説明

導電膜又は導電回路の形成方法、及び導電膜又は導電回路形成用加熱炉

【課題】金属微粒子分散液を基材上にパターニング(塗布を含む)して、導電性の良好な導電膜又は導電回路の形成方法を提供する。
【解決手段】基材上に、還元作用を有する有機溶媒を含む金属微粒子分散液をパターニングし、リフロー炉構造の加熱炉内で、該基材上の金属微粒子を不活性ガス雰囲気下で加熱焼成して該金属微粒子を焼結する、基材上の導電膜又は導電回路の形成方法であって、前記加熱炉は基材の搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成され、該昇温ゾーンの一部と本加熱ゾーン内には基材を覆うためのトンネル形状の覆い21が設けられ、該覆い21内には、昇温ゾーンに不活性ガス流抑制バリア壁22、及び本加熱ゾーンの出口近傍に不活性ガス流入抑制バリア壁23が設けられていて、金属微粒子の還元・焼結が、前記有機溶媒蒸気の存在下で行なわれる、基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にパターニング又は塗布した金属微粒子分散液を焼結して得られる導電膜又は導電回路の形成方法、及び導電膜又は導電回路形成用加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材上に導電回路、電極等を形成する目的で、広く導電性ペースト等が用いられている。例えば、特許文献1には、銅微粒子を有機溶媒中に分散させた銅ペーストの塗膜を真空電気炉内に装填し、減圧下でオゾンを導入した酸化性雰囲気中で仮焼することにより有機物を分解除去し、次いで雰囲気を還元性に切り替えて仮焼工程において部分的に酸化された銅薄膜を還元させて最終的に本焼成を行う金属薄膜を形成方法が開示されている。
金属微粒子は一般に表面エネルギーが高いためにその分散溶液中で金属微粒子同士が相互に凝集して、粒径の大きい二次凝集体を形成する傾向がある。従って、金属微粒子間の凝集を防ぐために、その表面保護基として、アルキルアミン、カルボン酸アミド、モノカルボン酸塩等の低分子化合物の他に、ポリエステル、ポリアクリルニトリル等の高分子化合物を使用することができるがこれらの保護基は絶縁物であるので、いずれの化合物も、加熱又は焼成によって完全に消失するのは容易ではない。その結果、金属微粒子インクジェットインクを用いて金属配線を形成する場合の体積抵抗値が下がりにくい原因となる。
【0003】
また、金属微粒子は表面エネルギーが高いので酸化され易く、金属微粒子インクジェットインクを保存する際には、酸素を除去すると共に、空気と遮断して保存する必要がある。特許文献2には、1次粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子の表面に保護層を形成させなくても安定したコロイド状態を維持したインクジェット用インクをインクジェット法により基材に塗布して、金属酸化物を化学変化させることにより、金属含有薄膜を形成する方法が開示されている。特許文献3には、還元剤を含む非水性溶媒中に、金属化合物を添加して金属化合物を還元する金属含有薄膜の形成方法が開示されている。
【0004】
金属微粒子分散液から焼成手段を用いて導電回路を形成する方法としては、まず、ガラス、シリコンウエハー等の基材へ金属微粒子分散液を塗布する。この塗布法としては、基材を回転させつつ基材上に金属コロイドを滴下する方法(スピンコーター法)や、金属コロイドを基材上に噴出する方法(インクジェット法)、スクリーン印刷法等が有効である。そして、金属コロイド塗布後、加熱・焼成して基材上の金属微粒子を焼結し、導電回路を形成することができる。
金属微粒子分散液には通常保護剤が添加されている。該保護剤は、金属コロイド中で金属微粒子の周囲に化学的又は物理的に結合、吸着する化合物で、金属微粒子同士の凝集を抑制し粒径分布を適性範囲に制御し安定化させる機能を有しており、分散剤とも称される。即ち、金属微粒子分散液に保護剤を添加することで、金属コロイドを溶媒に分散させる際に微粒子の良好な分散状態を保持し、金属微粒子を分散状態で基材上に堆積することができる。これまで、上記した各種用途に適用可能な金属微粒子分散液は、種々の金属からなる金属微粒子と、保護剤としてポリビニルピロリドン(以下、PVPということがある。)等のポリマーや4級アンモニウム塩を適用するものが出願されている(特許文献4〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−308119号公報
【特許文献2】特開2004−277627号公報
【特許文献3】特開2006−257517号公報
【特許文献4】特開平11−151436号公報
【特許文献5】特開2000−279818号公報
【特許文献6】特開2002−001095号公報
【特許文献7】特開2005−307323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属微粒子分散液中に含有される金属微粒子は、その製造工程の関係から、金属微粒子の表面酸化を完全に避けることは困難である。従って、金属微粒子分散液中には、金属微粒子の表面酸化を還元するための還元剤が含まれている。しかし、前述のスピンコーター法やインクジェット法などの少量塗布法では、還元剤が効果を発揮する温度より低温で揮発蒸発してしまい、分散液中の還元剤含有量に対して還元作用が効果的に発揮されず、その結果、不活性雰囲気中での200℃程度の加熱焼成では良好な導電性を有する導電回路が得られないという問題があった。
上記した特許文献1、2をはじめ、従来の製造方法では、微粒子分散液を250〜350℃に近い高温で熱処理をしなければ、導電性の高い導電回路を得ることができず、また、焼成処理の際に、水素ガス等の取り扱いの危険な還元剤(ガス)の使用を必要とする場合が多いという問題点があった。また、上記加熱による焼成を炉内等で行う場合、炉内の酸素濃度を極めて低濃度に管理することが困難であるという問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、少量塗布法の場合においても、水素ガスを使用せず窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中での加熱焼成のみで導電性を有する導電膜又は導電回路を得る方法を検討した。その結果、金属微粒子分散液をパターニング又は塗布した基材を焼成する際にある程度の密閉性を有し、不活性ガス雰囲気にある空間域内で加熱し、該空間域内で金属微粒子分散液中に含有されていた還元作用を有する有機溶媒を蒸発させて該有機溶媒液体および蒸気が存在する雰囲気で還元・焼成すると良好な導電性を有する導電膜又は導電回路が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(17)に記載する発明を要旨とする。
(1)基材上に、還元作用を有する有機溶媒を含む金属微粒子分散液をパターニング又は塗布し(工程1)、
リフロー炉構造の加熱炉内で、該基材上の金属微粒子を不活性ガス雰囲気下で加熱焼成して該金属微粒子を焼結する(工程2)、
基材上の導電膜又は導電回路の形成方法であって、
(i)工程2において使用される前記加熱炉は基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、
該覆い(A)内には、昇温ゾーンと本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていて、
(ii)覆い(A)内のバリア壁(B)とバリア壁(C)間の空間(I)における金属微粒子の還元・焼結が、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒液体および蒸気の存在下で行なわれることを特徴とする、基材上の導電膜又は導電回路の形成方法(以下、「第一の態様」ということがある)。
(2)前記覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、側面方向の内面幅が80〜1000mm、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から3〜30mm、及び側面下部と無端ベルト表面間の距離が0.5〜3mmであることを特徴とする、前記(1)に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(3)前記覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から1.5〜4mmの距離、又は基材表面から0.5〜3mmの距離にあることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(4)前記覆い(A)中のバリア壁(B)およびバリア壁(C)間の空間(I)における、還元作用を有する有機溶媒蒸気濃度が13体積%以上であることを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(5)前記覆い(A)中の壁(B)及び壁(C)間の空間(I)における、酸素ガス濃度が50ppm以下であることを特徴とする、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(6)前記不活性ガスが、窒素ガス純度99.99%以上、酸素ガス含有濃度50ppm以下、露点−50℃以下であることを特徴とする、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(7)前記本加熱ゾーンにおける基材表面温度が140〜300℃であり、加熱時間が20分以上であることを特徴とする、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(8)前記工程1における、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒の体積含有率が、20〜60体積%であることを特徴とする、前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(9)前記還元作用を有する有機溶媒が、分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコールから選択された1種又は2種以上からなる有機化合物であることを特徴とする、前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(10)前記多価アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)ないし(9)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(11)前記工程1における前記金属微粒子分散液中の金属微粒子の一次粒子の平均粒径が500nm以下であることを特徴とする、前記(1)に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(12)前記金属微粒子分散液中の金属微粒子がニッケル、銅、コバルト、金、及び銀から選択された1種または2種以上であることを特徴とする、前記(1)又は(11)に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(13)前記工程1における前記金属微粒子分散液のパターニング又は塗布方法が、スピンコート法、インクジェット法、微少液滴塗布法、スプレー塗布法、スポイト滴下、及びピペット滴下から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)、(11)、及び(12)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
(14)前記工程1における基材上への金属微粒子分散液のパターニング又は塗布量が3〜100μl/cmであることを特徴とする、前記(1)、(11)、(12)及び(13)のいずれかに記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【0008】
(15)基材上に金属微粒子分散液がパターニング又は塗布された金属微粒子を加熱焼結して導電膜、又は導電回路を形成する、リフロー炉構造の加熱炉であって、
該加熱炉は、基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、
該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、該覆い(A)内には、昇温ゾーンと、本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていることを特徴とする、加熱炉(以下、「第二の態様」ということがある)。
(16)前記覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、トンネル形状の側面方向の内面幅が80〜1000mmであり、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から3〜30mmであり、側面下部と無端ベルト表面間の距離が0.5〜3mmであることを特徴とする、前記(15)に記載の加熱炉。
(17)前記覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から1.5〜4mmの距離、又は基材表面から0.5〜3mmの距離にあることを特徴とする、前記(15)又は(16)に記載の加熱炉。
【発明の効果】
【0009】
基材上にパターニング又は塗布された金属微粒子分散液中の金属微粒子を、リフロー炉構造の加熱炉内の昇温ゾーンの少なくとも一部と本加熱ゾーンにおいて、トンネル形状の覆い(A)を配設して、該覆い(A)内に更に不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)及びバリア壁(C)を設けることにより、覆い(A)中のバリア壁(B)およびバリア壁(C)間の空間(I)がある程度の密閉性を有する空間域となり、不活性ガス雰囲気下で、加熱処理により、金属微粒子分散液中に含有されていた還元作用を有する有機溶媒蒸気が連続的に発生して、該液体および蒸気の存在下に加熱焼成することが可能になり、その結果、焼結された導電膜、及び導電回路は良好な導電性を有する。
また、加熱炉内の昇温ゾーンの少なくとも一部と本加熱ゾーンにおいて、上記密閉性を有する空間域を有するリフロー炉構造の加熱炉は、基材上にパターニング又は塗布された金属微粒子分散液中の金属微粒子を加熱、焼結により良好な導電性を有する導電膜、及び導電回路を形成するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の加熱炉の概念を示す側面図である。
【図2】本発明の加熱炉内に配設される覆い(A)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1〕第一の態様である「導電膜又は導電回路の形成方法」について
第一の態様である「導電膜又は導電回路の形成方法」は、
基材上に、還元作用を有する有機溶媒を含む金属微粒子分散液をパターニング又は塗布し(工程1)、
リフロー炉構造の加熱炉内で、該基材上の金属微粒子を不活性ガス雰囲気下で加熱焼成して該金属微粒子を焼結する(工程2)、
基材上の導電膜又は導電回路の形成方法であって、
(i)工程2において使用される前記加熱炉は基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、
該覆い(A)内には、昇温ゾーンと本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていて、
(ii)覆い(A)内のバリア壁(B)とバリア壁(C)間の空間(I)における金属微粒子の還元・焼結が、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒液体および蒸気の存在下で行なわれることを特徴とする。
以下、本発明の導電膜又は導電回路の形成方法における、(A)工程1、(B)工程2について説明する。
【0012】
(A)工程1
工程1は、基材上に、還元作用を有する有機溶媒を含む金属微粒子分散液をパターニング又は塗布する工程である。
(1)金属微粒子分散液について
(i)金属微粒子の製造
金属微粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、一次粒子の平均粒径が、好ましくは500nm以下、より好ましくは1〜500nmの金属微粒子が形成できれば電解還元と無電解還元のいずれをも採用することができる。該電解還元と無電解還元方法は、該金属微粒子の有機物分散剤の存在下に公知の方法を採用することができる。この場合金属イオンは、液相還元されて有機物分散剤で覆われた金属微粒子として水溶液中に分散して存在する。
工程1において、使用可能な金属イオンとして、例えば金属水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、蟻酸銅、アンモニウム塩、クエン酸塩、しゅう酸塩、グルコン酸塩、硝酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、酸化金属、オレイン酸塩、アセチルアセトン塩等から選択された1種又は2種以上を使用することができる。還元反応水溶液中の好ましい金属イオン濃度は、0.01〜4.0モル/リットルである。金属イオン濃度が0.01モル/リットル未満では、金属粒子の生成量が少なく、還元反応水溶液からの金属微粒子の収率が低下するという不都合を生じ、4.0モル/リットルを超えると生成される金属微粒子間での粗大な凝集がおこるおそれがあり好ましくない。より好ましい金属イオン濃度は、0.05〜0.5モル/リットルである。
【0013】
電解還元の場合には、例えば、金属イオンを含む水溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることによりカソード付近に、後述する有機物分散剤でその表面が覆われた金属微粒子を形成することができる。無電解還元は、例えば、有機物分散剤と金属イオンとを含む水溶液中に還元剤を添加して還元反応を行い、有機物分散剤でその表面が覆われた金属微粒子を形成することができる。
還元剤の例としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ジメチルアミノボラン、トリメチルアミノボラン等が挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。尚、還元反応水溶液には、反応溶媒として水以外の親水性溶液を配合してもよい。
【0014】
上記還元反応で得られる金属微粒子の一次粒子の平均粒径の制御は、例えば還元反応により金属微粒子を形成する場合には、還元反応に使用する金属イオン、有機物分散剤、還元剤の種類と配合濃度の調整、及び金属イオンを還元反応させる際の、かく拌速度、温度、時間、pH等の調整により行うことが可能である。上記した電解還元により得られる金属微粒子は、一次粒子の平均粒径が好ましくは500nm以下、より好ましくは1〜500nm程度の範囲にあり、その形状は凝集性の少ない微粒子である。
ここで、一次粒子の平均粒径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒径とは、一次粒子の数平均粒径を意味する。
【0015】
(ii)有機物分散剤
還元反応により金属微粒子を形成する際に、有機物分散剤を使用する。有機物分散剤は、水に対して溶解性を有していると共に、反応系中で析出した金属微粒子の表面を覆うように存在して、金属微粒子の凝集を防止して分散性を良好に維持する作用を有する。
有機物分散剤の添加量は、還元反応水溶液から生成する金属微粒子の濃度にもよるが、還元反応水溶液中の金属原子100重量部に対して、0.1〜500重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。有機物分散剤の添加量が前記0.1未満では凝集を抑制する効果が十分に得られない場合があり、一方、前記500重量部を超える場合には、分散性に不都合がなくとも、微粒子分散水溶液を塗布後、乾燥・焼成時に、過剰の有機物分散剤が、金属微粒子の焼結を阻害して、焼結金属の緻密さが低下する場合があると共に、有機物分散剤の焼成残渣が、導電膜又は導電回路中に残存して、導電性を低下させるおそれがある。
本発明の有機物分散剤は上記分散作用を奏するものであれば、特に制限されるものではない。
【0016】
前記有機物分散剤としては、その化学構造にもよるが分子量が100〜100,000程度の、水に対して溶解性を有し、かつ水溶液で金属イオンから還元反応で析出した金属微粒子を良好に分散させることが可能なもので、かつ炭素原子、水素原子、酸素原子、及び窒素原子から選択された2種以上の原子からなる化合物(高分子化合物も含む)の分散剤が好ましい。
上記有機物分散剤として好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
【0017】
上記例示した有機物分散剤化合物の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。
ここで、前記「該電解還元と無電解還元方法は、該金属微粒子の有機物分散剤の存在下に公知の方法を採用することができる。」とは、有機物分散剤を予め溶解した反応系中に、金属イオンと還元剤とを添加してもよく、有機物分散剤、金属イオン、及び還元剤をそれぞれ別の容器で水溶液に溶解させ、更に他の反応容器にそれぞれを添加して還元反応を行ってもよい。有機物分散剤は金属微粒子の分散安定性を向上させ、金属微粒子生成の収率を向上する効果があるので、金属微粒子が形成される際、又は直後に反応系に存在していることが好ましい。
【0018】
(iii)金属微粒子の回収
上記還元反応終了後に、反応水溶液中に凝集促進剤を添加して有機物分散剤の分散作用を減じ、粗金属微粒子を該水溶液中で沈殿(スラリー状の濃縮も含む)させると共に必要により水、又はアルコール溶液等で洗浄して回収、又は粗金属微粒子を該水溶液中で沈殿させて回収後に必要により水、又はアルコール溶液等で洗浄して、その表面が有機物分散剤で覆われた金属微粒子を得ることが出来る。以下に、前記した凝集促進剤について説明する。
このような凝集促進剤としては、酸化性物質、又はハロゲン化合物を例示することができる。前記酸化性物質としては、酸素ガス、過酸化水素、硝酸等が例示できる。
前記ハロゲン化合物としては、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエタン、1,1−ジクロルエチレン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、四塩化アセチレン、エチレンクロロヒドリン、1,2−ジクロルプロパン、塩化アリル、クロロプレン、クロルベンゼン、塩化ベンジル、o−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼン、p−ジクロルベンゼン、α−クロルナフタリン、β−クロルナフタリン、ブロモホルム、及びブロムベンゼンの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。このような凝集促進剤を使用することにより、還元反応水溶液から金属微粒子を効率よく分離、回収することができる。
前記回収操作は遠心分離等の操作によりろ過して回収される。液相還元で還元剤を使用した場合等、不純物を除去する必要がある場合には、有機物分散剤が完全に除去されないような条件で、水又はアルコールによる洗浄を行い、不純物を除去して有機物分散剤でその表面が覆われた金属微粒子を得ることができる。
【0019】
(iv)金属微粒子の再分散
金属微粒子分散溶液(以下、「分散溶液」ということがある)は、上記した製造方法等により得られる、一次粒子の平均粒径が好ましくは、好ましくは500nm以下、より好ましくは1〜500nmである金属微粒子を分散溶媒に分散させて、その濃度が2〜70質量%となる分散溶液を得る。
尚、金属微粒子濃度が2質量%未満では、急速加熱による焼結の機械的強度が低くなるという不都合を生じ、一方、70質量%を超えると高い空隙率の多孔質金属薄膜を得ることが困難となるおそれがある。分散溶液に使用可能な分散溶媒は、還元作用を有する有機溶媒の体積含有率が、20〜60体積%であることが好ましい。
該有機溶媒の体積含有率が、20体積%未満では、覆い(A)をしても還元溶媒による充分な還元性雰囲気が形成されないので金属微粒子表面の還元反応が充分に進行せず焼結が不十分になるおそれがある。一方、該有機溶媒の体積含有率が60体積%を超えると、該有機溶媒の蒸発が充分に進行せず、200℃程度の焼成では該溶媒成分が導電膜に残存して導電性を低下するおそれがある。
また、前記還元作用を有する有機溶媒としては、分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコールから選択された1種又は2種以上からなる有機化合物であることが好ましく、沸点が120℃以上であることが好ましい。
【0020】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0021】
分散溶媒の前記分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコール以外の還元性を有しない成分としては、アミド基を有する有機溶媒が例示できる。
前記アミド基を有する有機溶媒としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。
【0022】
分散溶媒の他の成分としては、一般式R−O−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物、一般式R−OH(Rは、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール、R−C(=O)−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物、及び一般式R−(N−R)−R(R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基、又は水素で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物が例示できる。
前記エーテル系化合物の具体例として、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びアリルエーテルの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、及び2−メチル2−プロパノールの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記ケトン系化合物の具体例として、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトンの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記アミン系化合物の具体例として、トリエチルアミン、及び/又はジエチルアミンが例示できる。
【0023】
(v)金属微粒子分散溶液の撹拌による分散性の向上
かくして得られた分散溶液中には、一次粒子の平均粒径が好ましくは500nm以下、より好ましくは1〜500nmの金属微粒子が少なくともその表面の一部が有機物分散剤で覆われて分散液中に、二次凝集性が少ない状態で分散されているが、更に撹拌して分散性を向上するのが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
このようにして得られた分散溶液は、金属微粒子が有機物分散剤に覆われた状態で分散溶液中に分散している。このような有機物分散剤が金属微粒子を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、高分子分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が金属微粒子の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに金属微粒子同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0024】
(2)基材上への金属微粒子分散溶液の塗布
(i)基材
分散溶液を塗布する被処理基材である基材には、通常用いられるガラス基材や耐熱性合成樹脂からなる基材等を挙げることができ、その形状としては平板、立体物、フィルム等が挙げられる。耐熱性合成樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂等を用いることができる。この被処理基材は、分散溶液を塗布する前に、純水や超音波等を用いて塗布面を洗浄することが好ましい。
【0025】
(ii)金属微粒子分散液の基材上への塗布について
工程1における分散溶液のパターニング又は塗布方法としては、スピンコート法、インクジェット法、微少液滴塗布法、スプレー塗布法、スポイト滴下、及びピペット滴下から選択された1種又は2種以上が例示できる。
基材上の金属微粒子分散液の厚みは、分散溶液中の金属微粒子の濃度、空隙率、導電膜又は導電回路の厚み等により変わるものであり、一概に決定することはできないが、焼結性、空隙率、機械的強度等を考慮すると基材上の塗布液の厚みが、1μm〜3mmの範囲であることが望ましい。また、基材上への金属微粒子分散液のパターニング又は塗布量が3〜100μl/cmであることが好ましい。前記塗布量が3μl/cm未満では沸点に至る以前のより早期に還元剤が蒸発して、粒子表面の還元反応が進行しないで酸化物状態に維持されて、焼結が進行しないおそれがある。一方、前記塗布量が100μl/cmを超えると蒸発速度が抑制されて200℃程度での焼結では導電膜中に還元溶媒が残存して、導電性を阻害するおそれがある。
【0026】
(B)工程2について
工程2は、リフロー炉構造の加熱炉内で、工程1で得られた基材上の金属微粒子を不活性ガス雰囲気下で加熱焼成して該金属微粒子を焼結する工程であって、
(i)工程2において使用される前記加熱炉は基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、
該覆い(A)内には、昇温ゾーンと本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていて、
(ii)覆い(A)内のバリア壁(B)とバリア壁(C)間の空間(I)における金属微粒子の還元・焼結が、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒液体および蒸気の存在下で行なわれることを特徴とする。
【0027】
(1)工程2で使用する加熱炉
工程2において使用される加熱炉は、後述する本発明の「第二の態様の加熱炉」と同様である。
工程2で使用する加熱炉は、昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、更に該覆い(A)内には、昇温ゾーンと本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられているのが特徴である。
前記覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、側面方向の内面幅が好ましくは80〜1000mm、より好ましくは150〜500mmであり、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜20mmであり、側面下部と無端ベルト表面間の距離が好ましくは0.5〜3mmであり、より好ましくは0.5〜1mmである。
又、前記覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から好ましくは1.5〜4mm、より好ましくは1.5〜2mmの距離、又は基材表面から好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.5〜1.5mmの距離である。
このように、覆い(A)中のバリア壁(B)およびバリア壁(C)間の空間(I)がある程度の密閉性を有する空間(I)域となり、該空間(I)内において不活性ガス雰囲気下で、加熱処理により、金属微粒子分散液中に含有されていた還元作用を有する有機溶媒蒸気が連続的に発生するので、その結果該上記の存在下に加熱焼成することが可能となり、焼結された導電膜、及び導電回路は良好な導電性を有するようになる。
【0028】
(2)金属微粒子の還元・焼結方法
前記工程1で得られた金属微粒子分散液がパターニング又は塗布された基材は、図1に示すように、加熱炉の搬入口6から搬送用の無端ベルト2上に搭載され、不活性ガス雰囲気下にある昇温ゾーン、本過熱ゾーン、及び冷却ゾーンを経て、還元・焼結された基材上の導電膜、又は導電回路は搬出口7から回収される。
チャンバー内は、基材上の金属微粒子を還元・焼結するに先立ち、予め不活性ガス供給器より窒素ガス等の不活性ガスを供給して、チャンバー1内を不活性ガス雰囲気にしておくことが望ましい。尚、加熱炉の構造によっては、チャンバー1内全体を不活性ガス雰囲気にする必要はなく、基材が搬入されて、基材上の金属微粒子が還元・焼結される、昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンのみが不活性ガス雰囲気になっていてもよい。
前記不活性ガスとして使用する不活性ガスは、実用上窒素ガスが好ましく、純度99.99%以上、酸素ガス含有濃度50ppm以下、露点−50℃以下であることがより好ましい。
【0029】
無端ベルト2上に搭載された基材5は、昇温ゾーンで昇温されるが、昇温ゾーンにおける昇温条件は、室温から、金属微粒子の焼結が進行する140〜300℃程度が好ましい。該昇温は、昇温ヒータ11(A)、及び/又は昇温ヒータ11(B)により行なわれるが、昇温は、これらの昇温ヒータの制御により2段階、又は3段階以上の複数段により行っても良い。尚、昇温ゾーンにおいて、バリア壁(B)の上流側にある覆い(A)の先端形状を、冷却ゾーンにおける図1、2に示すように、不活性ガスの侵入を抑制するために、上流側に向かって下方に10〜45度程度の傾斜角度を有す形状とすることができる。この場合、覆い(A)の傾斜形状部先端と、無端ベルト表面又は基材表面との垂直方向の距離は、バリア壁(B)の側面方向の下部端面と、無端ベルト表面又は基材表面との距離と同様とすることができる。
基材は昇温ゾーンを経て本加熱ゾーンに搬入され、本加熱ゾーンにおいて還元・焼結は完結する。尚、分散溶液中に分散している金属微粒子はその表面等が非常に酸化を受け易いので、実際には金属微粒子が焼結される際の初期の段階で金属表面の金属酸化物の還元反応も進行していると推定される。
本加熱ゾーンにおける焼結条件は、金属微粒子の種類とその粒子径にもよるが、本加熱ゾーンにおける基材の表面温度が好ましくは140〜300℃で、より好ましくは190〜230℃で、加熱時間が好ましくは20分以上、より好ましくは30〜50分である。
【0030】
覆い(A)中のバリア壁(B)及びバリア壁(C)間の空間(I)においては、該空間に搬入されてくる基材上の金属微粒子分散溶液中の還元作用を有する有機溶剤が連続的に蒸発し、且つ該蒸気はバリア壁(B)及びバリア壁(C)により、無端ベルト2の進行方向、又はその反対方向の流れが制約を受け、また覆い(A)と無端ベルト2間のクリアランスが比較的少ないので、該蒸気の覆い(A)の側面下部からの流失も抑制されるので、前記覆い(A)中の壁(B)及び壁(C)間の空間(I)における、還元作用を有する有機溶媒蒸気濃度を比較的高い濃度に維持することが可能となり、該濃度を13体積%以上に維持することが可能になる。
更に、空間(I)において、還元作用を有する有機溶媒蒸気の発生に伴い、酸素ガス濃度を50ppm以下とすることが可能になる。
又、冷却ゾーン近傍の覆い(A)の下流側後端形状は図1、2に示すように、不活性ガスの侵入を抑制するために、前記昇温ゾーンに記載したのと同様の下方に傾斜角度を有する形状とすることができる。
尚、このような傾斜角度は、昇温ゾーンにおける覆い(A)の先端部と本加熱ゾーンにおける覆い(A)の後端部にも併せて設けることにより不活性ガスの空間(I)への侵入を一層抑制することが可能である。
本加熱ゾーンでの焼結が終了したら、基材は冷却ゾーンに搬入される。本発明における冷却ゾーンにおける冷却方法は、特に制限を受けるものではなく、例えば図1に示す冷却装置13(a)、(b)から冷却用の不活性ガスを基材上に吹き付けたり、冷却装置13(a)、(b)に冷却水を供給して間接熱交換により冷却したりすることが可能である。
【0031】
(3)導電膜、導電回路
第一の態様である「導電膜又は導電回路の形成方法」においては、不活性ガス雰囲気下で、加熱処理により、金属微粒子分散液中に含有されていた還元作用を有する有機溶媒蒸気が連続的に発生して、該液体および蒸気の存在下に加熱焼成することが可能になり、その結果、焼結された導電膜、及び導電回路は良好な導電性を有する。このような導電膜、導電回路は、導電性に優れるので、電極、配線、電子回路等に好適に使用することができる。
【0032】
〔2〕第二の態様である「加熱炉」について
本発明の第二の態様である「加熱炉」は、基材上に金属微粒子分散液がパターニング又は塗布された金属微粒子を加熱焼結して導電膜、又は導電回路を形成する、リフロー炉構造の加熱炉であって、
該加熱炉は、基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、
該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、該覆い(A)内には、昇温ゾーンと、本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていることを特徴とする。
【0033】
(i)リフロー炉構造の加熱炉
リフロー炉は、一般に電子部品またはプリント配線基材に対して、接続する個所に予めはんだを供給しておき、該炉の中にプリント配線基材を搬送ベルトで搬送し、はんだ付けを行うために使用されている。該リフロー炉は、一般に搬入口から搬出口に至る搬送経路に沿って、加熱ゾーン、冷却ゾーンなどからなっていて、これらの複数のゾーンがインライン状に配列されていて、基材の表面温度を所望の温度プロファイルにしたがって制御することによって、所望のはんだ付けを行うことができる構造になっている。
本発明においては、このようなリフロー炉構造の炉内の搬送ベルト上に特定形状の覆いが設けられた加熱炉を使用して、はんだ付けを行う代わりに、基材上にパターニング又は塗布された金属微粒子分散液中の金属微粒子を還元・焼結して、基材上に導電膜又は導電回路を形成する。
本発明の加熱炉の好ましい態様を、図1、2を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の加熱炉の概念を示す側面図の例であり、図2は、本発明の加熱炉内に配設される覆い(A)の斜視図の例である。
図1に示す加熱炉は、搬送路を形成する無端ベルト2、チャンバー1内を不活性ガス雰囲気にする不活性ガス供給器4、並びに、昇温ヒータ11(a)、(b)で昇温される昇温ゾーン、本加熱ヒータ12(a)、(b)で加熱される本加熱ゾーン、及び冷却装置12(a)、(b)により冷却される冷却ゾーンがチャンバー1内に配設されている。無端ベルト2は、複数のローラ3に掛け渡されて矢印の方向に稼働されていて、無端ベルトベルト2上に搭載された基材を搬送する。
無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)21が設けられていて、該覆い(A)21内には、昇温ゾーンに不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)22、及び本加熱ゾーンの出口近傍に不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(C)23が設けられている。
【0034】
(ii)チャンバー
本発明の加熱炉において、該加熱炉のチャンバー1の構造は、基材上にパターニング又は塗布された金属微粒子分散液中の金属微粒子が焼結されて導電性の高い導電膜又は導電回路が形成される構造のものであれば特に制限を受けないが、昇温ゾーン及び本加熱ゾーンを不活性ガス雰囲気にするには、各ゾーンをチャンバー内に設けると共に、不活性ガス供給器よりチャンバー1内に不活性ガスを供給することにより、チャンバー内を不活性ガス雰囲気にして、酸素濃度を減少させることにより、金属微粒子を還元・焼結させて導電性の高い導電膜又は導電回路の形成が可能になる。
【0035】
(iii)無端ベルト
基材を昇温ゾーン及び本加熱ゾーンに搬送するには無端ベルト2が使用される。
無端ベルト2は複数のローラ3に掛け渡されていて、矢印の方向に駆動されていて、搬入口6で無端ベルト2上に搭載された、分散溶液が塗布等された基材は、昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンへ搬送される間に、焼結処理され、搬出口7からか回収される。
尚、ローラ3の回転は、例えば、駆動モータからギア、チェン等の伝導手段を介して複数のローラ3のうちいずれかの回転軸を回転させることができ、また回転速度の調整により、搬送速度を任意に調整することが可能である。
(iv)不活性ガス供給器
窒素ガス等の不活性ガス供給器4は、チャンバー1内を不活性ガス雰囲気にするために不活性ガスを供給する装置である。該不活性ガス供給器4は、図1においてはチャンバー1内に配設してあるが、チャンバー1外に配設することもできる。チャンバー1内に供給する不活性ガスとしては、窒素ガスが好ましく、純度99.99%以上、酸素ガス含有濃度50ppm以下、露点−50℃以下である窒素ガスであることがより好ましい。
また、基材上の金属微粒子を還元・焼結している間、不活性ガス供給器から不活性ガスの供給を継続することにより、搬入口6と搬出口7からの空気の侵入を防止して、チャンバー1内の酸素ガス濃度を低減化することができる。
【0036】
(v)昇温ゾーン
昇温ゾーンは、昇温ヒータ11(a)及び/又は昇温ヒータ11(b)により、基材搬送導路における無端ベルトの下面側、又は上面側から、金属微粒子が焼結する温度、例えば160〜300℃程度まで加熱・昇温するゾーンである。加熱手段としては、赤外線ヒータ、ハロゲンランプ等のリフロー炉で使用されている公知の加熱手段が採用できる。図1において、昇温ヒータは上下それぞれ3ユニットより形成されているが、該ユニット数に特に制限はなく、例えば焼結の目的により、1〜4ユニットとすることもできる。尚、上記昇温ヒータとしては、無端ベルトの下面側の昇温ヒータ11(b)のみの使用でも可能であるが、無端ベルトの上面側の予備加熱、昇温速度、加熱温度制御等を考慮すると、昇温ヒータ11(a)及び昇温ヒータ11(b)を使用して、無端ベルトの上面側及び下面側の両面から昇温することも望ましい。
又、昇温ヒータ11(a)、昇温ヒータ11(b)は、各ユニットをそれぞれ別個に温度制御することにより、昇温ゾーンを一定速度で昇温したり、2段階で昇温したりするような制御も可能である。
尚、昇温ゾーン、及び後述の本加熱ゾーン温度条件の選択は、金属微粒子の焼結温度と共に、選択する分散液中の還元作用を有する有機溶媒が昇温ゾーン、及び本加熱ゾーンで容易に蒸発するように、その沸点(又は蒸気圧)も考慮して行うことが望ましい。
【0037】
(vi)本加熱ゾーン
本加熱ゾーンは、本加熱ヒータ12(a)及び/又は本加熱ヒータ12(b)により、基材搬送導路における無端ベルトの下面側、又は上面側から、例えば140〜300℃程度に本加熱するゾーンである。加熱手段としては、昇温ヒータと同様に赤外線ヒータ、ハロゲンランプ等のリフロー炉で使用されている公知の加熱手段が採用できる。図1において、本加熱ヒータは上下それぞれ3ユニットより形成されているが、該ユニット数に特に制限はなく、例えば焼結の目的により、1〜4ユニットとすることもできる。尚、上記本加熱ヒータとしては、無端ベルトの下面側の本加熱ヒータ12(b)のみの使用でも可能であるが、無端ベルトの上面側の予備加熱、昇温速度、加熱温度制御等を考慮すると、本加熱ヒータ(a)及び本加熱ヒータ(b)を使用して、無端ベルトの上面側及び下面側の両面から昇温することも望ましい。
(vii)冷却ゾーン
冷却ゾーンでは、例えば図1に示す冷却装置13(a)、(b)から冷却用の不活性ガスの吹き付け、冷却装置13(a)、(b)に冷却水を通じた間接熱交換等により冷却する。
尚、本加熱により焼結された焼結金属が酸化を受けない場合には、冷却ゾーンをチャンバー外の搬送ゾーンに設けて冷却することも可能である。冷却後、基材上の導電膜又は導電回路は搬出口7より回収される。
【0038】
(viii)覆い(A)
図1、2に示すように、前記昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、該覆い(A)内には、昇温ゾーンに不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、及び本加熱ゾーンの出口近傍に不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(C)が設けられている。
該覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、トンネル形状の側面方向の内面幅が好ましくは80〜1000mm、より好ましくは150〜500mmであり、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜20mmであり、側面下部と無端ベルト表面間の距離が好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.5〜1mmである。また、無端ベルト進行方向の覆い(A)の長さは、特に制限されるものではないが充分な還元・焼結を行うために、好ましくは1500mm以上、より好ましくは1500〜4000mmである。
このような覆い(A)を設けることにより、金属微粒子の還元・焼結が不活性ガス雰囲気下に、更に前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒液体および蒸気の存在下で行なわれることにより、金属微粒子表面に微量に存在する酸化金属の還元反応を進行させて、導電性の高い導電膜、又は導電回路を形成することができる。
【0039】
(ix)バリア壁(B)及びバリア壁(C)
前記覆い(A)内には、図1、2に示すように、昇温ゾーンに不活性ガスの流入を抑制すると共に、還元作用を有する有機溶媒蒸気の流出を抑制するバリア壁(B)、及び本加熱ゾーンの出口近傍に不活性ガスの流入を抑制すると共に、還元作用を有する有機溶媒蒸気の流出を抑制するバリア壁(C)が設けられている。バリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から好ましくは1.5〜4mm、より好ましくは1.5〜2mmの距離、又は基材表面から好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.5〜1.5mmの距離である。また、覆い(A)の上流側先端と下流側後端には、第一の態様に記載したのと同様の傾斜形状を設けることができる。
覆い(A)内にバリア壁(B)及びバリア壁(C)のような壁を配設することにより、覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)間の空間(I)の還元・焼結を受けるゾーンは、連続的に搬送されてくる基材上の分散液中の還元作用を有する有機溶媒蒸気が連続的に発生して、還元・焼結を受けるゾーンにおいて還元作用を有する有機溶媒蒸気濃度を維持することが可能になる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1〜3、及び比較例1において、銅微粒子分散溶液を調製して、基材に塗布後、窒素ガス雰囲気下に昇温ゾーンと本加熱ゾーンにおいて、分散液中の還元作用を有する有機溶媒を蒸発させて、還元性有機溶媒液体および蒸気の存在下で還元・焼結を行い、得られた焼結膜の評価を行った。
尚、基材上の銅微粒子の焼結に用いた加熱炉と、焼結で得られた焼結膜の電気抵抗値の測定法は下記の通りである。
(1)基材の還元・焼結方法
実施例1〜3において、基材上の銅微粒子の還元・焼結に用いた加熱炉は、図1に示す、電子回路基材等をはんだ付けする際に用いられる公知のリフロー炉構造の炉内に本発明の「覆い」を配設した加熱炉である。該加熱炉は、搬送装置である無端ベルト上に銅微粒子分散溶液が塗布された、厚みが約0.5mmの基材(以下、単に基材という)を搭載して、搬送導路を構成するトンネル内の昇温ゾーンと本加熱ゾーンの上下に2対の昇温ヒータとして赤外線ヒータを配設し、不活性ガス雰囲気下に、昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンを搬送可能な構造の加熱炉である。冷却ゾーンでは冷媒として水を用いた間接熱交換による冷却手段を用いた。該加熱炉内には図1に示す位置に、図2に示すような「覆い」が設けられている。尚、図2における本加熱ゾーン先端近傍の傾斜は後述するように実施例1にのみ設けられ、実施例2、3においてこのような傾斜部は設けなかった。
該覆い(A)は該炉の側面(ベルト進行方向の左右側面)に固定されていて、側面方向の内面幅は、100mm、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から6mmであり、ベルト進行方向の長さは3000mmである。
覆い(A)内に設けられている、図1、2に示すバリア壁(B)及びバリア壁(C)は、覆い(A)に、下端面を除く外周面がシールされるように固定されていて、無端ベルト2の進行方向と垂直な下部端面と無端ベルト(又は基材)の間のみにそれぞれ開口部が存在している。
覆い(A)のベルト進行方向の左右側面側の下部端面が無端ベルト表面からそれぞれ約1mmの距離にあり、バリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面下部と基材表面間の距離はそれぞれ約2mmの距離にある。
バリア壁(B)は昇温ゾーンにおいて、基材上の還元性の有機溶剤であるエチレングリコールの蒸気圧が100mmHgとなる140℃となる近傍に設けられている。
【0041】
尚、実施例1においてのみ本加熱ゾーンの終了部近傍の覆い(A)の先端は図1、2に示すような傾斜角度(水平面から下方に30度)を設け、その先端部と無端ベルト表面間の距離を2mmとして、窒素ガスの流入を抑制すると共に、還元性有機ガスの流出を抑制して、銅微粒子の還元・焼結が進行するゾーンにおいて、後述する還元作用を有する有機溶媒(エチレングリコール)蒸気濃度を維持できるようにした。
覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)間における、昇温ゾーンの一部から本加熱ゾーンにおいて、分散液中のエチレングリコールが全て蒸発するので、これらのゾーンにおいて、雰囲気中の少なくとも13体積%以上は還元作用を有するエチレングリコール蒸気であり、他の殆どは窒素ガスであり、酸素ガスは50ppm以下である。該エチレングリコール蒸気の濃度の確認は、覆い内の気体を注射針を用いてサンプリング後ガスクロマトグラフィーにかけ還元溶媒ガスを理想気体として体積分率を算出して確認した。また、同様に酸素ガス濃度は、該覆い(A)内に酸素濃度計を設置し覆いの中の酸素濃度をモニタリングすることで確認した。
尚、比較例1においては、上記した加熱炉から、バリア壁(B)及びバリア壁(C)を備えた覆い(A)を取り除いた加熱炉を使用した。
(2)焼結膜の電気抵抗の測定方法
JIS K7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に「準拠した4端子式シート抵抗測定器(三菱化学(株)製、型式:ロレスタG P)を用いて測定した。
【0042】
[実施例1]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
銅微粒子の原料として酢酸銅((CHCOO)Cu・1HO)2gを蒸留水100mlに溶解させた酢酸銅水溶液100mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/リットル(l)の濃度になるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水とを混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液1000mlを調製した。その後、上記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、有機物分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP;Polyvinylpyrrolidone、数平均分子量約3500)5gを添加して、攪拌溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下し、その後該混合液を約10分間よく攪拌しながら銅イオンを還元反応させて、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
【0043】
次に、上記方法で得られた銅微粒子分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、該溶液を遠心分離機に供給して、銅微粒子を回収した。その後、得られた微粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で微粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同様に、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを試験管中に入れてよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒としてエチレングリコールとN−メチルアセトアミドとを、2:8の体積割合で混合した溶媒5mlに分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ実施例1−1〜3として300μl(マイクロリットル)、500μl、1000μl塗布した。
【0044】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
前記加熱炉を用いて、基材上の微粒子分散液中の銅微粒子の還元・焼結を行った。
加熱炉のチャンバー内が充分に窒素ガス雰囲気となった後、本発明の覆いを備えたリフロー炉型構造の加熱炉のベルト上に前記分散液が塗布された基材を搭載し、昇温ゾーンで220℃まで加熱し、その後本加熱ゾーンにおいて温度220℃で30分間熱処理することにより、焼成膜を得た。得られた焼成膜について、その電気抵抗値を測定した。実施例1−1〜3で得られた結果をまとめて表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
[実施例2]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
実施例1に記載したと同様の方法により、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒としてエチレングリコールと、その他溶媒としてN−メチルアセトアミドとを、4:6の体積割合で混合した溶媒5mlに分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ実施例2−1〜3として150μl、400μl、600μl塗布した。
【0047】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
実施例1に記載したのと同様の方法により、前記加熱炉を用いて、基材上の微粒子分散液中の銅微粒子の還元・焼結を行い、焼成膜を得た。得られた焼成膜に対し、その電気抵抗値を測定した。実施例2−1〜3で得られた結果をまとめて表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
[実施例3]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
実施例1に記載したと同様の方法により、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒としてエチレングリコールと、その他溶媒としてN−メチルアセトアミドとを、6:4の体積割合で混合した溶媒5mlにそれぞれ分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ実施例3−1〜3として50μl、150μl、300μl塗布した。
【0050】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
実施例1に記載したのと同様の方法により、前記加熱炉を用いて、基材上の微粒子分散液中の銅微粒子の還元・焼結を行い、焼成膜を得た。得られた焼成膜に対し、その電気抵抗値を測定した。実施例3−1〜3で得られた結果をまとめて表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
[比較例1]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
実施例1に記載したと同様の方法により、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒(A)としてエチレングリコールと、その他溶媒としてN−メチルアセトアミドとを、8:2の体積割合で混合した溶媒5mlに分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ比較例1−1〜3として150μl、400μl、600μl塗布した。
【0053】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
比較例1においては、実施例1〜3で使用した加熱炉から、バリア壁(B)及びバリア壁(C)を備えた覆い(A)を取り除いた加熱炉を使用した。
加熱炉内全体が充分に窒素ガス雰囲気となった後、本発明の覆いを備えていないフロー炉型構造の加熱炉のベルト上に前記分散液が塗布された基材を搭載し、実施例1に記載したと同様に、本加熱温度220℃で30分熱処理することにより、焼成膜を得た。得られた焼成膜に対し、その電気抵抗値を測定した。
比較例1−1〜3で得られた結果をまとめて表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
[実施例4]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
実施例1に記載したと同様の方法により、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒としてエチレングリコールと、その他溶媒としてN−メチルアセトアミドとを、6:4の体積割合で混合した溶媒5mlにそれぞれ分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ実施例4−1〜3として150μl、250μl、350μl塗布した。
【0056】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
実施例1に記載したのと同様の方法により、前記加熱炉を用いて、基材上の微粒子分散液中の銅微粒子の還元・焼結を行った。
加熱炉のチャンバー内が充分に窒素ガス雰囲気となった後、本発明の覆いを備えたリフロー炉型構造の加熱炉のベルト上に前記分散液が塗布された基材を搭載し、昇温ゾーンで120℃まで加熱し、その後本加熱ゾーンにおいて温度140℃で30分間熱処理することにより、焼成膜を得た。得られた焼成膜について、その電気抵抗値を測定した。実施例4−1〜3で得られた結果をまとめて表5に示す。
【0057】
【表5】

【0058】
[比較例2]
(1)銅微粒子分散溶液の調製、該分散溶液の基材上への塗布
実施例1に記載したと同様の方法により、銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液1100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを10ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を1回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、還元溶媒としてエチレングリコールと、その他溶媒としてN−メチルアセトアミドとを、6:4の体積割合で混合した溶媒5mlにそれぞれ分散させ、さらに20分間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで、本発明の微粒子分散液を得た。
上記で調製した銅微粒子分散液を撹拌が終了後60分経過後に、それぞれガラスウエハ(面積約12平方センチメートル)上にそれぞれ比較例2−1〜3として150μl、250μl、350μl塗布した。
【0059】
(2)基材の還元・焼成、及び評価
実施例1に記載したのと同様の方法により、前記加熱炉を用いて、基材上の微粒子分散液中の銅微粒子の還元・焼結を行った。
加熱炉のチャンバー内が充分に窒素ガス雰囲気となった後、本発明の覆いを備えたリフロー炉型構造の加熱炉のベルト上に前記分散液が塗布された基材を搭載し、昇温ゾーンで100℃まで加熱し、その後本加熱ゾーンにおいて温度100℃で30分間熱処理することにより、焼成膜を得た。得られた焼成膜について、その電気抵抗値を測定した。比較例2−1〜3で得られた結果をまとめて表6に示す。
【0060】
【表6】

【符号の説明】
【0061】
1 チャンバー
2 無端ベルト
3 ローラ
4 不活性ガス供給器
5 基材
11(a) 昇温ヒータ
11(b) 昇温ヒータ
12(a) 本加熱ヒータ
12(b) 本加熱ヒータ
13(a) 冷却装置
13(b) 冷却装置
21 覆い(A)
22 バリア壁(B)
23 バリア壁(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、還元作用を有する有機溶媒を含む金属微粒子分散液をパターニング又は塗布し(工程1)、
リフロー炉構造の加熱炉内で、該基材上の金属微粒子を不活性ガス雰囲気下で加熱焼成して該金属微粒子を焼結する(工程2)、
基材上の導電膜又は導電回路の形成方法であって、
(i)工程2において使用される前記加熱炉は基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、
該覆い(A)内には、昇温ゾーンと本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていて、
(ii)覆い(A)内のバリア壁(B)とバリア壁(C)間の空間(I)における金属微粒子の還元・焼結が、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒液体および蒸気の存在下で行なわれることを特徴とする、基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項2】
前記覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、側面方向の内面幅が80〜1000mm、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から3〜30mm、及び側面下部と無端ベルト表面間の距離が0.5〜3mmであることを特徴とする、請求項1に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項3】
前記覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から1.5〜4mmの距離、又は基材表面から0.5〜3mmの距離にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項4】
前記覆い(A)中のバリア壁(B)及びバリア壁(C)間の空間(I)における、還元作用を有する有機溶媒蒸気濃度が13体積%以上であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項5】
前記覆い(A)中の壁(B)及び壁(C)間の空間(I)における、酸素ガス濃度が50ppm以下であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項6】
前記不活性ガスが、窒素ガス純度99.99%以上、酸素ガス含有濃度50ppm以下、露点−50℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項7】
前記本加熱ゾーンにおける基材表面温度が140〜300℃であり、加熱時間が20分以上であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項8】
前記工程1における、前記分散液中の還元作用を有する有機溶媒の体積含有率が、20〜60体積%であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項9】
前記還元作用を有する有機溶媒が、分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコールから選択された1種又は2種以上からなる有機化合物であることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項10】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項11】
前記工程1における前記金属微粒子分散液中の金属微粒子の一次粒子の平均粒径が500nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項12】
前記金属微粒子分散液中の金属微粒子がニッケル、銅、コバルト、金、及び銀から選択された1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1又は11に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項13】
前記工程1における前記金属微粒子分散液のパターニング又は塗布方法が、スピンコート法、インクジェット法、微少液滴塗布法、スプレー塗布法、スポイト滴下、及びピペット滴下から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1、11及び12のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項14】
前記工程1における基材上への金属微粒子分散液のパターニング又は塗布量が3〜100μl/cmであることを特徴とする、請求項1、11、12及び13のいずれか1項に記載の基材上の導電膜又は導電回路の形成方法。
【請求項15】
基材上に金属微粒子分散液がパターニング又は塗布された金属微粒子を加熱焼結して導電膜、又は導電回路を形成する、リフロー炉構造の加熱炉であって、
該加熱炉は、基材を搭載する無端ベルトが配設された搬送導路に昇温ゾーン、本加熱ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に形成されていて、
該昇温ゾーンの少なくとも一部と、本加熱ゾーン内には無端ベルト上に搭載された基材が覆われるように、無端ベルトの進行方向に連続したトンネル形状の覆い(A)が設けられていて、該覆い(A)内には、昇温ゾーンと、本加熱ゾーンの出口近傍にそれぞれ不活性ガスの流入を抑制するバリア壁(B)、バリア壁(C)が設けられていることを特徴とする、加熱炉。
【請求項16】
前記覆い(A)は、搬送導路の側面壁で固定され、トンネル形状の側面方向の内面幅が80〜1000mmであり、トンネル形状の上部内面高さは無端ベルト表面から3〜30mmであり、側面下部と無端ベルト表面間の距離が0.5〜3mmであることを特徴とする、請求項15に記載の加熱炉。
【請求項17】
前記覆い(A)内のバリア壁(B)及びバリア壁(C)の側面方向の下部端面が無端ベルト表面から1.5〜4mmの距離、又は基材表面から0.5〜3mmの距離にあることを特徴とする、請求項15又は16に記載の加熱炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−251739(P2010−251739A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71728(P2010−71728)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】