説明

導電性樹脂およびその製造方法

【課題】 マイグレーションを起こし難く、また抵抗値が低く、また使用した電子部品の軽量化を図ることができるとともに、導電性材料の濃度傾斜を容易に形成でき、使用する電子部品の設計自由度を大きくすることができ、また電子部品への適用も低廉かつ容易に行うことが可能な導電性樹脂材料、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 非導電性の樹脂材料3と、前記樹脂材料3中に混入された導電性材料4とを有する導電性樹脂2である。前記導電性樹脂2の膜厚方向に、前記樹脂材料3中における前記導電性材料4の濃度傾斜が形成されている。この導電性樹脂2は、基板1上に導電性材料4が混入された樹脂材料3を塗布した後、基板1の下方側に位置する導電性材料移動手段6によって導電性材料4を基板1方向に移動させて、前記樹脂材料3中における前記導電性材料4の濃度傾斜を膜厚方向に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体が混入された導電樹脂およびその製造法に関し、特にマイグレーションを起こし難く、また抵抗値が低く、また使用した電子部品の軽量化を図ることができるとともに、導電性材料の濃度傾斜を容易に形成でき、使用する電子部品の設計自由度を大きくすることができ、また電子部品への適用も低廉かつ容易に行うことが可能な導電性樹脂材料、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
導電性樹脂は、例えばプリント配線板の回路パターンや、導電性を要する部材どうしを接着するための接着剤など、種々の電子部品に使用されている。この導電性樹脂は、樹脂材料の中に粉体などで形成される導電体が適切な量だけ混入され、この導電体どうしが接触した状態で樹脂材料が固化して形成されている。そして、前記導電体間に電流が流れることによって、導電性樹脂全体として電流が流れるように構成されている。
【0003】
このような導電性樹脂は、例えばプリント配線板を構成する基板の表面にスクリーン印刷などの方法によって塗布され、プリント配線板の回路層を構成するものとして使用される。
【0004】
導電性樹脂は、金属材料と比較すると軽量であるため、この導電性樹脂材料を使用した電子部品は、金属材料を使用した電子部品と比較して軽量化を図れる。
【0005】
また、前記導電性樹脂材料は可撓性に優れていることから、金属材料に比べると、例えばフレキシブルプリント配線板を形成しやすいなど、設計の自由度を大きくすることができるという長所がある。
【0006】
また、導電性樹脂材料を回路層として形成するには、例えばスクリーン印刷などの印刷により行うことができるため、低廉な費用で回路形成を行うことが可能となるとともに、製造時間を短くできるため製造効率の向上を図ることが可能となるという長所がある。
【0007】
ところで、基板表面に形成された回路層を構成する導電性材料は以下に示す特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された回路層は、抵抗値の低下を防ぐとともに、密着性の向上を図るため、下面側(基板側)に行くにしたがって、銅濃度が高くなるように、濃度傾斜を有する銅合金傾斜材料である。
【特許文献1】特開平09−162514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1に開示された導電性材料は、電気抵抗を低くするために、金属材料中に導電性材料としての銅を混入させた金属性傾斜材料であり、樹脂の中に導電性材料が混入された導電性樹脂とは全く異なるものである。
【0009】
前記特許文献1に開示された導電性材料では、主に導電性を担う銅が他の金属成分中に含まれた構造であるため、銅が前記他の金属成分中を移動してしまうマイグレーション現象が発生し易い。
【0010】
また、前記特許文献1に開示された導電性材料では、銅の濃度傾斜を、メッキ浴の浴負荷を調整することによって行っているが、浴負荷の調整を行うためには高度な制御が必要となるため、適切な濃度傾斜を付与することが困難であるとともに、浴負荷のための設備も必要となるため、製造コストの上昇にも繋がる。
【0011】
また、回路層に使用される導電性材料を金属材料で形成すると、回路層が重くなる。また、回路層が撓み難くなるため、例えばフレキシブル基板とすることが困難になるなど設計の自由度が小さくなる。また、導電性材料をメッキなどの方法で形成する必要があるためコストがかかり、また製造時間を長く必要とするため製造効率に劣る。
【0012】
本発明は前記従来の課題を解決するためのものであり、マイグレーションを起こし難く、また抵抗値が低く、また使用した電子部品の軽量化を図ることができるとともに、導電性材料の濃度傾斜を容易に形成でき、使用する電子部品の設計自由度を大きくすることができ、また電子部品への適用も低廉かつ容易に行うことが可能な導電性樹脂材料、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、非導電性の樹脂材料と、前記樹脂材料中に混入された導電性材料とを有する導電性樹脂において、前記導電性樹脂の膜厚方向に、前記樹脂材料中における前記導電性材料の濃度傾斜が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この場合、前記導電性樹脂の上面から下面に向かって、前記導電性材料の濃度が高くなるものとして構成することができる。
【0015】
また、前記導電性材料は、強磁性粉体であるものとして構成しても良い。
また、前記樹脂材料は印刷用インクであるものとして構成することもできる。
【0016】
また本発明の導電性材料の製造方法は、基板上に導電性材料が混入された非導電性の樹脂材料を塗布した後、前記基板の下方側に位置する導電性材料移動手段によって前記導電性材料を前記基板方向に移動させて、前記樹脂材料中における前記導電性材料の膜厚方向に濃度傾斜を形成する工程を有することを特徴とするものである。
【0017】
この場合、前記導電性材料を強磁性粉体で形成し、磁石で構成された前記導電性材料移動手段の磁気力によって前記強磁性粉体で形成された前記導電性材料を移動させて、前記濃度傾斜を形成するものとして構成することができる。
【0018】
または、前記導電性材料移動手段が遠心力発生装置であり、前記導電性材料を前記遠心力発生装置から生じる遠心力によって移動させて、前記導電性材料の前記濃度傾斜を形成するものとして構成しても良い。
【0019】
また、前記樹脂材料の粘度を50〜400psの範囲内とするものとして構成することが好ましい。
【0020】
また、前記導電性樹脂に対する前記導電性材料の含有量は、前記導電性樹脂と前記導電性材料の合計体積を100%としたときに、前記合計体積に対して20〜60体積%の範囲内とするものとして構成することが好ましい。
また、前記樹脂材料が印刷用インクであるものとして構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
前記導電性樹脂では、樹脂材料中における前記導電性材料の濃度傾斜が形成されているしたがって、導電性材料が濃度の低い領域に移動し難く、マイグレーションの発生を抑制することができる。
【0022】
また、前記導電性材料4の濃度が低い領域が形成されるため脆性を低くすることができる。
【0023】
また本願発明の前記導電性樹脂2では、前記導電性材料4の濃度が高い領域が形成されるため、このでの抵抗値を低くすることができるため、導電性樹脂全体としてみたときに抵抗値を低くすることが可能となる。
【0024】
また、前記導電性樹脂は、樹脂材料内に前記導電性材料が混入されて構成されているため、例えば金属材料のみからなる導電体に比較すると軽量化を図ることができ、また、例えばフレキシブル基板などの可撓性を保持した電子部品を製造することができる。
【0025】
また本発明の導電性樹脂の製造方法では、前記導電性材料移動手段によって、極めて容易に前記導電性樹脂材料の濃度傾斜を形成することができる。また、製造コストを低廉にすることができ、さらに製造時間の短縮が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は電子部品の基板表面に塗布された本発明の導電性樹脂を、基板とともに切断した状態を示す部分断面図である。
【0027】
図1に示すように、前記導電性樹脂2は電子部品を構成する前記基板1の上面1aに塗布形成されている。
【0028】
図1に示すように、前記導電性樹脂2は樹脂材料3と、この樹脂材料3に混入された導電性材料4とを有して構成されている。
【0029】
図1に示すように、前記導電性樹脂2を膜厚方向(図示Z1−Z2方向)に見たとき、前記導電性材料4の分布量、すなわち前記樹脂材料3中に前記導電性材料4が占める割合として規定される濃度が、連続的あるいは段階的に異なるように構成されている。ここで、前記導電性材料4の濃度とは、前記導電性樹脂2の単位体積を100としたときに、この導電性樹脂2における前記導電性材料4の体積百分率を意味する。
【0030】
図1に示す実施形態では、前記導電性材料4の濃度は、前記導電性樹脂2の上面2a側(前記基板1から離れる方向側、すなわち図示Z1方向側)から、下面2b側(前記基板1方向側、すなわち図示Z2方向側)に向かうにしたがって高くなるように、濃度傾斜(濃度勾配)が形成されている。
【0031】
図1に示す前記導電性樹脂2では、前記導電性樹脂2を膜厚方向に3等分した場合、前記導電性樹脂2の膜厚に対して前記上面2a側の1/3の領域を上方領域5aとし、前記膜厚に対して前記下方2c側の1/3の領域を下方領域5cとし、前記上方領域5aと前記下方領域5cとの間に位置する前記膜厚に対して1/3の領域を中間領域5bとすると、前記各領域5a、5b、5cにおける前記導電性材料4の濃度は以下のような関係を有して構成されている。
【0032】
すなわち、前記基板1側の下方領域5cが最も前記導電性材料4の濃度が高く、前記基板1と離れた上方領域5aが前記導電性材料4の濃度が最も低くなっている。また、前記上方領域5aと前記下方領域5cとの間に位置する中間領域5bの前記導電性樹脂の濃度は、前記下方領域5cよりも低く、前記上方領域5aよりも高く構成されている。
【0033】
図1に示す実施形態では、前記上方領域5a、前記中間領域5b、前記下方領域5cのそれぞれにおける前記導電性材料4の濃度は、上方向(図示Z1方向)から下方向(図示Z2方向)に向かって高くなるように構成されている。そして、前記上方領域5aから前記中間領域5b、さらに前記下方領域5cの前記導電性材料4の濃度が順次高くなっていることから、前記導電性樹脂2の全体としてみると、前記導電性材料4の濃度が上面2aから下面2bに向かって高くなるように形成されている。
【0034】
なお、前記上方領域5a、前記中間領域5b、前記下方領域5cのそれぞれにおける前記導電性材料4の各濃度は、前記上方領域5a、前記中間領域5b、前記下方領域5cにおける各平均濃度を意味する。
【0035】
なお、前記中間領域5bの前記導電性材料4の濃度が、前記下方領域5cの前記濃度よりも低くなっていれば、前記上方領域5aの前記濃度と同じに構成されていても良い。
【0036】
前記樹脂材料3としては、分子量が3000から5000の高分子材料で構成され、熱硬化性樹脂や光硬化型樹脂を用いることができる。具体的には、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂などを使用することができる。
【0037】
前記樹脂材料3の粘度は50から400psの範囲内であることが好ましい。粘度を前記範囲内とすると、後記する製造方法の際に、前記樹脂材料3の膜厚方向において、前記導電性材料4の濃度傾斜を形成し易い。
【0038】
また、前記導電性樹脂2に対する前記導電性材料4の含有量は、前記導電性樹脂と前記導電性材料の合計体積を100%としたときに、前記合計体積に対して20から60体積%の範囲内であることが好ましい。前記含有量を前記範囲内とすると、後記する製造方法の際に、前記樹脂材料3の膜厚方向において、前記導電性材料4の濃度傾斜を形成し易い。
【0039】
また前記導電性材料としては、金属材料、金属被覆無機材料、カーボン材料などを使用することができる。
【0040】
前記導電性材料4を構成する金属材料としては、Ni、Ag、Cu、Au、Al、黄銅などを使用することができる。これらの金属から選ばれる1種、あるいは2種以上を混合するものであっても良い。また、これらの純金属の他、これらの金属を含む合金を用いても良い。これらの金属は粉体状、繊維状、あるいはフレーク状などの種々の状態に形成されたものを使用できる。また、前記各状態から選ばれる複数の状態の金属を混合して用いても良い。
【0041】
前記金属被覆無機材料としては、ガラスビーズに前記した各金属材料を被覆したもの、ガラス繊維に前記した各金属材料を被覆したもの、あるいは雲母などの天然鉱物に前記した各金属を被覆したものなどを使用できる。
【0042】
このように前記導電性材料4としては、金属材料や金属被覆無機材料を用いることができるが、後記するように、前記樹脂材料3中の前記導電性材料4を磁力によって前記下面2b側に吸引する場合、前記導電性材料4はNiなどの強磁性の金属を有する材料を用いることが好ましい。この場合、Niの表面にAuを被覆した磁性粉体であると、導電性を向上させて抵抗値を低く抑えることができるため好ましい。
【0043】
カーボン材料としては、カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維などを使用することができる。
【0044】
前記導電性樹脂2では、前記下方領域5cにおける前記導電性材料4の濃度を高くし、前記上方領域5aにおける前記導電性材料4の濃度を低くしている。したがって、前記上方領域5aでは前記導電性材料4の濃度が低く、前記樹脂材料3が前記下方領域5cや前記中間領域5bと比較すると前記樹脂材料を多く含有している。したがって、前記導電性材料4が多く含有されている前記下方領域5cから前記導電性材料4が前記中間領域5b、あるいは前記上方領域5aに移動し難くマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0045】
また、一般的に、前記樹脂材料3中における前記導電性材料4の濃度を高くすると、前記樹脂材料3中における導電性材料4の含有量が多くなるため、前記樹脂材料3の含有量が減少し、導電性樹脂2の脆性が大きくなる。したがって、前記導電性樹脂2の脆性を大きくするには、前記導電性材料4の濃度を低くする必要がある。
【0046】
しかし、前記導電性材料4の濃度を低くすると、前記導電性材料4どうしの接触が少なくなるため、電気抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0047】
前記前記上方領域5aは前記基板1から離れた位置に形成され、最も外方に位置して形成されているため、外部からの衝撃などの外力が加わる場合が多いが、このように前記導電性樹脂2に外力が加わった場合でも、前記上方領域5aは前記導電性材料4の濃度が低いため脆性を低くすることができ、外力に対する強度を確保することができる。
【0048】
また本願発明の前記導電性樹脂2では、上方領域5aから前記中間領域5b、さらに前記下方領域5cに向かうにしたがって、前記樹枝材料3の膜厚方向における前記導電性材料4の濃度が、連続的に高くなるように構成されているため、前記導電性樹脂2の膜厚方向における前記導電性材料4の濃度が均一な場合に比べて、前記導電性材料4の濃度が高い領域(図1に示す実施形態では前記下方領域5c)を形成することができる。したがって、前記導電性樹脂2の前記下方領域5cでは抵抗値を低くすることができるため、前記導電性樹脂2全体としてみたときに抵抗値を低くすることが可能となる。
【0049】
また、前記導電性樹脂2は、樹脂材料3内に前記導電性材料4が混入されて構成されているため、例えば前記基板1の前記上面1aに、金属材料のみからなる導電体が形成された場合に比較すると、電子部品の軽量化を図ることができる。
【0050】
また、前記基板1が樹脂フィルムなどの可撓性材料で形成されている場合に、基板1の上面1aに金属材料のみからなる導電体を塗布すると、前記基板1の可撓性を奪ってしまうことになるため、例えばフレキシブル基板などの可撓性を保持した電子部品を製造することが困難になるという問題がある。
【0051】
これに対し本願発明の前記導電性樹脂2では、前記基板1の上に塗布されるのは導電体としての記導電性樹脂2であるため、前記基板1が可撓性を有するものであっても、基板1の可撓性を奪うことがないため、例えばフレキシブル基板などの可撓性を保持した電子部品を製造することができる。
【0052】
このように、前記導電性樹脂2を使用すると、電子部品の軽量化や可撓性を有した電子部品を製造することができるため、電子部品を製造する際の設計自由度を向上させることが可能となる。
【0053】
次に、前記導電性樹脂2の製造方法について説明する。
まず図2に示すのは、本発明の導電性樹脂が塗布される基板1の切断断面図である。図2に示す状態から、図3に示すように、前記基板1の上面1aに、前記導電性樹脂2が塗布される。前記導電性樹脂2は、例えばスクリーン印刷や他の公知の方法によって、前記基板1の前記上面1aに塗布することができる。前記基板1の前記上面1aに塗布されたときの前記導電性樹脂2の膜厚tは、例えば、10から50μmの範囲内である。
【0054】
図3に示すように、前記導電性樹脂2が前記基板1の前記上面1aに塗布された状態では、前記導電性樹脂2を構成する前記導電性材料4は、樹脂材料3内に膜厚方向においてほぼ均一な濃度で分散している。
【0055】
図3に示す実施形態では、前記導電性材料4は強磁性の金属材料で構成されている。この強磁性の金属材料としては、Niが挙げられる。また、前記樹脂材料3は、例えば熱硬化性樹脂で形成されている。
【0056】
次に図4に示すように、前記樹脂材料3が固化する前に、前記基板1の下面1bの下方向(図示Z2方向)側に、導電性材料移動手段である磁石6を位置させる。
【0057】
前記基板1の上面1aに塗布された前記導電性樹脂2には、前記基板1を介して磁束が到達する。この磁束に基づく磁気力よって、図示矢印Bに示すように、強磁性体からなる前記導電性材料4が前記磁石6方向、すなわち前記基板1方向である前記導電性樹脂2の前記下面2b方向(図示Z2方向)へ引っ張られる。
【0058】
このようにして前記導電性材料4は前記下面2b方向へ引っ張られ、また前記磁石6からの磁気力は前記下面2bに向かうにしたがって大きくなる。したがって、前記下面2b側に位置する前記下方領域5cに多くの前記導電性材料4が移動して位置することとなる。そして、前記磁石6から離れるにしたがって前記磁石6からの磁気力は小さくなるため、前記下方領域5cよりも前記磁石6から離れて位置する前記中間領域5bでは、前記下方領域5cに比較すると、前記導電性材料4の量が少なくなる。
【0059】
前記中間領域5bよりも更に前記磁石6から離れた位置に形成されている前記上方領域5aでは、前記中間領域5bよりも更に前記磁石6からの磁気力が小さいため、前記上方領域5aでの前記導電性材料4の量は、前記下方領域5c、更には前記中間領域5bよりも少なくなる。
【0060】
このように、前記磁石6の磁束によって前記導電性材料4の濃度傾斜を形成することができるのである。
【0061】
このようにして前記樹脂材料3中における前記導電性材料4の濃度傾斜を形成した後、前記樹脂材料3を固化すると、図1に示す前記導電性樹脂2を製造することができる。この固化工程は、前記樹脂材料3の特性に応じて公知の方法によって行うことができ、例えば前記樹脂材料3が熱硬化性樹脂から形成されている場合には、前記基板1に前記導電性樹脂2が塗布された状態で加熱し固化を行う。また、前記樹脂材料3が光硬化性樹脂から形成されている場合は、前記導電性樹脂2に適切な波長の光を照射し固化を行う。
【0062】
なお、前記磁石6は、前記導電性樹脂2を塗布する前記基板1の下方側に位置させても良く、あるいは前記導電性樹脂2を塗布した後、前記磁石6を前記基板1の下方側に位置させることとしても良い。ただし、前記樹脂材料3が固化する前に前記磁石6を前記基板1の下方側に位置させることが必要である。
【0063】
次に、前記導電性樹脂2の他の製造方法を説明する。まず図2および図3に示す状態までは、導電性材料移動手段として前記磁石6を用いた製造方法と同じである。ただし、本発明の他の製造方法では、導電性材料移動手段として前記磁石6に代えて、遠心力発生手段16を用いるのである。
【0064】
図6は、遠心力発生手段16の回転ドラム16a内に、前記基板1と、この基板1の前記上面1aに塗布された前記導電性樹脂2とを、前記導電性樹脂の固化前にセットした状態を示す断面図である。また、図6は、図5の一点鎖線で囲った部分の拡大図である。図5に示す状態で、前記回転ドラム16aを図示矢印A1またはA2方向へ回転させる。このとき前記回転ドラム16aは回転中心Oを中心として回転する。すると、前記回転ドラム16aの回転に伴って、図6に示すように、図示矢印Bに示す方向、すなわち前記基板1の前記下面1b方向へ向かう遠心力が発生する。すると、前記遠心力によって、前記導電性樹脂2を構成する前記導電性材料4が前記基板1側に向かって引っ張られ移動する。
【0065】
このようにして前記導電性材料4は前記基板1側である前記下面2b方向へ引っ張られ、前記下面2b側に位置する前記下方領域5cに多くの前記導電性材料4が移動して位置することとなる。一方、前記下方領域5cから内側に離れるにしたがって前記導電性材料4の量は少なくなり、前記中間領域5bでは、前記下方領域5cに比較すると、前記導電性材料4の量は少なくなる。
【0066】
前記中間領域5bよりも更に内側に位置する前記上方領域5aでは、前記中間領域5bよりも更に前記導電性材料4の量が少なくなる。
【0067】
このように、前記回転ドラム16aの回転に伴う遠心力によって、前記樹脂材料3中に、前記導電性材料4の濃度傾斜を形成することができるのである。
【0068】
前記回転ドラム16aを回転させて、固化前の前記導電性樹脂2に遠心力を与えているとき、前記樹脂材料3よりも前記導電性材料4の方が比重が大きい場合に、前記導電性材料4の移動が効果的に行われる。したがって、導電性材料移動手段として前記遠心力発生手段16を用いる場合には、前記導電性材料4を比重が大きい金属材料で構成することが適切に前記導電性材料4の濃度傾斜を形成できるため好ましい。
【0069】
なお、導電性材料移動手段として前記遠心力発生手段16を用いる場合には、導電性材料移動手段として磁石6を用いる場合のように、導電性材料4を強磁性体である必要性はない。したがって、前記導電性材料4の材質に制限されること無く、製造の自由度を大きくすることが可能となる。
【0070】
このようにして前記樹脂材料3中における前記導電性材料4の濃度傾斜を形成した後、前記樹脂材料3を固化すると、図1に示す前記導電性樹脂2を製造することができる。この固化工程は、前記樹脂材料3の特性に応じて公知の方法によって行うことができ、例えば前記樹脂材料3が熱硬化性樹脂から形成されている場合には、前記基板1に前記導電性樹脂2が塗布された状態で加熱し固化を行う。また、前記樹脂材料3が光硬化性樹脂から形成されている場合は、前記導電性樹脂2に適切な波長の光を照射し固化を行う。
【0071】
本発明の製造方法では、前記樹脂材料3が固化する前に前記磁石6、あるいは前記遠心力発生手段16の回転ドラム16aを回転させるだけで、前記樹脂材料3中の膜厚方向における前記導電性材料4の濃度傾斜を形成することができるため、極めて容易に前記導電性材料4の濃度傾斜を形成することができる。
【0072】
また、例えば前記基板1の前記上面1aに形成される導電体をメッキによって形成する場合に、前記導電性材料4の濃度傾斜を形成するためには、前記特許文献1に記載されたように浴負荷の調整を行うことが必要となるが、浴負荷の調整のために特別の設備が必要になるとともに、前記浴負荷の調整には高度な浴制御が必要となるため、製造が煩雑になるとともに、製造費用が大きくなる。
【0073】
さらに、メッキ工程にはメッキ物の成長を行わせるために相応の時間が必要となる。
これに対し本願発明の製造方法では、前記導電性材料4の濃度傾斜を形成するために、前記磁石6によって前記導電性材料4に磁界を与えて引っ張る、若しくは前記遠心力発生手段16によって前記導電性材料4に所定方向の遠心力を与えるだけで良いため、製造を簡単に行えるとともに、製造コストを低廉にすることができ、さらに製造時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】基板表面に塗布された本発明の導電性樹脂を、基板とともに切断した状態を示す部分断面図、
【図2】図1に示す導電性樹脂の製造方法を説明する一工程図、
【図3】図2に示す工程の次の工程を示す一工程図、
【図4】図3に示す工程の次の工程を示す一工程図、
【図5】図1に示す導電性樹脂の他の製造方法を説明する一工程図、
【図6】図5の部分拡大図、
【符号の説明】
【0075】
1 基板
2 導電性樹脂
2a 上面
2b 下面
3 樹脂材料
4 導電性材料
5a 上方領域
5b 中間領域
5c 下方領域
6 磁石
16 遠心力発生手段
16a 回転ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の樹脂材料と、前記樹脂材料中に混入された導電性材料とを有する導電性樹脂において、前記導電性樹脂の膜厚方向に、前記樹脂材料中における前記導電性材料の濃度傾斜が形成されている導電性樹脂。
【請求項2】
前記導電性樹脂の上面から下面に向かって、前記導電性材料の濃度が高くなる請求項1記載の導電性樹脂。
【請求項3】
前記導電性材料は、強磁性粉体である請求項1または2記載の導電性樹脂。
【請求項4】
前記樹脂材料は印刷用インクである請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性樹脂。
【請求項5】
基板上に導電性材料が混入された非導電性の樹脂材料を塗布した後、前記基板の下方側に位置する導電性材料移動手段によって前記導電性材料を前記基板方向に移動させて、前記樹脂材料中における前記導電性材料の膜厚方向に濃度傾斜を形成する工程を有することを特徴とする導電性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記導電性材料を強磁性粉体で形成し、磁石で構成された前記導電性材料移動手段の磁気力によって前記強磁性粉体で形成された前記導電性材料を移動させて、前記濃度傾斜を形成する請求項5記載の導電性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記導電性材料移動手段が遠心力発生装置であり、前記導電性材料を前記遠心力発生装置から生じる遠心力によって移動させて、前記導電性材料の前記濃度傾斜を形成する請求項5記載の導電性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料の粘度を50〜400psの範囲内とする請求項5ないし7のいずれかに記載の導電性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記導電性樹脂に対する前記導電性材料の含有量は、前記導電性樹脂と前記導電性材料の合計体積を100%としたときに、前記合計体積に対して20〜60体積%の範囲内とする請求項5ないし8のいずれかに記載の導電性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂材料が印刷用インクである請求項5ないし9のいずれかに記載の導電性樹脂の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−210133(P2006−210133A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20506(P2005−20506)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】