で非重水素化合物をd6−ベンゼンなどの重水素化溶媒で処理することによって、あるいは非重水素化合物をCF3COOD、DClなどの酸で処理することによって行うことができる。重水素化方法の一部の例は、a)”Efficient H/D Exchange Reactions of Alkyl−Substituted Benzene Derivatives by Means of the Pd/C-H2-D2O System” Hiroyoshi Esaki,Fumiyo Aoki,Miho Umemura,Masatsugu Kato,Tomohiro Maegawa,Yasunari Monguchi,and Hironao Sajiki Chem.Eur.J.2007,13,4052−4063.b)”Aromatic H/D Exchange Reaction Catalyzed by Groups 5 and 6 Metal Chlorides” GUO,Qiao−Xia,SHEN,Bao−Jian;GUO,Hai−Qing TAKAHASHI,Tamotsu Chinese Journal of Chemistry,2005,23,341−344;c)”A novel deuterium effect on dual charge−transfer and ligand−field emission of the cis−dichlorobis(2,2’−bipyridine)iridium(III) ion” Richard J.Watts,Shlomo Efrima,and Horia Metiu J.Am.Chem.Soc.,1979,101(10),2742−2743;d)”Efficient H−D Exchange of Aromatic Compounds in Near−Critical D20 Catalysed by a Polymer−Supported Sulphonic Acid” Carmen Boix and Martyn Poliakoff Tetrahedron Letters 40(1999)4433−4436;e)米国特許第3849458号明細書;f)”Efficient C−H/C−D Exchange Reaction on the Alkyl Side Chain of Aromatic Compounds Using Heterogeneous Pd/C in D2O” Hironao Sajiki,Fumiyo Aoki,Hiroyoshi Esaki,Tomohiro Maegawa,and Kosaku Hirota Org.Lett.,2004,6(9),1485−1487に見ることができる
【0137】
導電性ポリマー重水素化の後、HFAPおよび場合による添加剤が前述のように加えられる。
【0138】
ある実施形態においては、場合による添加剤を加える前または後にpHを上昇させる。pHは、重水素化された陽イオン交換樹脂および/または塩基性樹脂で処理することによって調整することができる。ある実施形態においては、pHはD2O塩基性溶液を加えることによって調整される。この塩基の陽イオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、パージュウテロ−アンモニウム、およびパージュウテロ−アルキルアンモニウムであってよいが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、アルカリ金属がアルカリ土類金属陽イオンよりも好ましい。
【0139】
連続技術および不連続技術などのあらゆる液相堆積技術を使用して、前述の組成物からフィルムを作製することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようにして形成されたフィルムは連続で、平滑で、比較的透明である。
【0140】
b.HFAPでドープした重水素化導電性ポリマー
ある実施形態においては、HFAPでドープした重水素化導電性ポリマーは、重水素化液体媒体中、HFAPの存在下での重水素化前駆体モノマーの酸化重合によって形成される。ある実施形態においては、重水素化液体媒体はD2Oである。非重水素化類似体材料の重合は、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。得られる生成物は、HFAPでドープした重水素化導電性ポリマーの液体分散体である。
【0141】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたポリ(D4−EDOT)およびポリ(D6−EDOT)、過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたポリ(D5−Py)、ならびに過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたD7−Paniからなる群から選択される。ある実施形態においては、過フッ素化重水素酸ポリマーは、酸性プロトンが重陽子と交換されているTFE(テトラフルオロエチレン)とPSEPVE(パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸とのコポリマーである。この材料は「D−ポリ(TFE−PSEPVE)」と略記される。
【0142】
あるいは、ドープした導電性ポリマーの非重水素化類似体を最初に形成し、続いてその材料を重水素化することができる。ある実施形態においては、部分重水素化材料を処理して、重水素化のレベルを増加させる。重水素化方法は、前述したように周知となっている。
【0143】
ある実施形態においては、前述したように、分散体のpHを上昇させる。ドープした導電性ポリマーの分散体は、形成されたときのpHの約2から中性pHまで依然として安定である。
【0144】
ある実施形態においては、ドープした導電性ポリマーの分散体は、重水素化液体媒体に対して可溶性または分散性である他の材料とブレンドされる。添加剤は前述した通りである。
【0145】
5.電子デバイス
本明細書に記載の重水素化材料を含む1つまたは複数の層を有することで恩恵を受けることができる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、発光照明器具、またはダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクスの処理による信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品(たとえば、薄膜トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は、酸素感受性指示薬およびバイオアッセイにおける発光指示薬などの用途において有用となる場合が多い。
【0146】
一実施形態においては、有機電子デバイスは、(a)少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーと、(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーとを含む少なくとも1つの層を含む。
【0147】
a.第1の代表的なデバイス
特に有用なトランジスタの種類の1つである薄膜トランジスタ(「TFT」)は、一般に、ゲート電極、ゲート電極上のゲート誘電体、ゲート誘電体に隣接するソース電極およびドレイン電極、ならびにゲート誘電体に隣接しソース電極およびドレイン電極に隣接する半導体層を含む(たとえば、S.M.Sze,Physics of Semiconductor Devices,2nd edition,John Wiley and Sons,page 492を参照されたい)。これらの構成要素は、種々の構成で組み合わせることができる。有機薄膜トランジスタ(OTFT)は有機半導体層を有することが特徴である。アントラセンス(anthracence)、レジオ規則性(regioregular)ポリチオフェン類などの有機半導体層材料が、当技術分野において周知となっている。10S/cmを超える導電率を有する重水素化導電性ポリマー組成物が、有機薄膜トランジスタ(「OTFT」)の電極として特に有用である。
【0148】
一実施形態においては、OTFTは:
基体
絶縁層;
ゲート電極;
ソース電極;
ドレイン電極;
有機半導体層を含み;
少なくとも1つの電極が重水素化導電性ポリマーを含み、絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は、ゲート電極および半導体層の両方が絶縁層と接触し、ソース電極およびドレイン電極の両方が半導体層と接触し、電極は互いに接触しないのであれば、あらゆる順序で配列することができる。
【0149】
図1A中、有機電界効果トランジスタ(OTFT)が概略的に示されており、「ボトムコンタクト方式」におけるこのようなデバイスの活性層の相対位置が示されている(OTFTの「ボトムコンタクト方式」では、ドレイン電極およびソース電極を、ゲート誘電体層上に堆積した後、活性有機半導体層を、ソース電極およびドレイン電極ならびに露出して残っているゲート誘電体層の上に堆積する)。基体112は、ゲート電極102および絶縁層104と接触しており、その上にソース電極106およびドレイン電極108が堆積される。ソース電極およびドレイン電極の上および間には、式2の化合物を含む有機半導体層110が存在する。
【0150】
図1Bは、OTFTの概略図であり、トップコンタクト方式におけるこのようなデバイスの活性層の相対位置が示されている(「トップコンタクト方式」では、OTFTは、活性有機半導体層の上に堆積される)。
【0151】
図1Cは、OTFTの概略図であり、最上部にゲートを有するボトムコンタクト方式におけるこのようなデバイスの活性層の相対位置が示されている。
【0152】
図1Dは、OTFTの概略図であり、最上部にゲートを有するトップコンタクト方式におけるこのようなデバイスの活性層の相対位置が示されている。
【0153】
基体は、無機ガラス、セラミック箔、ポリマー材料(たとえば、アクリル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(場合によりポリ(エーテル エーテル ケトン)またはPEEKと呼ばれる)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS))、充填剤を含有するポリマー材料(たとえば、繊維強化プラスチック(FRP))、および/または被覆金属箔を含むことができる。基体の厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えるまでであってよく;たとえば、可撓性プラスチック基体の場合で約50〜約100マイクロメートルであってよく;ガラスまたはシリコンなどの剛性基体の場合で約1〜約10ミリメートルであってよい。典型的には、基体は、製造、試験、および/または使用の間にOTFTを支持する。場合により、基体は、ソース、ドレイン、および電極へのバスライン接続、ならびにOTFT用の回路などの電気的機能を提供することができる。
【0154】
ゲート電極は、金属薄膜、導電性ポリマーフィルム、導電性インクまたはペーストから形成された導電性フィルム、あるいは基体自体、たとえば高濃度ドープしたシリコンであってよい。好適なゲート電極材料の例としては、アルミニウム、金、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー、カーボンブラック/黒鉛を含む導電性インク/ペースト、またはポリマーバインダー中のコロイド状銀分散体が挙げられる。あるOTFTでは、同じ材料で、ゲート電極の機能を得ることができ、基体の支持機能を得ることもできる。たとえば、ドープしたシリコンは、ゲート電極として、およびOTFTの支持体としての機能を果たすことができる。
【0155】
ゲート電極は、金属または導電性金属酸化物の真空蒸着、スパッタリングによって、導電性ポリマー溶液または導電性インクのスピンコーティング、キャスティング、または印刷によるコーティングによって形成することができる。ゲート電極の厚さは、たとえば、金属膜の場合で約10〜約200ナノメートルであってよく、ポリマー導体の場合で約1〜約10マイクロメートルであってよい。
【0156】
ある実施形態においては、ゲート電極は重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、ゲート電極は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、ゲート電極は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとを含む。ある実施形態においては、電極は、金属ナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性粒子をさらに含む。
【0157】
ソース電極およびドレイン電極は、半導体層に対して低抵抗オーミック接触が形成され、それによって半導体層とソース電極およびドレイン電極との間の接点の抵抗が半導体層の抵抗よりも低くなる材料から製造することができる。チャネル抵抗は、半導体層の導電率である。典型的には、抵抗は、チャネル抵抗より低くなるべきである。ソース電極およびドレイン電極としての使用に適した典型的な材料としては、アルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、およびそれらの合金;カーボンナノチューブ;導電性ポリマー;導電性ポリマー中のカーボンナノチューブの分散体;導電性ポリマー中の金属の分散体;およびそれらの多層が挙げられる。当業者には周知のように、これらの材料の一部はn型半導体材料との併用に適しており、他方はp型半導体材料との併用に適している。ソース電極およびドレイン電極の典型的な厚さは、およそ、たとえば約40ナノメートル〜約1マイクロメートルである。ある実施形態においては、厚さは約100〜約400ナノメートルである。
【0158】
ある実施形態においては、ソース電極および/またはドレイン電極は重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、ソース電極および/またはドレイン電極は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、ソース電極および/またはドレイン電極は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとを含む。ある実施形態においては、電極は、金属ナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性粒子をさらに含む。
【0159】
絶縁層は、無機材料フィルムまたは有機ポリマーフィルムを含む。絶縁層として好適な無機材料の実例としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、セレン化亜鉛、および硫化亜鉛が挙げられる。さらに、上記材料の合金、組み合わせ、および多層を絶縁層に使用することができる。絶縁層用の有機ポリマーの実例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂、ならびにそれらのブレンドおよび多層が挙げられる。絶縁層の厚さは、使用される誘電材料の誘電率に依存して、たとえば約10ナノメートル〜約500ナノメートルである。たとえば、絶縁層の厚さは約100ナノメートル〜約500ナノメートルであってよい。絶縁層は、たとえば、約10-12S/cm未満の導電率を有することができる(ここでS=ジーメンス=1/オームである)。
【0160】
ゲート電極と半導体層との両方が絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極との両方が半導体層と接触するのであれば、絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は、あらゆる順序で形成される。「あらゆる順序で」という語句は、逐次形成および同時形成を含んでいる。たとえば、ソース電極およびドレイン電極は、同時または連続して形成することができる。ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極は、物理蒸着(たとえば、熱蒸着またスパッタリング)またはインクジェット印刷などの周知の方法を使用して提供することができる。電極のパターン化は、シャドーマスキング、アディティブ法のフォトリソグラフィ、サブトラクティブ法のフォトリソグラフィ、印刷、マイクロコンタクトプリンティング、およびパターンコーティングなどの周知の方法によって行うことができる。
【0161】
ボトムコンタクト方式のOTFT(図1A)の場合、それぞれソースおよびドレインのチャネルを形成する電極106および108は、フォトリソグラフィ法を使用して二酸化ケイ素層上に形成することができる。次に電極106および108および層104の表面上に半導体層110が堆積される。
【0162】
ある実施形態においては、半導体層110は、1つまたは複数有機半導体化合物を含む。有機半導体葉、典型的には:テトラセン、ペンタセン、およびそれらの誘導体などのアセン類;レジオ規則性オリゴチオフェンおよびレジオ規則性ポリチオフェンなどのチオフェン類;縮合環チオフェン−芳香族類およびチオフェン−ビニレン/アリーレン誘導体類を主成分とする。
【0163】
半導体層110は、当技術分野において周知の種々の技術によって堆積することができる。このような技術としては、熱蒸着、化学蒸着、熱転写、インクジェット印刷、およびスクリーン印刷が挙げられる。堆積のための分散体の薄膜コーティング技術としては、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、ドロップキャスティング、およびその他の周知の技術が挙げられる。
【0164】
トップコンタクト方式のOTFT(図1B)の場合、層110が層104の上に堆積された後、電極106および108が製造される。
【0165】
b.第2の代表的なデバイス
本発明は、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも1つの電気活性層を含む電子デバイスであって、デバイスの少なくとも1つの電気活性層が重水素化導電性ポリマーを含む電子デバイスにも関する。ある実施形態においては、電気活性層は、高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、電気活性層は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとを含む。ある実施形態においては、電極は、金属ナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性粒子をさらに含む。
【0166】
有機電子デバイス構造の別の一例を図2に示す。デバイス200は、第1の電気接触層であるアノード層210と、第2の電気接触層であるカソード層260と、それらの間の電気活性層240とを有する。アノードに隣接して正孔注入層220が存在することができる。正孔注入層に隣接して、正孔輸送材料を含む正孔輸送層230が存在することができる。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む電子輸送層250が存在することができる。デバイスは、アノード210の隣に1つまたは複数の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)、および/またはカソード260の隣に1つまたは複数の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用することができる。
【0167】
層220から250は、個別におよび集合的に活性層と呼ばれる。
【0168】
ある実施形態においては、図3に示されるように電気活性層240がピクセル化される。層240はピクセル単位またはサブピクセル単位241、242、および243に分割され、これらは層全体にわたって繰り返される。ピクセル単位またはサブピクセル単位のそれぞれは異なる色を表す。ある実施形態においては、サブピクセル単位は赤色用、緑色用、および青色用である。図中には3つのサブピクセル単位が示されているが、2つまたは4つ以上を使用してもよい。
【0169】
デバイス200の用途に依存して、電気活性層240は、印加電圧によって活性化する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、または放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。光検出器の例としては、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、および光電管、ならびに光起電力セルが挙げられ、これらの用語はMarkus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw−Hill,Inc.1966)に記載されている。発光層を有するデバイスは、ディスプレイの形成、または白色光照明器具などの照明用途に使用することができる。
【0170】
ある実施形態においては、正孔注入層220は重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、正孔注入層220は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーと、(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーとを含む。ある実施形態においては、正孔注入層220は、(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーと、(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーとから実質的になる。ある実施形態においては、正孔注入層220は、少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーでドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーを含む。ある実施形態においては、正孔注入層220は、少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマーでドープした少なくとも1種類の重水素化導電性ポリマーから実質的になる。
【0171】
デバイス中の他の層は、そのような層によって得られる機能を考慮してそのような層中で有用となることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0172】
このデバイスは、アノード層210またはカソード層260に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層210に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。支持体材料の例としては、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
アノード層210は、カソード層260よりも正孔の注入が効率的な電極である。したがって、アノードは、カソードよりも高い仕事関数を有する。アノードとしては、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を挙げることができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層210が光透過性となるべき場合には、12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、「混合酸化物」という語句は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2種類以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。好適な材料の例としては、インジウム−スズ−酸化物(「ITO」)、インジウム−亜鉛−酸化物(「IZO」)、アルミニウム−スズ−酸化物(「ATO」)、アルミニウム−亜鉛−酸化物(「AZO」)、ジルコニウム−スズ−酸化物(「ZTO」)、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
ある実施形態においては、混合酸化物層はパターン化される。このパターンは希望通りに変化させることができる。この層は、たとえば不連続堆積技術を使用することによってパターンを形成することができる。あるいは、層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターン化されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターン化することができる。当技術分野において周知の他のパターニング方法を使用することもできる。
【0175】
ある実施形態においては、場合により使用される正孔輸送層230が正孔注入層220と電気活性層240との間に存在する。正孔輸送層用の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送小分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4−4’ビス(カルバゾール−9−イル)ビペニル(CBP);1−3’ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)類、ポリアニリン類、およびポリピロール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。場合により、トリアリールアミンポリマー類、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマー類が使用される。場合により、これらのポリマー類およびコポリマー類は架橋性である。架橋性正孔輸送ポリマー類の例は、たとえば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見ることができる。ある実施形態においては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントでドープされる。
【0176】
デバイスの用途に依存するが、電気活性層240は、印加電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの米国特許第6,670,645号明細書、ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載されるような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合により、加工特性および/または電子特性を改善するために、小分子蛍光材料または有機金属材料がドーパントとしてホスト材料とともに堆積される。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
場合により使用される電子輸送層250は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあるし、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層250は、電子の移動を促進し、この層がなければ層240および260が直接接触する場合の消光反応の可能性を減少させることができる。場合による電子輸送層250中に使用可能な電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)、およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体などのなどの金属キレート化オキシノイド化合物;ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンゾイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン類;ならびにそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、電子輸送層はn−ドーパントをさらに含む。n−ドーパント材料は周知となっている。n−ドーパントとしては、1族および2族金属;1族および2族金属の塩、たとえばLiF、CsF、およびCs2CO3;1族および2族金属の有機化合物、たとえばLiキノレート;ならびに分子n−ドーパント、たとえばロイコ染料、W2(hpp)4(式中、hpp=1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジンである)などの金属錯体、ならびにコバルトセン、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環式ラジカル類またはジラジカル類、ならびに複素環式ラジカル類またはジラジカル類のダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物、および多環化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0178】
カソード層260は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソード層260は、第1の電気接触層(この場合はアノード層210)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソード260は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソード用の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウムなどの材料、ならびにそれらの組み合わせを使用することができる。動作電圧を低下させるために、Li含有有機金属化合物、LiF、Li2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2O、およびCs2CO3を有機層とカソード層との間に堆積することもできる。この層は電子注入層と呼ばれる場合がある。
【0179】
通常、カソード層260は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。ある実施形態においては、カソード層は、アノード層210に関して前述したように、パターン化することができる。
【0180】
ある実施形態においては、水および酸素などの望ましくない成分がデバイス200内に入るのを防止するために、接触層260の上に封入層(図示せず)が堆積される。このような成分は、有機層240に対して悪影響を及ぼす場合がある。一実施形態においては、封入層は障壁層またはフィルムである。一実施形態においては、封入層はガラス蓋である。
【0181】
図示していないが、デバイス200が追加の層を含むことができることは理解できよう。当技術分野において周知である別の層、またはその他の別の層を使用することができる。さらに、前述のいずれかの層は、2つ以上の副層を含む場合があるし、層状構造を形成している場合もある。あるいは、アノード層210、正孔注入層220、正孔輸送層230、電子輸送層250、カソード層260、および別の層の一部またはすべては、電荷担体輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を向上させるために、処理、特に表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、デバイスの稼働寿命を考慮して高いデバイス効率を有するデバイスを得ること、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者に認識されている他の問題点の目標の釣り合いを取ることによって、好ましくは決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常的な作業であることは理解できるであろう。
【0182】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード210、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;正孔注入層220、50〜3000Å、一実施形態においては200〜1000Å;場合による正孔輸送層230、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;電気活性層240、10〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;場合による電子輸送層250、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;カソード260、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。したがって、電子−正孔再結合領域が発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0183】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス200に印加される。したがって、デバイス200の層全体に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、電気活性有機フィルムの個別の堆積物を、電流の流れによって独立に励起させることができ、それによって個別のピクセルを発光させることができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、電気活性有機フィルムの堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
【0184】
本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が参照により援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【実施例】
【0185】
実施例1
この実施例では、ジュウテロ−HFAPを形成するためのHFAPの重水素化を示す。酸化ジュウテリウム(D2O)中のジュウテロ−HFAPの分散体の調製をさらに示す。
【0186】
以下の方法で、テトラフルオロエチレン(「TFE」)とパーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸(「PSEPVE」)とのコポリマーの重水素化を行い、D2O中のコロイド分散体を得た。温度が約270℃であることを除けば米国特許第6,150,426号明細書、実施例1、パート2の手順と同様の手順を使用して、987グラム(1つの酸性部位当たりのコポリマーの重量)当たりにスルホン酸中に1つのプロトンを有するポリ(TFE−PSEPVE)から水分散体を作製した。この非重水素化ポリ(TFE−PSEPVE)分散体を、5/8インチ以下の液体深さのトレイ上でポリ(TFE−PSEPVE)の易流動性固体フレークへの変換を行った。次にトレイを0℃まで冷却して、最初に水分散体を凍結させた。凍結後、大部分の水が除去されるまで1mmHg以下の部分真空圧力下に置いた。得られた部分的に乾燥した固体を、真空圧力下で約30℃まで上昇させて、ポリマーを凝集させることなく水分を完全に除去した。
【0187】
あらかじめ真空オーブン中で乾燥させて水を除去した非重水素化ポリ(TFE−PSEPVE)の固体フレーク21gを、あらかじめ窒素パージした金属の円筒管中に入れた。直ちに、Cambridge Isotope Lab,Inc.より購入した150gのD2Oをポリ(TFE−PSEPVE)が入った管に加えた。管に蓋をして、約270℃までプレッシャーラボ(pressure lab)中で短時間加熱した後、室温(R.T.)まで冷却して、固体フレークをD2O中のポリ(TFE−PSEPVE)のコロイド分散体に確実に変換させた。さらに、大過剰のジュウテリウム中のポリ(TFE−PSEPVE)中のプロトンがジュウテリウムと交換されることで、ポリ(TFE−PSEPVE)の重水素化を完了した。大きな粒子を除去するため、このD2O中の重水素化ポリ(TFE−PSEPVE)(「D−ポリ(TFE−PSEPVE)」)分散体をさらに処理した。重量法によってD2O分散体中のD−ポリ(TFE−PSEPVE)の重量%を測定すると、分散体の全重量を基準として11.34重量%であった。
【0188】
実施例2:
この実施例では、ジュウテロ−HFAP、および酸化ジュウテリウム(D2O)中のジュウテロ−HFAPの分散体を形成するための直接法を示す。
【0189】
テトラフルオロエチレン(「TFE」)とパーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸(「PSEPVE」)とのコポリマーは、以下の方法で重水素化し、D2O中のコロイド分散体を得ることができる。温度が約270℃であり、水の代わりにD2Oを使用したことを除けば米国特許第6,150,426号明細書、実施例1、パート2の手順と同様の手順を使用して、987グラム(1つの酸性部位当たりのコポリマーの重量)当たりにスルホン酸中に1つのプロトンを有するポリ(TFE−PSEPVE)からD2O分散体を作製することができる。
【0190】
実施例3
この実施例では、重水素化HFAPでドープした重水素化導電性ポリマーの調製を示す。
【0191】
重水素化ピロール、(「D5−Py」)(式量:72.12)をAldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)より購入した。使用前に、この褐色液体を減圧下で分留した。得られた無色の流出物を13C NMR分光法によって特性決定して、構造を確認した。
【0192】
D−ポリ(TFE−PSEPVE)/D2O分散体中のD5−Pyの重合を以下の方法で行った。最初に、実施例1で調製した70.2gのD−ポリ(TFE−PSEPVE)/D2Oを500mLの樹脂釜中に量り取り、次にさらに14gのD2Oを加えた。このD−ポリ(TFE−PSEPVE)/D2Oの量で8.14mmolの酸となる。釜に、オーバーヘッドスターラーを有するガラス蓋で蓋をした。D−ポリ(TFE−PSEPVE)/D2Oを撹拌しながら、10mL中にあらかじめ溶解させた0.135g(0.26mmol)の硫酸第二鉄および0.62g(2.6mmol)のNa228をD−ポリ(TFE−PSEPVE)/D2Oに加えた。その直後に、7mLのD2O中にあらかじめ溶解させた0.175g(2.43mmol)のD5−Pyを1分間かけて混合物に加えた。D5−Pyを加えた直後に重合が開始した。重合を10分間進行させた。成分の添加および重合は窒素下で行った。10分後、Dowex M−43樹脂を樹脂釜に加え、約5分間混合した。417濾紙で減圧濾過した後、Dowex M−31 Na+樹脂を混合物に加え、5分間混合した。得られた材料を再び417濾紙で減圧濾過した。得られたD−ポリ(TFE−PSEPVE)でドープした重水素化ポリピロール(「ポリ(D5−Py)/D−ポリ(TFE−PSEPVE)」)のD2O分散体を再びイオン交換樹脂で処理して、分散体をさらに精製すると、1.79ppmの硫酸塩、および0.79ppmの塩化物しか含有しなかった。分散体の固体%を測定すると4.3%であり、pHを測定すると5.2であった。ドライボックス中275℃で30分間焼き付けを行ったキャストフィルムの電気伝導度を測定すると室温で約1×10-6S/cmであった。
【0193】
実施例4
この実施例では、ポリ(D5−Py)/D−ポリ(TFE−PSEPVE)を正孔注入層として使用したデバイスの製造および性能を示す。
【0194】
デバイスはガラス基体上に以下の構造を有した:
アノード=インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=ポリ(D5−Py)/D−ポリ(TFE−PSEPVE)(45nm)
正孔輸送層=非架橋のアリールアミンポリマー(20nm)
電気活性層=13:1のホスト:ドーパント(40nm)。ホストは88%が重水素化されているジアリールアントラセン誘導体であった。ドーパントは、エレクトロルミネッセンスのビス(ジアリールアミノ)クリセン誘導体である。
電子輸送層=金属キノレート誘導体(10nm)
カソード=CsF/Al(1.0/100nm)
【0195】
OLEDデバイスは、溶液処理と熱蒸着技術との組み合わせによって作製した。Thin Film Devices,Incのパターン化インジウム・スズ・酸化物(ITO)で被覆されたガラス基板を使用した。これらのITO基体は、30オーム/□のシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。次に、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0196】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後に、実施例3のポリ(D5−Py)/D−ポリ(TFE−PSEPVE)のD2O分散体をITO表面上にスピンコーティングし、次に加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、次に加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に発光層溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。熱蒸着によって電子輸送層を堆積し、続いてCsF層を堆積した。次に減圧下でマスクを交換し、熱蒸着によってAl層を堆積した。チャンバーに通気し、ガラス蓋、乾燥剤、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0197】
OLED試料の特性決定は、それらの(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流密度で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。出力効率は、電流効率にπを乗じた値を動作電圧で割った値である。この単位はlm/Wである。4つのデバイスを同じ方法で作成した。デバイスの結果を表1に示す。
【0198】
【表1】

【0199】
概要または実施例において前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部は不要である場合があり、1つまたは複数のさらに別の行為が、前述の行為に加えて実施される場合があることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0200】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0201】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0202】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。
【0203】
本明細書において明記される種々の範囲内の数値が使用される場合、記載の範囲内の最小値および最大値の両方の前に単語「約」が付けられているかのように近似値として記載されている。この方法では、記載の範囲よりもわずかに上およびわずかに下のばらつきを使用して、その範囲内の値の場合と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、ある値の一部の成分を異なる値の一部の成分と混合した場合に生じうる分数値を含めて、最小平均値と最大平均値との間のすべての値を含む連続した範囲であることを意図している。さらに、より広い範囲およびより狭い範囲が開示される場合、ある範囲の最小値を別の範囲の最大値と一致させること、およびその逆のことが本発明の意図の範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマー;あるいは
(2)(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマー;および
(b)少なくとも1種類の高フッ素化酸ポリマー、
の(1)または(2)のいずれかを含む組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、重水素化ポリチオフェン、重水素化ポリアニリン、重水素化ポリピロール、重水素化縮合多環式複素環式芳香族ポリマー、重水素化ポリ(アミノインドール)、それらのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記導電性ポリマーが、ポリ(D6−3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(D5−ピロール)、ポリ(D7−アニリン)、ポリ(パージュウテロ−4−アミノインドール)、ポリ(パージュウテロ−7−アミノインドール)、ポリ(パージュウテロ−チエノ(2,3−b)チオフェン)、ポリ(パージュウテロ−チエノ(3,2−b)チオフェン)、およびポリ(パージュウテロ−チエノ(3,4−b)チオフェン)からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記高フッ素化酸ポリマーが少なくとも95%フッ素化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記高フッ素化酸ポリマーが、スルホン酸およびスルホンイミドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記高フッ素化酸ポリマーが、パーフルオロ−エーテル−スルホン酸側鎖を有するパーフルオロオレフィンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記高フッ素化酸ポリマーが過フッ素化されており、重水素酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記重水素化導電性ポリマーが前記高フッ素化酸ポリマーでドープされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたポリ(D6−EDOT)、過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたポリ(D5−Py)、および過フッ素化重水素酸ポリマーでドープしたD7−Paniからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記重水素化導電性ポリマーが、非フッ素化ポリマー酸でドープされている、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記重水素化導電性ポリマーが、D8−ポリスチレンスルホン酸でドープしたD6−ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、D8−ポリスチレンスルホン酸でドープしたD4−ポリピロール、およびD13−ポリ(2−アクリルアミド−2メチル−1−プロパンスルホン酸)でドープしたD7−ポリアニリンからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
(a)非フッ素化ポリマー酸でドープした重水素化導電性ポリマーと、(b)高フッ素化酸ポリマーとが分散している重水素化液体媒体を含む組成物。
【請求項13】
高フッ素化酸ポリマーでドープした重水素化導電性ポリマーが分散している重水素化液体媒体を含む組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の重水素化導電性ポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、有機電子デバイス。
【請求項15】
基体
絶縁層;
ゲート電極;
ソース電極;
ドレイン電極;および
有機半導体層を含み;
少なくとも1つの電極が重水素化導電性ポリマーを含み、ここで、前記ゲート電極および前記半導体層の両方が前記絶縁層と接触し、前記ソース電極および前記ドレイン電極の両方が前記半導体層と接触し、前記電極は互いに接触していないのであれば、前記絶縁層、前記ゲート電極、前記半導体層、前記ソース電極、および前記ドレイン電極をあらゆる順序で配置することができる、請求項14に記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515157(P2013−515157A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546171(P2012−546171)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061680
【国際公開番号】WO2011/087818
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】