説明

導電性粘着シートおよびその製造方法

【課題】厚み方向および面方向に導電性を有する導電性粘着シートであり、被着体との電気的接続を行え、外観や印字適性にも優れ、かつ全厚を薄くすることが可能な導電性粘着シートを提供する。
【解決手段】導電層1aを有する基材1と、該導電層面に形成された粘着剤層2とからなり、該粘着剤層2に導電性炭素粒子3が配合され、該粘着剤層2の厚さAと、該導電性炭素粒子3の平均粒径Bとの比、B/Aが0.50〜0.99の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性粘着シートに関し、さらに詳しくは厚み方向および面方向に導電性を有し、電磁波シールド、静電気防止用のアース取りなどに好ましく使用される導電性粘着シートに関する。また、本発明はかかる導電性粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着シートは、各種の電子機器において様々な仕様のものが用いられている。たとえば、異方導電性粘着シートは、厚み方向に導電性を有し、各種の電子デバイスを基板上に接着し導通を確保するために使用されている。また、金属箔等の導電性基材の片面または両面に粘着剤層が形成されてなる導電性粘着シートは、面方向にも導電性を有し、電磁波シールドなどの用途に用いられる。このような導電性粘着シートの中でも、厚み方向および面方向に導電性を有するものは、電磁波シールドや静電気防止用のアースシート等の用途に適用される。
【0003】
このような厚み方向および面方向に導電性を有する導電性粘着シートとしては、たとえば特許文献1(特開2006−117747号公報)において、「導電性金属箔からなる導電層と粘着剤からなる粘着剤層とが積層され、該粘着剤層の粘着力によって被着物の表面に前記導電層が担持され、電磁波シールドに用いられる導電性粘着テープであって、前記導電層と粘着剤層との間に繊維織物からなる基材層を備え、導電性粘着テープを重ね合わせた厚さ方向に導電性を示し得るように、前記導電性金属箔には、前記粘着剤層方向にバリが形成されるよう穴が設けられ且つ該バリが前記粘着剤層を貫通していることを特徴とする導電性粘着テープ。」が開示されている。
【0004】
この導電性粘着テープは、導電層側から先鋭な棒状体を突き刺し、導電層からバリを生成させ、このバリを繊維織物層および粘着剤層に貫通させて得られる(実施例等参照)。
【0005】
また、特許文献2(特公平5−40402号公報)には、接着剤成分と導電性金属粒子とからなる異方導電性接着シートが開示され、特許文献3(特許第3256659号)には、導電粒子を接着剤層中に分散してなる異方導電膜が開示されている。
【特許文献1】特開2006−117747号公報
【特許文献2】特公平5−40402号公報
【特許文献3】特許第3256659号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の導電性粘着テープにおいては、貫通孔が変形し、バリを導電層側に押し戻すことがある。すなわち、導電層から延在するバリは、繊維織物層を貫通しているが、繊維織物層の弾性、反発力により、導電層方向にバリが押し戻され、導通不良となったり、貫通孔が縮小するおそれがある。また、繊維織物層および粘着剤層を貫通するバリを形成するために貫通孔はある程度の大きさが必要であり、実施例での貫通孔の直径は1mmである。したがって、基材表面には、多数の目視可能な孔が形成されるため、外観を損ない、基材表面の印刷が困難になる。また、粘着剤層面にも多数の貫通孔が大面積で形成されるため、粘着面積が狭くなり、被着体への接着力が低下することがある。さらに、繊維織物層を含むため、テープの全厚が厚くなり、機器の小型化の妨げとなる。
【0007】
また、特許文献2の異方導電性接着シートや、特許文献3の異方導電膜は、厚み方向にのみ導電性を示し、電子機器における電極と端子との接合等に使用される、いわゆる異方導電性接着フィルムであって、シートあるいは膜の面方向に導電性を有するものではない。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、厚み方向および面方向に導電性を有する導電性粘着シートであり、被着体との電気的接続を行え、外観や印字適性にも優れ、かつ全厚を薄くすることが可能な導電性粘着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
(1)導電層を有する基材と、該導電層面に形成された粘着剤層とからなり、
該粘着剤層に導電性炭素粒子が配合され、
該粘着剤層の厚さAと、該導電性炭素粒子の平均粒径Bとの比、B/Aが0.50〜0.99の範囲にある導電性粘着シート。
【0011】
(2)粘着剤層の厚さAが10〜40μmであり、導電性炭素粒子の平均粒径Bが8〜38μmの範囲にある(1)に記載の導電性粘着シート。
【0012】
(3)導電性炭素粒子のアスペクト比が0.50〜0.99である(1)または(2)に記載の導電性粘着シート。
【0013】
(4)粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素粒子を3〜50質量部含有する(1)〜(3)の何れかに記載の導電性粘着シート。
【0014】
(5)粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、平均粒径20〜80nmの導電性炭素微粒子を5〜50質量部含有する(1)〜(4)の何れかに記載の導電性粘着シート。
【0015】
(6)剥離シートの剥離処理面上に、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素粒子を3〜50質量部含有する粘着剤組成物の塗液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成する工程と、
導電層を有する基材の該導電層面上に、該粘着剤層を貼り合わせる工程とを含む導電性粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、厚み方向および面方向に導電性を有し、被着体との電気的接続を行え、外観や印字適性にも優れ、かつ全厚を薄くすることが可能な導電性粘着シートが提供される。また、本発明の製法によれば、上記のような導電性粘着シートを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る導電性粘着シート10は、導電層1aを有する基材1と、該導電層1a面に形成された粘着剤層2とからなり、粘着剤層2には導電性の炭素粒子3が配合されてなる。
【0019】
基材1は、それ自体が導電層1a単層であってもよく、導電層1aと支持シート1bとの積層体であってもよい。図1では、基材1が、導電層1aと支持シート1bとの積層体である場合を示した。
【0020】
導電層1aは、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔であってもよく、また支持シート1bの少なくとも片面に形成された導電性ペースト層やスパッタリング、蒸着、メッキ等により形成される金属膜であってもよい。導電層1aの厚さは、特に限定はされない。たとえば、基材1が導電層1a単層からなる場合には、導電層1aは金属箔であることが好ましく、その厚さは自己支持性を有する程度であり、好ましくは5〜100μm程度である。また、導電層1aが支持シート1b上に形成された導電性ペースト層、蒸着膜やスパッタリング膜である場合には、必要な導電性を有する限り、その厚さは薄くてもよい。一般的には、導電性ペースト層の場合、その厚さは好ましくは0.1〜50μm程度であり、蒸着膜やスパッタリング膜である場合には、好ましくは0.01〜5μm程度であり、メッキ膜である場合には、その厚さは好ましくは0.01〜50μm程度である。また、導電性粘着シート10を表示ラベルとしても利用できることから、基材1は、特に印刷・印字適性を向上させるため、導電層1aと支持シート1bとの積層体であることが好ましい。なお、支持シート1bに導電層1aとしての金属箔を積層する場合は、上記したものを用いることができる。
【0021】
支持シート1bは、特に限定はされないが、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙、含浸紙、合成紙、無塵紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックのフィルム、シート等が挙げられる。特にポリエステル系材料から製造されるフィルムが、耐熱性が良好であり、機械的強度にも優れ、コストも比較的安価であることなどから、本発明の使用用途である種々の電子部品や精密製品をはじめとする導電性粘着シート製品に多用されており、本発明でも好適に用いられる。
【0022】
支持シート1bは、未延伸フィルムでもよいし、縦または横などの一軸方向または二軸方向に延伸された延伸フィルムであってもよい。支持シート1bの厚さは、特に制限はされないが、通常10〜200μmであり、好ましくは25〜150μmである。支持シート1bは、単層フィルムであってもよく、また積層フィルムであってもよい。また、支持シート1bは、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。
【0023】
また、基材1の表面又は裏面には、印刷、印字などを施してもよい。そのために、基材1には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザー印字などが可能な印字受像層、印刷性向上層等が設けられてもよい。これらの印字受像層、印刷性向上層等は、好ましくは前記支持シート1bの表面に形成される。
【0024】
基材1の導電層1aには、その上に設けられる粘着剤層2との密着性を向上させる目的で所望により、導電層1aの導電性を損なわない範囲で、酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。
【0025】
本発明の導電性粘着シート10においては、前記基材1の導電層1a面に、導電性炭素粒子3が配合された粘着剤層2が設けられる。粘着剤層は、粘着性樹脂と導電性炭素粒子3とを含む粘着剤組成物から形成される。粘着性樹脂としては、従来より公知の種々の感圧性接着剤が用いられる。このような粘着性樹脂としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。粘着剤は、導電性シートが適用される電子機器の規格に応じて適宜に選択される。たとえば、ハードディスクドライブなどにおいては、シリコーン系粘着剤中に含まれる低分子量のシリコーン化合物により電子部品がトラブルを起こすことがあり、注意を要する。但し、シリコーン化合物のコンタミネーションが問題ない用途であれば、シリコーン系粘着剤も当然に使用できる。
【0026】
上記粘着剤の中でも、その汎用性と取り扱い性の観点から、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが好ましく用いられ、特にアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0027】
アクリル系粘着剤としては、主成分として、例えば(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単位を2種以上含む共重合体及び(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体の中から選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。該(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどが挙げられる。また、官能性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸などのカルボン酸基含有単量体、 (メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルモルフォリン、N−アリルモルフォリン、N−(メタ)アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。
【0028】
官能性単量体成分の一つとして、窒素原子と酸素原子をそれぞれ有する6員環の複素環を有するエチレン性不飽和単量体であるN−ビニルモルフォリン、N−アリルモルフォリン、N−(メタ)アクリロイルモルフォリン等を用いると、これが後で述べる架橋剤との反応において架橋促進剤としての性能を発揮するので好ましい。これらの中でも、特に他のモノマー成分との共重合性が良好であるという観点から、N−(メタ)アクリロイルモルフォリンが好ましく用いられる。
【0029】
導電性粘着シートは、各種電子機器に適用され、特に導電性の被着体に貼付されることがある。したがって、導電性被着体表面の酸化(腐食)を抑制する観点から、酸基を含まない粘着剤が好ましく、たとえばカルボン酸基含有単量体を用いない粘着剤が好ましい。
【0030】
また、上記粘着剤は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などの架橋剤により架橋されていてもよい。イソシアネート系架橋剤としてはトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素化トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性TDI等が用いられる。エポキシ系架橋剤としてはエチレングリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が用いられる。アジリジン系架橋剤としては2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボキシアミノ)ジフェニルメタン、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕フォスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフォスファトリアジン等が用いられる。キレート系架橋剤としてはアルミニウムキレート、チタンキレート等が用いられる。架橋剤量を適宜調整することで、種々の被着体に対し必要な粘着物性を発現させることが出来る。架橋剤は単独の使用だけでなく、必要に応じて2種類以上併用しても良い。
【0031】
前記粘着剤層2を構成する粘着剤組成物には、上記粘着性樹脂に加えて、導電性炭素粒子3が含まれている。本発明において、導電性および粘着性の観点から、粘着剤層2に含まれる導電性炭素粒子3として、その平均粒径が粘着剤層2の厚さよりも小さな粒子を用いる。具体的には、粘着剤層2の厚さAと、該導電性炭素粒子3の平均粒径Bとの比、B/Aが0.50〜0.99、好ましくは0.60〜0.96の範囲となるように導電性炭素粒子3を選択する。なお、導電性炭素粒子3の平均粒径は、後述する実施例に記載の測定法により決定される。
【0032】
一般的に本発明の導電性粘着シートにおいて、粘着剤層2の厚さAは、10〜40μmであり、好ましくは15〜30μmであり、導電性炭素粒子3の平均粒径Bは、通常8〜38μm、好ましくは12〜28μmの範囲にある。導電性炭素粒子3の平均粒径が粘着剤層2の厚さに比して大きすぎる場合には、導電性炭素粒子が粘着剤層の表面から突出したり、あるいは、突出した導電性炭素粒子の頂部を覆う粘着剤のみを介して被着体と接触して粘着剤層表面の有効表面積が低下する。この結果、導電層1aや、被着体との接着強度が低下する。たとえば、粒径の大きな導電性炭素粒子を含有する粘着剤組成物を、導電層1a上に直接塗工、乾燥し、導電性炭素粒子の平均粒径よりも小さな膜厚の粘着剤層を形成した場合には、粘着剤層と導電層1aとの接着強度は問題はないが、粘着剤層表面から導電性炭素粒子が突出し、粘着剤層の有効表面積が低下してしまい、被着体への接着強度が不十分になる。また、粒径の大きな導電性炭素粒子を含有する粘着剤組成物を、剥離シート上に塗工、乾燥し、粘着剤層を形成した後に、導電層1aに転写する場合には、剥離シート上の粘着剤層表面から導電性炭素粒子が突出しているため、導電層1aと接着剤層との間で十分な接着強度が得られないことがある。一方、粘着剤層2の厚さAと導電性炭素粒子3の平均粒径Bとの比(B/A)が上記の範囲にあると、導電性炭素粒子3が粘着剤層中に埋め込まれ、粘着剤層の表面が平滑となり、導電層1aや、被着体に対して十分な接着強度で密着する。
【0033】
また、導電性炭素粒子3は、球状形状であることが好ましく、そのアスペクト比は、好ましくは0.50〜0.99、さらに好ましくは0.55〜0.90である。アスペクト比は導電性炭素粒の(短軸数平均径)/(長軸数平均径)で表される。短軸数平均径および長軸数平均径は、透過電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素粒子20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
【0034】
導電性炭素粒子3が球状形状であると、導電性炭素粒子同士の接触頻度が均一になったり、導電性炭素粒子を介して導電層1aと被着体との接触が安定し、導通径路が粘着剤層中に均一に形成されるため、厚みの方向の導電性についてのロット間あるいは粘着シートの部位間でのバラツキがなくなる。一方、導電性炭素粒子が不定形状であると、導電性炭素粒子同士の接触頻度が不均一化し、厚み方向の導電性がロット間で変動したり、あるいは粘着シートのある部分と、他の部分とで導電性が異なる場合がある。
【0035】
また、導電性炭素粒子3の粒径のバラツキは小さいほど好ましい。導電性炭素粒子3に粗粒が多すぎる場合には、導電性炭素粒子3が粘着剤層2から突出し、粘着剤層の有効表面積が低下することがある。したがって、導電性炭素粒子3の粒径のバラツキはCV値(変動係数)で40%以下が好ましく、特に30%以下が好ましい。
【0036】
なお、CV値は、CV(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100で定義される。
【0037】
粘着剤層2を形成する粘着剤組成物は、上記粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素粒子3を好ましくは3〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部含有する。導電性炭素粒子3の含有量が過小であると、導電性炭素粒子同士の接触頻度が低下し、導通径路が形成されず、厚み方向の導電性が低下するおそれがある。一方、導電性炭素粒子3の含有量が過大であると、粘着剤層表面において導電性炭素粒子3の割合が高くなり、粘着剤層の有効表面積が低下し、導電層1aや、被着体との接着強度が低下するおそれがある。
【0038】
また、粘着剤層2を形成する粘着剤組成物には、図2に示すように、導電性炭素微粒子4が含有されていてもよい。導電性炭素微粒子4の平均粒径は20〜80nm、好ましくは25〜70nm、さらに好ましくは30〜60nmの範囲にある。導電性炭素微粒子4を粘着剤組成物に配合する場合には、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素微粒子4を5〜50質量部、好ましくは8〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部の割合で用いる。このような導電性炭素微粒子4を粘着剤層に配合すると、粒径の大きな導電性炭素粒子間あるいは、導電性炭素粒子3と導電層1aや被着体との間に導電性炭素微粒子4が介在し、導通径路が形成されやすくなり、厚み方向の導電性が良好になる。しかしながら、導電性炭素微粒子4の含有量が過大であると、粘着剤層の有効表面積が低下し、導電層1aや、被着体との接着強度が低下するおそれがある。
【0039】
本発明で使用する導電性炭素粒子3としては、比重が2.2程度のカーボングラファイトが好ましく用いられ、また導電性炭素微粒子4としては比重が1.8〜1.9程度のカーボンブラックが好ましく用いられる。
【0040】
導電性粒子として、比重の高い金属粒子を使用すると、粘着剤組成物の塗液を調整した後に、経時的に金属粒子が沈降してしまい、得られる粘着剤層中の導電性粒子の分布が一定にならず、導電性がロット間でばらついてしまうことがある。また、塗液を塗工後も、塗膜中で金属粒子が沈降し、乾燥後の粘着剤層中で金属粒子の分散が不均一化し、厚み方向での導電性が損なわれることがある。
【0041】
また、粘着剤層を形成する粘着剤組成物には、通常の粘着シート用の粘着剤に一般的に含まれている添加剤、例えば、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、又は帯電防止剤等が必要に応じ含まれていてもよい。
【0042】
上述のように構成された本発明の導電性粘着シート10を導電性被着体に貼付すると、粘着剤層中の導電性炭素粒子3が導電性被着体と接触し、導電性被着体と基材1の導電層1aとが電気的に接続する。したがって、垂直方向(厚み方向)および面方向に導電することができる。また、本発明の導電性粘着シート10の厚さは、実質的に基材1と粘着剤層2との合計厚さに等しいため、薄層化が可能であり、機器の小型化を妨げることはない。
【0043】
以上、本発明の導電性粘着シート10について、基材1が導電層1aと支持シート1bとの積層体である場合を例にとって説明したが、基材1はかかる構成に限定はされない。たとえば、導電層1aが十分な支持性を有する場合には、基材1は、導電層1a単層であってもよい。
【0044】
また、本発明の導電性粘着シート10においては、その使用前に粘着剤層2を保護するために、粘着剤層2表面に剥離シート5が積層されていてもよい。剥離シート5は、後述する本発明の導電性粘着シート10の製造時に用いられる剥離シートを粘着剤層2から剥離することなく、そのまま使用してもよく、導電性粘着シート10の製造時に用いられる剥離シートを剥離した後に、他の剥離シートを仮着してもよい。
【0045】
剥離シート5における剥離基材としては、特に制限はなく、従来剥離シートの基材として知られている各種の基材の中から、適宜選択して用いることができる。そのような剥離基材としては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙、無塵紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、酢酸セルロース系フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらを含む積層シートなどが挙げられる。この剥離基材の厚さとしては特に制限はないが、通常10〜150μmが望ましい。
【0046】
剥離シート5の剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、プラスチックフィルムと剥離剤層との密着性を向上させるなどの目的で、所望により、該プラスチックフィルムの剥離剤層が設けられる側の面に、酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、剥離基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が、効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0047】
剥離シートにおける剥離剤層を形成するための剥離剤としてはシリコーン樹脂、長鎖アルキル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレンゴム、エチレンポリプロピレン共重合体などのゴム系エラストマーなどがあるが前述したシリコーンの汚染を考慮するとシリコーン樹脂でない剥離剤を用いることが好ましい場合がある。
【0048】
剥離剤の剥離基材上への塗工は、例えばバーコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法など、従来公知の塗工方法により行なうことができる。剥離剤層の厚さは特に制限はないが、通常0.01〜5μmが望ましい。
【0049】
次に、本発明に係る導電性粘着シート10の製造方法について説明する。
【0050】
本発明に係る製造方法では、まず、導電層1aを有する基材1を準備する。またこれとは別に、上記粘着剤組成物の塗液を準備する。塗液は、前記した粘着性樹脂、導電性炭素粒子3および必要に応じ導電性炭素微粒子4を適宜な分散媒を用いて混合して得られる。得られた塗液を、剥離シート5上に塗工、乾燥することで、剥離シート5上に粘着剤層2が形成される。粘着剤層2は、例えばバーコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法など、従来公知の塗工方法により形成できる。次いで、前記した基材1の導電層1a側に粘着剤層2を貼り合わせることで、本発明の導電性粘着シート10が得られる。基材1、粘着剤層2、剥離シート5の具体例、好適例は、上記と同様である。このような工程を経ることで、基材1の導電層1a面と粘着剤層2との密着性が高い導電性粘着シート10が得られる。また、剥離シート5は、導電性粘着シート10を使用する際に剥離すればよい。また、前記粘着剤組成物の塗液を、基材1の導電層1a上に直接塗布、乾燥して、導電性粘着シートを得ることもできる。
【0051】
本発明の導電性粘着シートは、厚み方向および面方向に導電性を有し、電磁波シールドや静電気防止用のアースシート等の用途に好ましく用いられる。たとえば、帯電し易い部品の表面と、筐体表面とにまたがるように本発明の導電性粘着シートを貼付することで、帯電した部品と筐体とを導通させ、帯電した部品の静電気をアースすることができる。したがって、本発明の導電性粘着シートは、たとえばハードディスクドライブのモーター部と筐体とのアース用などに好適に用いることができる。
【0052】
(実施例)
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
なお、本発明において、導電性炭素粒子および導電性炭素微粒子の平均粒径、導電性粘着シートの、粘着力および導通性は、次のように評価した。
【0054】
[導電性炭素粒子および導電性炭素微粒子の平均粒径、アスペクト比]
導電性炭素粒子及び導電性炭素微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真で無作為に選んだ炭素粒子20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とした。
【0055】
アスペクト比は、上記と同様に電子顕微鏡写真で無作為に選んだ粒子20個の長軸径及び短軸径を測定し、短軸数平均径及び長軸数平均径を算出し、(短軸数平均径)/(長軸数平均径)で表わした。
【0056】
また、上記測定結果から、導電性炭素粒子の粒径のバラツキを示すCV値を、下記式より求めた。
【0057】
CV(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
[粘着力]
JIS Z 0237に準拠し、被着体(SUS)に貼付後30分経過後の導電性粘着シートの23℃、50%RHでの180°引き剥がし法による粘着力を測定した。
【0058】
[導通性評価]
図3に示すように、ガラスプレートGの両端に銅箔付きポリエチレンテレフタレートフィルム(Cu/PET)の銅箔面を上にして積層した。離間した銅箔同士(離間距離:50mm)を導電性粘着シート10(長さ:70mm、幅:10mm)で両端とも10mm×10mmの貼着面積になるように銅箔面に貼付接続し、銅箔間が導通しているか否かをテスター(日置電機(株)製、商品名「HIOKI 3801 デジタルハイテスター」、測定モード:オートレンジ)で測定した。
【0059】
(実施例1)
[剥離シートの作成]
剥離シートの剥離基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ポリエステルフィルム製:T100)を用いた。
【0060】
該PETフィルム上に、ポリウレタン(大日本インキ化学工業製:クリスボン5150S、固形分50重量%)100重量部、イソシアナート架橋剤(大日本インキ化学工業製:クリスボンNX)5重量部をメチルエチルケトン溶液にて固形分濃度1重量%に希釈し、乾燥後の膜厚が0.15μmとなるように塗布し100℃1分間乾燥させてプライマー層を形成した。
【0061】
プライマー層の上に、剥離層を形成して剥離シートを得た。剥離層の形成は、1,4−ポリブタジエン(JSR製:BR−01、固形分5重量%)100重量部と1重量部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製:IRGANOXHP2251)を加えトルエン溶媒にて固形分濃度0.5重量%に希釈し、乾燥後の膜厚が0.1μmとなるようにプライマー層の上に塗布し100℃30秒間乾燥させ、次いで、フュージョンHバルブ240w/cm1灯付きベルトコンベヤー式紫外線照射装置により、コンベヤー速度40m/分の条件(紫外線照射条件:100mJ/cm)にて、塗工層に紫外線照射をして行った。
【0062】
[粘着剤組成物の塗液の作成]
アクリル酸ブチル83.0重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.0重量部、N−アクリロイルモルフォリン15.0重量部に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル150重量部を反応器に入れ、攪拌しながら80〜90℃に昇温して重合反応を行い、更にトルエン10重量部にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を溶解させた重合触媒液を逐次添加しながら7時間かけて重合させた。反応終了後に希釈溶剤(トルエンと酢酸エチルの混合溶媒)を追加することによりアクリル系共重合体の40%溶液を製造した。
【0063】
このアクリル系共重合体溶液100重量部(固形分として40重量部)にトリレンジイソシアネート系(TDI系)架橋剤(コロネートL55E、日本ポリウレタン社製)を1重量部配合し、粘着性樹脂の溶液を調整した。
【0064】
この粘着性樹脂の溶液の固形分100質量部に対し、導電性炭素粒子としてカーボングラファイト(日本黒鉛社製、商品名CGC−15、平均粒径17.26μm、アスペクト比0.68、CV値20.9%)を10質量部配合して、粘着剤組成物の塗液を作成した。
【0065】
[導電性粘着シートの作成]
上記粘着剤組成物の塗液を剥離シートの剥離剤層面に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布した後、100℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成させた。次いでポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム(三菱ポリエステルフィルム製:PET50(N))の片面に導電層として厚さ35μmの銅箔をドライラミネートにて積層した基材の銅箔面側と上記粘着剤層の粘着剤面とを接して重ね、導電性粘着シートを作製した。
【0066】
得られた導電性粘着シートの粘着力および導通性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
[粘着剤組成物の塗液の作成]
実施例1で作成した粘着性樹脂の溶液の固形分100質量部に対し、導電性炭素粒子としてカーボングラファイト(日本黒鉛社製、商品名CGC−15)を10質量部および導電性炭素微粒子としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名#3050B、平均粒径50nm)を10質量部配合して、粘着剤組成物の塗液を作成した。
【0068】
[導電性粘着シートの作成]
上記粘着剤組成物の塗液を使用し、粘着剤層の乾燥後の厚さを23μmとした以外は、実施例1と同様にして、導電性粘着シートを作製した。
【0069】
得られた導電性粘着シートの粘着力および導通性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3,4、比較例1,2および参考例)
カーボングラファイト、カーボンブラックの配合量および粘着剤層の厚さを表1のように変えた以外は、実施例1と同様にして導電性粘着シートを作製した。結果を表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る導電性粘着シートの一態様の断面図を示す。
【図2】本発明に係る導電性粘着シートの一態様の断面図を示す。
【図3】本発明における導通性評価法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1…基材
1a…導電層
1b…支持シート
2…粘着剤層
3…導電性炭素粒子
4…導電性炭素微粒子
5…剥離シート
10…導電性粘着シート
G…ガラスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有する基材と、該導電層面に形成された粘着剤層とからなり、
該粘着剤層に導電性炭素粒子が配合され、
該粘着剤層の厚さAと、該導電性炭素粒子の平均粒径Bとの比、B/Aが0.50〜0.99の範囲にある導電性粘着シート。
【請求項2】
粘着剤層の厚さAが10〜40μmであり、導電性炭素粒子の平均粒径Bが8〜38μmの範囲にある請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
導電性炭素粒子のアスペクト比が0.50〜0.99である請求項1または2に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素粒子を3〜50質量部含有する請求項1〜3の何れかに記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、平均粒径20〜80nmの導電性炭素微粒子を5〜50質量部含有する請求項1〜4の何れかに記載の導電性粘着シート。
【請求項6】
剥離シートの剥離処理面上に、粘着性樹脂の固形分100質量部に対して、導電性炭素粒子を3〜50質量部含有する粘着剤組成物の塗液を塗工、乾燥して粘着剤層を形成する工程と、
導電層を有する基材の該導電層面上に、該粘着剤層を貼り合わせる工程とを含む導電性粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138317(P2010−138317A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317143(P2008−317143)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】