説明

導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置

【課題】導電性部材の導電性及び耐衝撃性を高くすることができると共に、前記導電性部材と感光体ドラムとの間の微少間隙の環境変動を小さくすることができる、耐久性の優れた、導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体6と、該導電性支持体6上に形成された電気抵抗調整層4と、該電気抵抗調整層4と像担持体61とが一定の微少間隙Gを保持するように該像担持体61と当接して該電気抵抗調整層4の両端部に形成された該電気抵抗調整層4の材質とは異なる材質で構成された間隙保持部材3と、を有する導電性部材101におて、前記電気抵抗調整層4が、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電ローラが、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材として、一般的に用いられている。図6は、従来の電子写真方式の画像形成装置の概略説明図である。
【0003】
図6において、400は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置400は、静電潜像が形成される像担持体311、像担持体311に接触して帯電処理を行う帯電ローラ312、レーザ光等の露光手段313、像担持体311の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ314、像担持体311上のトナー像を記録紙317に転写処理する転写ローラ316、及び、転写処理後の像担持体311をクリーニングするためのクリーニング装置318、から構成されている。なお、図6では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0004】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置400の帯電における基本的な作像動作について説明する。
【0005】
像担持体311に接触された帯電ローラ312に対してDC電圧をパワーパック(図示せず)から給電すると、像担持体311の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が露光手段313から像担持体311の表面に照射されると、像担持体311の表面における画像光の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ312による像担持体311の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ312と像担持体311との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0006】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、画像光が像担持体311の表面に照射されると、像担持体311の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された像担持体311の部分が現像ローラ314を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された像担持体311の部分に、記録紙317が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ316によって記録紙に転写された後、該記録紙317は、像担持体311から分離される。分離された記録紙317は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、像担持体311は、その表面がクリーニング装置318によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0007】
帯電ローラを用いた帯電方式としては、像担持体にローラを接触させる接触帯電方式が一般に用いられているが、このような接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0008】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを像担持体に近接させるようにした近接帯電方式による技術(特許文献1〜3を参照。)が提案されている。この近接帯電方式による技術は、帯電ローラを像担持体に最近接距離(50〜300μm)になるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うようにした帯電方式によるものである。この近接帯電方式による技術では、帯電ローラと像担持体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による技術において問題となっていた、(a)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、(b)像担持体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はなくなった。また、この近接帯電方式による技術では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、像担持体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少なく、そのために、帯電ローラの帯電性能が低下することがない。
【0009】
近接帯電方式による技術において使用される帯電ローラの要求特性は、これまでの接触帯電方式による技術において使用されていた帯電ローラの要求特性とは異なる。接触帯電方式による技術では、芯金の周囲に加硫ゴム等の弾性体を被覆した帯電ローラが一般的に用いられてきたが、このような帯電ローラを用いて像担持体を均一に帯電させるには、帯電ローラを像担持体に対して均一に接触させる必要がある。
【0010】
近接帯電方式による技術おいて、加硫ゴム等の弾性体で形成された帯電ローラを使用した場合には、
(1)像担持体と帯電ローラとの間に微少間隙を形成させるので、帯電ローラ両端の非画像領域にスペーサ等の微少間隙保持部材を介在し近接させる必要があるが、弾性体で形成された帯電ローラでは、弾性体の変形により微少間隙を均一にすることが困難であるので、帯電電位変動やそれに起因する画像ムラが発生してしまうこと、及び、
(2)弾性体を構成する加硫ゴム材料は、経時で、へたりや変形が生じやすいので、経時で、微少間隙も変動すること、
といった問題があった。
【0011】
このような問題を解消するために、非弾性体である熱可塑性樹脂を用いることが考えられる。これにより、像担持体と帯電ローラとの間の微少間隙を均一にすることが可能となる。帯電ローラによる像担持体ドラム表面の帯電メカニズムは、帯電ローラと像担持体ドラムとの間の微小放電におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られているが、像担持体ドラムを所定の帯電電位に保持する機能を得るためには、熱可塑性樹脂の電気抵抗値を半導電性領域(106 〜109 Ωcm程度)に制御することが必要となる。
【0012】
電気抵抗値を制御する方法としては、熱可塑性樹脂中にカーボンブラック等の導電性顔料を分散させる方法がある。しかし、導電性顔料を用いて電気抵抗調整層を半導電性領域に設定しようとすると、電気抵抗値のバラツキが大きくなるので、部分的に帯電不良が起こり、そのために、画像欠陥を発生させる、という問題があった。
【0013】
一方、電気抵抗調整層における電気抵抗値を制御するための別の手段として、電気抵抗調整層にイオン導電性材料、即ち、Li塩等の電解質塩を含有させたものがある。このようなイオン導電性材料は、マトリックス樹脂中に分子レベルで分散するので、導電性顔料が分散する上記のものに比べて抵抗値のばらつきが小さく、そのために、部分的な帯電不良は画像品質的に問題とならない。ところが、Li塩等の電解質塩は、低分子量であるので、マトリックス樹脂の表面にブリードアウトしやすい性質があり、そのために、電解質塩が帯電ローラ表面へブリードアウトしたときにトナーの固着を発生させてしまい、画像不良を発生させる、という問題があった。
【0014】
前記電解質塩のブリードアウトを避けるためには、高分子量のイオン導電性材料を使用することが考えられるが、この場合には、高分子量のイオン導電性材料がマトリックス樹脂中に分散固定化されるので、高分子量のイオン導電性材料のブリードアウトが起こり難い。
【0015】
前記高分子型のイオン導電材料としては、ポリアミド系エラストマー等が使用されているが、高分子型のイオン導電材料のみでは、電気抵抗調整層における電気抵抗値が高いので、電気抵抗調整層を半導電性領域に制御することができず、そのために、高分子型のイオン導電材料と電解質塩とを組み合わせた樹脂組成物で電気抵抗調整層に導電性を付与している。前記導電性材料としては、ポリエーテルエステルアミドと過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩とを組み合わせた樹脂組成物や、ポリエーテルエステルアミドと有機ホスホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の含フッ素有機アニオン塩との組み合わせた樹脂組成物、が用いられている。
【0016】
しかしながら、近接帯電方式による画像形成装置における帯電ローラでは、帯電ローラと感光体ドラムとの間に微少間隙を保持する必要があるので、帯電ローラの形状が高精度であることが必要であるが、高分子型のイオン導電材料と電解質塩とを組み合わせた樹脂組成物で電気抵抗調整層を形成すると、電気抵抗調整層が軟らかくなって、電気抵抗調整層を高精度に加工することができない、という問題があった。
【0017】
そこで、このような問題を解決するために、ポイカーボネート樹脂30〜70重量%と高分子型イオン導電材料70〜30とを含む樹脂組成物で電気抵抗調整層を形成した帯電部材(帯電ローラ)(特許文献4を参照。)が提案されたが、近接帯電方式による画像形成装置における帯電ローラに必要な導電性を得るためには、電気抵抗調整層における高分子型イオン導電材料の配合比率を高くしなければならない。高分子型イオン導電性材料は、吸湿性が高いので、吸湿による体積膨張率(膨潤性)が高くなる。それ故、電気抵抗調整層中における高分子型イオン導電性材料の配合比率が高くなると、帯電ローラと感光体ドラムとの間の微少間隙の環境変動が大きくなり、そのために、帯電部材(帯電ローラ)の帯電性能が環境によって大きく影響される。具体的には、高温高湿環境においては、帯電ローラが膨張するので、帯電ローラと感光体ドラムと間の微少間隙が減少し、極端な場合には、帯電ローラと感光体ドラムとが接触してしまう。この場合には、経時において、感光体ドラム上における放電生成物等が帯電ローラ側に付着することとなるので、その部分における導電性が低下し、そのために、画像不良が発生するという問題があった。また、低温低湿環境では、帯電ローラと感光体ドラムと間の微少間隙が大きくなるので、帯電ローラから感光体ドラムへの放電が不均一となり、そのために、画像不良が発生するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0019】
即ち、本発明は、導電性部材の導電性及び耐衝撃性を高くすることができると共に、前記導電性部材と感光体ドラムと間の微少間隙の環境変動を小さくすることができる、耐久性の優れた、導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体とが一定の微少間隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された該電気抵抗調整層の材質とは異なる材質で構成された微少間隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層が、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されていることを特徴とする導電性部材である。
【0021】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)に対する前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の配合率:(A)/(B)が、60/40〜40/60重量%とされていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記樹脂組成物における前記電解質塩が、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、及び、有機ホスホニウム塩類から選ばれる少なくとも1種の電解質塩であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合率が、0.01〜20重量%とされていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項5に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記樹脂組成物に、さらに、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)が含有されていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項6に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の合計に対する、前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)の配合率:(D)/(A)+(B)が、1〜15重量%とされていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項7に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された発明において、前記樹脂組成物が、溶融混練されてなる樹脂組成物とされていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された発明において、前記導電部材が、像担持体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項9に記載された発明は、請求項8に記載の導電性部材が、像担持体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0029】
請求項10に記載された発明は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載された発明によれば、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体とが一定の微少間隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された該電気抵抗調整層の材質とは異なる材質で構成された微少間隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層が、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されているので、前記導電性部材の導電性及び耐衝撃性を高くすることができると共に、前記導電性部材と感光体ドラムと間の微少間隙の環境変動を小さくすることができる、耐久性の優れた、導電性部材を提供することができる。
【0031】
請求項2に記載された発明によれば、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)に対する前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の配合率:(A)/(B)が、60/40〜40/60重量%とされているので、前記導電性部材の導電性及び耐衝撃性をいっそう高くすることができると共に、前記導電性部材と感光体ドラムと間の微少間隙の環境変動をいっそう小さくすることができる。
【0032】
請求項3に記載された発明によれば、前記樹脂組成物における前記電解質塩が、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、及び、有機ホスホニウム塩類から選ばれる少なくとも1種の電解質塩であるので、前記電気抵抗調整層の吸湿性を低減させつつ導電性を向上させることができる。
【0033】
請求項4に記載された発明によれば、前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合率が、0.01〜20重量%とされているので、前記電気抵抗調整層の吸湿性をいっそう低減しつつ導電性を高くすることができる。
【0034】
請求項5に記載された発明によれば、前記樹脂組成物に、さらに、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)が含有されているので、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性を向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性を向上させることができる。
【0035】
請求項6に記載された発明によれば、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の合計に対する、前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)の配合率:(D)/(A)+(B)が、1〜15重量%とされているので、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性をいっそう向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性をいっそう向上させることができる。
【0036】
請求項7に記載された発明によれば、前記樹脂組成物が溶融混練されてなる樹脂組成物とされているので、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性をいっそう向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性をいっそう向上させることができる。
【0037】
請求項8に記載された発明によれば、前記導電部材が像担持体上に近接配置されるように設けられた帯電部材とされるので、像担持体の表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0038】
請求項9に記載された発明によれば、請求項8に記載の導電性部材が像担持体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとされるので、長期に渡って安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0039】
請求項10に記載された発明によれば、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有している画像形成装置とされるので、長期間にわたって優れた画像品質を得ることができる近接帯電方式の画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を有するプロセスカートリッジの概略説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示すプロセスカートリッジを有する画像形成装置(リコー製 imagio MP C6000)の概略説明図である。
【図5】従来の電子写真方式の画像形成装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0042】
本発明者らは、脂肪族ポリケトン樹脂とポリアミド系樹脂とのポリマーアロイの耐衝撃性が吸湿により顕著に向上することに着目して、導電性部材(帯電ローラ)における電気抵抗調整層を構成する樹脂組成物について検討する過程において、前記樹脂組成物を脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)で構成したところ、前記導電性部材の導電性及び耐衝撃性を損なわずに、吸湿による体積膨張率を低くして、前記導電性部材と感光体ドラムとの間の微少間隙の環境変動を小さくすることができ、そのために、耐久性の優れた導電性部材を提供することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0043】
即ち、図1に示されているように、本発明の導電性部材(帯電ローラ)101は、導電性支持体6と、該導電性支持体6上に形成された電気抵抗調整層4と、該電気抵抗調整層4と像担持体61とが一定の微少間隙Gを保持するように該像担持体61と当接して該電気抵抗調整層4の両端部に形成された該電気抵抗調整層4の材質とは異なる材質で構成された微少間隙保持部材3と、を有している。そして、前記電気抵抗調整層4は、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されている。図1において、5は、表面層であり、7は、軸受けであり、そして、8は、加圧バネ(加圧部材)である。
【0044】
このように、導電性支持体6と、該導電性支持体6上に形成された電気抵抗調整層4と、該電気抵抗調整層4と像担持体61とが一定の微少間隙Gを保持するように該像担持体61と当接して該電気抵抗調整層4の両端部に形成された該電気抵抗調整層4の材質とは異なる材質で構成された間隙保持部材3と、を有する導電性部材101におて、前記電気抵抗調整層4が、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されていると、前記導電性部材101の導電性及び耐衝撃性を高くすることができると共に、前記導電性部材101と感光体ドラム(像担持体)61との間の微少間隙の環境変動を小さくすることができる、耐久性の優れた、導電性部材を提供することができる。
【0045】
本発明においては、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)に対する前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の配合率:(A)/(B)は、好ましくは、60/40〜40/60重量%とされる。このように、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)に対する前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の配合率:(A)/(B)が、60/40〜40/60重量%とされていると、前記導電性部材101の導電性及び耐衝撃性をいっそう高くすることができると共に、前記導電性部材101と像担持体61と間の微少間隙Gの環境変動をいっそう小さくすることができる。
【0046】
本発明においては、前記樹脂組成物における前記電解質塩は、好ましくは、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、及び、有機ホスホニウム塩類から選ばれる少なくとも1種の電解質塩である。このように、前記樹脂組成物における前記電解質塩が、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、及び、有機ホスホニウム塩類から選ばれる少なくとも1種の電解質塩であると、前記電気抵抗調整層の吸湿性を低減させつつ導電性を向上させることができる。
【0047】
一般的にカーボンブラックのような電子導電系の導電剤を用いた場合は、電荷がカーボンブラックを通して像担持体へ放電するので、カーボンブラックの分散状態に起因した微小な放電ムラが生じやすくなり、そのために、高画質化した画像を得ることが困難となる。特に、高電圧印加時において、この現象が顕著となる。イオン導電材料としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩のような低分子量の塩があるが、これらの低分子量の塩は通電するので、分極してブリードアウトしやすくなる。そこで、高分子型イオン導電材料として、エーテル基を含む熱可塑性樹脂が用いられる。前記高分子型イオン導電材料を構成する高分子中にエーテル基を有するものとすると、エーテル結合に含まれる酸素原子等により塩が安定化され、低い電気抵抗値を得ることが可能となる。前記エーテル基を含有する高分子は、マトリクスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化されるので、導電性顔料を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のバラツキが生じない。また、前記高分子型イオン導電材料は高分子材料であるので、ブリードアウトが生じ難い。前記エーテル基を含有する高分子としてはポリエーテルエステルアミド、ポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマーが挙げられる。前記エーテル基を含有する高分子で構成される熱可塑性樹脂は、一般的に、エーテル基の比率でグレード親水性及び疎水性グレードに大別されるので、それらのグレードによって、特性が大きく異なる。そのため、目的の特性を得るために、複数のグレードをブレンドすることも可能である。
【0048】
しかしながら、前記エーテル基を含む高分子で構成される熱可塑性樹脂材料だけでは、帯電部材101として使用するための導電性を得ることができないが、前記エーテル基を含む高分子で構成される熱可塑性樹脂材料と電解質塩とを併用すると、導電性の向上を達成することができる。前記電解質塩としては、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、有機ホスホニウム塩類が挙げられる。前記過塩素酸塩としては、一般的に用いられているものであれば、使用することは可能であるが、導電性を考慮すると、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれた塩であることが好ましい。それらの中でも、前記過塩素酸リチウム及び前記過塩素酸ナトリウムは、それら塩の解離度が高く、また、解離イオンの量も多くなるので、導電性が向上し、そのために、特に、好ましいものである。前記含フッ素有機アニオン塩類としては、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が好ましい。前記陰イオンを備えた塩は、フルオロ基(−F)及びスルホニル基(−SO2−)による強い電子吸引効果によって、電荷が非局在化するので、陰イオンが安定なポリマー組成物中で高い解離度を示し、そのために、高いイオン導電性を実現できる。
【0049】
中でも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩及びフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩は、電気抵抗値の低下を容易に達成可能となるので好ましい。具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CF3SO2)2N)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム(K(CF3SO2)2N)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(Na(CF3SO2)2N)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(Li(CF3SO2)3C)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム(K(CF3SO2)3C)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウム(Na(CF3SO2)3C)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(Li(CF3SO3))、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(K(CF3SO3))、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(Na(CF3SO3))が挙げられる。特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムのリチウム塩は、カチオンであるリチウムイオンのイオン半径が小さいので、イオン移動度が非常に高く、最も導電性が向上し、特に好ましい。有機ホスホニウム塩類としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0050】
前記電解質塩は、高分子型イオン導電材料に添加して混練することにより、所定の割合に配合することができ、また、複数の電解質塩をブレンドして添加することもできる。前記過塩素酸塩を含有するポリエーテルエステルアミドとしては、例えば、「IRGASTAT P18」(チバスペシャルティケミカルズ社製)が入手可能であり、また、含フッ素有機アニオン塩を含有する高分子型イオン導電材料としては、例えば、「サンコノール」(三光化学工業社製)が入手可能である。
【0051】
本発明においては、前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合率は、好ましくは、0.01〜20重量%とされる。前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合量が、0.01重量%未満では、導電性が不足してしまい、また、20重量%を超えると、樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となる。したがって、前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合率が0.01〜20重量%とされていると、前記電気抵抗調整層の吸湿性をいっそう低減しつつ導電性を高くすることができる。
【0052】
前記電気抵抗調整層4の体積固有抵抗は、好ましくは、106〜109Ωcmである。前記電気抵抗調整層の体積固有抵抗が、109 Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、106 Ωcm未満であると、感光体全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。前記電解質塩(C)の配合量については、前記電気抵抗調整層4の導電性を損なわない範囲であれば、前記電解質塩(C)の配合率の範囲内において、目的の機械加工性に応じて設定することが可能である。
【0053】
前記脂肪族ポリケトン樹脂は、次の式
【化1】

で示されるエチレン−プロピレン−一酸化炭素共重合体であって、一酸化炭素から誘導される単位とオレフィンから誘導される単位とが交互に配列されている交互共重合体ユニットを含むものである。共重合比率としては、y/x=0.05〜0.10が特に好ましく、この範囲では、機械特性、衝撃強度が一層良好となる。ポリケトン樹脂の分子量に特に制限は無いが、標準細管粘度測定で測定したポリマーの極限粘度(LVN)で、m−クレゾール中、60℃で1.0〜2.0程度のものが、成形性と耐衝撃性が良好で好ましい。
【0054】
前記脂肪族ポリケトン樹脂の製造方法としては、既知の重合法が採用でき、例えば、一酸化炭素とオレフィンとを、パラジウム化合物、18℃の水溶液中で測定されるpKaが6以下のハロゲン化水素酸でない酸及びリンの二座配位子化合物からなる触媒化合物の存在下で接触させる製造方法が挙げられる。また、「カリロン」(シェルズケミカルズ社製)として入手することが可能である。
【0055】
本発明においては、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物は、好ましくは、さらに、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)が含有される。このように、前記樹脂組成物に、さらに、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)が含有されていると、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性を向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性を向上させることができる。
【0056】
前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)における主鎖のポリカーボネート樹脂は、有極性基、ジオキシ基の鎖をもつ分子構造を有しているので、分子間引力が非常に強い。また、その側鎖に含まれるアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体は、アクリロニトリル成分及びスチレン成分と反応基であるグリシジルメタクリレート成分からなる。前記反応基のグリシジルメタクリレートは、成分を溶融混練する際の加熱により、エポキシ基が(B)の樹脂のエステル基やアミド基と反応して、強固に化学的結合をする。前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)は、本来親和性の低い(A)の樹脂と(B)の樹脂と間の相溶化剤として機能し、(A)の樹脂及び(B)の樹脂の分散状態を均一かつ緻密化するので、さらに、高い耐衝撃性を得ることが可能となる。
【0057】
前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の合計に対する、前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)の配合率:(D)/(A)+(B)が、1〜15重量%とされている。このように、前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の合計に対する、前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)の配合率:(D)/(A)+(B)が、1〜15重量%とされていると、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性をいっそう向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性をいっそう向上させることができる。
【0058】
本発明においては、前記樹脂組成物は溶融混練されてなる樹脂組成物とされている。このように、前記樹脂組成物が溶融混練されてなる樹脂組成物とされていると、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の相溶性をいっそう向上させ、そのために、導電性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができ、しかも、加工安定性をいっそう向上させることができる。
【0059】
前記樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はないが、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。前記電気抵抗調整層4としての導電性支持体上への形成は、押出成形、射出成形等の成形手段で導電性支持体6に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行なうことができる。
【0060】
前記導電性支持体6上に前記電気抵抗調整層4のみを形成して導電性部材101を構成すると、前記電気抵抗調整層にトナー、トナー添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、前記電気抵抗調整層4に表面層5を形成することで、防止することができる。表面層5の電気抵抗値は、前記電気抵抗調整層4のそれよりも大きくなるように形成され、それによって、感光体欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層5の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、前記表面層5と前記電気抵抗調整層4との電気抵抗値の差を103 Ωcm以下にすることが好ましい。前記表面層5を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。
【0061】
また、前記表面層5の前記電気抵抗調整層4上への形成は、前記表面層5の構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。膜厚については、10〜30μm程度が好ましい。前記表面層5を構成する材料は、1液性、2液性どちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることができる。2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、前記電気抵抗調整層4は、熱可塑性樹脂で構成されているので、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤、及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることことが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好である。
【0062】
導電性部材101は、電気特性(電気抵抗値)が重要であるので、表面層5を導電性にする必要がある。前記表面層5を導電性にするために、前記表面層5を構成する樹脂材料中に導電剤が分散される。導電付与剤としては、特に、制約を受けるものではないが、例えば、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーが挙げられる。また、導電性付与材として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
【0063】
図1に示されているように、前記導電性部材101は、像担持体61上に近接配置されるように設けられた帯電部材とされる。このように、前記導電性部材101が像担持体61上に近接配置されるように設けられた帯電部材と、像担持体61の表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0064】
図2に示されているように、帯電装置100は、像担持体61に対向し、微少間隙(図1におけるGを参照。)を設けて配設される導電性部材(帯電部材)101と、この帯電部材を清掃するクリーニング部材102と、帯電部材101に電圧を印加する不図示の電源と、帯電部材101を像担持体に61に加圧して接触させる加圧スプリング(図示せず。)とを少なくとも備えている。
【0065】
図1に示されているように、前記導電性部材(帯電部材)101は、像担持体61に微少間隙Gを持たせて対向して配設されている。帯電部材101と像担持体61の微少間隙Gは、間隙保持部材103を帯電部材101の非画像形成領域に当接させて形成する。前記像担持体61における感光層領域に間隙保持部材3を当接させることにより、その感光層の塗布厚がばらついても、微少間隙Gのばらつきを防止することができる。帯電部材101は、導電性支持体上6に形成された、電気抵抗調整層4の両端に、間隙保持部材3を配置する。更に、前記電気抵抗調整層4上には、トナー、及び、トナー添加剤が付着しにくいように、表面に表面層5が形成されている。帯電部材1の形状は、特に、限定されるものではなく、例えば、ベルト状、ブレード(板)状、又は、半円柱状の形状に固定されて配設されていてもよい。
【0066】
また、前記帯電部材101は、その形状が円柱状をしていて、両端をギア又は軸受で回転可能に支持されていてもよい。このように、帯電部材1が、像担持体61への最近接部から、像担持体61の移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。像担持体61に対向する帯電部材1に先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるので、優先的に放電が開始され、そのために、像担持体61の均一な帯電が困難になる。したがって、帯電部材1が円柱状の形状をしていて曲面を有していると均一な像担持体61の帯電が可能になる。また、帯電部材1の放電している表面は、強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材1の全面を放電する面として使用できるのであれば、帯電部材1を回転させることで、帯電部材1の早期の劣化を防止して、帯電部材1の長期にわたって使用することができる。
【0067】
帯電部材1と像担持体61との間の微少間隙Gは、間隙保持部材3により、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、5〜70μm程度の範囲にする。これにより、帯電装置100の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。微少間隙Gが、100μm以上では、像担持体61に到達するまでの距離も長くなるので、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなる。また、像担持体61までの放電空間が大きくなるので、像担持体61を所定の帯電をさせるためには放電による放電生成物が多量に必要となり、そのために、放電生成物が画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。また、前記微少間隙Gが小さいと、像担持体61までの到達距離も短くなるので、放電エネルギーが小さくても、像担持体61を帯電させることができる。しかし、帯電部材1と像担持体61とにより形成される空間が狭くなり、空気の流が悪くなってしまうので、放電空間で形成された放電生成物がこの空間内に滞留し、そのために、微少間隙Gが大きい場合と同様に、放電生成物が画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。したがって、放電エネルギーを小さくして放電生成物の生成を少なくし、かつ、空気が滞留しない程度の空間を形成することが好ましい。このような観点から、前記微少間隙Gは、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、5〜70μmである。このように、前記微少間隙Gを100μm以下にすると、ストリーマ放電の発生を防止し、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして、斑点状の画像斑・像流れを防止することができる。
【0068】
像担持体61上に現像後に残留するトナーは、像担持体61に対向して設けられるクリーニング装置64によりクリーニングされるが、完全に除去するのは困難であり、極わずかのトナーがクリーニング装置を通過し、帯電装置100へと搬送されてくる。このときに、トナーの粒径が微少間隙Gより大きいと、トナーは回転する像担持体61や帯電部材101により摺擦されて熱を帯び、帯電部材101に融着することがある。このトナーが融着した部分は、像担持体61に近くなるために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。したがって、微少間隙Gは、画像形成装置300に用いられるトナーの最大粒径よりも大きいことが好ましい。
【0069】
また、帯電部材1は、図1、2に示すように、帯電装置100の図示しないハウジングの側板に設けられる軸受7に嵌合され、軸受7には従動しない摩擦係数の低い樹脂による軸受7に設ける圧縮バネ8により像担持体61表面方向に押圧されている。これにより、機械的振動、導電性支持体(芯金)6の偏位があっても一定の微少間隙Gを形成することができる。押圧する荷重は、好ましくは、4〜25N、さらに好ましくは、6〜15Nである。帯電部材1は、軸受7で固定されていても、回転するときの振動、帯電部材の偏心、その表面の凹凸により、微少間隙Gの大きさが変動するので、微少間隙Gが適正な範囲からはずれる場合があり、このために、経時的には像担持体61の劣化を促進することになる。ここで、荷重とは、間隙保持部材103を通して像担持体61に加わるすべての荷重を意味する。荷重は、帯電部材101の両端に設けられる圧縮バネ108の力、帯電部材101とクリーニング部材102の自重等により調整できる。荷重が小さいと、帯電部材101の回転時による変動、駆動するギア等の衝撃力による跳ね上がりを抑えることができない。荷重が大きいと、帯電部材101と嵌合する軸受107との摩擦が大きくなり、経時的な摩耗量を大きくして変動を促進することになる。したがって、荷重を、好ましくは、4〜25N、さらに好ましくは、6〜15Nの範囲にして、微少間隙Gを適正な範囲にすることにより、放電生成物の生成を少なくし、像担持体61に堆積する量を少なくすることができる。それ故、像担持体61の寿命を延ばし、かつ、斑点状の異常画像・画像流を防止することができる。
【0070】
間隙保持部材3は、その一部が電気抵抗調整層4と高低差を有している。微少間隙Gの形成する方法としては、電気抵抗調整層4と間隙保持部材3とを切削、研削等の除去加工して同時加工することにより形成することができる。間隙保持部材3と電気抵抗調整層4とを同時加工すると、微少間隙Gを高精度に形成することができる。間隙保持部材3の電気抵抗調整層4と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層4の高さと同一、又は、低く形成すると、間隙保持部材3と像担持体61との接触幅が低減されるので、導電性部材(帯電部材)101と像担持体61との間の微少間隙Gを高精度にすることができる。このようにすると、間隙保持部材3の電気抵抗調整層4の側端部の外表面が像担持体61に当接することを防止することができるので、この端部を介して隣接する電気抵抗調整層4が像担持体61に接触してリーク電流が発生してしまうことを防止できる。また、間隙保持部3の電気抵抗調整層4の側の端部を低く加工して、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。前記逃げ代(逃げ加工)の形状は、間隙保持部3の端部の外表面が像担持体61に当接しないような形状であるならばどのような形状であってもよい。
【0071】
さらに、表面層5をコーティングする際のマスキングを電気抵抗調整層4と間隙保持部材3の境界で行なうことは、ばらつきを考慮すると制御が難しいので、段差を形成する際に、電気抵抗調整層4と同一、又は、低く形成された間隙保持部3まで表面層5を形成すると、電気抵抗調整層4上に確実に表面層5を形成することができる。間隙保持部材3の必要な特性としては、像担持体61との間の微少間隙Gを環境、及び、長期(経時)に渡って安定して形成することであるので、間隙保持部材3を構成する材料は、吸湿性、耐摩耗性の小さいものが好ましい。また、間隙保持部材3は、像担持体61と当接して摺動するので、間隙保持部材3を構成する材料は、トナー、及び、トナー添加剤が像担持体61に付着しにくいことや、像担持体61を摩耗させないものであることが重要である。それ故、間隙保持部材3を構成する材料は、種々の条件に応じて適宜選択される。
【0072】
前記間隙保持部材3を構成する材料は、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)等があげられる。間隙保持部材3を確実に固定するには、接着剤を塗布して接着してもかまわない。また、間隙保持部材3は、絶縁性材料で構成されていることが好ましく、また、その体積固有抵抗は、1013Ωcm以上であることが好ましい。電気絶縁性が必要である理由は、像担持体61とのリーク電流の発生を無くすためである。間隙保持部材3は、成型加工により成形される。
【0073】
図2に示されているように、本発明の導電性部材(帯電部材)101は、好ましくは、像担持体61上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジ200とされる。このように、導電性部材101が像担持体61上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジ200とされると、長期に渡って安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0074】
前記プロセスカートリッジ200においては、像担持体61の表面は、画像形成領域が非接触で配置された帯電部材により一様に帯電され、画像(潜像)形成後に現像によって可視化されて、トナー像が記録媒体に転写される。記録媒体に転写されずに像担持体61上に残ったトナーは、補助クリーニング部材64dによって回収される。像担持体61の表面へのトナー、及び、トナー構成材料の付着を防止するために、固体潤滑剤64aが塗布部材64bで像担持体61上に一様に塗布されて滑剤層が形成される。クリーニング部材64cで補助クリーニング部材64dで回収しきれなかったトナーは、回収して排トナー回収部へ搬送される。補助クリーニング部材64dとしては、ローラ形状、ブラシ形状のものがあり、また、固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン等の像担持体上の摩擦係数を低減して非粘着性を付与できるものがある。クリーニング装置64は、シリコン、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等が挙げられる。
【0075】
帯電装置100は、導電性部材(帯電部材)101の汚染を除去するためのクリーニング部材102を備えている。クリーニング部材102の形状は、ローラ状、パッド形状でもよいが、本発明では、ローラ形状とした。クリーニング部材102は、帯電装置100の図示しないハウジングに設けられる軸受に嵌合され、回転可能に軸支される。このクリーニング部材102は、帯電部材101に当接して、外周面をクリーニングする。帯電部材101の表面にトナー、紙粉、部材の破損物等の異物が付着すると、電界が異物部分に集中するために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。逆に、電気的絶縁性の異物が広い範囲に付着すると、その部分では放電が生じないために、像担持体61に帯電斑が生ずるので、帯電装置100には帯電部材101の表面をクリーニングするクリーニング部材102を設けることが好ましい。クリーニング部材102としては、ポリエステル等の繊維によるブラシ、メラミン樹脂等の多孔質(スポンジ)のようなものを用いることができる。クリーニング部材102は、帯電部材101に連れ回り、線速差を持って回転、離間して間欠等の形式で回転させても良い。また、帯電装置100は、帯電部材101に電圧を印加する電源を備えている。
【0076】
電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材101の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材101表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材101に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材101への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体61の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが好ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0077】
図2に示されているように、本発明では、補助クリーニング部材64dをブラシローラとし、また、滑剤をステアリン酸亜鉛をブロック状に形成したものとして、該ブラシローラにバネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラ64bで固体潤滑剤ブロック64aから削り取った固体潤滑剤を像担持体61へ塗布するような構成となっている。クリーニング部材64dは、ウレタンブレードを用いカウンター方式とする。また、帯電部材101のクリーニング部材64cは、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材101と連れ回りで回転させる方式とすることにより、帯電部材101の表面の汚れを良好にクリーニングできる。図2において、64は、クリーニング装置である。
【0078】
図3,4に示されているように、本発明の画像形成装置300は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有するものである。このように、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置300とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【0079】
本発明の画像形成装置300は、表面に感光体層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する分の個数分の像担持体61と、各像担持体61をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、像担持体61上に転写後残留するトナーを除去するクリーニング装置64とを備える。記録媒体は、記録媒体を収納する給紙装置21、22の一つから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
【0080】
図3,4に示すように、画像形成装置300における露光装置70は、帯電装置100により帯電された像担持体61に光を照射して、光導電性を有する像担持体61上に静電潜像を形成する。光Lは、蛍光灯、ハロゲンランプ等のランプ、LED、LD等の半導体素子によるレーザ光線等であっても良い。ここでは、図示しない画像処理部からの信号により像担持体61の回転速度に同期して照射される場合は、LDの素子を用いる。 現像装置63は、現像剤担持体を有し、現像装置63内に貯蔵されたトナーを供給ローラで攪拌部に搬送されて、キャリアを含む現像剤と混合・攪拌され、像担持体61に対向する現像領域に搬送される。このときに、正又は負極性に帯電されたトナーは、像担持体61の静電潜像に転移して現像される。現像剤は、磁性又は非磁性の一成分現像剤又はこれらを併せて使用するものであっても良いし、湿式の現像液を用いるものであっても良い。
【0081】
1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。1次転写装置62は、コロトロン、スコロトロンのコロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシのいずれの転写装置であっても良い。その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。
【0082】
定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び/又は加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
【0083】
以下、本発明の画像形成装置300の動作について説明する。読み取り部30は、原稿搬送部36の原稿台上に原稿をセットするか、又、原稿搬送部36を開いてコンタクトガラス31上に原稿をセットし、原稿搬送部36を閉じて原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿搬送部36に原稿をセットしたときは原稿をコンタクトガラス31上へと搬送して後、他方コンタクトガラス31上に原稿をセットしたときは直ちに、第1読み取り走行体及び第2読み取り走行体32、33を走行する。そして、第1読み取り走行体32で光源から光を発射するともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2読み取り走行体33に向け、第2読み取り走行体33のミラーで反射して結像レンズ34を通して読取りセンサであるCCD35に入れ、画像情報を読み取る。読み取った画像情報をこの制御部に送る。制御部は、読み取り部30から受け取った画像情報に基づき、画像形成部60の露光装置70内に配設された図示しないLD又はLED等を制御して像担持体61に向けて、書き込みのレーザ光Lを照射させる。この照射により、像担持体61の表面には静電潜像が形成される。
【0084】
給紙部20は、多段に備える給紙カセット21から給紙ローラにより記録媒体を繰り出し、繰り出した記録媒体を分離ローラで分離して給紙路に送り出し、画像形成部60の給紙路に記録媒体を搬送ローラで搬送する。この給紙部20以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ、手差しトレイ上の記録媒体を手差し給紙路に向けて一枚ずつ分離する分離ローラも装置側面に備えている。レジストローラ23は、それぞれ給紙カセット21に載置されている記録媒体を1枚だけ排出させ、中間転写体50と2次転写装置51との間に位置する2次転写部に送る。画像形成部60では、読み取り部30から画像情報を受け取ると、上述のようなレーザ書き込みや、現像プロセスを実施させて像担持体61上に潜像を形成させる。
【0085】
現像装置63内の現像剤は、図示しない磁極により汲み上げて保持され、現像剤担持体上に磁気ブラシを形成する。さらに、現像剤担持体に印加する現像バイアス電圧により像担持体61に転移して、その像担持体61上の静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。現像バイアス電圧は、交流電圧と直流電圧を重畳させている。次に、トナー像に応じたサイズの記録媒体を給紙させるべく、給紙部20の給紙ローラのうちの1つを作動させる。また、これに伴なって、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成ユニットでその像担持体61を回転して像担持体61上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送ともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成トナー像を形成する。
【0086】
一方、給紙部20の給紙ローラの1つを選択回転し、給紙カセット21の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラで1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラで画像形成装置1の画像形成部60内の給紙路に導き、この記録媒体をレジストローラ23に突き当てて止める。そして、中間転写体50上の合成トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ23を回転し、中間転写体50と2次転写装置51との当接部である2次転写部に記録媒体を送り込み、この2次転写部に形成されている2次転写バイアスや当接圧力などの影響によってトナー像を2次転写して記録媒体上にトナー像を記録する。ここで、2次転写バイアスは、直流であることが好ましい。画像転写後の記録媒体は、2次転写装置の搬送ベルトで定着装置80へと送り込み、定着装置80で加圧ローラによる加圧力と熱の付与によりトナー像を定着させた後、排出ローラ41で排紙トレイ40上に排出する。
【0087】
本実施の形態においては、導電性部材101を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材101は、本発明の目的に反しない限り、トナー担持体又は転写部材としてもかまわない。
【0088】
(実施例1)
一酸化炭素、エチレン及びプロピレンを、メタノール中で、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸および1,3−ビス[ビス(2ーメトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンに接触させて、線状交互共重合体の脂肪族ポリケトン樹脂を製造した。この脂肪族ポリケトン樹脂の融点は220℃、LVNは1.78dl/g(m−クレゾール中、60℃で測定)であった。この脂肪族ポリケトン樹脂に各種安定剤を配合し、これらをミキサーで混合した後、2軸押出機を用いてペレタイズすることにより、脂肪族ポリケトン樹脂のペレットを得た。そして、前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)40重量部、過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ社製)(B)60重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製社製)4.5重量部(D)から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした。次に、前記ローラの両端部に、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリエチレン製)からなるリング状の間隙保持部材を挿入して、間隙保持部材と前記芯軸及び電気抵抗調整層とを接着した後、前記間隙保持部材と前記電気抵抗調整層に切削加工を施して、前記間隙保持部材の外径(最大径)を12.80mmとすると共に、前記電気抵抗調整層の外径を12.70mmとした。続いて、前記電気抵抗調整層の表面にアクリルシリコン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる塗被組成物を塗布し、焼成して、10μm厚の表面層を形成することにより、導電性部材(帯電ローラ)を得た。
【0089】
(実施例2)
前記実施例1で製造した脂肪族ポリケトン樹脂(A)60重量部、ポリエーテルエステルアミド樹脂(TPAE−H151、富士化成工業社製)(B)40重量部、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CF3SO2)2N、森田化学工業社製)(C)2重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)3重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0090】
(実施例3)
前記実施例1で製造した脂肪族ポリケトン樹脂(A)40重量部、ポリエーテルエステルアミド樹脂(TPAE−H151、富士化成工業社製)(B)60重量部、有機ホスホニウム塩(ETPP−FB、日本化学工業社製)(C)2重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)1.5重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0091】
(実施例4)
脂肪族ポリケトン樹脂(D26HM100、シェルズケミカルズ社製)(A)40重量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(TBX−65、三光化学工業社製)(B)60重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)6重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0092】
(実施例5)
脂肪族ポリケトン樹脂(D26HM100、シェルズケミカルズ社製)(A)50重量部、過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ製社製)(B)50重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)4.5重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0093】
(比較例1)
ABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業社製)40重量部、過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ製社製)(B)60重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)4.5重量部から構成された樹脂組成物をステンレスからなる外径10mmの芯軸に220℃で射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0094】
(比較例2)
ポリケトン樹脂(D26HM100、シェルズケミカルズ社製)(A)60重量部、及び、ポリエーテルエステルアミド樹脂(TPAE−10HP、富士化成工業社製)(B)40重量部から構成された樹脂組成物をステンレスからなる外径10mmの芯軸に220℃で射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0095】
(比較例3)
ポリカーボネート樹脂(ユーピロンH−4000、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)20重量部、過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ製社製)(B)80重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)4.5重量部から構成された樹脂組成物をステンレスからなる外径10mmの芯軸に220℃で射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0096】
(比較例4)
過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ製社製)(B)100重量部で構成された樹脂組成物をステンレスからなる外径10mmの芯軸に220℃で射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0097】
(比較例5)
前記実施例1で製造した脂肪族ポリケトン樹脂(A)20重量部、及び、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(TPAE−10HP、富士化成工業社製)(B)80重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0098】
(比較例6)
前記実施例1で製造した脂肪族ポリケトン樹脂(A)80重量部、過塩素酸ナトリウム(C)を含有するポリエーテルエステルアミド樹脂(IRGASTAT P18、チバスペシャルティケミカルズ社製)(B)20重量部、及び、ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーC L440−G、日本油脂製)(D)4.5重量部から構成された樹脂組成物を220℃で溶融混練し、これをステンレスからなる外径10mmの芯軸に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成してローラとした以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを得た。
【0099】
以上、実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた導電性部材(帯電ローラ)に対して、次の試験1〜3の試験をして評価を行った。
【0100】
<試験1>(導電性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜6の抵抗調整層の成形樹脂材料を用いて、Φ43mm、厚さ1mmの円板テストピース(TP)を成形した。このTPを、円板上下方向から挟み込んで測定する抵抗測定治具を用いて、標準環境(23℃50%RH)において印加電圧100Vで体積抵抗の測定を行なった。
【0101】
<試験2>(微少間隙の環境変動性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜6で得た導電性部材(帯電ローラ)を高温高湿環境(30℃90%RH)に1日間放置後、図3に示した画像形成装置(imagio MP C6000、リコー社製)を使用して、高温高湿環境(30℃90%RH)で複写機用プリンター用紙(タイプ6200、リコー社製)50,000枚の連続複写を行なって、帯電ローラ表面へのトナーや放電生成物等の付着による画像不良の有無を評価した。この際に、帯電ローラに印加する電圧は、DC=−700V、AC Vpp=2.2kV(周波数=2.2kHz)とし、図3中のクリーニング部材64cを取り外した状態で連続複写することにより、加速評価を行なった。
【0102】
<試験3>(耐衝撃性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜6で得た導電性部材(帯電ローラ)を、図3に示した画像形成装置を改造した加速試験装置を用いて、ローラの通紙無し状態での通電空回し試験を5日間(150,000枚の複写に相当)行なって、クラックが発生するかどうかを調べた。この際、帯電ローラに印加する電圧はDC=−700V、AC Vpp=2.7kV(周波数=3kHz)とした。また、評価環境を23℃50%RHとした。
【0103】
評価基準は、次のとおりとした。
【0104】
(1)導電性
○:TP体積抵抗100V値が1.0×1011Ωcm以下であったもの
×:TP体積抵抗100V値が1.0×1011Ωcmを越えたもの
【0105】
(2)環境変動制
○:50000枚の連続複写中に帯電ローラの表面に付着されたトナー、放電生成物等 の付着物による画像不良が発生しなかったもの
×:50000枚の連続複写中に帯電ローラの表面に付着されたトナー、放電生成物等 の付着物による画像不良が発生したもの
【0106】
(3)耐衝撃性
○:通電空回し試験でクラックが発生しなかったもの
×:通電空回し試験でクラックが発生しなかったもの
【0107】
(4)総合評価
OK:実用上問題がないもの
NG:実用上問題があるもの
【0108】
評価結果は、次の表1に示される。
【0109】
【表1】

【0110】
表1から次のことがわかる。即ち、実施例1〜5の導電部性材(帯電ローラ)では、全ての試験で良好な結果が得られたが、比較例1〜6の導電部性材(帯電ローラ)では、全ての試験で良好な結果を示すものがみられなかった。
【符号の説明】
【0111】
3 間隙保持部材
4 電気抵抗調整層
5 表面層
6 導電性支持体
7 軸受
8 圧縮バネ
61 感光体ドラム(像担持体)
101 導電性部材(帯電部材、帯電ローラ)
G 微少間隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開平3−240076号公報
【特許文献2】特開平4−358175号公報
【特許文献3】特開平5−107871号公報
【特許文献4】特許第4159901号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体とが一定の微少間隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された該電気抵抗調整層の材質とは異なる材質で構成される間隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層が、脂肪族ポリケトン樹脂(A)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)、及び、電解質塩(C)、を含有する樹脂組成物で構成されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)に対する前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の配合率:(A)/(B)が、60/40〜40/60重量%とされていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記樹脂組成物における前記電解質塩が、過塩素酸塩類、含フッ素有機アニオン塩類、及び、有機ホスホニウム塩類から選ばれる少なくとも1種の電解質塩であることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記樹脂組成物における前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)に対する前記電解質塩(C)の配合率が、0.01〜20重量%とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記樹脂組成物に、さらに、主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記樹脂組成物における前記脂肪族ポリケトン樹脂(A)及び前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(B)の合計に対する、前記主鎖にポリカーボネート樹脂を有し側鎖にアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマー(D)の配合率:(D)/(A)+(B)が、1〜15重量%とされていることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、溶融混練されてなる樹脂組成物とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性部材が、像担持体上に近接配置されるように設けられた帯電部材とされることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
請求項8に記載の導電性部材が像担持体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとされることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−28052(P2011−28052A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174523(P2009−174523)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】