説明

導電性部材

【課題】優れた耐ブリード性と低硬度化とを高いレベルで達成できる導電性部材を提供すること。
【解決手段】導電性基体と、ゴムを含む導電性の第1弾性層と、該第1弾性層の表面に形成された第2弾性層とを有し、該第2弾性層は明細書中に定義される式(1)〜(3)で表される特定構造の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする導電性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置等に使用される導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において感光体に当接させて該感光体を帯電させる帯電部材としては、感光体との当接ニップを確保するために、ゴムを含む導電性の弾性層を有する構成が一般的に採用されている。そして、かかる構成を有する帯電部材には、従来から、弾性層に含まれる低分子成分が帯電部材の表面に滲み出す、所謂、ブリードという課題が知られていた。かかる課題に対し、特許文献1には、OA機器用導電性ロールの構成材料として、ゴムの可塑剤をゲル化させるゲル化剤を含有するゴム組成物を用いることで、OA機器用導電性ロールの低硬度化と耐ブリード性とを両立できることが提案されている。そして、当該ゲル化剤の具体例として、特許文献1には、アミノ酸系ゲル化剤、ヒドロキシステアリン酸系ゲル化剤、ロジン系ゲル化剤が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが特許文献1に係るOA機器用導電性ロールを検討したところ、より一層の低硬度化が求められるとの認識を得た。そこで、本発明の目的は、優れた耐ブリード性と低硬度化とを高いレベルで達成できる導電性部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る導電性部材は、導電性基体と、ゴムを含む導電性の第1弾性層と、該第1弾性層の表面に形成された第2弾性層とを有し、該第2弾性層は、下記式(1)〜(3)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
式(1)中、nは1以上2以下の整数を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1以上11以下のアルキル基またはフェニル基を表す。式(2)中、mは0以上1以下の整数を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。式(3)中、xおよびyはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、xとyとの合計が12以上20以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば優れた耐ブリード性と低硬度化とを高いレベルで達成した導電性部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)および(b)は本発明の導電性部材の例を示す模式的断面図である。
【図2】電子写真装置の例を示す模式的断面図である。
【図3】(a)および(b)は導電性部材の抵抗測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の導電性部材の一態様としての導電性ローラは、図1に示したように、導電性基体1と、ゴムを含む第1弾性層2と、第1弾性層2の表面に形成された第2弾性層3とを有している。そして、第2弾性層3は、下記式(1)〜(3)で示される化合物からなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の化合物を含有する。
【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
上記構造式(1)中、nは1以上2以下の整数を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1以上11以下のアルキル基またはフェニル基を表す。構造式(2)中、mは0以上1以下の整数を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。構造式(3)中、xおよびyはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、xとyとの合計が12以上20以下である。
かかる構成によれば、第1弾性層から滲み出した低分子成分は、第2弾性層中の上記式(1)、(2)又は(3)で示される化合物によりゲル化され、導電性部材の表面へのブリードが抑制される。このように、本発明の導電性部材は、導電性部材の低硬度化を達成するための機能を第1弾性層に担持させ、耐ブリード性の向上のための機能を第2弾性層に担持させることで、低硬度化と耐ブリード性とを高いレベルで達成し得るものである。
【0017】
<導電性基体>
導電性基体を構成する材料としては、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。具体例としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅およびニッケル等の金属が挙げられる。
【0018】
<<第1弾性層>>
第1弾性層はゴム成分を含む。
【0019】
<<ゴム成分>>
ゴム成分の具体例として以下のものを挙げることができる。ECO(エピクロルヒドリンゴム);EPM(エチレン・プロピレンゴム);EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム);ノルボーネンゴム;NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム);クロロプレンゴム;天然ゴム;イソプレンゴム;
ブタジエンゴム;スチレン−ブタジエンゴム;ウレタンゴム;シリコーンゴム;水素化アクリロニトリルゴム;エピクロロヒドリンゴム;ブチルコム;エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル共重合体ゴム。
【0020】
<<導電剤>>
弾性層に導電性を付与するため、弾性体には、導電剤を含有させることができる。導電剤としては、イオン導電剤や電子導電性の導電剤が挙げられる。また、それらをそれぞれ単独で、あるいは、いくつかの種類のイオン導電剤と、いくつかの種類の電子導電性の導電剤とを組み合わせて用いることもできる。
【0021】
(1)イオン導電剤
イオン導電剤としては、例えば、LiClO4やNaClO4等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらを単独でまたは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
(2)電子導電剤
電子導電性の導電材の具体例としては下記(ア)〜(ク)を挙げることができる。
(ア)アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維。
(イ)黒鉛。
(ウ)金属粉。
(エ)酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物。
(オ)硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉。
(カ)絶縁性粒子の表面を酸化スズ、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、クロム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金、等を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体。
(キ)アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉。
(ク)上記(ア)から(キ)の群から選択される2種以上を組み合わせたもの。
【0023】
<<導電剤の量>>
本発明において、第1弾性層中の導電剤の配合量は、第1弾性層の体積抵抗率が、次の3つの各環境中で中抵抗領域(体積抵抗率が1×104Ω・cm以上1×108Ω・cm以下)になるような量が好ましい。
・低温低湿(L/L)環境(温度15℃、相対湿度10%)。
・常温常湿(N/N)環境(温度23℃、相対湿度55%)。
・高温高湿(H/H)環境(温度30℃、相対湿度80%)。
【0024】
<<弾性層の体積抵抗率の測定方法>>
第1および第2弾性層の体積抵抗率は、それぞれ以下の方法により求めることができる。弾性層を厚さ1mmのシートに成型した後、両面に白金を蒸着して電極とガード電極とを作製する。そして、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト社製)を用いて両電極間に200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定する。この測定値と、層厚と電極面積とから弾性層の体積抵抗率を算出する。
【0025】
<<可塑剤>>
第1弾性層の硬度低減のために、第1弾性層には可塑剤を含有させることができる。可塑剤の具体例を以下に挙げる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
・石油系軟化剤としてパラフィン系、ナフテン系、アロマティック系のプロセスオイル。
・植物系軟化剤としてひまし油、綿実油、亜麻仁油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、ロジン、パインオイル、トール油等。
・ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ジブチルグリコールアジペート、ジブチルビトールアジペート等のアジペート系可塑剤。
・ジオクチルセバケート(DOS)、ジブチルセバケート(DBP)等のセバケート系可塑剤。
・トリクレジルフォスフェート(TCP)クレジルフェニルフォスフェート(CDP)、トリブチルフォスフェート(TBP)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリブトキシエチルフォスフェート(TBXP)等のフォスフェート系可塑剤。
・ポリエーテル系、ポリエステル系の可塑剤。
【0026】
これらの可塑剤の添加量としては、導電性弾性体の柔軟性の観点から、上記高分子弾性体(ゴム成分)100質量部に対して、5質量部以上400質量部以下に設定することが好ましく、特に好ましくは、10質量部以上300質量部以下である。
【0027】
<<他の添加剤>>
この他にも第1弾性層には必要な充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることもできる。
【0028】
<<第1弾性層の成形方法>>
第1弾性層の成形方法としては、第1弾性層の原料としてのゴム成分、導電剤および必要に応じて可塑剤や添加剤を混合して、それを押し出し成形や射出成形、圧縮成形等の公知の方法で成形する方法が挙げられる。
【0029】
<第2弾性層>
第1弾性層の表面に形成されてなる第2弾性層は、第1弾性層と同様に上述したゴム成分を含有することができ、第1および第2弾性層のゴム成分は、同一のものを使用しても良いし、異なったものを使用しても良い。第2弾性層は、第1弾性層と同様のゴム成分に加えて、前記式(1)〜(3)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することができる。これらの化合物は、第1弾性層中のゴムの低分子成分や必要に応じて添加した可塑剤、さらには第2弾性層中のゴムの低分子成分を吸着し、導電性部材の表面への当該低分子成分や可塑剤のブリードを有効に抑制することができる。
【0030】
<<式(1)、式(2)および式(3)でそれぞれ表される化合物の合計添加量>>
上記式(1)〜(3)で表される各々の化合物の、第2弾性層中の総含有量は、第1弾性層および第2弾性層中の低分子成分や可塑剤の含有量、必要なブリード抑制効果を勘案して適宜設定すればよい。
【0031】
<<第2弾性層の形成方法>>
第2弾性層の形成方法としては、第2弾性層の原料であるゴム成分と、式(1)〜(3)で表される化合物のうちの少なくとも1つと、必要に応じて導電剤、添加剤等とを混合し、押し出し成形等の公知の方法で成形する方法が挙げられる。また、第2弾性層は、第1弾性層の上に成形して作製してもよいし、予め成形した第2弾性層を第1弾性層上に被覆してもよい。さらには、第1弾性層と第2弾性層とを同時に成形しても良い。上述したように、第2弾性層の原料であるゴム成分としては、第1弾性層の原料であるゴム成分と同様の材料を用いることができる。また、第2弾性層の層厚の目安としては、0.01mm以上2mm以下、特には0.02mm以上1.5mm以下が好ましい。
【0032】
<導電性部材のアスカーC硬度>
導電性部材のアスカーC硬度は、85°以下が好ましく、より好ましくは80°以下である.85°以下であれば、導電性弾性部材と当接する相手の部材との間のニップ幅を確保できるため電子写真特性が特に安定する。なお、アスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて測定される硬度である。本発明に係る導電性部材のアスカーC硬度値は、上述したN/N環境中に12時間以上放置した導電性部材に対してその硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後に測定した値とする。
【0033】
<導電性弾性部材の電気抵抗>
導電性部材の電気抵抗は以下のように測定することができる。即ち、導電性部材がローラ形状の場合は、図3のように、後述する図2に示す電子写真装置などの画像形成装置に導電性部材を用いた場合の使用状態と同様の応力で、感光体と同じ曲率の円柱形金属25に当接させて通電したときの電気抵抗を測定する。図3(a)において24aと24bは重りに固定された軸受けであり、導電性弾性ローラ27の導電性基体(軸)1の両端に鉛直下方向に押す応力を印加する。導電性弾性ローラ27の鉛直下方向には、導電性弾性ローラ27と平行に円柱形金属25が位置している。そして、図示しない駆動装置により円柱形金属25を回転させながら、図3(b)のように導電性弾性ローラ27を軸受け24aと24bとへ押し当てる。使用状態の感光体ドラムと同様の回転速度で円柱形金属25を回転させ、導電性弾性ローラ27を従動回転させながら抵抗測定用電源26から直流電圧−200Vを印加し、円相形円柱形金属25から流れ出てくる電流を電流計28で測定する。このときの印加電圧と測定された電流とから計算して導電性弾性ローラ27の電気抵抗を算出する。実施例においては、導電性弾性ローラの軸の両端にそれぞれ重りに固定された軸受けにより5Nの力を加えて、直径30mmの円柱形金属に当接させ、その円柱形金属を周速150mm/sで回転させた。導電性部材がローラ形状でない場合には、導電性部材の表面に金属を蒸着して導電性基体と導電性部材の表面との間の体積抵抗率を測定する。
【0034】
導電性部材の電気抵抗は上述したH/H環境中では1×104Ω以上、L/L環境中では1×108Ω以下であることが好ましい。またN/N環境中では2×104Ω以上6×107Ω以下であることが好ましい。L/L環境中の導電性部材の電気抵抗を1×108Ω以下とすることによって、導電性部材の抵抗の位置バラつきによる電子写真出力のムラが特に発生しにくくなるので好ましい。また、高温高湿環境中の導電性部材の電気抵抗が1×104Ω以上の場合では、印加された電荷が特にリークせず、ハーフトーン画像上に電子写真出力の濃度ムラが現れることを容易に防ぐため好ましい。またN/N環境中の抵抗を上記範囲とすることにより、帯電が容易に安定し、横スジ状の帯電ムラの発生を容易に防ぐので好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。以下の例では、本発明の導電性弾性部材としてローラ形状のものを用いた。また、以下の各例に用いた第1弾性層および表面層(第2弾性層)については、上述したあるいは後述する各評価方法で、それぞれ層厚および体積抵抗率を測定した。また、各例の第1および第2の弾性層を有する導電性弾性ローラについては、上述したあるいは後述する各評価方法で、電気抵抗、アスカーC硬度、可塑剤の染み出し(ブリード)およびハーフトーン画像上の当接跡の有無を評価した。
【0036】
<実施例1>
<<第1弾性層形成用の未加硫ゴム組成物の調製>>
下記の材料を、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混合して未加硫ゴム組成物A1を得た。
【0037】
(未加硫ゴム組成物A1の材料)
【0038】
【表1】

【0039】
次いで、下記の材料をロール径12インチ(30.5cm)のオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで20分混合した後、ロール間隙を0.5mmとして薄通しを10回行った。これにより第1弾性層形成用の未加硫ゴム組成物A2を得た。なお、この未加硫ゴム組成物には、高分子弾性体(ベースゴム:NBR)100質量部に対して可塑剤は10質量部含まれている。
【0040】
【表2】

【0041】
<<第2弾性層形成用の未加硫ゴム組成物の調製>>
下記の材料を、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混錬して未加硫ゴム組成物B1を得た。
【0042】
(未加硫ゴム組成物B1の材料)
【0043】
【表3】

【0044】
【化7】

【0045】
次いで、下記の材料をロール径12インチ(30.5cm)のオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで20分混錬した後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行った。これにより、第2弾性層形成用の未加硫ゴム組成物B2を得た。なお、当該未加硫ゴム組成物には、高分子弾性体(ベースゴム:NBR)100質量部に対して上記式4で表される化合物は10質量部含まれている。
【0046】
【表4】

【0047】
上記未加硫ゴム組成物A2及びB2のそれぞれを厚さ1mmのシート状に押出成形し、それらを温度140℃で20分間加硫させて2枚のゴムシートを得た。これらを、N/N環境に12時間静置し、電極を蒸着して体積抵抗率を測定した。
【0048】
<<導電性ローラの製造>>
次に、未加硫ゴム組成物A2と未加硫ゴム組成物B2とをクロスヘッドダイから同時押し出し成形して、未加硫ゴム組成物A2のチューブの外周面を未加硫ゴム組成物B2のチューブが被覆している未加硫ゴムチューブを得た(軸方向の長さ=270mm、中心孔の直径=5.5mm、未加硫ゴム組成物A2からなるチューブの直径=10mm、未加硫ゴム組成物B2からなるチューブの外径=13mm)。
次いで、当該未加硫ゴムチューブを加硫缶に入れ、温度140℃で30分間加熱した。その後、直径6mm、長さ252mmの中実のステンレス棒の周囲に厚さ10μmにポリエステル系接着剤を塗布した導電性芯金を、加熱処理したゴムチューブの中心孔に挿入し、熱風炉中で温度160℃で30分間加熱して導電性ローラを得た。そしてこの方法を繰り返して合計4本の導電性ローラを製造した。
<<評価1>>
上記で製造した4本の導電性ローラのうちの1本について、導電性ローラの軸方向の中央部分において、第1弾性層および第2弾性層の積層体をそれぞれ切り出した。更に、当該積層体をローラ軸方向に対して垂直方向の面をカミソリで切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して各弾性層の層厚を測定した。
<<評価2>>
2本目の導電性ローラをN/N環境に24時間静置した後に、電気抵抗およびアスカーC硬度を測定した。
<<評価3>>
3本目の導電性ローラを、ガラス板上に置き、H/H環境下に2週間静置後、N/N環境に1日静置した。そして、導電性弾性ローラのガラス板との当接部および非当接部の各々の表面の赤外線吸収スペクトルを得た。そして、当接部と非当接部における赤外線吸収スペクトルを対比した結果、導電性弾性ローラのガラス板との当接部の表面には可塑剤等のブリードは認められなかった。
<<評価4>>
4本目の導電性ローラを、図2に示す電子写真装置に、感光体ドラム5に当接して感光体ドラム5を帯電させる帯電ローラ6として組み込んだ。感光体ドラム5と帯電ローラ6とが当接した状態としたこの電子写真装置を苛酷環境(温度40℃、相対湿度95%)に2週間静置した後、ハーフトーン画像を出力した。得られたハーフトーン画像を目視で観察したところ、帯電ローラ6の当接に起因する画像ムラ(当接跡)は観察出来なかった。
なお、図2に示した電子写真装置の作動は以下の通りである。像担持体である感光体ドラム5は矢印の方向に回転しながら、帯電ローラ6によって一次帯電され、次に不図示の露光手段からの露光光11により静電潜像が形成される。現像剤容器16内の現像剤13は、現像ローラ7と現像ブレード15との間で摩擦されて帯電されつつ、現像ローラ7の表面に担持されて、感光体ドラム5の表面に搬送される。その結果、静電潜像は現像され、トナー像が形成される。トナー像は、転写ローラ8と感光体ドラム5の間において記録メディア9に転写され、その後定着部材18と加圧ローラ10とに挟まれながら搬送され、熱と圧力を印加されて定着される。転写されずに感光体ドラム5の表面に残留したトナーは、クリーニングブレード12により清掃される。帯電ローラ6、現像ローラ7、転写ローラ8等には画像形成装置の帯電電源21、現像電源23、転写電源22から、それぞれ電圧が印加されている。
【0049】
<実施例2>
実施例1に用いた未加硫ゴム組成物B2中の式(4)の化合物を、下記式(5)の化合物(商品名:ゲルオールMD−CM30G、新日本理化(株)社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして4本の導電性ロールを製造した。これらを用いて実施例1と同様の評価を行なった。
【0050】
【化8】

【0051】
<実施例3>
実施例1の未加硫ゴム組成物B2中の式(4)の化合物を、下記式(6)の化合物(商品名:ソリッドX、横関油脂(株)社製)に変更した以外は実施例1と同様にして4本の導電性ローラを製造した。これらを用いて実施例1と同様の評価を行なった。
【0052】
【化9】

【0053】
<比較例1>
実施例1の未加硫ゴム組成物B2から式(4)の化合物を除いた未加硫ゴム組成物を用いて第2弾性層を形成した以外は実施例1と同様にして4本の導電性ローラを製造した。これらを実施例1と同様に評価した。
【0054】
上記実施例1〜3及び比較例1の評価結果を下記表5〜6に示す。なお、表5〜6中の体積抵抗率および電気抵抗に記載の数値に関して、例えば1.0E+04は1.0×104を意味する。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の導電性部材は、電子写真装置に組み込んで、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラなどの、多種類の導電性弾性部材として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1‥‥導電性基体
2‥‥第1弾性層
3‥‥第2弾性層
5‥‥感光体ドラム
6‥‥帯電ローラ
7‥‥現像ローラ
8‥‥転写ローラ
9‥‥記録メディア
10‥‥加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、ゴムを含む導電性の第1弾性層と、該第1弾性層の表面に形成された第2弾性層とを有し、該第2弾性層は、下記式(1)〜(3)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする導電性部材:
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)中、nは1以上2以下の整数を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1以上11以下のアルキル基またはフェニル基を表す。式(2)中、mは0以上1以下の整数を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。式(3)中、xおよびyはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、xとyとの合計が12以上20以下である)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−221130(P2011−221130A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87797(P2010−87797)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】