説明

導電性ローラ

【課題】電子写真方式の複写機、プリンターの高速化において、トナーの低融点化は必須であるが、トナーが溶けやすいため、ローラ表面にトナーが付着し、カブリや縦スジ等の画像不良が発生することが問題となる。これを防止できる導電性ローラを提供する。
【解決手段】導電性支持部材1と、前記支持部材外周面上に形成された弾性層2と、前記弾性層の外周面上に形成され最表面に露出する被覆層3とを含む導電性ローラであって、前記被覆層が必須成分として(A)熱可塑性樹脂、(B)酸素、窒素、及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する有機化合物で変性されたシリコーンを含む微粒子、及び(C)導電性付与剤を含む複合材料からなる導電性ローラである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、またはファクシミリ等の電子写真方式の現像装置に好適に用いることができる導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ローラは、電子写真方式の現像装置において、帯電ローラ、現像ローラ、及び定着ローラ等の用途で使用されているが、それぞれの用途によって、導電性ローラとしての要求特性は異なっている。
(非磁性一成分接触現像方式の現像ローラ)
例えば、電子写真方式の中の1つである非磁性一成分接触現像方式において、現像ローラは感光体等の静電潜像担持体へトナーを搬送する機能を有するものである。こうした用途で現像ローラに要求される品質としては、トナー搬送に適した表面凹凸、トナー離型性に優れた表面性状、トナー帯電に適した導電性、及び低硬度低圧縮歪み等である。
(トナーの低融点化)
ところで、複写機、プリンター等の印刷速度の高速化には大きな市場からの要求があり、電子写真方式はこれに応える方式ではあるが、さらなる高速化を実現するために、トナーを紙へ定着する時間を短縮する、具体的にはトナーの低融点化が進められている。しかしながら、トナーの融点を下げることで、トナーと接触する各部材にトナーが融着し易くなるという問題が発生する。
(接触現像方式とフィルミングとの関係)
特に、接触現像方式の現像ローラの場合には、感光体、ブレード、及びトナー漏れ防止部材等と現像ローラとの接触により摩擦熱が生じ易いので、トナー低融点化により、現像ローラ表面にトナーが融着(フィルミング)する問題が発生し易い。このようなフィルミングが起こった状態で印刷を続けた場合、印刷物に縦すじや白地カブリ等の画像欠陥が発生する。
(従来のトナーフィルミング性改善技術)
このようなフィルミングがローラに発生しないようにする技術、つまり、トナーフィルミング性を改善する技術としては、ローラの最表面の材料として、フッ素ゴムや水素化ニトリルゴムを使用する技術(例えば、特許文献1)、シアノアクリレートを塗布し硬化した材料を使用する技術(例えば、特許文献2)、またローラの最表面樹脂にシリコーンオイルやフッ素系オイルを添加する技術(例えば、特許文献3)等がある。
【特許文献1】特開平5−107874号公報。
【特許文献2】特開平8−297409号公報。
【特許文献3】特開平9−90736号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる実状を鑑みてなされたものであり、導電性ローラ表面へのトナーのフィルミングを防止し、縦すじや白地カブリ等の画像欠陥を改善した導電性ローラを提供するものである。すなわち、従来の技術は、例えば特許文献1及び2のように、表面層材料を変える必要があり、任意の表面層材料が適用できないという問題があり、任意の樹脂を選択できる特許文献3の技術は、オイル成分を表面層に含有しているために、トナーや他部材を汚染することが問題となる。本発明はこれら課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究を重ね、本発明の導電性ローラでは前記課題が解決できることを見出した。
【0005】
すなわち本発明の導電性ローラは、導電性支持部材と、前記支持部材外周面上に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面上に形成され最表面に露出する被覆層とを含む導電性ローラであって、前記被覆層が必須成分として下記(A)〜(C)成分を含む複合材料からなることを特徴とし、前記(B)シリコーンからなる微粒子がローラ表面に均一に分散しており、滑り性や撥水性等のシリコーン本来の特徴が十分に発揮されるので、トナーのフィルミング防止性に優れた導電性ローラとなる。
(A)熱可塑性樹脂。
(B)酸素、窒素、及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子。
(C)導電性付与剤。
【0006】
前記(A)成分としては、主に熱可塑性ウレタン樹脂であることが好ましく、耐摩耗性に優れた導電性ローラとなる。
【0007】
また、前記変性用有機化合物としては、アクリル系化合物及び/又はエポキシ系化合物であることが好ましく、前記(A)成分との相溶性に優れているため前記(B)成分が被覆層に均一に分散し、耐フィルミング性がローラ表面で均一に優れたローラとなり、また、隣接する層との接着性に優れているため丈夫な被覆層を有するローラとなる。
【0008】
また、前記被覆層には、さらに平均粒子径1〜30μmの有機系フィラーを含むようにすることが好ましく、前記(B)成分によるローラ表面への摺動性等のトナー離型性に関する表面性状のローラへの付与とは直接的には無関係に、トナー搬送に適した表面凹凸をローラに付与できる。
【0009】
さらに、前記弾性層としては、必須成分として下記(D)〜(G)成分を含む硬化性組成物の硬化物であることが好ましく、このような前記硬化性組成物は分子量及び官能基量を変化させることで容易に得られる硬化物の物性を制御することができるので、得られるローラの硬度を、電子写真方式を利用した画像形成装置に組み込まれるローラに適した値に制御することが容易にできる。
(D)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する有機重合体。
(E)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物。
(F)ヒドロシリル化触媒。
(G)導電性付与剤。
【0010】
このような本発明の導電性ローラは現像ローラとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性ローラは、その最表面に(A)熱可塑性樹脂との相溶性が良い(B)酸素、窒素及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する有機化合物で変性されたシリコーンからなる微粒子を含む被覆層を有するため、前記(B)シリコーンからなる微粒子がローラ表面に均一に分散しており、滑り性や撥水性等のシリコーン本来の特徴が十分に発揮されるので、トナーのフィルミング防止性に優れた導電性ローラとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
(図1:3層構造の例)
図1は、本発明に係る導電性ローラの断面図である。この導電性ローラは、導電性支持部材1の周りに、弾性層2が設けられ、この弾性層2の上に被覆層3が形成されたものである。
(導電性支持部材)
導電性支持部材1は、好ましくは、SUS(ステンレス鋼)、SUM材(快削鋼材)、アルミニウム合金、または導電性樹脂等をその材料とする、直径1mm〜25mm程度の棒状の部材である。
(弾性層)
弾性層2は、好ましくは、必須成分として(D)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する有機重合体、(E)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含む化合物、(F)ヒドロシリル化触媒、及び(G)導電性付与剤を含む硬化性組成物の硬化物である。前記硬化性組成物は分子量及び官能基量を変化させることで、容易に得られる硬化物の物性を制御することができる。
【0013】
このような硬化物は、本発明では、電子写真方式を利用した画像形成装置に組み込まれるローラに使用されるので、その硬度を圧縮歪みが大きくなり過ぎないように、また、トナーに大きなストレスがかからないように、ASKER−C硬度で、20°〜80°とすることが好ましく、特に、他部材と接触しながらトナーを搬送する現像ローラに用いられる場合には、30°〜70°とすることが好ましい。ここでいうASKER−C硬度の測定方法は、対象となる硬化物の厚みを4mmとする以外は、JIS K6301に従う。
(弾性層形成方法)
このような弾性層2の形成方法としては、特に限定されず、従来公知の各種ローラの成形方法を用いることができるが、例えば、中心に導電性支持部材1を設置した金型に、硬化性組成物を押出成形、プレス成形、射出成形、反応射出成形(RIM)、液状射出成形(LIM)、及び注型成形等の各種成形法により成形し、適切な温度および時間で加熱硬化して、導電性支持部材1の周りに弾性層2を形成する方法があり、本発明においては、上述した硬化前の硬化性組成物が液状なので、生産性、加工性の点から、特に、液状射出成形(LIM)が好ましい。この場合、硬化性組成物を金型中で半硬化させた後に、別途後硬化させるプロセスを設けて完全硬化させてもよい。
((D)成分:有機重合体:ベースポリマー)
前記(D)成分は、前記(E)成分とヒドロシリル化反応することにより硬化する弾性層2のベースポリマーであり、主鎖部分となるオリゴマーにアルケニル基が導入されたものである。
((D)成分の主鎖部分)
また、前記(D)成分の有機重合体の主鎖部分は任意の重合体から選ぶことができ、特に制限されるものではない。例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリオキシアルキレン、ポリシロキサン、及びポリスルフィド等が挙げられる。特に、オキシアルキレン単位からなる重合体は、硬化前に低粘度であるため扱いやすく、また、弾性ローラの用途で使用する場合、硬化物が特に柔軟な構造を有するため、肉厚を薄くしても十分にその弾性効果を発揮するという点で、好ましい。
【0014】
さらに、前記オキシアルキレン系重合体としては、主鎖を構成する単位のうち30モル%以上、好ましくは50モル%以上がオキシアルキレン単位からなる重合体が好ましい。なお、オキシアルキレン単位は、一種類である必要はなく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド等からなる共重合体(グラフト重合体も含む)であってもよい。電気特性の環境安定性において、主鎖骨格として比較的吸水性の低いオキシプロピレン単位、またはオキシブチレン単位からなる重合体であることが好ましく、コスト面を考慮すると、オキシプロピレン単位からなる重合体が、特に好ましい。また、オキシアルキレン単位以外に含有される単位としては、重合体製造時の出発物質として使用される、OH基を2個以上有する化合物、たとえば、エチレングリコール、ビスフェノール系化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトール等を用いた場合に誘導され得る単位が挙げられる。
【0015】
上記のようなポリオキシアルキレン系重合体の分子量としては、数平均分子量(Mn)(GPC法、ポリスチレン換算)で500〜50,000であることが、その取扱やすさ、硬化後のゴム弾性の点で好ましい。数平均分子量が500未満の場合、この硬化性組成物を硬化させた場合に充分な機械的特性(ゴム硬度、伸び率)等が得られにくくなる。一方、数平均分子量が50,000以上の場合、分子中に含まれるアルケニル基1個あたりの分子量が大きくなったり、立体障害で反応性が落ちたりするため、硬化が不充分になることが多く、また、粘度が高くなりすぎて加工性が悪くなる傾向にある。
((D)成分のアルケニル基)
前記(D)成分中のアルケニル基は、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素2重結合を含む基であれば特に制限されるものではないが、このような(D)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基と、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基と、メタクリル基等とが挙げられ、好適には、下記一般式1、で示されるアルケニル基が、硬化性に優れる点で特に好ましい。
【0016】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基)
また、このようなアルケニル基がその重合体末端に導入されているものであることが、最終的に得られる硬化物の有効網目鎖量が多くなり、高強度のゴム状硬化物が得られやすくなることから好ましい。
【0017】
このような(D)成分は、例えば、上述した主鎖部分のようにOH基を有するオリゴマーが主鎖部分に相当するような場合には、主鎖部分となるオリゴマーのOH基に対して反応性を有する官能基、及びアルケニル基の両方を含有する化合物、例えば、アリルクロライドを、前記オリゴマーに反応させることにより得られる。
(硬化剤:(E)成分)
前記(E)成分は、前記(D)成分とヒドロシリル化反応して硬化する硬化剤として機能する化合物であり、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、その化合物の分子中に含まれるヒドロシリル基の数が多すぎると、硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存しやすくなり、この残存ヒドロシリル基はボイドやクラックの原因となるため、その数を50個以下に調整するのが好ましく、更には、硬化物のゴム弾性を好適な値とし、かつ、その貯蔵安定性を十分なものとするために、2〜30個に調整することがより好ましい。尚、本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、Siに結合するHを1個有することを意味することとする。よって、SiH2の場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、Siに結合するHは異なるSiに結合している方が、本発明においては、(D)成分と(E)成分との反応による硬化性と、その硬化により得られる降下物のゴム弾性と、の点から好ましい。
【0018】
このような硬化剤の分子量は、成形品の加工性を良好にする観点からは、数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)(Mn)で30,000以下に調整することが好ましく、更に、上記ベースポリマーとの反応性や相溶性を良好にする観点からはMnで300〜10,000に調整することがより好ましい。
【0019】
また、このような硬化剤は、一般にベースポリマーの凝集力が硬化剤の凝集力に比べて大きくなり易いことを考慮すると、相溶性の点でフェニル基含有変性体とすることが特に好ましく、また、重要であり、入手のし易さの点ではその中でもスチレン変性体とすることが好適であり、貯蔵安定性の観点からはα−メチルスチレン変性体とすることが好適である。
((F)ヒドロシリル化触媒)
前記(F)成分は、前記(D)成分と前記(E)成分とをヒドロシリル化反応させるヒドロシリル化触媒であり、その触媒作用があるものであれば特に制限はなく任意のものが使用でき、具体的には、塩化白金酸、白金の単体、
例えばアルミナ、シリカ、及びカ−ボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、
白金−オレフィン錯体、
例えばPtn(ViMe2SiOSiMe2Vi)m、及びPt〔(MeViSiO)4m等で表される白金ービニルシロキサン錯体、
例えばPt(PPh34、及びPt(PBu34等で表される白金−ホスフィン錯体、
例えばPt〔P(OPh)34、及びPt〔P(OBu)34等で表される白金−ホスファイト錯体、
Pt(acac)2
Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びに、
Lamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒、
等が例示される。
【0020】
また、前記(F)成分であるヒドロシリル化触媒としては、白金化合物以外の触媒も使用可能であり、例えば、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、及びTiCl4等が挙げられる。
【0021】
なお、上述の一般式等において、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナート基を表し、n、mは整数を表す。
【0022】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点からは、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、及びPt(acac)2等が好ましい。使用する触媒量については特に制限はないが、(D)成分中のアルケニル基1molに対して10-1〜10-8molの範囲とすることが好ましく、ヒドロシリル化反応を十分に進行させるには、10-2〜10-6molの範囲とすることがさらに好ましい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で、また腐食性が強いものもあり硬化物自体が腐食性を有する懸念もあり、さらに、反応中に水素ガスを大量に発生して発泡した硬化物になってしまう場合があるので(D)成分中のアルケニル基1molに対して10-1mol以上用いない方がよい。
((G)導電性付与剤)
電子写真方式の装置に使用されるローラにおいては、導電領域から半導電領域(104〜1010Ω)に制御する必要があるため、導電性付与剤が一般に添加される。前記(G)成分は、この目的で前記硬化性組成物に添加される導電性付与剤であって、特に制限はなく公知のものを使用することができ、例えば、カーボンブラック、金属微粉末、有機リチウム塩、及び無機リチウム塩等が、また、第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、及びリン酸エステル基等を有する有機化合物もしくは重合体が、さらには、エーテルエステルアミド、及びエーテルイミド重合体、エチレンオキシド−エピハロヒドリン共重合体、及びメトキシポリエチレングリコールアクリレート等で代表される導電性ユニットを有する化合物が、またさらには、高分子化合物の帯電防止剤等の導電性を付与できる化合物等が、挙げられる。これらの導電性付与剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。上記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、及びオイルブラック等が挙げられる。これらカーボンブラックの種類、及び粒径等に制限はない。
【0023】
(G)成分の前記硬化性組成物への添加量は、所望の導電特性に応じて調整され得るが、十分に弾性層2に導電性を付与し、かつ、前記硬化性組成物の粘度を適切な範囲として弾性層形成時の作業性を良好ならしめ、さらには、弾性層の弾性を確保する観点からは、好ましくは、(D)成分の有機重合体100重量部に対し、(G)成分0.01〜100重量部、さらには0.1〜50重量部とすることが好ましい。また、用いる導電性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、導電性付与剤のヒドロシリル化反応に対する影響を考慮する方が好ましい。
(貯蔵安定性改良剤)
本発明に係る硬化性組成物に、貯蔵安定性を改良する目的で、貯蔵安定性改良剤を添加することが好ましい。このような貯蔵安定性改良剤としては、前記(E)成分の保存安定剤として知られている安定剤が好ましく使用できるが、前記目的を達成するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、及び有機過酸化物等を例示することができる。より具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、エチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、及び2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。
【0024】
さらに、前記硬化性組成物に必要に応じて、各種充填剤、各種機能付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤を適宜添加してもよい。前記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、金属微粉末、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、及び硫酸バリウム等が挙げられる。
(被覆層)
本発明に係る被覆層3は、必須成分として(A)熱可塑性樹脂、(B)変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子、及び(C)導電性付与剤を含む複合材料からなり、導電性ローラの最表面に露出する最外層である。このような被覆層3の厚さは、用いる材料、組成、及び用途等に応じて適切な値に設定するものであるが、通常、好ましくは平均厚みで1〜100μmであり、特に弾性層2のゴム弾性を好適に発揮せしめるためには3μm〜30μmが好ましい。1μmより薄くなると耐磨耗性が低下し、長期間の耐久性が低下する傾向がある。また、100μmより厚いと、弾性層との線膨張率の差に起因して、しわが発生しやすくなったり、圧縮歪みが大きくなったりする等の問題が発生する場合がある。
(図2:4層構造の例:中間層4)
本発明に係る被覆層3は、導電性ローラの最表面に露出する最外層としたときに優れたフィルミング防止性を発揮するので、例えば、図2に示すように、中間層4が弾性層2と被覆層3との間に挿入されていてもよい。また、弾性層の材料に可塑剤等を添加することで低硬度化した弾性ローラにおいては、可塑剤がローラ表面に拡散する現象であるブリードが問題となることがあるので、ブリード抑制層として中間層4を挿入することが好ましい。このようなブリード抑制層として中間層4を機能させる場合には、中間層4の材料として、ブリード物が極性化合物であれば、非極性樹脂である、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、及びフッ素系樹脂等が好ましく、逆に、ブリード物が非極性化合物であれば、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、及びアクリル系樹脂ン等が好ましい。
((A)熱可塑性樹脂)
前記(A)熱可塑性樹脂としては、一般的な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されないが、ローラ全体としてだけでなくローラ表面自体に弾性が求められる場合には、熱可塑性エラストマーが好ましく、具体的には、オレフィン系、スチレン系、エステル系、アミド系、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系、及び塩化ビニル系等の熱可塑性エラストマーが挙げられ、この中で、ローラにおいては、耐磨耗性が要求されるので、特にウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0025】
また、前記(A)成分である熱可塑性樹脂には樹脂強度を向上させ、さらに、弾性層2、及び中間層4に対する接着性を向上させるために、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、及びクレー等のフィラーやカップリング剤等の各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。さらに、トナーへのストレスを軽減するために、最表面である熱可塑性樹脂は、低硬度低弾性率のものが好適に使用される。
((B)変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子)
前記(B)成分の変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子とは、シロキサン結合を有する化合物と、酸素、窒素及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する変性用有機化合物とを、共重合させて合成したシリコーン微粒子である。このような共重合の方式としては、ブロック共重合やグラフト共重合等が挙げられるが、前記シリコーン微粒子の合成が比較的簡便にできるので、グラフト共重合が好ましい。
【0026】
前記シロキサン結合を有する化合物とは、具体的には、前記変性用有機化合物と反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンである。例えば、ヒドロシリル基(SiH基)を含有するポリオルガノシロキサンと、メタクリル酸アリルとをヒドロシリル化反応することにより合成されるメタクリロキシプロピル基を有するポリオルガノシロキサンは、前記変性用有機化合物と反応可能な官能基としてメタクリロキシプロピル基を有するポリオルガノシロキサンである。
【0027】
その後、例えば、前記変性用有機化合物であるアクリル酸エステルと、このシロキサン結合を有する化合物とをラジカル重合することにより、アクリル変性されたシリコーン微粒子を合成することができる。
【0028】
このように、前記変性用有機化合物と、それと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンとは、前記のようにラジカル重合することが合成上好ましい。
【0029】
また、ラジカル重合可能なその他の共重合成分として、ビニル系モノマーを含んでも良く、具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、及び、スチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、前記(B)成分である変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子には、本発明の効果を有する範囲内であれば、他の任意の成分がふくまれていても良い。
(ポリオルガノシロキサン骨格)
前記ポリオルガノシロキサンの骨格としては、特に限定はなく、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン、アルキル(C2以上のアルキル基)メチルシロキサン、及びジアルキルシロキサン等が挙げられる。これらの骨格は単独でも、2種以上が混在していても構わない。
(変性用有機化合物)
前記変性用有機化合物は、例えば、下記一般式2に示す官能基を有する有機化合物が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0031】
【化2】

(R1〜R4は任意の1価の有機基あるいは水素原子であれば良く、互いに同一であっても、一部が同一で一部が異なっていても、互いに異なっていてもよい。例えばR1〜R4はメチル基、エチル基、及び水酸基等も挙げられる。)
このような変性用有機化合物は、前記シロキサン結合を有する化合物に対して、シロキサン結合を有する化合物:変性用有機化合物が、5重量部:95重量部〜95重量部:5重量部として共重合することが好ましく、シリコーン由来の撥水性や摺動性、及び変性用有機化合物由来の相溶性やその他の特性を十分に付与するために、10重量部:90重量部〜90重量部:10重量部として重合することがさらに好ましい。
【0032】
(B)成分は、熱可塑性樹脂との相溶性を付与するという観点で、酸素、窒素及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する有機化合物を含有することが好ましいため、上記一般式2の中で特に、アクリル系化合物、及びエポキシ系化合が好ましく、これらは単独で用いても併用しても構わない。
【0033】
アクリル系化合物により変性されたシリコーン微粒子は、(A)成分の熱可塑性樹脂として、ウレタン系、アミド系、エステル基、及びアクリル系等の酸素や窒素原子を有する化合物を用いた場合に、それらとの相溶性が特に優れているため好ましい。また、エポキシ系化合物により変性されたシリコーン微粒子は、被覆層3と接触するである弾性層2、又は中間層4との接着性に優れているためさらに好ましい。
(アクリル系化合物)
このようなアクリル系化合物としては、特に限定はなく、下記一般式3に示すような官能基を有する一般的なモノマーを用いることができ、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェニルアクリレート、アリールアクリレート、及びアクリロニトリル等のモノマーが挙げられ、またそれぞれ対応するメタクリレートも挙げられる。
【0034】
【化3】

(R1〜R3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基等の任意の1価の有機基あるいは水素原子であれば良く、互いに同一であっても、一部が同一で一部が異なっていても、互いに異なっていてもよい。)
(エポキシ系化合物)
このようなエポキシ系化合物としては、特に限定はなく、下記一般式4に示すような官能基を有する一般的なモノマーを用いることができ、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、及びアリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物と、脂環式エポキシ化合物等とが挙げられる。
【0035】
【化4】

(R1〜R4は任意の1価の有機基あるいは水素原子であれば良く、互いに同一であっても、一部が同一で一部が異なっていても、互いに異なっていてもよい。例えばR1〜R4はメチル基、エチル基、及び水酸基等も挙げられる。)
特に、前記(A)成分と前記(B)成分との相溶性をさらに高めるためには両方の成分が同一の官能基を有することが好ましい。例えば、(A)成分がアクリル系熱可塑性樹脂であれば、(B)成分の変性用有機化合物を前述したアクリル系化合物とすることが好ましい。
【0036】
(B)成分の微粒子の粒子径としては、特に制限されないが、1次平均粒子径が0.01〜30μmであることが好ましく、さらに0.05〜10μmの範囲が、トナー搬送に適した表面凹凸表面としつつ、前記熱可塑性樹脂への分散性が確保でき、バランスがとれており好ましい。また、この粒子系は被覆層の膜厚より小さくすることが好ましく、(B)成分を(A)成分中に均一に分散し易くなるので、(A)成分の特性、及び(B)成分の特性を両方効果的に発現可能になる。例えば、(A)成分をウレタン系熱可塑性樹脂、(B)成分をアクリル系化合物で変性したシリコーン微粒子とした場合には、ウレタン系樹脂の耐磨耗性とシリコーン微粒子に起因する摺動性とを併せ持つ被覆層とすることができる。この(A)、(B)成分の系において、逆に微粒子の1次粒子径が被覆層の膜厚より大きいと、被覆層表面においてアクリル系化合物で変性したシリコーン微粒子の突出部分が高くなり、摺動性は好適に発現するものの、耐磨耗性は低下した被覆層となるので、このような被覆層を有するローラを現像ローラとして用いた場合には、その表面状態が初期状態から経時変化するため、トナー搬送量の変化による画像濃度の変化や縦すじ等の画像欠陥の発生等の問題が生じる。
【0037】
前記(A)成分と、前記(B)成分との、配合量の重量比は、(A):(B)=99:1〜50:50の範囲が好ましく、さらに95:5〜70:30の範囲がさらに好ましい。被覆層の複合材料に(B)成分を1重量%以上、かつ50重量%以下の範囲で含ませることで、シリコーン微粒子に起因する摺動性を被覆層に効果的に付与でき、また、弾性層、又は中間層等へのコーティング性が優れた複合材料となるので、ひび割れ等の外観欠陥が発生しにくい被覆層とすることができる。
((C)導電性付与剤)
被覆層3の材料である前記複合材料にも、前述した弾性層2の材料である前記硬化性組成物と同様の目的で、前記(C)成分である導電性付与剤を添加する。この(C)成分としては、前記(G)成分と同様の材料を適宜用いることができる。
【0038】
前記複合材料に含有させる(C)成分の量は、所望の導電特性に応じて調整され得るが、十分に被覆層3に導電性を付与し、かつ、被覆層の柔軟性を確保することでひび割れ等の外観欠陥が生じないようにする観点からは、好ましくは、(A)成分100重量部に対し、(C)成分0.01〜100重量部、さらには0.1〜50重量部とすることが好ましい。
(有機系フィラー)
また、非磁性一成分接触方式の現像ローラで使用する場合においては、トナーの搬送、他部材との摩擦を軽減するために、被覆層および/又は前述した中間層4に平均粒子径1〜30μmの有機系フィラーを添加することが好ましい。特に、中間層4に添加した場合には、被覆層3を介してローラ表面の凹凸を制御できるので、ローラ表面への凹凸付与とは無関係に、被覆層3中に分散された状態で存在するシリコーン微粒子の摺動性をより効果的に発現する設計が可能となる。このような有機系フィラーの平均粒子径は、シリコーン微粒子の1次平均粒子径よりも大きい方が好ましく、本発明に係る変性されたシリコーン微粒子に比べて凝集しにくい有機系フィラーは、ローラ表面の凹凸を制御できるとともに、粒径が小さい前記シリコーン微粒子は凝集したとしてもローラ表面凹凸には影響せず、ローラ表面に高分散状態で存在することで、摺動性をローラ表面に付与することが可能となる。
【0039】
このような有機系フィラーとしては、ウレタン系、アクリル系、メタクリル系、及びスチレン系等が挙げられるが、耐磨耗性が要求される場合には、ウレタン系フィラーが好ましく、また、トナー搬送量の高い制御性が要求される場合には、粒径分布を狭く制御できるアクリル系フィラーが好ましい。
(被覆層形成方法)
本発明に係る被覆層3の形成方法としては、例えば、導電性支持部材の周りに形成された弾性層2、又は中間層4の外周面上に、被覆層を構成する樹脂組成物を一旦溶剤に希釈し被覆層溶液を得て、それをスプレー塗布、ディップ塗布、及びロールコート等の方法を用いて所定の厚みに塗布し、所定の温度で乾燥、硬化させることにより、被覆層を形成する方法等を例示することができる。具体的には、前記(A)、(B)、(C)成分、及びその他添加剤を溶剤に溶かして固形分を3〜20%とした溶液を、スプレーあるいはディップにより、前記弾性層2、又は中間層4の外周面上に塗布する方法が簡便であり、好ましく用い得る方法である。このようなスプレー法、及びディップ法等の方法においては、スプレー、及び/又は、ディップを数回繰り返し、重ね塗りすることで、被覆層の厚みを前述した範囲に容易に調整可能であり好ましく、また、被覆層溶液の被膜性を改善するために、レベリング剤等の各種添加剤を被覆層溶液に必要に応じて添加してもよい。
【0040】
ここで、前記塗布に先立って、被覆層3と、弾性層2、又は中間層4との接着性を向上させるために、弾性層2、又は中間層4の表面をプライマー処理した後、被覆層3を形成することが好ましい。この処理に用い得るプライマーとしては各種カップリング剤またはエポキシ化合物を含有する任意のプライマーを使用することができる。このようなプライマー処理が弾性層2と中間層4との接着層の改善にも適用できることは言うまでもない。
(被覆層塗布用溶媒)
この際に、使用する被覆層塗布用の溶剤としては、用いる被覆層の主成分である(A)熱可塑性樹脂が相溶する溶媒であれば特に制限はないが、好ましくは、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、及び水等が例示される。
(被覆層乾燥温度)
次に、このようにして前記弾性層2、又は中間層4の外周面上に塗布した被覆層3を乾燥する。この時の乾燥温度としては、被覆層塗布用溶剤の沸点との関係にもよるが、一般的には被覆層4の乾燥を十分なものとし、かつ、弾性層、及び被覆層を劣化させないようにするために70〜200℃が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に具体的に実施例、及び比較例により、本発明につき説明する。
【0042】
なお、これらの実施例、および比較例では、以下に述べる共通の導電性支持部材1に、共通の弾性層2を形成したものを原材料として用い、その上に各実施例、比較例に対応する条件で被覆層3を形成し導電性ローラを作製し、これらのローラを電子写真用弾性ローラ・電子写真用導電性ローラとして評価した。
【0043】
すなわち、導電性支持部材1として、寸法が長さ248mm、外径8mmφの、表面にNiメッキを施したSUM材(一般の鋼よりも快削性を向上させた鋼材)を用い、このSUM材の表面にプライマー処理を施し、次いでその周囲に弾性層を形成した。
【0044】
その際に弾性層3の原料として以下の(D)、(E)、(F)、及び貯蔵安定性付与剤を用いた。
(D)有機重合体として、アリル末端ポリオキシプロピレン(商品名カネカサイリルACS003、(株)カネカ製)を500g。
(E)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(商品名CR100、(株)カネカ製):16g。
(F)ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(白金含有率3wt%、キシレン溶液):0.30g。
(G)導電性付与剤としてカーボンブラック(製品名「3030B」、三菱化学製):70g。
【0045】
貯蔵安定性改良剤として、マレイン酸ジメチル:0.20g。
【0046】
具体的には、これらの(D)、(E)、(F)、及び貯蔵安定性付与剤を混合し、10mmHg以下の減圧下、120分間脱泡した後、この硬化性組成物を前記SUM材の導電性支持部材1を設置した金型内に注入し、次いで、金型ごと140℃で30分間加熱することで、前記硬化性組成物を硬化させ、導電性支持部材1の外周上に厚さ4mmの弾性層2を形成した。
【0047】
(実施例1)
上述した弾性層2の外周面上に、以下の(A)、(B)、(C)、及び被覆層塗布用溶媒を原料として用いて被覆層3を形成した。
(A)熱可塑性樹脂として、熱可塑性ウレタン樹脂(商品名Y−258、大日精化工業製)を100g。
(B)変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子として、アクリルで変性されたシリコーン微粒子(商品名シャリーヌR−170S、日信化学工業製)を20g。
(C)導電性付与剤として、カーボンブラック(商品名HS−100、電気化学工業製)を40g。
【0048】
被覆層塗布用溶媒として、N,N’−ジメチルホルムアミドを350g。
【0049】
具体的には、これらの(A)、(B)、(C)、及び被覆層塗布用溶媒を混合したウレタン樹脂溶液に、前述した導電性支持部材1に弾性層2を形成した原材料を縦ディップすることで、この溶液を弾性層2に塗布し、これを140℃で10分間乾燥し、次いで、縦ディップの方向を逆方向とすること以外は前述した方法と同様にして再度ディップし、さらに、140℃で30分間乾燥することで弾性層2の外周面上に被覆層3が形成された導電性ローラを作製した。
【0050】
このようにして作製した導電性ローラを、現像ローラとしてカラーレーザービームプリンター(LBP−2510、キヤノン製)のトナーカートリッジにセットし、23℃、及び55%RHの環境で、1%画像濃度で8,000枚印刷した。その後、この導電性ローラをトナーカートリッジから取り外し、ローラ表面に積層しているトナーをエアブローにより十分に吹き飛ばした。一般に、トナーフィルミングしているローラは、エアブローをした後の表面にもトナーが付着しており、これが縦すじや白地カブリ等の画像欠陥の発生の原因となるフィルミングである。このようなフィルミングしたトナーは、融着しているのでエアブローでは除去できないが、粘着テープをローラに貼り付けた後、剥がすことで、粘着テープに転写されることが知られている。本実施例では、このこのようなテーピングにより、剥がした粘着テープにトナーが付着しているかどうかを目視で観察することによりトナーフィルミングの有無を確認した。実施例1で作製したローラでは、このような導電性ローラとして使用後のテーピング試験で、トナー付着は観察されなかった。
【0051】
(実施例2)
実施例2として、実施例1のウレタン樹脂溶液として、実施例1の(A)、(B)、(C)、及び被覆層塗布用溶媒以外に、さらに有機系フィラーとして、ウレタン微粒子(商品名C−800、根上工業製、平均粒子径6μm、20gを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性ローラを形成し、また、実施例1と同様の方法でフィルミング性を評価したところ、トナー付着は観察されなかった。
【0052】
(比較例1)
比較例1として、実施例1のウレタン樹脂溶液として、実施例1の(A)、(C)、及び被覆層塗布用溶媒を用い、つまり(B)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性ローラを形成し、また、実施例1と同様の方法でフィルミング性を評価したところ、トナー付着がはっきりと観察された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の導電性ローラの一つの実施形態の断面図である。
【図2】本発明の導電性ローラの一つの実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 導電性支持部材
2 弾性層
3 被覆層(最外層)
4 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持部材と、該支持部材外周面上に形成された弾性層と、該弾性層の外周面上に形成され最表面に露出する被覆層とを含む導電性ローラであって、該被覆層が必須成分として下記(A)〜(C)成分を含む複合材料からなることを特徴とする導電性ローラ。
(A)熱可塑性樹脂。
(B)酸素、窒素、及び硫黄からなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を含有する変性用有機化合物で変性されたシリコーン微粒子。
(C)導電性付与剤。
【請求項2】
前記(A)成分が主に熱可塑性ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記変性用有機化合物がアクリル系化合物及び/又はエポキシ系化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記被覆層がさらに平均粒子径1〜30μmの有機系フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記弾性層が必須成分として下記(D)〜(G)成分を含む硬化性組成物の硬化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
(D)分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有する有機重合体。
(E)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物。
(F)ヒドロシリル化触媒。
(G)導電性付与剤。
【請求項6】
現像ローラとして用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−47768(P2007−47768A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190528(P2006−190528)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】