説明

導電性部材

【課題】直流電圧のみを印加し、前露光手段を具備しなくても、被帯電体を均一かつ充分に帯電可能であり、ゴースト画像などの画像不良が発生しにくく、長期の使用にわたって感光体汚染の少ない、帯電ローラとして好適な導電性部材を提供する。
【解決手段】良導電性の基材と、その外側に設けられた少なくとも1層以上からなる半導電体層を有する導電性部材において、その半導電体層が、無機フィラーと、該無機フィラーの表面に界面活性剤がコーティングされた界面活性剤層と、該界面活性剤層の上に特定の2つの繰り返し単位を有する有機導電剤がコーティングされた有機導電剤層と、を有する導電性フィラー、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において感光体に当接して使用される導電性部材に関するものである。
【0002】
尚、以下、特に導電性部材の一例として、帯電ローラについてその詳細を記載するが、本発明は、その用途を帯電ローラのみに限定する物ではない。
【背景技術】
【0003】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体や誘電体等の像担持体(被帯電体)面を帯電処理する手段として、近年では接触帯電方式が採用されている。接触帯電方式においては、電圧を印加した帯電するための部材(帯電部材とも記載する)を、被帯電体面に近接または接触させて、被帯電体面を帯電処理する。帯電部材としては、一般的には、金属製芯金の軸上に半導電性の弾性体層が形成されたゴムローラ型の帯電ローラが使用される。
【0004】
接触帯電方式で用いられる帯電ローラの弾性体層には、感光体等の被帯電体表面のピンホールや傷などにより生じるリークを防止するために、適度な半導電性が必要である。また、被帯電体を均一に帯電させるためには、帯電部材の電気抵抗値が体積固有抵抗率で1×103〜1×109Ω・cm程度の均一な半導電性であることが重要である。そして、この様な電気特性を実現するために、従来、カーボンブラック等の導電粒子が配合され半導電化された電子導電系の半導電性ゴム組成物を用いて、弾性体層を作製してきた。
【0005】
この様な電子導電系のゴム組成物は原料ゴムに配合するカーボンブラック等の導電粒子の添加量によって、電気抵抗を調整することができる。しかしながら、体積固有抵抗率が1×103〜1×109Ω・cmの半導電領域においては、導電粒子の配合量の僅かな変化により、電気抵抗が大きく変化する場合がある。半導電領域において均質な所望の電気抵抗値を示す弾性体層を作製することが困難で、帯電部材内および帯電部材間で電気抵抗のバラツキが生じやすいといった問題がある。
【0006】
電気抵抗が均一なゴム組成物を得る手法としては、エピクロルヒドリンゴムやNBR等のそれ自身が半導電性を有する極性ゴムを使用する方法が知られている。或いは、原料ゴムにイオン導電剤を添加して半導電性を付与する等のイオン導電系のゴム組成物により、弾性体層を構成する方法が知られている。
【0007】
また、従来、接触帯電方式においては、いわゆる「AC/DC帯電方式」が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。「AC/DC帯電方式」とは、所望の被帯電体表面電位Vdに相当する直流電圧(DC電圧)に帯電開始閾値(Vth)の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流電圧成分(AC電圧成分)を重畳した電圧を接触帯電部材に印加する方式である。これは、AC電圧による電位のならし効果により、被帯電体の電位がAC電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、帯電が環境などの外的状況には影響されることのない優れた接触帯電方法である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、直流電圧印加時における帯電開始電圧(Vth)の2倍以上のピーク間電圧である高圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、装置自体のコストアップを招く。さらには、交流電流を多量に消費することにより、帯電ローラおよび電子写真感光体の耐久性が低下するという問題点があった。よって、最近では帯電ローラへの印加電圧を直流電圧のみとして帯電を行うことが行われてきている。
【0009】
さらに、従来は、帯電プロセスの上流に、LEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプおよび蛍光ランプなどを使用した前露光手段により、像転写後の電子写真感光体表面の残留電荷を除去する前露光手段を設けていた。しかしながら、近年、電子写真装置の小型化や低価格化の要求が大きくなり、この前露光手段を採用せずに画像形成を行うことも求められている。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開2001−250421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述のように帯電ローラに直流電圧のみを印加して被帯電体の帯電処理を行う場合や前露光操作を行わない場合、次のような問題が生じる。すなわち、被帯電体である感光体の表面電位と感光体の帯電1周目、帯電2周目以降の飽和電位(暗部電位VD)との間に、電位差(VD1とVD2の差)が生じてしまう。そうすると、例えば反転現像方式の場合、文字や黒い図形などを潜像形成した直後に連続してハーフトーン画像を出力すると、このハーフトーン画像上に前記の文字や黒い図形などが微かに残像してしまう現象(ゴースト画像)が顕著に現れるという問題が生じる。
【0011】
ゴースト画像を解決する手段としては、帯電ローラの電気抵抗を低くし、帯電能力を上げる事が知られている。電気抵抗が均一なイオン導電系のゴム組成物を用いて低抵抗化を実現する手段としては、エピクロルヒドリンゴム等の極性ゴムに第四級アンモニウム塩などのイオン導電剤を配合した導電性材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
しかしながら、イオン導電剤を多量配合して電気抵抗を低く設定した場合、長期間の使用において、イオン導電剤が感光体を汚染して感光体に機能障害が生じ、画像不良が発生する場合があった。
【0013】
本発明は、直流電圧のみを印加し、前露光手段を具備しなくても、被帯電体を均一かつ充分に帯電でき、ゴースト画像などの画像不良が発生しにくく、長期の使用にわたって感光体汚染の少ない、帯電ローラとして好適な導電性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は上記課題について鋭意検討した結果、特定の構成を有する導電性フィラーを使用して、弾性体層の電気抵抗を調整することにより、感光体汚染が無く、低電気抵抗の導電性部材が得られる事を見出した。その導電性フィラーは、無機フィラーの表面に界面活性剤がコーティングされ、該界面活性剤の上に有機導電剤がコーティングされたものであった。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)良導電性の基材と、その外側に設けられた少なくとも1層以上からなる半導電体層を有する導電性部材において、その半導電体層が、
無機フィラーと、該無機フィラーの表面に界面活性剤がコーティングされた界面活性剤層と、該界面活性剤層の上に下記一般式(I)で示される繰り返し単位及び下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する有機導電剤がコーティングされた有機導電剤層と、を有する導電性フィラー、
を含有する事を特徴とする導電性部材である。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、nは10以上の整数を表し、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキル基またはアルキル置換フェニル基を表す)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、Qは2価の連結基を表し、Aはスルホン酸基、燐酸基、カルボン酸基、またはこれらの酸基が中和された基を表す)
(2)前記無機フィラーが炭酸カルシウムである(1)の導電性部材である。
(3)前記有機導電剤層がさらにリチウム塩を含有する(1)又は(2)の導電性部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、直流電圧のみを印加し、前露光手段を具備しなくても、被帯電体を均一かつ充分に帯電する能力を有し、ゴースト画像や濃度ムラ、感光体汚染等の画像不良が少ない帯電ローラとして好適な導電性部材を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
図2には、本発明の導電性部材を有する電子写真装置の概略構成を示す。21は被帯電体としての電子写真感光体であり、本例の電子写真感光体は、アルミニウムなどの導電性支持体21bと、導電性支持体21b上に形成した感光層21aを基本構成とするドラム形状の電子写真感光体である。この電子写真感光体21は、支軸21cを中心に図上時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0023】
1は、本発明の導電性部材であり、電子写真感光体21に接触配置されて電子写真感光体を所定の極性・電位に帯電(一次帯電)する帯電ローラである。帯電ローラ1は、芯金11と、芯金11上に形成した弾性体層12と、弾性体層12上に形成した表面層13からなり、芯金11の両端部を不図示の押圧手段で電子写真感光体21の回転駆動に伴い従動回転する。
【0024】
そして、電源23に接続された摺擦電源23aにより、芯金11に所定の直流(DC)バイアスが印加された帯電ローラ1と電子写真感光体21が接触することで、電子写真感光体21が所定の極性・電位に接触帯電される。
【0025】
帯電ローラ1で周面が帯電された電子写真感光体21は、次いで露光手段24により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光など)を受けることで、その周面に目的の画像情報に対した静電潜像が形成される。
【0026】
その静電潜像は、次いで、現像手段25により、トナー画像として順次に可視像化されていく。このトナー画像は、次いで、転写手段26により不図示の給紙手段部から電子写真感光体21の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって電子写真感光体21と転写手段26との間の転写部へ搬送された転写材27に順次転写されていく。本例の転写手段26は転写ローラであり、転写材27の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで電子写真感光体21側のトナー画像が転写材27に転写されていく。
【0027】
表面にトナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体21から分離されて不図示の定着手段へ搬送されて像定着を受け、画像形成物として出力される。あるいは、裏面にも像形成するものでは、転写部への再搬送手段へ搬送される。
【0028】
像転写後の電子写真感光体21の周面は、前露光手段28による前露光を受けて電子写真感光体ドラム上の残留電荷が除去(除電)される。この前露光手段28には公知の手段を利用することができ、例えばLEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプおよび蛍光ランプなどを好適に例示することができる。また、この前露光手段のない構成とすることもできる。
【0029】
除電された電子写真感光体21の周面は、クリーニング手段29で転写残りトナーなどの付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて、繰り返して画像形成に供される。
【0030】
なお、帯電ローラ1は面移動駆動される電子写真感光体21に従動駆動させてもよいし、非回転にしてもよいし、電子写真感光体21の面移動方向に順方向または逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0031】
露光は、複写機の場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、原稿を読み取り信号化し、この信号に基づいてレーザービームを走査したり、LEDアレイを駆動したり、または液晶シャッターアレイを駆動したりすることなどにより行われる。
【0032】
本発明の導電性部材を使用しうる電子写真装置としては、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、あるいは、電子写真製版システムなどの電子写真応用装置などが挙げられる。
【0033】
本発明の導電性部材は、帯電ローラなどの帯電部材以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラなどの搬送部材としても使用可能である。
【0034】
本発明の導電性部材は、良導電性の基材と、その外側に設けられた少なくとも1層以上からなる半導電体層により構成される。図1に、本発明の導電性部材の例として、帯電ローラの模式的断面図を示す。この帯電ローラは、基材としての芯金11と、その外周に設けられた半導電体層としての弾性体層12と、弾性体層12の外側に設けられた表面層13とから構成されている。
【0035】
弾性体層は、体積固有抵抗率が1×103〜1×109Ω・cmの半導電領域となるものであるが、中でも23℃、50%RH環境下で測定した体積抵抗率が1×107Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率が1×107Ω・cm超の場合、感光体表面の帯電能力が不充分な場合がある。すなわち、前露光が無い電子写真プロセスにおいては、転写プロセスを通過した後の感光体表面の帯電電位差を帯電プロセスで均一な表面電位にすることが出来ない場合があり、ゴースト画像が発生することがある。
【0036】
弾性体層の電気抵抗を1×107Ω・cm以下とする具体的な手段として、無機フィラーの表面に界面活性剤がコーティングされ、該界面活性剤の上に有機導電剤がコーティングされた導電性フィラーを配合する。
【0037】
図3には本発明で使用する導電性フィラーの模式的断面図を示す。この導電性フィラーは、コアとなる無機フィラー31の表面に界面活性剤でコーティングされた界面活性剤層32、及び界面活性剤層32の上に有機導電剤がコーティングされた有機導電剤層33を有している。無機フィラー31の表面にコーティングされている界面活性剤層32は、必ずしも無機フィラーの表面を完全に被覆している必要は無く、一部被覆されていない部分があっても構わない。界面活性剤層32上にコーティングされている有機導電剤層33は、必ずしも界面活性剤層32の表面を完全に被覆している必要は無く、一部被覆されていない部分があっても構わない。
【0038】
上記無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、セリサイト、硫酸カルシウム、モンモリロナイト、ゼオライト、亜硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、カオリンなどの各種無機物の一種又は二種以上の混合物があげられる。無機フィラーとしては、平均粒径が0.1〜20μmものを選択することが好ましい。
【0039】
無機フィラーの表面にコーティングされる界面活性剤としては、第1、2、3級アミン塩型カチオン系低分子または高分子界面活性剤、および第4級アンモニウム塩型カチオン系低分子または高分子界面活性剤が挙げられる。第1〜3級アミン塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、ソロミンA型アミン塩、サパミンA型アミン塩、アーコベルA型アミン塩およびイミダゾリン型アミン塩等が挙げられる。第4級アンモニウム塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型第4級アンモニウム塩およびアルキルビリジウム塩等が挙げられる。第1〜3級アミン塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン塩、ポリアミン・ジシアンジアミド縮合塩、ポリジアリルアミン塩等が挙げられ、第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリスチレンメチルアミノトリメチルアンモニウム塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートアンモニウム塩およびポリN−アルキルピリジン塩等が挙げられる。これらのカチオン系界面活性剤の内、例えばフィラーとして炭酸カルシウムを用いる場合、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、アミン塩型高分子界面活性剤または第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤が好ましい。特に好ましいものとしてジアリルアミンの単独またはビニル化合物との共重合物の塩およびポリジアリルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0040】
これらの界面活性剤を無機フィラー表面にコーティングする方法としては、特に限定されないが、無機フィラーを界面活性剤の存在下で湿式粉砕を行うことによって達成される。
【0041】
具体的には、無機フィラー/水性媒体(好ましくは水)との質量比が70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60の範囲となるように無機フィラーに水性媒体を加える。ここに界面活性剤を固形分として、無機フィラー100質量部当り0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜0.7質量部添加し、常法により湿式粉砕する。又は、上記範囲の量となる界面活性剤を予め溶解してなる水性媒体を無機フィラーと混合し、常法により湿式粉砕する。湿式粉砕は、バッチ式でも連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕媒体を使用したミルなどを使用するのが好ましい。
【0042】
界面活性剤と無機フィラーとは、化学的な結合を形成する事が好ましい。界面活性剤と無機フィラー間で化学的な結合が形成されることで、界面活性剤が無機フィラーに固定され、感光体を汚染する事が防止される。界面活性剤としてジアリルアミン塩及び/又はアルキルジアリルアミン塩と非イオン性ビニルモノマーとを構成単位とするカチオン性コポリマーと、無機フィラーとして炭酸カルシウムとの組合せが好ましい。さらに、界面活性剤を湿式粉砕にて無機フィラー表面にコーティングする場合は、無機フィラーとしては重質炭酸カルシウムが最も好ましい。
【0043】
最終的に得られる導電性フィラーに含まれる界面活性剤と無機フィラーと比は、無機フィラー100質量部に対して界面活性剤が0.01〜5質量部の範囲となるようにすることが好ましい。
【0044】
界面活性剤がコーティングされた無機フィラーの表面には、さらに一般式(I)で示される繰り返し単位及び一般式(II)で示される繰り返し単位を有する有機導電剤がコーティングされている。
【0045】
【化3】

【0046】
(式中、nは10以上の整数を表し、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキル基またはアルキル置換フェニル基を表す)
【0047】
【化4】

【0048】
(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、Qは2価の連結基を表し、Aはスルホン酸基、燐酸基、カルボン酸基、またはこれらの酸基が中和された基を表す)
上記の有機導電剤としては、一般式(I)で示される繰り返し単位を与えるモノマーと、一般式(II)で示される繰り返し単位を与えるモノマーとを共重合して得られる共重合体を用いることができる。
【0049】
一般式(I)で示される繰り返し単位を与えるモノマーの好ましい例としては、次のものが挙げられる。すなわち、片末端にアルキル基またはアルキル置換フェニル基を有する、重合度10以上のエチレンオキシ基を有するポリ(又はオリゴ)エチレングリコールの末端部分が、メタクリロイル基またはアクリロイル基によりエステル化されたものである。そのためのエステル化剤としてはメタクリル酸またはアクリル酸が特に好ましく使用される。R2のアルキル基としては、炭素数1〜25の直鎖もしくは分岐アルキル基であるものが、配合されるゴム等の高分子材料と良好な混和性を示す為、好ましい。エチレンオキシ基数のnは10以上であり、12〜50の範囲が好ましい。10未満では導電性が小さく好ましくない。また、50以上の場合、ベースポリマーとの親和性が低くなりあまり好ましくない。
【0050】
上記共重合体において、一般式(I)で示される繰り返し単位の占める割合は、10質量%以上99質量%以下の範囲が好ましく、50質量%以上99質量%以下の範囲がより好ましい。一般式(I)の組成比が少ない場合は導電性フィラーとしての導電性が小さくなり、あまり好ましくない。
【0051】
一般式(II)において、Qで表される2価の連結基としては、特に制限はなく、酸基であるAとラジカル重合性二重結合とを連結する基であれば、任意の連結基がこれに含まれる。例えば、スルホン酸基、燐酸基、カルボン酸基が挙げられる。一般式(II)の好ましいモノマーの例としては、スルホン酸基を有するモノマーとして、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩;燐酸基を有するモノマーとして、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリプロピレングリコールモノメタクリレートおよびそれらの塩;さらにカルボン酸基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0052】
一般式(II)のAにおける「これらの酸基が中和された基」とは、これらの酸基が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミンなどで中和された基である。遊離の酸の形よりも中和形の方が一層導電性にすぐれている。
【0053】
上記共重合体において、一般式(II)で示される繰り返し単位の占める割合は、ゴム等に練り込んだ際の分散性が良好であることから、90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。また、一般式(II)の酸基であるAは無機フィラーにコーティングされた界面活性剤のアミン基等のカチオン基とイオン結合することによって導電性フィラー表面に固定される。その為、一般式(II)で示される繰り返し単位の占める割合は1質量%以上であることが好ましい。
【0054】
有機導電剤としては、上記一般式(I)及び一般式(II)のモノマー以外に、共重合可能な他のモノマーを共重合モノマーとして使用した共重合体を用いることもできる。例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステルまたはアラルキルエステル類;(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;p−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩基を有するモノマー類;アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類;4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド等のアクリルアミドまたはメタクリルアミド誘導体;酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマー;を適宜共重合モノマーとして使用することができる。
【0055】
こうした共重合可能な他のモノマーを重合体中にさらに導入する場合においては、これらのモノマーで形成される単位が共重合体中で50質量%以下であることが好ましい。50質量%を越える割合で導入された場合には、導電性が損なわれる場合があり、あまり好ましくない。
【0056】
また、一般式(I)と一般式(II)の繰り返し単位を併せ有する共重合体に、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の塩類、とくにナトリウム塩、カリウム塩あるいはリチウム塩を添加することが好ましい。特に好ましい塩類はリチウム塩であり、これらの塩類は、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩などの形をとることができる。これらの塩類は水その他適当な溶媒に溶解した形で上記共重合体に添加することが好ましく、共重合体中の一般式(I)で示される繰り返し単位中の数個のオキシエチレン単位とイオン錯体を形成し、良好な導電性を付与することができる。
【0057】
共重合体と塩類と比は、共重合体中100質量部に対して塩類を5〜100質量部の範囲とすることが好ましい。
【0058】
界面活性剤がコーティングされた無機フィラー(界面活性剤処理無機フィラー)を有機導電剤で表面被覆する方法としては、例えば、次の方法などが挙げられる。
(1)界面活性剤をコーティングする前記湿式粉砕工程において、あらかじめ有機導電剤となる共重合体をスラリー状に分散させた液を添加しておき、湿式粉砕後に乾燥することによって、界面活性剤処理無機フィラーの表面を有機導電剤で被覆する方法。
(2)湿式粉砕もしくは分散した、界面活性剤処理無機フィラーの分散液に有機導電剤となる共重合体を添加して、その後に乾燥する方法。
(3)湿式粉砕後に乾燥した、界面活性剤処理無機フィラーに、スプレーコート等の方法により有機導電剤となる共重合体で表面被覆する方法。
【0059】
またリチウム塩等の塩類を併せて添加する場合には、前記共重合体にあらかじめリチウム塩等の塩類を添加するか、共重合体で被覆した導電性フィラーにリチウム塩等の塩類を添加するかのいずれを用いてもよい。
【0060】
例えば、(2)の方法により有機導電剤で表面被覆する場合、次のように行うことができる。湿式粉砕した界面活性剤処理無機フィラーの分散液に、有機導電剤を添加して、混合撹拌する。リチウム塩等の塩類を併せて添加する場合には、有機導電剤と塩類との混合物をあらかじめ調製した上で、その混合物を添加すれば良い。このとき使用する有機導電剤としての共重合体と無機フィラーと比は、無機フィラー100質量部に対して有機導電剤を0.5〜10質量部の範囲とすることが好ましい。その後、媒体流動乾燥機などを用いて乾燥することで、導電性フィラーを得ることができる。
【0061】
最終的に得られる導電性フィラーに含まれる有機導電剤と無機フィラーと比は、無機フィラー100質量部に対して有機導電剤が0.5〜10質量部の範囲となるようにすることが好ましい。
【0062】
導電性部材の弾性体層は、上記の構成を有する導電性フィラーを含有し、導電性部材として必要な物性となるように、その組成を調整する。例えば、原料ゴムと導電性フィラーを含有するゴム組成物により弾性体層を形成することができる。
【0063】
弾性体層の原料ゴムとしては特に限定されないが、電気抵抗の小さい極性ゴムが好ましい。好ましい極性ゴムとしては、エピクロルヒドリンホモポリマー(CHC)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(CHR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体(CHR−AGE)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水添物(H−NBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)等のゴムが挙げられる。原料ゴムは単独でもよく、2種以上のブレンド物でもよい。
【0064】
弾性体層を形成するゴム組成物の組成は、原料ゴム100質量部に対して導電性フィラーを5〜300質量部の範囲とすることが好ましい。
【0065】
弾性体層には、感光体を汚染しない程度に、少量のイオン導電剤を含有することも出来る。イオン導電剤としては、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムなどの無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートなどの陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルべタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインなどの両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムなどの第四級アンモニウム過塩素酸塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどの有機酸リチウム塩;などが挙げられる。
【0066】
イオン導電剤を用いる場合のイオン導電剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対して2質量部を超えない量である事が好ましい。イオン導電剤の配合量が2質量部超の場合、感光体汚染の恐れが生じる場合がある。
【0067】
さらに、弾性体層には、必要に応じてゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、粘着付与剤、分散剤等を添加することができる。
【0068】
これらのゴム組成物の原料を混合する方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法などを例示することができる。
【0069】
本例の帯電ローラにおいては、弾性体層の外周に表面層を設けることも出来る。表面層は1層でも、2層以上の複数層で構成しても構わない。また、表面層は弾性体層より電気抵抗が高いことが好ましい。2層以上の多層構成とし、表面側の電気抵抗を高くすることによって、感光体表面のピンホールや傷などにより生じるリークを防止することが出来る。
【0070】
表面層の電気抵抗値としては通常1×106〜1×1010Ω程度が要求され、一般的には、バインダー高分子に、導電性物質を適量分散させることにより、所望の電気抵抗値としたものが用いられる。バインダー高分子としては、アクリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン等が用いられる。導電性物質としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子;LiClO4、KSCN、NaSCN、LiCF3SO3等のイオン性電解質等が用いられる。
【0071】
表面層の形成方法としては、上記の様なバインダー高分子を溶剤に溶解または分散し、これに導電性物質を分散させた液を、ディッピング、ビーム塗工、ロールコーター、スプレー等の塗工法によって、弾性体層表面にコーティングする方法等が挙げられる。
【0072】
なお、本発明における帯電ローラには、必要に応じて、弾性体層や表面層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【実施例】
【0073】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を意味している。
【0074】
(導電性フィラー1の作製)
ジアリルアミン塩酸塩(60質量%)とアクリルアミド(40質量%)の混合物に窒素雰囲気で、重合開始剤として、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライドを攪拌しながら添加した。得られた反応物にアセトンを添加・洗浄してカチオン性界面活性剤を得た。
【0075】
次にメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=23、化学式(3))とアシッドホスホキシ・エチルメタクリレート(化学式(4))とを質量比で80:20で重合させ、有機導電剤を得た。
【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
平均粒径30μmの重質炭酸カルシウムと水とを、その質量比が40/60となるように混合した。ここに上記のように製造したカチオン性界面活性剤を、重質炭酸カルシウム100部に対して0.06部加え、攪拌ミルを用いて湿式粉砕スラリーとし、重質炭酸カルシウム表面にカチオン性界面活性剤を被覆した。次いでこのスラリーに上記のように合成した有機導電剤を重質炭酸カルシウム100部に対して2部の割合で混合攪拌し、媒体流動乾燥機で乾燥した(有機導電剤コーティング工程)。そして、重質炭酸カルシウムの表面が界面活性剤で被覆され、その界面活性剤の表面に有機導電剤がコーティングされた導電性フィラー1を得た。
【0079】
(導電性フィラー2の作製)
重質炭酸カルシウム100部に対して0.5部の量の過塩素酸リチウムを予め有機導電剤と混合した混合物を調製した。有機導電剤コーティング工程において、その混合物を加えた以外は、導電性フィラー1の作製と同じ方法で、導電性フィラー2を得た。
【0080】
(実施例1:帯電ローラ1)
以下に示す成分を加圧式ニーダーにて混合し、A練りゴム組成物を得た。
・原料ゴム(ヒドリンゴムA、エピクロマーCG−102;ダイソー社製商品名)
100部
・加工助剤(ステアリン酸亜鉛) 1部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛) 5部
・充填剤(MTカーボンブラック、MT−CB;サーマックスフローフォームN990;Cancarb社製商品名) 5部
・可塑剤(セバシン酸ポリエステル可塑剤、可塑剤−1;分子量 8000)
5部
・前述した導電性フィラー1 50部
このA練りゴム組成物166質量部に対して、以下に示す成分をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。
・架橋剤(硫黄) 0.5部
・加硫促進剤(N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、CBS;ノクセラーCZ;大内振興化学工業社製商品名) 1部
得られた未加硫ゴム組成物を厚さ2mmのシート成形金型にて160℃、30分間プレス加硫を行い、その後、金型より取り出して熱風炉にて160℃、2時間の2次加硫を行い、成形シートを得た。この成形シートを用いて弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率の測定を行った。測定は日本ゴム協会標準規格「ゴムおよびゴム状類似物の体積抵抗率測定方法 SRIS−2304」に準拠して、23℃50%RHの環境で、印加電圧100Vにて行った。この結果、このゴム材料の体積抵抗率は9.2×106Ω・cmであった。
【0081】
得られた未加硫ゴム組成物をベント式ゴム押出機(φ50mmベント押出機;L/D=16;EM技研社製)によってチューブ状に押出し、加硫缶を用いた加圧水蒸気により160℃30分の一次加硫を行った。そして、外径15mm、内径5.5mm、長さ250mmのゴムチューブを得た。
【0082】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の導電性芯金(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部232mmに導電性加硫接着剤(メタロックU−20;東洋化学研究所製商品名)を塗布し、80℃で30分間乾燥した。この導電性芯金に、前述のゴムチューブを圧入し、熱風炉にて160℃で2時間の二次加硫と接着処理を行った。加硫後ゴム両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分を研磨機(LEO−600−F4−BME;水口製作所製商品名)で研磨した。そして、端部直径12.00mm、中央部直径12.10mmのクラウン形状の弾性体層を有するゴムローラ1を得た。
【0083】
図4にゴムローラの電気抵抗測定装置の概略図を示した。ゴムローラ4aは芯金11の両端部を不図示の押圧手段で円柱状のアルミドラム41に圧接され、アルミドラム41の回転駆動に伴い従動回転する。この状態で、ゴムローラ4aの芯金部分11に電源42を用いて直流電圧を印加し、41のアルミドラムに直列に接続した抵抗43にかる電圧から、ゴムローラ4aの電気抵抗を測定することができる。また、その最大抵抗と最小抵抗の比から、電気抵抗の周ムラを測定することができる。
【0084】
そこで、温度23℃、湿度50%R.H.(N/Nとも記載する)環境下で、図4の装置を使用し、芯金と金属ドラムの間に直流200Vの電圧を3秒印加して、その最大抵抗と最小抵抗の比から、ローラ電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、ゴムローラ1の電気抵抗の周ムラは1.1倍であった。
【0085】
上記ゴムローラ1の弾性体層の上に、以下に示す方法で表面層を被覆形成した。
【0086】
導電性酸化スズ粉体(SN−100P;石原産業(株)製商品名)50部に、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの1質量%イソプロピルアルコール溶液を500部と平均粒径0.8mmのガラスビーズ300部を加えた。そして、ペイントシェーカーで70時間分散後、分散液を500メッシュの網で濾過した。次に、この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを飛ばして乾燥させ、表面にシランカップリング剤を付与し、表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
【0087】
ラクトン変性アクリルポリオール(プラクセルDC2009;ダイセル化学工業(株)製商品名、ポリオール成分70質量%のキシレン溶液)200部を、MIBK(メチルイソブチルケトン)500部に溶解し、ポリオール濃度20質量%の溶液とした。このポリオール溶液200部に対して上記表面処理導電性酸化スズ粉体を60部、シリコーンオイル(SH−28PA;東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製商品名)を0.01部配合し、さらに直径0.8mmのガラスビーズ200部を加えた。そして、450mlのビンに入れてペイントシェーカーを使い、10時間分散した。
【0088】
この分散液380部に、以下に示す成分を混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に500メッシュの網で溶液を濾過して表面層形成用の塗料を得た。
・イソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(ベスタナートB1370;デグサ・ヒュルス製商品名) 30.6部
・ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(デュラネートTPA−B80E;旭化成工業製商品名) 19.6部
この表面層形成用の塗料をディッピンク法により上記ゴムローラ1の弾性体層表面に塗工した。塗工方法は、引き上げ速度320mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転して、もう一度引き上げ速度320mm/minで塗工し、30分間風乾した後、160℃で60分間乾燥した。そして、帯電ローラ1を得た。
【0089】
この帯電ローラ1を図2に示した電子写真装置(レーザショットLBP−2510;キヤノン製商品名)に設置して画像評価を行った。画像評価は帯電ローラによる帯電能の差が最も顕著に表れるように、次の条件で行った。すなわち、低温低湿環境である温度15℃、湿度10%(L/Lとも記載する)環境下において、画像評価は感光体表面電位が−500Vとなるように、帯電ローラの芯金に直流電圧のみを印加した。そして、図2に示した電子写真プロセスにおける前露光手段を作動させないようにした。評価画像はベタ黒印字後にハーフトーン画像を形成させてゴースト画像とハーフトーンの均一性の評価を行った。その結果、ゴーストの発生は全く認められず、ハーフトーンの均一性も良好であった。
【0090】
次に、この帯電ローラ1を40℃、95%R.H.の環境下で30日間放置した後、もう一度、電子写真装置に組込み、NN環境下でハーフトーンの画像形成を行い、過酷環境放置後の画像評価を行った。その結果、帯電ローラ1から感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0091】
(実施例2:帯電ローラ2)
A練りゴム組成物の成分として、イオン導電剤(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)0.5部を追加した以外は実施例1と同様の方法で、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は3.8×106Ω・cmであった。
【0092】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ2を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.1倍であった。
【0093】
上記ゴムローラ2の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ2を得た。この帯電ローラ2について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ゴーストの発生は全く認められず、ハーフトーンの均一性も良好であった。また、苛酷環境放置後の画像評価においても帯電ローラ2から感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0094】
(実施例3:帯電ローラ3)
A練りゴム組成物の成分として使用したヒドリンゴムAの代わりに、ヒドリンゴムB(エピオン301;ダイソー社製商品名)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は6.4×106Ω・cmであった。
【0095】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ3を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.1倍であった。
【0096】
上記ゴムローラ3の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ3を得た。この帯電ローラ3について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ゴーストの発生は全く認められず、ハーフトーンの均一性も良好であった。また、苛酷環境放置後の画像評価においても帯電ローラ3から感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0097】
(実施例4:帯電ローラ4)
A練りゴム組成物の成分として使用した導電性フィラー1の代わりに、導電性フィラー2を使用した以外は実施例1と同様の方法で、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は6.0×106Ω・cmであった。
【0098】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ4を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.2倍であった。
【0099】
上記ゴムローラ4の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ4を得た。この帯電ローラ4について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ゴーストの発生は全く認められず、ハーフトーンの均一性も良好であった。また、苛酷環境放置後の画像評価においても帯電ローラ4から感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0100】
(比較例1:帯電ローラ5)
以下に示す成分を加圧式ニーダーにて混合し、A練りゴム組成物を得た。
・原料ゴム(ヒドリンゴムA、エピクロマーCG−102;ダイソー社製商品名)
100部
・加工助剤(ステアリン酸亜鉛) 1部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛) 5部
・充填剤(MTカーボンブラック、MT−CB;サーマックスフローフォームN990;Cancarb社製商品名) 5部
・可塑剤(セバシン酸ポリエステル可塑剤、可塑剤−1;分子量 8000)
5部
・重質炭酸カルシウム(スーパーSSS;丸尾カルシウム社製商品名)
50部
このA練りゴム組成物166質量部に対して、以下に示す成分をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。
・架橋剤(硫黄) 0.5部
・加硫促進剤(ジベンゾチアジルジスルフィド、MBTS;ノクセラーDM;大内振興化学工業社製商品名) 1部
・加硫促進剤(テトラメチルチウラムモノスルフィド、TMTM;ノクセラーTS;大内振興化学工業社製商品名) 1部
得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は1.2×108Ω・cmであった。
【0101】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ5を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.2倍であった。
【0102】
上記ゴムローラ5の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ5を得た。この帯電ローラ5について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ゴースト画像が発生した。
【0103】
(比較例2:帯電ローラ6)
A練りゴム組成物の成分として、イオン導電剤(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)4部を追加した以外は比較例1と同様の方法で、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は8.8×106Ω・cmであった。
【0104】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ6を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.1倍であった。
【0105】
上記ゴムローラ6の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ6を得た。この帯電ローラ6について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ゴーストの発生は全く認められず、ハーフトーンの均一性も良好であった。また、実施例1と同様に苛酷環境放置後の画像評価を行った結果、帯電ローラ6から感光体への汚染物質の移行と見られる画像不良が見られた。
【0106】
(比較例3:帯電ローラ7)
以下に示す成分を加圧式ニーダーにて混合し、A練りゴム組成物を得た。
・原料ゴム(エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、EPDM;EPT4045;三井石油化学社製商品名) 100部
・加工助剤(ステアリン酸亜鉛) 1部
・加硫促進助剤(酸化亜鉛) 5部
・充填剤(MTカーボンブラック、MT−CB;サーマックスフローフォームN990;Cancarb社製商品名) 40部
・可塑剤(パラフィンオイル、可塑剤−2;PW−380;出光興産社製商品名)
50部
・重質炭酸カルシウム(スーパーSSS;丸尾カルシウム社製商品名)
30部
・導電剤(ケッチェンブラック、ケッチェンブラックEC600JD;ケッチェンブラックインターナショナル社製商品名) 6部
このA練りゴム組成物232質量部に対して、以下に示す成分をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。
・架橋剤(硫黄) 0.5部
・加硫促進剤(ジベンゾチアジルジスルフィド、MBTS;ノクセラーDM;大内振興化学工業社製商品名) 1部
・加硫促進剤(テトラメチルチウラムモノスルフィド、TMTM;ノクセラーTS;大内振興化学工業社製商品名) 1部
・加硫促進剤(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、DPTT;ノクセラーTRA;大内振興化学工業社製) 1部
得られた未加硫ゴム組成物について、実施例1と同様にシート状に成形し、弾性体層となるゴム材料の体積抵抗率を測定した。この結果、体積抵抗率は1.0×107Ω・cmであった。
【0107】
次に、上記未加硫ゴム組成物を使用し、実施例1と同様の方法で、導電性芯金の外周に弾性体層を有するゴムローラ7を成形した。そして、その電気抵抗の周ムラを測定した。その結果、電気抵抗の周ムラは1.8倍であった。
【0108】
上記ゴムローラ7の弾性体層の上に、実施例1と同様の方法で表面層を被覆形成し、帯電ローラ7を得た。この帯電ローラ7について、実施例1と同様に画像評価を実施した所、ハーフトーン画像において帯電ローラの電気抵抗ムラに起因する濃度ムラが発生した。
【0109】
以上に述べた評価結果を表1にまとめた。
【0110】
【表1】

【0111】
比較例1については本発明の導電性フィラーを含まない導電性部材を帯電ローラに使用した例であり、弾性体層の体積抵抗率が高く、ゴースト画像が発生した。比較例2については、本発明の導電性フィラーを含まず、イオン導電剤を多量配合して弾性体層の体積抵抗を低くした例であり、ゴースト画像は発生しないが、感光体汚染が確認された。比較例3については、本発明の導電性フィラーを含まず、導電性カーボンを配合して弾性体層の体積抵抗を低くした例であり、ローラ抵抗の周ムラが大きく、画像の均一性が劣る。
【0112】
表1から明らかなように、本発明の導電性フィラーを含有する導電性部材を帯電ローラに使用した場合ついては、弾性体層の体積抵抗率が充分に低い為、ゴースト画像ランクが良好であり、ハーフトーンの均一性も良好で、感光体汚染も発生していない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の導電性部材の一例としての帯電ローラの構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の導電性部材を有する電子写真装置の概略構成図である。
【図3】本発明で使用する導電性フィラーの模式的断面図である。
【図4】電気抵抗の周ムラの測定方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0114】
1 帯電ローラ
11 芯金
12 弾性体層
13 表面層
21 像担持体(電子写真感光体)
21a 感光層
21b 導電性支持体
21c 支軸
23 電源
23a 摺擦電源
24 露光手段
25 現像手段
26 転写ローラ(転写手段)
27 転写材
28 前露光手段
29 クリーニング手段
31 無機フィラー
32 界面活性剤層
33 有機導電剤層
41 アルミドラム
42 外部電源
43 基準抵抗
4a ゴムローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
良導電性の基材と、その外側に設けられた少なくとも1層以上からなる半導電体層を有する導電性部材において、その半導電体層が、
無機フィラーと、該無機フィラーの表面に界面活性剤がコーティングされた界面活性剤層と、該界面活性剤層の上に下記一般式(I)で示される繰り返し単位及び下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する有機導電剤がコーティングされた有機導電剤層と、を有する導電性フィラー、
を含有する事を特徴とする導電性部材。
【化1】

(式中、nは10以上の整数を表し、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキル基またはアルキル置換フェニル基を表す)
【化2】

(式中、R3は水素原子またはメチル基を表し、Qは2価の連結基を表し、Aはスルホン酸基、燐酸基、カルボン酸基、またはこれらの酸基が中和された基を表す)
【請求項2】
前記無機フィラーが炭酸カルシウムである請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記有機導電剤層がさらにリチウム塩を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−181953(P2007−181953A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−707(P2006−707)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】