説明

導電性ローラ

【課題】 局所的な押圧に起因する凹みが防止又は軽減された導電性ローラを提供すること。
【解決手段】 導電性ローラの導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化を、加圧下において行なうことにより、得られた導電性弾性層の、局所的な押圧に起因する凹みに対する耐性が有意に向上させる。
【効果】 導電性ローラでは、導電性弾性層の、局所的押圧に起因する凹みに対する耐性が有意に向上するので、感光ドラムやブレードと長時間当接しても凹みが生じない又は凹みが従来の現像ローラよりも有意に低減された導電性ローラを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的押圧による凹みに対する耐性の高い導電性ローラおよびその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式非磁性一成分方式画像形成装置の導電性ローラには帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、トナークリーニングローラなどがある。その中で現像ローラは、通常、導電性ゴムで形成されたゴムローラであり、トナーを感光ドラムに移送して静電潜像を現像する役割を果たしている。現像ローラの弾性層にシリコーンゴムが用いられており、感光ドラムやトナーを規制するためのブレードと接触している。特に、機械がずっと停止している夜間や休日等は、現像ローラの同じ部位が長時間にわたって感光ドラムやブレードと接触し、これらによって局所的に押圧されている。その結果、ゴムローラに局所的な凹みが生じる。このような凹みが生じると、その部分にはトナーが過剰に乗るため、複写画像に濃いスジが現れ、複写画像の品質が低下するという問題が起きる。
【0003】
このような現像ローラの凹みの発生を防止するために、特許文献1には、現像ローラと感光ドラムとの当接を解除できる画像形成装置が記載されている。この画像形成装置では、動作が所定時間以上行なわれない場合には、現像ローラと感光ドラムとの当接が自動的に解除される。このような機構があれば、現像ローラの凹みの発生はかなり防止されると考えられるが、このような機構を組み込むと機械がそれだけ複雑になり、コストも高くなる。
【0004】
一方、現像ローラのこれまでの凹み量の試験は、プリンター等の実機に組み込み1週間程度の放置後に、通紙した画像で評価することしかできなかった。また、永久ひずみの試験方法としてはJIS K 6262 があるが,この試験方法では局所的な押圧による凹み量の差を測定することが出来なかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001-249541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、局所的な押圧に起因する凹みが防止又は軽減された導電性ローラを提供することである。また、本発明の目的は、導電性ローラの局所的な押圧による凹み量の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、鋭意研究の結果、導電性ローラの導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化を、加圧下において行なうことにより、得られた導電性弾性層の、局所的な押圧に起因する凹みに対する耐性が有意に向上することを見出し、本発明を完成した。さらに、本願発明者は、局所的な押圧に起因する凹みに対する耐性を的確に測定できる測定方法を発明した。
【0008】
すなわち、本発明は、芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行われたことを特徴とする導電性ローラを提供する。また、本発明は、芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラを提供する。さらに、本発明は、芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行なわれ、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラを提供する。さらに、本発明は、導電性ローラに、糸を架けて重りを吊るし、所定時間経過後、糸が架けられていた部分の凹みを測定することを含む、導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、局所的な押圧に起因する導電性弾性層の凹みに対する耐性が向上した導電性ローラが提供された。本発明の導電性ローラでは、導電性弾性層の、局所的押圧に起因する凹みに対する耐性が有意に向上するので、感光ドラムやブレードと長時間当接しても凹みが生じない又は凹みが従来の現像ローラよりも有意に低減された導電性ローラを得ることができる。また、本発明の導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定方法によれば、導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性を簡便かつ的確に測定することができるので、新たな導電性ローラの開発等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の導電性ローラは、芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層は、付加硬化型導電性シリコーンゴムにより形成されている。付加硬化型導電性シリコーンゴム自体はゴム成形品の分野において周知であり、種々のものが市販されている。本発明においても、種々の市販の付加硬化型導電性シリコーンゴムを用いることができ、その種類は限定されない。
【0011】
本発明の導電性ローラでは、導電性弾性層を構成する付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行われる。一次硬化は、押出成形等の成形を行なった後の未硬化のゴムを初めて硬化させる工程を意味し、通常、押出成形等の成形工程の次の工程である。本発明の導電性ローラの製造時において、一次硬化を加圧下において行なう。一次硬化を加圧下において行なうことにより、付加反応型導電性シリコーンゴムの架橋点が確実に架橋するため、後述の実施例で実証されるように、得られる成形物の、局所的押圧に起因する凹みに対する耐性が有意に向上する。付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化を常圧で行なった場合には、硬化温度が同じであっても凹みに対する耐性が有意に向上するような効果は得られず、また、シリコーンゴムであっても過酸化物硬化型導電性シリコーンゴムでは、一次硬化を加圧下において行った場合であっても、凹みに対する耐性が有意に向上するような効果は得られない。一次硬化を行なう圧力は、好ましくはゲージ圧(以下、特に断りがない限り、及び文脈からそうでないことが明らかな場合を除き圧力はゲージ圧を意味する)で2kgf/cm2以上であり、さらに好ましくは4kgf/cm2以上である。圧力の上限は特にないが、余りに高圧にしようとすると大掛かりで堅牢な設備が必要になるためコストが増大するので、通常、20kgf/cm2程度以下が適当である。なお、一般的な市販のオートクレーブ(蒸気釜)を用いる場合には、圧力は最大で10kg/cm2程度であり、高い圧力下で行なうことが好ましい。加圧は、ゴムと反応しない任意の気体を媒体として行うことができ、水蒸気や空気を用いることが簡便で好ましく、特に、水蒸気は市販のオートクレーブを用いて容易に加圧できるので好ましく用いることができる。
【0012】
一次硬化の温度は、通常、50℃以上、好ましくは、120℃〜200℃程度である。なお、オートクレーブ内で水蒸気で加圧する場合には、その圧力が飽和蒸気圧である温度下で硬化を行なうことになるが、その温度が上記範囲に入っていることが好ましい。また、硬化時間は、特に限定されず、形成する導電性弾性層の大きさ等に応じて適宜設定されるが、通常、5分間以上、好ましくは10分間〜4時間程度である。
【0013】
本発明の導電性ローラの製造方法は、上記した一次硬化の方法に特徴があり、一次硬化以外の工程は従来と同様な製造方法により本発明の導電性ローラを製造することができる。すなわち、芯金の周囲に、通常、押出成形等の成形により未硬化の付加硬化型導電性シリコーンゴム層を形成する。これは常法により市販の押出成形機等を用いて容易に行うことができる。
【0014】
次に、通常、上記した一次硬化工程が行なわれる。
【0015】
次に、通常、エージング工程が行なわれる。エージング工程の条件は、特に限定されないが、一次硬化した導電性弾性層を、通常、120℃〜250℃、好ましくは170℃〜230℃の空気中に、通常、1時間〜48時間、好ましくは4時間〜24時間放置することにより行なわれる。
【0016】
次に所望により、研磨工程を行い、本発明の導電性ローラが得られる。
【0017】
本発明の導電性ローラは、導電性を有するローラであれば特に限定されないが、上記のように、感光ドラムやトナーを規制するためのブレードと常に接触する現像ローラの場合に特に威力を発揮する。すなわち、本発明の導電性ローラが、電子写真式非磁性一成分方式画像形成装置の現像ローラである場合には、感光ドラムやブレードとの当接に起因する局所的な凹みを防止し又は有意に減少することができるので、電子写真式非磁性一成分式画像形成装置の現像ローラは、本発明の特性をうまく利用した好ましい例である。なお、ここで、「電子写真式非磁性一成分方式画像形成装置」は、感光ドラム上の静電潜像の現像にキャリアを用いず、トナーだけを用いる方式(一成分現像法)で、かつ、磁石を画像形成装置内に持たない画像形成装置で、最近の小型複写機や小型プリンターとして広く利用されているものであり、複写機、プリンターやファクシミリ並びにこれらとの複合機等も包含される。
【0018】
導電性弾性層を構成する付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化を加圧下で行うことにより、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラが提供された。したがって、本発明は導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラ、及び芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行なわれ、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラをも提供する。直径1mmの糸に120g以上300g以下の重りを24時間吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下である導電性ローラが特に好ましい。なお、ここで規定される凹み量の測定方法は、下記実施例に具体的に記載されている。
【0019】
本発明は、さらに、導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定方法をも提供する。この方法では、導電性ローラに、糸を架けて重りを吊るし、所定時間経過後、糸が架けられていた部分の凹みを測定する。糸は、市販の釣り糸やタコ糸等でよく、その太さは試験の目的に応じて適宜選択できるが直径が通常0.2mm〜5mmであり、好ましくは0.2mm〜2mmである。また、紐類や、針金、ワイヤー等の金属線も本発明で言う「糸」に包含される。重りの重さは、試験の目的に応じて適宜選択でき、通常、数十グラムないし数キログラム程度、好ましくは数十グラムないし数百グラムである。また、試験時間は、試験の目的に応じて適宜選択でき、通常、数分〜数十時間である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0021】
(1) 現像ローラの製造
外径10mmの金属芯金上に、50mm一軸ベントシリコーンゴム押出機((株)三葉製作所)を用いて付加硬化型導電性シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))又は比較のため過酸化物硬化型導電性シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))を押出成形し、未硬化のゴムローラを得た。
【0022】
次に、市販の蒸気釜中で一次硬化を行なった。硬化時の圧力及び温度を下記表1に示す。なお、一次硬化の時間は、いずれのローラも60分間であった。
【0023】
【表1】

【0024】
また、比較のため、ローラNo.E及びFについては、常圧下で一次硬化を行なった。この条件を下記表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
さらに、比較のため、過酸化物硬化型導電性シリコーンゴムのローラ(ローラNo.G)については、ゲージ圧力6kgf/cm2、温度165℃(ローラNo. Aと同一条件)で一次硬化を行なった。
【0027】
次に、高温炉PHH-201(エスペック(株))中でエージングを行なった。エージングの条件は、200℃、6時間であった。
【0028】
次に、ゴムローラ専用研削盤 MAC-600-TS((株)水口製作所)を用いて研磨を行い、ローラ外径20.00±0.05mm、ローラ表面粗さRz=3〜5μmの各種現像ローラを得た。
【0029】
(2) 現像ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定
図1に示すように、ローラに直径1mmの釣り糸を架け、下部に重りを吊るし、24時間放置した。重りの重さは、60、90、120、150、210、240、300及び480gfであった。釣り糸をかけた位置は、ローラゴム部の片端面から20mmの位置を最初に釣り糸をかける位置とし、その後10mm間隔で移動させ、反対側端面から20mmまでを釣り糸をかける位置とした(図1)(釣り糸をかける位置が無くなった場合
は、最初に釣り糸をかけたローラ面の反対側を用いて同様に行った)。24時間後、釣り糸及び荷重を開放し、釣り糸をかけていた位置をローラ軸方向に測定した。表面粗さの測定は、表面粗さ測定器サーフコム1400D ((株)東京精密)を用い、表3に示す条件で行なった。
【0030】
【表3】

【0031】
試験は、データの正確性を見るために、各荷重3回ずつ行った。また、釣り糸をかけた位置が3μm以上凹んだものを凹みとした。3μm未満は、凹みとして読み取れないため0とした。凹み量は、釣り糸をかけた凹み部分の最も凹んでいると判断した場所を粗さ計測定チャートから読み取った。
【0032】
測定結果を下記表4ないし表6に示す。なお、表4、表5及び表6は、それぞれ1回目、2回目及び3回目の測定結果を示し、各表中の数値は凹み量(μm)である。また、3回の測定から各荷重における凹み量の平均値を取り、凹み量と荷重の関係を図2に示した。
【0033】
図2から明らかなように、付加硬化型導電性シリコーンゴムを用いた場合には、一次硬化時の圧力が高くなるほど、凹み量が減少した。特に、ローラNo.AとローラNo.E、及びローラNo.BとローラNo.Fは、それぞれ同一温度で一次硬化を行なったが、加圧下で一次硬化を行なった、ローラNo.A及びローラNo.Bの方が、常圧下でそれぞれ同一温度で一次硬化を行なったローラNo.E及びローラNo.Fよりも凹み量が少なかった。このことから、凹み量の減少効果をもたらすものは一次硬化時の圧力であることが明らかになった。また、過酸化物硬化型シリコーンゴムのローラNo.Gは、ローラNo.Aと同一の圧力、温度条件で一次硬化を行なったが、ローラNO.Aより凹み量がはるかに大きく、常圧で硬化を行ったローラNo.Eよりも凹み量が大きかった。このことから、付加反応型シリコーンゴムは、過酸化物硬化型シリコーンゴムよりも、硬化時の圧力に関係なく局部押圧による凹みに対する耐性の向上に効果があることが分った。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
以上より、付加硬化型導電性シリコーンゴムを加圧下で一次硬化させる本発明の方法により、局所的押圧による凹みに対する耐性が向上した導電性ローラが得られることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例において採用した、本発明の導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定を説明するための図である。
【図2】実施例において製造した、各種現像ローラの、荷重と凹み量との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行われたことを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記一次硬化が、ゲージ圧で2kgf/cm2以上の圧力下で行われた請求項1記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記一次硬化が、ゲージ圧で4kgf/cm2以上の圧力下で行われた請求項2記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記一次硬化が、水蒸気による加圧下で行なわれた請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラ。
【請求項6】
直径1mmの糸に120g以上300g以下の重りを24時間吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下である請求項5記載の導電性ローラ。
【請求項7】
芯金と導電性弾性層とを有し、導電性弾性層としての付加硬化型導電性シリコーンゴムの一次硬化が加圧下で行なわれ、導電性弾性層に糸をかけて重りを吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下の導電性ローラ。
【請求項8】
直径1mmの糸に120g以上300g以下の重りを24時間吊るした後の局所的押圧の凹み量が5μm以下である請求項7記載の導電性ローラ。
【請求項9】
前記一次硬化が、ゲージ圧で2kgf/cm2以上の圧力下で行われた請求項7又は8記載の導電性ローラ。
【請求項10】
前記一次硬化が、ゲージ圧で4kgf/cm2以上の圧力下で行われた請求項9記載の導電性ローラ。
【請求項11】
現像ローラである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項12】
導電性ローラに、糸を架けて重りを吊るし、所定時間経過後、糸が架けられていた部分の凹みを測定することを含む、導電性ローラの局所的押圧による凹みに対する耐性の測定方法。
【請求項13】
前記導電性ローラが現像ローラである請求項12記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−323266(P2006−323266A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148037(P2005−148037)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000227412)日東工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】