説明

導電性微粒子、異方性導電材料、及び、接続構造体

【課題】一次実装後に導電層が露出しにくく、高い接続信頼性を実現することが可能な導電性微粒子を提供する。また、本発明は、該導電性微粒子を用いてなる、異方性導電材料及び接続構造体を提供する。
【解決手段】基材微粒子の表面に、導電層及び低融点金属層が順次形成されている導電性微粒子であって、前記導電層表面の算術平均粗さが150〜750nmである導電性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次実装後に導電層が露出しにくく、高い接続信頼性を実現することが可能な導電性微粒子に関する。また、本発明は、該導電性微粒子を用いてなる、異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板において、ICやLSIは、電極をプリント基板にハンダ付けすることによって接続されていた。しかし、ハンダ付けでは、プリント基板と、ICやLSIとを効率的に接続することはできなかった。また、ハンダ付けでは、ICやLSIの実装密度を向上させることが困難であった。
これを解決するためにハンダを球状にした、いわゆる「ハンダボール」でICやLSIを基板に接続するBGA(ボールグリッドアレイ)が開発された。この技術によれば、チップ又は基板上に実装されたハンダボールを高温で溶融し基板とチップとを接続することで高生産性、高接続信頼性を両立した電子回路を構成することができる。
【0003】
しかし、近年、基板の多層化が進み、多層基板は使用環境の影響を受けやすいことから、基板に歪みや伸縮が発生し、基板間の接続部に断線が発生するという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1には、樹脂微粒子の表面に、導電性の高い金属が含まれる金属層が形成され、さらに、金属層の表面に、錫等の金属からなる低融点金属層が形成された導電性微粒子が開示されている。このような導電性微粒子を用いれば、柔軟な樹脂微粒子が導電性微粒子に加わる応力を緩和でき、かつ、最表面に低融点金属層を形成することにより、電極間を容易に導電接続することができる。
【0005】
このような導電性微粒子を用いて基板間を導電接続する場合、一般的には、基板に形成された電極部に導電性微粒子を配置し、リフローすることにより一次実装を行った後、更に対向する基板を位置合わせして設置し、再度リフローすることにより二次実装を行う方法が用いられている。
しかしながら、基板間の導電接続を行った場合、一次実装を行った後に、溶融した低融点金属が電極部に流れ落ちるため、導電層が露出してしまい、そのまま二次実装を行うと、対向する基板の電極への金属接合が困難となり、接合不良が発生するという問題があった。
また、このような導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより得られる異方性導電材料を電極間接合に用いる場合にも、溶融した低融点金属がバインダー樹脂中に流れ出し、隣接しあう電極間でリークするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−220691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一次実装後に導電層が露出しにくく、高い接続信頼性を実現することが可能な導電性微粒子に関する。また、本発明は、該導電性微粒子を用いてなる、異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材微粒子の表面に、導電層及び低融点金属層が順次形成されている導電性微粒子であって、前記導電層表面の算術平均粗さが150〜750nmである導電性微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、導電層表面の算術平均粗さを150〜750nmとすることで、低融点金属層を溶融する際にアンカー効果によって、導電層と低融点金属層との界面において低融点金属を保持することができるため、一次実装後に導電層が露出することに起因する接合不良の発生を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の導電性微粒子は、導電層及び低融点金属層が順次形成されている導電性微粒子であって、前記導電層表面の算術平均粗さが150〜750nmである。
【0011】
上記基材微粒子は特に限定されず、例えば、樹脂微粒子、無機微粒子、有機無機ハイブリッド微粒子、金属微粒子等が挙げられる。上記基材微粒子としては、特に樹脂微粒子が好ましい。
【0012】
上記樹脂微粒子は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等で構成される樹脂微粒子が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。上記アクリル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記樹脂微粒子を作製する方法は特に限定されず、例えば、重合法による方法、高分子保護剤を用いる方法、界面活性剤を用いる方法等が挙げられる。
上記重合法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、シード重合、分散重合、分散シード重合等の重合法が挙げられる。
【0014】
上記無機微粒子は特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ等の金属酸化物で構成される微粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド微粒子は特に限定されず、例えば、オルガノシロキサン骨格の中にアクリルポリマーを含有するハイブリッド微粒子が挙げられる。
上記金属微粒子は特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、金、銀等の金属からなる微粒子が挙げられる。
【0015】
上記基材微粒子が樹脂微粒子である場合、上記樹脂微粒子の10%K値の好ましい下限は1000MPa、好ましい上限は15000MPaである。上記10%K値が1000MPa未満であると、樹脂微粒子を圧縮変形させると、樹脂微粒子が破壊されることがある。上記10%K値が15000MPaを超えると、導電性微粒子が電極を傷つけることがある。上記10%K値のより好ましい下限は2000MPa、より好ましい上限は10000MPaである。
【0016】
なお、上記10%K値は、微小圧縮試験器(例えば、島津製作所社製「PCT−200」)を用い、樹脂微粒子を直径50μmのダイアモンド製円柱の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重10gの条件下で圧縮した場合の圧縮変位(mm)を測定し、下記式により求めることができる。
K値(N/mm)=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2
F:樹脂微粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:樹脂微粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:樹脂微粒子の半径(mm)
【0017】
上記基材微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は2000μmである。上記基材微粒子の平均粒子径が1μm未満であると、基材微粒子が凝集しやすく、凝集した基材微粒子の表面に低融点金属層を形成した導電性微粒子を用いると、隣接する電極間を短絡させることがある。上記基材微粒子の平均粒子径が2000μmを超えると、回路基板等の電極間の接続に適した範囲を超えることがある。上記基材微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は3μm、より好ましい上限は1000μmである。
なお、上記基材微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の基材微粒子の粒子径を測定し、測定した粒子径を算術平均することにより求めることができる。
【0018】
上記基材微粒子の平均粒子径の変動係数は特に限定されないが、10%以下であることが好ましい。上記変動係数が10%を超えると、導電性微粒子の接続信頼性が低下することがある。なお、上記変動係数とは、粒子径分布から得られる標準偏差を平均粒子径で除して得られる値を百分率(%)で示した数値である。
【0019】
上記基材微粒子の形状は、対向する電極の間隔を維持できる形状であれば特に限定されないが、真球形状であることが好ましい。また、上記基材微粒子の表面は平滑であってもよいし、突起を有していてもよい。
【0020】
本発明の導電性微粒子は、上記基材微粒子の表面に、導電層が形成されている。上記導電層は、下地金属層としての役割を有する。
上記導電層を形成する金属は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。なかでも、導電性に優れることから、上記導電層を形成する金属は、金、銅又はニッケルであることが好ましい。
【0021】
本発明において、上記導電層表面の算術平均粗さの下限は150nm、上限は750nmである。上記算術平均粗さが150nm未満であると、充分なアンカー効果が得られず、一次実装後に導電層が露出し、750nmを超えると、各凹凸部の表面積が増えるため、各凹凸部表面で低融点金属は流れてしまうためアンカー効果を得ることが出来なくなる。上記算術平均粗さの好ましい下限は200nm、好ましい上限は500nmである。
なお、本明細書において、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601に準拠した方法で測定されたものである。
【0022】
上記導電層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。上記導電層の厚さが0.1μm未満であると、導電性が充分に得られないことがある。上記導電層の厚さが100μmを超えると、導電性微粒子の柔軟性が低下することがある。上記導電層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記導電層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察してその凹凸形状を平均化することにより測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0023】
本発明の導電性微粒子は、低融点金属を有する。上記低融点金属層は、リフロー工程により溶融して電極に接合し、電極間を導通させる役割を有する。
【0024】
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されないが、錫、又は錫を含有する合金であることが好ましい。上記合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金等が挙げられる。
なかでも、各電極材料に対し濡れ性が優れることから、低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金が好適である。
【0025】
更に、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させるために、上記低融点金属層に、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含有させてもよい。なかでも、上記低融点金属層と電極との接合強度を向上させる効果に優れていることから、上記低融点金属層に、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛を含有させることが好適である。
上記低融点金属層中に含有される金属の合計に占める上記金属の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.0001重量%、好ましい上限は1重量%である。上記低融点金属層中に含有される金属の合計に占める上記金属の含有量が、0.0001〜1重量%の範囲内であることにより、上記低融点金属層と電極との接合強度をより向上させることができる。
【0026】
上記低融点金属層における上記錫の含有量は、40重量%以上であることが好ましい。上記含有量が40重量%未満であると、本発明の効果が充分に得られず、実装不良を招くことがある。なお、上記低融点金属層における錫の含有量とは、低融点金属層に含有される元素の合計に占める錫の割合を意味し、上記低融点金属層の錫含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定することができる。
【0027】
上記低融点金属層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は200μmである。上記低融点金属層の厚さが0.1μm未満であると、リフローして溶融させても充分に電極に接合できないことがあり、上記低融点金属層の厚さが200μmを超えると、上記低融点金属層を形成する際に凝集が生じやすく、凝集した導電性微粒子は隣接電極間の短絡を引き起こすことがある。上記低融点金属層の厚さのより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は50μmである。
なお、上記低融点金属層の厚さは、無作為に選んだ10個の導電性微粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して測定し、測定値を算術平均した厚さである。
【0028】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上述のような形状を有する導電層が得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、基材微粒子の表面に無電解めっき法により銅を含有する導電層を形成する工程と、上記導電層上に、錫又は錫と他の金属との合金からなる低融点金属層を形成する工程を有する方法が好ましい。
【0029】
本発明の導電性微粒子を製造する方法において、上記銅等の金属を含有する導電層を形成する工程では、無電解めっき法を用いることが好ましい。
上記無電解めっき法を用いることで、上記基材微粒子表面に銅を粗大な結晶状に析出させ、その後、核成長させることにより表面形状が粗い導電層を形成することができる。これにより、表面の算術平均粗さが150〜750nmである導電層を好適に作製することができる。
【0030】
上記無電解めっき法を用いた方法では、例えば、触媒化工程、無電解めっき工程を行うことで導電層を形成する。
上記触媒化工程は、基材微粒子の表面に次工程の無電解めっきの起点となりうる触媒層を形成させる工程である。
また、上記無電解めっき工程は、触媒を付与した基材微粒子を還元剤の存在下で無電解めっき液中に浸漬し、付与された触媒を起点として基材微粒子の表面にめっき金属を析出させる工程である。
【0031】
上記無電解めっき工程における無電解めっき液のpHの好ましい下限は11、好ましい上限は13である。上記無電解めっき液のpHを上記範囲内とすることで、表面形状が粗い導電層を形成することができる。
【0032】
上記無電解めっき工程における無電解めっき液の液温の好ましい下限は55℃、好ましい上限は60℃である。上記無電解めっき液の液温を上記範囲内とすることで、表面形状が粗い導電層を形成することができる。
【0033】
上記低融点金属層を形成する工程としては、特に限定されないが、導電層が形成された基材微粒子に、錫又は錫と他の金属との合金を含有する低融点金属微粒子を接触させ、せん断圧縮によって低融点金属微粒子を溶融させることにより、低融点金属層を形成する工程を有する方法(乾式被覆法)を用いた場合、本発明の導電性微粒子は、特に優れた効果を発揮することができる。
【0034】
上記乾式被覆法では、例えば、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)を用いる方法等が挙げられる。上記シータコンポーザは、楕円形のキャビティを備えるベッセルと、キャビティ内でこのベッセルと同一軸上において別個に回転されるローターとを備えており、混合に際しては、ベッセルとローターとを逆回転させることにより、キャビティの短径とローターの長径とが一致する付近の間隙内で、せん断圧縮力を作用することができる。このせん断圧縮によって低融点金属微粒子を溶融軟化させ、低融点金属微粒子を基材微粒子に付着させることを繰り返すことにより、基材微粒子の導電層の表面に低融点金属層が形成された導電性微粒子を製造することができる。
【0035】
上記低融点金属層を形成するときに用いる低融点金属微粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。上記低融点金属微粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、低融点金属微粒子が凝集しやすくなるため、低融点金属層を形成することが困難となることがある。上記低融点金属微粒子の平均粒子径が100μmを超えると、せん断圧縮時に溶融軟化しきらず、低融点金属層を形成することが困難となるときがある。なお、上記低融点金属微粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の低融点金属微粒子の粒子径を測定し、測定した粒子径を算術平均することにより求めることができる。
また、上記低融点金属微粒子の平均粒子径は、上記基材微粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。上記低融点金属微粒子の平均粒子径が、上記基材微粒子の平均粒子径の1/10を超えると、せん断圧縮時に上記低融点金属微粒子を上記基材微粒子の導電層に付着、皮膜化させることができないことがある。
【0036】
本発明の導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0037】
本発明の異方性導電材料として、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0038】
上記バインダー樹脂は特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。
上記ビニル樹脂は特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
上記硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は硬化剤と併用してもよい。
上記熱可塑性ブロック共重合体は特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
上記エラストマーは特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
本発明の異方性導電材料は、本発明の導電性微粒子、及び、上記バインダー樹脂の他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で、例えば、増量剤、可塑剤、粘接着性向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等を含有してもよい。
【0040】
本発明の異方性導電材料の製造方法は特に限定されず、例えば、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤等を製造する方法が挙げられる。また、上記バインダー樹脂に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に分散させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなるように塗工し、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等を製造する方法も挙げられる。
また、上記バインダー樹脂と、本発明の導電性微粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【0041】
本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を用いてなる接続構造体もまた、本発明の1つである。
【0042】
本発明の接続構造体は、一対の回路基板間に、本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を充填することにより、一対の回路基板間を接続させた導電接続構造体である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、一次実装後に導電層が露出しにくく、高い接続信頼性を実現することが可能な導電性微粒子、及び、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料及び接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1で得られた銅層形成樹脂微粒子の銅層表面の原子間力顕微鏡画像である。
【図2】比較例1で得られた銅層形成樹脂微粒子の銅層表面の原子間力顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0046】
(実施例1)
テトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合体からなる樹脂微粒子(平均粒子径240μm)25gに対して、下記組成の銅めっき液(pH=12、めっき液温60℃)5000gを用いて無電解めっきを行い、樹脂微粒子の表面に厚さ10μmの銅層を形成することにより、銅層形成樹脂微粒子を得た。
【0047】
(銅めっき液組成)
硫酸銅五水和物:42g/L
ホルムアルデヒド(37重量%水溶液) 120g/L
エチレンジアミン四酢酸 90g/L
2,2’−ビピリジル 550ppm
ポリエチレングリコール(分子量1000) 50ppm
【0048】
次いで、銅層形成樹脂微粒子と、錫96.5銀3.5合金微粒子(粒子径分布5〜15μm)40gとをシータコンポーザ(徳寿工作所社製)に投入して混合した。これにより、錫96.5銀3.5合金微粒子を銅層形成樹脂微粒子に付着、皮膜化させて、厚さ25μmの錫96.5銀3.5合金層を形成し、導電性微粒子を得た。なお、シータコンポーザを用いて混合する際には、回転容器(ベッセル)を35rpm、回転翼(ローター)を3500rpmで逆回転させ、せん断圧縮力が作用するようにした。混合時間は300分間とした。
【0049】
(実施例2)
実施例1において、pH=11、めっき液温55℃の銅めっき液を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0050】
(実施例3)
実施例1において、pH=13の銅めっき液を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0051】
(実施例4)
実施例1において、錫96.5銀3.5合金微粒子(粒子径分布5〜15μm)に代えて、錫96.5銀3.0銅0.5合金微粒子(粒子径分布5〜15μm)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0052】
(実施例5)
実施例1において、錫96.5銀3.5合金微粒子(粒子径分布5〜15μm)に代えて、錫42.0ビスマス58.0合金微粒子(粒子径分布5〜15μm)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0053】
(比較例1)
実施例1において、テトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合体からなる樹脂微粒子(平均粒子径240μm)の表面に電気めっきにより樹脂微粒子の表面に厚さ10μmの銅層を形成した以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子を得た。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、pH=10、めっき液温50℃の銅めっき液を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0055】
(比較例3)
実施例1において、pH=13.5、めっき液温65℃の銅めっき液を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。
【0056】
<評価>
実施例及び比較例で得られた銅層形成樹脂微粒子及び導電性微粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0057】
(1)表面粗さ測定
原子間力顕微鏡(VN−8000:キーエンス社製)を用い、得られた銅層形成樹脂微粒子表面の算術平均粗さをJIS B0601−1994に準拠した方法で測定した。なお、測定においては、2次曲面補正(自動)を行い、断面形状についても同様の補正を行った。
なお、実施例1で得られた銅層形成樹脂微粒子の銅層表面の原子間力顕微鏡画像を図1、比較例1で得られた銅層形成樹脂微粒子の銅層表面の原子間力顕微鏡画像を図2に示した。
【0058】
(2)実装試験
実施例及び比較例において得られた導電性微粒子112個を、銅電極を有するシリコンチップ上に搭載し、270℃に設定したリフロー炉に投入し溶融させた。その後、走査型電子顕微鏡を用いて実装表面を観察し、銅層の表面が露出しているものの総数を計測した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、一次実装後に導電層が露出しにくく、高い接続信頼性を実現することが可能な導電性微粒子を提供することができる。また、本発明は、該導電性微粒子を用いてなる、異方性導電材料及び接続構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子の表面に、導電層及び低融点金属層が順次形成されている導電性微粒子であって、前記導電層表面の算術平均粗さが150〜750nmであることを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
導電層は、銅からなることを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子。
【請求項3】
低融点金属層は、錫又は錫と他の金属との合金からなることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子。
【請求項4】
基材微粒子は、樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性微粒子。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項6】
請求項1、2、3或いは4記載の導電性微粒子、又は、請求項5記載の異方性導電材料を用いてなることを特徴とする接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−76782(P2011−76782A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225128(P2009−225128)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】