説明

導電材料、電子デバイス及びその製造方法

【課題】使用前には導電性粒子において導電体とフラックス成分との反応が防止され、使用時に導電体表面の酸化皮膜が除去される構成を採ることで、フラックス量を増やすことなく、抵抗上昇、導通不良及びショートの発生を抑止すると共に、高い密着性の発現を可能とする導電材料を提供する。
【解決手段】導電性ペーストは、導電性粒子1と、導電性粒子1が分散されるバインダ樹脂2とを含有し、導電性粒子1は、導電体である金属粒子(金属以外の導電性物質でも良い)Mと、金属粒子Mを覆い、その表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1の有機化合物層L1と、第1の有機化合物層L1を覆う第2の有機化合物層L2とを有して構成され、第2の有機化合物層L2は、金属粒子Mの表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト又は導電性接着剤等の導電材料、及び導電材料を用いた電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に代表される電子デバイスの小型化、薄型化に伴い、半導体チップ等の電子部品の電極端子と回路基板の電極端子とを確実に接続する必要性が高まっている。電子デバイスでは、その配線のピッチは益々小さくなっている。従来、上記の電極接続には、相互の部品の電極端子同士をワイヤボンディングする方法が主流であった。近時では、電極端子同士を対向させて直接的に接続する方が小型化、薄型化に有利であることから、接続用の導電材料にハンダを用いた所謂フリップチップ接続が採用されている。しかしながら、ハンダは鉛−スズ合金である。鉛は、廃棄された電子デバイスから酸性雨により溶解し、地下水に溶け込む。そのため、環境への影響が懸念されている。
【0003】
上記の理由等から、接続用の導電材料として、鉛を含有しない(鉛フリーの)スズ合金を用いたフリップチップ実装が広く普及してきている。一般的に、鉛フリーのスズ合金は、鉛−スズ合金よりも高融点であるため、接合部分に印加される熱応力が大きくなる傾向がある。このため、接合部分に繰り返しの応力が印加されると金属疲労による破壊が起こり、接続部分に亀裂が発生する場合がある。更に、耐熱性の乏しい電子部品及び回路基板の実装には使用できないという不都合がある。
【0004】
そこで、従来の実装工法に替わり、導電性粒子と樹脂との混合物である導電性接着剤による実装工法が提案されている。導電性接着剤を用いた場合、比較的低温のプロセスであるため、接続部分に印加される熱応力を小さくすることが可能である。また、樹脂で接着するため、応力吸収効果が期待され、更に変形に対して柔軟に対応できるという利点もある。このように、導電性接着剤を用いる電子デバイスの実装方法は、環境問題に関する面のみならず、電極接続の信頼性という面においても有利であり、特に注目されている。
【0005】
一般的に、導電性接着剤は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等のベース樹脂に、導電性粒子として、銀、銅、ニッケル、鉛フリースズ合金等の導電性金属の粒子を分散させたものである。近年、電子デバイス部品の実装分野においては、導電性接着剤をスクリーン印刷、インクジェット印刷、転写等によって基板上の回路部分に印刷して、電子部品を所定の位置に接着するという手法が用いられている。上記の導電性接着剤は、この用途にも使用されている。
【0006】
スズ合金等の酸化し易い導電性粒子を用いたハンダ等の導電性ペースト又は導電性接着剤による電子部品の実装では、予めバインダ樹脂中にフラックス成分が添加されている(例えば、特許文献1を参照)。フラックス成分としては、無機酸、有機酸、有機アミン、有機ハロゲン化物、有機アミンの無機酸又は有機酸塩、ハロゲン化水素酸塩有機酸等が用いられる。フラックス作用により、導電性粒子の酸化皮膜除去が効果的に行われるため、半導体素子及び回路基板の電極と導電性ペースト間或いは導電性接着剤間の接続抵抗の低減が可能となる。
また、導電性粒子表面の酸化皮膜の除去効果を高めるために、予め導電性粒子に必要なフラックスを被覆させる方法が提案されている(例えば、特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−8016号公報
【特許文献2】特開2008−194614号公報
【特許文献3】特開2006−535751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、導電性粒子表面付近の外側にある大半のフラックス成分は、酸化皮膜除去として消費されずにバインダ樹脂と反応する。そのため、粘度上昇による印刷不良やバインダ樹脂成分不足による密着力低下の原因となる。
【0009】
また、特許文献2,3の技術では、フラックス成分とバインダ樹脂との反応は抑制できるものの、導電性粒子のイオン化により、イオン化金属が樹脂の硬化触媒となる。そのため、導電性粒子に接触しているフラックス成分と反応する。そのため、導電性粒子の酸化皮膜除去が完了する前に樹脂の硬化が進行してしまい、抵抗上昇及び導通不良の原因となる。そこで、フラックス成分の消費分を補うために過剰なフラックス添加が必要となり、樹脂組成の変化や密着強度低下の原因となる。また、過剰なイオン化金属の存在はイオンマイグレーションを招き、ショートの原因にもなる。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、使用前には導電性粒子において導電体とフラックス成分との反応が防止され、使用時に導電体表面の酸化皮膜が除去される構成を採ることで、フラックス量を増やすことなく、抵抗上昇、導通不良及びショートの発生を抑止すると共に、高い密着性の発現を可能とする導電材料、及びこの導電材料を用いて電極間の電気的接続性に優れた信頼性の高い電子デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
導電材料の一態様は、導電性粒子と、前記導電性粒子が分散される樹脂とを含み、前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有する。
【0012】
電子デバイスの一態様は、回路基板と、チップ素子と、前記回路基板の第1電極と、前記チップ素子の第2電極とを電気的に接続する導電材料とを含み、前記導電材料は、導電性粒子と、前記導電性粒子が分散される樹脂とを含み、前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有する。
【0013】
電子デバイスの製造方法の一態様は、回路基板の第1電極と、チップ素子の第2電極とを導電材料により電気的に接続するに際して、第1温度よりも低温の前記導電材料を、前記第1電極と前記第2電極との間に供給する工程と、前記導電材料を、第1温度よりも高い第2温度に昇温する工程とを含み、前記導電材料は、導電性粒子と、前記導電性粒子が分散される樹脂とを含み、前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有するものであり、前記第1温度で、前記第1有機化合物が前記導電体の表面から脱離すると共に前記第2有機化合物が前記導電体の表面と接触して反応し、前記第2温度で、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記樹脂と反応する。
【発明の効果】
【0014】
上記した導電材料の一態様によれば、使用前には導電性粒子において導電体とフラックス成分との反応が防止され、使用時に導電体表面の酸化皮膜が除去される構成を採ることで、フラックス量を増やすことなく、抵抗上昇、導通不良及びショートの発生を抑止すると共に、高い密着性の発現が可能となる。
また、上記の導電材料を用いて、電極間の電気的接続性に優れた信頼性の高い歩留まりに優れた電子デバイスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態による導電性ペーストの導電性粒子の構造を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態による導電性ペーストを示す模式図である。
【図3】第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第1例の構成を示す概略断面図である。
【図4】第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第2例の構成を示す概略断面図である。
【図5】第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第3例の構成を示す概略断面図である。
【図6】第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第4例の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本実施形態では、主に電子デバイスの導電性接着剤に適用して好適な導電材料である導電性ペーストを開示する。
図1は、第1の実施形態による導電性ペーストの導電性粒子の構造を示す模式図である。
図2は、第1の実施形態による導電性ペーストを示す模式図である。
【0018】
本実施形態による導電性ペーストは、導電性粒子と、導電性粒子が分散される樹脂とを含有する。導電性粒子は、導電体である金属粒子(金属以外の導電性物質でも良い)と、金属粒子を覆い、その表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1の有機化合物層と、第1の有機化合物層を覆う第2の有機化合物層とを有して構成される。第2の有機化合物層は、金属粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基(フラックス成分)を有する第2有機化合物を含有する。導電性ペーストの保存時(未使用時)には、導電性粒子において、第2の有機化合物層が金属粒子の表面と第1の有機化合物層を介して隔てられている。
【0019】
導電性ペーストの導電性粒子の構造を、その生成方法と共に図1に示す。
先ず、図1(a)に示すように、第1有機化合物として、金属粒子Mの表面との密着性官能基を有する有機化合物Aを、例えばヘキサン、ヘプタン、又はイソオクタン等の溶媒中に溶解する。有機化合物Aは、密着性官能基である有機官能基A1として一方の末端に例えば1つ以上のチオール基、水酸基、又はアニン基を有し、他方の末端に有機官能基A2として例えば1つ以上のアミン基、又はチオール基を有しており、芳香族又は脂肪族を主骨格として構成される。
【0020】
有機化合物Aとしては、例えば、アミノチオフェノール、ジチオフェノール、アミノフェノール、ヘキサジチオール、ヘキサアミノチオール、ヘキサチオフェノール、トリアジンチオール、HS−(CH2)n−CONH2等のチオール化合物、又は、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、ジヒドロキシケイ皮酸、ジヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、ドーパミン、ドーパ等の芳香族ヒドロキシ酸等が用いられる。
【0021】
金属粒子Mとしては、Ag,Ni,Cu,Zn,Fe,Al,Sn,Bi,In,Sb,Pb,Cd,ハンダ,又はITO等が用いられる。これら群のうちから1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。金属粒子Mの形状は特に制限されない。真球状、粒状、塊状、破砕状、多孔質状、凝集状、フレーク状、スパイク状、フィラメント状、ファイバー状、又はウイスカー状等、用途に応じて各種形状の導電性粒子を使用することができる。一般的には、使用する際の電気伝導度のバラツキを小さくするうえで、できるだけ粒径の揃った真球状の粉末を使用するのが良い。金属粒子Mのサイズ(径)は、100μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。
【0022】
続いて、有機化合物Aが溶解された溶媒中に、金属粒子Mを混合、分散する。ここでは、図1(b)に示すように、金属粒子Mと有機化合物Aの末端にある有機官能基A1とが反応する。これにより、金属粒子Mの表面に第1の有機化合物層L1が析出する。
続いて、アセトン等の溶媒で洗浄して未反応の有機化合物Aを除去した後に、水洗、乾燥する。
【0023】
続いて、図1(c)に示すように、第2有機化合物として、金属粒子Mの表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する有機化合物Bを、例えばヘキサン、ヘプタン、又はイソオクタン等の溶媒中に溶解する。有機化合物Bは、フラックスとして機能する活性官能基である有機官能基B1として一方の末端に例えばカルボキシル基を有し、他方の末端に有機官能基B2として例えばチオール基又はカルボキシル基を有しており、芳香族又は脂肪族を主骨格として構成される。
【0024】
有機化合物Bとしては、例えば、ベンゼンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、CIC酸、トリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、又はHS−(CH2)n−COOHからなるチオール化合物等が用いられる。
【0025】
続いて、第1の有機化合物層L1が表面に析出した金属粒子Mと有機化合物Bとを、溶媒中にて混合、分散する。ここでは、金属粒子Mの表面に析出した第1の有機化合物層L1を構成する有機化合物Aの末端にある有機官能基A2と、有機化合物Bの末端にある有機官能基B1とが反応する。これにより、第1の有機化合物層L1の表面に第2の有機化合物層L2が析出する。
【0026】
続いて、アセトン等の溶媒で洗浄して未反応の有機化合物Bを除去した後に、水洗、乾燥する。これにより、金属粒子Mの表面を第1の有機化合物層L1及び第2の有機化合物層L2がこの順に被覆してなる導電性粒子1が生成される。
【0027】
本実施形態では、第1の有機化合物層L1は厚みが10nm〜100nm程度、第2の有機化合物層L2は厚みが10nm〜100nm程度に形成される。図1では、理解の容易さを考慮して、第1及び第2の有機化合物層L1,L2を有機化合物A,Bの各1分子の厚みで描いているが、有機化合物A,Bの複数の分子から第1及び第2の有機化合物層L1,L2が構成されることが多いと考えられる。
【0028】
そして、図2に示すように、本実施形態の導電性ペーストを生成する。
先ず、上記のように生成された導電性粒子1を用いて、バインダ樹脂2に導電性粒子1を分散させる。
バインダ樹脂2は、絶縁性樹脂接着剤であり、例えば、ビスフェノールF型エポキシ40重量部、アミノメチルフェノールのトリグリシジルエーテル20重量部、酸無水物系硬化剤40重量部を混合、撹拌して得られる。この絶縁性樹脂接着剤の15重量部と、導電性粒子1の85重量部を混合、攪拌する。以上により、本実施形態の導電性ペースト3が得られる。
このように生成された導電性ペーストについて、24時間放置した後の粘度上昇率を調査したところ、+10%以下という接着剤として優れた結果が得られた。
【0029】
導電性ペースト3は、温度T1よりも低温の所定温度で保存される。導電性ペースト3を接着剤として使用する際には、導電性ペースト3を所定の被接着部位に塗布する。導電性ペースト3内の導電性粒子1を構成する第1の有機化合物層L1及び第2の有機化合物層L2について、有機化合物Aが温度T1で金属粒子Mの表面から脱離し、有機化合物Bが温度T1で金属粒子Mの表面と接触して反応する。金属粒子Mの表面には不要な酸化皮膜が生成されており、有機化合物Bのフラックスである有機官能基B1が酸化皮膜と反応し、酸化皮膜が除去される。そして、温度T1よりも高い温度T2で有機化合物Bが金属粒子Mから脱離し、有機化合物A及び有機化合物Bがバインダ樹脂2と反応する。表面に有機化合物A,Bを有さず、表面から酸化皮膜が除去された金属粒子Mは、バインダ樹脂2内で導電体として作用することができる。この導電性ペースト3の導電性接着剤としての機能発現は、保存温度からT1を超えてT2(又はそれ以上の所定温度)に到る所定時間の昇温過程で得られる。
【0030】
例えば、金属粒子MがSnBiハンダ、有機化合物Aがp−アミノチオフェノールで有機官能基A1がチオール基、有機官能基A2がアミン基、有機化合物Bがポリアクリル酸で有機官能基B1がカルボキシル基、有機官能基B2がカルボキシル基である場合を例に採る。このとき、保存温度が30℃程度、T1が100℃〜130℃程度、T2が150℃〜180℃程度となる。
【0031】
本実施形態では、金属粒子Mを第1の有機化合物層L1が覆い、フラックス成分を含む第2の有機化合物層L2は第1の有機化合物層L1を介して金属粒子Mを覆っている。そのため、金属粒子Mとフラックス成分とが直接接触しないため、保存中には両者間の反応が防止される。第2の有機化合物層L2の有機化合物Bの有機官能基B1,B2の量、及び第2の有機化合物層L2の膜厚を適宜調節することにより、金属粒子Mの酸化状態に応じた任意のフラックス作用を付与することができる。更に、第1の有機化合物層L1及び第2の有機化合物層L2がバインダ樹脂2の例えばエポキシ樹脂中に取り込まれるため、フラックス残渣を除去する工程が不要となる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、導電性ペースト3は、使用前には金属粒子Mとフラックス成分との反応が防止され、使用時にフラックス成分の作用で金属粒子Mの表面に形成された酸化皮膜が除去される構成を採る。これにより、導電性ペーストのフラックス量を増やすことなく、抵抗上昇、導通不良及びショートの発生を抑止すると共に、高い密着性の発現が可能となる。
【0033】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態による導電性ペーストを用いた電子デバイスとしてフリップチップ型の半導体装置を例示し、その構成を製造方法と共に説明する。第1の実施形態による導電性ペーストは、このフリップチップ型の半導体装置に限らず、電極等の導電体位間の接続を要するその他の電子デバイスに適用可能である。
【0034】
[第1例]
図3は、第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第1例の構成を示す概略断面図である。
本例では、回路基板として、複数層の配線21と、上下層間の配線21を適宜接続する接続部22とが、絶縁層23内に埋設形成され、表面に接続部22を介して配線21と電気的に接続された電極13を備えた回路基板11を用いる。電極13は、例えばSn,Cu,Au,又はハンダ等を材料として形成される。
【0035】
また、回路基板11に接続される半導体チップとして、コイル、キャパシタ、抵抗素子等の機能素子等が適宜形成され、表面に機能素子等と電気的に接続された電極14を備えた半導体チップ12を用いる。電極14は、例えばSn,Cu,Au,又はハンダ等を材料として形成される。
【0036】
具体的に、半導体チップ12としては、サイズが例えば8.5mm×8.5mmの正方形状であり、電極14として約120個のSnバンプを備えた半導体素子を用いる。
回路基板11としては、サイズが例えば40mm×40mmの正方形状であり、電極13としてCu電極を電極14と同じ位置に配置されてなるBTレジン基板を用いる。
【0037】
本例では、回路基板11の電極13に、第1の実施形態による導電性ペースト3を例えばスクリーン印刷により塗布する。
そして、チップマウンタを用いて、回路基板11と半導体チップ12とを対向させて電極13に電極14を位置合わせし、電極13と電極14とを導電性ペースト3により仮固定する。回路基板11及び半導体チップ12をこの状態でオーブン中に設置し、温度を例えば180℃に設定して30分間程度加熱し、導電性ペースト3を硬化させる。これにより、フリップチップ型の半導体装置が作製される。
【0038】
本例では、対向する回路基板11と半導体チップ12との離間距離h1が100μm〜200μm程度である。この程度の離間距離を保って接続することにより、導電性ペースト3は硬化した状態を保ち、対向する回路基板11と半導体チップ12との部位には空隙が形成される。
【0039】
上記のように作製された半導体装置の回路基板11側の引き出し配線を用いて、電極13と電極14との導通状態を調べる試験を行った。その結果、低抵抗で導通していることが確認された。
更に、−25℃〜125℃の温度範囲で温度サイクル試験を行った。具体的には、−25℃で30分間〜+125℃で30分間を1サイクルとし、これを1000サイクル繰り返す熱サイクル試験を実行した。本例の半導体装置では、接続抵抗の変化率が+5%以下という優れた結果を示した。
【0040】
[第2例]
図4は、第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第2例の構成を示す概略断面図である。
本例では、第1例と同様に、回路基板11と半導体チップ12とを対向させ、電極13と電極14とを第1の実施形態による導電性ペースト3により接着固定する。
本例では、対向する回路基板11と半導体チップ12との離間距離h2が、第1例の離間距離h1よりも小さい50μm〜100μm程度である。この程度の離間距離を保って接続することにより、いわゆる毛細管現象により導電性ペースト3から当該導電性ペースト3中の絶縁樹脂3aが流出する。その結果、対向する回路基板11と半導体チップ12との部位との間の領域が絶縁樹脂3aで充填され、回路基板11と半導体チップ12とがより安定に固着される。
【0041】
[第3例]
図5は、第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第3例の構成を示す概略断面図である。
本例では、導電性ペースト3を接続用バンプとして用いる、いわゆるLGA(Land Grid Array)パッケージを例示する。
【0042】
回路基板として、複数層の配線41と、上下層間の配線41を適宜接続する接続部42とが、絶縁層43内に埋設形成され、表面に接続部42を介して配線41と電気的に接続された電極33を備えた回路基板31を用いる。電極33は、例えばSn,Cu,Au,又はハンダ等を材料として形成される。
【0043】
また、回路基板31に接続される半導体チップとして、トランジスタ、コイル、キャパシタ、抵抗素子等の機能素子等が適宜形成され、表面に機能素子等と電気的に接続された電極34を備えた半導体チップ32を用いる。電極34は、例えばSn,Cu,Au,又はハンダ等を材料として形成される。
【0044】
本例では、回路基板31の電極33上に導電性ペースト3からなる接続用バンプを配し、チップマウンタを用いて、回路基板31と半導体チップ32とを対向させて電極33に電極34を位置合わせし、電極33と電極34とを導電性ペースト3により仮固定する。回路基板31及び半導体チップ32をこの状態でオーブン中に設置し、温度を例えば180℃に設定して30分間程度加熱し、導電性ペースト3を硬化させる。そして、回路基板31と半導体チップ32との対向領域を含む部位をアンダーフィル樹脂35により封止し、LGAパッケージを作製する。
【0045】
[第4例]
図6は、第2の実施形態によるフリップチップ型の半導体装置の第4例の構成を示す概略断面図である。
本例では、ハンダバンプを用いたいわゆるBGA(Ball Grid Array)パッケージを例示し、導電性ペースト3をハンダバンプと電極との接続用バンプとして用いる。
【0046】
第3例と同様に、回路基板31と半導体チップ32とを用いる。本例では、回路基板31の電極33上にはハンダバンプ36が配されている。
回路基板31のハンダバンプ36上に導電性ペースト3からなる接続用バンプを配し、チップマウンタを用いて、回路基板31と半導体チップ32とを対向させてハンダ電極36に電極34を位置合わせし、ハンダ電極36に電極34と電極34とを導電性ペースト3により仮固定する。回路基板31及び半導体チップ32をこの状態でオーブン中に設置し、温度を例えば180℃に設定して30分間程度加熱し、導電性ペースト3を硬化させる。そして、回路基板31と半導体チップ32との対向領域を含む部位をアンダーフィル樹脂35により封止し、BGAパッケージを作製する。
ハンダ、特に鉛フリーのハンダは溶融温度が217℃〜220℃程度である。従って、180℃ではハンダバンプ36は溶融しない。本例では、比較的低温でチップ接続が可能となる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態による導電性ペースト3を用いることで、電極間の電気的接続性に優れた信頼性の高い歩留まりに優れた半導体装置を実現することができる。
【0048】
(比較例)
以下、上記した第1及び第2の実施形態の比較例について説明する。
比較例では、第1の実施形態の導電性粒子1と異なり、第1の有機化合物層L1及び第2の有機化合物層L2がこの順で金属粒子Mが被覆していない導電性粒子、例えばSnBiハンダである導電性粒子を用いる。この導電性粒子を、ビスフェノールF型エポキシの30重量部、アミノメチルフェノールのトリグリシジルエーテルの15重量部、酸無水物系硬化剤の35重量部、有機酸フラックスであるグルタル酸の20重量部と混合、撹拌して、導電性ペーストを作製した。
【0049】
上記のように得られた導電性ペーストについて、第1及び第2の実施形態と同様に、粘度評価及び熱サイクル試験評価を行った。
その結果、比較例の導電性ペーストでは、導電性粒子とフラックスとが反応したため、24時間放置後の粘度上昇率は+30%と高い値を示した。
また、比較例の導電性ペーストでは、そのフラックス成分が消費されることにより、導電性粒子による酸化皮膜除去が不足したため、接続抵抗値は、第2の実施形態における導電性ペーストの5倍を示した。
更に、第2の実施形態と同様に熱サイクル試験を行った結果、接続抵抗の変化率が+20%と大きな値を示した。
【0050】
以下、諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0051】
(付記1)導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有することを特徴とする導電材料。
【0052】
(付記2)前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物は、芳香族又は脂肪族を主骨格とすることを特徴とする付記1に記載の導電材料。
【0053】
(付記3)前記第1有機化合物は、一方の末端に前記密着性官能基であるチオール基又は水酸基を、他方の末端に前記第2有機化合物と反応するアミン基又はチオール基を有することを特徴とする付記1又は2に記載の導電材料。
【0054】
(付記4)前記第2有機化合物は、一方の末端に前記活性官能基であるカルボキシル基を、他方の末端にカルボキシル基又はチオール基を有することを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の導電材料。
【0055】
(付記5)前記第1層及び前記第2層は、前記第1有機化合物が第1温度で前記導電体の表面から脱離し、前記第2有機化合物が前記第1温度で前記導電体の表面と接触して反応し、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記第1温度よりも高い第2温度で前記樹脂と反応するものであることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の導電材料。
【0056】
(付記6)回路基板と、
チップ素子と、
前記回路基板の第1電極と、前記チップ素子の第2電極とを電気的に接続する導電材料と
を含み、
前記導電材料は、
導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有することを特徴とする電子デバイス。
【0057】
(付記7)前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物は、芳香族又は脂肪族を主骨格とすることを特徴とする付記6に記載の電子デバイス。
【0058】
(付記8)前記第1有機化合物は、一方の末端に前記密着性官能基であるチオール基又は水酸基を、他方の末端に前記第2有機化合物と反応するアミン基又はチオール基を有することを特徴とする付記6又は7に記載の電子デバイス。
【0059】
(付記9)前記第2有機化合物は、一方の末端に前記活性官能基であるカルボキシル基を、他方の末端にカルボキシル基又はチオール基を有することを特徴とする付記6〜8のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【0060】
(付記10)前記第1層及び前記第2層は、前記第1有機化合物が第1温度で前記導電体の表面から脱離し、前記第2有機化合物が前記第1温度で前記導電体の表面と接触して反応し、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記第1温度よりも高い第2温度で前記樹脂と反応するものであることを特徴とする付記6〜9のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【0061】
(付記11)回路基板の第1電極と、チップ素子の第2電極とを導電材料により電気的に接続するに際して、
第1温度よりも低温の前記導電材料を、前記第1電極と前記第2電極との間に供給する工程と、
前記導電材料を、第1温度よりも高い第2温度に昇温する工程と
を含み、
前記導電材料は、
導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有するものであり、
前記第1温度で、前記第1有機化合物が前記導電体の表面から脱離すると共に前記第2有機化合物が前記導電体の表面と接触して反応し、
前記第2温度で、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記樹脂と反応することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【0062】
(付記12)前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物は、芳香族又は脂肪族を主骨格とすることを特徴とする付記11に記載の電子デバイスの製造方法。
【0063】
(付記13)前記第1有機化合物は、一方の末端に前記密着性官能基であるチオール基又は水酸基を、他方の末端に前記第2有機化合物と反応するアミン基又はチオール基を有することを特徴とする付記11又は12に記載の電子デバイスの製造方法。
【0064】
(付記14)前記第2有機化合物は、一方の末端に前記活性官能基であるカルボキシル基を、他方の末端にカルボキシル基又はチオール基を有することを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0065】
M 金属粒子
A,B 有機化合物
A1,A2,B1,B2 有機官能基
L1 第1の有機化合物層
L2 第2の有機化合物層
1 導電性ペースト
2 バインダ樹脂
3 導電性ペースト
3a 絶縁樹脂
11,31 回路基板
12,32 半導体チップ
13,14,33,34 電極
21,41 配線
22,42 接続部
23,43 絶縁層
35 アンダーフィル樹脂
36 ハンダバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有することを特徴とする導電材料。
【請求項2】
前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物は、芳香族又は脂肪族を主骨格とすることを特徴とする請求項1に記載の導電材料。
【請求項3】
前記第1有機化合物は、一方の末端に前記密着性官能基であるチオール基又は水酸基を、他方の末端に前記第2有機化合物と反応するアミン基又はチオール基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の導電材料。
【請求項4】
前記第2有機化合物は、一方の末端に前記活性官能基であるカルボキシル基を、他方の末端にカルボキシル基又はチオール基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項5】
前記第1層及び前記第2層は、前記第1有機化合物が第1温度で前記導電体の表面から脱離し、前記第2有機化合物が前記第1温度で前記導電体の表面と接触して反応し、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記第1温度よりも高い第2温度で前記樹脂と反応するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電材料。
【請求項6】
回路基板と、
チップ素子と、
前記回路基板の第1電極と、前記チップ素子の第2電極とを電気的に接続する導電材料と
を含み、
前記導電材料は、
導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
回路基板の第1電極と、チップ素子の第2電極とを導電材料により電気的に接続するに際して、
第1温度よりも低温の前記導電材料を、前記第1電極と前記第2電極との間に供給する工程と、
前記導電材料を、第1温度よりも高い第2温度に昇温する工程と
を含み、
前記導電材料は、
導電性粒子と、
前記導電性粒子が分散される樹脂と
を含み、
前記導電性粒子は、導電体と、前記導電体の表面を覆い、当該表面との密着性官能基を有する第1有機化合物を含有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有しており、
前記第2層は、前記導電性粒子の表面に生成する酸化皮膜と反応する活性官能基を有する第2有機化合物を含有するものであり、
前記第1温度で、前記第1有機化合物が前記導電体の表面から脱離すると共に前記第2有機化合物が前記導電体の表面と接触して反応し、
前記第2温度で、前記第1有機化合物及び前記第2有機化合物が前記樹脂と反応することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54444(P2011−54444A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203039(P2009−203039)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】