説明

導電性組成物、並びに透明導電膜、表示素子及び集積型太陽電池

【課題】現像によるパターニング後でも透明性及び導電性が両立可能な導電性組成物、並びに該組成物を用いた耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池の提供。
【解決手段】バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、溶媒とを含有する導電性組成物であって、前記溶媒のSP値が30MPa1/2以下である導電性組成物とする。更に架橋剤を含有する態様、含水率が30質量%以下である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、EL表示素子、集積型太陽電池等を製造するための導電性組成物、並びに該導電性組成物を用いた透明導電膜、表示素子、及び集積型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリオール法により作製した金属ナノワイヤーを用いることで得られた透明導電膜が提案されている(特許文献1参照)。この提案では、銀ナノワイヤー水分散液を作製し、それを塗布した後、感光性化合物、接着促進剤、酸化防止剤、及び光重合開始剤などを含有する導電性組成物を塗布するという2層塗布を行い、その後、露光、未硬化部の除去を行うことによりパターニングすることが記載されている。この提案では、銀ナノワイヤー間の接合をより密にして高導電性を確保するためか、導電性組成物を塗布する前に銀ナノワイヤー分散液のみを塗布している。しかし、この提案により作製したパターニングされた透明導電膜は、銀ナノワイヤーと導電性組成物とを別層で2層塗布しているため、耐溶剤性及び耐アルカリ性が弱く、導電率及び透明性が低下してしまうという問題がある。
【0003】
また、水系溶媒中において、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)との共存下で銀アンモニア錯体を還元することにより、平均長軸長さが数十μmであり、平均短軸長さが15nm〜50nmの銀ナノワイヤーが得られることが報告されている(非特許文献1参照)
【0004】
しかしながら、現像によるパターニング後でも透明性及び導電性が両立可能な導電性組成物、並びに該導電性組成物を用いた耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池については、未だ提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国出願公開第2007/0074316号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Phys. Chem. B 2005, 109, 5497-5503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、現像によるパターニング後でも透明性及び導電性が両立可能な導電性組成物、並びに該導電性組成物を用いた耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、溶媒とを含有する導電性組成物であって、
前記溶媒のSP値が30MPa1/2以下であることを特徴とする導電性組成物である。
<2> 更に架橋剤を含有する前記<1>に記載の導電性組成物である。
<3> 溶媒のSP値が18MPa1/2以上28MPa1/2以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<4> 溶媒のSP値が19MPa1/2以上27MPa1/2以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<5> 含水率が30質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<6> 溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアセテート、及び1−メトキシ−2−プロパノールから選択される少なくとも1種を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<7> 架橋剤が、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂のいずれかである前記<2>から<6>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<8> 金属ナノワイヤーの平均短軸長さが200nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<9> 短軸長さ50nm以下であり、かつ長軸長さ5μm以上である金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<10> 金属ナノワイヤーの短軸長さの変動係数が40%以下である前記<1>から<9>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<11> 金属ナノワイヤーの断面形状が、角が丸まった形状である前記<1>から<10>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<12> 金属ナノワイヤーが銀を含有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の導電性組成物である。
<13> バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、SP値が30MPa1/2以下の溶媒とを含有することを特徴とする導電性組成物である。
<14> 基材上に前記<1>から<13>のいずれかに記載の導電性組成物を塗布し、乾燥して導電層を形成した後、露光し、現像することを特徴とするパターン形成方法である。
<15> 前記<1>から<13>のいずれかに記載の導電性組成物を含有することを特徴とする透明導電膜である。
<16> 前記<15>に記載の透明導電膜を有することを特徴とする表示素子である。
<17> 前記<15>に記載の透明導電膜を有することを特徴とする集積型太陽電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、現像によるパターニング後でも透明性及び導電性が両立可能な導電性組成物、並びに該組成物を用いた耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、金属ナノワイヤーの鋭利度を求める方法を示す説明図である。
【図2A】図2Aは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2B】図2Bは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2C】図2Cは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2D】図2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の導電性組成物について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「光」という語は、可視光線、紫外線、エックス線、電子線等を含む概念として用いる。
本明細書中、アクリル酸とメタクリル酸の両者を示すために「(メタ)アクリル酸」のように表記することがある。また同様にアクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【0012】
(導電性組成物)
本発明の導電性組成物は、バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、溶媒とを少なくとも含有する。本発明の導電性組成物は、架橋剤を含有してもよく、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0013】
<バインダー>
前記バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。
ここで、前記酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0014】
前記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0015】
前記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0016】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0017】
前記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0018】
前記アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
【0019】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記バインダーの重量平均分子量は、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0022】
前記バインダーの含有量は、前記導電性組成物の全固形分に対し5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜85質量%がより好ましく、20質量%〜80質量%が更に好ましい。前記好ましい含有量範囲であると、現像性と金属ナノワイヤーの導電性の両立が図れる。
【0023】
<感光性化合物>
前記感光性化合物とは、露光により画像を形成する機能を導電性組成物に付与するか、又はそのきっかけを与える化合物を意味する。具体的には、(1)露光による酸を発生する化合物(光酸発生剤)、(2)感光性のキノンジアジド化合物、(3)光ラジカル発生剤等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、感度調整のために、増感剤などを併用して用いることもできる。
【0024】
−(1)光酸発生剤−
前記(1)光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0025】
前記(1)光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
【0026】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0027】
−(2)キノンジアジド化合物−
前記(2)キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0028】
前記1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、感度の点ではナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドが特に好ましい。
【0029】
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]−エチリデン]ビスフェノール、などが挙げられる。
【0030】
前記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、などが挙げられる。
【0031】
前記1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤と1,2−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、1/1〜1/0.9の範囲である。好ましい反応温度は0℃〜40℃、好ましい反応時間は1〜24時間である。
【0032】
反応溶媒としては、例えばジオキサン、1,3−ジオキソラン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
前記脱塩酸剤としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
【0033】
前記キノンジアジド化合物としては、例えば、以下の構造を有する化合物などが挙げられる。
【化1】

【化2】

【化3】

ただし、前記式中、Dは、独立して、水素原子又は以下の置換基のいずれかである。
【化4】

【0034】
ただし、前記各々の化合物において少なくとも1つのDが、前記のキノンジアジド基であることが好ましい。
【0035】
前記(1)光酸発生剤、及び前記(2)キノンジアジド化合物の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、前記バインダーの総量100質量部に対して、1質量部〜100質量部であることが好ましく、3質量部〜80質量部がより好ましい。
なお、前記(1)光酸発生剤と、前記(2)キノンジアジド化合物とを併用してもよい。
【0036】
本発明においては、前記(1)光酸発生剤の中でもスルホン酸を発生する化合物が好ましく、下記のようなオキシムスルホネート化合物が高感度である観点から特に好ましい。
【化5】

【0037】
前記(2)キノンジアジド化合物として、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物を用いると高感度で現像性が良好である。
前記(2)キノンジアジド化合物の中で下記の化合物でDが独立して水素原子又は1,2−ナフトキノンジアジド基であるものが高感度である観点から好ましい。
【化6】

【0038】
−(3)光ラジカル発生剤−
本発明の導電性組成物は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光ラジカル発生剤を感光性化合物として用いることができる。前記光ラジカル発生剤は波長300nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
【0039】
前記光ラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記光ラジカル発生剤の含有量は、前記導電性組成物全固形量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記数値範囲において、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0040】
前記光ラジカル発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば特開2008−268884号公報に記載の化合物群が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルホスフィン(オキシド)系化合物、オキシム系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0041】
前記トリアジン系化合物としては、例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)一s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。市販品の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907などが好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、米国特許第4,311,783号、米国特許第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記オキシム系化合物としては、例えばJ.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02等が好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が特に好ましい。
【0048】
本発明の導電性組成物は、露光感度向上のために、光ラジカル発生剤と連鎖移動剤を併用してもよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記連鎖移動剤の含有量は、前記導電性組成物の全固形分に対し、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0049】
<架橋剤>
前記架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、前記導電性組成物を硬化させる化合物であり、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物;メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
【0050】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「重合性化合物」と称することもある)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0051】
前記重合性化合物としては、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0052】
前記エポキシ系化合物又はオキセタン系化合物としては、エポキシ基又はオキセタニル基を含む化合物であり、一般にエポキシ樹脂、オキセタン樹脂と呼ばれる化合物である。
【0053】
前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物、などが挙げられる。
前記ビスフェノールA型としては、例えばエポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170(以上、東都化成株式会社製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103(以上、ナガセ化成株式会社製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上、ダイセル化学株式会社製)、又はこれらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型などが挙げられる。また、Ebecryl 3700、3701、600(以上、ダイセルユーシービー社製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。
【0054】
前記クレゾールノボラック型としては、例えばエポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704(以上、東都化成株式会社製)、デナコールEM−125(以上、ナガセ化成株式会社製)などが挙げられる。
前記ビフェニル型としては、例えば3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなどが挙げられる。
【0055】
前記脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上、ダイセル化学株式会社製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100(以上、東都化成株式会社製)などが挙げられる。
その他としてアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0056】
これらのエポキシ樹脂の中でも、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が好ましく、エポキシ当量が180〜250のものが特に好ましい。このような素材としてはエピクロンN−660、N−670、N−680、N−690、YDCN−704L(以上、DIC社製)、EHPE3150(ダイセル化学株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
前記オキセタン樹脂としては、例えばアロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
【0058】
前記架橋剤の前記導電性組成物における含有量は、前記バインダー総量100質量部に対して、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0059】
<溶媒>
前記溶媒は、バインダー、感光性化合物、架橋剤などの溶解乃至分散を助けるもので、本発明の導電性組成物の流動性を高める働きをし、導電性組成物を所定の乾燥又は熱処理を行った後は、その大半(概ね9割以上)が、蒸発などにより除かれる性質のものである。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗布時に溶剤が必要以上に蒸発して導電性組成物の固形分が析出しないようにするため、80℃以上の沸点の溶剤が好ましい。
【0060】
前記溶媒としては、SP値(沖津法により算出)は、30MPa1/2以下であり、18MPa1/2以上30MPa1/2以下であることが好ましく、18MPa1/2以上28MPa1/2以下であることがより好ましく、19MPa1/2以上27MPa1/2以下であることが更に好ましい。前記SP値が、18MPa1/2未満であると、溶媒との親和性が高くなりすぎてしまうためか、耐溶剤性が悪化してしまうことがあり、30MPa1/2を超えると、金属ナノワイヤーの溶解性が高くなりすぎてしまうためか、耐アルカリ性が悪化してしまうことがある。
前記溶媒としては、前記SP値の範囲のものが使用でき、その種類は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(23.57MPa1/2)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(18.83MPa1/2)、3−エトキシプロピオン酸エチル(18.71MPa1/2)、3−メトキシプロピオン酸メチル(18.99MPa1/2)、乳酸エチル(24.81MPa1/2)、3−メトキシブタノール(22.50MPa1/2)、水(43.26MPa1/2)、1−メトキシ−2−プロパノールが挙げられる。溶媒として水が使用される場合には、SP値が前記SP値の範囲外になってしまうことがあるため、SP値が30MPa1/2以下の溶媒と組合わせて使用して前記SP値の範囲内に調整すれば、溶媒として水が添加されていてもよい。このようにするためには、溶媒中の含水率は30質量%以下であることが好ましい。
SP値の調整のためにイソプロピルアセテート(17.22MPa1/2)、乳酸メチル(26.33MPa1/2)を用いてもよい。上述したように、含水率を調整することで、SP値の調整を行うこともできる。
また、N−メチルピロリドン(NMP)(22.02MPa1/2)、γ−ブチロラクトン(GBL)(27.80MPa1/2)、プロピレンカーボネート(29.18MPa1/2)など沸点が高い溶媒を補助的に使用してもよい。
これらの中でも、溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアセテート、及び1−メトキシ−2−プロパノールから選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、これらの少なくとも1種と水とが組み合わされて使用されてもよい。
また本発明の別の態様としては、バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、SP値が30MPa1/2以下の溶媒とを含有する導電性組成物があり、SP値が30MPa1/2以下の溶媒としては上述したSP値が30MPa1/2以下の溶媒が使用できる。
【0061】
ここで、前記溶媒のSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
複数の混合溶媒を用いた場合のSP値(σ)及びSP値の水素結合項(σh)は次の式により算出した。
【0062】
【数1】

ただし、σnは、各溶媒のSP値又はSP値の水素結合項を、Mnは混合溶媒中における各溶媒のモル分率を、Vnは溶媒のモル体積を、nは溶媒の種類を表す2以上の整数を表す。
【0063】
金属ナノワイヤーの分散時などに水が用いられるが、導電性組成物では前記溶媒のSP値が本発明の範囲内になるように溶媒の組成を調整する必要がある。本発明の導電性組成物の含水率が多い場合には、残留する含水量が増え、現像後の面内抵抗が高くなってしまうため、前記含水率は30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が更に好ましい。
前記導電性組成物の含水率は、例えばカールフィッシャー法により測定することができる。
【0064】
<金属ナノワイヤー>
前記金属ナノワイヤーとしては、特に制限はなく、ITOや酸化亜鉛、酸化スズのような金属酸化物でもよいし、金属性カーボンナノチューブでもよいが、金属元素単体、複数金属元素からなるコアシェル構造、アロイ、鍍金された金属ナノワイヤーなどが好適に挙げられる。
本発明において、前記金属ナノワイヤーとは、アスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)が30以上である金属微粒子を意味する。
【0065】
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)は、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。前記平均短軸長さが小さすぎると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあるため、前記平均短軸長さは5nm以上であることが好ましい。前記平均短軸長さが200nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じるためか、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。なお、金属ナノワイヤーの平均長軸長さが長すぎると金属ナノワイヤー製造時に絡まるためか、製造過程で凝集物が生じてしまうことがあるため、前記平均長軸長さは1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。前記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しいためか、十分な導電性を得ることができないことがある。
ここで、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から求めたものである。
【0066】
本発明においては、短軸長さ(直径)が50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーが、全金属粒子中に金属量で50質量%以上含まれていることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
前記短軸長さ(直径)が50nm以下であり、長さが5μm以上である金属ナノワイヤーの割合(以下、「適切ワイヤー化率」と称することもある)が、50質量%未満であると、伝導に寄与する金属量が減少するためか伝導性が低下してしまうことがあり、同時に密なワイヤーネットワークを形成できないために電圧集中が生じるためか、耐久性が低下してしまうことがある。また、ナノワイヤー以外の形状の粒子が球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度を悪化してしまうことがある。
ここで、前記適切ワイヤー化率は、例えば金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っているAg量と、ろ紙を透過したAg量を各々測定することで、適切ワイヤー化率を求めることができる。ろ紙に残っている金属ナノワイヤーをTEMで観察し、300個の金属ナノワイヤーの直径を観察し、その分布を調べることにより、短軸長さ(直径)が50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーであることを確認する。なお、ろ紙は、TEM像で直径が50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤー以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の5倍以上であり、かつワイヤー長軸の最短長の1/2以下の径のものを用いることが好ましい。
【0067】
前記金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
前記変動係数が40%を超えると、短軸長さ(直径)の細いワイヤーに電圧が集中してしまうためか、耐久性が悪化することがある。
前記金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個のナノワイヤーの短軸長さ(直径)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより、求めることができる。
【0068】
前記金属ナノワイヤーの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
前記金属ナノワイヤーの断面の角とは、断面の各辺を延長し、隣り合う辺から伸ばされた延長線と交わる点の周辺部を意味する。また、「断面の各辺」とはこれらの隣り合う角と角を結んだ直線とする。この場合、前記「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との割合を鋭利度とした。鋭利度は、例えば図1に示したような金属ナノワイヤー断面では、実線で示した断面の外周長さと点線で示した五角形の外周長さとの割合で表すことができる。この鋭利度が75%以下の断面形状を角の丸い断面形状と定義する。前記鋭利度は60%以下が好ましく、50%以下であることが更に好ましい。前記鋭利度が75%を超えると、該角に電子が局在し、プラズモン吸収が増加するためか、黄色みが残るなどして透明性が悪化してしまうことがある。
【0069】
前記金属ナノワイヤーにおける金属としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。これらの中でも、金属又は金属化合物から形成されるものが好ましく、金属から形成されるものがより好ましい。
前記金属としては、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0070】
前記金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金がより好ましく、銀又は銀を含有する合金が特に好ましい。
【0071】
<金属ナノワイヤーの製造方法>
前記金属ナノワイヤーは、特に制限はなく、いかなる方法で作製してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
【0072】
前記溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン等のケトン類、などが挙げられる。
加熱する場合、その加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。必要であれば、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
前記加熱温度が250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になるためか、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。また、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎたためか、金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがある。この傾向は20℃以下で顕著となる。
【0073】
前記加熱の際には還元剤を添加して行うことが好ましい。該還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩等;ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン;プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリン等のヘテロ環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、糖アルコール類(ソルビトール等)などが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
【0074】
前記還元剤種によっては機能として分散剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
前記還元剤の添加のタイミングは、分散剤の添加前でも添加後でもよく、ハロゲン化合物あるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよい。
【0075】
前記金属ナノワイヤー製造の際には分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよいナノワイヤーを得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0076】
前記分散剤を添加する段階は、粒子調製する前に添加し、分散ポリマー存在下で添加してもよいし、粒子調整後に分散状態の制御のために添加しても構わない。分散剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ワイヤーの長さにより変更する必要がある。これは核となる金属粒子量の制御による金属ワイヤーの長さに起因しているためと考えられる。
【0077】
前記分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。
【0078】
前記高分子類としては、例えば保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール(P−3)、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、などが挙げられる。
前記分散剤として使用可能な構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることができる。
【0079】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリハライドや下記の分散剤と併用できる物質が好ましい。ハロゲン化合物の添加タイミングは、分散剤の添加前でも添加後でもよく、還元剤の添加前でも添加後でもよい。
ハロゲン化合物種によっては、分散剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0080】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0081】
前記分散剤とハロゲン化合物あるいはハロゲン化銀微粒子は同一物質で併用してもよい。分散剤とハロゲン化合物を併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0082】
脱塩処理を行う場合は、金属ナノワイヤーを形成した後、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離、吸引ろ過などの手法により行うことができる。
【0083】
前記金属ナノワイヤーは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの20℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0084】
前記金属ナノワイヤーの前記導電性組成物における含有量は、前記バインダー20質量部に対して1質量部〜200質量部であることが好ましく、2質量部〜100質量部であることがより好ましく、3質量部〜60質量部であることが更に好ましい。
前記含有量が、1質量部未満であると、バインダーが金属ナノワイヤー同士の接触を阻害してしまうためか、導電性が悪化してしまうことがあり、200質量部を超えると、バインダーが少なすぎるため、現像性が変化してしまい、解像度が悪化してしまったり、導電性が悪化してしまうことがある。
【0085】
本発明の導電性組成物には、バインダー、感光性化合物、金属ナノワイヤー、及び溶媒の他に、好ましくは架橋剤、更に必要に応じて、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤、などを含有することができる。
【0086】
前記金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
前記アゾール類としては、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾテトラゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸などが挙げられる。
前記チオール類としては、アルカンチオール類、フッ化アルカンチオール類が挙げられ、例えばドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、フルオロデカンチオール及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。前記金属腐食防止剤は導電性組成物を溶媒に溶解した中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する導電性組成物によるパターン状透明導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
【0087】
(パターン形成方法)
本発明のパターン形成方法は、基材上に本発明の前記導電性組成物を塗布し、乾燥して導電層を形成した後、露光し、現像するものである。
前記露光としては、用途などに応じて異なり適宜選択することができ、詳細については、後述する透明導電膜のパターニングにおいて説明する。
【0088】
前記露光後に現像する場合の現像液としては、アルカリ溶液が好ましい。前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。
更に具体的には、現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類;炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類などの水溶液を挙げることができる。
【0089】
前記現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。前記界面活性剤としては、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系から選択して使用することができる。これらの中でも、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度が高くなるので特に好ましい。
【0090】
前記現像方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0091】
(透明導電膜)
本発明の透明導電膜は、パターニングの際の解像度が比較的高く、パターン状導電膜を形成するのに最適である。ここで、導電膜とは、例えば、層状に配置される素子間を導通するために設ける膜(層間導電膜)等を意味する。
【0092】
前記透明導電膜は以下のようにして形成される。
本発明の導電性組成物を、スピンコート、ロールコート、スリットコート等など公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。このとき、先に金属ナノワイヤーを塗布しておき、その上に導電性組成物を塗布し、乾燥後に本発明の導電性組成物としてもよいが、樹脂塗布液中に金属ナノワイヤーを分散させておき、一回塗布にて形成することが好ましい。
【0093】
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板;ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などを挙げることができる。これらの基板には所望により、シランカップリング剤などの薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
【0094】
次に、ホットプレート又はオーブンで、通常、60℃〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した組成物付着基板に、所望のパターン形状のマスクを介して紫外線を照射する。照射条件は、i線で5mJ/cm〜1,000mJ/cmが好ましい。
一般的な現像方法(シャワー現像、スプレー現像、パドル現像、ディップ現像等)を用いて現像してから、純水で十分すすいだ後、再度紫外線を組成物付着基板全面に100〜1000mJ/cmの強度で照射し、最後に180℃〜250℃で10分間〜120分間焼成すると、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0095】
このようにして得られたパターン状透明導電膜は、パターン状導電膜として用いることもできる。導電膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。更に、該パターン状導電膜上に、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該導電膜は、耐溶剤性、耐熱性が高いため、配向処理を行う膜を形成しても導電膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0096】
(表示素子)
本発明の表示素子としての液晶表示素子は、前記のようにして基板上にパターニングされた透明導電膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。このとき、カラーフィルター上に形成される透明導電膜も、本発明の前記導電性組成物にて形成されることが好ましい。
また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
このようにして、本発明の導電性組成物で形成された、優れた透明性を有する導電膜を液晶表示素子に用いることができる。
なお、本発明の液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0097】
(本発明の透明導電膜を含む集積型太陽電池)
本発明の集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0098】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0099】
〔透明導電層の製造方法〕
本発明の太陽電池に用いられる前記透明導電層は、前記全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。前記透明導電層は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接していることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電層の位置関係が分かる範囲の記載としている。
(A)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層
(B)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(C)基板−電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(D)裏面電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
【0100】
前記透明導電層の形成方法は、前記水性分散物を、基板上へ塗設し、乾燥する。
前記水性分散物を塗設後に加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
前記分散物の塗設方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばウェブコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法などが挙げられる。特に、ウェブコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法に関しては、フレキシブルな基板へのロールトゥロール製造が可能である。
【0101】
前記基板には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア等のガラス
(2)ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、PET、PEN、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂
(3)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
【0102】
前記基板の表面は親水化処理を施してもよい。また、前記基板表面に親水性ポリマーを塗設したものが好ましい。これらにより水性分散物の基板への塗布性及び密着性が良化する。
【0103】
前記親水化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば薬品処理、機械的粗面化処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。これらの親水化処理により表面の表面張力を30dyne/cm以上にすることが好ましい。
【0104】
前記基板表面に塗設する親水性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。
前記親水性ポリマー層の層厚(乾燥時)は、0.001μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmがより好ましい。
前記親水性ポリマー層は、硬膜剤を添加して膜強度を高めることが好ましい。前記硬膜剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン化合物;ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;米国特許第3,103,437号明細書等に記載のイソシアネート化合物、などが挙げられる。
前記親水性ポリマー層は、前記化合物を水等の溶媒に溶解乃至分散させて塗布液を調製し、得られた塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコート等の塗布法を利用して親水化処理した基板表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。前記乾燥温度は120℃以下が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜80℃が更に好ましい。
更に、基板と前記親水性ポリマー層の間に、密着性の改善を目的として必要により下引き層を形成してもよい。
【0105】
−CIGS系の太陽電池−
以下に、CIGS系の太陽電池について詳細に説明する。
−−光電変換層の構成−−
Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe(CIS系薄膜)、あるいは、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。図2A乃至図2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
図2Aに示すように、まず、基板100上にプラス側の下部電極となるMo(モリブデン)電極層200が形成される。次に、図2Bに示すように、Mo電極層200上に、組成制御により、p型を示す、CIGS系薄膜からなる光吸収層300が形成される。次に、図2Cに示すように、その光吸収層300上に、CdSなどのバッファ層400を形成し、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングされてn型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層500を形成する。次に、図2Dに示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層500からMo電極層200までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(即ち、各セルが個別化)される。本実施態様で好適に成膜することのできる物質を以下に示す。
【0106】
(1)常温で液相又は加熱により液相となる元素、化合物又は合金を含む物質
【0107】
(2)カルコゲン化合物(S、Se、Teを含む化合物)
・II−VI化合物:ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTeなど
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)など
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
【0108】
(3)カルコパイライト型構造の化合物及び欠陥スタナイト型構造の化合物
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)など
・I−III−VI族化合物:CuIn3Se5、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
【0109】
ただし、上の記載において、(In,Ga)、(S,Se)は、それぞれ、(In1−xGa)、(S1−ySe)(ただし、x=0〜1、y=0〜1)を示す。
【0110】
以下に、代表的なCIGS層の形成方法を示すが、これに限定されるものではない。
1)多源同時蒸着法
多源同時蒸着法の代表的な方法としては、米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)が開発した3段階法とECグループの同時蒸着法がある。3段階法は、例えば、J.R.Tuttle,J.S.Ward,A.Duda,T.A.Berens,M.A.Contreras,K.R.Ramanathan,A.L.Tennant,J.Keane,E.D.Cole,K.Emery and R.Noufi:Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.に記載されている。また、同時蒸着法は、例えば、L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.に記載されている。
【0111】
3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、Seを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu、Seを同時蒸着後、In、Ga、Seを更に同時蒸着する方法で、禁制帯幅が傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS膜が得られる。ECグループの方法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着するBoeing社の開発したバイレーヤー法をインラインプロセスに適用できるように改良したものである。バイレーヤー法は、W.E.Devaney,W.S.Chen,J.M.Stewart,and R.A.Mickelsen:IEEE Trans.Electron.Devices 37(1990)428.に記載されている。
【0112】
3段階法及びECグループの同時蒸着法は共に、膜成長過程でCu過剰なCIGS膜組成とし、相分離した液相Cu2−xSe(x=0〜1)による液相焼結を利用するため、
大粒径化が起こり、結晶性に優れたCIGS膜が形成されるという利点がある。
更に、近年CIGS膜の結晶性を向上させるため、この方法に加えた種々の方法に関する検討が行われており、これらを用いてもよい。
【0113】
(a)イオン化したGaを使用する方法
蒸発したGaをフィラメントによって発生した熱電子イオンが存在するグリッドを通過させ、Gaと熱電子が衝突することでGaをイオン化する方法である。イオン化したGaは引き出し電圧により加速され基板に供給される。詳細は、H.Miyazaki,T.Miyake,Y.Chiba,A.Yamada,M.Konagai,phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.に記載されている。
【0114】
(b)クラッキングしたSeを使用する方法
蒸発したSeは通常クラスターとなっているが、更に高温ヒーターにより熱的にSeクラスターを分解することでSeクラスターを低分子化する方法である(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年秋、北海道工業大学)7P−L−6)。
【0115】
(c)ラジカル化したSeを用いる方法
バルブトラッキング装置により発生したSeラジカルを用いる方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−10)。
【0116】
(d)光励起プロセスを利用した方法
3段階蒸着中にKrFエキシマレーザー(例えば波長248nm、100Hz)、又はYAGレーザー(例えば、波長266nm、10Hz)を基板表面に照射する方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−14)。
【0117】
2)セレン化法
セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層や(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、電着法などで製膜し、これをセレン蒸気又はセレン化水素中で450℃〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGa)Se等のセレン化合物を作製する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶが、このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。現在、唯一、大面積量産化に成功しているのは、金属プリカーサ膜を大面積化に適したスパッタ法で製膜し、これをセレン化水素中でセレン化する方法である。
【0118】
しかし、この方法ではセレン化の際に膜が約2倍に体積膨張するため、内部歪みが生じ、また、生成膜内に数μm程度のボイドが発生し、これらが膜の基板に対する密着性や太陽電池特性に悪影響を及ぼし、光電変換効率の制限要因になっているという問題がある(B.M.Basol,V.K.Kapur,C.R.Leidholm,R.Roe,A.Halani,and G.Norsworthy:NREL/SNL Photovoltaics Prog.Rev.Proc.14th Conf.-A Joint Meeting(1996)AIP Conf.Proc.394.)。
【0119】
このようなセレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada,R.Ohnishi,and A.kunioka:"CuInSe2-Based Solar Cells by Se-Vapor Selenization from Se-Containing Precursors" Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.)や、金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層・・・Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜の使用が提案されている(T.Nakada,K.Yuda,and A.Kunioka:"Thin Films of CuInSe2 Produced by Thermal Annealing of Multilayers with Ultra-Thin stacked Elemental Layers" Proc.of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890.)。これらにより、上述の堆積膨張の問題はある程度回避されている。
【0120】
しかし、このような手法を含めて、すべてのセレン化法に当てはまる問題点がある。それは、最初にある決まった組成の金属積層膜を用い、これをセレン化するため、膜組成制御の自由度が極めて低いという点である。例えば現在、高効率CIGS系太陽電池では、Ga濃度が膜厚方向で傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜を使用するが、このような薄膜をセレン化法で作製するには、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya,I.Sugiyama,M.Tachiyuki,T.Kase,Y.Nagoya,O.Okumura,M.Sato,O.Yamase and H.Takeshita:Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf.Miyazaki,1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.)。
【0121】
3)スパッタ法
スパッタ法は大面積化に適するため、これまでCuInSe薄膜形成法として多くの手法が試みられてきた。例えば、CuInSe多結晶をターゲットとした方法や、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSeとAr混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,R.B.Love,A.K.Khanna,S.C.Lewis and F.Cohen:"CdS/CuInSe2 Junctions Fabricated by DC Magnetron Sputtering of Cu2Se and In2Se3" Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1985)1655-1658.)が開示されている。また、Cuターゲット,Inターゲット,Se又はCuSeターゲットをArガス中でスパッタする3源スパッタ法などが報告されている(T.Nakada,K.Migita,A.Kunioka:"Polycrystalline CuInSe2 Thin Films for Solar Cells by Three-Source Magnetron Sputtering" Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.ならびに、T.Nakada,M.Nishioka,and A.Kunioka:"CuInSe2 Films for Solar Cells by Multi-Source Sputtering of Cu,In,and Se-Cu Binary Alloy" Proc.4th Photovoltaic Science and Engineering Conf.(1989)371-375.)。
【0122】
4)ハイブリッドスパッタ法
前述したスパッタ法の問題点が、Se負イオン又は高エネルギーSe粒子による膜表面損傷であるとするなら、Seのみを熱蒸発に変えることで、これを回避できるはずである。中田らは、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法で、欠陥の少ないCIS薄膜を形成し、変換効率10%を超すCIS太陽電池を作製した(T.Nakada,K.Migita,S.Niki,and A.Kunioka:"Microstructural Characterization for Sputter-Deposited CuInSe2 Films and Photovoltaic Devices" Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.)。また、Rockettらは、これに先立ち、有毒のH2Seガスの代わりにSe蒸気を用いることを目的としたハイブリッドスパッタ法を報告している(A.Rockett,T.C.Lommasson,L.C.Yang,H.Talieh,P.Campos and J.A.Thornton:Proc.20th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1988)1505.)。更に古くは膜中のSe不足を補うためSe蒸気中でスパッタする方法も報告されている(S.Isomura,H.Kaneko,S.Tomioka,I.Nakatani,and K.Masumoto:Jpn.J.Appl.Phys.19(Suppl.19-3)(1980)23.)。
【0123】
5)メカノケミカルプロセス法
CIGSの各組成の原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得る。その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施しCIGSの膜を得る方法である(T.Wada,Y.Matsuo,S.Nomura,Y.Nakamura,A.Miyamura,Y.Chia,A.Yamada,M.Konagai,Phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p2593)。
【0124】
6)その他の方法
その他のCIGS製膜法としては、例えばスクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、スプレー法などが挙げられる。スクリーン印刷法、スプレー法等で、成分となるIb族元素、IIIb族元素、VIb族元素とそれらの化合物からなる微粒子から構成される薄膜を基板上に形成し、熱処理、VIb族元素雰囲気での熱処理などにより所望の組成の結晶を得る。例えば酸化物微粒子を塗布にて薄膜を形成した後、セレン化水素雰囲気中で加熱する。PVSEC−17 PL5−3あるいは、金属−VIb族元素結合を含む有機金属化合物の薄膜を基板上にスプレー・印刷などで形成し、熱分解することによって、所望の無機薄膜を得る。例えば、Sの場合には、金属メルカプチド、金属のチオ酸塩、金属のジチオ酸塩、金属のチオカルボナート塩、金属のジチオカルボナート塩、金属のトリチオカルボナート塩、金属のチオカルバミン酸塩もしくは金属のジチオカルバミン酸塩(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報)などが挙げられる。
【0125】
−バンドギャップの値と分布制御−
太陽電池の光吸収層としては、I族元素−III族元素−VI族元素の各種組合せからなる半導体が好ましく利用できる。よく知られているものを図3に示す。この図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができる。バンドギャップよりエネルギーの大きな光子が半導体に入射した場合、バンドギャップを超える分のエネルギーは熱損失となる。太陽光のスペクトルとバンドギャップの組合せで変換効率が最大になるのがおよそ1.4eV〜1.5eVであることが理論計算で分かっている。CIGS太陽電池の変換効率を上げるため、例えばCu(InGa1−x)SのGa濃度を上げたり、Cu(InAl)SのAlを上げたり、CuInGa(S,Se)のS濃度を上げたりしてバンドギャップを大きくすることで、変換効率の高いバンドギャップを得る。Cu(InGa1−x)Sの場合1eV〜1.68eVの範囲で調整できる。
【0126】
また、組成比を膜厚方向に変えることでバンド構造に傾斜を付けることができる。光の入射窓側から反対側の電極方向にバンドギャップを大きくするシングルグレーデットバンドギャップ、あるいは、光の入射窓からPN接合部に向かってバンドギャップが小さくなりPN接合部を過ぎるとバンドギャップが大きくなるダブルグレーデッドバンドギャップの2種類が考えられる。このような太陽電池は、例えば、T.Dullweber,A new approach to high−efficiency solar cells by band gap grading in Cu(In,Ga)Se chalcopyrite semiconductors,Solar Energy Materials & Solar Cells,Vol.67,p.145−150(2001)などに開示されている。いずれもバンド構造の傾斜によって内部に発生する電界のため、光に誘起されたキャリアが加速され電極に到達しやすくなり、再結合中心との結合確率を下げるため、発電効率を向上する(国際公開第2004/090995号パンフレット参照)。
【0127】
−タンデム型−
スペクトルの範囲別にバンドギャップの異なる半導体を複数使うと、光子エネルギーとバンドギャップの乖離による熱損失を小さくし、発電効率を向上することができる。このようなこのような複数の光電変換層を重ねて用いるものをタンデム型という。2層タンデムの場合には、例えば1.1eVと1.7eVの組合せを用いることにより発電効率を向上させることができる。
【0128】
−−光電変換層以外の構成−−
I−III−VI族化合物半導体と接合を形成するn形半導体には、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII−VI族の化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい(特開2002−343987号公報参照)。
【0129】
〔基板〕
前記基板としては、例えば、ソーダライムガラス等のガラス板;ポリイミド系、ポリエチレンナフタレート系、ポリエーテルサルフォン系、ポリエチレンテレフタレート系、アラミド系等のフィルム;ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等の金属板;特開2005−317728号公報記載の集成マイカ基板などを用いることができる。これらの中でも、前記素子用基板としては、フィルム状、又は箔状が好ましい。
【0130】
〔裏面電極〕
前記裏面電極としては、例えばモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくく好ましい。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、モリブデン層を用いることが好ましい。また、裏面電極において、光吸収層CIGSと裏面電極との境界面には再結合中心が存在する。したがって、裏面電極と光吸収層との接続面積は電気伝導に必要となる以上の面積があると、発電効率が低下する。接触面積を少なくするために、例えば、電極層を絶縁材料と金属がストライプ状に並んだ構造を用いるとよい(特開平9−219530号公報参照)。
層構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
【0131】
〔バッファ層〕
前記バッファ層としては、例えばCdS、ZnS、ZnS(O,OH)、ZnMgOなどを使うことができる。例えば、CIGSのGa濃度を上げて光吸収層のバンドギャップを広くすると、伝導帯がZnOの伝導帯より大きくなり過ぎるため、バッファ層には伝導帯のエネルギーが大きいZnMgOが好ましい。
【0132】
〔透明導電層〕
前記バッファ層を形成後、本発明の太陽電池で用いられる透明導電層は、前記金属ナノワイヤー含有水性分散物を用いて塗設されることが好ましいが、バッファ層形成後にZnO層を形成した後前記金属ナノワイヤー含有水性分散物を塗設してもよい。
前記透明導電層の製造方法は、前記水性分散物を、基板上へ塗設し、乾燥することにより得られる。前記水性分散物を塗設後に加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
【0133】
前記透明導電層は、あらゆる太陽電池の透明電極に使用することができる。また、集電用電極としては透明電極を用いない結晶系(単結晶、多結晶など)シリコン太陽電池に対しても適用できる。結晶系シリコン太陽電池は、集電電極としては、一般的に銀蒸着電線、又は銀ペーストによる電線が用いられるが、本発明で用いられる透明導電層を適用することでこれらに対しても高い光電変換効率が得られる。
また、本発明の太陽電池に用いられる透明導電層は、赤外波長の透過率が高く、かつシート抵抗が小さいため、赤外波長に対する吸収の大きな太陽電池、例えばタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池などに好適に用いられる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ、金属ナノワイヤー直径の変動係数、適切ワイヤー化率、及び金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度は、以下のようにして測定した。
【0135】
<金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ求めた。
【0136】
<金属ナノワイヤー直径(短軸長さ)の変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、金属ナノワイヤーの直径(短軸長さ)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0137】
<適切ワイヤー化率>
各銀ナノワイヤー水分散液をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いてろ紙に残っているAg量と、ろ紙を透過したAg量を各々測定し、直径(短軸長さ)が50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤー(適切なワイヤー)の全金属粒子中の金属量(質量%)を求めた。
なお、適切ワイヤー化率を求める際の適切なワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0138】
<金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度>
金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)で観察し、300個の断面について、断面の外周長さと断面の各辺の合計長さを計測し、「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との比率である鋭利度を求めた。この鋭利度が75%以下の場合には角の丸い断面形状であるとした。
【0139】
<溶媒のSP値>
溶媒のSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出した。具体的には、SP値は以下の式で計算した。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
なお、複数の混合溶媒を用いた場合のSP値(σ)及びSP値の水素結合項(σh)は次の式により算出した。
【数2】

ただし、σnは、各溶媒のSP値又はSP値の水素結合項を、Mnは混合溶媒中における各溶媒のモル分率を、Vnは溶媒のモル体積を、nは溶媒の種類を表す2以上の整数を表す。
【0140】
<導電性組成物の含水率>
導電性組成物の含水率は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製、MKC−610)で3回測定し、それを平均した値(質量%)である。
【0141】
[合成例の略記号]
以下の合成例で用いている成分の略記号の意味は、次のとおりである。
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
St:スチレン
GMA:グリシジルメタクリレート
DCM:ジシクロペンタニルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MFG:1−メトキシ−2−プロパノール
THF:テトラヒドロフラン
【0142】
(合成例1)
<バインダー(A−1)の合成>
共重合体を構成するモノマー成分として、MAA(7.79g)、BzMA(37.21g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.5g)を使用し、これらを溶剤PGMEA(55.00g)中において重合反応させることによりバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.21であった。
【化7】

【0143】
(合成例2)
<バインダー(A−2)の合成>
反応容器中に、MFG(日本乳化剤株式会社製)7.48gをあらかじめ加え、90℃に昇温し、モノマー成分としてMAA(14.65g)、MMA(0.54g)、CHMA(17.55g)、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.50g)、及びMFG(55.2g)からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後、4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次に、得られたアクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.15g、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.34gを加えた後、GMA 12.26gを2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45質量%になるようにPGMEAを添加することにより調製し、バインダー(A−2)の溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は31,300、分子量分布(Mw/Mn)は2.32であった。
【化8】

【0144】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー水分散液(1)の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
【0145】
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
【0146】
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0147】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、前記添加液H 82.5mL、及び前記添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、前記添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温75℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱した。
得られた水分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続して、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー水分散液をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤー水分散液(1)を得た。
得られた調製例1の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、適切ワイヤー化率、ワイヤー直径の変動係数、及び断面角の鋭利度を表1に示す。
【0148】
(調製例2)
−銀ナノワイヤー水分散液(2)の調製−
調製例1において、一段目の混合液の初期温度20℃を40℃に変えた以外は、調製例1と同様にして、調製例2の銀ナノワイヤー水分散液(2)を作製した。
得られた調製例2の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、適切ワイヤー化率、直径(短軸長さ)の変動係数、及び断面角の鋭利度を表1に示す。
【0149】
(調製例3)
−銀ナノワイヤー水分散液(3)の調製−
調製例1において、三段目の添加を二段目の添加後40分間に変えた以外は、調製例1と同様にして、調製例3の銀ナノワイヤー水分散液(3)を作製した。
得られた調製例3の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、適切ワイヤー化率、直径(短軸長さ)の変動係数、及び断面角の鋭利度を表1に示す。
【0150】
(調製例4)
−銀ナノワイヤー水分散液(4)の調製−
エチレングリコール30mlを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのポリビニルピロリドン(PVP、K−55)、3μMのアセチルアセトナート鉄、60μMの塩化ナトリウムエチレングリコール溶液18mlと、24mMの硝酸銀エチレングリコール溶液18mlを毎分1mlの速度で添加した。160℃で60分間加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、銀ナノワイヤー水分散液を得た。
得られた調製例4の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、適切ワイヤー化率、直径(短軸長さ)の変動係数、及び断面角の鋭利度を表1に示す。
得られた水分散物を、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤーの水分散液をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤーの水分散液(4)を得た。
【0151】
調製例1〜4の銀ナノワイヤーの水分散液の平均短軸長さ、平均長軸長さ、適切ワイヤー化率、直径(短軸長さ)の変動係数、及び断面角の鋭利度の測定結果を表1に示す。
【表1】

【0152】
<ポジ処方>
(実施例1)
−導電性組成物(1)の調製−
調製例1で調製した銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100質量部を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、PGMEAを添加し、再分散を行い再び遠心分離を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にPGMEAを加え、銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(1)を得た。最後のPGMEAの添加量は銀の含有量が、銀10質量%となるように調節した。
【0153】
次に、銀ナノワイヤーPGMEA分散液(1)7.5質量部に、前記バインダー(A−1)4.19質量部(固形分40.0質量%、PGMEA溶液)、感光性化合物としての下記構造式で表されるTAS−200(エステル化率66%、東洋合成株式会社製)0.95質量部、架橋剤としてのEHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.80質量部、及び溶媒としてのPGMEA 19.06質量部を加え、攪拌し、銀濃度1.0質量%で、溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(1)を調製した。
得られた導電性組成物(1)の含水率は0.2質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【化9】

【0154】
(実施例2)
−導電性組成物(2)の調製−
実施例1において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を、銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(2)を調製した。得られた導電性組成物(2)の含水率は0.2質量%であった。
【0155】
(実施例3)
−導電性組成物(3)の調製−
実施例1と同様にして調製した銀ナノワイヤーPGMEA分散液(1)15質量部に、バインダー(A−2)3.72質量部(固形分45.0質量%、MFG/PGMEA溶液)、感光性化合物としての前記構造式で表されるTAS−200(エステル化率66%、東洋合成株式会社製)0.95質量部、架橋剤としてのEHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.80質量部、及び溶媒としてのPGMEA 19.53質量部を加え攪拌し、銀濃度1.0質量%で溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(3)を調製した。得られた導電性組成物(3)の含水率は0.4質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【0156】
(実施例4)
−導電性組成物(4)の調製−
実施例3において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例2で調製した銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、実施例3と同様にして、導電性組成物(4)を調製した。得られた導電性組成物(4)の含水率は0.3質量%であった。
【0157】
(実施例5)
−導電性組成物(5)の調製−
実施例1において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例3で調製した銀ナノワイヤー水分散液(3)に代えた以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(5)を調製した。得られた導電性組成物(5)の含水率は0.2質量%であった。
【0158】
(実施例6)
−導電性組成物(6)の調製−
実施例1において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例4で調整した銀ナノワイヤー水分散液(4)に代えた以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(6)を調製した。得られた導電性組成物(6)の含水率は1.1質量%であった。
【0159】
(実施例7)
−導電性組成物(7)の調製−
実施例1において、導電性組成物調製時に含水率を15質量%に調節し、溶媒のSP値を22.0MPa1/2に調整した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(7)を調製した。
【0160】
(実施例8)
−導電性組成物(8)の調製−
実施例1において、導電性組成物調製時に含水率を25質量%に調節し、溶媒のSP値を24.0MPa1/2に調整した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(8)を調製した。
【0161】
(実施例9)
−導電性組成物(9)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を17.5MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(9)を調製した。得られた導電性組成物(9)の含水率は0.3質量%であった。
【0162】
(実施例10)
−導電性組成物(10)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を18.2MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(10)を調製した。得られた導電性組成物(10)の含水率は0.3質量%であった。
【0163】
(実施例11)
−導電性組成物(11)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を28.0MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(11)を調製した。得られた導電性組成物(11)の含水率は0.4質量%であった。
【0164】
(実施例12)
−導電性組成物(12)の調製−
実施例1において、導電性組成物調製時に含水率を35質量%に調節し、溶媒のSP値を27.5MPa1/2に調整した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(12)を調製した。
【0165】
(実施例13)
−導電性組成物(13)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を19.0MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(13)を調製した。得られた導電性組成物(13)の含水率は0.3質量%であった。
【0166】
(実施例14)
−導電性組成物(14)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を27.0MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(14)を調製した。得られた導電性組成物(14)の含水率は0.2質量%であった。
【0167】
(実施例15)
−導電性組成物(15)の調製−
実施例1において、溶媒のSP値を26.0MPa1/2に調節した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(15)を調製した。得られた導電性組成物(15)の含水率は0.4質量%であった。
【0168】
(比較例1)
−導電性組成物(16)の調製−
実施例1において、導電性組成物調製時に含水率を28質量%に調節し、溶媒のSP値を30.3MPa1/2に調整した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(16)を調製した。
【0169】
<ネガ処方>
(実施例16)
−導電性組成物(17)の調製−
調製例1で調製した銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100質量部を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、PGMEAを添加し、再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にPGMEAを加え、銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(1)を得た。最後のPGMEAの添加量は銀の含有量が、銀10質量%となるように調節した。
【0170】
次に、銀ナノワイヤーPGMEA分散液(1)7.5質量部に、バインダー(A−1)3.80質量部(固形分40.0質量%、PGMEA溶液)、感光性化合物としてのKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)1.59質量部、感光性化合物としてのIRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.159質量部、架橋剤としてのEHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.150質量部、塗布面状改良のためメガファックF781F(DIC株式会社製)0.002質量部、及び溶媒としてのPGMEA 19.3質量部を加え、攪拌し、銀濃度1.0質量%で、溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(17)を調製した。得られた導電性組成物(17)の含水率は0.2質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【0171】
(実施例17)
−導電性組成物(18)の調製−
実施例16において、調製例1の銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例2の銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(18)を調製した。得られた導電性組成物(18)の含水率は0.3質量%であった。
【0172】
(実施例18)
−導電性組成物(19)の調製−
調製例1で調製した銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部へ、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100質量部を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、PGMEAを添加し、再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にPGMEAを加え、銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(1)を得た。最後のPGMEAの添加量は銀の含有量が、銀10質量%となるように調節した。
【0173】
次に、銀ナノワイヤーPGMEA分散液(1)7.5質量部に、前記バインダー(A−2)3.38質量部(固形分45.0質量%、MFG/PGMEA溶液)、感光性化合物としてのKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)1.59質量部、感光性化合物としてのIRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.159質量部、架橋剤としてのEHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.150質量部、塗布面状改良のためメガファックF781F(DIC株式会社製)0.002質量部、及び溶媒としてPGMEA 19.7質量部を加え、攪拌し、銀濃度1.0質量%で、溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(19)を調製した。得られた導電性組成物(19)の含水率は0.2質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【0174】
(実施例19)
−導電性組成物(20)の調製−
実施例18において、調製例1の銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例2で調製した銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、実施例18と同様にして、導電性組成物(20)を調製した。得られた導電性組成物(20)の含水率は0.3質量%であった。
【0175】
(実施例20)
−導電性組成物(21)の調製−
実施例16において、調製例1の銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例3で調製した銀ナノワイヤー水分散液(3)に代えた以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(21)を調製した。得られた導電性組成物(21)の含水率は0.3質量%であった。
【0176】
(実施例21)
−導電性組成物(22)の調製−
実施例16において、調製例1の銀ナノワイヤー水分散液(1)を、調製例4で調製した銀ナノワイヤー水分散液(4)に代えた以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(22)を調製した。得られた導電性組成物(22)の含水率は1.0質量%であった。
【0177】
(実施例22)
−導電性組成物(23)の調製−
実施例16において、導電性組成物調製時に含水率を15質量%に調節し、溶媒のSP値を22.0MPa1/2に調整した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(23)を調製した。
【0178】
(実施例23)
−導電性組成物(24)の調製−
実施例16において、導電性組成物調製時に含水率を25質量%に調節し、溶媒のSP値を24.0MPa1/2に調整した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(24)を調製した。
【0179】
(実施例24)
−導電性組成物(25)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を17.5MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(25)を調製した。得られた導電性組成物(25)の含水率は0.2質量%であった。
【0180】
(実施例25)
−導電性組成物(26)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を18.2MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(26)を調製した。得られた導電性組成物(26)の含水率は0.3質量%であった。
【0181】
(実施例26)
−導電性組成物(27)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を28.0MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(27)を調製した。得られた導電性組成物(27)の含水率は0.5質量%であった。
【0182】
(実施例27)
−導電性組成物(28)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を19.0MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(28)を調製した。得られた導電性組成物(28)の含水率は0.3質量%であった。
【0183】
(実施例28)
−導電性組成物(29)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を27.0MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(29)を調製した。得られた導電性組成物(29)の含水率は0.3質量%であった。
【0184】
(実施例29)
−導電性組成物(30)の調製−
実施例16において、溶媒のSP値を26.0MPa1/2に調節した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(30)を調製した。得られた導電性組成物(30)の含水率は0.2質量%であった。
【0185】
(実施例30)
−導電性組成物(31)の調製−
調製例1で調製した銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、エタノール50質量部と1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)50質量部を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、MFGを添加し再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にMFGを加え、銀ナノワイヤーのMFG分散液(A)を得た。最後のMFGの添加量は銀の含有量が、銀10質量%となるように調節した。
【0186】
次に、銀ナノワイヤーMFG分散液(A)7.5質量部に、バインダー(A−1)3.80質量部(固形分40.0質量%、PGMEA溶液)、感光性化合物としてのKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)1.59質量部、感光性化合物としてのIRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.159質量部、架橋剤としてのEHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.150質量部、塗布面状改良のためメガファックF781F(DIC株式会社製)0.002質量部、及び溶媒としてのMFG 19.3質量部を加え、攪拌し、銀濃度1.0質量%で、溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(31)を調製した。得られた導電性組成物(31)の含水率は0.2質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【0187】
(実施例31)
−導電性組成物(32)の調製−
実施例30において、架橋剤としてのEHPE−3150を除いた以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(32)を調製した。得られた導電性組成物の含水率は0.3質量%であった。
【0188】
(実施例32)
−導電性組成物(33)の調製−
実施例30において、銀ナノワイヤー水分散液(1)を、銀ナノワイヤー水分散液(2)に代えた以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(33)を調製した。得られた導電性組成物(33)の含水率は0.3質量%であった。
【0189】
(実施例33)
−導電性組成物(34)の調製−
実施例30と同様にして調製した銀ナノワイヤーMFG分散液(A)15質量部に、バインダー(A−2)3.72質量部(固形分45.0質量%、MFG/PGMEA溶液)、感光性化合物としての前記構造式で表されるTAS−200(エステル化率66%、東洋合成株式会社製)0.95質量部、及び溶媒としてのMFG 19.53質量部を加え攪拌し、銀濃度1.0質量%で溶媒のSP値が20.0MPa1/2となるように導電性組成物(34)を調製した。得られた導電性組成物(34)の含水率は0.3質量%であった。なお、溶媒のSP値の調整には乳酸エチルとイソプロピルアセテートを用いた。
【0190】
(実施例34)
−導電性組成物(35)の調製−
実施例30において、導電性組成物調製時に含水率を15質量%に調節し、溶媒のSP値を22.0MPa1/2に調整した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(35)を調製した。
【0191】
(実施例35)
−導電性組成物(36)の調製−
実施例30において、導電性組成物調製時に含水率を25質量%に調節し、溶媒のSP値を24.0MPa1/2に調整した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(36)を調製した。
【0192】
(実施例36)
−導電性組成物(37)の調製−
実施例30において、溶媒のSP値を18.2MPa1/2に調節した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(37)を調製した。得られた導電性組成物(37)の含水率は0.3質量%であった。
【0193】
(実施例37)
−導電性組成物(38)の調製−
実施例30において、溶媒のSP値を28.0MPa1/2に調節した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(38)を調製した。得られた導電性組成物(38)の含水率は0.5質量%であった。
【0194】
(実施例38)
−導電性組成物(39)の調製−
実施例16において、導電性組成物調製時に含水率を35質量%に調節し、溶媒のSP値を27.5MPa1/2に調整した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(39)を調製した。
【0195】
(実施例39)
−導電性組成物(40)の調製−
実施例30において、溶媒のSP値を19.0MPa1/2に調節した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(40)を調製した。得られた導電性組成物(40)の含水率は0.4質量%であった。
【0196】
(実施例40)
−導電性組成物(41)の調製−
実施例30において、溶媒のSP値を27.0MPa1/2に調節した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(41)を調製した。得られた導電性組成物(41)の含水率は0.2質量%であった。
【0197】
(実施例41)
−導電性組成物(42)の調製−
実施例30において、溶媒のSP値を26.0MPa1/2に調節した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(42)を調製した。得られた導電性組成物(42)の含水率は0.2質量%であった。
【0198】
(比較例2)
−導電性組成物(43)の調製−
実施例16において、導電性組成物調製時に含水率を28質量%に調節し、溶媒のSP値を30.3MPa1/2に調整した以外は、実施例16と同様にして、導電性組成物(43)を調製した。
【0199】
(実施例42)
−導電性組成物(44)の調製−
実施例30において、導電性組成物調製時に含水率を35質量%に調節し、溶媒のSP値を27.5MPa1/2に調整した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(44)を調製した。
【0200】
(比較例3)
−導電性組成物(45)の調製−
実施例30において、導電性組成物調製時に含水率を28質量%に調節し、溶媒のSP値を30.3MPa1/2に調整した以外は、実施例30と同様にして、導電性組成物(45)を調製した。
【0201】
(比較例4)
−銀ナノワイヤー水分散液(比1)の調製−
調製例1で調製した銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、水100質量部を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、水を添加し、再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後に水を加え、銀ナノワイヤー水分散液(比1)を得た。最後の水の添加量は銀の含有量が、銀10質量%となるように調節した。
【0202】
−導電性組成物(46)の調製−
バインダー(A−1)2.0質量部、感光性化合物としての2−エチルヘキシルアクリレート7.5質量部、リン酸トリメチロールトリアクリレート2.0質量部、感光性化合物としてのCiba Irgacure 754(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.4質量部、接着促進剤としてのGE Silquest A1100(GE東芝シリコーン株式会社製)0.1質量部、酸化防止剤としてのCiba Irganox 101 Off(チバガイギー社製)0.01質量部、及びメチルエチルケトン2.5質量部を加え、銀ナノワイヤーを含まない導電性組成物(46)を調製した。
【0203】
次に、実施例1〜42及び比較例1〜4の導電性組成物について、含有成分及び作製方法の内容をまとめて表2に示す。
【0204】
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0205】
次に、実施例1〜42及び比較例1〜4の導電性組成物について、以下のようにしてパターン状透明導電膜を作製し、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表3に示す。
【0206】
<実施例1〜42及び比較例1〜3のパターン状透明導電膜の作製>
ガラス基板上に、実施例1〜42及び比較例1〜3の各導電性組成物をスリット塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥し、プリベークした。この組成物付着基板にマスク上から、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)露光を行った。露光後の組成物付着基板を、純水5,000gに炭酸水素ナトリウム5gと炭酸ナトリウム2.5gを溶解した現像液でシャワー現像30秒間を行った。シャワー圧は0.04MPa、ストライプパターンが出現するまでの時間は15秒であった。純水のシャワーでリンスした後、200℃で10分間ポストベークし、実施例1〜42及び比較例1〜3のパターン状透明導電膜を作製した。
【0207】
<比較例4のパターン状透明導電膜の作製>
実施例1において、ガラス基板上に、比較例4に記載の銀ナノワイヤー水分散液を塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥し、プリベークした後、比較例4に記載の導電性組成物を塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥し、プリベークした以外は、実施例1と同様にして、パターン状透明導電膜を作製した。
【0208】
<導電性(表面抵抗)>
得られたポストベーク後の各パターン状透明導電膜の表面抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定した。
【0209】
<解像度>
得られたポストベーク後の各パターン状透明導電膜の組成物付着基板を、光学顕微鏡で400倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。溶解性が悪く、ホールパターンが解像しない場合、NG(No Good)と判定した。
【0210】
<透明性(全光透過率)>
得られた各パターン状透明導電膜の全光透過率(%)と、透明導電膜塗布前の全光透過率を、ガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定し、その比から透明導電膜の透過率を換算した。
【0211】
<耐溶剤性>
得られた各パターン状透明導電膜の組成物付着基板を100℃のN−メチル−2−ピロリドン中に3、5、7、及び10分間浸漬し、ガラスが露出しているマスクサイズを確認し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
3分間で耐溶剤性が悪く、ホールパターンに乱れが生じた場合を「1」、5分間で乱れが生じた場合を「2」、7分間で乱れが生じた場合を「3」、10分間で乱れが生じた場合を「4」、10分間でも乱れが生じなかった場合を「5」と判定した。
【0212】
<耐アルカリ性>
得られた各パターン状透明導電膜の基板を、60℃の5質量%水酸化カリウム水溶液中に5、10、15、20分間浸漬し、ガラスが露出しているマスクサイズを確認し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
耐アルカリ性が悪く、5分間でホールパターンに乱れが生じた場合を「1」、10分間で乱れが生じた場合を「2」、15分間で乱れが生じた場合を「3」、20分間で乱れが生じた場合を「4」、20分間でも乱れが生じなかった場合を「5」と判定した。
【0213】
【表3−1】

【表3−2】

【0214】
(実施例43及び比較例5)
−表示素子の作製−
ガラス基板上にボトムゲート型のTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSiからなる絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm)を絶縁膜上に形成した。
更に、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層を形成し、コンタクトホールを形成し、平坦膜Aを得た。
次に、平坦膜A上に、実施例1の導電性組成物(1)をスリット塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)照射した後、アルカリ現像液(TMAH水溶液 0.4%)にて現像して露光部分を除去し、220℃/1hrの加熱処理を行い、透明導電性膜を作製した。TFT動作の確認を行ったところ、良好な作動を確認できた(実施例43)。
比較例5として、平坦膜A上にITOのパターン状導電膜を形成した。TFT動作は同様に確認できたが、実施例1の導電性組成物(1)を用いた場合に対し、透過率が劣り、斜め方向の干渉ムラが確認され、表示素子として実用上問題ありと判断した。
【0215】
(実施例44)
−表示素子の作製−
実施例43と同様にして平坦膜Aを作製し、実施例16の導電性組成物(17)をスリット塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)し、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)照射した後、水酸化カリウム系現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製)の1.0%現像液(CDK−1を1質量部、純水を99質量部の希釈した液、25℃)にて現像して未露光部分を除去し、220℃/1hrの加熱処理を行い、透明導電膜を作製した。TFT動作の確認を行ったところ、良好な作動を確認できた。
【0216】
(比較例6及び実施例45)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上にMOCVDにて膜厚700nmのフッ素添加酸化錫(透明導電膜)を形成した。その上部にプラズマCVD法により膜厚約15nmのp型、膜厚約350nmのi型、膜厚約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、裏面反射電極としてガリウム添加酸化亜鉛層20nm、銀層200nmを形成し、光電変換素子101(比較例6)を作製した。
透明電極としてフッ素添加酸化錫の代わりにガラス基板上に、実施例1の導電性組成物(1)をAg換算で0.1g/mになるように塗布し、その後150℃で10分間加熱した以外は、光電変換素子101と同様にして、光電変換素子102(実施例45)を作製した。
【0217】
(比較例7及び実施例46)
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ソーダライムガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により膜厚500nm程度のモリブデン電極、真空蒸着法により膜厚約2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、溶液析出法により膜厚約50nmの硫化カドミニウム薄膜、MOCVDにより膜厚約50nmの酸化亜鉛薄膜を形成し、その上に直流マグネトロンスパッタ法により膜厚約100nmのホウ素添加酸化亜鉛薄膜(透明導電層)を形成し、光電変換素子201(比較例7)を作製した。
透明電極としてホウ素添加酸化亜鉛の代わりに、実施例1の導電性組成物(1)を用いた以外は、光電変換素子201と同様に光電変換素子202を作製した。硫化カドミウム薄膜形成後、実施例1の導電性組成物(1)をAg換算で0.1g/mになるように硫化カドミウム薄膜上に塗布した。塗布後に150℃で10分間加熱することにより光電変換素子202(実施例46)を作製した。
【0218】
次に、作製した各太陽電池において、以下のようにして変換効率を評価した。結果を表4に示す。
【0219】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
各太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。
【0220】
【表4】

表4の結果から、本発明の導電性組成物を透明導電層に用いることで、いずれの集積型太陽電池方式においても高い変換効率が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明の導電性組成物は、現像によるパターニング後でも透明性及び導電性が両立可能であるので、例えばパターン状透明導電膜、表示素子、集積型太陽電池の作製に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0222】
200 Mo電極層
300 光吸収層
400 バッファ層
500 透光性電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、溶媒とを含有する導電性組成物であって、
前記溶媒のSP値が30MPa1/2以下であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
更に架橋剤を含有する請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
溶媒のSP値が18MPa1/2以上28MPa1/2以下である請求項1から2のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項4】
溶媒のSP値が19MPa1/2以上27MPa1/2以下である請求項1から3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
含水率が30質量%以下である請求項1から4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアセテート、及び1−メトキシ−2−プロパノールから選択される少なくとも1種を含有する請求項1から5のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項7】
架橋剤が、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂のいずれかである請求項2から6のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項8】
金属ナノワイヤーの平均短軸長さが200nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である請求項1から7のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項9】
短軸長さ50nm以下であり、かつ長軸長さ5μm以上である金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む請求項1から8のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項10】
金属ナノワイヤーの短軸長さの変動係数が40%以下である請求項1から9のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項11】
金属ナノワイヤーの断面形状が、角が丸まった形状である請求項1から10のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項12】
金属ナノワイヤーが銀を含有する請求項1から11のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項13】
バインダーと、感光性化合物と、金属ナノワイヤーと、SP値が30MPa1/2以下の溶媒とを含有することを特徴とする導電性組成物。
【請求項14】
基材上に請求項1から13のいずれかに記載の導電性組成物を塗布し、乾燥して導電層を形成した後、露光し、現像することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかに記載の導電性組成物を含有することを特徴とする透明導電膜。
【請求項16】
請求項15に記載の透明導電膜を有することを特徴とする表示素子。
【請求項17】
請求項15に記載の透明導電膜を有することを特徴とする集積型太陽電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−18636(P2011−18636A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124756(P2010−124756)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】