説明

導電性熱可塑性組成物

補強剤または充填材、およびカーボンブラックを含み、特定の手順によって製造される熱可塑性組成物が記載される。補強剤または充填材がより制限されて他の配合剤が存在する特定の例において、極めて平滑な表面を有し、その部品が塗装され得る車のパネルおよび他の使用目的に適する導電性組成物が記載される。さらに記載されるのが、特に導電性充填材がカーボンブラックである場合のかかる組成物を製造する方法である。かかる組成物は、器具部品、自動車車体パネル、電力工具ハウジング、並びに、電気および電子ハウジングなどの品目に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特定量の特定の補強剤、特定の導電性充填材、強化剤、および任意選択的に液晶高分子を含むポリエステル組成物は、平滑な表面を必要とする部品、並びに、特に塗装されることになるもの、例えば自動車本体パネルおよびハンドルやハウジングなどの器具部品を製造するのに有用である。さらに開示されるのが、導電性または静電気的に塗装可能な熱可塑性組成物の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
金属部品をプラスチックスで置き換える際の1つの挑戦は、良好に見える(平滑な)表面を有し、および/または、その表面が光沢がある平滑な外観を有するように塗装(塗着)できるプラスチック部品を製造することである。これは、しばしば所定の最低水準の強靭性および/または耐熱性に対する要求と結びついて、特に比較的安価な高分子およびその他の配合剤を使用する際に挑戦的であることが示された。様々な種類の熱可塑性材料が、かかる用途に試みられ、事例によっては首尾よく使用され、再使用可能(例えばスクラップ)であるという利点を有し、しばしば熱硬化性高分子より堅い。しかし、2つ以上の環境応力に対して大きい抵抗が必要であるところで使用する際は、改善された組成物が依然として要望されている。
【0003】
例えば、特に挑戦的なタイプの部品は、フェンダなどの自動車本体パネルである。これらの部品は、自動車に正確に適合するように寸法公差に近付けて正確に成型されなければならず、これらの部品は、機械的/衝撃性損傷に耐えるように十分堅くなければならず、これらの部品は、(通常)塗装されたときそれらが良好な表面外観(しばしば「A級」表面と呼ばれる)を有するように極めて平滑な表面を有しなければならない。加えて、これらの部品は、自動車塗料焼付けオーブン中において、過度のたるみ、反り、または、そうでない場合は変形なしで、それらが温度に耐え得る(しばしば200℃程度の高さで30分程度の長さ)ように、十分な耐熱性を有することが好ましい。これらの部品は、別途に低温度で塗装し、次いでその後、塗装後の本体に取り付ける(したがってオフライン塗装と呼ばれる)ことができるが、かかる方法では、車体組立体工程でかなりの経費がかかり、経済的観点から、これらの部品を通常の塗装ラインで塗装することが好ましい。2つの異なる工程で塗装される部品の色合せも難しい場合がある。さらに、これらの部品は、通常の使用中に繰り返し直面する応力に対して、最低水準の剛性および疲労抵抗を有することが必要である。
【0004】
その他の外観部品は、かかる極端な温度抵抗を必要とすることはないが、しかし、しばしば上述のその他の属性が必要になる。
【0005】
車体組立においては、金属部品が、ますますプラスチック部品によって置き換えられており、ただ単に重量の無駄をなくすためではない。例としては、フェンダ、フード、ドア、持上げ後尾扉、トランクリッド、燃料タンクキャップ、バンパー、保護用成形品、側面パネル、本体窓しきい、ミラーハウジング、ハンドル、スポイラ、およびハブキャップが挙げられる。塗装されたプラスチック部品の表面は、観察者にとって、例えば色相、光沢、および/または、短波形や長波形構造に関する外部外観が異なってはならず、あるいは、車体の塗装された金属表面とはわずかに異なるだけにする必要がある。このことは、視覚的な違いはそこで特に目をひくので、隣接する金属部品とできるだけ小さい目地幅で、かつ特にまたそれと同じ平面に組立てられるプラスチック部品に特にあてはまる。
【0006】
金属およびプラスチック部品から混合した構造で組立てられる塗装された車体の製造には、3つの異なる方法がある。
【0007】
1.オフライン工程として知られる方法であり、この場合、金属車体およびプラスチック部品は、別々に塗装され、その後組立てられる。
【0008】
オフライン工程の欠点は、塗装された金属およびプラスチック表面の見た目の調和が不足するとその影響を受けやすいことであり、少なくとも、塗装されたプラスチック部品と塗装された金属部品は、構造上の理由で、例えば、1つの平面において、塗装された部品、および/または塗装された部品の配置が実質的に継ぎ目なく近接しているせいで、目視比較を導きやすい場合がそうである。
【0009】
さらなる欠点は、2回の塗装工程を行う必要があることである。
【0010】
2.インライン工程として知られる方法であり、この場合、プライマとして電着塗装をすでに提供されている金属本体と、未塗装プラスチック部品、または任意選択的にプラスチックプライマを提供されているだけのプラスチック部品とが組立てられ、後続の共通の塗装工程において1つもしくは複数のさらなる塗装層が提供される。
【0011】
インライン工程の欠点は、中断する中間ステップとして、塗装工程に挿入される組立ステップであり、それは、後続の塗装工程にきょう雑物を持ち込む危険も含む。
【0012】
3.オンライン工程として知られる方法であり、この場合、金属から製造される未塗装本体部品と、未塗装プラスチック部品、または任意選択的にプラスチックプライマを提供されているだけのプラスチック部品とが、混合した構造で構成される本体の中に組立てられ、次いで電着塗装を含む共通の塗装工程を通過し、ここでは当然導電性金属部品だけが電着塗装を提供され、その一方、その後、塗布されるべき全ての塗装層が、電着塗装を塗装した金属部品およびプラスチック部品の両方に対して塗布される。
【0013】
オンライン工程では、本体ベースシェルの建造と塗装工程が明確に切り離され、邪魔されない塗装順序が可能になるので、オンライン工程が特に好ましい。電着塗装の乾燥では高温度が使用されるので、基本的には十分に耐熱性で同時に熱変形に耐えるプラスチック材料だけが、この特に好ましいオンライン工程に適する。例えば、入手可能な予め繊維補強された熱可塑性材料から製造されるプラスチック部品は、その塗装された表面が、塗装された金属表面とは十分に高度の見た目の調和を有さず、特に、自動車製造業者が要求する高い規格までには至らないので、よくても条件つきで適するにすぎない。
【0014】
加えて、静電気的に補助された塗装工程などの一部の塗装工程の場合、塗装されるべき部品は、典型的な熱可塑性組成物(TC)に比べてより導電性であることが望ましい。事例によっては、部品を導電性プライマで塗装できるが、しかしこれは製造における余分なステップである。十分な量の導電性充填材(ECF)を(一部の)TCに加えると、導電率の増大が、使用されるECFの種類および量、TCの実際の組立て、並びにTC中のECFの分散度に依存するけれども、これらの組成物がより導電性になる(電気抵抗が小さくなる)ことが知られている。多くのECFは、強靭性および表面品質などのTCのその他の特性にも影響を与えることが知られており、したがって、かかる組成物を製造するときこれらも考慮に入れなければならない。したがって、その他の特性の劣化をできるだけ少ししか引き起こさずに、同時にかかる組成物の電気伝導度をより効率的に増大させる方法が探索されている。
【0015】
米国特許公報(特許文献1)には、ポリアルキレンテレフタレートなどの熱可塑性材料、および、特定の微粒子寸法の範囲を有するウォラストナイトなどの充填材を含む組成物が記載されており、それは「A級」表面を有することが可能である。LCP、可塑剤、および/または強化剤をさらに含む特定の組成物は開示されていない。
【0016】
米国特許公報(特許文献2)には、LCP、反応性の官能基を有する強化剤、および熱可塑性材料を含む組成物が記載されている。可塑剤および充填材を含む特定の組成物の存在は述べていない。
【0017】
米国特許公報(特許文献3)には、所定の強化剤を含むポリエステル組成物が記載されている。その特許ではLCPおよび/または所在の特定の寸法範囲を有する充填材を使用することは述べていない。
【0018】
米国特許公報(特許文献4)には、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の結晶化開始系が記載されており、それには、PET用の金属カチオンおよび可塑剤を含む所定の化合物を使用することが含まれる。組成物中のLCPおよび/または特定の寸法範囲を有する充填材については全く述べられていない。
【0019】
米国特許公報(特許文献5)および米国特許公報(特許文献6)には、LCPと様々な熱可塑性材料との混合物が記載されている。ポリエステル、可塑剤、および/または特定の寸法範囲を有する充填材を含む組成物についての具体的な言及は全くなされていない。
【0020】
米国特許公報(特許文献7)には、導電性カーボンブラックを含む所定の組成物が記載されている。本明細書に記載される組成物は開示されていない。
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,965,655号明細書
【特許文献2】米国特許第6,221,962号明細書
【特許文献3】米国特許第4,753,980号明細書
【特許文献4】米国再発行特許第32,334号明細書
【特許文献5】米国特許第4,438,236号明細書
【特許文献6】米国特許第4,433,083号明細書
【特許文献7】米国特許第5,484,838号明細書
【特許文献8】米国特許第4,118,372号明細書
【特許文献9】米国特許第3,991,013号明細書
【特許文献10】米国特許第3,991,014号明細書
【特許文献11】米国特許第4,011,199号明細書
【特許文献12】米国特許第4,048,148号明細書
【特許文献13】米国特許第4,075,262号明細書
【特許文献14】米国特許第4,083,829号明細書
【特許文献15】米国特許第4,122,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,130,545号明細書
【特許文献17】米国特許第4,153,779号明細書
【特許文献18】米国特許第4,159,365号明細書
【特許文献19】米国特許第4,161,470号明細書
【特許文献20】米国特許第4,169,933号明細書
【特許文献21】米国特許第4,184,996号明細書
【特許文献22】米国特許第4,189,549号明細書
【特許文献23】米国特許第4,219,461号明細書
【特許文献24】米国特許第4,232,143号明細書
【特許文献25】米国特許第4,232,144号明細書
【特許文献26】米国特許第4,245,082号明細書
【特許文献27】米国特許第4,256,624号明細書
【特許文献28】米国特許第4,269,965号明細書
【特許文献29】米国特許第4,272,625号明細書
【特許文献30】米国特許第4,370,466号明細書
【特許文献31】米国特許第4,383,105号明細書
【特許文献32】米国特許第4,447,592号明細書
【特許文献33】米国特許第4,522,974号明細書
【特許文献34】米国特許第4,617,369号明細書
【特許文献35】米国特許第4,664,972号明細書
【特許文献36】米国特許第4,684,712号明細書
【特許文献37】米国特許第4,727,129号明細書
【特許文献38】米国特許第4,727,131号明細書
【特許文献39】米国特許第4,728,714号明細書
【特許文献40】米国特許第4,749,769号明細書
【特許文献41】米国特許第4,762,907号明細書
【特許文献42】米国特許第4,778,927号明細書
【特許文献43】米国特許第4,816,555号明細書
【特許文献44】米国特許第4,849,499号明細書
【特許文献45】米国特許第4,851,496号明細書
【特許文献46】米国特許第4,851,497号明細書
【特許文献47】米国特許第4,857,626号明細書
【特許文献48】米国特許第4,864,013号明細書
【特許文献49】米国特許第4,868,278号明細書
【特許文献50】米国特許第4,882,410号明細書
【特許文献51】米国特許第4,923,947号明細書
【特許文献52】米国特許第4,999,416号明細書
【特許文献53】米国特許第5,015,721号明細書
【特許文献54】米国特許第5,015,722号明細書
【特許文献55】米国特許第5,025,082号明細書
【特許文献56】米国特許第5,086,158号明細書
【特許文献57】米国特許第5,102,935号明細書
【特許文献58】米国特許第5,110,896号明細書
【特許文献59】米国特許第5,143,956号明細書
【特許文献60】欧州特許出願第356,226号明細書
【特許文献61】米国特許第5,686,186号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、
(a)約100℃以上の融点(MP)を有する少なくとも約40重量パーセントの1種または複数の等方性ポリエステル(IPE)、
(b)0.0〜約20重量パーセントの液晶高分子(LCP)であって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点(CCP)より少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を全く有しない場合、前記液晶高分子の前記融点が150℃以上である液晶高分子、
(c)約2.5以上の平均アスペクト比を有し、かつその平均最長寸法が20μm以下である約1.0〜約35重量パーセントの補強剤、
(d)前記等方性ポリエステルとの反応性がある官能基を含む約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤、並びに、
(e)前記組成物が、約1012オーム/平方以下の前記組成物の表面抵抗率、約10秒以下の静電気消散時間、および約90以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有するのに十分な量の導電性充填材であって、前記導電性充填材の平均最長寸法が20μm以下である導電性充填材、
を含み、全ての重量パーセントは組成物中の全成分の合計を基準とする第1の組成物に関する。
【0023】
本発明はまた、
(a)約100℃以上の融点(MP)を有する少なくとも約40重量パーセントの1種もしくは複数の等方性ポリエステル(IPE)、
(b)0.0〜約20重量パーセントの液晶高分子(LCP)であって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点(CCP)より少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を全く有しない場合、前記液晶高分子の前記融点が150℃以上である液晶高分子、
(c)約2.5以上の平均アスペクト比を有し、かつその平均最長寸法が20μm以下である約1.0〜約35重量パーセントの補強剤、
(d)前記等方性ポリエステルと反応性である官能基を含む約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤、並びに、
(e)前記組成物が、約1012オーム/平方以下の前記組成物の表面抵抗率、約10秒以下の静電気消散時間、および約90以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有するのに十分な量の導電性充填材であって、前記導電性充填材の平均最長寸法が20μm以下である導電性充填材、
を含み、全ての重量パーセントは組成物中の全成分の合計を基準とする組成物を製造する第1の方法に関し、前記方法が、
(a)前記等方性ポリエステルおよび前記高分子強化剤を含む材料を混合して、中間組成物を形成する第1の混合ステップ、次いで、
(b)前記カーボンブラックおよび任意選択的にその他の配合剤を、前記中間組成物が溶融している間に前記中間組成物の中に導入および混合することによる後続の混合ステップ、
を含む。
【0024】
本発明はまた、導電性熱可塑性組成物を製造する第2の方法に関し、この第2の方法は、カーボンブラックを、溶融熱可塑性高分子を含む材料の中に導入および混合して、前記熱可塑性組成物を形成するステップを含む。
【0025】
本発明は、目に見える金属および熱可塑性材料表面を有する、金属部品および少なくとも1つの熱可塑性材料部品から組立てられる基材を塗装する第3の方法に関し、この第3の方法は以下の連続ステップ、
(1)基材を部分的または完全に電着塗装し、付着しなかった電着塗装剤を基材から取り除き、そして付着した電着塗装を加熱架橋し、それによって電着塗装プライマを金属表面上に形成するステップと、
(2)少なくとも全ての目に見える金属および熱可塑性材料表面上に、少なくとも1つの追加の塗装を塗布および硬化させるステップと
を含み、基材の目に見える熱可塑性材料表面を構成する熱可塑性材料部品の少なくとも一部が、上記第1の組成物を有する。
【0026】
さらに開示されるのは、上記第3の方法の新規な個々のステップ、その組成物が塗装されるか、または塗装されないかに関係なく、上記第1の組成物を含む自動本体、並びにその他の自動車部品およびその他の外観部品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本明細書では所定の用語が使用され、それらの一部が以下に定義される。
【0028】
「液晶高分子」は、米国特許公報(特許文献8)に記載されているようなTOT試験またはこれらの適宜の合理的な変形形態を使用して試験したとき異方性である高分子を意味し、それは引用により本明細書に収録される。有用なLCPとしては、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)が挙げられる。高分子の1つの好ましい形態は「全て芳香族」であり、それは、(エステル基などの結合基を除いて)高分子主鎖中の全ての基が芳香族であるが、しかし芳香族でない側鎖基は存在してもよい。
【0029】
本明細書の「等方性」は、上記TOT試験によって試験したとき等方性である高分子を意味する。LCPと等方性高分子は、相互に両立しない化学種である。
【0030】
「目に見える基材表面」は、具体的には観察者の目に見える、例えば特別な技術的または視覚的な補助器具を用いないで(通常の眼鏡は使用してもよい)、視覚的に直接接近できる外側の基材表面を意味する。
【0031】
「IPE」は、等方性である縮合重合体を意味し、この場合、反復単位の連結基のうちの50パーセント超がエステル基である。したがって、IPEは、連結基の半分超がエステル基である限り、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)を含むことができる。連結基の少なくとも70%がエステルであることが好ましく、連結基の少なくとも90%がエステルであることがより好ましく、連結基の実質的に全てがエステルであることが特に好ましい。エステル連結基の割合は、IPEを製造するのに使用されるモノマーのモル量によって第一近似値を算定できる。
【0032】
特に明記しない限り、融点は、10℃/分の加熱速度を使用してASTM方法D3418によって測定される。溶融吸熱量が極大値のとき融点が取得され、最初の加熱について測定される。2つ以上の融点が存在する場合、その融点のうちの最も高いものが高分子の融点として取得される。LCPを除いて、融点は、その融点に対応する少なくとも3J/gの溶融熱を有するのが好ましい。
【0033】
特に明記しない限り、(例えば補強剤またはECFの)平均粒子径は、700X倍率の光学顕微鏡法によって測定され、得られた画像のコンピュータ分析を使用して、微粒子の平均の(しばしば数平均とも呼ばれる)長さおよび幅が算出される。材料の一次粒子径が非常に小さい場合一次粒子を個別に見ることはできず、むしろ凝集体および/または集塊を見ることが可能である。一次微粒子が非常に小さいことが疑われる場合、このことは、走査電子顕微鏡法(SEM)などの高倍率の測定方法によって確認できる。かかる小さい一次粒子が見出されたなら、平均の一次粒子径が、要求される最大値よりかなり下であることが明確な場合は700Xでの粒子径の分析が必要になることはない。アスペクト比は、微粒子の最長寸法を微粒子の最短寸法で割った比である。平均アスペクト比は、光学顕微鏡法によって、または、必要に応じてSEMなどの別の測定方法によって定められる微粒子の平均長さを平均幅で割ることによって測定される。必要なアスペクト比を有する可能性がある微粒子のタイプとしては、ニードル状の微粒子、繊維、繊維状合成ポリマー、フィブリル、および板状微粒子が挙げられる。
【0034】
「CCP」は、次のように定められる値を意味する。「純粋」な(射出成形プロセスにおいてIPEを安定化するために必要になる場合がある酸化防止剤、および/または、離型剤を改善するために必要になる潤滑油のような少量の材料を除き、組成物中にその他の配合剤が全くない)IPEが、温度が50℃の押型を使用して厚さ1.59mm(1/16インチ)のプラークの中に注入成型される。プラークから(計器用に)適切に寸法決めしたサンプルを、示差走査熱量計内に配置し、周囲温度(約20〜35℃)から10℃/分の速度で加熱する。それが加熱されている間のIPEの結晶化による発熱ピークが、CCPとして取得される。IPEの融点より下で結晶化発熱が全くない場合、IPEはCCPを有しない。別の方法として、CCPは、「急速急冷」法によって定めることが可能であり、この場合、サンプルは、DSC皿内で材料の融点より上まで加熱することによって完全に溶融され、DSC皿内の材料を、それをドライ/アセトンまたは液体窒素浴に入れることによってすぐに冷却する。次いで上記のようにDSCが行われる。
【0035】
「全ての重量パーセントは組成物中の全成分の合計を基準とする」は、これらパーセントが、組成物中に所在の(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)に、組成物中に所在の他の任意の配合剤を加えた合計量を基準にしていることを意味する。
【0036】
使用されるIPEは、必要な融点を有する適宜のIPEとすることができる。IPEの融点は、好ましくは約150℃以上、より好ましくは約200℃以上、特に好ましくは約220℃以上、、極めて好ましくは約240℃以上である。(ほとんどまたはあらゆるエステル結合基を有する)ポリエステルは、通常、1つもしくは複数のジカルボン酸および1つもしくは複数のジオールから誘導される。IPEの1つの好ましいタイプでは、ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸のうちの1つもしくは複数を含み、ジオール構成成分が、 HO(CHOH (I)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、
HO(CHCHO)CHCHOH (II)、および、
HO(CHCHCHCHO)CHCHCHCHOH (III)
のうちの1つもしくは複数を含み、式中、nは2〜10の整数であり、mは平均して1〜4であり、zは平均約7〜約40である。(II)および(III)は、化合物の混合物である場合があることに留意されたい。この場合、mおよびzは、それぞれ変化させることが可能であり、したがって、mおよびzが平均値であるので、それらzは整数である必要はない。IPEを形成するのに使用できるその他の二酸としては、セバシン酸およびアジピン酸が挙げられる。その他のジオールとしては、ジアノール(Dianol)(登録商標){例えば2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、スピック(Seppic)(S.A.、75321パリ、セデックス(Cedex)07、フランス)から入手可能}、およびビスフェノールAが挙げられる。好ましいポリエステルでは、nは2、3、または4であり、および/または、mは1である。
【0037】
本明細書の重合プロセスの文脈における「ジカルボン酸」は、ジカルボン酸それ自体、または、かかる重合プロセスに使用できるジエステルのような適宜の簡単な誘導体を意味する。同様に「ジオール」は、ジオール、または、ポリエステルを形成する重合プロセスに使用できるこれらの適宜の簡単な誘導体を意味する。
【0038】
特に好ましいIPEとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマー性ポリエステル(本願特許出願人、ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州19898、USA)からハイトレル(Hytrel)(登録商標)として入手可能)、並びに、適宜のこれら高分子と上述した適宜のジオールおよび/またはジカルボン酸との共重合体が挙げられる。2種以上のIPE(固有の融点を有する)が存在する場合、組成物中のかかる高分子の全てが構成成分(a)として採られる。本組成物は、少なくとも約50重量パーセントの構成成分(a)を含むことが好ましい。2種以上のIPEの混合物が使用される場合、高分子のうちのIPE「画分」は、150℃以上の少なくとも1つの融点(2種以上のIPEが使用される場合は混合条件に依存し、エステル交換反応が起こる可能性がある)を有することが好ましい。
【0039】
構成成分(c)の補強剤は、約2.5以上、好ましくは約3.0以上、より好ましくは約4.0以上の平均アスペクト比を有する。多くの場合、微粒子のアスペクト比が増大するにつれて、加熱たるみ(以下を参照されたい)が減少し、剛性が増大する。平均の最大寸法は、約20μm以下、より好ましくは約15μm以下、極めて好ましくは約10μm以下である。最小の平均最長寸法は、好ましくは約0.10μm以上、より好ましくは約0.5μm以上である。微粒子の好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満が、約100μm以上の最長寸法を有する。これらの比または寸法のどれも、他の任意の比または寸法の補強剤と適切に混合することができる。補強剤の粒子径がこの範囲の下限界に向かうのにつれて、多くの場合表面平滑度が改善される。
【0040】
構成成分(c)用に有用な具体的な補強剤としては、ウォラストナイト、雲母、滑石、アラミド繊維、フィブリルまたは繊維状合成ポリマ、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、アルミニウムホウ酸エステルウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカ、および炭酸カルシウムウィスカが挙げられる。好ましい補強充填剤は、ウォラストナイト、雲母、滑石、チタン酸カリウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、およびアルミニウムホウ酸エステルウィスカであり、特に好ましい補強剤は、ウォラストナイト、滑石、およびチタン酸カリウムウィスカである。これら具体的な補強剤の全てが、上記概説したような適切な寸法を有する必要がある。これらの補強剤は、接着性増強剤または他の材料で被覆することが可能であり、それは、熱可塑性材料中で使用される補強剤を被覆するのに一般に使用されるものである。
【0041】
補強剤(c)の量は、組成物の好ましくは約3〜約30重量パーセント、より好ましくは約5〜20重量パーセントである。一般的に言えば、組成物中の補強剤(c)が多くなるほど、組成物が堅くなり、多くの場合加熱たるみ(以下を参照されたい)が減少し、しばしば表面が粗くなるだろう。
【0042】
融点の要件が満たされる限り、この組成物中に適宜のLCP[構成成分(b)]を使用できる。適切なLCPは、例えば、米国特許公報(特許文献9)、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)、米国特許公報(特許文献21)、米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)、米国特許公報(特許文献24)、米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)、米国特許公報(特許文献27)、米国特許公報(特許文献28)、米国特許公報(特許文献29)、米国特許公報(特許文献30)、米国特許公報(特許文献31)、米国特許公報(特許文献32)、米国特許公報(特許文献33)、米国特許公報(特許文献34)、米国特許公報(特許文献35)、米国特許公報(特許文献36)、米国特許公報(特許文献37)、米国特許公報(特許文献38)、米国特許公報(特許文献39)、米国特許公報(特許文献40)、米国特許公報(特許文献41)、米国特許公報(特許文献42)、米国特許公報(特許文献43)、米国特許公報(特許文献44)、米国特許公報(特許文献45)、米国特許公報(特許文献46)、米国特許公報(特許文献47)、米国特許公報(特許文献48)、米国特許公報(特許文献49)、米国特許公報(特許文献50)、米国特許公報(特許文献51)、米国特許公報(特許文献52)、米国特許公報(特許文献53)、米国特許公報(特許文献54)、米国特許公報(特許文献55)、米国特許公報(特許文献56)、米国特許公報(特許文献57)、米国特許公報(特許文献58)、および米国特許公報(特許文献59)、並びに(特許文献60)に記載されている。多くの場合、使用されるLCPが比較的高い、好ましくは約250℃より上、より好ましくは約300℃より上、さらに好ましくは約325℃より上、さらに好ましくは約350℃より上の融点を有することが好ましい。しかし、LCPの融点は、組成物を形成しかつ溶融処理するのに必要な温度が、使用されるIPEを著しく劣化をさせるほど高いものにすべきではない。この場合の著しい劣化とは、この組成物が意図した使用目的に適さなくなるのを引き起こすのに足りる劣化を意味する。
【0043】
第1の組成物は、最高約20重量パーセント、好ましくは約1.0〜約15重量パーセント、より好ましくは約2.0〜約10、極めて好ましくは約1.0〜約10重量パーセントのLCPを含むことができる。一般的に言って、第1の組成物中のLCPの量が増大するにつれて、通常表面外観にさほど影響を与えずに、加熱たるみが低下し、剛性が増大する。驚いたことに、あるグループのLCPの融点が、加熱たるみ試験温度より十分に上であっても、LCPの溶融が高くなるほど、全般的に加熱たるみが小さくなることも見出された。
【0044】
高分子強化剤(構成成分D)は、通常それはエラストマであるか、または、比較的低い融点、一般に<200℃、好ましくは<150℃を有する高分子であり、その高分子は、IPEと反応できる官能基がそれに結合している。IPEは通常所在のカルボキシルおよびヒドロキシル基を有するので、これら官能基は、通常カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基と反応することができる。かかる官能基の例としては、エポキシ、カルボン酸無水物、ヒドロキシル(アルコール)、カルボキシル、イソシアナト、および第一級または第二級アミノが挙げられる。好ましい官能基は、エポキシおよびカルボン酸無水物であり、エポキシが特に好ましい。かかる官能基は、通常、小分子を既存の高分子にグラフト化することによって、または、高分子のより堅い分子が共重合によって製造されるとき、所望の官能基を含むモノマーを共重合することによって、高分子強化剤に「結合」される。グラフト化の例として、無水マレイン酸は、フリーラジカルグラフト化技術を使用して炭化水素ゴムにグラフト化することができる。得られたグラフト化高分子は、それに結合したカルボン酸無水物および/またはカルボキシル基を有する。官能基が高分子中に共重合される高分子強化剤の例は、エチレンと、適切な官能基を含む(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である。本明細書の(メタ)アクリレートとは、その化合物がアクリレート、メタクリレート、またはこの2種の混合物のいずれかを意味する。有用な(メタ)アクリレート官能性化合物としては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、および2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。エチレンおよび二官能性(メタ)アクリレートモノマーに加えて、その他のモノマーも、例えば酢酸ビニル、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの非官能化(メタ)アクリレートエステルもかかる高分子中に共重合することができる。好ましい強化剤としては、米国特許公報(特許文献3)に挙げられているものがあり、これは引用により本明細書に収録される。特に好ましい強化剤は、エチレン、エチルアクリレート、またはn−ブチルアクリレートと、グリシジルメタクリレートの共重合体である。
【0045】
高分子強化剤が、約0.5〜約20重量パーセントの官能基を含むモノマー、好ましくは約1.0〜約15重量パーセントの官能基を含むモノマー、より好ましくは約7〜約13重量パーセントを含むことが好ましい。高分子強化剤に存在する官能性モノマーの種類が、1種以上ある場合がある。高分子強化剤の量および/または官能基の量を増大させることによって、第1の組成物の強靭性が増大することが判明した。しかし好ましくは、この組成物が、特に最終的な部品形状が得られる前に架橋するおそれがある点まで、これらの量を増大させるべきではない。組成物中に約5〜約25重量パーセント、より好ましくは約10〜約20重量パーセントの高分子強化剤があることが好ましい。2種以上の高分子強化剤の混合物を同じ組成物中に使用できる。少なくとも1種が、反応性の官能基を含まなければならず、しかしその他は、かかる官能基を含んでも含まなくてもよい。例えば、官能基を含まない強化剤としては、エチレンn−ブチルアクリレート共重合体、エチレン/n−ブチルアクリレート/一酸化炭素共重合体、および、エンゲージ(Engage)(登録商標)8180(デュポン−ダウ・エラストマ(DuPont−Dow Elastomers)(デラウェア州ウィルミントン、USA)から市販)などの線状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0046】
ECFは、導電性である適宜の充填材でよく、かかる材料は、よく知られており、当技術分野で使用されている。これらとしては、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、炭素ナノチューブ、バックミンスターフラーレン、および炭素球体などの様々な形態の炭素が挙げられる。炭素、特にカーボンブラックが、ECFの好ましい形態である。ケジェンブラック(Ketjenblack)(登録商標)EC600JD、プリンテックス(Printex)(登録商標)XE2(デグッサ(Degussa)社、バルシッパニー(Parsippany)、ニュージャージー州07054、USA)、並びに、レイブン(Raven)(登録商標)およびコンダクテックス(Conductex)(登録商標)975ウルトラ(Ultra)(コロンビアケミカルズ社(Colombian Chemicals Co.)、マリエッタ(Marietta)、ジョージア州30062、USA)などの、カーボンブラックの一部の等級が、特に高い電気伝導度を有するように製造されており、これらがカーボンブラックの特に好ましい形態である。その他のECFとしては、金属粉末、金属ワイヤ、繊維、またはフィラメント、炭素繊維および鉱物などの様々な金属皮膜充填材、およびポリアニリンが挙げられる。ECFは、それらが必要な粒子径特性を有する場合、それも補強充填剤に含まれ、その結果、ECFは、ECFとしてだけでなく、補強充填剤のうちの全部または一部とすることもできる。ECFが補強充填剤でもある場合、その濃度は、組成物中の配合剤を合計するために一回だけカウントされる。
【0047】
ECF材料がECFの粒子径制限を満たす限り、それらは、平滑な表面および/または高いDOI塗面が要求される(第1の)組成物中に使用可能である。ECF粒子径は、本明細書に記載した組成物中で、すなわち、配合剤の全てが一緒に混合され組成物が形成された後、測定される。平滑な表面が要求されない場合、上記粒子径制限は適用されない。第1の組成物において、上記構成成分(c)用の好ましい粒子径(これらは一次粒子径である)は、ECF用にも好ましい。
【0048】
所望の導電率を得るのに必要なECFの量は、静電気消散または静電塗装性を含めて、複数の因子に依存する。これらのうち、TCに使用される特定の材料、使用される特定のECF、TCにおけるECFの分散度(良好な分散とは、ECFが個々の微粒子に向かって細破砕され、通常TC内に均一に分散されることを意味する)、およびECFそれ自体の固有の電気伝導度がある。通常、ECFがしばしばその他の特性、特に強靭性および/または表面品質に悪影響を与えるので、並びに/あるいは、ECFがしばしば高価であるので、TC内のECFの濃度を最小化することが望ましい。分散度または他の類似の因子は、様々な配合剤の溶融混合によってTCを形成する手順により、ある程度まで制御できる(以下を参照されたい)。
【0049】
その他の配合剤、特に熱可塑性組成物に対して一般に加えられるものも第1の組成物中に存在できる。かかる配合剤としては、酸化防止剤、顔料、充填材、潤滑油、離型剤、難燃剤、(塗料)接着性増強剤、エポキシ化合物、結晶核生成剤、可塑剤等が挙げられる。ポリオレフィン、ポリアミドなどのその他の高分子、並びに、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、ポリ(フェニレンオキシド)などの非晶質高分子も存在できる。全てのこれら配合剤の合計は、合計組成物の好ましくは約60重量パーセント未満、極めて好ましくは約40重量パーセント未満、より好ましくは約25重量パーセント未満である。これら材料のどれかが固体微粒子材料である場合、その微粒子の平均最長寸法は、好ましくは約20μm以下、より好ましくは約15μm以下である。好ましいその他の配合剤はIPE用の可塑剤であり、特にPETがIPEとして存在するとき、合計組成物の約0.5〜約8重量パーセントの量で存在するのが好ましい。
【0050】
第1の組成物中の「その他の配合剤」を分類する別の方法は、これら配合剤が官能基を含むかどうかであり、この官能基は、高分子強化剤である構成成分Dの官能基と容易に(特に混合条件下で)反応するものである。配合剤、特に賞賛の反応性官能基を含む「その他の配合剤」は、本発明では「活性配合剤」(または、それらがかかる反応性の基を含まない場合「不活性配合剤」)と称することにする。以下の表に、構成成分Dの一部になり得る「反応基」の部分的なリストを、活性配合剤の一部になり得る賞賛の反応性の基と共に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
活性配合剤に含まれない、したがって不活性配合剤であるのは、約5,000以上、好ましくは約10,000以上の数平均分子量を有し、その賞賛の末端基の一部または全てが(高分子強化剤の官能基と)反応性がある高分子、およびECFである。末端基でない反応基を有し、かつ反応性の末端基を有するか、または有さない場合がある高分子は、活性配合剤である。
【0053】
1つの好ましいタイプの組成物では、(所在のIPEを基準にして)25ppm未満、好ましくは10ppm未満のアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンなどの「フリー」の金属カチオンが、組成物に加えられる。「フリー」の金属カチオンは、カルボン酸塩を形成するカルボキシル基などの、組成物中に存在する官能基と容易に反応できるカチオンを意味する。フリーの金属カチオンは、アセテートまたは4−ヒドロキシベンゾエートなどのカルボン酸塩として、ハロゲン化金属などのその他の金属塩として、および高分子カルボキシレートの金属塩として加えてもよい。加えられるフリーの金属カチオンに含まれないのは、鉱物またはその他の化合物の一部であるその他の配合剤中の通常の不純物または金属カチオンであり、この場合、この金属カチオンがその配合剤または鉱物にしっかりと結合されているものである。
【0054】
好ましい別の配合剤は潤滑油であり、しばしば離型剤または剥離剤と呼ばれる。通常、(合計組成物の)約0.05〜約2.0重量パーセント、好ましくは約0.05〜約1.0重量パーセントの潤滑油が使用される。多くの種類の材料が潤滑油として販売されており、本組成物において当然払われるべき注意は、離型剤および塗料接着性(一部が塗装されることになると仮定して)、並びにその他の物理的性質に及ぶそれらの作用に対して特に向けられるべきである。潤滑油は、活性または不活性配合剤でよい。例えば、好ましい潤滑油の1種は、ポリエチレンワックスであり、通常約1,000〜約10,000の数平均分子量を有するポリエチレンである。これらワックスの末端基は、無極性基(例えばメチル末端)であるか、または、極性基例えばカルボキシル基を含むことができる。カルボキシル終端ワックスは、(それらの分子量が約5000未満であるとき)適切な反応性の基を有する高分子強化剤と反応性がある配合剤とみなされるだろう。かかるワックスは商業的に入手可能であり、例えば、クラリアント社(Clariant Corp.)(シャーロット(Charlotte)、ノースカロライナ州28205、USA)から入手可能なリコワックス(Licowax)(登録商標)銘柄の製品ラインを参照されたい。一部の組成物では、リコワックス(登録商標)PE520またはPE190などの不活性潤滑油が好ましい。しかし、これも活性配合剤であるリコワックス(登録商標)PED521またはPED191などの潤滑油も使用できる。
【0055】
本明細書に記載した第1の組成物は、典型的な溶融混合技術によって製造できる。例えば、配合剤は、通常の方法で単軸または二軸スクリュー押出機あるいは捏和機に加えられ、混合される。混合装置の少なくとも一部における配合剤の温度が、存在する場合、LCPの融点以上であることが好ましい(混合装置の任意のゾーンにおける測定または設定温度は、機械的加熱のため、実際の材料温度未満である場合がある)。充填材、可塑剤、結晶核化剤、および潤滑油(離型剤)などの配合剤の一部は、充填材などの固体の摩滅が減少するように、分散を改善するように、相対的に熱的に不安定な配合剤の熱履歴が減少するように、および/または蒸発による揮発性配合剤の損失を低減するように、押出機の1つもしくは複数の下流側点で加えることができる。材料が混合された後、それらは、溶融成形機への供給に適するペレットまたはその他の微粒子に成形(切断)できる。溶融成形は、射出成形、加熱成形、押出成形、ブロー成形、またはこれらの方法の任意の組合せなどの、熱可塑性材料用の通常の方法によって行うことができる。
【0056】
第1の組成物中に1種もしくは複数の「活性配合剤」が存在する場合、上記混合手続きのうちの特定の変形形態が好ましい。この変形形態では、IPE、任意選択的にかつ好ましくは、LCP(存在する場合)、および高分子強化剤、並びに、任意選択的に追加の不活性配合剤が混合されるのが、第1の混合ステップであり、適宜の反応性の配合剤、および任意選択的に上記したような不活性配合剤が、1つもしくは複数の後続の混合ステップにおいて、IPEを含む中間組成物に混合される。これは、複数の異なる方法で達成できる。例えば、第1の混合ステップは、単軸または二軸スクリュー押出機、あるいは他の型式の混合装置を経由する単一のパスで行うことができ、次いで、単軸または二軸スクリュー押出機あるいは他の混合装置を経由する第2のパスの際、その他の配合剤が加えられる。別の方法として、第1の混合ステップは、単軸または二軸スクリュー押出機あるいは類似の装置の「後部」(供給端)で行われ、次いで、第2の混合ステップで加えるべき材料が、この押出機のバレルに至る下流側のどこかで加えられ、それによって第2の混合ステップ用の材料が混合される。第2の混合ステップで加えられる材料は、いわゆる「側面フィーダ」または「垂直フィーダ」によって、および/または液体の場合溶融物ポンプによって加えてもよい。異なる配合剤を導入するため、2つ以上の側面フィーダを使用してもよい。上記したように、他の理由で、側面および/または垂直フィーダ内に不活性配合剤を加えることが好ましい場合がある。1つもしくは複数の側面および/または垂直フィーダを有する押出機を使用するのが、第1および第2の混合ステップを行う好ましい方法である。不活性潤滑油が使用される場合、第2の混合ステップでそれを加えることも好ましい。2つ以上の混合パスが行われる場合、これらパス用の装置は、同じかまたは異なる(型式)であってもよい。
【0057】
第1の組成物を製造する際、カーボンブラックおよび活性配合剤の添加を、これらの種類の配合剤のそれぞれが「最適」な方法で加えられるように、第2または後の混合ステップで行うことが可能であることが理解されよう。実際、事例によっては、カーボンブラックは、1種もしくは複数の活性(および不活性)配合剤、並びに、任意選択的に補強充填剤をも含む混合物中に存在でき、同時に加えられる。
【0058】
撹拌強さ[例えば押出機速度で測定して(rpm)]が、これら組成物の特性、特に強靭性に影響を与える場合があることも見出された。比較的速いrpmが好ましいが、強靭性は、速すぎるミキサロータ速度では減少する場合がある。最適の撹拌強さは、ミキサの形状、温度、混合される組成物等に依存し、簡単な実験によって容易に定められる。
【0059】
ECF、特にカーボンブラックを加えるという好ましい方法[本明細書の「第2の」方法]もある。カーボンブラックを組成物に加える際、カーボンブラック(その一次微粒子が球形になる傾向があるので、一般に補強充填剤でない)を、補強充填剤(の少なくとも一部)、特にウォラストナイトと完全に混合すること、および、この混合物(またはこれら2種の構成成分を含む混合物)を、最終的な組成物中のIPEの少なくとも実質的部分の溶融流れに供給することが好ましい場合がある。カーボンブラックが混合装置(例えば二軸スクリュー押出機)に供給された後、2つの理由で、それに強い混合力でなく、適度な混合力だけに委ねることが好ましい。強い混合力は、カーボンブラックが存在するとき組成物の温度を大幅に上昇させる傾向があり、多くの場合IPEまたは他の材料の過熱を生ずる。強い混合では、最終的な組成物が所望の特性を有しないほど過度に、補強充填剤(存在する場合)のアスペクト比も減少するおそれがある。
【0060】
この所望のカーボンブラック含有組成物のための第2の(混合)方法は、様々な方法で達成できる。カーボンブラックは、上記したように、第1の方法の第2の(または後の)混合ステップにおいて、二軸スクリュー押出機または他の類似のミキサに対して側面供給できる。やはり上記したように、カーボンブラックは、任意選択的にF/RAと混合して、第1の方法の第2の(または後の)混合ステップにおいて組成物の中に混合されるべき他の配合剤も含むことができる。あるいは、カーボンブラックは、最終的な組成物において要求される濃度より実質的に上のカーボンブラック濃度で、単軸または二軸スクリュー押出機の溶融IPEの中に側面供給できる。次いで、IPE、カーボンブラック、および任意選択的に他の配合剤を含むこの組成物がペレット化され、上記第1の方法の第2の混合ステップに供給される。例えば、これらのペレットは、二軸スクリュー押出機のプロセス流れの中に側面供給できる。この第1の方法における第1の混合ステップでは、IPE/カーボンブラック混合物を製造するのに使用されない残留IPE、高分子強化剤、および他の適切な配合剤が依然として混合され、第2の(および後の)混合ステップは上記した通りである。全ての場合、カーボンブラックを含む組成物は、非常に強い混合状態、例えば第1の方法の第1の混合ステップで見出されるような状態にはさらさないことが好ましい。
【0061】
第1の組成物は、特に第1の方法によって製造されるとき、好ましくは約1012オーム/平方以下、より好ましくは10オーム/平方以下、特に好ましくは約10オーム/平方以下の表面抵抗率を有する。本発明では、表面抵抗率は、ASTM方法D−257−93を使用して測定される。第1の組成物は、特に第1の方法によって製造されるとき、好ましくは約1012オーム/平方以下、より好ましくは10オーム−cm以下、特に好ましくは約10オーム−cm以下の体積抵抗率を有する。本発明の体積抵抗率は、ASTM方法D−257−93を使用して測定される。
【0062】
あるいは、第1の組成物は、10秒以下、好ましくは5秒以下、より好ましくは3秒以下、特に好ましくは1秒以下の静電気消散時間を有することができる。かかる静電気消散時間を有する組成物は、通常1012オーム/平方以下の表面抵抗率も有し、したがって、この組成物は、所望の静電気消散時間および表面抵抗率の両方を有することができる。静電気消散時間の測定方法に関しては以下を参照されたい。
【0063】
補強充填剤とカーボンブラック(またはF/RAとカーボンブラック、以下を参照されたい)の完全混合物は、単にこれら2種の配合剤を一緒に混転すること(または他の類似の方法)によって形成できる。この混合物中に他の材料が存在することになる場合、それら2種は、(それらが固体である場合)一緒に混転することが可能であり、または、液体の場合、固体は、所在の固体に吸収または吸着される場合がある。したがって、「完全混合物」は、カーボンブラックと補強充填剤またはF/RAの一様な混合物を意味する。
【0064】
平滑な表面が重要な外観部品用に特に有用である本明細書の第1の組成物の他に、熱可塑性材料(TP)を含み、この場合カーボンブラックがECFであり、その他の点で有用である(第2の)導電性組成物が、やはり上記第2の方法の変形形態によって製造できる。第1の組成物の補強充填剤の代わりに、最初にカーボンブラックを、適宜の充填材または補強剤(F/RA)、例えば、滑石、硫酸カルシウム、グラスファイバ、粉化ガラス、およびガラス球体などの(寸法決めしたまたは寸法決めしてない)ガラス、ウォラストナイト、石英、アラミド繊維、TiO、シリカ、粘土、ベントナイト、並びに雲母と完全に混合して、完全混合物を形成してもよい。F/RAは、4以上のモース硬度を有する材料、および/または、約2.0以上、より好ましくは約4.0以上の平均アスペクト比(上記参照)を有する材料、並びに/あるいは無機物であることが好ましい。平滑な表面が重要な場合、F/RAは、約20μm以下、好ましくは約10μm以下の平均の最長微粒子寸法を有する。本明細書の第1の組成物の粒子径およびアスペクト比は、上記通りに測定される。
【0065】
溶融ミキサにECF、特にカーボンブラックを供給する有用な一方法は、F/RAまたはF/RAの少なくとも一部との完全混合物としてである。第1の組成物の補強充填剤の重量比は、すなわち、第1または第2の方法において、この材料と、ミキサに供給されるカーボンブラックとの完全混合物中において、0.1以上、特に好ましくは約0.5以上(1部のカーボンブラックに対して0.5部以上の補強充填剤またはF/RA)、より好ましくは約1.0以上が好ましい。一般的に言えば、カーボンブラックは、そのけばだった性状のため、単独ではTP溶融混合装置の中に計量するのが難しく、しばしばマスターバッチまたはなんらかの他の混合物として加えられる。多くの場合、実質的な量の補強充填剤またはF/RAと混合することによって、それはより容易に扱え、ミキサに、例えば二軸スクリュー押出機の側面フィーダにより容易に供給される。このようにしてカーボンブラックを供給することによって、カーボンブラックの任意の所与の水準で、しかし得られる組成物の導電率がカーボンブラック濃度の小さい変化で大幅に変化するような特に少ない水準で、相対的に高い電気伝導度が得られ、しばしばより再現性があると考えられる。
【0066】
第1の組成物を製造する目的で、カーボンブラックを、補強充填剤(第1の方法)またはF/RA(第2の方法)と完全混合して溶融高分子に加える必要はない。カーボンブラックは、単独でまたは1種もしくは複数の他の配合剤と共に単に加えるだけでよい。第2の方法の場合、したがってこの場合はF/RAが存在しなくてもよい。
【0067】
第2の方法の生成物は、約1012オーム/平方以下、より好ましくは10オーム/平方以下、特に好ましくは約10オーム/平方以下の表面抵抗率を有することが好ましい。これらは、第1の組成物の場合と同じ方法で測定される。この生成物は、約1012オーム/平方以下、より好ましくは10オーム−cm以下、特に好ましくは約10オーム−cm以下の体積抵抗を有することが好ましい。これらは、第1の組成物の場合と同じ方法で測定される。
【0068】
あるいは、第2の方法の生成物は、10秒以下、好ましくは5秒以下、より好ましくは3秒以下、特に好ましくは1秒以下の静電気消散時間を有することができる。かかる静電気消散時間を有する組成物は、通常1012オーム/平方以下の表面抵抗率も有し、したがって、この組成物は、所望の静電気消散時間および表面抵抗率の両方を有することができる。
【0069】
本明細書に記載した第1の組成物は、「外観部品」として特に有用であり、それは、通常は表面が消費者または最終ユーザーの目に見えるという理由で表面外観が重要である部品である。これは、組成物の表面が直接見られるかどうかに関係なく、あるいは、それが塗料または金属などの別の材料で塗装されるかどうかに関係なく、適用される。かかる部品としては、フェンダ、ダッシュボード、フード、タンクフラップ、および他の外側部品などの自動車本体パネル;自動車内部パネル;ハンドル、制御パネル、シャーシー(ケース)、水洗機タブや外側部品、内部または外側冷凍機パネル、およびディッシュウォッシャーの前面または内部パネルなどの器具部品;ドリルおよび鋸などの電力工具ハウジング;パーソナルコンピュータハウジング、プリンタハウジング、周辺機器ハウジング、サーバーハウジングなどの電子キャビネットおよびハウジング;列車、トラクタ、芝刈り機デッキ、トラック、雪上車、航空機、および船などの車両用の外部および内部パネル;建築物の装飾用のインテリアパネル;事務所および/または家庭用の椅子やテーブルなどの家具;並びに、電話および他の電話機器が挙げられる。上記したように、これら部品は塗装される場合があり、または、それらは、塗装しないで組成物の色のままにしておく場合がある。この組成物は、顔料で着色可能であり、したがって色の変更が数多く可能である。
【0070】
自動車本体パネルは、特に挑戦的な応用分野である。上記したように、これら材料は、好ましくは平滑および再生可能な外観表面を有するべきであり、それらが著しく変形することなく自動車Eコートおよび塗装オーブンを通過できるような耐熱性があるべきであり、この場合、温度が各ステップ毎に最高30分間、約200℃と同程度の高さに達することがあり、軽微な衝撃によるへこみまたは他の機械的損傷に耐えるほど十分に強靭であるべきである。一般的に言えば特性の一方が改善されると他方が悪くなるので、良好な強靭性を有するが、良好な耐熱性および優れた表面外観も保持する組成物を得ることは特に困難であった。本組成物は、本明細書の実施例の一部に例示するように、良好な耐熱性および良好な強靭性を得ることができる。
【0071】
本明細書に記載した熱可塑性組成物は、特に、それらが特に自動車の用途向けに塗装(塗着)されることになる場合、従来の方法例えばUV照射、火炎処理、またはプラズマ処理によって前処理可能であり、あるいは、当業者に周知の従来のプラスチックプライマで塗装可能である。
【0072】
特に車体の場合、金属部品と、任意選択的にプラスチックプライマを提供されている少なくとも1つの熱可塑性材料部品とが、当業者に周知の従来の方法例えばネジ止め、クリッピング、および/または接着によって組立てられ、本発明による第3の方法によって塗装されるべき基材が形成される。
【0073】
できるだけ最小の目地幅で、かつ特にまた隣接する金属部品と同じ平面にある基材の少なくともその(それらの)プラスチック部品が、金属部品と共に組立てられる。
【0074】
任意選択的に、未組立のプラスチック部品は、一般に熱可塑性材料部品のうちの少なくとも1つと組成が異なる場合があり、かつ一般に熱変形に対する抵抗力が小さいが、それがもしあったとしても、本発明による方法のステップ(1)の終了後に適合させることが可能であり、ステップ(2)の後続の塗装工程に委ねることもでき(上記インライン工程と比較されたい)、および/または、本発明による方法の終了後、仕上がった塗装形態で適合させることもできる(上記オフライン工程と比較されたい)。
【0075】
本発明による第3の方法のステップ(2)において、好ましくは静電気的に補助された噴霧塗装によって行われる少なくとも1つの後続の塗装層の塗布を考慮して、金属およびプラスチック部品が、それらが互いに電気絶縁されないように組立てられる場合が好都合である。例えば、直接接触によって、または、導電性の接続構成要素、例えば金属ネジを介して導電性熱可塑性材料と金属の間の直接の電気的接触を確保できる。
【0076】
金属部品上に錆止めプライマ層を製造するため、本発明による第3の方法のステップ(1)において、金属部品と少なくとも1つの熱可塑性材料部品(特に第1の組成物)から組立てられる基材は、当業者に周知の従来の方法で電着塗装浴中で塗装される。適切な電着塗装剤としては、例えば10〜30重量%の固形分を有する従来の水性塗装組成物が挙げられる。第3の方法の第1のステップにおいて、熱可塑性材料部品の抵抗率は、電着塗装が熱可塑性材料にも塗装されるほど小さくないことが好ましい。換言すれば、熱可塑性材料および金属部品を含む組立において、第3の方法の第1のステップでは金属部品だけが塗装されることが好ましい。
【0077】
電着塗装組成物は、当業者に周知の従来の陽極性電着塗装剤とすることができる。陽極性電着塗装組成物のバインダ基準量は、任意に選択できる。陽極性電着塗装バインダの例は、例えば35〜300mgKOH/gの酸価に対応するポリエステル、エポキシ樹脂エステル、(メタ)アクリル共重合体樹脂、例えば300〜10000の重量平均分子量(Mw)を有するマレイン酸油またはポリブタジエン油、および、カルボキシル基含量である。少なくともカルボキシル基の部分は、塩基との中和によってカルボキシレート基に転化される。これらのバインダは、自己架橋できるか、または別の架橋剤と架橋できる。
【0078】
本発明による方法では電着塗装層の塗布のために、当業者に周知の従来の陰極性電着塗装剤が使用されることが好ましい。陰極性電着塗装組成物は、陽性基、または、陽性基に転化され得る基例えば塩基性基を有するバインダを含む。例としては、アミノ、アンモニウム例えば第4級アンモニウム、ホスホニウム、および/またはスルホニウム基が挙げられる。窒素含有塩基性の基が好ましく、前記基は、4級化された形態で存在することができ、または、それらは、従来の中和剤、例えばギ酸、乳酸、メタンスルホン酸、または酢酸などの有機モノカルボン酸を用いて陽性基に転化される。塩基性樹脂の例は、例えば20〜200mgKOH/gのアミン価に対応する第1級、第2級、および/または第3級アミノ基を有するものである。バインダの重量平均分子量(Mw)は、300〜10,000が好ましい。かかるバインダの例は、アミノ(メタ)アクリル樹脂、アミノエポキシ樹脂、末端二重結合を有するアミノエポキシ樹脂、第1級OH基を有するアミノエポキシ樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂、または、変性エポキシ樹脂−炭素ジオキシド−アミン反応生成物である。これらのバインダは、自己架橋できるか、または、それらは、混合物中で周知の架橋剤と共に使用できる。かかる架橋剤の例としては、アミノプラスチック樹脂、ブロック化ポリイソシアネート、末端二重結合を有する架橋剤、ポリエポキシ化合物、または、エステル交換反応が可能な架橋剤含有基が挙げられる。
【0079】
バインダおよび適宜の別の架橋剤は別として、電着塗装組成物は、顔料、充填材、および/または従来の塗装添加剤を含むことができる。適切な顔料の例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、カオリン、滑石、または二酸化ケイ素などの、従来の無機物、有機着色顔料、および/または充填材が挙げられる。添加剤の例としては、具体的には湿潤剤、中和剤、均染剤、触媒、腐食防止剤、耐へこみ剤、消泡剤、溶剤が挙げられる。
【0080】
電着塗装は、当業者に周知の従来の方法、例えば約200〜約500Vの付着電圧で行うことができる。電着塗装の付着後、基材は、過剰な電着塗装、および、接着したが付着しなかった電着塗装が、当業者に周知の従来の方法、例えば水で水洗することによって洗浄される。その後、電着塗装を架橋するために、基材は、例えば最高約200℃の目標温度に従って例えば最高約220℃のオーブン温度でベークされる。
【0081】
本発明による方法の後続のステップ(2)において、このようにして得られ、かつ、金属表面上にベークされた電着塗装層だけを提供された基材の少なくとも全ての目に見える金属およびプラスチック表面に対して、好ましくは噴霧塗布、特に静電気的に補助された噴霧塗布によって、少なくとも1つの後続の塗装層が塗布される。
【0082】
後続の塗装層が1つだけ塗布される場合、これが、全体として着色された上塗り塗装である。しかし、さらに2つ以上の塗装層を塗布することが好ましい。複数の塗装層から形成される従来の複数の塗装構造の例は、次の通りである。
−プライマサーフェーサー/上塗り塗装。
−プライマサーフェーサ/下地塗装/仕上げ塗装、
−下地塗装/仕上げ塗装、
−プライマサーフェーサ置換層/下地塗装/仕上げ塗装。
【0083】
プライマサーフェーサーまたはプライマーサーフェーサ置換塗装は、石材−チップの防護および表面レベリングのために主に使用され、環境からの影響を防ぐための防護物を提供する後続の装飾用の上塗り塗装用の表面を準備し、着色上塗り塗装、あるいは、色および/または効果発生用下地塗装、並びに保護用仕上げ塗装から製造される。
【0084】
一例として述べた複数の塗装構造を、表面全体または透明シーラーを有する表面部分にわたって設けてもよく、特に大きい引っかき抵抗が提供される。
【0085】
電着塗装層の後に続くこれら塗装層の全ては、相当する塗装層を塗布するために、当業者に周知の従来の塗装剤から塗布できる。これは、例えば希釈剤としての水および/または有機溶剤を含むそれぞれの液体塗装剤、あるいは粉末塗装剤とすることができる。塗装剤は、単一成分または多成分塗装剤でもよく、それらは、物理的にまたは酸化により乾燥できるか、あるいは化学的に架橋可能なものである。特に、これらのプライマサーフェーサ、上塗り塗装、仕上げ塗装、およびシーリング塗装は、一般に、(対流および/または赤外線照射による)加熱、並びに/あるいは高エネルギー電磁波、特に紫外光の作用によって硬化が可能な化学的架橋系である。電着塗装層が塗布された後に形成される1つもしくは複数の(好ましくは全ての)塗装層は、静電気的に補助された塗装工程を使用して塗布されることが好ましい。
【0086】
本発明による方法のステップ(2)において2つ以上の塗装層が塗布される場合、塗装層は、基本的にはそれぞれの後続の塗装層の塗布前に別々に硬化させる必要はない。それどころか、塗装層は、当業者に周知のウェットオンウェット方式に従って塗布することができ、この場合、少なくとも2つの塗装層が一緒に硬化される。特に、例えば下地塗装と仕上げ塗装の場合、下地塗装の塗布に続けて、任意選択的に短いフラッシュ−オフ状態に続けて、仕上げ塗装が塗布され、下地塗装と一緒に硬化される。
【0087】
本発明によるオンライン工程により、金属部品と熱可塑性材料部品の混合した構造で組立てられ、かつ、熱変形に対して十分に抵抗力がある基材が、塗装されるプラスチックおよび金属表面が視覚的印象の優れた調和をもって塗装されるのが可能になる。
【0088】
耐熱性は、普通は加熱たるみ試験によってこの使用目的のために測定される。この測定用サンプルでは、それはカンチレバー法で懸濁されるが、所与の時間の間に試験温度まで加熱され、室温まで冷却された後、部品がたるんだ程度が測定される。その値が小さいほど、熱たわみがより優れている。第1の組成物において、改善された(低下した)加熱たるみには、より高い融点のIPEおよび/またはLCP、より少ない含量の強化剤、より多い含量のLCP、並びにより多い含量の補強充填剤が有利な働きをする。一方、強靭性は、より多い含量の強化剤、より少ない含量の補強充填剤、より少ない含量のLCP、強化剤中に(適度に)多い含量の官能基によって改善される(上がる)。上記したように、第1の組成物から、自動車本体パネルまたは他の部品に必要な特性を有する材料を得るのに対して、しばしば幅広い自由度が得られる。
【0089】
表面品質は、様々な測定方法によって判断できる。一つは、単に視覚的に表面の平滑度および反射率、並びに、表面がどれくらい正確にその周囲の状況を反射するかを観察することである。別のより体系的な測定方法がDOIである。オートスペクツ塗料外観品質測定(AutoSpect(登録商標) Paint Appearance Quality Measurement)システムを使用して測定したとき、外観表面(平滑である必要があるもの等)が、約65以上、より好ましくは約70以上のDOIを有することが好ましい。当業者なら、組成物それ自体以外の因子が、製造される部品の表面品質に影響を与える可能性があることが理解されよう。例えば、押型表面の状態(気孔率、平坦度)、充填時間および充填圧力などの成型条件、部品のゲート位置および厚さなどの押型設計、押型、および溶解温度、並びに他の因子が、表面品質に影響を与える可能性がある。塗装される場合、表面品質は、使用される塗装技術および塗布される塗料の品質にも依存する。
【実施例】
【0090】
(試験方法)
(たるみ試験)
ASTM規格の長さ20.3cm(8インチ)、厚さ0.32cm(1/8インチ)の引張試験用バーは、バーが留金具からのハングより上に15.2cm(6インチ)を有するように、金属ホルダー内にカンチレバー法で一端部を水平に固定される。ホルダー内のバーが200℃に30分間加熱され、室温まで冷却された後、バーの端部が下方へたるんだ距離(mm単位)が測定される。
【0091】
(計器衝撃試験)
この試験は、秤量した直径1.27cm(1/2インチ)の半球状に先端をつけた重さ7.3kg(16lb)のタップが、厚さ0.32cm(1/8インチ)成形プラークを介して1.09mから落とされるときの力対時間を測定する。これは、プラークを打つとき4.5m/秒の公称タップ速度を与える。プラークは留金具の上面および裏面に留められ、留金具両面は同一直線上に3.81cm(1.5インチ)の直径穴を有する。タップがこれら穴の中央にあるプラークを打つ。加速度計がタップに取り付けられ、衝撃の際の力がデジタル的に記録される。破砕される最大(ピーク)の力および全エネルギーがデータから算出される。報告されるデータは3回の測定の平均値である。
【0092】
(縦弾性係数、強度、および伸び)
縦弾性係数、強度、および伸びは、型式Iバーを使用し、毎分5.08cm(2インチ)の伸張速度でのASTM方法D256を使用して測定される。
【0093】
(曲げ弾性率(3点))
曲げ弾性率は、ASTM方法D790を使用して測定される。
【0094】
(融点)
融点は、10℃/分の加熱速度でのASTM D3418〜82によって定められる。溶融吸熱量のピークが融点として取得される。LCPの融点は、2回目の加熱に関して取得される。
【0095】
(表面および体積抵抗率)
表面および体積抵抗率は、D−257−93を使用して測定される。表面抵抗率は接地面なしで測定され、体積抵抗率はガードリングなしで測定された。
【0096】
(静電気消散時間)
ETS(サイエンス・アンド・テクノロジ社用装置(Equipment for Technology and Science Inc.)(サンノゼ(San Jose)、カリフォルニア州95119、USA)モデル406C計器が、組成物のプラークに5kVの充電を加える。この充電水準を測定するために静電電圧計が使用される。次いでサンプルが接地される。材料を、印加電圧の10%まで放電させるのに必要な時間(秒単位)が、静的減衰時間として定義される。0.01秒の時間が0.01秒以下を表す。測定は、20%の相対湿度および22.2℃(72°F)で行われた。各サンプルは3回試験され、3回の試験の平均値が報告される(秒単位)。
【0097】
(塗料導電率)
塗料導電率は、デビルビス・ランズバーグ(Devilbiss Ransburg)導電率計(P/N−8333−00)を使用して測定され、測定される未塗装パネル上の3箇所の異なる場所で読取られ、その結果が平均される。計器は任意の単位で65〜165を読込み、約90以上、好ましくは約110以上(これらはしばしば「ランズバーグ単位」と呼ばれている、例えば米国特許公報(特許文献61)を参照されたい)の読取値が、静電塗装用に十分とみなされ、より大きい読取値がより優れている。読取値の「+」は、計器針が最大ペッグ(止め具)に接触するまで上にいったことを意味する。この試験により、塗料それ自体の導電率ではなく、静電塗装に対する基材の適合性が測定される。
【0098】
(配合および成型方法)
「側面供給」は、それらの配合剤が混合され、押出機の側面に供給されることを意味し、一方、「後部供給」は、それらの配合剤が混合され、押出機の後部に供給されることを意味する。配合剤の混合は、通常混転による。全ての場合、押出機内の溶融温度は、少しだけ過酷な混合スクリューを使用することによって、カーボンブラックが存在しない場合に使用されるときより低く保持した。
【0099】
(配合方法A)
高分子組成物は、30mmのワーナー・アンド・プフライデラー(Werner and Pfleiderer)二軸スクリュー押出機内で配合することによって調製した。全ての配合剤を一緒に混合し、押出機の後部(バレル1)に加えた。ただし、ニグロス(Nyglos)(登録商標)および他の鉱物(カーボンブラックを含む)を、(10個のバレルのうちの)バレル5の中に側面供給し、液体噴射ポンプを使用して可塑剤を加えたことを除く。この方法に対するあらゆる例外は実施例に注記した。バレル温度は280〜310℃に設定し、組成物、並びにスクリューの押出し量およびrpmに依存して、290〜350℃の溶解温度が得られた。
【0100】
(配合方法B)
これは方法Aと同じであった。ただし、40mmのワーナーおよびプフライデラー二軸スクリュー押出機を使用したことを除く。側面供給した材料は、(10個のバレルのうちの)バレル6に供給した。
【0101】
樹脂は、3または6オンス射出成形機上でASTM試験片に成型した。溶融温度は280〜300℃、押型温度は110〜130℃であった。
【0102】
実施例では所定の配合剤が使用され、それらは以下のように定義される:
CB1−ケジェンブラック(登録商標)EC600JDを参照されたい、
クライスター(Crystar)(登録商標)3934−PETホモポリマー、IV= 0.67、本願特許出願人(ウィルミントン、デラウェア州19898、USA)から入手可能、
イルガノックス(Irganox)(登録商標)1010−チバスペシャリィティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(タリータウン(Tarrytown)、ニューヨーク州10591、USA)から入手可能な酸化防止剤、
ジェットフィル(Jetfil)(登録商標)575C−ルツェナクアメリカ(Luzenac America)(エンゲルウッド(Englewood)、コロラド州80112、USA)からの滑石、
ケジェンブラック(登録商標)EC600JD−アクゾノーベルポリマーケミカルズ(Akzo Nobel Polymer Chemicals)(LLC、シカゴ(Chicago)、イリノイ州60607、USA)からの導電性カーボンブラック、
L135雲母−オグレベイノートン社(Oglebay Norton Co.)(クリーブランド(Cleveland)、オハイオ州44114、USA)から、
LCP5−50/50/70/30/320(モル部)のヒドロキノン/4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸の共重合体、融点334℃、
リコワックス(登録商標)PE520−離型剤として使用したポリエチレンワックス、クラリアント社(シャーロット、ノースカロライナ州28205、USA)から入手可能、これは0mgKOH/gワックスの酸価を有すると報告されている、
ニグロス(登録商標)4−寸法決めしてない平均長さ約9μmのウォラストナイト繊維、ニコミネラルズ(Nyco Minerals)(カルガリー、AB、カナダ)から入手可能、
OCF(登録商標)739−オーウェン・コーニング社(Owens−Corning Corp.)(トレド(Toledo)、オハイオ州、USA)からのファイバーグラス、
オミカーブ(Omycarb)(登録商標)15−OMYA社(アルファレッタ(Alpharetta)、ジョージア州30022、USA)からの炭酸カルシウム、
プラストホール(Plasthall)(登録商標)809−ポリエチレングリコール 400ジ−2−ヘキサノン酸エチル、
高分子D−エチレン/n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(66/22/12重量%)共重合体、メルトインデックス8g/10分、
PPG(登録商標)3563−PPG社(ピッツバーグ(Pittsburgh)、ペンシルバニア州15272、USA)からのグラスファイバ、
スザライト(Suzerite)HK雲母−ツェメックス・インダストリアル・ミネラルズ(Zemex Industrial Minerals)(アトランタ(Atlanta)、ジョージア州30338、USA)から、
バンシル(Vansil)(登録商標)HR325−R.T.ヴァンダービルト社(Vander−bilt Co.)(ノーウォーク(Norwalk)、コネティカット州06850、USA)からのウォラストナイト。
実施例で示される全ての組成量は、重量部である。
【0103】
(実施例1〜9)
サンプルは、方法Aによって混合し、標準の射出成形手順によって成形した。結果を表1に示す。バレル温度は、280℃であった実施例1を除いて、300〜310℃であった。
【0104】
(実施例10〜13)
サンプルは、方法Bによって混合し、標準の射出成形手順によって成形した。結果を表2に示す。押出機スクリューは250rpmで運転した。
【0105】
(実施例14〜20)
サンプルは、方法Aによって混合し、標準の射出成形手順によって成形した。結果を表3に示す。押出機スクリューは250rpmで運転した。
【0106】
(実施例21〜27)
サンプルは、方法Aによって混合し、標準の射出成形手順によって成形した。結果を表4に示す。押出機スクリューは300rpmで運転した。全てのサンプルは、3.48重量パーセントのケジェンブラック(登録商標)EC600JDを含んでいた。
【0107】
(実施例28〜39)
サンプルは、方法Aによって混合し、標準の射出成形手順によって成型した。結果を表5に示す。押出機スクリューは300rpmで運転した。
【0108】
(実施例40〜47)
サンプルは、方法Aによって混合し、標準の射出成形手順によって成形した。バレル5および8に2箇所の別々の側面供給点があった。これらは表6に注記されている。結果を表6に示す。押出機スクリューは300rpmで運転した。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
【表5】

【0113】
【表6】

【0114】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約100℃以上の融点を有する少なくとも約40重量パーセントの1種または複数の等方性ポリエステル、
(b)0.0〜約20重量パーセントの液晶高分子であって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点より少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を全く有しない場合、前記液晶高分子の前記融点が150℃以上である液晶高分子、
(c)約2.5以上の平均アスペクト比を有し、かつその平均最長寸法が20μm以下である約1.0〜約35重量パーセントの補強剤、
(d)前記等方性ポリエステルと反応性である官能基を含む約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤、並びに、
(e)前記組成物が、約1012オーム/平方以下の前記組成物の表面抵抗率、約10秒以下の静電気消散時間、および約90以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有するのに十分な量の導電性充填材であって、前記導電性充填材の平均最長寸法が20μm以下である導電性充填材、
を含み、全ての重量パーセントは組成物中の全成分の合計を基準とすることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記等方性ポリエステルが、約200℃以上の融点を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記等方性ポリエステルが、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸のうちの1種もしくは複数と、HO(CHOH、1,4−シクロヘキサンジメタノール、HO(CHCHO)CHCHOH、およびHO(CHCHCHCHO)CHCHCHCHOHのうちの1種もしくは複数とに由来し、式中、nは2〜10の整数であり、mは平均1〜4であり、zは平均約7〜約40であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記等方性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、または、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマー性ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記補強剤が、約15μm以下の平均最大寸法を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記補強剤が、前記組成物の約3〜約20重量パーセントであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記補強剤が、約3.0以上のアスペクト比を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記補強剤が、ウォラストナイト、滑石、またはチタン酸カリウムウィスカであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
約1.0〜約10重量パーセントの液晶高分子が存在することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記官能基が、カルボン酸無水物またはエポキシであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記高分子強化剤が、エチレンおよび官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む共重合体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記高分子強化剤が、官能基を含むモノマーを約0.5〜約20重量パーセント含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記導電性充填材が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
約0.05〜約2.0重量パーセントの潤滑油をさらに含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
約10オーム/平方以下の前記表面抵抗率、約3秒以下の前記静電気消散時間、および約110以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を静電塗装によって塗装することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法から作製される製品。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする外観部品。
【請求項19】
前記外観部品が、塗装されていることを特徴とする請求項18に記載の外観部品。
【請求項20】
前記塗装が、静電塗装によって塗布されたことを特徴とする請求項19に記載の外観部品。
【請求項21】
前記外観部品が、約70以上のDOIを有することを特徴とする請求項19または20に記載の外観部品。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の外観部品を含むことを特徴とする車体。
【請求項23】
前記車体が、塗装されていることを特徴とする請求項22に記載の車体。
【請求項24】
前記塗装が、静電塗装によって塗布されたことを特徴とする請求項23に記載の車体。
【請求項25】
塗装された請求項1に記載の組成物が、約70以上のDOIを有することを特徴とする請求項23または24に記載の車体。
【請求項26】
(a)約100℃以上の融点(MP)を有する少なくとも約40重量パーセントの1種または複数の等方性のポリエステル(IPE)、
(b)0.0〜約20重量パーセントの液晶高分子(LCP)であって、その融点が、前記等方性ポリエステルの冷結晶点(CCP)より少なくとも50℃高いか、または、前記等方性ポリエステルが冷結晶点を全く有しない場合、前記液晶高分子の前記融点が150℃以上である液晶高分子、
(c)約2.5以上の平均アスペクト比を有し、かつその平均最長寸法が20μm以下である約1.0〜約35重量パーセントの補強剤、
(d)前記等方性ポリエステルと反応性である官能基を含む約3〜約30重量パーセントの高分子強化剤、並びに、
(e)前記組成物が、約1012オーム/平方以下の前記組成物の表面抵抗率、約10秒以下の静電気消散時間、および約90以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有するのに十分な量の導電性充填材であって、前記導電性充填材の平均最長寸法が20μm以下である導電性充填材
を含み、全ての重量パーセントは組成物中の全成分の合計を基準とする組成物の製造方法であって、前記方法が、
(a)前記等方性ポリエステルおよび前記高分子強化剤を含む材料を混合して、中間組成物を形成する第1の混合ステップ、次いで、
(b)前記カーボンブラックおよび任意選択的にその他の配合剤を、前記中間組成物が溶融している間に前記中間組成物の中に導入および混合することによる後続の混合ステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記等方性ポリエステルが約200℃以上の融点を有し、前記等方性ポリエステルがポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン2,6−ナフトエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)、または、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールブロックを有する熱可塑性エラストマー性ポリエステルであり、前記補強剤が約15μm以下の平均最大寸法を有し、前記補強剤が前記組成物の約3〜約20重量パーセントであり、前記官能基がカルボン酸無水物またはエポキシであり、前記高分子強化剤がエチレンおよび官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む共重合体であり、かつ、前記導電性充填材がカーボンブラックであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、約10オーム/平方以下の前記表面抵抗率、約3秒以下の前記静電気消散時間、および約110以上の塗料導電率のうちの1つもしくは複数を有することを特徴とする請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
カーボンブラックを、溶融熱可塑性高分子を含む材料の中に導入および混合して、熱可塑性組成物を形成するステップを含むことを特徴とする導電性熱可塑性組成物の製造方法。
【請求項30】
前記カーボンブラックが、充填材または補強剤との混合物として前記材料の中に導入されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項31】
目に見える金属および熱可塑性材料表面を有する、金属部品および少なくとも1つのプラスチック部品から組立てられた基材を塗装する方法であって、以下の連続ステップ、
(1)前記基材を部分的または完全に電着塗装し、付着しなかった電着塗装剤を前記基材から取り除き、そして付着した電着塗装を加熱架橋し、それによって電着塗装プライマを金属表面上に形成するステップと、
(2)少なくとも全ての目に見える金属および熱可塑性材料表面上に、少なくとも1つの追加の塗装を塗布および硬化させるステップと
を含み、前記基材の目に見えるプラスチック表面を構成する熱可塑性材料部品の少なくとも一部が、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記塗布が、静電気的に補助されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(1)において、前記熱可塑性材料表面が塗装されないことを特徴とする請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の前記熱可塑性材料表面が、塗装後、約70以上のDOIを有することを特徴とする請求項31、32、または33に記載の方法。

【公表番号】特表2007−506850(P2007−506850A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528323(P2006−528323)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031979
【国際公開番号】WO2005/030870
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】